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PTSD診断|私がそうかも?症状チェックと受診の判断ポイント

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、生命の危機を感じるような恐ろしい体験や、強い衝撃を受ける出来事に遭遇した後に発症する精神疾患です。単に「嫌な出来事だった」「怖かった」というだけでなく、その体験が繰り返し思い出されたり、フラッシュバックしたり、あるいはその出来事に関連することを避けようとしたりするなど、日常生活に著しい支障をきたす状態を指します。「ptsd 診断」という言葉で検索されている方は、ご自身や大切な人がこのような症状に悩んでいるのかもしれません。この記事では、PTSDの診断に関する様々な疑問にお答えし、正確な情報を提供することで、症状に苦しむ方が適切なサポートにつながるための一助となることを目指します。PTSDがどのような状態なのか、診断はどのように行われるのか、どこで診断を受けられるのかなどを詳しく解説します。

目次

ptsdとは?定義と原因

PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder)は、日本語では「心的外傷後ストレス障害」と呼ばれます。これは、生死に関わるような出来事や、重傷を負うような体験、性的暴行など、心に強い衝撃を与える「外傷的な出来事(トラウマ)」に曝露した後に発症する精神疾患です。

外傷的な出来事とは、具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 自然災害: 地震、台風、洪水、火山の噴火など
  • 人為的災害: 火災、事故(交通事故、航空機事故など)、テロ事件、戦争体験
  • 犯罪被害: 強盗、暴行、性的暴行、誘拐など
  • 暴力: 家庭内暴力(DV)、児童虐待、いじめ、近親者からの暴力
  • 重篤な病気や怪我: 自分や大切な人の重病、手術、事故による重傷
  • 喪失体験: 近親者の突然死、悲惨な状況での死別

このような出来事に遭遇すると、強い恐怖や無力感、戦慄などを感じます。多くの人は時間が経つにつれて回復しますが、一部の人ではその体験が心に深く刻み込まれ、様々な精神的な症状が長期間にわたって現れることがあります。これがPTSDです。

PTSDの原因は、単に恐ろしい出来事を体験したことだけではありません。個人の性格、過去のトラウマ経験の有無、周囲のサポート体制、出来事後の環境など、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。脳科学の研究では、トラウマ体験によって脳の一部(扁桃体や海馬など)の機能に変化が生じることが示唆されています。しかし、同じような体験をしてもPTSDになる人もいればならない人もいるため、そのメカニズムはまだ完全に解明されているわけではありません。

PTSDは、本人の意思や努力だけで乗り越えられるものではありません。適切な診断と治療によって回復を目指すことが非常に重要です。

ptsdの主な症状(4大症状)

PTSDの症状は多岐にわたりますが、主に以下の4つのカテゴリーに分けられます。これらの症状が組み合わさって現れることが、PTSDの特徴です。

再体験(侵入症状)とは

再体験(侵入症状)は、トラウマとなった出来事が意図せず繰り返し心の中に侵入してくる症状です。最も特徴的な症状の一つであり、あたかもその出来事を再び体験しているかのような感覚に襲われます。

具体的な症状としては以下のようなものがあります。

  • フラッシュバック: まるで現実のように、トラウマ体験の映像や音、感覚などが鮮明に蘇る現象です。その場にいないにも関わらず、実際にその出来事が起こっているかのように感じられ、強い恐怖やパニックに襲われることがあります。
  • 悪夢: トラウマに関連する内容の悪夢を繰り返し見ます。夢の中で再び恐ろしい体験をすることで、睡眠が妨げられたり、目覚めた後も強い不安が残ったりします。
  • 侵入的な思考やイメージ: 意図しないのに、突然トラウマ体験に関する考えやイメージが頭の中に浮かび上がってきます。止めようとしてもなかなか止まらず、苦痛を感じます。
  • トラウマを連想させるものへの強い心理的・生理的反応: トラウマとなった出来事を思い出させるような場所、人物、音、においなどに遭遇すると、強い不安や恐怖を感じたり、動悸、発汗、震えなどの身体的な反応が現れたりします。例えば、交通事故の後に車のクラクションを聞くと強い恐怖を感じる、といった形です。

これらの再体験症状は、予期せぬタイミングで起こることが多く、日常生活や仕事、学業に大きな支障をきたす原因となります。

回避症状とは

回避症状は、トラウマとなった出来事に関連する思考、感情、感覚、会話、活動、場所、人物などを意図的に避けようとする症状です。トラウマと向き合うことによる苦痛や不快感を避けるために起こります。

具体的な症状としては以下のようなものがあります。

  • トラウマに関連する思考や感情の回避: トラウマ体験について考えたり話したりすることを避けます。また、その出来事に関連する恐怖、不安、怒り、罪悪感といった感情を感じないように努めます。
  • トラウマを思い出させる外的なものの回避: トラウマ体験が起こった場所に行かない、関連する人物に会わない、関連するニュースや映像を見ない、関連する活動に参加しないなど、物理的にトラウマを連想させるものを避けます。
  • トラウマに関連する記憶の想起困難: トラウマ体験の重要な部分を思い出せない、記憶に空白が生じるといった症状が見られることがあります。これは意図的な回避というよりは、解離的な症状として現れる場合もあります。

回避症状は、一時的には苦痛を軽減するように感じられますが、長期的には問題解決を遅らせ、社会的な孤立を招く可能性があります。行きたい場所に行けなくなる、会いたい人に会えなくなるなど、生活範囲が狭まり、人生の質が低下することにつながります。

認知と気分の陰性の変化とは

認知と気分の陰性の変化は、トラウマ体験を境に、自分自身、他者、あるいは世界に対する考え方や感情が歪んでしまったり、否定的なものになったりする症状です。以前とは異なるネガティブな認知や感情が持続的に現れます。

具体的な症状としては以下のようなものがあります。

  • トラウマの原因や結果に関する歪んだ認知: 「自分が悪かったからだ」「自分には価値がない」「世界は危険な場所だ」といった、現実とは異なる否定的な信念を持つようになります。
  • 他者に対する不信感や警戒心: 人間関係が安全ではないと感じ、他者を信用できなくなったり、常に警戒したりするようになります。
  • 恐怖、戦慄、怒り、罪悪感、恥などの持続的な陰性感情: トラウマ体験に関連して、これらの感情が慢性的に続きます。
  • 興味や喜びの喪失: 以前は楽しめていた活動や趣味に対して興味を失い、何も楽しいと感じられなくなります(アヘドニア)。
  • 他者からの孤立感、疎外感: 他者とのつながりを感じられなくなり、孤立している、誰とも分かり合えないと感じます。
  • ポジティブな感情を感じることの困難さ: 幸福感、満足感、愛情などのポジティブな感情を感じる能力が低下します。

これらの症状は、自分自身や周囲の世界を否定的に捉えることで、絶望感や無力感につながりやすく、うつ病を併発することもあります。人間関係や社会生活にも悪影響を及ぼします。

過覚醒症状とは

過覚醒症状は、トラウマ体験をきっかけに、神経系が常に危険に備えて過敏な状態になる症状です。常に緊張していたり、ちょっとした刺激にも強く反応したりします。

具体的な症状としては以下のようなものがあります。

  • 過度の警戒心: 常に周囲を警戒し、少しの物音や変化にも敏感に反応します。リラックスすることが困難になります。
  • 容易な驚愕反応: 予期せぬ音や出来事に対して、飛び上がるほど驚いたり、強い身体的な反応(心臓がドキドキする、汗をかくなど)を示したりします。
  • 集中力の低下: 集中力や注意力が持続せず、物事に集中することが難しくなります。
  • イライラ感や怒り: 些細なことでイライラしたり、怒りを感じやすくなったりします。感情のコントロールが難しくなることがあります。
  • 睡眠障害: 寝つきが悪くなる、夜中に何度も目が覚める、熟睡できないなどの睡眠の問題が生じます。悪夢を見ることもこれに含まれますが、過覚醒症状としての睡眠障害は、トラウマに関連しない寝つきの悪さなども含みます。
  • 無謀または自己破壊的な行動: 危険を顧みない行動(無謀な運転、過度の飲酒など)や、自分自身を傷つけるような行動をとることがあります。これは、過覚醒による不快感や緊張を紛らわせるために起こることがあります。

過覚醒症状は、常に「戦闘モード」や「逃走モード」に入っているような状態で、心身ともに疲弊しやすい状態です。日常生活での小さなストレスにも過剰に反応するため、対人関係や社会生活にも影響が出やすくなります。

これらの4つのカテゴリーの症状が、トラウマ体験後に一定期間以上持続し、日常生活や社会生活に著しい支障をきたしている場合に、PTSDと診断される可能性が出てきます。

ptsdの診断基準(DSM-5準拠)

PTSDの診断は、主に精神疾患の診断基準であるDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)に基づいて行われます。最新版はDSM-5(DSM-5-TR)であり、ここで解説する診断基準はDSM-5-TRに準拠しています。専門家は、患者さんの話を聞き、これらの基準に照らし合わせて慎重に診断を行います。PTSDの診断には、以下のAからHまでの基準を満たす必要があります。

診断基準A:外傷的出来事への曝露

診断基準Aは、PTSDの発症のきっかけとなる「外傷的な出来事」にどのように曝露したか、あるいは曝露した可能性があるかを示しています。以下のいずれかの方法で、現実のまたは切迫した死、深刻な傷害、または性的暴力に曝露したことが必要です。

  • 1. 直接的な体験: 外傷的な出来事を自分自身で直接体験した。
  • 2. 目撃: 他の人が外傷的な出来事を体験するのを目撃した。特に、近親者や親しい友人が実際に体験したこと、または切迫した危険にさらされていることの目撃を含む。
  • 3. 近親者や親しい友人における出来事の伝聞: 近親者や親しい友人に外傷的な出来事が実際に起こったこと、または切迫した危険にさらされていることを知った。その出来事が現実のまたは切迫した死に関わるものであった場合、偶発的な(非暴力的な)状況によるものでなければならない(例:自然死によるものではなく、事故や殺人による死など)。
  • 4. 外傷的出来事に対する嫌悪感を伴う詳細への繰り返しのまたは極端な曝露: 外傷的な出来事の嫌悪感を伴う詳細に、職業上繰り返しまたは極端に曝露した(例:遺体の一部を収集する救急隊員、児童虐待の詳細を繰り返し聞く警察官)。ただし、メディアを通じての曝露は、その曝露が仕事に関係する場合を除いて、基準Aを満たさない。

重要: 外傷的な出来事の体験や目撃だけでなく、近親者への出来事の伝聞や、職業上の繰り返し曝露も診断基準Aを満たす可能性がある点が、以前の基準から変更されています。

診断基準B:侵入症状

診断基準Bは、前述した「再体験(侵入症状)」に関するものです。診断基準Aで定義された外傷的な出来事に関連する、以下のような侵入症状のうち、1つ以上が存在することが必要です。

  • 1. 外傷的出来事に関する反復的、不随意で苦痛を伴う、侵入的な記憶: 意図しないのに、トラウマ体験の記憶が繰り返し頭の中に浮かび上がり、それに伴って苦痛を感じます。子供の場合、トラウマの主題や側面が表現される遊びを繰り返すことがあります。
  • 2. 外傷的出来事の内容または様相に関連する反復的な苦痛を伴う夢: トラウマに関連する悪夢を繰り返し見ます。子供の場合、内容が認識できないような恐ろしい夢を繰り返し見ることがあります。
  • 3. 外傷的出来事が再び起こっているかのように感じる解離反応(フラッシュバック): トラウマ体験がまるで今起こっているかのように感じられます。意識が完全に周囲から離れてしまうものから、短時間のみの感覚まで様々です。こうした解離反応が生じている最中、個人はその出来事が再び起こっているかのように、あるいは存在しているかのように振る舞います。子供の場合、トラウマの再演を伴う特異的な遊びが見られることがあります。
  • 4. 外傷的出来事を連想させる外的な手掛かりへの曝露に対する強い、または持続する心理的苦痛: トラウマとなった出来事を思い出させるような刺激(人、場所、会話、活動、対象、状況など)に遭遇すると、強い精神的な苦痛を感じます。
  • 5. 外傷的出来事を連想させる外的な手掛かりへの曝露に対する著しい生理的反応: トラウマとなった出来事を思い出させるような刺激に遭遇すると、動悸、発汗、震え、呼吸困難などの強い身体的な反応が現れます。

これらの症状は、トラウマ体験後に新たに出現し、苦痛や機能障害を引き起こしている必要があります。

診断基準C:回避

診断基準Cは、前述した「回避症状」に関するものです。外傷的な出来事に関連する刺激の持続的な回避で、その出来事の後に始まった、以下のいずれかが存在することが必要です。

  • 1. 外傷的出来事に関連する、苦痛を伴う記憶、思考、感情に関する回避、または回避しようとする努力: トラウマ体験について考えたり、それに伴う恐怖、戦慄、怒り、罪悪感といった感情を感じたりすることを意図的に避けます。
  • 2. 外傷的出来事を連想させる外的な手掛かり(人、場所、会話、活動、対象、状況など)の回避、または回避しようとする努力: トラウマ体験が起こった場所に行かない、関連する人や物に近づかないなど、物理的にトラウマを連想させるものを避けようとします。

これらの回避行動は、トラウマ体験後の苦痛を減らそうとして無意識的または意識的に行われますが、結果として日常生活や社会との関わりを制限してしまいます。

診断基準D:認知と気分の陰性変化

診断基準Dは、前述した「認知と気分の陰性の変化」に関するものです。外傷的な出来事の後に始まりまたは悪化した、外傷的出来事に関連する認知と気分における著しい陰性の変化で、以下の2つ以上が存在することが必要です。

  • 1. 外傷的出来事の重要な側面を思い出せないこと(典型的には解離性健忘によるもので、頭部外傷、アルコール、または薬物によるものではない): トラウマ体験の重要な部分(例:誰が何をしたか、出来事の順序など)を思い出せない状態です。
  • 2. 外傷的出来事の原因や結果に関する、自分自身、他者、または世界に対する持続的かつ歪んだ否定的な信念または期待: 「自分は完全にダメだ」「誰も信用できない」「世界は極めて危険だ」といった、現実と異なる否定的な考えを持ち続けます。
  • 3. 外傷的出来事の原因や結果に関する、自分自身や他者を責めることに関する持続的かつ歪んだ認知: 「すべて自分のせいだ」「誰それがあの時こうしていればよかった」といった形で、過度に自分や他者を非難します。
  • 4. 持続的な陰性感情状態: 恐怖、戦慄、怒り、罪悪感、または恥といった感情が慢性的に続きます。
  • 5. 活動に対する興味や参加が著しく減退すること: 以前は楽しんでいた趣味や仕事、友人との付き合いなどに対する興味を失い、積極的に関わろうとしなくなります。
  • 6. 他者から切り離されている、または疎遠になっていると感じること: 他者との間に壁があるように感じ、孤立している、誰とも深く繋がれないと感じます。
  • 7. 肯定的な感情を感じることの持続的な不能: 幸福感、満足感、愛情などのポジティブな感情を感じることが難しくなります。

これらの症状は、トラウマ体験が個人の内面や社会との関わりに与えた影響を示しており、多くの場合、気分の落ち込みや社会的な引きこもりにつながります。

診断基準E:覚醒度と反応性の著しい変化

診断基準Eは、前述した「過覚醒症状」に関するものです。外傷的な出来事の後に始まりまたは悪化した、外傷的出来事に関連する覚醒度と反応性における著しい変化で、以下の2つ以上が存在することが必要です。

  • 1. イライラする行動や怒りっぽい爆発(通常、些細な挑発で言語的または身体的な他者や物への攻撃として表現される): 些細なことでカッとなったり、怒りを爆発させたりすることが増えます。
  • 2. 無謀または自己破壊的な行動: 危険を顧みない行動をとったり、自分自身を傷つけるような行動を繰り返したりします。
  • 3. 過度の警戒心: 常に周囲に危険がないか警戒しており、リラックスできません。
  • 4. 過剰な驚愕反応: 突然の音などに対して、過剰に驚いたり、体が硬直したりします。
  • 5. 集中困難: 一つのことに集中し続けたり、注意を向けたりすることが難しくなります。
  • 6. 睡眠障害: 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうなど、睡眠に問題が生じます。

これらの症状は、神経系が常に高い緊張状態にあることを示しており、心身ともに疲弊しやすい状態をもたらします。

診断基準F:持続期間

診断基準Fは、上記B、C、D、Eの診断基準を満たす症状の持続期間に関するものです。診断のためには、基準B、C、D、Eの症状の持続期間が1ヶ月より長いことが必要です。

トラウマ体験直後には、多くの人がPTSDに似た一時的なストレス反応を示します。しかし、それが1ヶ月未満で収まる場合は「急性ストレス障害(ASD)」と診断されることがあります。1ヶ月以上症状が持続し、慢性化した場合にPTSDと診断されます。

診断基準G:機能障害

診断基準Gは、症状がどの程度日常生活に影響を与えているかに関するものです。基準B、C、D、Eの障害が、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしていることが必要です。

つまり、単に症状があるだけでなく、その症状のために仕事や学校に行けなくなったり、友人や家族との関係が悪化したり、以前のように生活を送ることが困難になっている状態である必要があります。

診断基準H:他の病気や物質によるものではないこと

診断基準Hは、症状が他の原因によるものではないことを確認するためのものです。この障害が、物質(例:薬物乱用、医薬品)の生理学的影響や、他の医学的疾患によるものではないことが必要です。

例えば、薬物の離脱症状や、甲状腺機能亢進症などの身体疾患が、PTSDに似た症状を引き起こす可能性があるため、これらの可能性を除外する必要があります。

これらのAからHまでの基準をすべて満たした場合に、専門家によってPTSDと診断されます。診断は非常に慎重に行われ、患者さんの詳細な生育歴や現在の状況、トラウマ体験の内容などを総合的に考慮して判断されます。

ptsdセルフ診断チェックリスト

以下のチェックリストは、PTSDの診断基準(DSM-5-TR)に基づいた項目を簡易的にまとめたものです。あくまで自己チェックのためのものであり、これだけでPTSDの診断が確定するわけではありません。気になる項目が多い場合は、専門家への相談を強くお勧めします。

【外傷的な出来事への曝露】
1. あなたは、現実のまたは切迫した死、深刻な傷害、または性的暴力に関連する出来事を、以下のいずれかの方法で体験しましたか?

  • 直接的に体験した
  • 他の人が体験するのを目撃した
  • 近親者や親しい友人に実際に起こったこと、または切迫した危険にさらされていることを知った(偶発的な死は含まない)
  • 仕事上、外傷的な出来事の嫌悪感を伴う詳細に繰り返しまたは極端に曝露した

【侵入症状】
トラウマ体験後に、以下のうち1つ以上に当てはまりますか?

  • 2. トラウマに関連する、反復的で苦痛を伴う記憶が意図せず頭に浮かびますか?
  • 3. トラウマに関連する苦痛な夢を繰り返し見ますか?
  • 4. まるでトラウマが再び起こっているかのように感じる解離反応(フラッシュバック)がありますか?
  • 5. トラウマを連想させるもの(人、場所、音など)に遭遇すると、強い精神的苦痛を感じますか?
  • 6. トラウマを連想させるものに遭遇すると、強い身体的反応(動悸、発汗など)が現れますか?

【回避症状】
トラウマ体験後に、以下のうちいずれかに当てはまりますか?

  • 7. トラウマに関連する思考、感情、会話などを避けるようにしていますか?
  • 8. トラウマを連想させる場所、人物、活動などを避けるようにしていますか?

【認知と気分の陰性変化】
トラウマ体験後に始まりまたは悪化した、以下のうち2つ以上に当てはまりますか?

  • 9. トラウマの重要な部分を思い出せなくなりましたか?
  • 10. トラウマの原因や結果に関して、「自分はダメだ」「誰も信用できない」といった否定的な信念を強く持つようになりましたか?
  • 11. トラウマの原因や結果に関して、自分自身や他者を過度に責めるようになりましたか?
  • 12. 恐怖、怒り、罪悪感といった陰性感情が持続していますか?
  • 13. 以前楽しんでいた活動への興味や喜びが著しく減退しましたか?
  • 14. 他者から切り離されている、あるいは疎遠になったと感じますか?
  • 15. 肯定的な感情(幸福感、愛情など)を感じることが難しくなりましたか?

【覚醒度と反応性の著しい変化】
トラウマ体験後に始まりまたは悪化した、以下のうち2つ以上に当てはまりますか?

  • 16. イライラしたり、些細なことで怒りを爆発させたりすることが増えましたか?
  • 17. 無謀または自己破壊的な行動をとることがありますか?
  • 18. 常に周囲を警戒しており、リラックスできませんか?
  • 19. 突然の音などに過剰に驚愕する反応がありますか?
  • 20. 集中力が低下しましたか?
  • 21. 寝つきが悪い、夜中に目が覚めるなど、睡眠に問題がありますか?

【持続期間と機能障害】
22. 上記の症状(2~21で当てはまる項目)は、1ヶ月より長く続いていますか?
23. 上記の症状のために、仕事、学校、家庭生活、人間関係などに著しい支障が出ていますか?

判定の目安:

  • 項目1に当てはまる。
  • 項目2~6のうち1つ以上に当てはまる。
  • 項目7~8のうちいずれかに当てはまる。
  • 項目9~15のうち2つ以上に当てはまる。
  • 項目16~21のうち2つ以上に当てはまる。
  • 項目22と23の両方に当てはまる。

上記のすべての基準を満たす場合、PTSDの可能性があります。ただし、これはあくまで目安であり、必ず専門家による正確な診断を受けてください。

ptsdかな?と思ったらどこで診断を受けられる?

もしご自身や周囲の人がPTSDの症状に当てはまるかもしれないと感じたら、専門の医療機関に相談することが重要です。「ptsd 診断」を受けられる主な医療機関としては、精神科や心療内科が挙げられます。

精神科と心療内科の違い

精神科と心療内科はどちらも心の不調を扱う診療科ですが、厳密には対象とする病態が異なります。

項目 精神科 心療内科
主な対象 気分障害(うつ病、双極性障害)、統合失調症、不安障害、発達障害、依存症など、精神疾患そのものを広く扱います。 心身症(ストレスが原因で身体症状が出る病気:過敏性腸症候群、円形脱毛症、一部の高血圧など)を中心に扱います。身体症状の背景にある心の状態に焦点を当てます。
アプローチ 薬物療法、精神療法(カウンセリング)、リハビリテーションなど、精神面へのアプローチが中心です。 薬物療法(身体症状への対症療法を含む)、精神療法、生活指導など、身体症状と精神状態の両面からアプローチします。
得意とする病気 PTSD、うつ病、統合失調症、パニック障害など、より重篤な精神疾患を含む幅広い病気。 ストレス性胃炎、緊張型頭痛、過換気症候群など、ストレス関連の身体症状。

PTSDは、精神的な苦痛や認知・気分の変化が中心的な症状であるため、基本的には精神科が専門となります。しかし、PTSDに伴って頭痛や胃痛、倦怠感といった身体症状が強く現れている場合は、心療内科でも相談できる場合があります。迷う場合は、どちらの診療科でも初診を受け付けているクリニックも多いため、まずは相談してみるのが良いでしょう。

専門医の探し方

PTSDの治療には、専門的な知識と経験が求められます。質の高い「ptsd 診断」を受け、適切な治療につなげるためには、専門医を見つけることが望ましいです。専門医を探す際のポイントは以下の通りです。

  • 精神科医であること: まずは精神科を標榜している医療機関を探しましょう。
  • PTSDやトラウマケアを専門としているか: 医療機関のウェブサイトで、診療内容や医師の専門分野を確認しましょう。「トラウマケア」「PTSD専門外来」「EMDR」「認知行動療法」といったキーワードが記載されているかどうかが参考になります。
  • 日本精神神経学会の専門医資格: 日本精神神経学会の専門医資格を持つ医師は、精神科医療に関する一定の知識と経験を持っています。
  • インターネット検索や紹介: インターネットで「お住まいの地域名 PTSD 専門」「トラウマ 病院」などで検索したり、かかりつけ医がいる場合は紹介してもらったりするのも良い方法です。
  • 公的機関への相談: お住まいの地域の精神保健福祉センターなどに相談すると、適切な医療機関を紹介してもらえることがあります。
  • セカンドオピニオン: 診断や治療方針について納得がいかない場合は、他の専門医にセカンドオピニオンを求めることも検討しましょう。

初診時には、これまでの経緯や現在の症状について詳しく話す時間を設けてもらえるか、安心して相談できる雰囲気かなども重要なポイントです。いくつかの医療機関の情報を比較検討してみることをお勧めします。

医療機関でのptsd診断方法

医療機関での「ptsd 診断」は、専門家(精神科医など)が患者さんの状態を様々な角度から評価し、診断基準に照らし合わせて総合的に判断することで行われます。主に「問診」と「心理検査」が用いられます。

問診について

問診は、PTSDの診断において最も重要なプロセスの一つです。医師が患者さんから直接話を聞くことで、現在の症状、トラウマ体験の内容、発症からの経過、日常生活への影響などを把握します。問診では、以下のような内容が聞かれることが一般的です。

  • 現在の症状: 具体的にどのような症状(フラッシュバック、悪夢、回避、イライラなど)が、いつから、どのくらいの頻度で現れているか。症状の程度や、日常生活でどのような場面で困るかなど。
  • トラウマ体験の詳細: いつ、どのような出来事があったのか。その時、何を感じ、どのように対処したか。出来事の前後で何か変化があったか。可能な範囲で話せる内容で構いません。
  • 発症からの経過: トラウマ体験から症状が現れるまでの期間、症状の変化など。
  • 生育歴や家族歴: 幼少期の経験、家族構成、家族の病歴など。過去に別のトラウマ体験があるかどうかも重要です。
  • 現在の生活状況: 仕事や学校、家庭での様子、人間関係、睡眠、食事、飲酒・喫煙の習慣など。
  • 既往歴や内服薬: これまでにかかった病気、現在服用している薬(他の精神科の薬や身体疾患の薬など)について。
  • その他の情報: 症状の原因として思い当たること、将来への希望、治療への意向など。

問診では、患者さんが安心して話せる環境が整っていることが重要です。医師は、患者さんの辛い気持ちに寄り添いながら、必要な情報を丁寧に聞き取ります。話すのが辛い内容もあるかもしれませんが、診断のために重要な情報となるため、可能な範囲で伝えるように努めましょう。

心理検査について

問診に加えて、心理検査が診断の手助けとして行われることがあります。心理検査は、患者さんの精神状態や症状の程度を客観的に評価するためのツールです。PTSDの診断に用いられる代表的な心理検査には以下のようなものがあります。

検査名 概要 特徴
PTSD診断尺度(PDS) PTSDの診断基準に沿った症状の有無や程度を評価する自己記入式の尺度です。 診断基準に直接的に対応しており、症状の網羅的な評価が可能です。
心的外傷後ストレス障害質問票(PCL) PTSDの主要な症状(侵入、回避、認知と気分、過覚醒)について、最近1ヶ月間の経験を評価する自己記入式の質問票です。様々なバージョンがあります(例:PCL-5)。 スクリーニングや症状の重症度評価によく用いられます。
構造化臨床面接法(SCID) 精神疾患全般の診断のために、訓練を受けた面接者が行う面接形式の検査です。診断基準に沿って体系的に質問を進めます。 診断の精度が高く、研究などでも広く用いられますが、時間がかかります。
質問紙法(MMPI、SDS、BDIなど) 精神疾患全般のスクリーニングや、うつ病、不安など併存する精神症状の評価に用いられる自己記入式の質問票です。 患者さんの全体的な精神状態やパーソナリティ傾向を把握するのに役立ちます。
投影法(ロールシャッハテストなど) 曖昧な刺激(インクのしみなど)に対する反応を通して、患者さんの無意識的な感情や思考パターンを把握しようとする検査です。 患者さんの内面をより深く理解するのに役立つことがありますが、解釈に専門的な訓練が必要です。

心理検査の結果は、問診で得られた情報と合わせて総合的に評価されます。これらの検査はあくまで診断の補助であり、検査結果だけで診断が決定されるわけではありません。医師は、患者さんの話や態度、検査結果などを総合的に判断し、慎重にPTSDの診断を行います。診断に至るまでには、複数回の診察が必要になることもあります。

ptsdと似た症状を示す病気

PTSDの症状は、他の精神疾患やストレス反応と似ている場合があります。正確な「ptsd 診断」のためには、これらの類似疾患との鑑別が重要になります。

トラウマ反応とptsdの違い

トラウマ反応とは、強い衝撃を受けた出来事(トラウマ)に遭遇した後に起こる、一時的な心身の反応全般を指します。これはPTSDだけでなく、急性ストレス障害(ASD)や適応障害など、様々な形で現れます。

項目 トラウマ反応 PTSD
期間 通常、トラウマ体験後すぐに出現し、多くは時間の経過とともに自然に軽減・消失します。 症状がトラウマ体験後1ヶ月以上持続し、慢性化しています。
重症度・影響 症状の程度は様々ですが、多くは日常生活や社会生活への影響が比較的一時的または限定的です。 症状が持続し、日常生活、仕事、学業、人間関係などに著しい支障をきたしています。
症状 不眠、イライラ、不安、集中力低下、一時的なフラッシュバックなど、PTSDの症状に似たものが現れることがあります。 診断基準B~Eで示される4つのカテゴリーの症状(再体験、回避、認知・気分の変化、過覚醒)が揃って見られます。
診断名 病名ではなく、トラウマに対する反応そのものを指す広範な言葉です。急性ストレス障害(ASD)などがこれに含まれます。 DSM-5などの診断基準に基づき診断される、明確な精神疾患名です。

トラウマ体験後の初期反応は、身体が危険に対して反応している自然な防御システムの一環とも言えます。しかし、その反応が長引き、生活に支障をきたすようになった場合にPTSDという診断に至ります。つまり、PTSDは、トラウマ反応が慢性化・重症化した状態と言えます。

適応障害との違い

適応障害は、特定のストレス因子(トラウマ、仕事の変化、人間関係のトラブル、病気など)に反応して、気分の落ち込みや不安、行動の変化などが現れ、日常生活に支障をきたす状態です。PTSDと同じくストレスが原因となりますが、診断基準におけるストレス因子の定義と、症状の性質に違いがあります。

項目 PTSD 適応障害
ストレス因子 生命の危機に関わるような「外傷的出来事」(診断基準Aを参照)が必須です。 特定のストレス因子(外傷的出来事に限らない、日常的なものも含む)に反応して発症します。
症状 再体験、回避、認知・気分の変化、過覚醒の4つのカテゴリーの症状が特徴的です。 ストレス因子に対する不釣り合いな、気分の落ち込み、不安、行動の変化などが中心です。フラッシュバックや過覚醒などのトラウマ特異的な症状は通常見られません。
診断時期 トラウマ体験後1ヶ月以上経過してから診断されます。 ストレス因子の始まりから3ヶ月以内に症状が現れます。
持続期間 症状が慢性化しやすいです。 ストレス因子が除去されれば、通常6ヶ月以内に症状は改善します。

適応障害のストレス因子は、引っ越しや失恋、職場の異動など、比較的日常的なストレスも含まれます。一方、PTSDは、生命の危機を感じるような極めて強いストレス因子(トラウマ)が原因であることが必須です。また、PTSDに特徴的な再体験や過覚醒といった症状は、適応障害では通常見られません。診断時には、これらの違いを考慮して、どちらの病態により近いかを判断します。

これらの他にも、うつ病、パニック障害、解離性障害、パーソナリティ障害などがPTSDと似た症状を示すことがあり、正確な鑑別診断には専門的な知識が不可欠です。

ptsdと診断された後の治療法

PTSDと診断された場合、専門家による適切な治療を受けることで、症状の改善や回復を目指すことが可能です。治療の中心は「精神療法」と「薬物療法」です。治療は、個々の患者さんの症状の程度、併存疾患、ライフスタイルなどに応じて、これらの方法を組み合わせて行われることが一般的です。

精神療法(カウンセリング)について

精神療法は、PTSDの治療において最も効果が期待できる治療法の一つです。トラウマ体験と向き合い、それに伴う苦痛な感情や考え方を整理し、対処法を身につけることを目指します。PTSDに効果が確認されている主な精神療法には以下のようなものがあります。

  • トラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT:Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy): トラウマに関連する思考や感情、行動パターンに焦点を当て、それらを修正していく治療法です。トラウマについて安全な環境で話したり、認知の歪みを修正したり、ストレス対処法を学んだりします。子供や青年に対するPTSD治療として特にエビデンスが豊富です。
  • 持続エクスポージャー療法(PE:Prolonged Exposure Therapy): トラウマ的な記憶や、トラウマを連想させる状況に、段階的に安全な形で曝露していくことで、恐怖や不安を乗り越えることを目指す治療法です。想像上での曝露(イメージの中でトラウマを語る)と、現実場面での曝露(トラウマを連想させる場所に行くなど)を組み合わせます。
  • EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法:Eye Movement Desensitization and Reprocessing): 特定の眼球運動を行いながら、トラウマ的な記憶やそれに伴う感情、身体感覚に焦点を当てることで、記憶の処理を促進する治療法です。トラウマ記憶の苦痛を軽減し、より適応的な形で記憶を再構築することを目指します。
  • 認知処理療法(CPT:Cognitive Processing Therapy): トラウマ体験に関連する思考や感情、特に罪悪感や恥、不信感などに焦点を当て、これらの認知を修正していく治療法です。ワークシートなどを用いて、思考パターンを特定し、より現実的でバランスの取れた考え方を身につけます。

これらの精神療法は、専門的な訓練を受けたセラピストによって行われます。治療期間は症状の程度や治療法によって異なりますが、通常は数ヶ月から1年程度かかることがあります。精神療法は、症状の長期的な改善に効果的であることが示されています。

薬物療法について

薬物療法は、精神療法と組み合わせて行われることが多い治療法です。PTSDの症状、特に不安、うつ症状、不眠、過覚醒などを軽減する目的で用いられます。

PTSDの治療に用いられる主な薬剤は以下の通りです。

薬剤の種類 概要 PTSDへの効果 副作用(例)
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) 脳内のセロトニンという神経伝達物質の働きを調整する薬です。 不安、うつ症状、イライラ感、過覚醒症状などの軽減に効果が期待されます。PTSD治療の第一選択薬とされることが多いです。 吐き気、食欲不振、性機能障害、不眠、眠気など。服用開始初期に症状が悪化することもありますが、多くは時間とともに軽減します。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) セロトニンとノルアドレナリンという2種類の神経伝達物質の働きを調整する薬です。 SSRIと同様に、不安やうつ症状、過覚醒などの軽減に効果が期待されます。SSRIで効果が不十分な場合に用いられることがあります。 吐き気、口渇、便秘、動悸、血圧上昇など。
その他の抗うつ薬 三環系抗うつ薬、テトラサイクリン系抗うつ薬、NaSSAなど。 SSRIやSNRIが効果がない場合や、特定の症状(不眠など)に対して使用されることがあります。トラウマ特異的な症状への効果はSSRIほど明確でない場合があります。 薬剤によって様々ですが、口渇、便秘、眠気、めまいなど。
β遮断薬 心臓の拍動を穏やかにし、血圧を下げる薬ですが、交感神経の興奮を抑える作用もあります。 過覚醒による動悸、震え、発汗といった身体症状の軽減に用いられることがあります。トラウマ記憶の固定化を防ぐ可能性についても研究されています。 徐脈、低血圧、めまい、倦怠感など。
抗精神病薬 ドーパミンなど、特定の神経伝達物質の働きを調整する薬です。 フラッシュバックや妄想、幻覚といった重い再体験症状がある場合や、強い興奮、不眠に対して少量使用されることがあります。定型抗精神病薬はあまり使われず、非定型抗精神病薬が用いられることが多いです。 眠気、体重増加、ふらつき、錐体外路症状(手足の震えなど)など。
睡眠薬・抗不安薬 不眠や強い不安、パニック症状に対して一時的に使用されることがあります。 症状を一時的に緩和する効果はありますが、依存性のリスクがあるため、漫然と長期にわたって使用することは避けるべきです。 眠気、ふらつき、依存、離脱症状など。

薬物療法は、精神療法と並行して行うことで相乗効果が期待できます。どの薬剤を選択するかは、患者さんの症状の種類や程度、併存疾患、他の内服薬との相互作用などを考慮して医師が慎重に判断します。薬の効果が出るまでには数週間かかることもありますし、副作用が現れることもあります。気になる症状があれば、自己判断で中止せず、必ず医師に相談してください。

治療にかかる期間は?

PTSDの治療にかかる期間は、患者さんの状態、症状の重症度、治療への反応、併存疾患の有無、サポート体制などによって大きく異なります。一般的には、数ヶ月から1年以上の治療期間を要することが多いです。

  • 初期の症状緩和: 薬物療法や症状に合わせた精神療法(例:不眠への対処など)を行うことで、比較的早期に一部の症状(不眠や強い不安など)が軽減されることがあります。
  • トラウマ処理: トラウマ焦点化認知行動療法やEMDRなどのトラウマ処理に特化した精神療法は、通常週1回程度のセッションを、少なくとも数ヶ月(12~20セッション程度)継続して行います。症状が複雑な場合や複数のトラウマがある場合は、さらに長期間の治療が必要になります。
  • 回復期: 症状が改善した後も、再発予防や社会適応のためのサポートを継続することがあります。治療期間は、単に症状が消えるまでではなく、患者さんがトラウマ体験を乗り越え、再び日常生活を安定して送れるようになるまでを視野に入れて考えられます。
  • 慢性化している場合: PTSDが長期間にわたって慢性化している場合や、複雑性PTSD(反復的なトラウマ体験によって生じる、より広範な症状を伴うPTSD)の場合は、より長期間にわたる集中的な治療や、段階的なアプローチが必要になることがあります。

PTSDの治療は一進一退を繰り返すこともあり、根気が必要となる場合があります。焦らず、医師やセラピストと信頼関係を築きながら、継続的に治療に取り組むことが重要です。周囲の理解とサポートも、回復を促進する上で大きな力となります。

まとめ|まずは専門家へご相談を

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、生命の危機に瀕するような外傷的な出来事を体験した後に発症する可能性のある精神疾患です。再体験、回避、認知と気分の陰性の変化、過覚醒といった特徴的な症状が1ヶ月以上持続し、日常生活に著しい支障をきたす場合に診断されます。診断は、精神科医などの専門家が、DSM-5-TRなどの診断基準に基づき、詳細な問診や心理検査の結果を総合的に判断して行われます。

もし、この記事を読んで、ご自身や大切な人がPTSDの症状に当てはまるかもしれないと感じた場合は、一人で抱え込まず、まずは精神科や心療内科といった専門の医療機関に相談することをお勧めします。特に、PTSDやトラウマケアを専門としている医師がいる医療機関を選ぶことが、適切な診断と治療につながる重要なステップとなります。

この記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療の代替となるものではありません。ご自身の状態については、必ず医療機関で専門家の診断を受けてください。

適切な診断と治療によって、PTSDの症状は改善し、回復を目指すことが可能です。希望を持って、専門家のサポートを受けてください。

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