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認知症は遺伝する?原因と予防法をわかりやすく解説

「親が認知症になったから、自分も将来認知症になるのではないか」―。もしご家族に認知症の方がいらっしゃる場合、こうした不安を感じる方は少なくありません。認知症は様々な要因が組み合わさって発症する病気であり、遺伝もその要因の一つとして挙げられます。

この記事では、「認知症は遺伝するのか?」という疑問に対し、医学的な観点から分かりやすく解説します。アルツハイマー型認知症を中心に、遺伝の影響や確率、遺伝以外の主な原因、そして遺伝的なリスクに不安がある場合の予防法について、医師が詳しくご説明します。正しい知識を持ち、適切な予防に取り組むことが、将来の認知症に対する不安を軽減する上で非常に重要です。

認知症の原因となる病気は多岐にわたりますが、最も多いのはアルツハイマー型認知症です。血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症なども含まれます。これらの認知症の発症メカニズムは複雑であり、遺伝的な要因と環境的な要因(生活習慣、病歴、年齢など)が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

「遺伝する」と一口に言っても、病気にはいくつかのパターンがあります。特定の遺伝子に変異があると、ほぼ確実に病気を発症する「単一遺伝子疾患」と、複数の遺伝子や環境要因が組み合わさって発症する「多因子遺伝疾患」です。

認知症の多くの種類は、この「多因子遺伝疾患」に該当します。つまり、特定の遺伝子を持っているだけで必ず発症するわけではなく、遺伝的な「かかりやすさ」に加えて、その人の生活習慣や年齢、他の病気の有無などが大きく影響して発症に至る、という考え方です。

ごく一部には、特定の遺伝子変異によって非常に高い確率で若いうちに発症する「家族性認知症」と呼ばれるタイプも存在しますが、これは認知症全体のほんの一握りに過ぎません。大多数を占める高齢者の認知症(孤発性認知症)においては、遺伝的な影響は単独で発症を決定づけるほど強いものではなく、あくまでリスク要因の一つとして考えられています。

目次

アルツハイマー型認知症と遺伝の関係

認知症全体の約半数を占めると言われるアルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβやタウといった異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が破壊されていく病気です。アルツハイマー型認知症における遺伝の影響は、その発症年齢によって大きく異なると考えられています。

家族性アルツハイマー型認知症とは

家族性アルツハイマー型認知症(Familial Alzheimer’s Disease: FAD)は、比較的若い年齢(通常65歳未満)で発症し、家系内に複数の患者が見られる非常に稀なタイプのアルツハイマー型認知症です。これは、「原因遺伝子」と呼ばれる特定の遺伝子(プレセニリン1遺伝子、プレセニリン2遺伝子、アミロイド前駆体タンパク質[APP]遺伝子など)のいずれかに変異があることが原因で起こります。

これらの原因遺伝子の変異は、アミロイドβという異常なたんぱく質の産生や蓄積を促進することが分かっています。これらの遺伝子変異がある場合、高い確率で若年期にアルツハイマー型認知症を発症すると考えられています。遺伝形式としては常染色体優性遺伝であり、親のどちらか一方から変異遺伝子を受け継ぐと、約50%の確率で病気を発症するリスクがあるとされています。

家族性アルツハイマー型認知症は、アルツハイマー型認知症全体のわずか数%に過ぎません。大多数のアルツハイマー型認知症は、次に説明する孤発性アルツハイマー型認知症です。

孤発性アルツハイマー型認知症と遺伝リスク

孤発性アルツハイマー型認知症(Sporadic Alzheimer’s Disease: SAD)は、最も一般的なタイプのアルツハイマー型認知症で、通常65歳以降に発症します。このタイプは、特定の単一の原因遺伝子によって引き起こされるのではなく、複数の遺伝的な要因と、年齢、生活習慣、環境要因などが複雑に影響し合って発症すると考えられています。

孤発性アルツハイマー型認知症に関連する遺伝子は、「感受性遺伝子」と呼ばれます。これらは病気の直接の原因となるわけではなく、持っていることでアルツハイマー型認知症を発症する「リスクを少し高める」遺伝子です。多くの感受性遺伝子が研究されていますが、最も有名で影響が大きいと考えられているのが「APOE遺伝子」です。

APOE遺伝子型とリスク

アポリポプロテインE(APOE)遺伝子は、コレステロールなどの脂質を脳内で運搬する役割を持つタンパク質の設計図となる遺伝子です。このAPOE遺伝子には、主にε2、ε3、ε4という3つのタイプ(アレル)があります。私たちは両親からそれぞれ1つずつ、合計2つのAPOEアレルを受け継ぎます(例: ε3/ε3、ε3/ε4、ε4/ε4など)。

このうち、APOE ε4アレルを持っていると、孤発性アルツハイマー型認知症を発症するリスクが上昇することが多くの研究で示されています。

  • ε3/ε3型: 最も一般的なタイプで、標準的なリスクと考えられます。
  • ε3/ε4型: ε4アレルを1つ持っている場合。ε3/ε3型と比べて、アルツハイマー型認知症の発症リスクが2~4倍程度高まるとされています。
  • ε4/ε4型: ε4アレルを2つ持っている場合(ホモ接合)。ε3/ε3型と比べて、発症リスクが10~15倍程度高まるとされており、発症年齢も比較的早くなる傾向があると言われています。

重要なのは、APOE ε4アレルを持っていても、必ずしもアルツハイマー型認知症を発症するわけではないということです。ε4アレルを持っている人の多くは、生涯にわたってアルツハイマー型認知症を発症しません。また、ε4アレルを持っていなくても、アルツハイマー型認知症を発症する人も多くいます。APOE ε4はあくまで「リスクを高める要因」の一つであり、発症には他の多くの要因が関わっています。

親や祖父母から遺伝する確率は?家系との関連

多くの人が最も気になるのは、「親や祖父母が認知症の場合、自分も遺伝する確率はどれくらいか?」という点でしょう。先に述べたように、家族性アルツハイマー型認知症のような特定の遺伝子変異による場合は高い確率で遺伝し発症リスクがありますが、これは非常に稀なケースです。

大多数を占める孤発性アルツハイマー型認知症の場合、親や兄弟に認知症の人がいる「家族歴」があると、そうでない人と比べて発症リスクがわずかに高まる傾向があると言われています。しかし、そのリスク上昇の程度は、APOE ε4アレルを持っている場合のリスク上昇ほど大きくないこともあります。

具体的に「〇%の確率で遺伝する」と断定することは非常に困難です。なぜなら、孤発性認知症は複数の遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合って発症する多因子遺伝疾患だからです。家族歴があるということは、遺伝的な背景(APOE ε4アレルなどの感受性遺伝子を共有している可能性)に加え、同じような生活環境や習慣を共有している可能性も含まれます。

したがって、親や祖父母が認知症だからといって、必要以上に悲観する必要はありません。もちろん、家族歴はリスク要因の一つとして認識しておくことは重要ですが、それだけで将来が決定されるわけではない、という理解が大切です。

認知症の遺伝以外の主な原因とリスク要因

認知症の発症は、遺伝的要因よりも、むしろ遺伝以外の要因、特に生活習慣病や生活習慣が大きく影響することが分かっています。これらは自分でコントロールできる部分が大きく、適切な対策をとることで認知症の発症リスクを下げることが可能です。

認知症の遺伝以外の主な原因やリスク要因としては、以下のようなものが挙げられます。

分類 具体的な要因 認知症との関連(概要)
生活習慣病 高血圧、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症)、肥満 脳血管へのダメージ(動脈硬化)を引き起こし、血管性認知症やアルツハイマー型認知症のリスクを高めます。特に複数の生活習慣病を抱えているとリスクはさらに高まります。
生活習慣 喫煙、過度の飲酒、運動不足、不健康な食事(高脂肪・高糖質)、睡眠不足 脳への血流低下や炎症を引き起こしたり、生活習慣病のリスクを高めることで、認知機能の低下を促進します。
社会的要因 社会的孤立、引きこもり 認知的な刺激が減少し、うつ病のリスクも高まることで、認知機能の維持が難しくなる可能性があります。
心理的要因 うつ病、慢性的なストレス 脳の特定部位(海馬など)に影響を与え、認知機能の低下につながる可能性があります。
外傷・病歴 頭部外傷、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、心疾患 直接的な脳組織の損傷や血流障害により認知機能が低下したり、その後の認知症発症リスクを高めます。
その他 難聴、視力障害、特定の栄養素不足(ビタミンB群など)、環境要因(大気汚染など) 感覚器の機能低下は脳への刺激を減らし、認知機能に影響を与える可能性があります。栄養不足や環境要因も脳の健康に影響を与える可能性が研究されています。

なりやすい人の特徴(遺伝以外)

遺伝以外の要因から見た、認知症になりやすい可能性のある人の特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症などを適切に管理できていない人: これらの病気は脳血管を徐々に傷つけ、認知機能の低下を招きます。
  • 喫煙習慣のある人: 喫煙は血管を収縮させ、脳への血流を悪化させます。
  • 日頃からほとんど運動しない人: 運動は脳への血流を改善し、神経細胞の成長を促す効果があるため、運動不足はリスクを高めます。
  • バランスの悪い食事を続けている人: 高脂肪食や高糖質食は生活習慣病のリスクを高め、脳の健康にも悪影響を与えます。
  • 人との交流が少ない人: 社会的な交流は脳を活性化させ、認知機能の維持に役立ちます。
  • 新しいことに挑戦したり、頭を使う機会が少ない人: 知的な活動は脳の予備能力を高めると考えられています。
  • 十分な睡眠が取れていない人: 睡眠中に脳内の老廃物が排出されるとも考えられており、慢性的な睡眠不足はリスクとなり得ます。
  • 過去に大きな頭部外傷を負ったことがある人: 特に繰り返し頭部外傷を受けた経験がある場合は、長期的な認知機能への影響が懸念されます。
  • うつ病を繰り返し経験している、あるいは長期間治療していない人: うつ病と認知症は関連が指摘されています。

これらの特徴に心当たりがある場合でも、悲観する必要はありません。なぜなら、これらは本人の努力や医療の介入によって改善できる部分だからです。適切な対策を講じることで、認知症の発症リスクを減らすことが期待できます。

認知症の遺伝的リスクを調べる遺伝子検査

「自分に認知症の遺伝的なリスクがあるか知りたい」と考え、遺伝子検査に関心を持つ方もいらっしゃるかもしれません。現在、民間の検査機関などで、アルツハイマー型認知症に関連するAPOE遺伝子型などを調べる検査が提供されています。

遺伝子検査で分かること:

  • 主にAPOE遺伝子のタイプ(ε2、ε3、ε4)を知ることができます。
  • ε4アレルを持っているかどうか、またその数(1つか2つか)を知ることができます。

遺伝子検査で「分からないこと」:

  • 検査結果だけで、将来必ず認知症になるかどうかは分かりません。 APOE ε4アレルはあくまで「リスクを高める要因」であり、ε4を持っていても発症しない人、持っていなくても発症する人が多くいます。
  • いつ発症するか、どのような症状が出るかなどは分かりません。
  • 家族性アルツハイマー型認知症の原因遺伝子の変異(若年発症と強く関連するもの)は、一般的な民間のリスク検査では調べないことが多いです。 これらの検査は、専門の医療機関で、家族歴などを踏まえて検討されるものです。

遺伝子検査を受けることのメリットとデメリット:

  • メリット:
    • 自身の遺伝的なリスクを知ることで、認知症予防に対する意識が高まり、生活習慣の改善へのモチベーションにつながる可能性があります。
    • 将来のリスクを早い段階で知っておくことで、人生設計や医療に関する準備について考えるきっかけになるかもしれません。
  • デメリット:
    • 検査結果(特にε4アレルを持っていることが分かった場合)に対する精神的な負担が非常に大きくなる可能性があります。過度な不安やうつ状態を引き起こすこともあります。
    • 検査結果を正確に解釈し、その意味を理解することが難しい場合があります。専門的な知識なしに結果だけを見て、誤った判断をしてしまうリスクがあります。
    • 現時点では、APOE遺伝子型を知っても、それに応じた特別な予防法や治療法があるわけではありません。予防の基本は、遺伝に関わらず全ての人に推奨される生活習慣の改善です。
    • 保険適用外であり、費用がかかります。

専門家からの見解:

多くの専門家は、特に医療機関を介さない民間のリスク検査について、慎重な姿勢をとっています。検査を受けること自体よりも、検査結果をどのように受け止め、どのように活用するかが非常に重要だからです。結果が陽性だった場合に生じるかもしれない心理的な影響について、十分に検討しておく必要があります。

もし遺伝子検査に関心がある場合は、まずは遺伝カウンセリングを提供している医療機関や専門機関に相談し、検査によって何が分かり、何が分からないのか、そして結果が出た場合にどのような影響があり得るのかについて、十分に説明を受けてから判断することをお勧めします。安易な気持ちで検査を受けるのは避けるべきでしょう。

認知症の遺伝に不安がある場合の予防策

家族歴がある、あるいは遺伝的なリスクについて不安を感じている場合でも、将来の認知症発症を諦める必要は全くありません。むしろ、ご自身の遺伝的な背景を理解した上で、他のリスク要因に積極的に介入し、予防に取り組むことが非常に重要です。認知症予防において、遺伝的要因よりも生活習慣などの環境要因が果たす役割の方が大きいという点を改めて強調しておきます。

生活習慣の改善による予防

認知症予防、特にアルツハイマー型認知症や血管性認知症のリスク軽減には、健康的な生活習慣を心がけることが有効であることが、様々な研究で示されています。これは、遺伝的なリスクがある人もない人も共通して言えることです。

具体的な予防策としては、以下の点が挙げられます。

  1. バランスの取れた食事:
    • 何を食べるか: 野菜、果物、全粒穀物、魚、豆類、ナッツ類などを豊富に取り入れ、脂肪の少ない食事を心がけましょう。「MIND食(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)」のような特定の食事パターンが認知機能の維持に良い影響を与える可能性も研究されています。
    • 避けるべきもの: 加工肉、揚げ物、バターやマーガリン、お菓子、清涼飲料水などは控えめにしましょう。
    • ビタミン・ミネラル: ビタミンB群(特にB12)、ビタミンD、オメガ3脂肪酸などの栄養素も脳の健康に重要とされています。
  2. 定期的な運動:
    • 種類: ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動が推奨されます。筋力トレーニングや柔軟体操なども組み合わせるとより効果的です。
    • 頻度・時間: 週に数回、合計150分程度の中強度の運動を目指しましょう。無理のない範囲で、毎日体を動かす習慣をつけることが大切です。
    • 効果: 運動は脳への血流を改善し、神経細胞の新生やネットワークの強化を促すと考えられています。また、生活習慣病の予防・改善にもつながります。
  3. 生活習慣病の管理:
    • 高血圧、糖尿病、脂質異常症などは、医師の指導のもと適切に治療・管理することが極めて重要です。定期的な健康診断を受け、ご自身の体の状態を把握しましょう。
  4. 禁煙と節酒:
    • 禁煙: 喫煙は認知症を含む多くの病気のリスクを高めます。禁煙は、認知症予防において最も効果的な対策の一つと言えます。
    • 節酒: 適量を超えるアルコール摂取は脳に悪影響を与えます。飲酒習慣がある場合は、節度を保つか、可能であれば量を減らしましょう。
  5. 知的活動と社会参加:
    • 知的活動: 新しいことを学ぶ(語学、楽器など)、読書、計算、ゲーム(将棋、囲碁など)、絵画や手芸など、脳を活性化させる活動を日常的に行いましょう。
    • 社会参加: 友人や家族との交流、趣味のサークルやボランティア活動への参加など、人と交流する機会を増やしましょう。社会的に孤立することは認知症リスクを高めます。
  6. 十分な睡眠:
    • 質の良い睡眠を十分にとることは、脳の疲労回復や老廃物の排出に重要と考えられています。規則正しい生活リズムを心がけましょう。
  7. 難聴・視力障害の対策:
    • 聞こえや視力に問題がある場合は、適切に補聴器を使用したり、治療を受けたりすることが推奨されます。感覚器からの刺激は脳を活性化させるために重要です。
  8. 口腔ケア:
    • 歯周病と認知症の関連も指摘されています。日常的な歯磨きや定期的な歯科検診で、お口の健康を保ちましょう。

これらの生活習慣の改善は、一つだけではなく、複数の対策を組み合わせることでより高い予防効果が期待できます。いわば「認知症にならないための貯蓄」のようなものです。遺伝的なリスクがあっても、これらの貯蓄を積み重ねることで、リスクを相殺したり、発症を遅らせたりすることが可能と考えられています。

早期発見と早期介入の重要性

もし「最近、物忘れが気になる」「以前と比べて明らかに違う」など、ご自身の認知機能に不安を感じる場合は、早期に医療機関を受診することが非常に重要です。

なぜ早期発見・早期介入が重要なのか?

  • 原因の特定: 物忘れの原因は認知症だけではありません。うつ病、甲状腺機能の異常、ビタミン欠乏、正常圧水頭症など、治療可能な病気である可能性もあります。適切な診断を受けることで、原因に合った治療を開始できます。
  • 適切な診断と治療: 認知症の場合でも、病気の種類や進行度に応じた適切な診断と治療を受けることができます。現時点でアルツハイマー型認知症を完治させる薬はありませんが、進行を緩やかにしたり、症状を和らげたりする薬は存在します。
  • MCI(軽度認知障害)の段階での介入: 認知症の前段階とされるMCIの段階であれば、生活習慣の改善や適切な介入によって、認知症への進行を遅らせたり、予防したりできる可能性があります。
  • 今後の見通しと準備: 診断を受けることで、病気について理解し、今後の生活や医療、介護について本人や家族が準備を進めることができます。

「もしかして認知症かも?」と心配になったら、まずはかかりつけ医や、もの忘れ外来、神経内科、精神科などの専門医に相談してみましょう。早期の相談は、不要な不安を解消し、必要な場合には適切なサポートにつながる第一歩となります。

まとめ|認知症は遺伝よりも予防が重要

「認知症は遺伝するのか」という疑問に対して、この記事では、認知症の発症には遺伝的な要因も関わるが、多くの場合は遺伝だけで発症が決まるわけではない、という基本的な考え方をご説明しました。

特に大多数を占める高齢者のアルツハイマー型認知症(孤発性)においては、特定の原因遺伝子によって若年発症する稀なタイプ(家族性)とは異なり、複数の感受性遺伝子(代表的なのはAPOE ε4アレル)と年齢、そして生活習慣などの環境要因が複雑に絡み合って発症します。APOE ε4アレルを持っているとリスクは高まりますが、必ず発症するわけではありません。

最も重要なメッセージは、認知症の発症には遺伝よりも、むしろ生活習慣病や日々の生活習慣といった、自分でコントロールできる要因が大きく影響する、ということです。

バランスの取れた食事、定期的な運動、禁煙、節度ある飲酒、生活習慣病の適切な管理、知的な活動、社会参加、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を心がけることは、遺伝的な背景に関わらず、認知症の発症リスクを大幅に下げることが期待できる、最も効果的な予防策です。

もしご家族に認知症の方がいらっしゃったり、ご自身の遺伝的なリスクに不安を感じたりする場合でも、過度に心配する必要はありません。不安を抱え込まず、正しい知識を身につけ、今日からできる予防策に積極的に取り組みましょう。そして、もしご自身の認知機能に不安がある場合は、早期に医療機関に相談することが大切です。

この記事が、皆様の認知症に対する理解を深め、予防に取り組むきっかけとなれば幸いです。


【免責事項】

この記事は、認知症と遺伝に関する一般的な情報提供を目的として作成されています。個々の病状や遺伝的なリスクについては、必ず医師や専門家にご相談ください。この記事の情報に基づいてご自身の判断で治療や検査を行うことはお控えください。医学的知識は日々進歩しており、最新の情報や個別の状況に応じたアドバイスについては、必ず専門家の指示を仰いでください。

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