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妊娠初期の流産しやすい行動とは?原因・兆候・対策を解説

妊娠がわかったばかりの妊娠初期は、喜びと同時に流産への不安を感じやすい時期です。特にインターネットなどで「流産しやすい行動」といった情報に触れると、普段の生活で気を付けるべきことについて悩んでしまう方も少なくありません。

この記事では、妊娠初期の流産について、具体的な確率や主な原因、そして多くの妊婦さんが気になる「流産リスクを高める可能性のある行動」や「避けるべきこと」について、医学的な知見に基づいて解説します。また、流産の兆候や、いつまで流産の心配が必要なのか、万が一の際の対応についてもご紹介します。この情報が、妊娠初期を安心して過ごすための一助となれば幸いです。

目次

妊娠初期の流産とは?確率と主な原因

妊娠が確認できたものの、残念ながら妊娠が継続できなくなる「流産」。特に妊娠初期は、流産が起こりやすい時期として知られています。まずは、妊娠初期の流産について正しく理解しておきましょう。

流産の定義と妊娠初期のリスク

流産とは、医学的に「妊娠22週未満で妊娠が終了すること」と定義されています。その中でも、妊娠12週未満に起こる流産を「早期流産」、妊娠12週以降22週未満に起こる流産を「後期流産」と分類します。

妊娠初期、特に妊娠12週未満の早期流産は、全流産の約8割を占めると言われており、妊婦さんにとって最もリスクが高い時期となります。

妊娠初期流産の確率について

「妊娠初期は流産しやすい」と聞くと、非常に高い確率で起こるように感じるかもしれませんが、実際の確率はどれくらいなのでしょうか。

統計によると、妊娠が確認された後の流産の確率は、全体で約15~20%と言われています。つまり、妊娠した方の約5~7人に1人が流産を経験することになります。これは決して低い数字ではありませんが、「妊娠したら必ず流産する可能性がある」というわけでもありません。

年齢によって流産の確率は変動します。一般的に、年齢が高くなるにつれて流産の確率は上昇する傾向にあります。

妊婦さんの年齢 流産の確率(目安)
~34歳 約10~15%
35~39歳 約20~25%
40歳以上 約40%以上

この表からわかるように、35歳を過ぎると流産の確率が高まることがわかります。しかし、これもあくまで統計的な数字であり、若い年齢でも流産する可能性はありますし、高齢でも無事に出産される方もたくさんいらっしゃいます。大切なのは、確率に一喜一憂するのではなく、妊娠中の自分の体と向き合い、無理のない生活を心がけることです。

流産の主な原因は「胎児側の要因」

妊娠初期の流産の原因として最も多いのは、「胎児側の要因」、特に「受精卵の染色体異常」です。これは、卵子と精子が受精する際に、偶然に染色体の数や構造に異常が生じてしまうことで起こります。

染色体異常のある受精卵は、その後の成長が難しく、着床できなかったり、妊娠しても早い段階で成長が止まってしまったりします。これは、受精卵が健康に育つための「生命力」の問題であり、ほとんどの場合、お母さんの普段の行動や生活習慣が原因ではありません。

たとえ染色体異常のある受精卵が着床し、妊娠が成立したとしても、自然の摂理としてそれ以上育つことができないため、流産という形で妊娠が終了します。これは、体が赤ちゃんにとって最善ではない状態だと判断し、妊娠を継続しないという、ある意味自然な選別であるとも言えます。

このことを理解することは、流産を経験された方がご自身を責めることを防ぐために非常に重要です。「自分が何か悪いことをしたから」「あの時、無理をしたから」と自分を責めてしまう必要はないのです。

母体側の要因も流産に関係する場合

流産の原因の多くは胎児側の要因ですが、まれに母体側の要因が流産に関連することもあります。ただし、妊娠初期の流産においては、胎児側の要因が圧倒的に多いことを改めて強調しておきます。

母体側の要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 子宮の形態異常: 子宮の形が通常と異なる(例:双角子宮、中隔子宮など)場合、着床や胎児の成長に影響を与える可能性があります。
  • 子宮筋腫や子宮腺筋症: 子宮筋腫の場所や大きさ、子宮腺筋症の程度によっては、着床障害や流産のリスクを高めることがあります。
  • 内分泌異常: 甲状腺機能異常(甲状腺機能亢進症や低下症)、糖尿病などがコントロールされていない場合、流産のリスクとなることがあります。
  • 感染症: 特定の感染症(例:風疹、トキソプラズマ、サイトメガロウイルスなど)が妊娠初期に母体に感染した場合、胎児に影響を与え流産につながることがあります。また、絨毛膜羊膜炎など、子宮内の細菌感染が原因となることもあります。
  • 免疫学的要因: 母体の免疫機能が、着床した受精卵を異物とみなして攻撃してしまうといった、免疫系の異常が流産に関与する可能性が研究されています。
  • 血液凝固異常(血栓症傾向): 血液が固まりやすい体質の場合、胎盤に血栓ができやすく、胎児への栄養供給が滞り流産につながることがあります。

これらの母体側の要因は、妊娠前に診断されていたり、妊娠初期の検査で発見されたりすることがあります。該当する場合は、適切な治療や管理を行うことで、流産のリスクを軽減できる可能性があります。不安な場合は、妊娠前に、あるいは妊娠がわかったらすぐに医師に相談することが大切です。

妊娠初期に流産リスクを高める「行動」や「避けるべきこと」

「妊娠初期 流産しやすい行動」という言葉を聞いて、日常生活のどんなことに気を付けたらいいのか悩む妊婦さんは多いでしょう。前述の通り、流産の原因の多くは胎児側の要因であり、お母さんの行動が直接的な原因となることは少ないです。しかし、母体に過度な負担をかけたり、特定の物質を摂取したりすることが、間接的に流産のリスクを高めたり、妊娠継続を難しくしたりする可能性はあります。

ここでは、妊娠初期に一般的に避けるべきとされる行動や習慣について解説します。ただし、これらを行ったからといって必ず流産するわけではなく、個々の体の状態や妊娠の経過によって影響は異なります。過度に神経質になりすぎず、バランスの取れた生活を心がけることが大切です。

激しい運動や腹圧がかかる行動

妊娠初期は、まだ胎盤も完成しておらず、赤ちゃんが子宮に着床している状態が非常に不安定です。そのため、母体に強い衝撃が加わったり、お腹に強い腹圧がかかったりするような行動は避けるのが無難とされています。

  • 避けるべき運動の例:
    • ジャンプを繰り返す運動(なわとび、トランポリンなど)
    • お腹に強い衝撃がかかる可能性のある球技や格闘技
    • 過度な腹筋運動
    • 転倒のリスクが高いスポーツ(スキー、スケート、乗馬など)
    • 長距離のマラソンや激しいウェイトトレーニングなど、極度に体を追い込む運動

適度な運動(ウォーキング、マタニティヨガ、スイミングなど)は、妊娠中の体力維持や気分転換にもつながり、むしろ推奨されることがあります。しかし、あくまで「適度」が重要です。普段から運動習慣がない方が急に激しい運動を始めたり、妊娠前と同じ強度で運動を続けたりすることは避けましょう。運動中に腹痛や出血を感じたら、すぐに中止し休息をとってください。

また、重いものを持ち上げたり、無理な体勢で力を入れたりすることも、腹圧がかかるため避けた方が良いとされています。日常生活では、荷物を運ぶ際は無理せず、家族や周囲の人に協力をお願いすることも考えてみましょう。

体を冷やす行動

体を冷やすと血行が悪くなり、子宮への血流が滞る可能性があります。これが直接的に流産を引き起こすという医学的な確証は少ないですが、冷えは母体の負担となり、つわりを悪化させたり、体調を崩しやすくしたりすることがあります。

  • 避けるべき行動の例:
    • 夏場に冷房の効きすぎた場所に長時間いる
    • 冷たい飲み物や食べ物ばかりを摂る
    • 薄着で過ごす
    • シャワーだけで済ませ、湯船に浸からない

妊娠初期は特に冷えやすい体質になる方もいます。夏でも靴下を履いたり、ひざ掛けを使ったり、温かい飲み物を飲んだりするなど、体を冷やさない工夫をしましょう。お風呂は、熱すぎない温度でゆっくり湯船に浸かることで、体の芯から温まりリラックス効果も得られます。

無理な立ち仕事や重いものを持つこと

長時間立ちっぱなしの仕事や、日常的に重いものを持ち運ぶような仕事は、妊娠初期の体には大きな負担となります。血行が悪くなり、足のむくみや腰痛の原因となるだけでなく、子宮への負担も増す可能性があります。

仕事をしている方は、職場の理解を得て、座ってできる作業に切り替えたり、休憩をこまめに取ったりするなどの対策が必要です。難しい場合は、医師に相談し、診断書を提出することも検討しましょう。買い物などで重い荷物を持つ必要がある場合も、無理せず少量ずつ運ぶか、配送サービスを利用するなどの工夫をすることをおすすめします。

過度のストレスや疲労

精神的なストレスや肉体的な疲労も、妊娠継続に影響を与える可能性が指摘されています。ストレスがかかると自律神経のバランスが乱れ、ホルモン分泌にも影響が出ることがあります。また、疲労が蓄積すると母体の免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなるなど、間接的にリスクを高めることも考えられます。

  • 避けるべき状態:
    • 長時間労働や睡眠不足による慢性的な疲労
    • 精神的に追い詰められるような強いストレス
    • 心身ともに休まる時間がない状態

妊娠初期は、ホルモンバランスの急激な変化によって、イライラしたり不安になったりしやすい時期でもあります。普段は気にならないような些細なことでもストレスを感じてしまうかもしれません。つわりで体調が優れないのに、家事や仕事に追われて休めないといった状況も疲労につながります。

無理せず、休息をしっかりと取る、好きなことをしてリラックスする、信頼できる人に話を聞いてもらうなど、ストレスや疲労を溜め込まない工夫を心がけましょう。完璧を目指さず、時には手抜きをすることも大切です。パートナーや家族と協力体制を築くことも、妊娠初期を乗り切る上で重要です。

喫煙、飲酒、カフェインの過剰摂取

これらは、流産だけでなく、胎児の発育遅延や先天異常など、さまざまな妊娠合併症や赤ちゃんへの悪影響のリスクを高めることが医学的に明らかになっています。

  • 喫煙: 妊婦さん自身の喫煙はもちろん、受動喫煙も流産のリスクを高めます。タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、胎盤の血流を悪くし、胎児への酸素や栄養供給を妨げます。妊娠を希望する段階から禁煙することが最も望ましいです。
  • 飲酒: アルコールは胎盤を通過し、直接胎児に影響を与えます。アルコール摂取量が多いほど、流産や死産、胎児性アルコール症候群のリスクが高まります。妊娠中は、たとえ少量でもアルコールの摂取は避けるべきです。
  • カフェインの過剰摂取: コーヒーや紅茶、緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインも、過剰摂取は流産や低出生体重児のリスクを高める可能性が指摘されています。具体的な許容量については様々な研究がありますが、多くの専門機関では、1日に摂取するカフェイン量を200mg(コーヒーマグカップ約2杯分)以下に抑えることを推奨しています。まったく摂取しないに越したことはありませんが、少量であればそこまで神経質になる必要はありません。

これらの物質は、流産リスクだけでなく、その後の妊娠経過や赤ちゃんの健康にも関わるため、妊娠がわかったらすぐに摂取を控えるようにしましょう。

自己判断での市販薬服用

妊娠中に服用できる薬は限られています。市販されている風邪薬、頭痛薬、胃薬などの中には、妊娠中に服用すると胎児に影響を与える可能性がある成分が含まれているものがあります。

体調が優れない時や、何か症状が出て市販薬を服用したいと思った時は、必ず妊娠中であることを薬剤師に伝え、相談するようにしてください。最も安全なのは、かかりつけの産婦人科医に相談し、処方された薬を服用することです。持病などで普段から薬を服用している場合は、妊娠を希望する段階で、あるいは妊娠がわかった時点で必ず医師に相談し、妊娠中でも安全な薬に変更したり、服用量や方法について指示を受けたりする必要があります。

妊娠初期に「絶対にいけないこと」リスト

医学的な見地から、妊娠初期に「これは絶対に避けるべき」と言える行動や状態をまとめます。

  • 医師の指示なしでの喫煙・飲酒: 量にかかわらず、胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 医師に相談せずに薬を服用すること: 特に妊娠中に禁忌とされている薬は絶対に避ける必要があります。
  • 感染症にかかるリスクの高い行動: 生肉や加熱不十分な食品の摂取(トキソプラズマ、リステリア菌など)、猫の糞の処理(トキソプラズマ)、風疹などの感染症の流行地域への渡航(予防接種を受けていない場合)など。
  • 医師から安静を指示されているにも関わらず、無理な行動をすること: 切迫流産の兆候がある場合など、安静の指示が出ているときは、その指示に従うことが非常に重要です。

これらの項目は、流産のリスクを高めるだけでなく、妊娠中の健康や赤ちゃんの将来の健康にも関わるため、十分に注意が必要です。

妊娠初期流産の兆候(サイン)

妊娠初期に「流産かも…」と不安になるきっかけの一つが、何らかの体の変化、特に「出血」や「腹痛」です。これらの兆候が現れた場合、必ずしも流産が進行しているとは限りませんが、注意が必要です。流産の可能性を示唆する主な兆候について解説します。

性器出血の種類と注意点

妊娠中の性器出血は、妊婦さんを非常に不安にさせますが、出血があるからといって全てが流産につながるわけではありません。妊娠初期の出血には、いくつか種類があります。

  • 着床出血: 妊娠の超初期に、受精卵が子宮内膜に潜り込む際に起こるごく少量の出血です。ピンク色や茶色で、数時間から数日で止まることが多いです。生理予定日頃に見られることがあり、妊娠に気づくきっかけとなることもあります。
  • 絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ): 胎盤のもととなる絨毛膜と子宮の間に出血が溜まる状態です。少量から多量の出血、茶色から鮮血まで様々です。出血量が多い場合や腹痛を伴う場合は切迫流産の兆候とみなされ、安静が必要となることがあります。血腫があっても無事に妊娠を継続できるケースも多いですが、医師の経過観察が必要です。
  • 流産による出血: 流産が進行している場合の出血は、生理の時のような鮮血で量が多かったり、レバーのような塊(組織片)が混ざったりすることがあります。腹痛を伴うことが多く、出血量や痛みの程度は流産の進行度によって異なります。

出血が見られた場合は、出血の色、量、塊の有無、腹痛の有無などを確認し、できるだけ早くかかりつけ医に連絡して指示を仰ぎましょう。少量で色も薄くすぐに止まるような出血でも、自己判断せずに一度相談することが大切です。

腹痛(子宮収縮)の特徴

妊娠初期には、子宮が大きくなる際に伴う生理痛のような軽い腹痛を感じることがあります。これは多くの場合心配のないものですが、注意が必要な腹痛もあります。

  • 注意が必要な腹痛:
    • 持続的で強い痛み
    • ズキズキ、キューっと締め付けられるような周期的な痛み(子宮収縮を示唆する可能性)
    • 出血を伴う痛み

流産が進行している場合、子宮が収縮して内容物を排出しようとするため、生理痛よりも強い痛みや、周期的な収縮性の痛みを感じることがあります。出血と腹痛の両方がある場合は、切迫流産や進行流産の可能性が高いと考えられます。

腹痛がある場合も、痛みの程度、持続時間、周期性、出血の有無などを確認し、速やかに医療機関に連絡してください。

その他の兆候(つわりが急になくなるなど)

流産の兆候として、出血や腹痛の他に、つわりが急になくなったり、乳房の張りなどの妊娠初期症状が突然消えたりすることが挙げられることがあります。

これらの症状は、妊娠の継続に必要なホルモン(hCGなど)の分泌が停止した結果として起こる可能性があります。しかし、つわりの症状には個人差があり、週数が進むにつれて自然につわりが軽くなったり、症状がなくなったりすることもよくあります。また、体調の変化やつわり症状の波によって一時的に軽くなることもあります。

そのため、「つわりがなくなった=流産」と自己判断することは危険です。つわり症状の消失だけで過度に不安になる必要はありませんが、出血や腹痛など他の兆候も伴う場合は、医療機関に相談しましょう。

流産が「気づかない」ケース(稽留流産など)

流産の中には、出血や腹痛といった自覚症状がほとんどなく進行するものがあります。これを「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」といいます。

稽留流産では、胎児の心拍が停止してしまっているにも関わらず、子宮内に留まった状態が続きます。多くの場合、妊婦さん自身は妊娠が継続していると思っており、定期健診の超音波検査で初めて胎児の成長が止まっていることや心拍が確認できないことで診断されます。

自覚症状がないため、稽留流産を予防するための「避けるべき行動」は特にありません。定期的な妊婦健診を受けることが、早期発見につながり、その後の適切な処置を受けるために重要となります。妊娠初期は、特に赤ちゃんの成長が著しいため、数週間に一度の健診で経過を確認してもらうことが安心につながります。

いつまで心配?妊娠初期流産のピークとリスクが減る時期

妊娠初期の妊婦さんにとって、「流産の心配はいつまで続くの?」という疑問は大きな不安の一つでしょう。流産のリスクは妊娠週数によって変動します。

流産が最も多い週数

妊娠初期の中でも、特に流産が起こりやすいとされるのが、妊娠 8週から10週頃 です。この時期は、胎児の主要な臓器が形成される非常に重要な期間であり、同時に染色体異常など、胎児側の生命力に関わる問題が明らかになりやすい時期でもあります。

超音波検査で胎児の心拍が確認できるようになるのは、一般的に妊娠6週頃からですが、心拍が確認できた後も、妊娠10週頃まではまだ流産のリスクが高い期間と言えます。この期間を乗り越えることが、妊娠継続の重要な一歩となります。

妊娠〇週以降はリスクが低下

妊娠10週頃をピークに、流産のリスクは徐々に低下していきます。そして、妊娠 12週以降 になると、早期流産のリスクは格段に低くなると考えられています。

妊娠12週頃になると、胎盤がほぼ完成し、赤ちゃんがより安定した環境で成長できるようになります。この時期を超えると、流産の確率は全体の流産確率である15~20%よりもさらに低下し、約5%以下になると言われています。

もちろん、妊娠22週未満であれば後期流産の可能性もゼロではありませんが、後期流産の原因は母体側の要因(子宮頸管無力症、感染症など)や、胎児の形態異常などが多く、早期流産とは原因やメカニズムが異なります。

そのため、多くの妊婦さんにとって、妊娠12週は流産に対する大きな峠の一つと言えるでしょう。この時期を無事に乗り越えると、少しずつ安心感が増してくるはずです。

ただし、週数が進んでも無理は禁物です。安定期に入ったとしても、妊娠中の体はデリケートです。無理のない範囲で生活し、引き続き体調の変化には気を配ることが大切です。

稽留流産しやすい人の特徴

前述した稽留流産は、自覚症状がほとんどなく、健診で診断されることが多い流産です。では、どのような人が稽留流産を経験しやすいのでしょうか。いくつかの特徴が指摘されています。

過去の流産経験

過去に流産を経験したことがある人は、流産を繰り返すリスクがやや高くなる傾向があります。特に、2回以上流産を繰り返している場合を「習慣流産」と呼び、原因を詳しく調べるための検査が推奨されます。習慣流産の原因としては、夫婦どちらかの染色体異常、母体の血液凝固異常、子宮の形態異常、内分泌異常などが考えられます。これらの原因が見つかれば、適切な治療を行うことで、次の妊娠で無事に出産できる可能性が高まります。

高齢妊娠

年齢が高くなるにつれて、卵子の質の低下が起こりやすくなり、受精卵の染色体異常のリスクが増加します。これが、高齢妊娠で流産の確率が高くなる主な理由です。高齢での妊娠は、稽留流産を含む様々なタイプの流産のリスクを高めることがわかっています。前述の流産確率の表からもわかるように、35歳を境にリスクが上昇し、40歳以上ではさらに顕著になります。

母体の基礎疾患

糖尿病、甲状腺機能異常、自己免疫疾患(抗リン脂質抗体症候群など)といった母体の基礎疾患がある場合、妊娠継続が難しくなったり、流産のリスクが高まったりすることがあります。これらの疾患がある場合は、妊娠前にしっかりとコントロールしておくことや、妊娠中も専門医の管理のもとで適切な治療を続けることが重要です。また、これらの疾患が流産の原因となっている場合は、妊娠前に診断がつかず、流産を繰り返した後に検査で判明することもあります。

これらの特徴に当てはまるからといって、必ずしも稽留流産になるわけではありません。あくまでリスクが高まる要因であり、多くの場合は無事に出産に至ります。しかし、もしご自身に当てはまる項目があり不安な場合は、妊娠前にかかりつけ医に相談したり、流産経験がある場合は不育症の専門医に相談したりすることをおすすめします。

妊娠初期に流産を避けるための過ごし方

残念ながら、胎児側の要因による流産を確実100%防ぐ方法はありません。しかし、母体の健康状態を良好に保ち、妊娠にとって良い環境を整えることは、流産のリスクを少しでも減らし、妊娠を継続するためにできる最善の努力と言えます。ここでは、妊娠初期に心がけたい過ごし方について解説します。

安静の重要性

流産の兆候(出血や腹痛)がある場合や、医師から切迫流産の診断を受けた場合は、医師の指示に従って安静にすることが最も重要です。安静の程度は症状によって異なりますが、自宅での絶対安静や、入院が必要な場合もあります。無理をして動き回ると、症状が悪化したり、流産に進行したりするリスクが高まります。

兆候がない場合でも、妊娠初期は無理をせず、十分な休息を取ることが大切です。仕事や家事の量を減らし、疲れたらすぐに横になるなど、体をいたわるようにしましょう。特に妊娠初期の体は、急激なホルモンバランスの変化やつわりなどで疲れやすくなっています。

バランスの取れた食事と葉酸摂取

妊娠初期は、赤ちゃんの脳や神経系の発達が盛んな時期です。この時期に特に重要となる栄養素が葉酸です。葉酸は、神経管閉鎖障害(赤ちゃんの脳や脊髄の先天異常)のリスクを低減することがわかっています。妊娠を希望する時期から妊娠初期にかけて、サプリメントなどで1日に400μgの葉酸を摂取することが推奨されています。

葉酸だけでなく、バランスの取れた食事を心がけることも重要です。主食、主菜、副菜を揃え、様々な食品から栄養素を摂取しましょう。つわりで食事が偏りがちな時期ですが、食べられるものを工夫して少量ずつでも摂るようにすることが大切です。鉄分やカルシウムなど、妊娠中に不足しがちな栄養素にも気を配りましょう。

特定の食品については、注意が必要です。生肉、生魚、加熱不十分な食品、ナチュラルチーズ、スモークサーモンなどは、リステリア菌やトキソプラズマなどの感染リスクがあるため避けるようにしましょう。大型魚に含まれる水銀にも注意が必要です。

十分な睡眠と休息

睡眠不足や疲労は、母体の免疫力を低下させ、体調を崩しやすくします。また、ホルモンバランスにも影響を与える可能性があります。妊娠初期は、体のだるさやつわりで日中も眠気を感じやすい時期です。夜は早めに就寝し、昼間も積極的に休息を取りましょう。理想的には、毎日同じ時間に寝起きし、質の良い睡眠を確保することが望ましいです。

ストレスマネジメント

過度なストレスは、妊娠初期の体にとって負担となります。完全にストレスをなくすことは難しいですが、ストレスを溜め込まないように工夫することが大切です。

  • リラックスできる時間を作る: 好きな音楽を聴く、アロマテラピーをする、軽い読書をする、温かいお風呂にゆっくり浸かるなど。
  • パートナーや家族とコミュニケーションを取る: 不安な気持ちや体調の辛さを話すだけでも楽になることがあります。家事や育児の分担について協力をお願いしましょう。
  • 完璧を目指さない: 妊娠中は、普段通りに家事や仕事ができなくても当たり前です。自分を責めず、できる範囲でこなしましょう。時には外食や惣菜に頼るのも良いでしょう。
  • 適度な運動: 体調が良い日は、無理のない範囲でウォーキングなど軽い運動をすることは、気分転換やストレス解消につながります。

かかりつけ医への相談

妊娠初期は、体調の変化や妊娠に関する様々な情報に触れて不安になりやすい時期です。些細なことでも気になることがあれば、一人で抱え込まずにかかりつけの産婦人科医や助産師に相談しましょう。専門家のアドバイスを聞くことで、不安が軽減されたり、適切な対応を教えてもらえたりします。定期健診以外でも、体調に変化があった場合はためらわずに連絡することが大切です。

流産の心配がある場合の対応

もし出血や腹痛などの流産の兆候が見られた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。パニックにならず、落ち着いて行動することが重要です。

不安を感じたらまず医療機関へ連絡

性器出血や強い腹痛など、普段と違う症状が出た場合、あるいは具体的な症状はなくても「何かおかしい」「不安でたまらない」と感じた場合は、迷わずかかりつけの産婦人科に電話で連絡しましょう。

電話では、以下の点を伝えるようにしてください。

  • 氏名、診察券番号(あれば)
  • 現在の妊娠週数
  • どのような症状が出ているか(出血の色、量、塊の有無、腹痛の程度、持続時間など)
  • 現在の体調
  • いつから症状が出ているか

電話で状況を説明することで、看護師や医師が症状の緊急性を判断し、受診が必要かどうか、いつ受診すべきか、それまでの間の過ごし方(安静にするなど)について指示してくれます。夜間や休日の場合は、救急外来の受診を指示されることもあります。

自己判断しないことの重要性

インターネット上には、様々な体験談や情報が溢れています。「この出血は大丈夫だった」「この腹痛は流産だった」など、他の方の経験談を読むことで、かえって不安が増したり、自己判断して受診を遅らせてしまったりする可能性があります。

同じような症状でも、その原因や緊急性は一人ひとり異なります。症状が軽いように見えても、速やかに医療的な処置が必要な場合もありますし、逆に、出血があっても妊娠が継続できるケースもあります。

大切な妊娠の経過について、インターネットの情報だけで自己判断することは非常に危険です。必ず医療機関の専門家の判断を仰ぐようにしてください。また、症状が一時的に軽くなったとしても、自己判断で受診を取りやめたりせず、一度医療機関に相談し、指示された通りに行動することが重要です。

まとめ:妊娠初期は無理せず安静に過ごしましょう

妊娠初期の流産は、残念ながら珍しいことではありません。その原因の多くは胎児側の染色体異常であり、お母さんの普段の行動が直接的な原因となることは少ないということを理解することが、不必要な自責の念を抱かないためにとても大切です。

しかし、母体の健康状態を良好に保ち、無理のない生活を送ることは、妊娠を継続し、元気な赤ちゃんを迎えるために重要なことです。激しい運動や重労働、喫煙、飲酒、過度のストレスや疲労は避け、バランスの取れた食事や十分な休息を心がけましょう。特に、葉酸の摂取は赤ちゃんの健やかな成長のために推奨されています。

もし出血や腹痛など、いつもと違う体の変化に気づいた場合は、自己判断せずに、速やかにかかりつけの産婦人科医に連絡し、指示を仰ぐようにしてください。妊娠初期は不安も大きい時期ですが、一人で悩まず、パートナーや家族と協力し、医療機関を頼りながら、無理のない範囲で安心して過ごしましょう。

この情報が、妊娠初期を過ごす妊婦さんの不安を少しでも和らげ、穏やかなマタニティライフを送るためのお手伝いとなれば幸いです。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。妊娠に関するご自身の状況については、必ず医療機関で専門医の診察を受け、指示に従ってください。

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