寝ている間に突然、足のふくらはぎなどに激しい痛みと共に起こるこむら返り。
「足がつる」とも言われるこの現象は、一度経験するとそのつらさから、また夜中に起こるのではないかと不安になる方も少なくありません。
特に、深い眠りについている最中に起こると、睡眠が妨げられ、日中の活動にも影響が出かねません。
では、なぜ私たちは寝ている時にこむら返りを経験しやすいのでしょうか。その原因は一つではなく、水分不足、ミネラルバランスの乱れ、筋肉疲労、体の冷えなど、様々な要因が複合的に関わっていると考えられています。
この記事では、寝ている時のこむら返りが起こるメカニズムを詳しく解説し、今すぐできる効果的な対策や予防法、そして注意すべき病気の可能性についてもお伝えします。
夜中のつらいこむら返りから解放されるために、まずは原因を知り、適切なケアを始めましょう。
寝てるときにこむら返りが起きる主な原因とは?
寝ている時にこむら返りが起こる現象は、医学的には「夜間有痛性筋痙攣(やかんゆうつうせいきんけいれん)」と呼ばれ、特に高齢者や妊婦さんに多く見られますが、年齢や性別に関わらず誰にでも起こりうるものです。
筋肉が自分の意思とは関係なく突然激しく収縮し、硬直して強い痛みを伴います。なぜ、日中ではなく寝ている時にこのような症状が出やすいのでしょうか。その主な原因は、睡眠中の体の状態や、日中の活動による影響が夜間に現れることに関連しています。具体的な原因をいくつか見ていきましょう。
水分不足やミネラルバランスの乱れ
人間の体の約60%は水分でできており、筋肉の正常な機能にも水分は不可欠です。また、筋肉の収縮や弛緩をコントロールするためには、カリウム、ナトリウム、カルシウム、そして特にマグネシウムといった様々なミネラル(電解質)がバランス良く存在している必要があります。これらのミネラルは、神経からの信号を筋肉に伝えたり、筋肉細胞内でエネルギーをやり取りする際に重要な役割を果たしています。
寝ている間は、汗をかいたり呼吸によって、知らず知らずのうちに体から水分が失われます。特に夏場の暑い時期や、冬場でも暖房の効いた乾燥した部屋で寝ている場合は、より多くの水分が失われやすい傾向があります。日中の活動で汗をたくさんかいた後、水分補給が十分でないまま寝てしまうと、体は軽い脱水状態になります。脱水状態になると、体内の水分だけでなく電解質も一緒に失われ、血液中のミネラル濃度が変化します。
ミネラル、特にマグネシウムやカリウムは、筋肉の細胞内外で電位差を保ち、筋肉の正常な電気信号の伝達に関与しています。これらのミネラルバランスが崩れると、筋肉の神経伝達が不安定になり、些細な刺激でも筋肉が異常に興奮しやすくなります。その結果、筋肉が意図せず収縮し、こむら返りが起こりやすくなるのです。
また、偏った食事や過度なダイエット、アルコールの過剰摂取などもミネラル不足の原因となります。特にマグネシウムは日本人に不足しがちなミネラルと言われており、不足すると神経や筋肉の興奮を抑える働きが弱まり、こむら返りのリスクを高める可能性があります。カリウムも、筋肉の弛緩を助ける重要なミネラルであり、不足すると筋肉がスムーズに緩まず、つりやすくなることがあります。
寝ている時に限らず、運動中や運動後にもこむら返りが起こりやすいのは、汗による水分とミネラルの喪失が大きな要因の一つです。睡眠中も同様に、体の状態がこむら返りを引き起こしやすい環境を作り出していると言えます。
筋肉疲労や加齢による筋力低下
日中の活動、特に立ち仕事や運動、長時間の歩行などで特定の筋肉(特にふくらはぎや太もも)を酷使すると、筋肉が疲労物質を蓄積し、硬くなったり、うまく弛緩できなくなったりすることがあります。疲労した筋肉は、正常な機能を維持するために必要なエネルギーや酸素の供給が不足しがちになり、痙攣を起こしやすくなります。この疲労は、日中よりも体がリラックスした状態になる睡眠中に顕在化しやすいと考えられます。
寝ている間は、日中の活動で受けた筋肉への負荷や蓄積された疲労が回復する時間です。しかし、疲労が蓄積しすぎていると、筋肉の回復が追いつかず、筋肉の制御機能が低下してしまいます。また、寝ている間に無意識のうちに行う体の動きや、少しの体勢の変化が、疲労して過敏になっている筋肉を刺激し、痙攣を引き起こす引き金となることもあります。
加齢も、筋肉の機能低下とこむら返りのリスク上昇に深く関係しています。年齢を重ねるとともに、特別な運動習慣がない場合、筋肉量や筋力は自然と低下していきます(サルコペニア)。筋肉の繊維自体が細くなったり、筋肉の働きを制御する神経の機能が衰えたりすることも指摘されています。
筋力が低下すると、日常的な活動であっても筋肉にかかる負担が大きくなり、疲労しやすくなります。また、筋肉の柔軟性や伸縮性も失われがちになり、スムーズな収縮・弛緩が行われにくくなります。特にふくらはぎの筋肉は、立ち姿勢や歩行で常に使用されるため、加齢による影響を受けやすく、寝ている時にこむら返りを起こしやすい部位となります。筋力低下は、筋肉の持久力も低下させるため、軽い負荷でも疲労が蓄積しやすくなり、悪循環に陥る可能性もあります。
このように、日中の筋肉疲労と、加齢に伴う筋肉自体の変化は、寝ている時のこむら返りの発生に大きく関与しています。普段から特定の部位をよく使う方や、運動不足を感じている方は特に注意が必要です。
体の冷えと血行不良
私たちの体は、体温が適切に保たれることで筋肉や神経が正常に機能します。しかし、体が冷えると、筋肉は体温を逃がさないように収縮しやすくなります。特に、寝ている間に足元などが布団から出ていたり、冷たい部屋で薄着で寝ていたりすると、足の筋肉が冷えて収縮しやすくなります。
体の冷えは、同時に血行不良を招きます。血液は、筋肉が必要とする酸素や栄養素を運び、老廃物を運び去る役割を担っています。血行が悪くなると、これらの物質の供給や回収が滞り、筋肉細胞に必要なエネルギーが不足したり、疲労物質が蓄積しやすくなります。特に、寝ている間は日中活動している時と比べて体の代謝が落ちるため、血行がさらに滞りやすくなる傾向があります。
血行不良によって、筋肉の細胞内外のミネラルバランスを保つポンプ機能もうまく働かなくなることがあります。これにより、筋肉が異常に興奮しやすい状態になり、こむら返りを引き起こしやすくなります。
また、冬場だけでなく、夏場でもエアコンの効いた部屋で長時間過ごしたり、冷たい飲み物ばかり飲んだりすることで体が冷え、寝ている時に足がつる原因となることがあります。冷えやすい体質の方や、末端冷え性の方は特に、寝る時の足元の保温に気をつけることが重要です。
冷えと血行不良は、筋肉の柔軟性を低下させる要因にもなります。硬くなった筋肉は、些細な動きや寝返りなどでも刺激を受けやすく、痙攣を起こしやすい状態になります。このように、体の冷えは筋肉の収縮、血行不良、柔軟性低下といった様々な側面から、寝ている時のこむら返りのリスクを高めるのです。
長時間同じ体勢で寝ることの影響
寝ている間に長時間同じ体勢でいることも、こむら返りの一因となることがあります。特定の姿勢で長時間いると、体の特定の部位が圧迫され、その部分の血行が悪くなる可能性があります。特に、足が不自然に曲がった状態で固定されたり、長時間同じ側に体重がかかり続けたりすると、筋肉への血流が滞りやすくなります。
血行が悪くなると、先に述べたように筋肉への酸素や栄養の供給が不足し、老廃物の蓄積が進みます。これにより、筋肉が疲労しやすくなり、痙攣を起こしやすくなります。また、長時間同じ体勢でいることで、筋肉がその位置で硬くなってしまい、急な寝返りや体の動きによって引き伸ばされた際に、反動で異常収縮を起こしてしまう可能性も考えられます。
特に、仰向けで足首が伸びた状態(つま先が下を向いた状態)で長時間寝ていると、ふくらはぎの筋肉が縮んだ状態で固定されやすくなります。この状態で急につま先を上げたり、寝返りを打ったりすると、縮んでいた筋肉が急に伸ばされ、つりやすくなることがあります。横向き寝の場合も、体の下にくる足が圧迫されて血行が悪くなったり、不自然な角度で関節や筋肉が固定されたりすることがあります。
質の良い睡眠のためには寝返りが重要と言われますが、寝返りの回数が極端に少なかったり、特定の体勢から長時間動かなかったりすることも、筋肉の局所的な血行不良や硬直を招き、こむら返りのリスクを高める可能性があります。自分の寝相や寝具が、特定の部位に負担をかけていないかを見直してみることも大切です。
ストレスや自律神経の乱れ
意外に思われるかもしれませんが、精神的なストレスや、それによって引き起こされる自律神経の乱れも、寝ている時のこむら返りと関連があると考えられています。自律神経は、私たちの意識とは無関係に体の機能を調整しており、心拍、呼吸、体温調節、そして筋肉の緊張や弛緩のコントロールにも関わっています。
強いストレスを感じたり、慢性的な疲労が続いたりすると、自律神経のバランスが乱れやすくなります。特に、体を活動させる「交感神経」と、体をリラックスさせる「副交感神経」の切り替えがうまくいかなくなると、様々な不調が現れます。
自律神経の乱れは、血行不良を引き起こすことがあります。交感神経が優位な状態が続くと、血管が収縮しやすくなり、全身の血行が悪くなります。これにより、筋肉への血流も滞り、先に述べた冷えや血行不良が原因となるこむら返りのリスクを高めます。
また、ストレスは無意識のうちに全身の筋肉を緊張させることがあります。特に、肩や首だけでなく、足の筋肉も慢性的な緊張状態に置かれることがあります。このような緊張は、筋肉疲労や柔軟性の低下を引き起こし、寝ている間のリラックスした状態になった時に、解放される過程で痙攣が起こりやすくなる可能性があります。
睡眠中に起こるこむら返りは、体がリラックスしようとしている時に、日中のストレスや疲労、自律神経の乱れによって生じた筋肉の過緊張や血行不良が表面化する現象とも言えるでしょう。質の良い睡眠を確保し、日頃からストレスを適切に管理することが、こむら返りの予防にもつながります。
寝てるときのこむら返り、背景に病気が隠れている可能性
寝ている時に起こるこむら返りの多くは、先述したような水分不足、ミネラルバランスの乱れ、筋肉疲労、冷え、姿勢、ストレスなどが原因で、特別な病気が隠れているわけではありません。しかし、中には特定の病気が原因でこむら返りが頻繁に起こるケースも存在します。特に、単なるこむら返りではない、以下のような付随症状がある場合は注意が必要です。
こんな症状がある場合は要注意
こむら返りに加えて、以下の症状が繰り返し現れる場合は、背景に病気が隠れている可能性があります。自己判断せずに、医療機関を受診して相談することをお勧めします。
- 頻繁にこむら返りが起こる: 週に数回以上など、非常に高い頻度で起こる場合。
- こむら返り以外の感覚異常: 足のしびれ、ピリピリ感、感覚の鈍さなどが同時にまたは別のタイミングで現れる。
- 筋力の低下: 手足に力が入らない、ペットボトルの蓋が開けにくい、つまずきやすい、階段の昇降が辛いなど、以前より明らかに筋力が衰えたと感じる。
- むくみ: 足や顔などが慢性的にむくむ。
- 体重の変化: 特に理由もなく体重が急激に増減する。
- 排尿の異常: 頻尿、排尿時の痛み、残尿感などがある。
- 皮膚の色や温度の変化: 足の皮膚が冷たい、青白い、あるいは赤っぽい、傷が治りにくいなど。
- 間欠性跛行(かんけつせいはこう): 少し歩くと足が痛くなったり疲れたりして歩けなくなり、休むと回復してまた歩けるようになる症状。
- 全身の倦怠感や疲労感: 十分休んでも疲れが取れない。
- 関節の痛みや腫れ: 足以外の関節にも症状がある。
これらの症状は、こむら返りの直接の原因ではない場合もありますが、体内の様々なバランスが崩れているサインである可能性があり、背景に病気が隠れていることを示唆していることがあります。
関連が考えられる主な病気
こむら返りが頻繁に起こる場合に、関連が考えられる主な病気には以下のようなものがあります。
病気の種類 | こむら返りとの関連性 | 特徴的な付随症状 |
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糖尿病 | 高血糖が長く続くと、末梢神経障害を引き起こしやすくなります。神経障害によって、筋肉への信号伝達がうまくいかなくなり、こむら返りやしびれ、感覚異常が起こることがあります。 | 頻尿、喉の渇き、体重減少、全身倦怠感、皮膚の乾燥、傷の治りが遅い、視力低下など。 |
甲状腺機能亢進症/低下症 | 甲状腺ホルモンは体の代謝を調整しています。機能亢進症(バセドウ病など)では代謝が異常に活発になり、筋肉の疲労や消耗が起こりやすくなります。機能低下症(橋本病など)では代謝が遅くなり、筋肉の働きが悪くなったり、むくみが出やすくなったりすることで、こむら返りが起こりやすくなることがあります。 | 亢進症: 動悸、息切れ、体重減少、手の震え、暑がり、イライラなど。 低下症: むくみ、寒がり、体重増加、全身倦怠感、便秘、記憶力低下など。 |
腎臓病 | 腎臓の機能が低下すると、体内の水分や電解質(ナトリウム、カリウム、リンなど)のバランスを適切に保つことが難しくなります。特にカリウムやリンのバランス異常は、筋肉の機能に影響を与え、こむら返りの原因となることがあります。 | むくみ、貧血、全身倦怠感、食欲不振、吐き気、尿量の変化、高血圧など。 |
腰部脊柱管狭窄症 | 腰の神経が圧迫される病気です。歩いていると足のしびれや痛みが出て歩けなくなり、少し休むと回復する「間欠性跛行」が特徴的です。神経の圧迫により、足の筋肉の働きが障害され、夜間も含めてこむら返りが起こりやすくなることがあります。 | 腰痛、足のしびれや痛み、間欠性跛行、排尿・排便障害など。 |
末梢神経障害 | 手足の末梢神経が様々な原因(糖尿病、ビタミン欠乏、アルコール多飲、薬剤の副作用、ギラン・バレー症候群など)で障害される病気です。神経からの信号が筋肉にうまく伝わらなくなり、しびれ、感覚異常、筋力低下、そしてこむら返りを引き起こします。 | しびれ、ピリピリ感、感覚の鈍さ、筋力低下、歩行困難など。原因によって様々な症状が伴う。 |
閉塞性動脈硬化症 | 足の動脈が硬くなり狭くなる病気です。足への血流が悪くなるため、特に運動時や歩行時に足が痛んだりつったりします(間欠性跛行)。重症化すると安静時にも痛みが出たり、潰瘍ができたりします。夜間の血流低下も影響し、こむら返りの原因となることがあります。 | 足の冷感、しびれ、間欠性跛行、足の皮膚の色や温度の変化、傷の治りが遅い、足の毛が生えにくいなど。 |
薬剤の副作用 | 一部の薬剤(降圧剤の一部、脂質異常症治療薬の一部、利尿剤など)は、電解質バランスに影響を与えたり、筋肉に直接作用したりして、こむら返りを引き起こす副作用を持つことがあります。 | 薬剤の種類によって様々ですが、その薬剤を服用開始してからこむら返りが起こりやすくなった場合など。 |
ミネラル欠乏 | 特にマグネシウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルが極端に不足している場合。食事からの摂取不足、吸収不良、過剰な排泄(利尿剤の使用、下痢など)が原因となります。 | 全身倦怠感、筋力低下、不整脈、骨粗鬆症(カルシウム不足)など、欠乏しているミネラルの種類によって様々な症状が伴うことがあります。 |
これらの病気は、こむら返りだけでなく、放置すると全身の健康に深刻な影響を与える可能性があります。頻繁にこむら返りが起こる、または上に挙げたような気になる症状が伴う場合は、早めに医療機関を受診し、正確な診断と適切な治療を受けることが重要です。
寝てるときのこむら返りを防ぐための予防策
寝ている時のつらいこむら返りを予防するためには、原因を踏まえた日々のケアが重要です。今日から始められる具体的な予防策をいくつかご紹介します。これらの対策を継続することで、こむら返りの頻度を減らし、安眠を取り戻すことができるでしょう。
就寝前のストレッチやマッサージ
寝る前に軽いストレッチやマッサージを行うことは、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進し、こむら返りの予防に効果的です。特に、日中に酷使しやすいふくらはぎや足首の筋肉を重点的にケアしましょう。
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ふくらはぎのストレッチ:
立った状態で、片足を後ろに引き、かかとを床につけたまま膝を伸ばします。前側の膝をゆっくり曲げていくと、後ろ足のふくらはぎが伸びるのを感じられます。壁に手をついて体を支えても良いでしょう。この状態で20〜30秒キープします。左右の足で2〜3セット繰り返します。寝る前であれば、ベッドに座って片方の足のつま先を手前に引くストレッチも手軽に行えます。タオルなどをつま先にかけて引っ張るのも効果的です。 -
足首のストレッチ:
床に座り、片方の足首をもう片方の足の膝の上に置きます。片方の手で足首を固定し、もう片方の手で足の指先全体を持ち、ゆっくりと円を描くように回します。内回し、外回しそれぞれ10回程度行います。その後、足の指先を手前(すね側)にゆっくりと引き、足首の前側を伸ばします。次に、足の甲側を下に向けて、足首の後ろ側を伸ばします。それぞれ15〜20秒キープします。左右の足で行います。 -
足裏のマッサージ:
足裏には多くのツボが集まっています。特に足指の付け根と土踏まずの間にある「湧泉(ゆうせん)」というツボは、疲労回復やリラックスに効果があると言われています。ゴルフボールやマッサージボールなどを足裏で転がしたり、親指で土踏まずを揉みほぐしたりするのも良いでしょう。足裏全体の筋肉を柔らかくすることで、足全体の血行改善にもつながります。
ストレッチやマッサージは、お風呂上がりなど体が温まっている時に行うとより効果的です。痛みを感じるほど強く行う必要はありません。気持ち良いと感じる程度の力加減で、筋肉をゆっくりと伸ばしたりほぐしたりすることを心がけましょう。毎日継続することで、筋肉の柔軟性が増し、こむら返りが起こりにくくなります。
寝る時の体温調節・冷え対策
体の冷え、特に足元の冷えは、寝ている時のこむら返りの大きな原因の一つです。寝る時は体温を適切に保ち、足元を冷やさないように工夫しましょう。
- 靴下やレッグウォーマーを活用する: 寝る時に足先が冷える場合は、締め付けの少ないゆったりとした靴下やレッグウォーマーを履くと、足元を温めることができます。ただし、きつい靴下は血行を妨げる可能性があるため避けましょう。
- 湯たんぽや電気毛布を適切に使う: 就寝前に湯たんぽを布団に入れて足元を温めておくと、布団に入った時のひんやり感を和らげ、血行を促進できます。電気毛布を使う場合は、寝る前に布団を温めておき、寝る時にはスイッチを切るか、温度を最低限に設定することをお勧めします。一晩中高温で使うと、脱水や低温やけどのリスクを高める可能性があります。
- 寝具の見直し: 体に合った掛け布団や毛布を選び、寝ている間に体温が奪われすぎないようにしましょう。夏場でも、エアコンの設定温度を下げすぎたり、直接体に風が当たったりしないように注意が必要です。薄着で寝る場合も、お腹や足元にタオルケットなどをかけるなど、冷え対策を意識しましょう。
- 入浴で体を温める: 寝る前にゆっくりと湯船に浸かることは、体全体を温め、血行を促進するのに非常に効果的です。38〜40℃くらいのぬるめのお湯に15〜20分程度浸かると、リラックス効果も得られ、質の良い睡眠にもつながります。シャワーだけで済ませず、できるだけ湯船に浸かる習慣をつけましょう。
- 飲み物に気を配る: 寝る前に冷たい飲み物を飲むと、内臓から体が冷えてしまうことがあります。温かい飲み物(カフェインの少ないハーブティーやホットミルクなど)を飲むようにしましょう。
効果的な水分・ミネラル補給方法
こむら返りの重要な原因の一つである水分不足やミネラルバランスの乱れを防ぐためには、日頃からの適切な水分とミネラルの補給が不可欠です。
- こまめな水分補給: 一度に大量の水を飲むのではなく、日中を通してこまめに水分を摂取しましょう。特に、運動で汗をかいた後や、乾燥した場所にいる時、夏場は意識的に水分補給を増やす必要があります。寝ている間も水分は失われるため、寝る前にコップ1杯程度の水を飲むことも有効です。ただし、飲みすぎると夜間頻尿の原因になるため、量は調節しましょう。
- ミネラルを含む飲み物: スポーツドリンクはミネラルも補給できますが、糖分が多いものもあるため注意が必要です。経口補水液は、水分と電解質をバランス良く含んでおり、軽い脱水時の補給に適しています。麦茶などもミネラル(カリウムなど)を含んでおり、ノンカフェインなので寝る前にも適しています。
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ミネラルを多く含む食品を摂る: 食事からバランス良くミネラルを摂取することが基本です。
- マグネシウム: 海藻類(ひじき、わかめ)、ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)、大豆製品(豆腐、納豆)、緑黄色野菜(ほうれん草)、魚介類(イワシ、エビ)などに多く含まれます。
- カリウム: 野菜(ほうれん草、じゃがいも)、果物(バナナ、メロン)、海藻類、きのこ類、魚介類、肉類などに広く含まれます。
- カルシウム: 乳製品(牛乳、チーズ)、小魚、大豆製品、緑黄色野菜(小松菜)などに含まれます。
- ナトリウム: 食塩の主成分ですが、現代の食生活では不足することは少なく、むしろ摂りすぎに注意が必要です。ただし、大量の汗をかいた際は適度なナトリウム補給も必要です。
- ミネラルサプリメントの活用: 食事からの摂取が難しい場合や、特定のミネラルが不足しがちな場合は、サプリメントを活用することも一つの方法です。ただし、サプリメントに頼りすぎるのではなく、あくまで食事からの摂取を基本とし、過剰摂取にならないよう注意が必要です。特に腎臓病など、特定の病気がある方はミネラル摂取に制限がある場合もあるため、医師や専門家に相談してから利用しましょう。
ミネラルの吸収を助けるビタミンD(日光浴や魚介類、きのこ類から摂取)なども意識すると良いでしょう。バランスの取れた食事を心がけることが、ミネラル不足を防ぐ最も基本的な方法です。
規則正しい生活習慣の見直し
全身の健康状態を良好に保つことは、こむら返りの予防にもつながります。特に、規則正しい生活習慣は、体のリズムを整え、自律神経のバランスを保つ上で非常に重要です。
- 十分な睡眠時間の確保: 睡眠中に体は疲労を回復させ、筋肉や神経の修復を行います。睡眠不足は疲労を蓄積させ、筋肉の痙攣を引き起こしやすくします。毎日同じ時間に寝て起きるなど、規則正しい睡眠習慣を心がけ、必要な睡眠時間を確保しましょう。
- バランスの取れた食事: 特定の栄養素に偏らず、主食、主菜、副菜を揃えたバランスの良い食事を摂ることで、体に必要なエネルギーやビタミン、ミネラルを十分に供給できます。特に、ビタミンB群は神経機能の維持に関わるため、意識的に摂取したい栄養素です。
- 適度な運動: 適度な運動は、筋肉の血行を促進し、柔軟性を保ち、筋力低下を防ぐ効果があります。ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動は、全身の血行を良くするのに効果的です。ただし、過度な運動は筋肉疲労を招き、かえってこむら返りの原因となるため、自分の体力に合った範囲で行いましょう。運動前後のストレッチや水分補給も忘れずに行います。
- ストレス管理: ストレスは自律神経の乱れや筋肉の緊張を引き起こします。自分に合ったストレス解消法を見つけ、心身ともにリラックスできる時間を持つことが大切です。趣味、軽い運動、瞑想、友人との会話などが有効です。
- カフェインやアルコールの摂取に注意: カフェインやアルコールは、利尿作用があり、体から水分やミネラルを排出しやすくします。また、アルコールは筋肉の機能を低下させる可能性もあります。寝る前の摂取は控えめにしましょう。
これらの生活習慣を整えることは、こむら返りの予防だけでなく、全体的な健康増進にもつながります。
こむら返りが起きてしまった時の対処法
どれだけ予防策を講じても、こむら返りが起こってしまうことはあります。突然の激しい痛みは非常に辛いものですが、落ち着いて適切な対処を行うことで、痛みを和らげ、早期に回復することができます。
つった筋肉をゆっくり伸ばすストレッチ
こむら返りが起きた時、最も効果的な対処法は、つって硬直している筋肉をゆっくりと、しかししっかりと伸ばすことです。ふくらはぎがつることが最も多いですが、他の部位でも同様の原則で対処します。
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ふくらはぎがつった場合:
- 落ち着く: 突然の痛みに驚くかもしれませんが、まずは深呼吸して落ち着きましょう。慌てて無理な力を加えると、筋肉を傷める可能性があります。
- つった足を伸ばす: 椅子に座るか、床に座ってつった方の足を前に伸ばします。
- つま先を手前に引く: つった足のつま先を、手を使ってゆっくりと手前(すねの方)に引っ張ります。手が届かない場合は、タオルなどを足の裏にかけて、タオルの両端を手で持って引っ張っても良いでしょう。
- ゆっくりと伸ばし続ける: 痛みが強すぎない範囲で、ふくらはぎの筋肉が伸びているのを感じながら、その状態をキープします。急激な力で引っ張ったり、強く揉んだりすることは避けてください。筋肉を傷める可能性があります。
- 痛みが和らぐまで続ける: 数十秒から数分かけて、痛みがゆっくりと和らいでくるのを感じながらストレッチを続けます。痛みが完全に消えるまで無理に続ける必要はありませんが、筋肉が元の状態に戻るまで継続すると良いでしょう。
- 立ち上がって軽く歩く: 痛みが和らいだら、ゆっくりと立ち上がり、足の状態を確認しながら軽く歩いてみましょう。血行が促進され、筋肉の回復を助けます。
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その他の部位がつった場合:
太ももの前側(大腿四頭筋): 立つか横向きになり、つった方の足首を持ってかかとをお尻に近づけるようにゆっくりと膝を曲げ、太ももの前側を伸ばします。
太ももの後ろ側(ハムストリングス): 床に座ってつった方の足を前に伸ばし、つま先を手前に引くか、上体を前に倒して太ももの後ろ側を伸ばします。
いずれの場合も、痛みが強い場合は無理せず、少しずつ行うことが大切です。完全に痛みが引かない場合でも、筋肉の緊張が和らげば楽になります。
患部を温めて痛みを和らげる
こむら返りが起きた後、痛みが残る場合は、患部を温めることも有効です。温めることで血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎ、痛みの軽減につながります。
- ホットタオル: お湯で温めたタオルを患部に当てます。タオルが冷めたら再び温め直して使用します。
- 使い捨てカイロ: 患部に直接ではなく、衣類の上から当てて温めます。低温やけどに注意が必要です。
- 入浴: 可能であれば、シャワーではなく湯船に浸かり、体全体を温めましょう。体の芯から温まることで、筋肉のリラックス効果が高まります。
- 温湿布や塗り薬: 薬局などで購入できる温湿布や血行促進効果のある塗り薬を使用するのも一つの方法です。製品の使用方法に従って使いましょう。
ただし、つっている最中の激しい痛みがある時に無理に温めると、かえって痛みが強まることもあります。ストレッチで痛みが少し和らいでから、または痛みが落ち着いた後に残るだるさや不快感に対して温めるのが一般的です。
頻繁にこむら返りが起こる場合は医療機関へ相談
これまでに述べた予防策や対処法を試しても、寝ている時のこむら返りが頻繁に起こる場合や、痛みが非常に強い場合、また、先述したような病気の可能性を示唆する他の症状(しびれ、筋力低下、むくみなど)が伴う場合は、一度医療機関を受診することをお勧めします。
単なる体質や生活習慣の問題だと思われがちですが、背景に何らかの病気が隠れている可能性も否定できません。早期に原因を特定し、適切な治療を開始することが、症状の改善だけでなく、 underlying disease(基礎疾患)の悪化を防ぐためにも非常に重要です。
何科を受診すべきか?
こむら返りで医療機関を受診する場合、まずはかかりつけ医に相談するか、以下の診療科を検討すると良いでしょう。
- 整形外科: 筋肉や骨、関節、神経に関する疾患を専門としています。腰部脊柱管狭窄症や、運動器系の問題によるこむら返りの可能性を探るのに適しています。
- 内科: 糖尿病、甲状腺疾患、腎臓病、ミネラル代謝異常など、全身性の病気によってこむら返りが引き起こされている可能性を探るのに適しています。必要に応じて専門医(糖尿病内科、腎臓内科など)を紹介してもらうこともあります。
- 神経内科: 末梢神経障害や、その他の神経系の病気が疑われる場合に専門的な診断を受けられます。
- 血管外科: 閉塞性動脈硬化症など、血管系の問題によるこむら返りが疑われる場合に適しています。
症状や気になる点(他の体の不調、服用中の薬など)を医師に詳しく伝えることが、正確な診断につながります。自己判断で済ませず、専門家のアドバイスを求めるようにしましょう。
まとめ:寝てるときこむら返りの原因を知り、適切なケアを
寝ている間に突然襲ってくるこむら返りは、非常に不快で睡眠を妨げるつらい症状です。その原因は、水分不足、ミネラルバランスの乱れ、筋肉疲労、体の冷え、不適切な寝姿勢、ストレスや自律神経の乱れなど、様々な要因が複合的に関連しています。これらの原因の多くは、日々の生活習慣を見直すことで改善が期待できます。
特に、就寝前の軽いストレッチやマッサージで筋肉をほぐすこと、寝る時の体温調節や冷え対策をしっかり行うこと、そして日頃から水分とミネラルを意識的に摂取することが、寝ている時のこむら返り予防には効果的です。また、バランスの取れた食事や十分な睡眠、ストレス管理といった規則正しい生活習慣も、体全体の調子を整え、こむら返りが起こりにくい体を作る上で重要です。
もしこむら返りが起きてしまった場合は、慌てずに、つった筋肉をゆっくりと、しかししっかりと伸ばすストレッチを行いましょう。痛みが和らいだら、患部を温めることで痛みを軽減することもできます。
しかし、これらのセルフケアを試してもこむら返りの頻度が改善しない場合や、足のしびれ、筋力低下、むくみなど、気になる他の症状が伴う場合は、背景に糖尿病や腎臓病、血管の病気、神経系の病気などが隠れている可能性も考えられます。このような場合は、自己判断せずに早めに医療機関(整形外科、内科、神経内科など)を受診し、専門医に相談することをお勧めします。
寝ている時のこむら返りは、体のサインの一つかもしれません。原因を正しく理解し、適切な予防策と対処法を知っておくことで、夜間のつらい症状を減らし、安心して眠れる日々を取り戻しましょう。日々の少しの意識とケアが、快適な睡眠への第一歩となります。
免責事項:本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断、治療、助言を意図するものではありません。個人の健康状態や症状に関しては、必ず医療機関を受診し、専門医の診断や指導を受けてください。本記事の情報に基づいて読者が行う一切の行為、またはその結果について、当方は一切責任を負いません。