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子宮内膜ポリープと診断されたら?知っておくべき症状・治療・妊娠のこと

不正出血や月経量の増加、なかなか妊娠しないといったお悩みはありませんか。
あるいは、健康診断で「子宮内膜ポリープ」を指摘され、不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。

子宮内膜ポリープは女性によく見られる疾患の一つですが、その名前を聞き慣れない方も多く、「がんになるのでは?」「手術が必要なの?」など、さまざまな疑問が浮かぶことでしょう。

この記事では、子宮内膜ポリープの基礎知識から、症状、原因、最新の治療法、そして妊娠への影響まで、多くの方が抱く疑問について詳しく解説します。
正しい知識を得て、ご自身の体と向き合うための一助となれば幸いです。

目次

子宮内膜ポリープとは?基礎知識

子宮内膜ポリープとは、子宮の内側を覆っている「子宮内膜」という組織の一部が、キノコのように異常に増殖してできる、良性の腫瘍(できもの)です。

大きさは数ミリ程度の小さなものから、数センチに及ぶ大きなものまで様々で、1つだけできる場合もあれば、複数個できることもあります。
基本的には良性であり、過度に心配する必要はありませんが、症状の原因となったり、ごくまれに悪性のものが隠れていたりすることがあるため、正確な診断が重要になります。

子宮内膜ポリープの主な症状

子宮内膜ポリープの症状は、ポリープの大きさや数、場所によって異なります。
全く症状がなく、婦人科検診などで偶然発見されるケースも少なくありません。

代表的な症状には以下のようなものがあります。

  • 不正性器出血:最も多い症状です。
    月経と月経の間に出血したり、性交後に出血したりします。
    閉経後に出血が見られた場合も、ポリープが原因の一つとして考えられます。
  • 過多月経:月経時の出血量が異常に多くなる状態です。
    レバーのような血の塊が頻繁に出たり、昼でも夜用のナプキンが必要になったりします。
  • 月経期間の長期化:月経がダラダラと長く続くことがあります。
  • 不妊症・流産:ポリープが受精卵の着床を妨げたり(着床障害)、着床しても育ちにくくしたりすることで、不妊や流産の原因となることがあります。
  • 月経痛:ポリープが子宮の収縮を妨げることで、月経痛が悪化することがあります。

これらの症状に心当たりがある場合は、一度婦人科で相談することをおすすめします。

子宮内膜ポリープの原因とリスク

子宮内膜ポリープが発生する明確な原因は、まだ完全には解明されていません。
しかし、女性ホルモンの一つである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の作用が深く関わっていると考えられています。

エストロゲンには子宮内膜を厚く増殖させる働きがあります。
このエストロゲンの影響を過剰に受けることで、内膜の一部が異常に増殖し、ポリープを形成すると考えられています。

そのため、以下のような方は子宮内膜ポリープのリスクが高いとされています。

  • 30代後半~50代の女性:エストロゲンの分泌が活発な時期にできやすい傾向があります。
  • 肥満:脂肪組織でもエストロゲンが作られるため、肥満の方は血中のエストロゲン濃度が高くなる傾向があります。
  • 乳がんの治療薬(タモキシフェン)を服用している方:タモキシフェンは乳腺に対してはエストロゲンの働きを抑えますが、子宮内膜に対しては逆にエストロゲンのように作用し、ポリープや子宮体がんのリスクを高めることが知られています。

子宮内膜ポリープの原因はストレス?

「ストレスが原因ですか?」というご質問をよく受けますが、ストレスが子宮内膜ポリープの直接的な原因になるという医学的根拠はありません。

ただし、過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、結果としてホルモンバランスに影響を与える可能性があります。
その結果、間接的にポリープの発生や増大に関与する可能性は完全には否定できません。

子宮内膜ポリープの診断方法と検査

子宮内膜ポリープの診断は、主に以下の検査を組み合わせて行われます。

  1. 問診:不正出血や過多月経などの自覚症状、月経周期、妊娠歴などを詳しくお伺いします。
  2. 経腟超音波(エコー)検査:腟からプローブという細い器具を挿入し、子宮や卵巣の状態を観察します。
    子宮内膜が厚くなっていたり、内腔に突出する部分が見られたりすると、ポリープが疑われます。
    多くの場合はこの検査で発見されます。
  3. ソノヒステログラフィー:経腟超音波検査でポリープが疑われた際に行う精密検査です。
    子宮内に食塩水などの液体を注入し、子宮内腔を広げてから超音波検査を行います。
    これにより、ポリープの正確な大きさや位置、形をより鮮明に確認できます。
  4. 子宮鏡検査(ヒステロスコピー):細いカメラ(子宮鏡)を腟から子宮内に挿入し、子宮の中を直接観察する検査です。
    ポリープを直接目で見て確認できるため、最も確実な診断方法と言えます。
    検査と同時に、組織を一部採取(生検)して病理検査に出し、良性か悪性かを調べることも可能です。

子宮内膜ポリープの治療法

子宮内膜ポリープの治療方針は、ポリープの大きさ、症状の有無、年齢、妊娠希望の有無などを総合的に考慮して決定されます。
主な選択肢は「手術(ポリープ切除術)」「経過観察」の2つです。

子宮内膜ポリープは取るべきですか?治療方針の決定

ポリープが見つかったからといって、必ずしもすぐに切除が必要なわけではありません。
医師と相談しながら、ご自身に合った方針を決めていくことが大切です。

<切除(手術)を推奨されるケース>

  • 不正出血や過多月経などの症状が強く、生活に支障が出ている場合
  • 不妊症の原因になっていると考えられる場合(特に妊娠を希望している方)
  • ポリープが2cm以上など、サイズが大きい場合
  • 超音波検査などで悪性が疑われる所見がある場合
  • 閉経後に見つかったポリープや、閉経後に出血がある場合

<経過観察となるケース>

  • ポリープが小さく、特に症状がない場合
  • 妊娠の希望がない場合
  • 閉経が近く、自然に小さくなる可能性が期待できる場合

手術(ポリープ切除術)について

手術が必要と判断された場合、現在では患者さんの負担が少ない方法が主流となっています。

子宮内膜ポリープの手術方法

現在、最も一般的に行われているのは「子宮鏡下ポリープ切除術(TCR)」です。

これは、腟から子宮鏡(カメラ)と電気メスが一体となった手術器具を挿入し、子宮内をモニター画面で確認しながら、ポリープだけを正確に切除する方法です。
お腹を切る必要がなく、体への負担が非常に少ないのが特徴です。

以前は、子宮口から器具を入れ、手探りで子宮内膜を掻き出す「子宮内膜掻爬(そうは)術」も行われていましたが、子宮鏡下手術に比べてポリープの取り残しが起こりやすいため、現在では診断や治療の第一選択とはなっていません。

子宮内膜ポリープの手術費用と期間

手術費用は、保険適用の3割負担の場合、手術の内容や施設によって異なりますが、およそ5万円~15万円程度が目安となります。
高額療養費制度を利用できる場合もありますので、事前に医療機関や加入している健康保険組合に確認するとよいでしょう。

手術にかかる期間は、日帰り、もしくは1泊2日の入院で行われることがほとんどです。
術後は数日から1週間程度、激しい運動や性交渉を控えるなどの制限がありますが、日常生活には比較的早く復帰できます。

子宮内膜ポリープの手術をした人の話(体験談)

Aさん(34歳・不妊治療中)のケース

1年以上妊娠せず、不妊治療クリニックを受診。
検査で1.5cmの子宮内膜ポリープが見つかり、着床障害の原因の可能性があると説明を受けました。
不安でしたが、日帰りでの子宮鏡下手術を決意。
麻酔で眠っている間に手術は終わり、痛みもほとんどありませんでした。
術後3回目のタイミングで無事に妊娠することができ、あの時手術して本当に良かったと思っています。

Bさん(45歳・過多月経)のケース

昔から月経量が多く、ここ数年は貧血で立ちくらみがするほどでした。
婦人科で診てもらったところ、複数の子宮内膜ポリープが原因と判明。
1泊2日の入院で切除手術を受けました。
術後の最初の月経から出血量が劇的に減り、長年の悩みだった貧血も改善。
もっと早く相談すれば良かったと感じています。

※これらはあくまでフィクションの例であり、経過には個人差があります。

経過観察について

ポリープが小さく無症状の場合などには、すぐに治療せず定期的に様子を見る「経過観察」が選択されます。
3ヶ月~1年に1回程度、超音波検査などでポリープの大きさや形に変化がないかを確認します。

子宮内膜ポリープは自然に取れる?生理で流れる可能性

小さなポリープの場合、ごくまれに月経の際に厚くなった子宮内膜と一緒にはがれ落ち、自然になくなる(流れる)ことがあります。

しかし、これは稀なケースであり、多くはそのまま残存するか、少しずつ大きくなっていきます。
そのため、「自然に取れるかもしれない」と過度に期待して自己判断で放置するのではなく、医師の指示に従って定期的な検査を受けることが非常に重要です。

子宮内膜ポリープと悪性(がん)の関係

「ポリープはがんになるのではないか」という点は、最も心配されることの一つだと思います。

子宮内膜ポリープが癌になる確率は?悪性だった場合

結論から言うと、子宮内膜ポリープのほとんど(約95%以上)は良性です。
ポリープが悪性である(がんである)確率は非常に低く、数%程度と報告されています。

ただし、確率がゼロではないことも事実です。
特に、閉経後の不正出血を伴うポリープや、サイズが大きいもの、形が不整なものなどは、悪性の可能性をより慎重に評価する必要があります。

万が一、切除したポリープの病理検査で悪性(子宮体がん)と診断された場合は、がんの進行度に応じた追加の治療(子宮摘出術やリンパ節郭清、化学療法、放射線治療など)が必要となります。

子宮内膜ポリープと子宮体がん 違い

子宮内膜ポリープと子宮体がんは、どちらも子宮内膜から発生し、不正出血という共通の症状があるため混同されがちですが、異なる疾患です。

項目 子宮内膜ポリープ 子宮体がん
性質 ほとんどが良性の腫瘍 悪性の腫瘍(がん)
発生形態 内膜からキノコ状に突出して発育 内膜の広い範囲に浸潤(広がる)していく
悪性度 低い(ごく一部に悪性を含む) 高い(転移・浸潤する)
主な治療 子宮鏡下手術(ポリープ切除) 手術、化学療法、放射線療法など

ただし、前述の通り、ポリープの見た目をした子宮体がんの初期段階であることや、良性のポリープの中にがん細胞が隠れていることもあるため、最終的な診断には組織を採取して調べる病理検査が不可欠です。

子宮内膜ポリープと妊娠・不妊への影響

子宮内膜ポリープは、不妊や流産の原因になることがあります。

子宮内膜は、受精卵が着床し育っていくための「ふかふかのベッド」のような場所です。
ポリープがあると、このベッドにイボのような突起がある状態になり、以下のような影響を及ぼす可能性があります。

  • 着床障害:受精卵が子宮内膜に着床するのを物理的に邪魔する。
  • 炎症:ポリープの存在が子宮内に慢性的な炎症を引き起こし、着床しにくい環境を作る。
  • 流産の原因:着床したとしても、胎嚢の成長を妨げ、初期流産の原因となることがある。

このため、妊娠を希望している方で子宮内膜ポリープが見つかった場合は、たとえ小さくても切除することが推奨されるケースが多いです。
ポリープを切除することで、子宮内環境が改善し、妊娠率が向上することが多くの研究で報告されています。

子宮内膜ポリープを放置するとどうなる?放置した場合のリスク

無症状で小さなポリープであれば経過観察も可能ですが、自己判断で放置することには以下のようなリスクが伴います。

  • 症状の悪化:不正出血や過多月経が悪化し、貧血が進行する可能性があります。
  • 不妊・流産の原因:気づかないうちに妊娠の妨げになっている可能性があります。
  • ポリープの増大・増加:ポリープが大きくなったり、数が増えたりすることがあります。
  • 悪性の見逃し:ごく稀ですが、悪性であった場合に発見が遅れてしまうリスクがあります。

症状がなくても、医師から経過観察を指示された場合は、必ず定期的な検診を受けるようにしましょう。

子宮内膜ポリープの再発について

残念ながら、子宮鏡下手術でポリープをきれいに切除しても、再発する可能性はあります。

これは、ポリープが発生しやすいホルモン環境や体質そのものが変わるわけではないためです。
再発率は報告によって様々ですが、数%~十数%程度とされています。

再発を完全に予防する確実な方法はありませんが、術後も定期的に婦人科検診を受けることで、万が一再発した場合でも早期に発見し、対処することができます。

日常生活で気になること

子宮内膜ポリープと性行為

子宮内膜ポリープがある状態で性行為(セックス)を行うこと自体は、基本的には問題ありません。
しかし、性的な刺激によってポリープから出血し、性交後出血の原因となることがあります。

また、手術を受けた後は、子宮内膜が回復するまで一定期間の安静が必要です。
通常は、術後最初の月経が終わるまでの間(約1ヶ月程度)は、感染予防のため性行為を控えるよう指示されます。
必ず医師の指示に従ってください。

どのような場合に医療機関を受診すべきか

以下の症状に気づいたら、ためらわずに婦人科を受診してください。

  • 月経以外の時期に出血がある(不正出血)
  • 閉経したはずなのに出血があった
  • 性交後に出血する
  • 月経の出血量が明らかに多い、レバー状の塊が出る
  • 月経が8日以上ダラダラと続く
  • なかなか妊娠しない
  • 健康診断や人間ドックで子宮内膜の異常を指摘された

これらの症状は、子宮内膜ポリープだけでなく、子宮筋腫や子宮体がんなど、他の病気のサインである可能性もあります。
早期発見・早期治療のためにも、専門医による正確な診断を受けることが大切です。

まとめ

子宮内膜ポリープは、多くの女性が経験しうる身近な疾患です。
そのほとんどは良性であり、適切な診断と治療によって対処が可能です。

  • 主な症状は不正出血や過多月経で、不妊の原因にもなり得ます。
  • 診断は超音波検査や子宮鏡検査で行われます。
  • 治療は症状や妊娠希望の有無に応じて、手術か経過観察が選択されます。
  • 手術は体への負担が少ない子宮鏡下手術が主流です。
  • 悪性の可能性は低いですがゼロではないため、正確な診断が重要です。

最も大切なことは、不正出血などの気になる症状を放置せず、自己判断で悩まないことです。
不安や疑問があれば、ぜひ婦人科の専門医に相談し、ご自身にとって最適な道筋を見つけていきましょう。


免責事項:本記事は情報提供を目的とするものであり、医学的な診断や治療に代わるものではありません。具体的な症状や治療法については、必ず医療機関にご相談ください。

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