トリコモナス症は、トリコモナス原虫と呼ばれる微生物が原因で起こる性感染症(STD)の一つです。特に女性に多く見られますが、男性も感染し、パートナー間の感染を繰り返す「ピンポン感染」を引き起こすため、適切な治療薬を用いた早期の治療が非常に重要です。この記事では、トリコモナス症の治療に用いられる主要な治療薬の種類、具体的な治療法、治療期間、そして治療における注意点について、専門的な視点から詳しく解説します。トリコモナス症かもしれないと不安を感じている方、現在治療中の方にとって、完治に向けた一助となれば幸いです。
トリコモナス症とは?感染経路と主な症状
トリコモナス症は、「腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)」という病原性の原虫によって引き起こされる感染症です。この原虫は、主に性行為によって人から人へ感染します。性器間の直接的な接触だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスでも感染する可能性があります。
また、非常に稀ではありますが、下着やタオル、浴槽などを介して感染する可能性も指摘されています。ただし、トリコモナス原虫は乾燥に弱く、ヒトの体外では長時間生存できないため、性行為を介さない感染は一般的ではありません。ほとんどの場合、性的接触が感染経路となります。
トリコモナス症の症状は、性別によって現れ方が異なります。
女性の場合:
女性は比較的症状が出やすく、以下のような症状が見られることがあります。
- 多量の泡状またはクリーム状の黄色~緑色のおりもの
- おりものの強い悪臭(魚の腐ったような臭いと表現されることもあります)
- 外陰部や腟のかゆみ、灼熱感
- 排尿時の痛み(排尿痛)
- 性交時の痛み(性交痛)
- 腟や子宮頸部の炎症(発赤、ただれ)
これらの症状は月経後に悪化する傾向があります。しかし、女性でも約20~50%が無症状であると言われており、自分では気づかないうちに感染を広げている可能性があります。
男性の場合:
男性は無症状であることが非常に多いのが特徴です。約70~80%の男性は症状が現れません。症状が出る場合でも、軽度であることがほとんどです。
- 尿道のかゆみや不快感
- 軽い排尿痛
- 尿道からの少量の分泌物
男性がトリコモナスに感染した場合、無症状でもパートナーへの感染源となり、放置すると慢性前立腺炎などの合併症を引き起こす可能性も指摘されています。
診断は、医療機関で分泌物(女性はおリもの、男性は尿道分泌物や尿)を採取し、顕微鏡でトリコモナス原虫の有無を確認したり、培養検査や遺伝子検査(PCR法)を行ったりすることで行われます。特にPCR法は感度が高く、微量の原虫でも検出できるため、無症状の場合や正確な診断が必要な場合に有用です。
トリコモナス症に有効な治療薬の種類
トリコモナス症の治療には、主に「ニトロイミダゾール系」と呼ばれる種類の抗菌薬(抗原虫薬)が用いられます。これは、トリコモナス原虫に対して高い殺原虫作用を持つ薬剤です。
現在、日本でトリコモナス症の治療薬として主に処方されているのは、以下の2種類です。
メトロニダゾール(フラジール)について
- 主成分: メトロニダゾール
- 作用機序: メトロニダゾールは、トリコモナス原虫の細胞内で活性化され、原虫のDNAやその他の重要な生体分子の合成を阻害することで、原虫を死滅させます。嫌気性菌など、他の特定の細菌にも有効な広い抗菌スペクトルを持っています。
- 剤形: 内服薬(錠剤)、腟錠(膣坐剤)があります。
- 主な用法・用量:
- 内服薬: 標準的な治療法としては、1回250mgまたは500mgを1日2~3回、通常7日間服用します。医療機関によっては、より短期間で高用量(例:1回2gを単回または2回に分けて服用)を処方する場合もありますが、副作用の発現リスクが高まる可能性があるため、標準的な7日間治療が推奨されることが多いです。
- 腟錠: 女性の場合に用いられます。通常、1日1回(夜、就寝前など)に腟内に挿入し、10~14日間使用します。腟内のトリコモナス原虫に対して直接的に作用します。
- 副作用: 比較的安全性の高い薬剤ですが、以下のような副作用が見られることがあります。
- 吐き気、嘔吐、食欲不振
- 口の中の苦味や金属味
- 腹痛、下痢
- 頭痛、めまい
- 稀に、末梢神経障害(手足のしびれなど)、けいれんなどの神経系症状
- 注意点: メトロニダゾール服用中の最も重要な注意点は、アルコールの摂取を絶対に避ける必要があるということです。メトロニダゾールは、アルコールの代謝に関わる酵素の働きを阻害するため、体内にアルコール分解過程で生じるアセトアルデヒドが蓄積しやすくなります。これにより、顔面紅潮、動悸、吐き気、頭痛などの不快な症状(ジスルフィラム様作用、またはアンタビュース様作用と呼ばれます)を引き起こす可能性があります。
服用中だけでなく、服用終了後少なくとも24~72時間(製品や個人差による)はアルコール摂取を控える必要があります。 - 禁忌・慎重投与: メトロニダゾールに対して過敏症の既往がある方、血液疾患のある方、神経系疾患のある方、妊娠初期の方(特に最初の3ヶ月)などには投与禁忌または慎重投与となります。必ず医師に既往歴やアレルギー、妊娠の可能性などを伝える必要があります。
チニダゾール(ハイシジン)について
- 主成分: チニダゾール
- 作用機序: メトロニダゾールと類似しており、原虫のDNA合成などを阻害することで殺原虫作用を発揮します。
- 剤形: 主に内服薬(錠剤)です。
- 主な用法・用量:
- 内服薬: 標準的な治療法としては、1回500mgを1日1回、1~2日間服用します。メトロニダゾールに比べて短期間での治療が可能であることが特徴です。医療機関や症状によって用法は異なりますので、必ず医師の指示に従ってください。
- 副作用: メトロニダゾールと類似した副作用(吐き気、金属味、頭痛、めまいなど)が見られます。
- 注意点: チニダゾールもメトロニダゾールと同様に、服用中および服用終了後少なくとも72時間(製品や個人差による)はアルコールの摂取を避ける必要があります。ジスルフィラム様作用を引き起こすリスクがあります。
- 禁忌・慎重投与: チニダゾールに対して過敏症の既往がある方、血液疾患のある方、神経系疾患のある方、妊娠初期の方などには投与禁忌または慎重投与となります。
- メトロニダゾールとの使い分け: チニダゾールはメトロニダゾールに比べて半減期が長いため、短期間での投与が可能というメリットがあります。メトロニダゾールで効果が不十分な場合や、アレルギーがある場合、短期間での治療を希望する場合などに選択されることがあります。ただし、どちらの薬剤を使用するかは、医師が患者さんの状態や既往歴、アレルギーなどを考慮して判断します。
トリコモナス症の標準的な治療法
トリコモナス症の治療は、これらの有効な治療薬を適切に使用することによって行われます。治療の最も重要な原則は、感染していることが確認された本人だけでなく、性的なパートナーも同時に治療を行うことです。これにより、パートナー間での再感染(ピンポン感染)を防ぎ、完治を目指すことができます。
内服薬による治療
内服薬は、体内に吸収されて全身に薬の成分が行き渡るため、腟だけでなく、尿道や膀胱、男性の場合は前立腺など、トリコモナス原虫が潜んでいる可能性のある体の隅々まで効果を期待できます。男女ともに使用される標準的な治療法です。
内服薬の用法・用量には、主に以下のパターンがあります。
- 短期間集中療法: 例として、メトロニダゾール2gを1回だけ、または2回に分けて服用、あるいはチニダゾール1gを1~2日間服用などがあります。短期間で治療を終えられるというメリットがありますが、副作用が出やすい、あるいは効果が不十分な場合があるといったデメリットも指摘されており、推奨度は標準療法に劣る場合があります。
- 標準期間療法: メトロニダゾール250mgまたは500mgを1日2~3回、7日間服用する方法が一般的です。確実に原虫を死滅させるために、定められた期間、毎日欠かさず服用することが非常に重要です。
どの用法を選択するかは、医師が患者さんの状態、過去の治療歴、ライフスタイルなどを考慮して決定します。自己判断で用法・用量を変えたり、症状が改善したからといって服用を中断したりすることは、治療失敗や耐性原虫の出現につながる可能性があるため、絶対に避けてください。
腟錠(膣坐剤)による治療
腟錠は、女性のみが使用できる治療法です。薬を直接腟内に挿入することで、腟内にいるトリコモナス原虫に集中的に作用させます。
- 使用方法: 通常、就寝前などに腟の奥深くに挿入します。アプリケーターが付属している場合もあります。
- 用法・用量: メトロニダゾール腟錠の場合、通常1日1回、10~14日間連続して使用します。
- メリット: 内服薬に比べて全身性の副作用が出にくいというメリットがあります。
- デメリット: 腟外(尿道や膀胱など)に感染が及んでいる場合、腟錠だけでは十分な効果が得られない可能性があります。
そのため、女性のトリコモナス症治療では、内服薬による全身治療と、腟錠による局所治療を組み合わせて行う「併用療法」が推奨される場合が多くあります。特に症状が重い場合や、再発を繰り返す場合に併用療法が選択されることがあります。また、内服薬の副作用が強く出る場合や、内服薬が使用できない場合に、腟錠単独での治療が選択されることもあります。
男女別の治療法の違い
女性の場合(内服薬と腟錠)
女性の場合、主に腟や外陰部に症状が現れますが、尿道や膀胱にも感染が及ぶことがあります。また、子宮頸部にも感染が広がる可能性があります。
そのため、女性の治療では、以下のいずれかの方法が選択されます。
- 内服薬単独療法: メトロニダゾールまたはチニダゾールの内服薬を一定期間服用します。全身に効果が行き渡るため、腟だけでなく尿道など広範囲の感染に対応できます。
- 内服薬と腟錠の併用療法: 内服薬で全身治療を行いながら、腟錠で腟内の原虫をより確実に死滅させる方法です。より高い治療効果が期待でき、特に症状が強い場合や治りにくい場合に推奨されます。
妊娠中の女性がトリコモナス症に感染した場合、流産や早産、低出生体重児のリスクを高める可能性があるため、治療が必要です。妊娠中でも比較的安全に使用できるとされているメトロニダゾールが選択されることが多いですが、妊娠週数などを考慮し、必ず産婦人科医と相談の上、慎重に治療方針を決定する必要があります。
男性の場合(主に内服薬)
男性の場合、トリコモナス原虫は主に尿道に寄生しますが、前立腺や精嚢にも感染が及ぶことがあります。男性器の構造上、腟錠を使用することはできません。
そのため、男性のトリコモナス症治療は、原則として内服薬による全身治療が行われます。メトロニダゾールまたはチニダゾールの内服薬を定められた期間服用します。
男性は無症状であることが多いため、パートナーがトリコモナス症と診断された場合に、自身に症状がなくても検査・治療を受けることが非常に重要です。無症状だからといって治療を怠ると、パートナーが治療を終えても、男性から再びパートナーに感染させてしまい、いつまでたっても完治しないという状況(ピンポン感染)を招いてしまいます。
治療薬の効果と治療期間
トリコモナス症は、適切な治療薬を正しく使用すれば、比較的高い確率で完治が期待できる感染症です。一般的に、推奨される治療法での治癒率は80~95%程度と報告されています。
薬を飲んでから症状が改善するまでの目安
治療薬(内服薬)を服用し始めてから、数日~1週間程度でかゆみやおりものの異常といった症状が改善してくることが多いです。特に女性の場合、症状が比較的早く和らぐのを実感しやすいでしょう。
しかし、症状が改善したからといって、自己判断で薬の服用を中断するのは非常に危険です。体内にトリコモナス原虫が完全にいなくなっていない状態で薬をやめてしまうと、残存した原虫が再び増殖して症状が再燃したり、薬に対して抵抗力を持つ耐性原虫が出現したりするリスクがあります。
処方された薬は、症状がなくなったとしても、医師から指示された期間、最後まで飲みきることが絶対条件です。
治癒判定のための再検査について
トリコモナス症の治療において、薬を飲み終えた後に「治癒したかどうか」を確認するための再検査は非常に重要です。症状が消失したとしても、体内にごく少数の原虫が残っている可能性や、パートナーから再感染している可能性が否定できないためです。
- いつ行うか: 治療薬の服用(または腟錠の使用)を終了してから、通常1~2週間後に再検査を行います。女性の場合は、生理期間中は分泌物によって原虫が見えにくくなることがあるため、生理が終わってから数日後に行うのが望ましいとされています。
- どのように行うか: 治療前と同じように、分泌物や尿などを採取し、顕微鏡検査、培養検査、またはPCR検査を行います。PCR検査は感度が高いため、より確実に治癒を確認するために推奨されることが多いです。
- なぜ重要か: 再検査でトリコモナス原虫が検出されないことを確認して初めて、「完治」と判断できます。もし再検査で陽性となった場合は、治療が不十分であったか、パートナーから再感染したか、または耐性原虫によるものなどが考えられ、再度治療が必要となります。特にパートナーも同時に治療を受けていない場合は、再感染のリスクが極めて高くなります。
治療期間中の注意点(性行為など)
治療を成功させ、再感染を防ぐためには、治療期間中にいくつかの重要な注意点を守る必要があります。
- 性行為は避ける: 治療を受けている本人だけでなく、パートナーも同時に治療を終え、かつ双方の治癒が確認できるまでは、性行為(腟性交、オーラルセックス、アナルセックスすべて)を避ける必要があります。治療期間中に性行為を行うと、治療中のパートナーに感染させてしまったり、自分が治療していても相手が未治療の場合はすぐに再感染してしまったりする「ピンポン感染」を繰り返すことになります。
- アルコール摂取の禁止: 特にメトロニダゾールやチニダゾールを内服している場合は、前述の通りアルコール摂取によって重篤な不快症状(ジスルフィラム様作用)が出現するリスクがあります。服用中だけでなく、服用終了後も一定期間(メトロニダゾールは24時間~72時間、チニダゾールは72時間程度が目安)は完全にアルコールを断つ必要があります。
- 処方された通りに服用する: 薬を飲む時間や回数、期間は医師の指示を厳守してください。飲み忘れがないように注意し、もし飲み忘れた場合は医師や薬剤師に相談してください。
- 症状の変化に注意: 治療開始後に症状が悪化したり、新しい症状が現れたりした場合は、すぐに医療機関に連絡してください。他の感染症を併発している可能性や、薬の効果が不十分な可能性などが考えられます。
- 下着やタオルの共用を避ける: 性行為以外での感染は稀ですが、念のため、治療期間中は下着、タオル、バスマットなどを家族や同居人と共用しない方が安心です。衣類はこまめに洗濯し、可能であれば乾燥機で熱を加えてください。
治療薬はどこで処方してもらえる?
トリコモナス症の治療薬は、医師の診断に基づき処方される「処方箋医薬品」です。薬局やドラッグストアで市販薬として購入することはできません。必ず医療機関を受診する必要があります。
婦人科や性病科などの医療機関
トリコモナス症の検査や治療は、以下の医療機関で受けることができます。
- 女性: 婦人科
- 男性: 泌尿器科
- 男女共通: 性病科、感染症内科、皮膚科(一部)
特に婦人科や泌尿器科、性病科は性感染症に関する専門知識や経験が豊富ですので、安心して相談できます。保険診療が適用される疾患ですので、保険証を持参して受診しましょう。医師による問診、検査(分泌物や尿の採取)、そして診断に基づき、適切な治療薬が処方されます。
オンライン診療での処方について
近年、性感染症の診療においてもオンライン診療を行う医療機関が増えています。トリコモナス症の治療薬についても、オンライン診療で処方を受けられる場合があります。
オンライン診療のメリット:
- 自宅や職場など、場所を選ばずに受診できるため、通院の負担が軽減されます。
- 待ち時間が少なく、比較的短時間で診療を受けられる場合があります。
- 他の患者さんと顔を合わせることがないため、プライバシーが守られやすいと感じる方もいます。
- クリニックによっては土日や夜間も対応しているため、忙しい方でも受診しやすいです。
オンライン診療のデメリット:
- 分泌物や尿の採取といった検査をその場で行うことができません。オンライン診療でトリコモナス症の治療薬を希望する場合、事前に提携機関で検査キットを用いて自己採取した検体を送付したり、他の医療機関で受けた検査結果を提出したりする必要がある場合があります。正確な診断のためには、何らかの方法で検査を行うことが不可欠です。
- 医師が直接患部を視診することができないため、情報が限られる場合があります。
- 症状が複雑な場合や他の疾患が疑われる場合は、対面診療を勧められることがあります。
オンライン診療を利用する場合は、トリコモナス症の検査方法や薬の配送方法、料金体系などを事前にしっかり確認し、信頼できる医療機関を選ぶことが重要です。治療薬は郵送で送られてきますが、梱包などに配慮してくれるクリニックが多いです。
市販薬や通販での購入は可能か?
結論から申し上げますと、トリコモナス症に有効な治療薬を薬局やドラッグストアで購入できる市販薬、あるいはインターネット通販で個人輸入として購入できる製品は、信頼性や安全性の面から推奨できません。
前述の通り、トリコモナス症の治療薬は医師の診断と処方が必要な「処方箋医薬品」です。自己判断で服用することは、診断の遅れ、不適切な治療、副作用のリスク増加につながります。
インターネットなどで販売されている海外製のトリコモナス治療薬は、個人輸入という形になります。個人輸入には以下のようないくつもの危険が伴います。
- 偽造薬のリスク: インターネットで流通している医薬品の中には、有効成分が全く入っていない、量が不足している、あるいは全く別の成分や有害物質が混入している偽造薬が多数存在します。これらを服用しても効果がないどころか、健康被害を引き起こす可能性があります。厚生労働省なども個人輸入の危険性について強く警告しています。
- 品質の保証がない: 製造方法や品質管理が不明であり、製品の安定性や安全性が保証されません。
- 副作用被害救済制度の対象外: 医薬品を適正に使用したにも関わらず、副作用によって健康被害が生じた場合、日本の公的な救済制度(医薬品副作用被害救済制度)の対象となるのは国内で製造販売承認された医薬品に限られます。個人輸入した医薬品による健康被害は、この制度の対象外となります。
- 自己判断の危険性: 医師の診断なしに自己判断で薬を使用することは、症状の原因を特定できないまま放置したり、他の重篤な疾患を見逃したりする可能性があります。また、適切な用法・用量を守れず、効果が得られなかったり副作用が出やすくなったりします。
トリコモナス症の診断には専門的な検査が必要であり、治療薬の選択や用量、期間は医師が患者さんの状態を把握した上で行うべきです。ご自身の健康と安全のためにも、必ず医療機関を受診し、医師の処方によって正規の医薬品を入手してください。
トリコモナス症治療におけるパートナーとの同時治療の重要性
トリコモナス症治療において、最も強調すべき点の一つが「パートナーとの同時治療」です。これは、トリコモナス症が主に性行為によって感染するため、片方だけが治療を受けても、治癒する前に再びパートナーから感染してしまう(ピンポン感染)リスクが非常に高いからです。
- ピンポン感染のメカニズム: 例えば、女性がトリコモナス症と診断され治療を開始したとします。もし男性パートナーも感染しているにも関わらず未治療であれば、女性が治療を終えても、性行為によって再び男性からトリコモナス原虫が女性に感染します。こうして治療と再感染を繰り返し、いつまで経っても完治しないという悪循環に陥ってしまいます。
- 無症状パートナーの危険性: 特に男性は無症状であることが多いため、「自分は症状がないから感染していないだろう」と考えて治療を受けないケースが見られます。しかし、症状がなくても感染している可能性は十分にあり、自覚がないままパートナーへの感染源となります。女性パートナーがトリコモナス症と診断された場合、男性パートナーも無症状であっても必ず検査を受け、陽性の場合は同時に治療を開始することが不可欠です。
- 同時治療のメリット: パートナーが同時に治療を受けることで、双方からトリコモナス原虫がいなくなり、治癒後の再感染を防ぐことができます。これにより、治療の成功率が格段に向上します。
パートナーにトリコモナス症について話し、一緒に検査・治療を受けてもらうことは、デリケートな問題であり難しいと感じるかもしれません。しかし、これはお互いの健康を守り、治療を成功させるために避けて通れない道です。どのように伝えるか困る場合は、医療機関のスタッフに相談してみるのも良いでしょう。多くのクリニックでは、パートナーへの説明や受診勧奨についてアドバイスを提供しています。
他の性感染症(クラミジアなど)との併発について
トリコモナス症に感染している場合、他の性感染症(STD)も同時に感染している「併発」の可能性が高いことが知られています。これは、トリコモナス症も他の主要なSTD(クラミジア、淋病、梅毒、HIVなど)も、主に性行為という同じ経路で感染するためです。
- 併発率: トリコモナス症の患者さんのうち、約半数がクラミジア感染症も併発しているという報告もあります。また、淋病やその他のSTDとの併発も見られます。
- なぜ併発を考慮する必要があるか:
- トリコモナス症の治療だけを行っても、併発している他のSTDが未治療のまま残り、症状が改善しなかったり、そのSTDによる合併症(例:クラミジアによる不妊症や骨盤内炎症性疾患)を引き起こしたりする可能性があります。
- 他のSTDがトリコモナス症の症状をマスクしたり、診断を難しくしたりすることもあります。
- STDを複数併発している場合、HIVを含む他のSTDへの感染リスクも高まる可能性があります。
そのため、医療機関でトリコモナス症の検査や治療を受ける際には、医師から他の主要なSTDについても一緒に検査を受けることを勧められるのが一般的です。特に、クラミジア、淋病、梅毒、HIV、B型肝炎、C型肝炎など、性行為で感染する可能性のある疾患について、積極的に検査を受けることを検討しましょう。
もし他のSTDも併発していることが分かった場合は、トリコモナス症の治療と同時に、それぞれのSTDに有効な治療薬を用いて治療を行います。例えば、クラミジアであればアジスロマイシンやドキシサイクリンなどの抗菌薬、淋病であればセフトリアキソンなどの抗菌薬が用いられます。併発しているSTDの種類に応じて、複数の薬剤を服用または使用することになります。
よくある質問(FAQ)
トリコモナスに効く薬は?
トリコモナス症に有効な主な治療薬は、ニトロイミダゾール系の抗菌薬です。具体的には、メトロニダゾール(商品名例:フラジール)やチニダゾール(商品名例:ハイシジン)が主に用いられます。これらの薬はトリコモナス原虫を死滅させる作用があります。必ず医師の処方が必要であり、自己判断での入手や使用はできません。
フラジールで何日で治る?
フラジール(メトロニダゾール)内服薬によるトリコモナス症の標準的な治療期間は、通常7日間です。1回250mgまたは500mgを1日2~3回服用します。短い期間で高用量を服用する方法(例:1回2gを単回または2回に分けて)や、腟錠を10~14日間使用する方法など、医師の判断によって異なる用法・用量が選択されることもあります。症状は数日で改善することが多いですが、処方された期間、最後まで薬を飲みきることが重要です。治療後には治癒確認のための再検査が必要です。
婦人科で薬は処方してもらえますか?
はい、女性は婦人科でトリコモナス症の検査を受け、診断されれば治療薬を処方してもらうことができます。男性は泌尿器科で、男女ともに性病科や感染症内科でも検査・治療を受けることができます。
薬を飲んでから何日で治りますか?
薬を飲み始めてから、おりものの異常やかゆみなどの症状は通常数日~1週間程度で改善することが多いです。しかし、症状が改善したからといって完治したわけではありません。体内にトリコモナス原虫が完全にいなくなったことを確認するためには、治療薬の服用(または腟錠の使用)を終えてから1~2週間後に行う再検査で陰性となることが必要です。処方された薬は指示通り全て使用し、必ず再検査を受けて治癒を確認してください。
治療中にアルコールを飲んでも大丈夫?
いいえ、絶対に飲んではいけません。メトロニダゾールやチニダゾールを服用中にアルコールを摂取すると、顔が赤くなる、動悸、吐き気、頭痛などの不快な症状(ジスルフィラム様作用)を引き起こす可能性があります。薬の服用中だけでなく、服用終了後も製品や個人差によりますが、少なくとも24時間~72時間程度はアルコールを完全に断つ必要があります。
治療中に性行為はできる?
いいえ、治療期間中およびパートナーの治療が完了し、双方の治癒が確認できるまでは性行為(あらゆる形態)を避けるべきです。性行為を行うと、パートナー間での再感染(ピンポン感染)を繰り返し、治療が成功しない原因となります。
治療後、症状はないけどパートナーがまだ治療していない場合、性行為は?
ご自身の症状が改善しても、パートナーがまだ未治療の場合は、パートナーがあなたへの感染源となります。パートナーが検査を受け、診断に基づいた治療を完了し、双方の治癒が再検査で確認できるまで、性行為は避けるべきです。
まとめ:トリコモナス症治療薬と治療法について
トリコモナス症は、トリコモナス原虫による性感染症であり、特に女性に多く見られますが、男性も感染し、パートナー間のピンポン感染が問題となります。適切な治療を受ければ比較的高い確率で完治が期待できる疾患です。
トリコモナス症の治療には、主にニトロイミダゾール系の内服薬であるメトロニダゾール(フラジール)やチニダゾール(ハイシジン)が用いられます。女性の場合は、内服薬に加えて腟錠が併用されることもあります。これらの治療薬は、医師の診断と処方が必須の「処方箋医薬品」であり、自己判断での市販薬や個人輸入での入手は危険が伴うため絶対に避けてください。
標準的な治療期間は内服薬で7日間程度ですが、医師の判断で短期間療法などが選択される場合もあります。薬を服用し始めてから数日で症状の改善が見られることが多いですが、症状がなくなったとしても、処方された薬は最後まで飲みきることが重要です。
トリコモナス症治療の成功には、感染者本人だけでなく、性的なパートナーも同時に検査を受け、陽性の場合は同時に治療を開始することが極めて重要です。これにより、パートナー間での再感染(ピンポン感染)を防ぎ、完治を目指すことができます。また、トリコモナス症と他の性感染症(クラミジアなど)を併発しているケースも多いため、必要に応じて他のSTD検査も受けることを推奨します。
治療期間中は、性行為やアルコール摂取を避けるといった注意点を守る必要があります。そして、治療薬の服用(または使用)終了後には、必ず治癒を確認するための再検査を受けてください。再検査で陰性となることが、トリコモナス症からの完治を意味します。
トリコモナス症の検査や治療は、女性は婦人科、男性は泌尿器科、男女ともに性病科などの医療機関で受けられます。近年はオンライン診療で検査キットの送付や薬の処方を行うクリニックも増えており、受診の選択肢の一つとなります。
もしトリコモナス症が疑われる症状がある場合や、パートナーがトリコモナス症と診断された場合は、放置せずに速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが、ご自身の健康とパートナーの健康を守るために最も大切なことです。
免責事項:本記事は、トリコモナス症の治療薬に関する一般的な情報を提供するものです。個々の症状、既往歴、体質などによって、最適な治療法や薬剤は異なります。したがって、本記事の内容はあくまで参考としていただき、実際の診断や治療方針の決定については、必ず医療機関を受診し、医師にご相談ください。自己判断による薬剤の使用や治療の中断は、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。