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ピル飲み始めの不正出血は大丈夫? | 原因・対処法と受診目安

ピルを服用している方のなかには、「不正出血があって不安」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。ピル服用中に予定外の出血があると、「何かの病気かもしれない」「ピルが合わないのでは?」など、心配になるのは当然です。

しかし、ピル服用中の不正出血は比較的よく見られる症状の一つであり、必ずしも重篤な病気が隠れているわけではありません。ホルモンバランスの変化やピルの影響など、様々な原因が考えられます。この記事では、ピル服用中に不正出血が起きる原因から、出血の色や状態別のサイン、ご自身でできる対処法、そして医療機関を受診する目安について詳しく解説します。
この記事を読むことで、不正出血に対する不安を軽減し、適切に対応できるようになるでしょう。

目次

ピル服用中に不正出血が起きる原因

ピル服用中に生理とは異なる時期に出血することを「不正出血(消退出血とは別の出血)」と呼びます。この不正出血は、ピルを服用している方の約20〜30%に起こると言われています。原因は一つではなく、いくつかの可能性が考えられます。多くはピルによるホルモンの影響ですが、中には医療機関での診察が必要なケースもあります。

飲み始めなどによるホルモンバランスの変化

ピルは女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を人工的に補充することで、排卵を抑制したり、子宮内膜を薄く保ったりする薬です。ピルの服用を開始したばかりの頃や、異なる種類のピルに変更した直後は、体が新しいホルモンバランスに慣れようとする期間です。この過程で、ホルモンバランスが一時的に不安定になり、不正出血を引き起こすことがあります。

これは体がピルに順応するための自然な反応であり、「マイナートラブル」として知られています。通常、飲み始めてから1〜3ヶ月程度で落ち着くことが多いです。体が慣れるにつれてホルモンバランスが安定し、不正出血も次第になくなる傾向にあります。

飲み忘れや服用時間のズレ

ピルは毎日ほぼ同じ時間に服用することが重要です。これは、体内のホルモン濃度を一定に保つためです。もしピルを飲み忘れたり、服用時間が大幅にずれたりすると、体内のホルモン濃度が急激に変動し、子宮内膜が不安定になって不正出血を引き起こすことがあります。

特に、低用量ピルや超低用量ピルは含まれるホルモン量が少ないため、飲み忘れや時間のズレによる影響を受けやすいとされています。飲み忘れに気づいた場合の対処法は、ピルの種類や飲み忘れからの時間によって異なりますので、必ず添付文書を確認するか、医師や薬剤師に相談してください。
飲み忘れを防ぐためには、毎日決まった時間に服用する習慣をつけることが大切です。アラームを設定したり、アプリを利用したりするのも有効な方法です。

ピルの種類や変更

ピルには様々な種類があり、含まれるホルモンの量やバランスが異なります。特に、超低用量ピルは含まれるホルモン量が非常に少ないため、従来の低用量ピルと比較して、不正出血(特に飲み始めの頃)が起こりやすい傾向があります。これは、子宮内膜をより薄く保つ作用が強く働くためと考えられます。

また、ピルの種類を変更した場合にも、新しいピルに含まれるホルモンの量やバランスによって体が再び慣れる期間が必要となり、一時的に不正出血が見られることがあります。もし不正出血が続く場合や気になる場合は、ピルの種類がご自身の体質に合っていない可能性も考えられます。その場合は、医師に相談して別の種類のピルを検討することも可能です。

ストレスや体調不良

精神的なストレスや過労、睡眠不足、急激な体重変化などの体調不良も、ホルモンバランスに影響を与える可能性があります。ピルを服用していても、これらの要因が重なることで、ホルモンバランスが乱れやすくなり、不正出血を引き起こすことがあります。

例えば、仕事で大きなプレッシャーを感じている時期や、風邪をひいて体調を崩している時などに不正出血が起こりやすくなるケースが見られます。規則正しい生活を心がけ、ストレスを適切に管理することは、不正出血だけでなく、全身の健康維持にも繋がります。

その他の原因(性行為後など)

ピルを服用しているかどうかにかかわらず、性行為の後に少量の出血が見られることがあります。これは、性行為の際の刺激によって、子宮頸部や膣の粘膜から出血する可能性が考えられます。特に、子宮頸管ポリープやびらんがある場合などに起こりやすいとされています。

また、ピル以外の薬を服用している場合や、喫煙なども不正出血のリスクを高める要因となる可能性が指摘されています。何か心当たりがある場合は、医師に相談する際に伝えると良いでしょう。

病気の可能性

ピル服用中の不正出血の多くはホルモンの影響によるものですが、中には婦人科系の病気が原因となっている可能性もゼロではありません。特に、不正出血が長期間続く場合や、量が多い場合、腹痛などの他の症状を伴う場合は注意が必要です。以下に、不正出血の原因となりうる代表的な病気を挙げます。

子宮頸管ポリープ
子宮頸管にできる良性の突起物です。性行為や刺激などによって、ポリープの表面が傷つき、出血することがあります。ポリープ自体は良性の場合が多いですが、出血の原因を特定するためには診察が必要です。簡単に切除できることがほとんどです。

子宮頸がん、子宮体がん
初期段階では自覚症状がないことが多いですが、進行すると不正出血が見られることがあります。特に性行為後の出血が特徴的な症状の一つです。子宮頸がんはHPVワクチンや定期的な検診で予防・早期発見が可能であり、子宮体がんも早期発見が重要です。ピルを服用していても、これらの疾患のリスクがなくなるわけではありません。定期的な婦人科検診を受けることが大切です。

膣炎、子宮内膜炎
細菌やその他の病原体による感染症によって、膣や子宮内膜に炎症が起きている場合も、不正出血やおりものの変化、下腹部痛などの症状が見られることがあります。炎症を放置すると重症化したり、不妊の原因になったりする可能性もあるため、適切な治療が必要です。

妊娠・異所性妊娠(子宮外妊娠)
ピルは高い避妊効果がありますが、100%ではありません。飲み忘れや他の薬との相互作用などによって、稀に妊娠する可能性もゼロではありません。妊娠初期には着床時出血やホルモンバランスの変化による少量の不正出血が見られることがあります。また、受精卵が子宮以外の場所(卵管など)に着床する異所性妊娠(子宮外妊娠)の場合も、不正出血や強い腹痛などの症状が現れます。異所性妊娠は緊急性の高い状態ですので、可能性が疑われる場合は速やかに医療機関を受診する必要があります。

不正出血の色や状態別のサイン

不正出血の色や量、期間、他の症状の有無は、その原因を推測する上で重要な情報となります。出血の状態を観察し、記録しておくことは、医療機関を受診した際に医師に正確な状況を伝えるために役立ちます。

茶色い不正出血

茶色っぽい出血は、比較的古い血液が少量ずつ排出されていることが多いです。出血してから時間が経つと、血液中のヘモグロビンが酸化して茶色に変色するためです。

ピルを飲み始めた頃に見られる少量の茶色い出血は、体がピルに慣れる過程でのマイナートラブルである可能性が高いと考えられます。生理の終わりかけのような、おりものに混じる程度の少量であることも特徴です。多くの場合、数日から1週間程度で自然に治まります。ただし、長期間続いたり、量が増えたりする場合は、念のため医療機関に相談することをおすすめします。

鮮血の不正出血

鮮やかな赤色の出血は、比較的最近起きた出血であることを示しています。出血量が多い場合や、生理のようにサラサラとした出血が続く場合は注意が必要です。

ピルの飲み忘れや服用時間のズレによってホルモン濃度が急激に低下した場合に、子宮内膜が剥がれて鮮血の出血が見られることがあります。また、子宮頸管ポリープからの出血や、性行為後の出血も鮮血であることが多いです。稀ではありますが、子宮頸がんや子宮体がん、異所性妊娠などの病気が原因で鮮血の不正出血が起こる可能性も考えられます。鮮血の出血が続く場合や量が多い場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

不正出血が止まらない

不正出血の期間も重要な判断材料です。ピルを飲み始めた頃の一時的な出血であれば、通常1〜3ヶ月以内に落ち着くことがほとんどです。しかし、それ以降も不正出血が続いたり、一旦治まった不正出血が繰り返し起きたりする場合は、注意が必要です。

不正出血が2〜3ヶ月以上続く場合や、ピルを正しく服用しているにもかかわらず出血が止まらない場合は、ピルがお自身の体質に合っていない可能性や、他の原因が隠れている可能性も考えられます。自己判断でピルの服用を中止したりせず、必ず医師に相談してください。医師は問診や内診、必要に応じて超音波検査などを行い、原因を特定し、適切な対処法を提案してくれます。

腹痛を伴う不正出血

不正出血に加えて下腹部痛がある場合は、何らかの病気が原因となっている可能性が比較的高いと考えられます。痛みの程度や種類(ズキズキする、キューっとする、鈍痛など)、痛む場所(下腹部全体、左右どちらかなど)も重要な情報です。

例えば、子宮内膜炎や膣炎などの感染症の場合、不正出血とともにおりものの変化や下腹部痛が見られることがあります。また、異所性妊娠(子宮外妊娠)の場合は、激しい下腹部痛(特に片側)と不正出血が特徴的な症状です。子宮筋腫や子宮腺筋症など、他の良性疾患が不正出血や腹痛の原因となることもあります。腹痛を伴う不正出血の場合は、我慢せずに早めに医療機関を受診することが推奨されます。

不正出血の色や状態、期間、随伴症状を観察・記録しておくと、医療機関での診断に役立ちます。可能であれば、出血が始まった日、終わった日、出血の量(生理用ナプキン何枚分必要だったかなど)、色、塊の有無、痛みの有無や程度などをメモしておきましょう。

出血の色・状態 考えられる主な原因(ピル服用中の場合) 受診の目安
茶色い少量 ピル飲み始めのマイナートラブル、飲み忘れ、古い血液の排出 1〜3ヶ月程度で落ち着くか様子見。長引く場合は相談。
鮮血少量 ピル飲み忘れ、服用時間のズレ、性行為後の出血、子宮頸管ポリープ 数日様子見ても良い場合も。続く場合や繰り返す場合は相談。
鮮血多量 ピル飲み忘れによる消退出血に近い出血、稀に病気の可能性 量が多い場合は相談。急激な大量出血は救急受診も検討。
止まらない ピルが合わない、ストレス、他の原因(病気など) 2〜3ヶ月以上続く場合は受診必須。
腹痛を伴う 感染症(膣炎・子宮内膜炎)、異所性妊娠、子宮筋腫・腺筋症、稀にがん 痛みが強い場合や続く場合は早めに受診。特に片側の強い腹痛は救急受診検討。

※上記は一般的な傾向であり、個人差があります。また、ピル服用中でも上記の原因以外で不正出血が起こる可能性もあります。自己判断はせず、不安な場合は医療機関に相談してください。

不正出血が起きた時の対処法

ピル服用中に不正出血が起きた時、どのように対処すれば良いのでしょうか。まずは落ち着いて状況を確認し、適切な行動をとることが大切です。

まずは状況を落ち着いて確認

不正出血に気づいたら、慌てずに以下の点を確認してみましょう。

  • 出血量: おりものに混じる程度か、ナプキンが必要な量か、生理の時と同じくらいか。
  • 出血の色: 茶色っぽいか、ピンク色か、鮮やかな赤色か。
  • 出血の期間: どれくらいの期間続いているか。
  • 出血したタイミング: ピルを飲み忘れた後か、シートの何錠目を飲んでいる時か、性行為の後かなど。
  • 他の症状: 腹痛、腰痛、発熱、吐き気、めまいなど、他の症状はあるか。
  • 最近の体調: ストレス、疲労、睡眠不足など、体調の変化はあったか。

これらの情報を記録しておくと、医療機関を受診した際に正確な状況を伝えることができ、診断の手助けになります。スマートフォンなどにメモしておくと便利です。

ピル服用は続けるべき?

不正出血が起きた場合でも、基本的にはピルの服用を続けるのが一般的です。特に、飲み始めの不正出血や飲み忘れによる一時的な出血であれば、服用を続けることで体がピルに慣れて出血が治まることが多いからです。自己判断でピルの服用を中止すると、ホルモンバランスがさらに不安定になったり、避妊効果が失われたりする可能性があります。

ただし、出血量が多い場合、腹痛などの他の症状を伴う場合、不正出血が長期間続く場合などは、医師の指示を仰ぐ必要があります。自己判断で服用を中止したり、飲み方を変えたりせず、必ず処方医に相談してください。医師はあなたの状況に応じて、ピルの種類変更や服用中止、他の治療などを提案してくれるでしょう。

自己判断せずに相談

不正出血の原因は様々であり、中には医療機関での診察が必要な病気が隠れている可能性もあります。自己判断で原因を決めつけたり、市販薬などで対応しようとしたりすることは避けましょう。

特に、以下のような場合は速やかに医療機関に相談してください。

  • 出血量が多く、生理のように続く場合
  • 腹痛や発熱などの他の症状を伴う場合
  • 不正出血が2〜3ヶ月以上続く場合
  • 不正出血が一旦治まっても繰り返し起きる場合
  • ピルを正しく服用しているにもかかわらず不正出血が改善しない場合
  • 妊娠の可能性がある場合(飲み忘れなどがあり、不正出血が着床出血や異所性妊娠を疑わせる場合など)
  • 不正出血に対して強い不安を感じる場合

処方医や、かかりつけの婦人科医に相談するのが最も適切です。オンライン診療を利用できるクリニックであれば、自宅から気軽に相談することも可能です。

ピル服用中の不正出血で病院に行くべき目安

ピル服用中の不正出血はよくあることですが、どのような場合に医療機関を受診すべきか迷うことがあるかもしれません。ご自身の状況を把握し、適切なタイミングで受診することが重要です。

すぐに受診が必要なケース(急な出血など)

以下のような症状が見られる場合は、緊急性が高い可能性も考えられるため、できるだけ早く医療機関を受診してください。夜間や休日の場合は、救急外来なども含めて受診を検討しましょう。

  • 急な大量出血: 突然、生理2日目のような大量の出血が始まった場合。
  • 生理用品では間に合わないほどの出血: 短時間でナプキンやタンポンが血でいっぱいになるような出血量。
  • 強い下腹部痛: 特に片側に強い痛みがある場合や、動けないほどの痛み。
  • 出血とともに発熱がある場合: 感染症などが疑われます。
  • めまいや立ちくらみを伴う場合: 出血量が多く貧血を起こしている可能性があります。
  • 妊娠の可能性がある状況での腹痛や出血: 異所性妊娠(子宮外妊娠)などの緊急性の高い状態が疑われます。

これらの症状は、単なるホルモンバランスの乱れだけではない、より重篤な状態を示している可能性があります。ためらわずに医療機関に連絡を取り、指示を仰ぎましょう。

数日様子を見ても良いケース

以下のような場合は、数日〜1週間程度様子を見ても良いことが多いと考えられます。ただし、症状が改善しない場合や悪化する場合は、やはり医療機関に相談することをおすすめします。

  • ピルを飲み始めたばかりで、少量の茶色っぽい出血が見られる場合: 体が慣れる過程の可能性が高く、通常1〜3ヶ月で落ち着きます。
  • ピルを飲み忘れた後に少量の出血が見られた場合: 飲み忘れによる一時的なホルモンバランスの乱れと考えられます。
  • 生理予定日ではない時期に、ごく少量の茶色やピンクの出血が短期間(1〜2日)で見られた場合: 排卵期出血(ピルで排卵は抑制されますが、周期的なホルモン変動で稀に起こることも)、性行為後の出血などが考えられます。
  • 出血量がごく少量で、腹痛などの他の症状がない場合: マイナートラブルの可能性が高いです。

ただし、様子を見る期間はあくまで目安です。不安が強い場合や、症状について少しでも気になる点がある場合は、早めに医療機関に相談するに越したことはありません。

どこで診てもらう?(産婦人科)

不正出血の原因を特定し、適切に治療を受けるためには、婦人科を受診するのが最も適切です。ピルを処方してもらっている医療機関があれば、まずはそこに相談するのが良いでしょう。これまでの経過や服用しているピルの種類などを把握しているので、スムーズな対応が期待できます。

もしピルを服用している医療機関が遠い場合や、別の医療機関を受診したい場合は、お近くの婦人科を探しましょう。不正出血の診察では、問診に加えて、内診や超音波検査などが行われるのが一般的です。必要に応じて、細胞診(がん検診)、血液検査、おりもの検査などが実施されることもあります。

かかりつけの婦人科医がいれば、日頃から体の変化について気軽に相談できるため安心です。ピル服用を機に、信頼できる婦人科を見つけておくことをお勧めします。

まとめと重要なポイント

ピル服用中の不正出血は、多くの女性が経験しうる症状であり、その原因は多岐にわたります。多くの場合、ピルによるホルモンバランスの変化や飲み忘れなど、一時的なものであることが多いですが、中には病気が隠れている可能性もゼロではありません。

重要なポイントをまとめます。

  • ピル服用中の不正出血は比較的よくある症状であり、必ずしも病気ではありません。
  • 主な原因は、ピル飲み始めや種類変更によるホルモンバランスの変化、飲み忘れ、ストレス、体調不良などです。
  • 稀に、子宮頸管ポリープ、子宮頸がん、子宮体がん、膣炎、子宮内膜炎、妊娠、異所性妊娠などの病気が原因となっている可能性もあります。
  • 出血の色(茶色か鮮血か)、量、期間、腹痛などの他の症状の有無を観察・記録しておくと、原因特定に役立ちます。
  • 不正出血が起きても、自己判断でピルの服用を中止せず、基本的には服用を継続します。ただし、量が多い場合や症状が続く場合は医師に相談してください。
  • 急な大量出血、強い腹痛、発熱、めまいなどを伴う場合は、速やかに医療機関(婦人科)を受診してください。
  • 不正出血が2〜3ヶ月以上続く場合や繰り返し起きる場合も、医療機関に相談しましょう。
  • 不安な場合は、出血の状況に関わらず、気軽に医療機関(婦人科)に相談することが大切です。

ピルは正しく服用すれば、高い避妊効果だけでなく、生理痛の軽減、生理周期の安定、PMS(月経前症候群)の緩和、ニキビの改善など、様々なメリットがあります。不正出血があると心配になるかもしれませんが、原因を理解し、適切に対処することで、安心してピルを継続することができます。

もし不正出血に関してご不安な点があれば、一人で悩まず、必ず医療機関にご相談ください。専門家である医師が、あなたの状況を把握し、最適なアドバイスや治療法を提案してくれます。

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