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眠れないまま朝になった…どうする?寝不足でも一日乗り切る対策

一睡もできなかったまま朝を迎えてしまったとき、体は重く、頭はぼーっとして、なんともいえない不安な気持ちになりますよね。「このまま一日を乗り切れるだろうか」「どうして眠れなかったのだろう」と、様々な思いが頭を駆け巡ることでしょう。特に、学校や仕事がある日であれば、その不安は一層募ります。

しかし、眠れなかった朝でも、できることはたくさんあります。適切な対処法を知り、原因に目を向けることで、その日一日を少しでも快適に過ごし、さらには今後の不眠を防ぐためのヒントを得ることができます。

この記事では、「眠れないまま朝になった」というつらい状況を乗り切るための具体的な対処法から、一晩眠れなかったことの影響、そして根本的な原因と改善策、さらには医療機関への相談目安までを詳しく解説します。この記事を読み終える頃には、眠れない朝の不安が少しでも和らぎ、次の一歩を踏み出す勇気が湧いてくるはずです。ぜひ最後まで読み進めて、あなたの睡眠に関する悩みを解消する一助としてください。

目次

眠れないまま朝になった時の対処法

一睡もできないまま朝を迎えてしまった場合、どうすれば良いのでしょうか。焦りや後悔の念に駆られるかもしれませんが、まずは冷静に状況を把握し、その日一日を乗り切るための最善策を講じることが重要です。ここでは、眠れない朝に試せる具体的な対処法をご紹介します。

まずは「横になるだけ」でも効果がある?

「どうせ眠れないなら、ベッドから出て何かした方が良いのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、たとえ眠れなかったとしても、朝まで布団やベッドの中で横になっていたことには、一定の意味があります。

完全に眠りに入らなくても、ただ横になっているだけでも体や脳を休ませる効果は期待できます。立ったり座ったりしている状態に比べて、体にかかる重力が軽減されるため、筋肉や関節への負担が減り、リラックスすることができます。また、目を閉じているだけでも、脳に入ってくる情報量が減り、脳の疲労を軽減する助けになります。これは、まるでパソコンを完全にシャットダウンするのではなく、スリープモードにするようなイメージです。完全に活動を停止するわけではありませんが、消費エネルギーを抑え、待機状態になることで、次への活動に備えることができます。

もちろん、質の高い睡眠には及びませんが、一睡もできなかったとしても、体を横たえて安静を保っていた時間は、何もしないよりもずっとマシです。無理に起き上がって活動するよりも、まずは体を休ませることを優先した自分を責める必要はありません。朝になったら、その状態からいかにして一日をスタートさせるかを考えましょう。

朝の過ごし方で寝不足を軽減する

眠れないまま朝を迎えた日でも、朝の過ごし方次第で、日中の眠気やだるさを多少なりとも軽減することができます。体内時計を整え、体と心を活動モードに切り替えるための工夫を取り入れてみましょう。

日光を浴びる

起きたらすぐにカーテンを開け、朝日を浴びることを強くおすすめします。人間の体内時計は、脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分がコントロールしており、光刺激によってリセットされる仕組みになっています。

できれば、15分から30分程度、屋外に出て散歩をするのが理想的です。難しければ、窓際で朝食を摂るだけでも効果があります。曇りの日でも、屋外の光は室内光よりもずっと強力なため、効果が期待できます。日光を浴びることで、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制され、活動モードへの切り替えがスムーズになります。また、セロトニンという精神安定作用のある神経伝達物質の分泌も促されるため、気分を前向きにする効果も期待できます。

朝食をしっかり摂る

眠れないまま朝を迎えると、食欲がないと感じるかもしれません。しかし、朝食をしっかり摂ることは、エネルギーを補給し、脳と体を活動させるために非常に重要です。特に、炭水化物は脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖に分解されるため、ご飯やパンなどを食べることで、日中の集中力低下を抑える助けになります。

タンパク質を含む食品(卵、魚、肉、大豆製品など)を一緒に摂ることで、血糖値の急激な上昇を抑え、午後の眠気を軽減する効果も期待できます。また、よく噛んで食べることで、脳が覚醒しやすくなります。消化の良い温かいスープや味噌汁などは、冷えた体を内側から温め、リラックス効果ももたらすでしょう。逆に、糖分が多いものや脂っこいものは、消化にエネルギーを使い、眠気を誘う可能性があるので避けた方が無難です。

カフェインを適量利用する

眠気を覚ますために、コーヒーや紅茶に含まれるカフェインを利用するのも一つの方法です。カフェインは、脳内で眠気を引き起こす物質であるアデノシンの働きをブロックすることで、覚醒作用を発揮します。

ただし、量とタイミングが重要です。起きてすぐ飲むよりも、覚醒作用が最も効果を発揮するのは摂取後30分〜1時間程度とされています。そのため、活動を始める少し前に飲むと効果的です。また、飲みすぎは心拍数の増加、手の震え、不安感などを引き起こす可能性があり、夜の睡眠に悪影響を及ぼすこともあるため注意が必要です。1日に200〜400mg程度(コーヒー2〜3杯分)を目安とし、午後遅い時間帯(一般的には午後3時以降)の摂取は控えるようにしましょう。

軽い運動を取り入れる

朝に軽い運動を取り入れることも、体を目覚めさせ、血行を促進し、気分をリフレッシュするのに役立ちます。激しい運動は体に負担をかける可能性がありますが、ストレッチや軽いウォーキングであれば、心地よく体を動かすことができます。

例えば、10分程度の散歩をする、自宅で簡単なストレッチやヨガを行うなどが考えられます。体を動かすことで、血行が良くなり、脳への酸素供給が増え、覚醒度が高まります。また、心地よい疲労感は、夜の質の高い睡眠にもつながる可能性があります(ただし、これは日中の話であり、その日の夜にすぐ効果が出るとは限りません)。新鮮な空気を吸いながら体を動かすことは、精神的なリフレッシュにもつながり、眠れなかったことによる落ち込みを和らげる効果も期待できます。

仕事や学校がある日の乗り切り方

眠れないまま仕事や学校に行かなければならないのは、非常に辛い状況です。パフォーマンスの低下や集中力の欠如は避けられないかもしれませんが、工夫次第でリスクを最小限に抑え、一日を乗り切ることが可能です。

優先順位を決める

寝不足の状態で全てを完璧にこなそうとするのは無理があります。まずは、その日に絶対にやらなければならないこと、重要度の高いことの優先順位をつけましょう。緊急ではないタスクや、集中力をあまり必要としないルーチンワークは、後回しにするか、可能であれば別日に振り替えることも検討します。

特に、複雑な判断が必要な作業やミスの許されない作業は、寝不足の影響を受けやすいため注意が必要です。重要な会議やプレゼンテーションがある場合は、事前にできる限りの準備をしておき、当日は資料を十分に参照するなど、記憶力や集中力の低下を補う工夫をしましょう。同僚や友人に状況を正直に伝え、助けを求めることも恥ずかしいことではありません。一人で抱え込まず、周囲の協力を得ることも大切です。

仮眠を効果的に活用する

可能であれば、昼休みや休憩時間中に仮眠をとることが非常に効果的です。短い仮眠は、その後の覚醒度や集中力を回復させる効果があることが多くの研究で示されています。

仮眠の理想的な長さは15分から20分程度とされています。これ以上長くなると、深い眠りに入ってしまい、目覚めたときに眠気やだるさが増す「睡眠慣性」と呼ばれる状態になりやすいためです。目覚まし時計をセットし、時間が来たらすぐに起きるようにしましょう。仮眠をとる時間帯は、午後の早い時間(例えば昼食後)がおすすめです。遅い時間に仮眠をとると、夜の睡眠に影響する可能性があるからです。静かで暗い場所を確保できると理想的ですが、それが難しければ、デスクに伏せて寝るだけでも一定の効果は期待できます。

体調が悪い場合は休む判断も

どうしても体調が優れない、頭痛や吐き気がある、集中力があまりに低下して仕事や学業に支障が出そう、という場合は、無理をせず休むという判断も重要です。特に、危険な作業を伴う仕事をしている場合や、運転を伴う移動がある場合は、寝不足は事故につながる大きなリスクとなります。

自分の体調を過信せず、正直に上司や学校に状況を説明し、休息をとる許可を得ましょう。有給休暇を利用したり、欠席の連絡を入れたりすることに罪悪感を感じる必要はありません。無理をして体調を崩したり、大きなミスをしてしまったりする方が、結果的に周りにも迷惑をかける可能性があります。自分の健康と安全を最優先に考え、時には立ち止まる勇気を持つことが大切です。医療機関で診断書をもらう必要があるかなども、状況に応じて確認しましょう。

眠れないまま朝になった時「やってはいけないこと」

眠れないまま朝を迎えたとき、ついやってしまいがちなNG行動があります。これらは、その日一日をさらに辛くしたり、長期的な睡眠問題を悪化させたりする可能性があります。意識して避けるようにしましょう。

  • 寝だめをしようとする: 休日などに、前日の寝不足を取り戻そうと普段より何時間も長く寝てしまうと、体内時計が乱れ、次の日の夜に再び眠れなくなるという悪循環に陥りやすくなります。寝不足の解消には、規則正しい時間に寝て起きることを続ける方が効果的です。
  • 必要以上にカフェインを摂取する: 眠気を覚ますためにカフェインを大量に摂取すると、一時的な覚醒効果は得られますが、動悸、手の震え、不安感などを引き起こす可能性があります。また、カフェインの効果が切れた後に強い反動の眠気に襲われたり、夜になっても覚醒状態が続いて寝付けなくなったりすることもあります。適量を守り、午後遅い時間の摂取は控えましょう。
  • アルコールで眠気を紛らわせる: 「夜は眠れるだろう」と期待して、寝酒を飲むのは避けましょう。アルコールは一時的に寝つきを良くする効果があるかもしれませんが、睡眠の質を低下させます。特に深い睡眠(徐波睡眠)やレム睡眠を妨げ、夜中に目覚めやすくなるため、結果的に睡眠不足を悪化させます。
  • 激しい運動をする: 疲労困憊の状態での激しい運動は、体に大きな負担をかけ、体調を崩す原因になります。軽い散歩やストレッチ程度に留め、無理は禁物です。
  • 重要な決断や難しい作業を無理に進める: 寝不足は判断力や集中力を低下させます。重要な決断を下したり、複雑でミスの許されない作業を行ったりすることは、リスクを伴います。可能であれば、これらの作業はコンディションが良い時に行うように延期しましょう。
  • 運転や危険な機械操作を行う: 集中力や反応速度が著しく低下しているため、非常に危険です。事故を起こす可能性が高まります。公共交通機関を利用するなど、安全な移動手段を確保しましょう。
  • 「なぜ眠れなかったのか」と過度に悩む: 眠れなかったことをクヨクヨ考えても、何も解決しませんし、精神的なストレスが増えるだけです。「今回は仕方なかった」と割り切り、その日一日をどう乗り切るか、そして今後どうすれば良いかに焦点を当てましょう。
  • 終日、部屋に閉じこもる: 日光を浴びたり、軽い運動をしたりすることが、体内時計の調整や気分のリフレッシュに役立ちます。家に閉じこもって暗い部屋で過ごすよりも、意識して外に出てみる時間を持ちましょう。

眠れないまま朝になった主な原因

一晩眠れないという経験は誰にでも起こりうるものですが、その背景には様々な原因が隠れていることがあります。原因を知ることは、今後の対策を考える上で非常に重要です。ここでは、眠れないまま朝を迎えてしまう主な原因をいくつかご紹介します。

精神的なストレス

現代社会において、精神的なストレスは不眠の最も一般的な原因の一つです。仕事の悩み、人間関係のトラブル、将来への不安、あるいは心配事など、様々なストレスが心を占めると、脳が覚醒状態になりやすく、眠りに入りにくくなります。

ストレスを感じると、体は「闘争か逃走か」反応と呼ばれる状態になり、交感神経が優位になります。これにより、心拍数が上がり、血圧が上昇し、筋肉が緊張するなど、体が活動に適した状態になります。この状態が寝る時間になっても続いてしまうと、リラックスして眠りにつくことが難しくなるのです。ベッドに入っても、「あのことが気になる」「どうしよう」といった考えが頭の中でぐるぐる回ってしまい、眠りから遠ざかってしまいます。また、ストレスは睡眠の質も低下させ、たとえ眠れたとしても、浅い眠りになりがちです。

生活習慣の乱れ

生活習慣は、睡眠に大きな影響を与えます。特に、以下のような習慣は、眠りを妨げる原因となります。

  • 不規則な睡眠時間: 毎日寝る時間や起きる時間がバラバラだと、体内時計が乱れ、自然な眠りのリズムが崩れてしまいます。
  • 夜更かし: 寝るべき時間になっても起きていたり、夜遅くまでスマホやパソコンを使用したりする習慣は、脳を覚醒させ、寝つきを悪くします。
  • 寝る前のカフェインやアルコールの摂取: カフェインの覚醒作用や、アルコールによる睡眠の質の低下は既に述べた通りです。寝る前の摂取は避けるべきです。
  • 寝る前の激しい運動や熱すぎる入浴: 体が興奮したり、体温が上がりすぎたりして、寝つきが悪くなることがあります。寝る前の運動はストレッチ程度にし、入浴はぬるめのお湯にゆっくり浸かる方がリラックス効果があります。
  • 就寝前の食事: 寝る直前に食事を摂ると、消化のために胃腸が活発に働き、体や脳が休息モードに入りにくくなります。就寝前2~3時間前までには食事を済ませるのが理想的です。
  • 日中の活動量不足: 日中に体を動かさないでいると、夜になっても十分な睡眠圧(眠りたいという欲求)が高まらず、寝つきが悪くなることがあります。適度な運動は、夜の眠りを深くする効果があります。

睡眠環境の問題

快適な睡眠をとるためには、寝室の睡眠環境も非常に重要です。以下のような環境は、眠りを妨げる可能性があります。

  • 明るすぎる寝室: 寝室が明るすぎると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制され、眠りに入りにくくなります。遮光カーテンなどを利用して、できるだけ暗くすることが大切です。
  • 騒がしい寝室: 外部の騒音や、室内の物音は、眠りを妨げたり、睡眠の質を低下させたりします。耳栓を利用したり、ホワイトノイズ(一定の周波数の雑音)を流したりすることが有効な場合もあります。
  • 寝室の温度・湿度: 寝室の温度が高すぎたり低すぎたり、あるいは湿度が適切でなかったりすると、快適に眠ることができません。一般的に、寝室の温度は18℃~22℃程度、湿度は40%~60%程度が理想とされています。
  • 合わない寝具: 硬すぎる、柔らかすぎるマットレスや枕は、体圧が適切に分散されず、体の痛みを引き起こしたり、寝返りを妨げたりして睡眠の質を低下させます。自分に合った寝具を選ぶことが大切です。
  • 寝室での活動: 寝室を寝るため以外の目的(仕事、食事、スマホやテレビの長時間利用など)で使用していると、「寝室=眠る場所」という関連付けが弱まり、寝室に入っても体が眠るモードに切り替わりにくくなることがあります。寝室は基本的に眠るためだけに使用し、寝床で長時間スマホを見るのは避けましょう。

その他の原因(病気など)

不眠の原因として、上記のような精神的なものや生活習慣、環境の問題だけでなく、病気や薬の副作用が関係している場合もあります。

  • 睡眠障害: 睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸が一時的に止まる)、むずむず脚症候群(寝ようとすると足に不快な感覚があり動かしたくなる)、周期性四肢運動障害(睡眠中に手足が involuntarily に動く)、概日リズム睡眠障害(体内時計のずれ)、ナルコレプシー(日中の過剰な眠気)など、様々な睡眠障害があります。
  • 精神疾患: うつ病や不安障害などの精神疾患は、不眠を伴うことが非常に多いです。不眠がこれらの疾患のサインである場合もあります。
  • 身体疾患: アレルギーによるかゆみ、胃食道逆流症による胸焼け、関節痛や腰痛、呼吸器疾患による咳や息苦しさ、頻尿など、体の不調や痛み、不快感が原因で眠れないことがあります。
  • 薬の副作用: 一部の薬剤(例:ステロイド、気管支拡張薬、一部の降圧薬や抗うつ薬など)には、不眠を副作用として引き起こすものがあります。

これらの原因が疑われる場合は、自己判断せず、医療機関に相談することが重要です。

一睡もできなかった!これは大丈夫?

一晩全く眠れなかった、という経験は、体力的にも精神的にも非常に消耗します。初めて経験した場合は、特に不安になるかもしれません。「一晩眠れなくても大丈夫なのか」「体に悪い影響はないのか」といった疑問が浮かぶでしょう。

一時的な寝不足の影響

健康な成人であれば、一晩眠れなかったとしても、通常は一時的な体調の変化で済み、深刻な健康問題に直結することは稀です。しかし、日中のパフォーマンスには様々な影響が出ます。

  • 日中の強い眠気: 最も顕著な影響です。特に単調な作業中や休憩中などに強い眠気に襲われやすくなります。
  • 集中力・注意力の低下: 物事に集中するのが難しくなり、ケアレスミスが増える可能性があります。
  • 判断力の低下: 複雑な問題解決能力や意思決定能力が鈍る可能性があります。
  • 記憶力の低下: 新しい情報を覚えたり、必要な情報を思い出したりするのが難しくなることがあります。
  • 作業効率の低下: 全体的に作業スピードが落ちたり、普段より時間がかかったりします。
  • イライラや気分の落ち込み: 精神的に不安定になりやすく、普段なら気にならないことにイライラしたり、落ち込んだりすることがあります。
  • 体の不調: 頭痛、だるさ、目の疲れ、胃腸の不調などを感じることがあります。
  • 食欲の変化: 食欲が増進したり、逆に食欲がなくなったりすることがあります。特に甘いものや脂っこいものが欲しくなる傾向があるという研究もあります。
  • 免疫機能の一時的な低下: 一晩の寝不足でも、免疫細胞の働きが一時的に低下することが知られています。

これらの影響は、通常、次の日に十分な睡眠をとることで回復します。一晩眠れなかったこと自体を過度に心配するよりも、その日一日を安全に乗り切るための対処法を実践することに集中しましょう。

複数日続く場合の注意点

問題となるのは、一晩眠れない状態が複数日、あるいは数週間以上続く場合です。単なる一時的な不眠ではなく、「慢性不眠」の状態に移行している可能性があり、心身の健康に様々な悪影響を及ぼすリスクが高まります。

期間 影響の可能性(一時的な不眠) 影響の可能性(複数日・慢性不眠)
一晩のみ 日中の眠気、集中力・判断力低下、イライラ、体の不調
数日間続く 一時的な影響の悪化、睡眠負債の蓄積 疲労感・倦怠感の慢性化、作業効率のさらなる低下、感情の不安定化、風邪を引きやすくなる
数週間~数ヶ月続く 健康問題のリスク増加: 高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、心血管疾患、脳卒中、免疫機能の低下、癌のリスクとの関連性が指摘される場合も。
精神的な問題: うつ病、不安障害、パニック障害などのリスク増加、QOL(生活の質)の著しい低下。
事故のリスク: 居眠り運転や作業中の事故リスクが大幅に増加。

慢性的な睡眠不足は、「睡眠負債」として体に蓄積されていきます。睡眠負債が大きくなると、心身の健康を損なうリスクが加速度的に高まります。単に「眠れない」という問題だけでなく、様々な病気の原因となったり、既存の病気を悪化させたりする可能性があるのです。

もし、一晩眠れないという状況が頻繁に起こるようになったり、数日以上にわたって眠れない状態が続いたり、日中の眠気や不調によって生活に大きな支障が出ている場合は、決して軽視せず、専門家や医療機関に相談することが非常に重要です。

眠れない日々が続く場合の改善策と病院目安

一時的な不眠であれば、特別な治療をしなくても自然に解消することが多いですが、不眠が続く場合は、原因を特定し、適切な対策をとる必要があります。ここでは、眠れない日々が続く場合の根本的な改善策と、医療機関を受診する目安について解説します。

根本的な睡眠の質を高める方法

眠れない日々を解消し、睡眠の質を高めるためには、単に「寝よう」と頑張るだけでなく、日中を含めた生活全体を見直し、睡眠衛生を改善することが重要です。睡眠衛生とは、快適な睡眠を得るための生活習慣や睡眠環境のあり方を指す言葉です。以下に、具体的な睡眠衛生のポイントをいくつかご紹介します。

  • 規則正しい生活を送る: 毎日できるだけ同じ時間に寝て、同じ時間に起きるようにしましょう。休日も、平日との差を1〜2時間以内にとどめるのが理想です。規則正しい生活は、体内時計を整え、自然な睡眠リズムを構築する上で最も基本となる習慣です。
  • 寝床は眠るためだけに使用する: 寝床で長時間、読書、スマホ、テレビ、考え事などをすることは避けましょう。「寝床=眠る場所」という強い関連付けをすることで、寝床に入ると自然と眠くなるように体を慣らしていきます。眠れない場合は、一度寝床から出て、リラックスできることをして、眠気を感じたら再び寝床に戻るようにします。
  • 寝る前にリラックスする時間を作る: 寝る1〜2時間前からは、心身をリラックスさせるための時間にあてましょう。ぬるめのお湯での入浴、軽いストレッチ、静かな音楽を聴く、アロマテラピーなどが有効です。スマホやPCの画面から発せられるブルーライトは脳を覚醒させるため、寝る前の使用は控えましょう。
  • 寝室環境を快適にする: 寝室は、暗く、静かで、快適な温度・湿度に保つように調整しましょう。遮光カーテン、耳栓、適切な寝具などを活用します。
  • カフェインやアルコールの摂取を控える: 特に午後の遅い時間帯や寝る前のカフェインやアルコール摂取は、睡眠を妨げます。
  • タバコを避ける: ニコチンには覚醒作用があり、寝つきを悪くしたり、睡眠を浅くしたりします。寝る前の喫煙は避けるべきです。
  • 寝る前の食事は避ける: 就寝前2〜3時間以内は、消化のために胃腸が働くのを避けるため、食事は控えるようにしましょう。
  • 日中に適度な運動をする: 日中に体を動かすことは、夜の眠りを深くする効果があります。ただし、寝る直前の激しい運動は避けましょう。
  • 長時間、明るい場所で過ごす: 日中に太陽の光を十分に浴びることは、体内時計を整える上で重要です。また、夜間は部屋の照明を暖色系の暗めに設定するなど、光の刺激を調節しましょう。
  • どうしても眠れないときは焦らない: 「眠らなければ」と強く意識すると、かえって緊張して目が冴えてしまいます。眠れないときは、「仕方ない」と割り切り、リラックスすることを心がけましょう。眠れないまま横になっているだけでも、体は休まっています。

これらの睡眠衛生の習慣を継続的に実践することで、多くの不眠は改善される可能性があります。しかし、効果が出るまでには時間がかかる場合もありますし、これらの習慣だけでは不十分な場合もあります。

医療機関への相談タイミング

以下のような場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、専門家のアドバイスを求めることを強く推奨します。

  • 不眠が2週間以上続き、改善が見られない: 一時的な不眠ではなく、慢性不眠に移行している可能性が高いです。放置せず、専門医に相談しましょう。
  • 日中の眠気やだるさがひどく、生活に大きな支障が出ている: 仕事や学業のパフォーマンスが著しく低下したり、運転中に眠気に襲われたりするなど、日常生活に危険が及んでいる場合は、早急な対処が必要です。
  • 不眠以外に、他に気になる症状がある: 寝ている間の大きないびきや呼吸停止(睡眠時無呼吸症候群の可能性)、寝ようとすると足がむずむずする、昼間に我慢できないほどの眠気に襲われるなど、不眠以外の睡眠に関連する症状がある場合は、特定の睡眠障害の可能性があります。また、体の痛み、かゆみ、胸焼け、咳などの身体症状や、気分の落ち込み、強い不安感といった精神症状が不眠の原因となっている、あるいは不眠に伴って現れている場合も、原因疾患の治療が必要です。
  • 市販薬やセルフケアで改善が見られない: 睡眠改善薬(一時的な不眠に対する市販薬)や、上で述べた睡眠衛生の改善を試しても効果がない場合、専門的な診断や治療が必要な不眠である可能性があります。

何科を受診すれば良いか?

不眠の原因は多岐にわたるため、最初に何科を受診すべきか迷うかもしれません。一般的な選択肢としては以下の通りです。

  • 精神科・心療内科: ストレスやうつ病、不安障害などの精神的な問題が不眠の原因である可能性が高い場合に適しています。
  • 睡眠外来: 睡眠障害全般を専門的に診察・治療する診療科です。睡眠時無呼吸症候群などの具体的な睡眠障害が疑われる場合に最も適しています。大きな病院に設置されていることが多いです。
  • 内科: 身体的な疾患(痛み、咳、頻尿など)が不眠の原因となっている可能性がある場合に、まずはかかりつけの内科医に相談してみるのも良いでしょう。必要に応じて専門医を紹介してもらえることもあります。

診察では、いつから、どのような状況で眠れないのか、日中の状態、既往歴、服用中の薬、生活習慣などについて詳しく聞かれます。必要に応じて、睡眠日誌の記録や、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)のような専門的な検査が行われることもあります。検査結果に基づいて、薬物療法(睡眠薬など)や、認知行動療法(不眠に対する考え方や行動パターンを変える治療法)など、適切な治療法が提案されます。

眠れない状態が続くことは、心身ともに大きな負担となります。一人で抱え込まず、早めに専門家の助けを借りることが、健康的な睡眠を取り戻すための最も確実な道です。


免責事項:

この記事は、一般的な情報の提供を目的としており、医学的なアドバイスや診断に代わるものではありません。個々の症状については、必ず医師やその他の資格を持った医療専門家の診察を受けるようにしてください。この記事の情報に基づいて行ったいかなる行動についても、筆者および公開者は責任を負いません。

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