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家族にだけキレる大人は病気?考えられる原因と対処法

「家族にだけ、なぜか強く当たってしまう」
「イライラしてついキレてしまう…これって病気?」と一人で悩んでいませんか?
外では冷静に振る舞えるのに、家に帰って大切な家族を前にすると、感情のコントロールができなくなってしまうという方は少なくありません。
その怒りの背景には、単なる甘えや疲れだけでなく、さまざまな心理的要因や、場合によっては隠れた病気が関係していることもあります。
この記事では、家族にだけキレてしまう大人の行動の原因や、関連する可能性のある病気の種類、そして、本人や家族がどのように対処していけば良いのかを詳しく解説します。
もし「これは病気かもしれない」と感じたら、専門家への相談もぜひ検討してみてください。

家族にだけ感情的になってしまう、つい強く当たってしまうという行動は、多くの場合、日頃のストレスや疲れ、家族という安心できる場所での甘えなどが原因と考えられます。しかし、その頻度や強さが尋常でなかったり、自分でもコントロールできないと感じるほどである場合、単なる性格や甘えではなく、何らかの心理的な問題や、精神疾患、発達障害、あるいは身体的な病気が関連している可能性もゼロではありません。

特に、以下のようなサインが見られる場合は、病気との関連を疑う一つの目安となります。

  • 怒りやイライラの頻度や強さが著しい
  • 怒りを自分ではコントロールできないと感じる。
  • 怒りによって人間関係が深刻に損なわれている(特に家族関係)。
  • 怒り以外にも、気分の落ち込み、過度な不安、睡眠障害、食欲不振などの他の症状が併せて見られる。
  • 怒りの後に強い後悔や自己嫌悪に苛まれる。
  • 家族以外の人に対しては怒りを露わにすることがほとんどない

これらの行動が病気と直接関連しているかどうかは、専門家による診断が必要です。しかし、「もしかしたら何か原因があるのかもしれない」と考えることは、問題解決の第一歩となります。放置することで、家族関係が修復不可能なほど悪化したり、自身の精神状態が悪化したりするリスクもあります。適切な理解と対処のためにも、病気との関連性について知ることは重要です。

目次

家族にだけキレやすい大人の主な原因

家族にだけキレてしまう原因は一つではありません。さまざまな要因が複合的に絡み合っていることがほとんどです。ここでは、主な原因について「心理的・環境的な要因」「身体的な要因」「隠れている可能性のある病気」の3つに分けて詳しく見ていきましょう。

心理的・環境的な要因

多くの人が、家族の前でなら素の自分を出せる、甘えられると感じています。これは健全な関係性の一側面でもありますが、同時に、外で溜め込んだストレスや不満を、最も安全だと感じる家族に向けて爆発させてしまう原因にもなり得ます。

  • 外での過剰な我慢と抑圧: 職場や友人関係、社会生活において、自分の感情を抑え、良い顔をしたり、期待に応えようと努力したりする機会は多々あります。特に真面目な人や責任感が強い人は、必要以上に我慢を重ねてしまいがちです。その抑圧された感情が、最も安心できる家族という場所で解放され、怒りとして噴出することがあります。
  • 家族だからこその安心感と甘え: 家族は、良くも悪くも自分のすべてを受け入れてくれるだろうという期待や、多少感情的になっても関係が壊れることはないだろうという安心感があります。この「言っても大丈夫」「甘えても許される」という意識が、外ではできない感情表現、つまり怒りや不満の爆発につながることがあります。これは信頼の裏返しとも言えますが、相手に与えるダメージは大きい場合があります。
  • 役割からの解放とギャップ: 多くの大人は、社会的な役割(会社員、親、地域のメンバーなど)を演じています。家に帰るとこれらの役割から解放され、本来の自分に戻ります。しかし、このオンとオフの切り替えがうまくいかない場合や、社会的な自分と家庭での自分の間のギャップが大きいほど、そのひずみが感情の不安定さとして現れることがあります。
  • 過去の経験や家族関係のパターン: 育ってきた家庭環境での怒りや感情表現のパターン(親がよく怒鳴っていた、感情を抑圧する家庭だったなど)は、無意識のうちに自分の行動パターンに影響を与えていることがあります。また、過去のトラウマや未解決の感情的な問題が、現在の家族関係に影を落とし、怒りとして現れることもあります。
  • コミュニケーションのすれ違いや問題: 家族間での率直な感情表現が苦手だったり、問題解決のための話し合いがうまくできなかったりする場合、不満が蓄積し、それが怒りという形で爆発しやすくなります。「どうせ言ってもわかってもらえない」という諦めや、「これくらい言わなくてもわかるだろう」という期待も、コミュニケーションの壁となり得ます。
  • 疲労と睡眠不足: 身体的・精神的な疲労は、感情のコントロール能力を著しく低下させます。寝不足が続くと、脳の機能、特に前頭前野という感情や衝動を抑制する部位の働きが鈍くなり、些細なことにもイライラしやすくなったり、衝動的な言動が増えたりします。
  • 育児や介護のストレス: 子育てや親の介護は、時間的、肉体的、精神的に大きな負担となります。慢性的な疲労や寝不足に加え、自分の時間が持てない、感謝されないといった感情が蓄積し、最も身近な存在である家族(配偶者や子供、被介護者本人)に怒りとして向かってしまうことがあります。
  • 経済的な問題や将来への不安: お金に関する問題や、自身のキャリア、子供の教育、親の健康など、将来に対する漠然とした不安は、常に心のどこかに重くのしかかり、感情の安定を損ないます。これらのストレスが、余裕のなさとして家族への苛立ちや怒りにつながることがあります。

これらの心理的・環境的な要因は、多くの人が経験しうるものです。しかし、これらの要因が重なったり、対処法が分からなかったりすると、感情のコントロールが難しくなり、家族関係に亀裂を生じさせてしまうことがあります。

身体的な要因

感情のコントロールには、脳機能やホルモンバランスが深く関わっています。そのため、身体的な問題が原因で、感情的になりやすくなったり、怒りっぽくなったりすることがあります。

  • ホルモンバランスの変化: 特に女性の場合、月経前症候群(PMS)や更年期障害など、ホルモンバランスの急激な変化が、イライラや感情の不安定さ、怒りやすさにつながることがあります。男性も加齢に伴い男性ホルモンが減少することで、気力の低下とともに感情の起伏が激しくなるケースが見られます。
  • 甲状腺機能亢進症: 甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。動悸や発汗、体重減少といった症状に加え、精神的な症状としてイライラしやすさ、落ち着きのなさ、怒りっぽさが見られることがあります。
  • 慢性的な痛みや体調不良: 常に身体的な不調や痛みを抱えていると、それ自体が大きなストレスとなり、精神的な余裕を失わせます。結果として、普段なら気にしないような些細なことにもイライラしたり、感情的になったりしやすくなります。
  • 脳の機能低下や損傷: 脳血管障害(脳梗塞、脳出血)の後遺症や、頭部外傷、認知症の初期症状など、脳の特に感情や行動を制御する部位(前頭前野など)に損傷や機能低下が生じると、感情のコントロールが難しくなり、易怒性(怒りやすさ)や衝動的な行動が見られることがあります。

これらの身体的な原因による怒りやイライラは、病気の治療によって改善が見込める場合があります。感情の不安定さに加えて、身体的な不調も感じている場合は、まず内科などで相談してみることも大切です。

隠れている可能性のある「病気」

前述の心理的・環境的な要因や身体的な要因に加え、特定の精神疾患や発達障害などが、家族にだけキレる行動の根本的な原因となっていることがあります。これらの病気の場合、本人の努力だけでは改善が難しく、専門家による診断と治療が必要になります。次のセクションで、関連する可能性のある病気について詳しく解説します。

家族にだけキレる行動に関連する病気の種類

家族にだけ怒りをぶつけてしまう行動の背景には、いくつかの病気が隠れている可能性があります。ここでは、特に関連が指摘されることの多い病気について解説します。ただし、これらの症状があるからといって必ずしも病気であるとは限らず、診断は専門医が行うものです。自己判断せず、あくまで情報として参考にしてください。

精神疾患の可能性

特定の精神疾患は、感情のコントロールが困難になったり、衝動的な行動が見られたりする症状を伴うことがあります。

双極性障害

双極性障害は、抑うつ状態とうつ病とは異なる躁状態(または軽躁状態)を繰り返す気分障害です。躁状態の時には、気分が異常に高揚したり、活動的になったりする一方で、非常に怒りっぽく、攻撃的になることがあります。些細なことにも過敏に反応し、批判されたと感じると激しく反論したり、衝動的に怒鳴ったり、物を壊したりすることもあります。家族は、躁状態の時の本人の言動に振り回され、疲弊してしまうことが多いです。うつ状態の時には、意欲の低下や気分の落ち込みが優勢になり、怒りっぽさは目立たなくなることもあります。気分の波が大きく、その波によって感情のコントロールが困難になるのが特徴です。

間欠性爆発性障害

間欠性爆発性障害は、予期しない衝動的な攻撃行動を繰り返すことを特徴とする障害です。攻撃行動は、言語的なもの(怒鳴る、罵る)も物理的なもの(物を壊す、人に危害を加える)も含まれます。これらの行動は、状況に不釣り合いなほど激しく、本人は後で強い後悔を感じることが多いです。攻撃行動は衝動的で、計画性はなく、特定の引き金(トリガー)によって突然起こることがあります。特に、親しい関係性である家族に対して攻撃行動が起こりやすい傾向があります。診断には、一定期間内に複数回、衝動的な攻撃行動が見られることなどが基準となります。

適応障害・うつ病

適応障害やうつ病は、持続的なストレスが原因で心身に様々な症状が現れる病気です。これらの病気では、気分の落ち込みや意欲の低下が主な症状として知られていますが、イライラ感や怒りっぽさが前面に出ることも少なくありません。「抑うつ性易刺激性(Irritable Depression)」とも呼ばれ、うつ病の一症状として怒りやすくなるケースがあります。ストレスの原因が家族関係にある場合や、家族にしか弱みを見せられないという状況で、これらの感情が怒りとして現れることがあります。普段は穏やかな人が、特定のストレス状況下や抑うつ状態の時に、家族に対して感情的になる場合は、適応障害やうつ病の可能性も考えられます。

発達障害の可能性

発達障害のある方の中には、特性として感情の調整が難しかったり、衝動的な行動が見られたりすることがあり、それが家族との関係性の中で怒りとして現れることがあります。

ADHD(注意欠如・多動症)

ADHDは、不注意、多動性、衝動性といった特性を持つ発達障害です。特に衝動性の特性が強い場合、感情を抑えることが難しく、瞬間的にカッとなったり、思わず強い言葉を言ってしまったりすることがあります。また、「感情調整不全(Emotional Dysregulation)」として、感情の起伏が激しく、些細なことにも過敏に反応して怒りや不安が強く現れるといった特性が見られることもあります。これらの特性が、最も気兼ねなく過ごせる家族との関わりの中で顕著に出やすい傾向があります。

ASD(自閉スペクトラム症)

ASDは、対人関係や社会的なコミュニケーションの困難、限定された興味やこだわり、感覚の偏りといった特性を持つ発達障害です。ASDのある方の中には、予期せぬ状況の変化に弱かったり、自分のこだわりが邪魔されたりすると、強い不安や混乱を感じ、それがパニックや怒りとして現れることがあります。また、自分の感情を言葉で適切に表現するのが苦手な場合、フラストレーションが溜まりやすく、それが怒りとして爆発してしまうこともあります。感覚過敏がある場合、特定の音や光、肌触りなどが強いストレスとなり、イライラや怒りにつながることもあります。家族は、これらの特性による行動を理解できず、対応に困ることがあります。

パーソナリティ障害

パーソナリティ障害は、対人関係や自己認識、感情、行動パターンなどに著しい偏りが見られ、それが持続することによって社会生活や対人関係に困難が生じる障害です。いくつかのタイプがありますが、家族への怒りや感情の不安定さに関連するものとして、境界性パーソナリティ障害が挙げられます。

境界性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害は、対人関係、自己イメージ、感情、行動の不安定さを特徴とする障害です。見捨てられ不安が非常に強く、親しい関係にある家族などに対して、理想化とこき下ろし(全か無か思考)を繰り返すことがあります。相手を「素晴らしい人だ」と思っていたかと思うと、些細なことで「裏切られた」「ひどい人だ」と感じ、激しい怒りや非難を向けたり、衝動的な行動をとったりします。感情の起伏が非常に激しく、怒りや不安、抑うつ状態などが短時間のうちに入れ替わることもあります。特に、最も親しい存在である家族に対して、激しい感情の爆発が起こりやすい傾向があります。

その他の身体疾患が影響する場合

前述の身体的な要因とも関連しますが、脳腫瘍やてんかん、特定の神経疾患などが、感情コントロールの障害や易怒性の原因となることがあります。例えば、脳の特定の部位の腫瘍や損傷が、人格の変化や衝動性の増加を引き起こすことがあります。また、てんかんの部分発作の中には、感情の爆発として現れるタイプのものも存在します。高齢者の場合、認知症の初期症状として、以前は穏やかだった人が怒りっぽくなったり、疑い深くなったりすることがあります。

これらの病気は、専門医による詳細な検査や問診によって診断されます。家族にだけキレる行動が、これらの病気と関連している場合、適切な治療によって症状の改善が期待できます。原因が何であるかを知ることは、効果的な対処法を見つける上で非常に重要です。

病気かもしれないと思ったときのチェック項目・受診の目安

「家族にだけキレる」という行動が、単なる性格や甘えではなく、病気に関連しているかもしれないと感じたとき、まずはその行動について客観的に振り返ってみることが役立ちます。以下のチェック項目は、病気の可能性を疑う一つの目安となります。これらの項目に複数当てはまる場合や、その程度が強い場合は、専門家への相談を検討するきっかけにしてください。

病気を疑うサインのチェックリスト

項目 はい いいえ
家族への怒りやイライラの頻度や強さが、以前と比べて明らかに増した。
怒りの感情が湧くと、自分でもコントロールできないと感じることが多い。
怒りによって、家族との関係性が深刻に悪化していると感じる。
家族以外の人に対しては、ほとんど怒りを露わにすることがない。
怒りの後に、強い後悔や自己嫌悪に苛まれることが多い。
怒りの感情だけでなく、気分の落ち込み、過度な不安、不眠などの他の症状がある。
怒りやイライラに関連して、頭痛、動悸、胃痛などの身体症状がある。
怒りのスイッチが入ると、衝動的に物を壊したり、乱暴な言葉遣いになったりする。
怒りの原因が、客観的に見て些細なことであると感じることが多い。
怒りやイライラが、特定の期間や状況で特に強くなる傾向がある。
飲酒量が増えたり、他の依存行動(ギャンブルなど)が見られるようになった。
集中力や判断力が低下したと感じる。

受診の目安

上記のチェックリストを参考に、どのような状況になったら専門家(医師)に相談すべきか、具体的な目安を以下に示します。

  • 自分自身でコントロールできないと感じる場合: 怒りやイライラが自分の意思では止められない、抑えられないと感じる場合。
  • 家族関係に深刻な亀裂が入っている場合: 怒りによって家族が精神的に追い詰められている、家にいるのが怖い、別居を考えるほど関係性が悪化している場合。
  • 暴力や破壊行為がある場合: 家族に対して物理的な暴力を行ってしまう、衝動的に物を壊してしまうなど、本人だけでなく家族の安全が脅かされる可能性がある場合。
  • 怒り以外の精神症状や身体症状が伴う場合: 気分の落ち込みが続く、強い不安がある、不眠が続く、食欲が著しく変化した、説明のつかない身体の不調がある場合。
  • 怒りのパターンが持続している、あるいは悪化している場合: 数週間、数ヶ月と状況が改善せず、むしろ頻度や強さが増している場合。
  • 自分自身や家族が精神的に限界を感じている場合: この状況が続き、本人や家族が精神的に疲弊しきっている場合。
  • 飲酒や他の依存行動が関連している場合: 怒りの背景にアルコールや他の物質への依存が疑われる場合。

これらの目安に当てはまる場合は、できるだけ早く専門家への相談を検討してください。早期に適切な診断と治療を受けることが、状況の改善や、家族関係の修復につながります。

何科を受診すべきか?【精神科・心療内科】

家族にだけキレてしまう行動について専門家に相談する場合、主に精神科または心療内科を受診することになります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った相談先を選びましょう。

精神科と心療内科の違い

区分 精神科 心療内科
主な対象 気分障害(うつ病、双極性障害)、統合失調症、不安障害、発達障害、依存症など、精神疾患そのものを専門とします。 心身症(ストレスが原因で身体に症状が出る病気)など、心理的な問題が身体症状として現れる場合を専門とします。
診断・治療 精神疾患の診断、薬物療法、精神療法(カウンセリング)、リハビリテーションなどを幅広く行います。 ストレスに関連する身体症状を中心に診ますが、心理的な側面にもアプローチし、必要に応じて薬物療法やカウンセリングを行います。
どちらを選ぶ? 「家族にだけキレる」という行動が、気分の波、衝動性の問題、発達特性など、精神面や行動面に深く関わっていると感じる場合。心の病気の可能性をより強く疑う場合。 怒りやイライラに加えて、胃痛、頭痛、不眠、動悸など、身体的な症状も強く感じている場合。まず「ストレスでおかしくなっているのでは」と感じる場合。

多くのケースで、家族にだけキレてしまうという行動は、ストレスや心理的な問題、あるいは精神疾患や発達障害が関連しています。そのため、まずは精神科または心療内科のどちらかを受診するのが適切です。どちらの科も、問診を通じて状況を把握し、必要に応じて適切な検査や治療を提案してくれます。

受診の流れ

  • 病院を探す: インターネット検索や、かかりつけ医に相談して紹介してもらうなどで、精神科または心療内科を探します。「家族 キレる 病院」「怒りっぽい 相談」といったキーワードで検索してみるのも良いでしょう。
  • 予約: 多くの精神科・心療内科は予約制です。電話やウェブサイトから予約を取りましょう。初診時には、これまでの経緯などを詳しく伝えるため、時間に余裕をもって予約することをおすすめします。
  • 受診: 医師に症状や困っていること、家族関係のことなどを正直に話しましょう。いつから、どのような状況で、どのくらいの頻度で怒りが現れるのか、怒り以外の症状はあるかなど、具体的に伝えられるように事前に整理しておくとスムーズです。
  • 診断・治療方針の決定: 医師は問診や必要に応じて心理検査などを行い、診断をつけ、今後の治療方針(薬物療法、精神療法など)を提案してくれます。
  • 治療の開始: 医師と相談しながら、治療を進めていきます。治療には時間がかかる場合もありますが、諦めずに継続することが大切です。

受診に抵抗がある方もいるかもしれません。しかし、専門家のアドバイスを受けることで、問題の背景にある原因が明らかになり、適切な対処法が見つかる可能性があります。一人で抱え込まず、まずは相談してみる勇気を持つことが重要です。

家族にキレてしまう大人本人への対処法・改善策

家族にだけキレてしまう自分を変えたいと願う本人に向けて、実践できる対処法や改善策はいくつかあります。病気が関連している場合は専門家による治療が必要ですが、それと並行して、あるいは病気ではない場合でも、自分自身の感情や行動をコントロールするための方法を学ぶことは非常に有効です。

  • 怒りを客観視する(アンガーマネジメントの基本): 自分がどのような時に、何に対して怒りを感じやすいのか、その時の身体や心の状態はどうなっているのかを観察することから始めます。怒りを感じたときに「あ、今自分は怒っているな」と一歩引いて客観的に捉える練習をします。怒りの感情そのものを否定するのではなく、その感情にどう対処するかを学びます。
  • 怒りの引き金(トリガー)を特定する: 家族の特定の言動、時間帯、場所、自分の体調など、怒りの感情が湧き起こるきっかけを具体的に書き出してみましょう。「疲れている時」「特定の話題になった時」「子供が言うことを聞かない時」など、パターンが見えてくるかもしれません。トリガーを特定することで、それを避ける、あるいは事前に心構えをするなどの対策が取れます。
  • クールダウンの方法を見つける: 怒りを感じた時に、その場で感情を爆発させるのではなく、一度落ち着くための方法をいくつか用意しておきましょう。
    • その場を離れる: 感情的になりそうだと感じたら、「少し頭を冷やしてくるね」などと家族に伝えて、別の部屋に移る、散歩に出るなどして物理的に距離を取ります。
    • 深呼吸をする: ゆっくりと鼻から息を吸い込み、口から長く吐き出す深呼吸を数回繰り返します。心拍数を落ち着かせ、リラックス効果があります。
    • 時間を置く: 怒りのピークは数分と言われています。「6秒ルール」と言われるように、怒りを感じてから6秒間待つだけでも、衝動的な行動を抑えられることがあります。
    • 他のことに集中する: 音楽を聴く、軽い運動をする、好きな飲み物を飲むなど、意識を別の対象に移すことで、怒りの感情から注意をそらします。
  • 感情を言葉で伝える練習をする: 怒りという強い感情の代わりに、「私はこう感じた」「〇〇してくれると助かる」といった形で、自分の気持ちや要望を冷静に伝える練習をします。怒鳴ったり非難したりするのではなく、「Iメッセージ」(私は~と感じる)を使うことで、相手も受け止めやすくなります。
  • 休息とストレス解消の重要性: 疲労やストレスは感情のコントロールを困難にします。十分な睡眠時間を確保し、自分がリラックスできる時間や、楽しいと感じる活動を取り入れましょう。趣味、友人との交流、旅行、入浴など、自分に合ったストレス解消法を見つけ、定期的に実践することが大切です。
  • 生活習慣の見直し(睡眠、食事、運動): 規則正しい生活は、心身の安定につながります。毎日決まった時間に寝起きする、バランスの取れた食事を摂る、適度な運動を取り入れるといった基本的な生活習慣を見直すだけでも、感情の波を穏やかにすることに役立ちます。
  • 専門家(カウンセラー、心理士)への相談: 感情のコントロール方法を一人で学ぶのが難しい場合は、カウンセリングを受けるのも有効です。専門家との対話を通じて、怒りの根本的な原因を探ったり、具体的な対処スキルを身につけたりすることができます。認知行動療法(CBT)などの精神療法は、感情や行動のパターンを理解し、より健康的な考え方や行動を身につけるのに役立ちます。
  • 病気が診断された場合の治療: もし精神疾患や発達障害などが診断された場合は、医師の指示に従って適切な治療を受けましょう。薬物療法は、気分の波を安定させたり、衝動性を抑えたりするのに効果的な場合があります。精神療法は、病気への理解を深め、対処スキルを学ぶのに役立ちます。発達障害の場合は、自身の特性を理解し、それに合った環境調整やコミュニケーション方法を学ぶことが重要です。

これらの対処法は、すぐに効果が現れるものではありません。根気強く続け、少しずつでも良い変化を感じられるように努力することが大切です。家族の協力も得ながら、自分自身と向き合っていきましょう。

キレられる家族ができること・対応方法

家族から怒りを向けられる側も、非常に辛く、精神的に追い詰められやすい状況にあります。しかし、相手の怒りに対してどのように対応するかによって、状況を悪化させずに済むこともあります。キレられる家族ができること、対応方法について考えてみましょう。

  • 安全確保を最優先にする: もし相手の怒りがエスカレートし、暴力や物に当たる行動が見られる場合は、まず自身の安全を確保することが最も重要です。その場から一時的に離れる、安全な場所に避難する、必要であれば警察や地域の相談窓口に助けを求めることもためらわないでください。
  • 感情的にならないようにする(難しいが意識する): 相手が感情的になっている時、こちらも感情的になって言い返したり、非難したりすると、火に油を注ぐことになり、状況は悪化しやすくなります。できる限り冷静さを保ち、落ち着いたトーンで対応することを心がけましょう。これは非常に難しいことですが、「相手は病気かもしれない」「疲れているのかもしれない」など、怒りの背景に別の理由がある可能性を考慮することで、少し冷静になれる場合があります。
  • 反論せず、話を聞く姿勢を見せる: 相手が怒っている内容に対して、すぐに反論したり否定したりするのではなく、まずは相手の言い分を聞く姿勢を示しましょう。ただし、これは相手の言動を肯定するという意味ではありません。「〇〇(相手の言い分)という気持ちなのね」と、感情に寄り添う言葉を挟むことで、相手の興奮が少し収まることがあります。
  • 相手を責めるのではなく、行動を具体的に伝える: 相手の人格や存在そのものを否定するような言葉は避けましょう。「あなたはいつも~だ」と決めつけるのではなく、「〇〇という言動があると、私は△△と感じる」と、「Iメッセージ」を使って、特定の行動が自分に与える影響を具体的に伝えます。
  • 怒りを個人的なものと捉えすぎない: 家族にだけキレる人の場合、その怒りはあなた個人に向けられているというより、外で抱えたストレスや、自身の感情コントロールの困難さ、あるいは病気の症状として現れている可能性が高いです。もちろん傷つくのは当然ですが、「自分だけが悪いのではない」「病気のせいかもしれない」と、怒りを個人的な攻撃として全て受け止めすぎないように努めることも大切です。
  • 境界線を設けることの重要性: 相手の感情のゴミ箱になる必要はありません。相手の攻撃的な言動が度を超えている場合は、はっきりと「そういう言い方はやめてほしい」「これ以上話すと感情的になりそうだから、一度距離を置こう」などと伝え、毅然とした態度で境界線を設けることも必要です。
  • 第三者(親戚、友人、専門家)に相談する: 家族間の問題は、身内だけで解決しようとすると煮詰まってしまいがちです。信頼できる友人や親戚に話を聞いてもらったり、地域の相談窓口(保健所、精神保健福祉センターなど)や専門家(カウンセラー、医師)に相談したりすることで、客観的な視点やアドバイスを得ることができます。
  • 家族自身のメンタルヘルスケア: 家族の怒りや攻撃的な言動に日々さらされることは、非常に大きな精神的な負担となります。キレられる側も、抑うつや不安、トラウマ症状などを抱えてしまうことがあります。自分自身の心身の健康を守るために、一人で抱え込まず、自分のための休息時間を持ったり、専門家によるカウンセリングを受けたりすることも検討してください。
  • 病気が診断された場合の家族の役割: もし本人に病気が診断された場合、家族は病気について正しく理解し、本人の治療をサポートすることが重要になります。病気は本人のせいではないことを理解し、感情的に対応するのではなく、病気という視点から対応を考えることが、建設的な関係を築く第一歩となります。ただし、家族だけで全てを背負い込む必要はありません。医療機関や自助グループ、家族会などを活用し、専門家や同じような経験を持つ人たちと繋がることも支えになります。

家族にキレられる状況は、非常にデリケートで難しい問題です。一方的に我慢し続けたり、自分を責めたりせず、時には距離を置くことも含め、自分自身の心身を守ることを第一に考えながら対応していくことが大切です。

まとめ:専門家への相談を検討しましょう

「家族にだけキレてしまう」「なぜか家族に対してだけ怒りが抑えられない」という大人の行動は、本人の苦しみであると同時に、キレられる家族にとっても深刻な問題です。その原因は、日々のストレスや疲れ、家族ゆえの甘えといった心理的・環境的な要因から、ホルモンバランスの変化などの身体的な要因、そして、双極性障害、間欠性爆発性障害、適応障害、うつ病といった精神疾患、ADHDやASDなどの発達障害、境界性パーソナリティ障害といったパーソナリティ障害、さらには脳の疾患など、さまざまな病気が隠れている可能性まで多岐にわたります。

もし、ご自身の、あるいはご家族の「家族にだけキレる」という行動が、頻繁に起こる、強さが度を超している、自分や家族でコントロールできない、日常生活や人間関係に深刻な悪影響を与えている、他の精神的・身体的な症状を伴っているといった場合は、単なる性格や甘えとして片付けずに、病気との関連を視野に入れて専門家への相談を強く検討することをおすすめします。

相談先としては、精神科または心療内科が適切です。医師による適切な診断を受けることで、怒りの根本的な原因が明らかになり、その原因に応じた効果的な治療法や対処法を見つけることができます。病気が原因であれば、薬物療法や精神療法によって症状の改善が期待できますし、病気ではない場合でも、カウンセリングなどを通じて感情のコントロール方法やコミュニケーションスキルを学ぶことができます。

この問題は、一人で抱え込まず、家族だけで解決しようとせず、専門家の力を借りることが、状況を改善し、家族関係を再構築するための最も確実な道です。自分自身や家族を責めるのではなく、「困っていること」「解決したい問題」として捉え、一歩踏み出して専門家のドアを叩いてみてください。早期の対応が、あなた自身と大切な家族の未来を守ることにつながります。


免責事項:この記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個々の症状については、必ず医療機関で専門の医師の診断を受けるようにしてください。

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