生理が近づくと、なんだか気分が沈んだり、体がだるく感じたり、肌の調子が悪くなったりと、さまざまな心身の変化を感じる女性は少なくありません。こうした変化の一つに、「性欲」の変化があります。生理前になると、普段よりも性欲が強くなったり、逆にまったくなくなってしまったりと、人によって感じ方はさまざまです。これらの性欲の変化は、決して珍しいことではなく、女性ホルモンの変動によって引き起こされる自然な現象です。
しかし、その変化に戸惑ったり、パートナーとの関係に影響が出たりすることもあるでしょう。この記事では、生理前の性欲が変化する理由や、その具体的な原因、そして変化にどう向き合い、適切に対処すれば良いのかについて、医師監修のもと詳しく解説します。この記事を通じて、ご自身の体のメカニズムを理解し、生理前の性欲の変化とうまく付き合っていくためのヒントを見つけていただければ幸いです。
生理前の性欲はなぜ変化する?
女性の体は、約1ヶ月の生理周期の中で、2種類の主要な女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌量が大きく変動しています。このホルモンバランスの変化が、心身に様々な影響を及ぼし、その一つとして性欲にも影響を与えます。
一般的に、生理周期は「卵胞期」「排卵期」「黄体期」「生理期」の4つの時期に分けられます。性欲は、排卵期に最も高まると言われています。これは、妊娠の可能性が高まる時期に、生殖行動を促すための体の自然な反応と考えられています。排卵期には、妊娠準備ホルモンであるエストロゲンの分泌がピークを迎えるため、心身ともに活動的になりやすく、性欲も高まりやすい傾向があります。
一方、生理前の約2週間は「黄体期」と呼ばれます。この時期は、排卵後に形成された黄体から、妊娠を維持するためのホルモンであるプロゲステロンが多く分泌されます。プロゲステロンは、子宮内膜を厚くしたり、体温を上昇させたりする働きがありますが、同時にリラックス作用や鎮静作用があるとも言われています。このプロゲステロンの増加が、生理前の性欲の変化に大きく関わっていると考えられています。
生理前の性欲の変化は、大きく分けて「強くなるケース」と「弱くなるケース」の二つのパターンが見られます。どちらのパターンも、黄体期のホルモンバランスの影響によるものですが、その感じ方やメカニズムには違いがあります。
生理前 性欲が強くなるケース(PMSG)
生理前になると、普段よりも性欲が強くなる、あるいは性的衝動が高まるという経験をする女性がいます。この現象は「PMSG(Premenstrual Sexual Growth)」と呼ばれることがありますが、医学的に確立された用語というよりは、生理前の性欲増進を指す俗称として使われることが多いようです。
排卵期に性欲が高まるのは、エストロゲンの影響が大きいとされています。しかし、黄体期、特に生理直前になってから性欲が高まるケースでは、プロゲステロンの影響も考えられます。プロゲステロンには、体内の水分を保持したり、眠気を誘ったりといった作用がありますが、一部の女性では、ホルモンバランスの変動に伴い、別の性ホルモンであるテストステロンなどのアンドロゲン(男性ホルモン)の相対的な影響が強まることで、性欲が高まるのではないかという説もあります。ただし、このメカニズムはまだ完全に解明されていません。
生理前に性欲が高まる女性は、この時期にいつもより性的な刺激を求めやすくなったり、パートナーとの性行為やセルフプレジャーへの関心が高まったりする傾向が見られます。これは体の自然な反応の一つであり、恥ずかしいことではありません。むしろ、自分の体のリズムを知り、性欲が高まる時期があることを受け入れることで、より自分らしく過ごせるようになるかもしれません。
生理前 性欲が弱くなるケース
生理前に性欲が低下したり、まったくなくなったりするという経験をする女性は、性欲が強くなるケースと同様に多く存在します。むしろ、生理前の不快な症状(PMS)との関連から、こちらのパターンの方が一般的かもしれません。
生理前の黄体期に多く分泌されるプロゲステロンは、心身に様々な影響を及ぼします。プロゲステロンには鎮静作用があるため、活動性が低下し、性的な活動への意欲も減退することがあります。また、生理前の女性の多くが経験するPMS(月経前症候群)の症状が、性欲低下の大きな原因となります。
PMSの症状は多岐にわたりますが、特に性欲に影響しやすいのは、以下のような症状です。
- 精神的な症状: イライラ、気分の落ち込み、不安感、集中力の低下など。これらの精神的な不調は、性的な気分やパートナーとの関係性に悪影響を与える可能性があります。心が不安定な状態では、なかなか性的な気分になりにくいのは自然なことです。
- 身体的な症状: むくみ、お腹の張り、乳房の痛み、頭痛、腰痛、倦怠感、眠気など。これらの身体的な不快感があると、性行為をすること自体がおっくうになったり、痛みを伴うのではないかと感じたりして、性欲が低下することがあります。体がだるく疲れている時には、性的な活動よりも休息を優先したいと感じるのが普通です。
このように、生理前の性欲低下は、黄体期のホルモンバランスによる直接的な影響だけでなく、それに伴って現れる精神的・身体的な不調が複合的に関与して引き起こされると考えられます。自分の体のサインを理解し、無理のない範囲で過ごすことが大切です。
生理前 性欲変化の主な原因
生理前の性欲変化は、単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って生じます。その中でも特に主要な原因として考えられるのが、ホルモンバランスの変動、精神的な影響やPMS症状、そして身体的な変化です。
ホルモンバランスの変動(エストロゲン・プロゲステロン)
女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌量は、生理周期によってダイナミックに変動します。この変動が、脳の機能や神経伝達物質、さらには全身の血流や感受性にも影響を与え、結果として性欲の変化につながると考えられています。
生理周期におけるホルモン分泌と性欲の一般的な傾向を以下の表にまとめます。
時期 | 主なホルモン | 体への影響(性欲関連) | 性欲の傾向(一般的) |
---|---|---|---|
卵胞期 | エストロゲン増加 | 気分が高揚しやすい、肌や髪の調子が良い、膣の潤いが増える | やや高まり始める |
排卵期 | エストロゲンピーク | 心身ともに活動的、魅力的と感じやすい、膣の潤いが最も多い | ピークを迎える |
黄体期 | プロゲステロン増加 | 鎮静作用、眠気、体温上昇、むくみ、お腹の張り、イライラ、気分の落ち込み(PMS症状) | 低下傾向(一部増加) |
生理期 | ホルモン低下 | 不快感(腹痛、腰痛など)、だるさ、気分の変動 | 低下傾向 |
黄体期に入ると、プロゲステロンの分泌が急激に増加し、エストロゲンは比較的低めの状態が続きます。プロゲステロンは、脳の性欲に関わる領域に直接作用したり、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ドーパミンなど)の働きに影響を与えたりすることで、性的な衝動や興味を抑制する方向に働く可能性があります。一方で、前述のように、この時期にアンドロゲンの相対的な影響が増すことで、一部の女性では性欲が高まるという逆の反応が起こることもあります。この複雑なホルモンバランスの変動が、生理前の性欲が人によって異なる変化を示す根本的な原因と言えます。
精神的な影響やPMS症状
生理前の性欲変化には、ホルモンバランスによる直接的な影響だけでなく、精神的な状態やPMS(月経前症候群)に伴う症状も大きく関わります。
黄体期は、プロゲステロンの影響で心身が不安定になりやすい時期です。特に、イライラ、怒りっぽくなる、悲しくなる、不安になる、緊張する、集中力がなくなる、といった精神的なPMS症状は、性的な気分に大きな影を落とします。パートナーと些細なことで衝突しやすくなったり、自分の殻に閉じこもりたくなったりすることで、性行為から遠ざかることもあります。
また、ストレスも性欲に影響を与える大きな要因です。生理前は、ホルモンバランスの変化により、普段よりもストレスを感じやすくなることがあります。仕事や人間関係でのストレス、生理前の体の不調に対するストレスなどが重なることで、心に余裕がなくなり、性的な活動への意欲が失われることがあります。
さらに、自己肯定感の低下も性欲に影響する場合があります。生理前は、肌荒れやむくみなどで自分の容姿に自信が持てなくなったり、イライラしてパートナーに当たってしまったことで自己嫌悪に陥ったりすることがあります。こうしたネガティブな感情は、自分自身を魅力的に感じられなくさせ、性的な活動に対する肯定的な気持ちを損なう可能性があります。
精神的な要因やPMS症状が性欲に与える影響を以下の表にまとめます。
要因 | 具体的な影響 | 性欲への影響 |
---|---|---|
イライラ、怒りっぽい | パートナーとの衝突増加、性的な気分になりにくい | 低下 |
気分の落ち込み、不安 | 性的な活動への興味喪失、性行為に対する億劫さ | 低下 |
ストレス、疲労 | 心に余裕がなくなる、性的な活動よりも休息を優先したい気持ちになる | 低下 |
自己肯定感の低下 | 自分を魅力的に感じられない、性的な活動への自信喪失 | 低下 |
集中力の低下 | 性的な刺激に集中できない、性的な気分になりにくい | 低下 |
このように、生理前の精神的な不安定さやPMS症状は、性欲を低下させる方向へ強く作用することが多いと言えます。
身体的な変化(むくみ、だるさなど)
生理前には、精神的な変化だけでなく、さまざまな身体的な変化も起こります。これらの身体的な不調も、性欲に影響を与える重要な要因です。
黄体期に分泌されるプロゲステロンは、体内に水分をため込みやすくする性質があります。そのため、生理前になると、顔や手足がむくんだり、お腹が張ったりすることがよくあります。体重が増加したように感じたり、体が重く感じられたりすることもあります。こうした体の変化は、不快感やボディイメージへのネガティブな感情につながり、性的な活動への意欲を削いでしまう可能性があります。
また、生理前には強い倦怠感や眠気を感じる人も少なくありません。体がだるく、疲労感が強い状態では、性的な活動に必要なエネルギーや気力が湧いてこないのは自然なことです。頭痛、腰痛、下腹部痛、乳房の張りや痛みなども、性行為中の不快感につながる可能性があるため、性欲を低下させる要因となり得ます。
身体的な変化が性欲に与える影響を以下の表にまとめます。
身体的な変化 | 具体的な影響 | 性欲への影響 |
---|---|---|
むくみ、お腹の張り | 体が重く感じる、不快感、ボディイメージへのネガティブな感情 | 低下 |
倦怠感、眠気 | 性的な活動に必要なエネルギー・気力が湧かない、休息を優先したい気持ちになる | 低下 |
乳房の張り・痛み | 性行為中の触れ合いに不快感、性的な刺激を避けたくなる | 低下 |
頭痛、腰痛、下腹部痛 | 体の不調による不快感、性行為中の痛みへの懸念 | 低下 |
肌荒れ | 自己肯定感の低下、自分を魅力的に感じられない気持ち | 低下 |
これらの身体的な不快感は、性欲を低下させるだけでなく、パートナーとの触れ合いや性行為そのものに対するネガティブな感情を引き起こす可能性もあります。自分の体が感じているサインに耳を傾け、無理をしないことが重要です。
生理前 性欲変化への対処法
生理前の性欲変化は自然な現象ですが、その変化によって困りごとが生じる場合、適切に対処することが大切です。性欲が強い場合と弱い場合で、それぞれ異なる対処法が考えられます。
性欲が強い場合の具体的な対処
生理前に性欲が高まる場合、その性的なエネルギーを健康的に解消することが重要です。無理に我慢することで、イライラが増したり、精神的に不安定になったりすることもあるからです。
- 性行為: パートナーがいる場合は、率直な気持ちを伝えて性行為を持つことが一つの方法です。ただし、パートナーの体調や気持ちも尊重し、お互いが同意の上で行うことが大前提です。普段とは違う方法や場所を試してみることで、マンネリを防ぎ、より充実した性行為になる可能性もあります。
- セルフプレジャー: パートナーがいない場合や、パートナーとの性行為が難しい場合は、セルフプレジャー(マスターベーション)で性欲を解消することも有効な手段です。セルフプレジャーは、自分の体を知り、心地よさを探求する機会でもあります。
- 他の方法での解消: 性的な活動以外でも、性欲から意識をそらす、あるいは昇華させる方法があります。
- 運動: 適度な運動は、ストレス解消にもつながり、体のエネルギーを発散させるのに役立ちます。ウォーキング、ジョギング、ダンス、ヨガなど、自分が楽しめる運動を見つけましょう。
- 趣味や熱中できること: 好きなことに没頭する時間を持ちましょう。読書、映画鑑賞、音楽、絵を描く、料理など、何かに集中することで性的な衝動から意識をそらすことができます。
- リラクゼーション: リラックスすることで、心身の興奮を鎮めることができます。アロマセラピー、半身浴、瞑想なども効果的です。
性欲が高まる時期があることを自然なこととして受け入れ、自分にとって心地よく、かつ社会的に問題のない方法で解消することが、生理前の期間を快適に過ごすための鍵となります。
性欲が弱い場合の具体的な対処
生理前に性欲が低下する場合、最も大切なのは「無理をしないこと」です。性欲がないのに無理に性的な活動をしようとすると、不快感や苦痛を感じたり、パートナーとの関係に亀裂が入ったりする可能性があります。
- 性行為を無理に行わない: 性欲がない時は、性行為を断っても全く問題ありません。パートナーに正直な気持ちを伝え、理解を求めましょう。性行為以外の方法でパートナーと愛情や絆を深めることも可能です(後述)。
- 心身のリラックスを促す: 性欲低下の原因がPMSに伴う不調にある場合、心身をリラックスさせることが有効です。
- 十分な休息: 睡眠不足は心身の不調を招き、性欲を低下させます。質の良い睡眠を十分にとりましょう。
- リラクゼーション法: アロマバス、マッサージ、ゆったりした音楽を聴く、深呼吸、ストレッチなど、自分がリラックスできる方法を試しましょう。
- 軽い運動: 激しい運動は避け、ウォーキングやヨガなど、心身をほぐす程度の軽い運動は、気分転換にもなり、体の不調を和らげる可能性があります。
- ストレスマネジメント: 生理前のストレスを軽減することも重要です。ストレスの原因を特定し、解消するための方法(趣味、友人との会話、カウンセリングなど)を取り入れましょう。
- 生理前の不調を和らげる: PMSの症状(むくみ、だるさ、痛みなど)自体を軽減するケアを行うことも、性欲の回復につながることがあります。温かい飲み物を飲む、体を冷やさない、バランスの取れた食事を心がける、といったセルフケアや、必要であれば医療機関に相談して症状を和らげる治療を検討しましょう。
性欲低下は一時的なものであることが多いです。生理が始まったり、黄体期を過ぎたりすれば、自然と元の状態に戻ることがほとんどです。焦らず、自分の心と体の声に耳を傾け、必要であれば休息を優先することが大切です。
パートナーとのコミュニケーション
生理前の性欲変化は、女性自身の問題であると同時に、パートナーとの関係にも影響を与える可能性があります。こうした変化について、パートナーとオープンにコミュニケーションをとることが非常に重要です。
- 正直な気持ちを伝える: 生理前になると性欲が変化すること、そしてその変化が自分にとってどのようなものなのか(性欲が高まる、または低下する、不快感があるなど)を、パートナーに正直に伝えましょう。なぜ性的な気分になれないのか、なぜ普段より性的な活動を求めるのかなど、具体的な理由や体の状態を説明することで、パートナーの理解を得やすくなります。
- 性欲の変化は「あなた(パートナー)のせいではない」と伝える: 性欲の変化がパートナーに対する気持ちとは関係ないこと、自分の体の自然なリズムであることを伝えることも大切です。性欲低下の場合、「自分に魅力がないからではないか」とパートナーが誤解してしまう可能性もあります。そうではないことを明確に伝えることで、パートナーの不安を和らげることができます。
- 性行為以外のスキンシップや愛情表現: 性欲が低下している時期でも、パートナーとの絆を深める方法はたくさんあります。手をつなぐ、ハグをする、キスをする、一緒に映画を見る、ゆっくり話をするなど、性行為以外の方法で愛情や親密さを表現することで、お互いの安心感を高めることができます。
- 理解と尊重を求める: パートナーに自分の体調や気持ちを理解し、尊重してもらうようにお願いしましょう。性欲がない時に無理強いされることや、逆に性欲がある時に頭ごなしに否定されることは、関係性を悪化させる可能性があります。お互いのペースや状態を尊重し合う関係性が理想です。
- 一緒に学ぶ機会にする: 生理周期やPMSについて、パートナーと一緒に学んでみるのも良いでしょう。本やインターネットで情報を共有したり、一緒にセミナーに参加したりすることで、お互いの理解が深まります。
性欲の変化は、女性の体の自然な一部です。それを隠したり我慢したりせず、パートナーと共有することで、より健全で協力的な関係を築くことができます。
専門家(医師)への相談タイミング
生理前の性欲変化は多くの女性に起こる自然な現象ですが、その変化があまりにも辛かったり、日常生活に支障をきたしたりする場合には、専門家である医師に相談することを検討しましょう。
以下のような場合は、特に専門家への相談をお勧めします。
- 性欲の変化が著しく、自分自身が辛いと感じる場合: 性欲のコントロールが難しく日常生活に影響が出る、あるいは性欲の低下によりパートナーとの関係に深刻な問題が生じているなど、変化の程度が大きく、自分自身がそのことに苦痛を感じている場合。
- 性欲の変化以外にも、PMS症状が重い場合: 性欲の変化だけでなく、イライラ、気分の落ち込み、強い倦怠感、痛み、むくみなど、他のPMS症状も重く、仕事や家事、人間関係に支障が出ている場合。
- 市販薬やセルフケアで改善が見られない場合: PMSの緩和に効果があるとされる市販薬やサプリメントを試したり、生活習慣の改善を心がけたりしても、症状があまり改善しない場合。
- 性欲の変化の原因が、生理前以外にも見られる場合: 生理前だけでなく、生理周期に関係なく性欲の変化が続く場合や、他の体の不調(急激な体重の変化、不正出血、過度な疲労など)を伴う場合、基礎疾患や他の婦人科系の問題が隠れている可能性も考えられます。
- 性欲の変化に対する不安が強い場合: 自分の性欲の変化について、過度に心配したり、病気ではないかと不安に感じたりする場合。
相談先としては、まず婦人科が適切です。婦人科医は、生理周期や女性ホルモンに関する専門知識を持っています。性欲の変化の原因が生理周期によるものか、あるいは他の婦人科系の問題がないかなどを診断し、必要に応じて低用量ピルや漢方薬などによるPMS治療、あるいは精神的なアプローチ(カウンセリングなど)を提案してくれます。
精神的な症状(強いイライラ、抑うつなど)が特に顕著で、日常生活に大きな支障をきたしている場合は、心療内科や精神科への相談も考えられます。これらの科では、精神的な側面からのアプローチや、必要に応じて抗うつ薬や抗不安薬などの処方を受けることができます。ただし、まずは婦人科で相談し、体の状態を把握することが一般的です。
専門家に相談することで、自分の体の状態を正確に把握し、適切なアドバイスや治療を受けることができます。一人で悩まず、勇気を出して相談してみましょう。
生理前 性欲に関するよくある質問
生理前の性欲変化に関して、多くの女性が抱える疑問についてQ&A形式で解説します。
生理前 性欲の変化はいつから始まる?
生理前の性欲変化は、主に黄体期に入ってから現れることが多いです。黄体期は排卵後に始まり、次の生理が来るまでの約2週間続きます。
性欲が高まる「PMSG」の場合は、黄体期の中盤から後半にかけて、特に生理が始まる直前の数日間で強く感じられるという声が多く聞かれます。これは、プロゲステロンの分泌がピークを過ぎ、次の生理に向けてホルモンバランスが再び大きく変動する時期と重なる可能性があります。
一方、性欲が低下するケースでは、黄体期に入ってすぐに(排卵後数日後から)プロゲステロンの影響やPMS症状が出始め、それに伴って性欲が徐々に低下していく傾向があります。生理が近づくにつれて、だるさや不快感が強くなり、性欲もさらに低下するというパターンが多く見られます。
ただし、性欲の変化が現れるタイミングや強さには、個人差が非常に大きいです。同じ人でも、体調や精神状態、その月のホルモンバランスによって、変化の程度や現れる時期は変動することがあります。自分の体のリズムを知るために、基礎体温をつけたり、生理周期アプリで症状を記録したりすることが役立ちます。
生理前 性欲と体温の関係は?
女性の基礎体温は、生理周期によって変動します。排卵前は比較的体温が低い「低温期」で、排卵後から次の生理までは体温が高い「高温期」となります。この高温期は、黄体期とほぼ一致し、プロゲステロンが多く分泌されている時期です。
性欲が一般的に高まるとされる排卵期は、低温期の終わりから高温期への移行期にあたります。この時期はエストロゲンが多く分泌されており、体温の上昇が始まる頃です。
生理前の黄体期は高温期にあたります。プロゲステロンの影響で体温が高い状態が続きます。前述のように、黄体期はプロゲステロンの作用により性欲が低下しやすい時期です。したがって、体温が高温期である時期は、性欲が低下傾向にあると考えられます。
ただし、体温の上昇が直接的に性欲を低下させるわけではありません。高温期であることは、プロゲステロンが多く分泌されていることの指標であり、性欲低下はプロゲステロンやその他の複合的な要因によって引き起こされると考えられます。
体温の変化と性欲の変化を合わせて記録することで、ご自身の体のリズムや傾向をより深く理解する手がかりとなるでしょう。
排卵後 性欲はどう変化する?
排卵期は、一般的に女性の性欲が最も高まる時期とされています。これは、妊娠の可能性が最も高まる時期であり、エストロゲン分泌量がピークに達することで、生殖行動を促す体の自然なメカニズムと考えられています。排卵期には、心身ともに活発になり、性的魅力が高まると感じやすくなる人もいます。
排卵が終わると、生理周期は黄体期に入ります。黄体期には、プロゲゲステロンの分泌量が増加し始め、エストロゲンは比較的低めの状態が続きます。このプロゲステロンの増加に伴い、多くの女性で性欲は徐々に低下していく傾向が見られます。プロゲステロンの鎮静作用や、PMSに伴う不快な症状が現れ始めることが、性欲低下の主な理由と考えられます。
しかし、一部の女性では、黄体期、特に生理直前になってから性欲が高まる「PMSG」の現象が見られます。これは、ホルモンバランスの複雑な変動による個人差であると考えられています。
まとめると、排卵期に性欲がピークに達した後、一般的には黄体期に入ると性欲は低下傾向になりますが、個人によっては黄体期後半に性欲が高まるケースも見られます。ご自身の生理周期における性欲の変化パターンを把握することが重要です。
まとめ:生理前 性欲の変化を理解し適切に対処
生理前の性欲の変化は、多くの女性が経験する自然な現象であり、主に生理周期に伴うホルモンバランスの変動が原因となって引き起こされます。特に、黄体期に多く分泌されるプロゲステロンの影響や、PMS(月経前症候群)に伴う精神的・身体的な不調が、性欲の変化に大きく関与しています。性欲が強くなるケースもあれば、弱くなるケースもあり、その現れ方や程度には大きな個人差があります。
こうした性欲の変化によって困りごとが生じる場合、ご自身の体の状態を理解し、適切に対処することが大切です。性欲が強い場合は、性行為やセルフプレジャー、あるいは運動や趣味など他の方法でエネルギーを健康的に解消することを考えましょう。性欲が弱い場合は、無理に性的な活動をせず、心身のリラックスや休息を優先することが重要です。
パートナーがいる場合は、性欲の変化についてオープンに話し合い、お互いの気持ちや体調を尊重し合うことが健全な関係を築く上で不可欠です。性欲の変化は、パートナーに対する気持ちとは別の、自身の体の自然なリズムであることを伝え、理解を求めましょう。性行為以外のスキンシップや愛情表現も大切です。
もし、性欲の変化があまりにも著しく、日常生活に大きな影響を与えたり、他のPMS症状が重かったりする場合には、一人で抱え込まず、婦人科などの専門家である医師に相談することを強くお勧めします。医師は、正確な診断に基づき、適切なアドバイスや治療法を提案してくれます。
生理前の性欲変化は、女性の体の複雑さと神秘性の一部です。この変化を異常なこととして捉えるのではなく、自身の体のリズムを知る一つのサインとして受け入れることで、より自分らしく、健やかに過ごせるようになるでしょう。ご自身の心と体の声に耳を傾け、適切に対処していくことが、生理前の期間を快適に過ごすための第一歩となります。