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初めての月経カップ|使い方からメリットまで完全ガイド

生理期間、もっと快適に過ごしたいと思ったことはありませんか?
ナプキンによるムレやかぶれ、交換の頻度、タンポンのゴミ問題、そしてそれに伴う環境への影響…。これまでの生理用品に、何らかの不満や疑問を感じたことがある方もいるかもしれません。

そんな中、近年注目を集めているのが月経カップです。繰り返し使えて環境に優しく、最長12時間の装着が可能で、経血が漏れにくいなど、多くのメリットがあると言われています。

しかし、腟内に挿入して使うため、「怖そう」「痛そう」「使い方が難しそう」といった不安を感じる方もいるでしょう。

この記事では、月経カップの基本的な仕組みから、正しい使い方、知っておきたいメリット・デメリット、そして最も気になる安全性について、詳しく解説します。あなたにとって月経カップが最適な選択肢かどうかを判断するための情報を網羅していますので、ぜひ参考にしてください。

月経カップの仕組みと素材

月経カップは、柔軟性のある医療用シリコン、熱可塑性エラストマー(TPE)、またはラバーなどで作られたカップ状の生理用品です。これを腟内に挿入し、中で開かせて腟壁に密着させることで、経血を「吸収する」のではなく「受け止めて溜める」という仕組みです。

カップにはステム(取っ手)やリングなどが付いており、取り出す際にそれらを引っ張ったり指で押したりして位置を調整します。一度挿入すれば、最長で約12時間(製品や経血量による)装着していることが可能です。カップが満杯になったら取り出し、溜まった経血をトイレに流し、カップを洗浄して再び挿入して使用します。

素材はアレルギー反応を起こしにくいものが使われており、適切にお手入れすれば長期間(数年〜10年程度)繰り返し使用できるため、非常に経済的です。

タンポンやナプキンとの違い

月経カップ、タンポン、ナプキンは、いずれも生理期間中に経血を処理するための生理用品ですが、その仕組みや特徴は大きく異なります。

項目 月経カップ タンポン ナプキン
仕組み 経血を「溜める」 経血を「吸収する」 経血を「吸収する」
装着場所 腟内(子宮口より下) 腟内 下着に装着(外側)
交換頻度 最長12時間(経血量による) 4〜8時間(経血量による) 2〜4時間(経血量による)
繰り返し使用 可能(数年〜10年) 不可(使い捨て) 不可(使い捨て)
コスト 初期費用はかかるが長期的には安い 継続的に費用がかかる 継続的に費用がかかる
ゴミ 少ない 多い 最も多い
ニオイ 気になりにくい(外気に触れにくい) 気になりにくい(腟内装着) 気になりやすい(外気に触れる)
ムレ/かぶれ なし なし 起こりやすい
持ち運び コンパクト(使用期間外) 使用期間中はかさばる かさばる
衛生管理 使用期間中の洗浄・生理期間外の消毒が必要 交換時に手を清潔に 交換時に手を清潔に

大きな違いは、「溜める」か「吸収する」かという点です。タンポンやナプキンは経血を吸収しますが、月経カップはカップ内に溜めます。これにより、経血が外気に触れる機会が減り、酸化による不快なニオイが発生しにくくなります。

また、繰り返し使える月経カップは、使い捨ての生理用品に比べてゴミを大幅に削減でき、長期的に見れば経済的な負担も軽くなります。

目次

月経カップのメリット【経済性・環境・快適さ】

月経カップが多くの人に選ばれるのには、魅力的なメリットがたくさんあります。特に、経済性、環境負荷の軽減、そして生理期間中の快適さにおいて、そのメリットを強く感じることができます。

繰り返し使えて経済的

月経カップの最大のメリットの一つが、その経済性の高さです。初期費用として製品代が数千円かかりますが、適切にお手入れして保管すれば、製品によっては5年から10年、あるいはそれ以上繰り返し使用することが可能です。

例えば、1回の生理でナプキンやタンポンに数百円から千円程度かかると仮定すると、1年間で数千円から1万円以上の費用がかかります。これが10年間となると数万円にもなります。

一方、月経カップは初期費用が数千円で済むため、早い段階で元が取れ、その後は生理用品にかかる費用をほぼゼロにすることができます。これは、長期的に見れば家計にとって大きな節約になります。

ゴミを減らして環境に優しい

近年、プラスチックごみによる海洋汚染などが深刻な問題となっています。生理用品もまた、使い捨てであるため、大量のゴミを生み出しています。ナプキンやタンポンはプラスチックや化学繊維が多く含まれており、分解されるまでに長い時間がかかります。

月経カップは繰り返し使用できるため、使い捨て生理用品を使用した場合に比べて、生理期間中に発生するゴミの量を格段に減らすことができます。これは、環境保護の観点から非常に重要なメリットです。環境への意識が高い人にとって、月経カップは責任ある選択肢となるでしょう。

長時間装着可能で交換回数が減る

月経カップは、製品や個人の経血量にもよりますが、最長で12時間の連続装着が可能です。これは、一般的なナプキンやタンポン(通常4~8時間での交換が推奨される)と比較して非常に長い時間です。

これにより、日中の交換回数を大幅に減らすことができます。特に、仕事中や外出中、旅行中など、頻繁にトイレに行けない状況では、この長時間装着可能というメリットは大きな安心感につながります。夜間も安心して眠ることができます。(ただし、経血量の多い日は早めの交換が必要な場合もあります。)

経血が外気に触れにくくニオイが気にならない

ナプキンを使用している際に気になるのが、経血のニオイです。経血自体はほぼ無臭ですが、空気(酸素)に触れて酸化したり、雑菌が繁殖したりすることで不快なニオイが発生します。

月経カップは腟内に挿入され、腟壁に密着して経血をカップ内に密閉するため、経血が外気に触れる機会がほとんどありません。このため、酸化や雑菌の繁殖が抑えられ、ニオイが大幅に軽減されます。ニオイが気になるという方にとって、月経カップは生理期間をより快適に過ごすための解決策となり得ます。

月経カップのデメリットと注意点【慣れ・衛生・リスク】

月経カップには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。これらを事前に理解しておくことで、月経カップの導入をスムーズに進めることができます。

装着・取り出しには慣れが必要

月経カップを初めて使う際に、最も多くの人が感じるハードルが「装着と取り出しの難しさ」です。ナプキンやタンポンと異なり、指で折りたたんで腟内に挿入し、中で開かせるという動作には練習が必要です。また、取り出す際も、腟内の奥の方にあるカップを指で探り、ステムを掴んで引き出すという動作が求められます。

最初は上手く挿入できなかったり、カップが中で開かなかったり、取り出す際に手間取ったりして、ストレスを感じるかもしれません。しかし、いくつかの折り方を試したり、リラックスして行うことで、徐々に慣れてスムーズにできるようになります。練習期間として、経血量が少ない日や自宅で過ごす日に試してみるのがおすすめです。

洗浄・消毒の手間がかかる

月経カップは繰り返し使うために、使用後には洗浄が必要です。カップを取り出すたびに、溜まった経血を捨てた後、流水や専用の洗浄剤で洗い、再び挿入します。生理期間が終了したら、次の生理まで清潔に保管するために、煮沸消毒や消毒液でのつけ置き消毒を行う必要があります。

この洗浄・消毒の手間は、使い捨ての生理用品にはない工程です。特に、外出先や職場で交換が必要になった場合、個室の洗面台がないトイレなどでは、カップを洗うのが難しいと感じることがあります。携帯用のウェットティッシュや洗浄スプレーなどを用意しておく、または予備の月経カップを持ち歩くといった対策を考える必要があります。

公共トイレでの処理が難しい場合がある

前述の洗浄の手間に関連して、公共トイレでの処理は特に注意が必要です。個室内に洗面台があれば比較的スムーズに行えますが、洗面台が個室外にある場合、経血の入ったカップを持って個室を出る必要があります。これは、抵抗を感じる人もいるかもしれません。

対策としては、

  • 経血量が少ない時間帯や、個室に洗面台がある場所を選ぶ
  • 携帯用のウェットティッシュや洗浄スプレーで応急処置をし、帰宅後にしっかり洗う
  • 清潔なペットボトルなどに水を入れて持ち運び、個室で洗う
  • 予備の月経カップを持ち歩き、使用済みのものは密閉できる袋に入れて持ち帰る

などが考えられます。自分のライフスタイルに合わせて、どの程度の手間を受け入れられるかを考慮する必要があります。

体質や使い方によっては漏れることがある

月経カップは正しく装着できていれば、基本的に経血が漏れることは少ないとされています。しかし、体質(腟の形や傾きなど)、製品のサイズや硬さ、そして最も多い原因は正しく装着できていないことによる漏れです。

  • カップが腟壁にしっかり密着せず、隙間ができている
  • サイズが合っていない(小さすぎる、大きすぎる)
  • 経血量がカップの容量を超えている
  • カップが腟内で完全に開いていない

といった場合に漏れることがあります。漏れを経験すると、「自分には合わないのかも」と感じてしまうかもしれませんが、多くの場合、装着方法やサイズの調整で改善されます。初めて使う際は、併せておりものシートや布ナプキンなどを併用すると安心です。

排便時(うんちの時)の影響はある?

月経カップを装着中に排便をする際、いきむことで月経カップの位置が少しずれたり、押し出されそうになったりすることがあります。これは、排便時に骨盤底筋群やその周辺の筋肉が使われるためです。

完全に脱落してしまうことは稀ですが、位置がずれることでその後の漏れの原因となる可能性はあります。排便後には、月経カップが正しい位置に戻っているか、必要であれば一度取り出して洗浄し、再び挿入し直すことをおすすめします。慣れると、排便時のいきみ方と月経カップの位置を調整する感覚が掴めてくるでしょう。

月経カップはやめたほうがいい?その理由と対策

月経カップは万人に合うものではありません。以下のような理由で「やめたほうがいい」と感じる人もいます。

  • 装着・取り出しに強い抵抗感がある、慣れるのが難しい
  • 洗浄・消毒の手間が負担に感じる
  • 公共の場所での交換に困る
  • 何度試しても漏れてしまう、違和感や痛みがある
  • TSSのリスクが怖いと感じる

これらのデメリットがメリットを上回ると感じた場合は、無理に月経カップを使用し続ける必要はありません。代替策として、繰り返し使える布ナプキンや、吸水ショーツなど、他のサステナブルな生理用品も選択肢にあります。

ただし、多くのデメリットは「慣れ」や「正しい使い方」「製品選び」で解決できる場合が多いです。もし、いくつかのデメリットを感じて「やめたい」と思ったとしても、すぐに諦めず、以下の対策を試してみる価値はあります。

  • 別の折り方を試す
  • より柔らかい/硬い素材のカップ、別の形状のカップを試す
  • サイズを変更してみる
  • 装着・取り出しの練習を重ねる
  • 外出時の交換方法を工夫する

どうしても合わない場合は、無理せず他の方法を検討しましょう。ご自身の体と向き合い、最も快適で安全な方法を選ぶことが大切です。

月経カップの安全性:トキシックショック症候群(TSS)について

月経カップの使用を検討する上で、多くの人が最も懸念するのがトキシックショック症候群(TSS)のリスクです。ここでは、TSSについて正しく理解し、月経カップ使用における安全性について解説します。

TSSとは?月経カップとの関連性

トキシックショック症候群(TSS)とは、黄色ブドウ球菌などが産生する毒素によって引き起こされる、稀ではあるものの重篤な疾患です。主な症状として、突然の高熱、発疹(日焼けのような紅斑)、血圧低下、めまい、吐き気、下痢、意識障害などがあります。進行が早く、多臓器不全に至る可能性もあるため、早期の発見と治療が必要です。

TSSは、傷口や手術後など、様々な状況で発生する可能性がありますが、生理中の女性がタンポンを長時間使用した場合に発生するリスクが指摘されています。これは、タンポンが経血を吸収することで腟内の環境が変化し、黄色ブドウ球菌が毒素を産生しやすい状況を作り出すためと考えられています。

月経カップは経血を「吸収」せず「溜める」ため、タンポンと比較してTSSのリスクは低いと考えられています。しかし、完全にリスクがないわけではありません。月経カップ使用中でも、不適切な使用(長時間の装着、不十分な洗浄など)により、腟内の細菌バランスが崩れたり、傷ができたりした場合にTSSを発症する可能性はゼロではないため、注意が必要です。

月経カップによるTSSを予防するための注意点

月経カップ使用によるTSSのリスクを最小限に抑えるためには、以下の点に注意して正しく使用することが非常に重要です。

  1. 使用前と使用中は手を清潔に: 月経カップを挿入・取り出す前には、必ず石鹸でよく手を洗いましょう。
  2. 製品の使用説明書をよく読む: 製品によって推奨される交換時間や手入れ方法が異なる場合があります。必ず取扱説明書に従ってください。
  3. 最長装着時間を守る: 一般的に最長12時間とされていますが、製品の指示に従い、それ以上の長時間装着は避けましょう。経血量の多い日は、推奨時間よりも早めに交換することが重要です。
  4. 適切な洗浄・消毒: 生理期間中は、取り出すたびに流水と必要に応じて専用の洗浄剤でしっかり洗いましょう。生理期間終了後には、必ず煮沸消毒(数分間)または製品が推奨する消毒方法で完全に消毒してから保管しましょう。
  5. 傷がある場合は使用を控える: 腟内や外陰部に傷がある場合は、細菌感染のリスクが高まるため、月経カップの使用は控えましょう。
  6. 異変を感じたらすぐに使用をやめる: 高熱、発疹、めまい、吐き気など、TSSが疑われる症状が現れたら、すぐに月経カップを取り出し、医療機関を受診してください。受診時には、月経カップを使用していることを医師に伝えましょう。
  7. 過去にTSSを発症したことがある人は使用しない: TSSを一度発症した人は、再発リスクが高いため、月経カップを含む腟内挿入型の生理用品の使用は避けるべきです。

これらの対策をしっかり行うことで、月経カップを安全に使うことができます。

月経カップ使用と「死亡」リスクに関する正しい知識

TSSは稀に重症化し、死亡に至るケースもあります。これは、月経カップに限らず、タンポンなど他の腟内挿入型生理用品や、TSSを発症しうる他の状況においても起こりうるリスクです。

月経カップの使用が直接的に「死亡」のリスクを高めるわけではありません。リスクがあるのは、月経カップの使用をきっかけに稀に発症する可能性のある「TSSが重症化した場合」です。

重要なのは、TSSのリスクを過度に恐れるのではなく、TSSの症状や予防策について正しい知識を持ち、万が一症状が現れた場合に迅速に対応することです。月経カップを正しく使用し、体の変化に注意を払っていれば、過剰に心配する必要はありません。疑問や不安があれば、医療専門家に相談することをおすすめします。

月経カップの正しい使い方ステップガイド

月経カップのメリットを最大限に活かすためには、正しい使い方を習得することが不可欠です。初めての方でも安心して使えるように、挿入から取り出し、洗浄・消毒までのステップを詳しく解説します。

月経カップの挿入方法:折り方とコツ

月経カップを挿入する前には、必ず石鹸で手を清潔に洗いましょう。また、カップ自体も流水で軽く洗っておきます(生理期間中)。

挿入には、いくつかの「折り方」があります。初めての方は、小さく折りたためるものから試してみるのがおすすめです。代表的な折り方をいくつか紹介します。

  • C折り(U折り): カップの縁を片側からもう片側へ折り、アルファベットの「C」または「U」のような形にする基本的な折り方。比較的簡単ですが、少し幅が広くなります。
  • パンチダウン折り: カップの縁の一点を内側(カップの底の方)に押し込み、尖らせるように折りたたむ方法。挿入する先端が細くなるため、初めての方や挿入しにくいと感じる方におすすめです。
  • 7(セブン)折り: カップの縁を押し込み、縁全体を7の字のようになるように折りたたむ方法。パンチダウン折りに似ていますが、挿入する先端の形が少し異なります。

挿入のコツ:

  1. リラックスする: 体に力が入っていると、腟が硬くなり挿入しにくくなります。深呼吸するなどしてリラックスしましょう。
  2. 体勢を選ぶ: どんな体勢がやりやすいかは個人差があります。しゃがむ、椅子に座って足を広げる、片足を上げる、仰向けになるなど、色々な体勢を試してみてください。
  3. 適切な角度で挿入: 腟は真上ではなく、少し斜め後ろ(尾てい骨の方向)に向かっています。その角度を意識して挿入するとスムーズです。
  4. 奥までしっかり入れる: 指で押し込み、カップ全体が腟内に入るようにします。ステムが少し出るか、指で軽く触れる程度が目安です。カップの底を指で触って、凹みがなく丸くなっている(完全に開いている)か確認しましょう。開いていない場合は、カップの底を軽く押したり、カップを少し回したり、軽く咳をしたりすると開くことがあります。
  5. 密着を確認: カップが開いたら、ステムをそっと引っ張ってみます。抵抗を感じれば、腟壁に密着してバキューム状態ができているサインです。

月経カップの取り出し方:痛みなく外すには

取り出す前にも、必ず手を清潔に洗いましょう。初めての取り出しは少し緊張するかもしれませんが、落ち着いて行えば大丈夫です。

  1. リラックスする: 挿入時と同様、リラックスが大切です。いきむと少しカップが下がり、取り出しやすくなることがあります。
  2. ステム(取っ手)を探す: 腟内に指を入れ、ステムを探します。ステムがないタイプの製品や、カップが奥に入り込んでいる場合は、カップの底の部分を探します。
  3. カップの底を凹ませて密閉を解除: ここが最も重要なポイントです。ステムを力任せに引っ張ると、カップが腟壁に密着したままになり、痛みを感じたり、取り出しにくかったりします。必ず、指をさらに腟内に入れてカップの底を掴み、軽く凹ませるか、縁を指で押して腟壁との密着(バキューム状態)を解除してください。プシュッというような音がしたり、空気が入る感覚があればOKです。
  4. ゆっくりと引き出す: 密着が解除されたら、カップをゆっくりと左右に軽く揺らしながら、または少しひねりながら引き出します。カップの縁が大きいので、最後の方は少し痛いと感じるかもしれませんが、焦らずゆっくりと進めましょう。
  5. 経血を捨てる: 取り出したら、カップに溜まった経血をトイレに流します。
  6. 洗浄する: 次の使用のために、カップを洗浄します。

月経カップの洗浄・消毒方法

月経カップを清潔に保つことは、安全に使用するために非常に重要です。

  • 生理期間中の洗浄: カップを取り出して経血を捨てた後、流水でカップを洗い流します。折り目やステムの付け根など、経血が溜まりやすい部分も丁寧に洗いましょう。外出先などで洗面台がない場合は、携帯用のウェットティッシュで拭く、またはペットボトルの水で洗い流すなどの方法で応急処置をし、帰宅後に改めてしっかり洗います。気になる場合は、月経カップ専用の洗浄剤を使用することもできます。ただし、製品によっては使用できない洗浄剤もあるため、説明書を確認しましょう。
  • 生理期間終了後の消毒: 次の生理まで清潔に保管するために、必ず消毒を行います。最も一般的な方法は煮沸消毒です。鍋に水を張り、カップを完全に沈めて、製品の説明書に記載されている時間(通常5〜10分程度)煮沸します。鍋底にカップが触れると溶けることがあるため、泡立て器などに入れて煮沸すると良いでしょう。煮沸後は火傷に注意して取り出し、清潔な布やキッチンペーパーの上で自然乾燥させます。煮沸以外では、月経カップ専用の消毒液や洗浄タブレット、電子レンジ sterilizer を使用する方法もあります。こちらも製品の説明書に従ってください。
  • 保管: 完全に乾燥させた後、通気性の良い専用の袋やケースに入れて保管します。密閉容器に入れると湿気がこもり、カビや細菌の原因となる可能性があるため避けましょう。

月経カップの交換頻度と使用可能時間(何時間もつ?)

月経カップの交換頻度は、個人の経血量や製品の容量によって異なりますが、一般的には最長12時間まで装着可能とされています。

これはあくまで「最長」の時間であり、経血量の多い日や量の多い人では、12時間持たずに満杯になってしまう可能性があります。カップが満杯になると、漏れる原因となります。そのため、特に使い始めの頃や経血量の多い日は、推奨される最長時間よりも短い間隔(例:初めての日は数時間おきにチェックするなど)で取り出して経血量を確認し、自分にとって最適な交換頻度を見つけることが大切です。

慣れてくると、経血量から交換の目安時間を予測できるようになります。夜間も12時間以内の使用であれば、安心して就寝中に使用することができます。ただし、旅行などで長時間交換できない状況が続く場合は、予備の月経カップを持ち歩いたり、他の生理用品と併用したりするなどの対策を考えましょう。

自分に合った月経カップの選び方

月経カップには様々な種類があり、どれを選べば良いか迷うかもしれません。自分に合った月経カップを選ぶことが、快適に使用するための鍵となります。

月経カップのサイズ選び【経験別・経血量別】

月経カップのサイズ選びは非常に重要です。サイズが合わないと、漏れや違和感、痛みなどの原因になります。一般的に、月経カップのサイズは以下の要素を基準に推奨されています。

  • 出産経験: 経腟分娩の経験があるかどうかが、サイズ選びの大きな目安となります。経腟分娩を経験すると、骨盤底筋群が緩み、腟のサイズや形状が変化することが多いため、一般的に出産経験のある人には大きめのサイズが推奨されます。
  • 年齢: 年齢とともに骨盤底筋群が自然と緩む傾向があるため、30歳以上や出産経験のない人でも、年齢を考慮して大きめのサイズが推奨される場合があります。
  • 経血量: 経血量が多い人は、容量が大きい(=一般的にサイズも大きい)カップを選ぶことで、交換頻度を減らすことができます。

多くのメーカーは、製品に「サイズ1(またはS, スモール)」と「サイズ2(またはL, ラージ)」といったように複数のサイズを用意しており、それぞれに推奨基準(例:「出産経験がない方/ある方」、「30歳未満/30歳以上」)を設けています。

サイズの目安 一般的な推奨
小さめサイズ (S) 出産経験がない方、若年層、経血量が少ない方
大きめサイズ (L) 経腟分娩の経験がある方、30歳以上、経血量が多い方

ただし、これはあくまで一般的な目安です。個人の体の特徴(子宮口の高さ、腟の長さや形状、骨盤底筋群の強さなど)によって合うサイズは異なります。迷う場合は、メーカーのウェブサイトで詳細なサイズガイドを確認したり、カスタマーサポートに相談したりするのも良いでしょう。

素材と硬さによる違い

月経カップの素材は主に医療用シリコン、TPE、ラバーなどがありますが、医療用シリコンが最も一般的でアレルギーを起こしにくいとされています。

素材だけでなく、カップの「硬さ」も使用感に大きく影響します。

  • 柔らかい素材/硬さ: 挿入時に折りたたみやすく、腟内で感じる違和感が少ない傾向があります。初めての方や、膀胱や腸への圧迫感(違和感や頻尿)を感じやすい人に向いています。ただし、腟内で開く力が弱いため、しっかり開いているか確認が必要です。また、骨盤底筋が強い人(日頃からトレーニングしている人など)は、カップが圧迫されて変形し、漏れの原因になることもあります。
  • 硬い素材/硬さ: 腟内でしっかり開く力が強く、腟壁に密着しやすいため、漏れにくい傾向があります。アクティブな人や、骨盤底筋がしっかりしている人に向いています。ただし、挿入時に折りたたむのが少し難しく、慣れるまで違和感や膀胱・腸への圧迫感を感じやすい場合があります。

初めての方は、比較的柔らかめの素材のカップから試してみるのが無難かもしれません。いくつかの製品を試してみて、自分に合う硬さを見つけるのも一つの方法です。

初心者におすすめの月経カップの種類

初心者にとって、挿入や取り出しのしやすさは重要なポイントです。以下のような特徴を持つ月経カップが初心者にはおすすめです。

  • 比較的柔らかい素材: 挿入時の折りたたみや、腟内での違和感を軽減できます。
  • パンチダウン折りなどがしやすい形状: 先端を細くしやすい形状だと、挿入のハードルが下がります。
  • ステム(取っ手)が掴みやすい: 取り出す際にステムを手がかりにするため、掴みやすい形状(リング型、平らなものなど)や長さのステムがあると便利です。ただし、長すぎると下着に擦れて不快な場合があるため、好みに合わせてカットできるタイプもあります。
  • 空気穴が小さめ/少なめ: 空気穴が大きいと洗浄が少し手間になることがあります。
  • リングプルタイプ: ステムがリング状になっており、指をかけて取り出しやすい構造になっている製品もあります。

多くのメーカーから様々なデザインの月経カップが販売されています。製品レビューなどを参考にしながら、気になるものをいくつか比較検討してみましょう。初めての月経カップとして、試しやすい価格帯の製品から始めてみるのも良いでしょう。

月経カップの値段相場

月経カップの値段は、メーカー、素材、デザイン、販売国などによって幅がありますが、一般的な相場は3,000円から6,000円程度です。

中には1万円近くする高価なものや、1,000円台で購入できる安価なものもあります。あまりに安価な製品は、素材の安全性や耐久性に疑問がある場合もゼロではないため、信頼できるメーカーの製品を選ぶことをおすすめします。

初期費用としてはナプキンやタンポンより高額に感じるかもしれませんが、適切に使えば数年間使用できることを考えると、長い目で見れば圧倒的に経済的です。例えば、月経カップが5,000円で5年間使えた場合、1年あたり1,000円、1回の生理(約5日)あたり約167円の計算になります。これは、使い捨て生理用品と比較すると非常に安価です。

月経カップに関するよくある質問(FAQ)

月経カップを初めて使う方や、使用を検討している方が抱きやすい疑問について、Q&A形式で解説します。

初めてでも使える?

はい、初めての方でも使えます。ただし、前述の通り、挿入や取り出しには慣れが必要です。最初は難しく感じたり、時間がかかったりするかもしれませんが、何度か練習することで多くの人がスムーズに使えるようになります。経血量の少ない日や自宅にいる日に試してみる、YouTubeなどで使い方動画を参考にするといった方法が役立ちます。

違和感や痛みは?

正しく装着できていれば、月経カップは腟内で違和感なくフィットし、付けていることを忘れるほど快適に過ごせると言われています。もし違和感や痛みがある場合は、以下のような原因が考えられます。

  • カップが中で完全に開いていない
  • ステムが長すぎる、または皮膚に当たっている
  • サイズや硬さが体に合っていない
  • 挿入する角度や深さが適切でない
  • 腟内に傷ができている

まずは、カップがしっかり開いているか、ステムが長すぎないかなどを確認し、必要であれば取り出して再挿入したり、ステムをカットしたりしてみましょう。痛みが続く場合や、出血を伴う場合は、使用を中止し、医療機関を受診してください。

運動中や睡眠中に使える?

はい、運動中や睡眠中も問題なく使用できます。月経カップは腟壁に密着して経血を溜めるため、激しい運動をしてもズレたり脱落したりする心配はほとんどありません。水泳やヨガなど、様々なアクティビティを楽しむことができます。

睡眠中も、最長12時間以内の使用であれば安心して眠ることができます。ただし、就寝前に一度カップを空にしてから装着することをおすすめします。

性経験がなくても使える?

はい、性経験がない方(処女膜が残っている方)でも月経カップを使用することは可能です。月経カップはタンポンと同様に腟内に挿入するため、使用によって処女膜が伸びたり、破れたりする可能性はあります。

処女膜は個人差が大きく、伸縮性のある人もいれば、挿入によって破れる人もいます。また、処女膜の形や位置も人によって異なります。月経カップの使用によって処女膜がどうなるかについては、事前に知っておくべき点です。

性経験がない方でも、月経カップを使いたいという気持ちがあれば試してみることはできますが、無理強いはせず、ご自身の体のこと、処女膜についてどう考えるかを踏まえて、納得した上で選択することが大切です。不安があれば、婦人科医に相談してみるのも良いでしょう。

まとめ:月経カップ導入を検討するあなたへ

月経カップは、繰り返し使えて経済的、環境に優しく、長時間快適に過ごせる可能性を秘めた生理用品です。ナプキンのムレやかぶれ、交換の手間、ゴミ問題など、これまでの生理用品に不満を感じていた方にとって、生理期間をよりポジティブに変える選択肢となり得ます。

もちろん、装着や取り出しに慣れが必要だったり、洗浄の手間がかかったりといったデメリットもあります。特に、公共の場所での交換に難しさを感じる人もいるでしょう。また、稀ではあるものの、TSSのリスクについても正しく理解しておくことが重要です。

しかし、多くのデメリットは、練習や工夫、そして自分に合った製品選びである程度解決できます。サイズ、硬さ、形状など、様々なタイプの月経カップが販売されていますので、ご自身の体質やライフスタイル、経血量などを考慮して選ぶことが大切です。

月経カップは万人に合うものではありません。もし試してみて、どうしても合わないと感じる場合は、無理せず他の生理用品を選択する柔軟性も必要です。布ナプキンや吸水ショーツなど、使い捨て以外の選択肢は他にもあります。

この記事で解説した情報が、あなたが月経カップについて理解を深め、ご自身にとって最適な生理用品を見つけるための一助となれば幸いです。正しい知識を持ち、安全に、そして快適な生理期間を過ごすための新しい一歩を踏み出してみてください。

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