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疥癬の治療薬|種類と効果的な治し方【飲み薬・塗り薬】

疥癬は、ヒゼンダニという非常に小さなダニが皮膚に寄生することで起こる感染症です。
激しい痒みを伴い、家族や施設内で集団発生することも少なくありません。
痒みが強いことから、皮膚の病気と思って自己判断で市販の薬を塗っても、なかなか治らず、むしろ症状を悪化させてしまうこともあります。
疥癬をしっかりと治すためには、原因となるヒゼンダニを駆除するための適切な治療薬を使用することが不可欠です。
この記事では、疥癬の治療に使われる主な薬の種類や効果、治療期間、そして完治までのステップについて、皮膚科での標準的な治療法を中心に詳しく解説します。
正しい知識を持って、早期に皮膚科を受診し、適切な治療を開始することが何よりも重要です。

疥癬の原因(ヒゼンダニ)

疥癬の原因は、ヒトヒゼンダニと呼ばれるダニです。
このダニは人の皮膚にしか寄生せず、ペットなどにつくダニとは種類が異なります。
メスのヒゼンダニは皮膚の角質層にトンネルを掘って中に潜り込み、1日に1~2個の卵を産みつけます。
この卵が孵化して幼虫になり、成長して成虫となり、再び皮膚の中で繁殖を繰り返します。
痒みなどの症状は、このダニの糞や死骸に対するアレルギー反応によって引き起こされると考えられています。

疥癬の主な症状と初期症状

疥癬の最も特徴的な症状は、夜間に強くなる激しい痒みです。
これは、ダニが夜間に活発に活動し、皮膚内で移動したり産卵したりするためと考えられています。

初期症状としては、虫刺されに似た小さな赤いポツポツ(紅斑性丘疹)が現れることが多いです。
特に、手首の内側、指の間、肘、脇の下、お腹、おへその周り、太ももの内側、外陰部、お尻など、皮膚の柔らかい部分によく見られます。
顔や頭には通常は寄生しませんが、乳幼児や高齢者、免疫力の低下した方では全身に症状が広がることもあります。

進行すると、メスダニが掘ったトンネルが線状に見える疥癬トンネルと呼ばれる特徴的な病変が現れることがあります。
長さ数ミリから1センチ程度の、少し盛り上がった灰白色の線として観察されます。

また、免疫力が低下している方や高齢者では、ダニの数が爆発的に増殖する角化型疥癬(ノルウェー疥癬)と呼ばれる重症型になることがあります。
この場合、皮膚が厚く硬くなり、鱗屑(フケのようなもの)がたくさん付着した状態になり、痒みが少ないこともあります。
非常に感染力が強く、注意が必要です。

疥癬の感染経路と潜伏期間

疥癬の主な感染経路は、皮膚と皮膚の直接的な接触です。
特に、長い時間(例えば10分以上)肌が触れ合っていると感染しやすいと言われています。
家族内での添い寝、介護、医療従事者と患者間の接触などが挙げられます。
短時間の接触であれば、感染のリスクは低いとされています。

また、ヒゼンダニが付着した寝具や衣類、タオルなどを介して間接的に感染することもありますが、これはダニの数が非常に多い角化型疥癬の場合にリスクが高いとされています。
通常の疥癬では、環境からの感染リスクは比較的低いと考えられています。

感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、感染したダニの数や免疫状態によって異なります。
初めて疥癬に感染した場合、症状が出るまでに約4~6週間かかることが多いです。
この潜伏期間中にも他の人に感染させる可能性があるため、注意が必要です。
以前に疥癬にかかったことがある場合は、免疫ができているため、比較的短い期間(数日~2週間程度)で症状が現れることがあります。

目次

疥癬の標準的な治療法

疥癬の治療は、原因であるヒゼンダニを徹底的に駆除することが目的です。
自己判断で市販薬を使用しても効果がないどころか、診断を遅らせたり、症状を複雑にしたりする可能性があるため、必ず医療機関、特に皮膚科を受診することが重要です。

治療の全体像

疥癬の治療は、主に以下の要素を組み合わせることで行われます。

1. 薬物療法: ヒゼンダニを殺虫する効果のある内服薬(飲み薬)や外用薬(塗り薬)を使用します。
これが治療の中心となります。
2. 生活環境の整備: ダニが付着している可能性のある衣類や寝具などを適切に処理し、環境中のダニを減らします。
3. 感染拡大の防止: 家族や同居者、職場や学校など、接触した可能性のある周囲の人々への感染を防ぐ対策をとります。

これらの治療を医師の指示に従って根気強く行うことが、完治のためには不可欠です。

薬物療法(内服薬と外用薬)が中心

疥癬治療薬には、全身に作用する内服薬と、皮膚に直接塗る外用薬があります。
どちらの薬剤を選択するかは、疥癬の種類(通常疥癬か角化型疥癬か)、患者さんの年齢、基礎疾患、他の服用薬などを考慮して、医師が総合的に判断します。

  • 内服薬: 全身に薬の成分が行き渡るため、全身に寄生しているダニに対して効果を発揮します。
    角化型疥癬や、外用薬を全身に塗ることが難しい場合に選択されることが多いです。
  • 外用薬: 皮膚に直接塗ることで、皮膚の表面や浅い層にいるダニを殺虫します。
    通常疥癬の第一選択薬として広く用いられます。

薬剤によって効果の強さ、使用方法、副作用などが異なるため、医師の指示通りに正しく使用することが非常に重要です。

治療以外の対策

薬物療法と並行して、以下の対策も行うことで治療効果を高め、再感染や周囲への感染を防ぐことができます。

  • 衣類・寝具の洗濯・乾燥: ダニが付着している可能性のある衣類や寝具、タオルなどは、50℃以上の熱水で10分以上洗濯するか、乾燥機で乾燥させるとダニを死滅させることができます。
    毎日交換するのが望ましいです。
  • 掃除: 部屋をこまめに掃除機がけし、落ちている可能性のあるダニを取り除きます。
    特に患者さんが過ごす時間が長い場所は重点的に掃除します。
  • 一時的な隔離: 角化型疥癬のようにダニの数が非常に多く感染力が強い場合は、一時的に個室にするなど、他の人との接触を最小限にする配慮が必要になることがあります。
  • 家族・同居者の同時治療: 家族や同居者など、濃厚接触した可能性がある人も、症状が出ていなくても同時に治療を開始することが推奨される場合があります。
    これは、潜伏期間中の感染者からの再感染を防ぐためです。

これらの対策は、医師の指示に従って、薬剤の使用と並行して行うことが大切です。

疥癬治療に使われる主な薬剤

疥癬治療薬は、ヒゼンダニを殺虫する効果を持つ薬剤です。
日本で主に使われている治療薬には、内服薬のイベルメクチン(ストロメクトール)と、外用薬のフェノトリン(スミスリンローション)、クロタミトン(オイラックス)、ベンジル安息香酸、イオウ製剤などがあります。
近年では、海外で使われていたゼビアックスローションも疥癬治療に用いられることがあります。

内服薬(飲み薬)

疥癬治療で現在日本で承認されている内服薬は、ストロメクトール錠です。

ストロメクトール(イベルメクチン)の効果と服用方法

ストロメクトール錠は、有効成分としてイベルメクチンを含んでいます。
イベルメクチンは、神経や筋肉の働きに関わる特定物質に作用し、ヒゼンダニを麻痺させて死に至らせる効果があります。
特に、皮膚の中に深く潜り込んだダニや、全身に広がったダニに対して有効です。

服用方法は、通常、体重に応じて量が決まり、1回の服用で効果を発揮することが期待されます。
空腹時(食事の約2時間後から食後2時間までの間)に水で服用するのが推奨されています。

体重(kg) 1回の服用量(錠)
15~24 1
25~35 2
36~50 3
51~65 4
66~79 5
80以上 6

※これは一般的な目安であり、必ず医師の指示に従ってください。

通常、1回服用した後、1週間後にもう1回服用することで、最初に服用した時には卵だったものが孵化して幼虫になったものを駆除し、再感染を防ぐ目的で行われます。
合計2回の服用が標準的です。

副作用としては、吐き気、腹痛、下痢、めまい、一過性の痒みや発疹などがあらわれることがありますが、比較的少ないとされています。
特定の疾患がある方や、特定の薬剤を服用している方には使用できない場合があるため、必ず医師に相談が必要です。

外用薬(塗り薬)

疥癬治療にはいくつかの種類の外用薬が用いられます。
全身に塗る必要がある薬剤と、患部にだけ塗る薬剤があります。

スミスリンローション(フェノトリン)の効果と使い方

スミスリンローションは、有効成分としてフェノトリンを含んでいます。
フェノトリンは、ダニの神経系に作用して殺虫効果を発揮する成分です。
疥癬治療の外用薬として、日本で最も広く使われている薬剤の一つです。

使い方は、まず入浴などで体を清潔にした後、首から下の全身に塗布します。
顔や頭には通常は塗りませんが、乳幼児や高齢者、免疫力の低下した方で顔や頭にも症状がある場合は、医師の指示に従って塗ることがあります。
塗布後、通常は12時間後に洗い流す必要があります。
薬剤を洗い流す前に、寝具などに付着するのを防ぐため、汚れても良い寝巻きを着るなどの工夫が必要です。

使用頻度は、通常、週に1回塗布します。
これを数週間(例えば3~4週間)繰り返すことが多いです。
これは、1回の塗布で成虫や幼虫は駆除できますが、卵には効果がないため、卵が孵化するのを待ってから再び殺虫するためです。

副作用としては、塗布部位の刺激感、痒み、発疹などがあらわれることがあります。

クロタミトン軟膏(オイラックス)の効果と使い方

クロタミトン軟膏(商品名:オイラックス軟膏など)は、有効成分としてクロタミトンを含んでいます。
クロタミトンには、痒みを抑える効果と、ダニに対する比較的弱い殺虫効果があります。

疥癬治療においては、主に強い痒みを緩和する目的で使用されることが多いですが、単独で通常疥癬の治療薬として用いられることもあります。
疥癬の診断がつく前に、痒み止めの薬として処方されていることも少なくありません。

使い方は、通常、痒い部位を中心に、1日2~3回塗布します。
全身に塗る場合もあります。
スミスリンローションのような洗い流しの必要はありません。

疥癬に対する殺虫効果はスミスリンローションやストロメクトールと比較すると弱いため、単独での治療効果は限定的である場合があります。
しかし、痒み止めとしては有効であり、他の治療薬と併用されることもあります。

その他の外用薬(ゼビアックスローションなど)

  • ゼビアックスローション: 有効成分はオゼノキサシンで、もともと皮膚の細菌感染症に使われていたニューキノロン系の抗菌薬ですが、疥癬の原因であるヒゼンダニにも殺虫効果があることが分かり、疥癬治療薬としても承認されました。
    1日1回、全身に塗布し、洗い流しは不要という使いやすさが特徴です。
    ただし、他の外用薬と同様に、卵には効果がないため、数日間継続して使用したり、間隔をあけて複数回使用したりすることがあります。
    比較的新しい薬剤です。
  • ベンジル安息香酸: ヨーロッパなどで古くから使われている薬剤です。
    日本ではあまり一般的ではありません。
  • イオウ製剤: 古典的な疥癬治療薬ですが、刺激が強く、匂いもあるため、現在ではあまり使われません。

どの外用薬を使用するかは、患者さんの状態や利便性を考慮して医師が判断します。

市販薬では治せる?注意点

結論から言うと、市販薬で疥癬を完治させることは非常に難しいです。

市販されている痒み止めや虫刺されの薬の中には、疥癬による痒みを一時的に和らげる効果のある成分(クロタミトンなど)が含まれていることがありますが、これらはあくまで対症療法であり、ヒゼンダニを駆除するほどの十分な殺虫効果は期待できません

また、疥癬の確定診断は、顕微鏡でヒゼンダニやその卵、糞などを確認することで行われます。
自己判断で市販薬を使い続けると、適切な診断と治療の開始が遅れてしまい、その間に家族や周囲の人に感染を広げてしまうリスクが高まります。

疥癬が疑われる症状がある場合は、自己判断せず、必ず皮膚科を受診してください。
医師による正確な診断に基づき、効果が証明された医療用医薬品で治療を行うことが、疥癬を確実に治すために最も重要です。

疥癬治療の期間と完治までのステップ

疥癬の治療は、原因であるヒゼンダニが完全にいなくなるまで続ける必要があります。
治療薬の種類や重症度によって期間は異なりますが、一般的に根気が必要な病気です。

標準的な治療期間

通常疥癬の場合、標準的な治療期間は数週間から1ヶ月程度になることが多いです。

  • 内服薬(ストロメクトール)を使用する場合、通常は1回または2回の服用でダニを駆除できることが期待されます。
    しかし、薬剤の効果が出るまでや、皮膚からダニの死骸などが排出されるまでに時間がかかるため、痒みなどの症状がすぐに完全に消えるわけではありません。
  • 外用薬(スミスリンローションなど)を使用する場合、週1回の塗布を3~4週間程度繰り返すのが一般的です。
    これは、1回の塗布では卵が駆除できないため、卵が孵化して幼虫になったところを再び殺虫するためです。

角化型疥癬の場合は、ダニの数が非常に多いため、内服薬と外用薬を併用したり、内服薬を複数回使用したりするなど、より集中的かつ長期間の治療が必要になることが多く、数ヶ月かかることもあります。

完治の判断基準

疥癬が完治したと判断する基準は、主に以下の点から総合的に医師が判断します。

1. 新しい病変(丘疹や疥癬トンネル)が出現しなくなる: 治療によりダニが死滅すれば、新たな病変はできなくなります。
2. 痒みが徐々に軽減していく: ダニやその産物に対するアレルギー反応が収まるにつれて、痒みも治まっていきます。
ただし、後述の「疥癬後瘙痒」により痒みが続く場合もあります。
3. 顕微鏡検査でヒゼンダニや卵が確認されなくなる: 病変部から皮膚のサンプルを採取し、顕微鏡でダニが生きていないか、卵がないかを確認します。
これが最も確実な判断基準となります。

症状が改善しても、自己判断で治療を中断せず、必ず医師の指示に従って治療を続け、医師が完治と判断するまで定期的に受診することが大切です。

治療後の痒み(疥癬後瘙痒)について

疥癬の治療が成功し、原因のヒゼンダニがすべて駆除された後も、しばらく痒みが続くことがあります。
これを疥癬後瘙痒(かいせんごそうよう)と呼びます。

痒みの原因は、皮膚に残ったダニの死骸や糞などに対するアレルギー反応がすぐに収まらないためと考えられています。
疥癬後瘙痒は、通常、治療終了後数週間から1~2ヶ月程度で徐々に改善していきますが、個人差があります。

疥癬後瘙痒に対しては、抗アレルギー薬の内服や、ステロイド軟膏などの痒み止めが処方されることがあります。
この痒みはダニが生きていることによるものではないため、疥癬治療薬を塗り続けても効果はありません。
むしろ皮膚への負担になるだけです。

治療後の痒みが疥癬後瘙痒なのか、それとも治療が不十分でダニが残っているのかを区別するためには、医師による診察と、必要に応じて顕微鏡検査が必要です。
痒みが続く場合も、自己判断せず必ず主治医に相談してください。

再発予防と経過観察の重要性

疥癬は治療後も、家族や同居者からの再感染、あるいは治療が不十分だったことによる再燃の可能性があります。

  • 再感染予防: 家族や同居者に感染者がいないか確認し、必要であれば同時に治療を行うことが重要です。
    また、治療期間中の環境整備(衣類・寝具の洗濯など)を適切に行います。
  • 経過観察: 治療終了後も、一定期間は皮膚の状態や痒みの程度を観察することが大切です。
    定期的に医療機関を受診し、医師に経過を診てもらうことで、万が一再燃や再感染が起きた場合でも早期に発見し、対処することができます。

医師の指示に従った正確な治療と、その後の適切な経過観察が、疥癬の完治と再発防止には不可欠です。

疥癬治療中の生活上の注意点

疥癬の治療をスムーズに進め、家族や周囲の人への感染を広げないためには、薬物療法と並行して日常生活でもいくつかの注意が必要です。

家族・同居者への感染対策

疥癬は皮膚の直接的な接触で感染するため、家族や同居者への感染を防ぐ対策が非常に重要です。

  • 早期の受診と診断: 家族の中に疥癬にかかった人が出たら、他の家族も皮膚の症状がないか注意し、少しでも疑わしい場合はすぐに皮膚科を受診しましょう。
  • 同時治療の検討: 濃厚接触した可能性のある家族や同居者は、症状が出ていなくても医師と相談の上、潜伏期間中の感染を防ぐ目的で同時に治療を開始することが推奨される場合があります。
    特に角化型疥癬の場合は必須です。
  • 接触を避ける: 治療開始から一定期間(医師の指示による)、患者さんとの直接的な皮膚接触(手をつなぐ、添い寝するなど)は避けるようにしましょう。
  • タオルや寝具の共有を避ける: 患者さんが使用したタオル、衣類、寝具などは、洗濯するまで他の人と共有しないようにしましょう。

これらの対策は、患者さんの治療と同時に行うことで、家庭内での感染連鎖を断ち切る効果が期待できます。

衣類・寝具・タオルなどの取り扱い

ヒゼンダニは人の体温がないと長く生きられませんが、それでも患者さんの皮膚から剥がれ落ちたダニが衣類や寝具、タオルなどに付着し、そこから感染する可能性(特に角化型疥癬の場合)はゼロではありません。

  • 洗濯と乾燥: 患者さんが着用した衣類、パジャマ、使用したタオル、枕カバー、シーツなどは、毎日交換し、洗濯しましょう。
    ヒゼンダニは熱に弱いため、50℃以上の熱水で10分以上洗濯するか、家庭用乾燥機で乾燥させることが有効です。
    これが難しい場合は、洗剤で普通に洗濯した後、アイロンをかける、または数日間(一般的に数日〜1週間程度)使用せずに放置するという方法もあります。
  • 頻繁な掃除: 患者さんがよく過ごす部屋(寝室など)は、毎日こまめに掃除機をかけましょう。
    特にベッド周りや床は念入りに行います。
  • すぐ洗えないものの対処: ソファやカーペットなど、すぐに洗濯できないものについては、掃除機をかけるか、ダニ駆除用のスプレーを使用する(ただし効果は限定的かもしれません)、または数日間使用を控えるといった方法を検討します。

これらの環境整備は、特に角化型疥癬の場合に重要ですが、通常の疥癬の場合でも感染拡大予防のために行うことが推奨されます。
ただし、過剰な消毒や、部屋全体をくん煙剤で燻すといった方法は、ヒゼンダニに対しては効果が限定的であり、人体への影響も考慮すると推奨されないことが多いです。
医師や専門家の指示に従った対策を行いましょう。

疥癬に関するよくある質問

疥癬の治療や症状に関して、患者さんからよく聞かれる質問とその回答をまとめました。

オイラックスだけで疥癬は治りますか?何日塗る?

クロタミトン軟膏(オイラックス)は、疥癬による強い痒みを抑える効果はありますが、ヒゼンダニに対する殺虫効果はスミスリンローションやストロメクトールに比べて弱いため、オイラックス単独で疥癬を完治させるのは難しい場合が多いです。
特にダニの数が多い場合や、疥癬トンネルが多数できているような場合は、オイラックスだけでは不十分です。

オイラックスは主に痒み止めとして、あるいは他の疥癬治療薬と併用して使用されます。
使用期間や塗り方については、医師の指示に従ってください。
通常は痒みがある時に1日2~3回塗布しますが、疥癬治療の目的で全身に塗る場合は、塗り方や期間について医師の具体的な指示が必要です。
自己判断でオイラックスだけで治療を続けず、必ず皮膚科で適切な診断を受け、より効果の高い治療薬の処方について相談しましょう。

ストロメクトールはどれくらいで効果が出ますか?

ストロメクトール(イベルメクチン)は、服用後、成分が体内に吸収され、ヒゼンダニに作用します。
ダニは服用後比較的早い段階で死滅すると考えられていますが、痒みなどの症状がすぐに完全に消えるわけではありません

服用後数日間は、死滅したダニやその産物に対するアレルギー反応により、むしろ一時的に痒みが強くなることもあります。
これは薬が効いているサインであることも多く、心配しすぎる必要はありません。
多くの場合、服用後1週間から2週間程度かけて徐々に痒みが軽減していくのを実感できるようになります。

しかし、完全に症状がなくなるまでには、さらに時間がかかることがあります。
これは、皮膚に残ったダニの死骸がなくなるのに時間がかかったり、治療後の痒み(疥癬後瘙痒)が生じたりするためです。
ストロメクトールを服用した後も、自己判断で治療を終了せず、必ず医師の指示通りに決められた回数(通常2回)服用し、その後の経過観察をしっかり受けてください。

疥癬は市販薬で治療できますか?

前述の通り、市販薬で疥癬を完治させることは、ほぼ不可能です。
市販の塗り薬は、主にアレルギー反応による痒みを抑えるためのものが多く、ヒゼンダニに対する十分な殺虫効果は期待できません。
また、疥癬の診断自体が難しく、他の皮膚疾患と間違えやすいことも、自己判断での市販薬使用を避けるべき理由です。

疥癬が疑われる場合は、必ず皮膚科医の診断を受け、適切な医療用医薬品(ストロメクトール、スミスリンローション、ゼビアックスローションなど)による治療を行ってください。
早期に診断・治療を開始することが、完治への近道であり、周囲への感染拡大を防ぐためにも重要です。

疥癬は完治までどのくらいかかりますか?

通常疥癬の場合、適切な治療を行えば、数週間から1ヶ月程度で完治に至ることが多いです。
ただし、これはダニが完全に駆除されるまでの期間であり、痒みなどの症状が完全になくなるまでには、さらに時間がかかることがあります。

角化型疥癬のような重症の場合は、ダニの数が非常に多いため、治療に数ヶ月かかることも珍しくありません。

治療期間は、患者さんの免疫状態、重症度、治療薬の種類、家族や環境への対策が適切に行われているかなど、様々な要因によって変動します。
医師の指示に従って治療を続け、根気強く治療に取り組むことが大切です。
症状がなくなったからといって自己判断で治療を中断すると、再燃してしまう可能性があるため注意が必要です。

疥癬後瘙痒とは何ですか?

疥癬後瘙痒(かいせんごそうよう)とは、疥癬の治療によって原因であるヒゼンダニが完全に駆除された後も、痒みが続く状態のことです。
ダニはもう生きていませんが、皮膚内に残ったダニの死骸や糞などのアレルギーを引き起こす物質に対して、体の免疫反応がしばらく過敏に反応することで起こると考えられています。

疥癬後瘙痒による痒みは、治療中の激しい痒みと似ているため、ダニが生きているのではないかと不安になる方も多いですが、これは治療が成功した後に起こりうる現象です。
通常、治療終了後数週間から1~2ヶ月程度で自然に軽快していくことが多いですが、個人差があります。

この痒みに対しては、疥癬治療薬を塗り続けても効果はありません。
掻き壊しによる二次感染を防ぐためにも、抗アレルギー薬の内服やステロイド軟膏など、痒みを抑えるための対症療法が行われます。
痒みが続く場合は、本当にダニが駆除されているのか、それとも疥癬後瘙痒なのかを医師に診察してもらい、適切なケアを受けることが大切です。

疥癬の治療は皮膚科医へ相談を

疥癬は、原因を特定し、適切な治療薬でダニを駆除しなければ治らない病気です。
痒みが強いからといって自己判断で市販薬を使い続けたり、他の皮膚疾患と間違えたりすると、治療が遅れて症状が悪化したり、周囲の人に感染を広げてしまったりするリスクが高まります。

早期診断と適切な治療の重要性

疥癬の治療において最も重要なのは、早期に正確な診断を受け、適切な治療を迅速に開始することです。
特に角化型疥癬は感染力が非常に強いため、早期発見と隔離、そして集中的な治療が必要です。

皮膚科医は、患者さんの症状や皮疹の特徴を詳しく診察し、必要であれば病変部から皮膚の一部を採取して顕微鏡でヒゼンダニや卵、糞がないかを確認することで、疥癬の診断を確定します。
確定診断がついたら、患者さんの状態や重症度、年齢、合併症などを考慮して、最も効果的で安全な治療薬(内服薬か外用薬か、どの種類の薬剤か)を選択し、使用方法や期間について具体的に指示します。

また、家族や周囲への感染を防ぐための生活上の注意点についてもアドバイスを受けることができます。

医療機関の選び方

疥癬の診断・治療は皮膚科医の専門分野です。
疥癬が疑われる症状がある場合は、お近くの皮膚科クリニックや病院を受診しましょう。

受診時には、いつ頃から痒みが出始めたか、痒みの程度(特に夜間の痒み)、体のどの部分が痒いか、家族や同居者に同じような症状の人がいないか、最近、病院や高齢者施設などに出入りしたか、などを医師に詳しく伝えるようにしてください。
これらの情報が診断の助けとなります。

インターネットなどで皮膚科を探す際には、疥癬の診療を行っているか、顕微鏡検査に対応しているかなどを事前に確認しておくと安心です。
また、信頼できる医師に相談し、納得いくまで説明を受けることが、治療を成功させる上で非常に大切です。

疥癬は治る病気です。
しかし、治すためには専門的な知識と適切な治療が必要です。
痒みなどの気になる症状がある場合は、一人で悩まず、必ず皮膚科医の診察を受けるようにしましょう。

【まとめ】疥癬の治療は皮膚科医と二人三脚で

疥癬は、ヒゼンダニというダニが皮膚に寄生することで起こる感染症です。
特に夜間に強くなる激しい痒みが特徴ですが、症状は他の皮膚疾患と紛らわしいこともあります。
自己判断で市販薬を使用しても効果は期待できず、かえって症状を悪化させたり、診断を遅らせたりする可能性があります。

疥癬を確実に治すためには、皮膚科を受診し、医師による正確な診断に基づいた適切な薬物療法を行うことが不可欠です。
治療薬には、内服薬のストロメクトールや、外用薬のスミスリンローション、ゼビアックスローションなどがあり、患者さんの状態に合わせて使い分けられます。
治療期間は通常数週間から1ヶ月程度ですが、重症度によってはそれ以上かかることもあります。

薬物療法と並行して、衣類や寝具の洗濯・乾燥、こまめな掃除といった環境整備や、家族・同居者への感染対策も非常に重要です。
治療が成功した後も、しばらく痒みが続く「疥癬後瘙痒」が生じることがありますが、これは自然に軽快していくことが多く、適切な対症療法で対応可能です。

疥癬の治療は、医師の指示に従って根気強く続けることが大切です。
症状が改善しても自己判断で治療を中断せず、医師が完治と判断するまでしっかりと経過観察を受けましょう。
もし疥癬が疑われる症状がある場合は、迷わず皮膚科医に相談してください。
早期診断と適切な治療が、ご自身の完治と周囲への感染拡大防止のために何よりも重要です。
皮膚科医と二人三脚で、疥癬をしっかりと克服しましょう。

免責事項:本記事の情報は一般的な知識を提供するものであり、個々の症状に対する診断や治療を保証するものではありません。
必ず専門の医療機関を受診し、医師の診断と指導に従ってください。

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