夢遊病(睡眠時遊行症)は、眠っている間に無意識のうちに歩き回るなどの行動をとる睡眠障害の一種です。
多くは子供に見られますが、大人になってから発症することもあり、本人や周囲の人がその行動中に怪我をする危険性も伴います。
「夢遊病とは一体何なのか」「どのような行動をとるのか」「どうすれば治るのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、夢遊病の定義から原因、具体的な症状や危険性、そしてご本人やご家族ができる対処法や、医療機関での治療法について詳しく解説します。
夢遊病について正しく理解し、適切な対応をとるための参考にしてください。
夢遊病の正式名称と分類
私たちが一般的に「夢遊病」と呼んでいる状態の正式名称は、「睡眠時遊行症(すいみんじゆうこうしょう)」です。
これは、国際的な睡眠障害の分類において、「ノンレム睡眠関連パラソムニア(異睡眠)」の一つに位置づけられています。
パラソムニアとは、睡眠中に起こる異常行動や不随的な現象の総称です。
睡眠時遊行症は、主に深い眠りであるノンレム睡眠の段階で起こり、夢を見ているレム睡眠中には起こりません。
そのため、本人はその間の出来事をほとんど覚えていないのが特徴です。
夢遊病は実在する?よくある誤解
「夢遊病なんてフィクションの世界の話では?」と思われる方もいるかもしれませんが、睡眠時遊行症は医学的に認められた、実在する睡眠障害です。
決して珍しいものではなく、特に子供のうちは比較的多く見られます。
夢遊病に関するよくある誤解としては、「夢遊病者は夢の内容に沿って行動する」「夢遊病中に複雑な犯罪や殺人まで行うことがある」といったものがあります。
しかし、実際にはノンレム睡眠中に起こるため、夢の内容とは無関係な行動をとります。
また、後述しますが、取る行動は比較的単純なものが多く、計画的・複雑な行動をとることは稀です。
多くの場合は、起き上がって歩き回る、簡単な作業をする、などです。
ただし、行動の内容によっては危険を伴う可能性があるため注意が必要です。
夢遊病の主な症状と行動パターン
夢遊病の症状は、眠っている間に無意識の状態で行われる様々な行動として現れます。
その程度や種類は人によって異なりますが、典型的ないくつかのパターンがあります。
典型的な夢遊病の行動
睡眠時遊行症の最も典型的な行動は、ベッドから起き上がって歩き回ることです。
これは寝ている部屋の中だけでなく、家の中をうろつくこともあります。
その他にも、比較的単純な行動が多く見られます。
- 立ち上がる、座る
- 服を着替える
- ものを探す、移動させる
- ドアを開閉する
- トイレに行く
- 水を飲む
- 簡単な会話をする(意味不明なことが多い)
これらの行動中、本人の目は開いていますが、意識レベルは非常に低い状態です。
顔はぼんやりとしていたり、一点を見つめていたりすることが多いです。
周囲の呼びかけに気づかないこともよくあります。
夢遊病中に話しかけたらどうなる?
夢遊病中の本人に話しかけると、反応は様々です。
- 全く反応しない
- ぼそぼそと意味不明な返答をする
- 質問とは関係ないことを言う
- 優しく誘導しようとすると抵抗する
- まれにパニックになったり、攻撃的になったりする
無理に強く揺り起こしたり、大声で話しかけたりすることは推奨されません。
本人が混乱したり、恐怖を感じたりして、予期せぬ行動(暴れたり、逃げようとしたり)につながる可能性があるからです。
静かに優しく声をかけ、安全な場所に誘導するのが基本的な対処法です。
夢遊病で「やばい」行動とは?危険性
夢遊病中の行動は、ほとんどの場合、本人や周囲に直接的な危害を加える意図はありません。
しかし、意識がはっきりしない状態での行動は、思わぬ事故につながる危険性をはらんでいます。
これが、「やばい」行動と言われるゆえんです。
特に注意が必要な危険な行動には、以下のようなものがあります。
- 窓やベランダから転落する
- 階段から落ちる
- 家から出て外をさまよう(交通事故、不審者遭遇などのリスク)
- 刃物や火など、危険なものを扱う
- 家具などにぶつかって怪我をする
- 物を壊す
これらの危険な行動は頻繁に起こるわけではありませんが、起こる可能性をゼロにはできません。
特にマンションの高層階に住んでいる場合や、家の周りが交通量の多い道路に面している場合などは、より一層の注意が必要です。
本人だけでなく、危険を回避しようとした家族が怪我をすることもあり得ます。
夢遊病が発生した際には、まず周囲の安全を確保することが最も重要になります。
夢遊病の原因:子供と大人で異なる特徴
夢遊病は子供に多く見られますが、大人になってから発症したり、子供の頃から続いていたりする場合もあります。
子供と大人では、夢遊病の原因や背景が異なることが多いです。
子供の夢遊病の原因
子供の夢遊病は、脳の発達段階と関連が深いと考えられています。
子供の脳は睡眠と覚醒の切り替え機能がまだ未熟であり、ノンレム睡眠からスムーズに覚醒できない際に、脳の一部が覚醒して体が動いてしまうと考えられています。
子供の夢遊病の主な原因・誘因には以下のようなものがあります。
- 脳の発達段階: 成長に伴い自然に消失することが多いのはこのためです。
- 遺伝的要因: 家族に夢遊病や他のパラソムニアの経験がある場合、発症しやすい傾向があります。
- 睡眠不足: 十分な睡眠が取れていないと、深いノンレム睡眠の割合が増え、夢遊病が起こりやすくなります。
- 不規則な睡眠時間: 休日などの寝坊も、睡眠リズムを乱し誘因となります。
- 発熱: 高熱が出た際に夢遊病のような行動が見られることがあります(熱せん妄とは異なる場合も)。
- ストレスや不安: 心理的な緊張も睡眠の質に影響を与え、誘因となることがあります。
- 特定の薬剤: 一部の風邪薬や精神科の薬などが誘因となることがあります。
子供の夢遊病は思春期までに自然に消失することがほとんどで、特別な治療を必要としない場合が多いです。
しかし、頻繁に起こる場合や、危険な行動が見られる場合は、医療機関に相談することが推奨されます。
大人の夢遊病の原因と背景
大人の夢遊病は、子供の頃から続いている場合と、大人になってから初めて発症する場合があります。
大人になってからの発症は、子供とは異なり、背景に他の睡眠障害や精神疾患、特定の薬剤、生活習慣などが関わっていることが多いのが特徴です。
大人の夢遊病の主な原因・誘因には以下のようなものがあります。
- 子供の頃からの持続: 思春期を過ぎても症状が続くケースです。
- 睡眠不足、不規則な生活: 子供と同様、大人の夢遊病の最も一般的な誘因です。
- ストレス、疲労、不安: 仕事や人間関係など、日常生活でのストレスが大きく関わることがあります。
- 特定の薬剤: 精神安定剤、睡眠薬、抗うつ薬など、様々な種類の薬剤が誘因となる可能性があります。
- 他の睡眠障害:
- 睡眠時無呼吸症候群: 睡眠の質を著しく低下させ、夢遊病を誘発することがあります。
- 周期性四肢運動障害: 睡眠中の不随意な手足の動きが覚醒レベルを上げ、夢遊病につながることがあります。
- 精神疾患: うつ病、不安障害、パニック障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などが関連していることがあります。
- 神経系の疾患: 脳炎や頭部外傷などが原因となる可能性もあります(稀)。
- アルコール摂取: 寝る前のアルコール摂取は、睡眠の質を悪化させ、夢遊病の誘因となります。
大人の夢遊病は、その背景にある原因を特定し、適切に対処することが重要です。
特に、睡眠時無呼吸症候群などの他の睡眠障害が隠れている可能性もあるため、専門医の診察を受けることが強く推奨されます。
大人の夢遊病とアルコールの関係
寝る前にお酒を飲むと眠りにつきやすくなると感じる人もいますが、アルコールは睡眠の質を低下させることが知られています。
特に、アルコールを摂取した際の睡眠は、深いノンレム睡眠の後半が減少し、睡眠が浅くなる傾向があります。
アルコールが体内で分解される過程で、睡眠が不安定になり、ノンレム睡眠からの覚醒がスムーズに行われなくなることがあります。
この状態が、夢遊病の発生を誘発・悪化させる可能性があるのです。
また、アルコールは筋弛緩作用もあるため、上気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性もあります。
睡眠時無呼吸症候群自体が夢遊病の誘因となることがあるため、アルコール摂取は夢遊病のリスクを二重に高めると言えるでしょう。
大人の夢遊病に悩んでいる場合は、寝る前のアルコール摂取を控えることが、症状の改善につながる可能性があります。
【子供と大人の夢遊病の原因比較】
要因 | 子供の夢遊病 | 大人の夢遊病 |
---|---|---|
脳の発達 | 未熟さが主要因。成長と共に改善。 | 発達完了しており、直接的な原因ではない。 |
遺伝的要因 | 強く関与。 | 関与する場合もある。 |
睡眠不足・不規則 | 主要な誘因。 | 主要な誘因。 |
発熱 | 誘因となることがある。 | あまり一般的ではない。 |
ストレス・不安 | 誘因となることがある。 | 主要な誘因の一つ。 |
特定の薬剤 | 誘因となることがある。 | より多様な薬剤が誘因となる可能性がある。 |
他の睡眠障害 | あまり一般的ではない(年齢依存のものを除く)。 | 睡眠時無呼吸症候群などが隠れている可能性が高い。 |
精神疾患 | あまり一般的ではない。 | うつ病、不安障害などが関連することが多い。 |
神経系疾患 | 稀。 | 関連する可能性も(稀)。 |
アルコール摂取 | 関係なし。 | 主要な誘因の一つ。 |
経過 | 思春期までに自然消失することが多い。 | 自然消失しにくい。背景要因の治療が重要。 |
夢遊病が起きた時の対処法
家族やパートナーが夢遊病の症状を示した場合、どうすれば良いのか戸惑うかもしれません。
最も重要なのは、本人の安全を確保し、危険を避けることです。
まず行うべきこと:安全の確保
夢遊病中の行動で最も避けなければならないのは、怪我や事故です。
そのため、本人が歩き回っているのを見かけたら、まず周囲の安全を確保しましょう。
- 冷静になる: 驚かず、落ち着いて対処することが大切です。
- 優しく見守る・誘導する: 大声を出したり、急に触ったりせず、静かに様子を見守ります。もし危険な場所(階段の近く、窓辺など)に向かっている場合は、優しく腕をとったり、声かけで方向を変えさせたりして、安全な場所(ベッドや部屋の中央など)に誘導します。
- 危険物を取り除く: 行動範囲内に刃物、火の出るもの(ライターなど)、割れ物など、危険なものがあれば、本人が近づく前にそっと片付けましょう。
- 窓やドアの施錠を確認: 就寝前に、窓や玄関のドアがしっかりと施錠されているか確認しておくことが予防策として有効です。特に子供の場合や、危険な行動が見られる場合は必須です。
- 階段などに柵を設置: 必要であれば、階段の入り口にベビーゲートのような柵を設置することも転落防止に役立ちます。
日頃から、寝室や家の中の安全対策を講じておくことが、夢遊病による事故を防ぐ最善の方法です。
本人を無理に起こすべきか?
前述したように、夢遊病中の本人を無理に起こすことは推奨されません。
強い刺激で覚醒させると、本人は自分がなぜそんな場所にいるのか理解できず、ひどく混乱したり、恐怖を感じたりすることがあります。
パニックになって暴れたり、周囲の人に攻撃的になったりする可能性も否定できません。
また、覚醒後も不安や不快感が残ることがあります。
基本的には、安全を確保しながら静かに見守り、優しくベッドに戻すように促しましょう。
声かけをする場合も、「大丈夫だよ」「ベッドに戻ろうね」など、穏やかで短い言葉を選びます。
腕をそっと引くなど、穏やかな接触で誘導するのも有効です。
もし、どうしても起こさなければ危険な状況(家から出ようとしている、明らかに危険な行動をとっている)であれば、安全を最優先に、優しく肩を揺するなどして起こします。
しかし、その後の本人の混乱に対応できるよう準備しておく必要があります。
夢遊病中の出来事は、本人にとって記憶にないか、断片的な奇妙な夢のように感じられることが多いです。
覚醒後に問い詰めても本人は説明できないため、優しく接するように心がけましょう。
夢遊病の治し方・治療法
夢遊病の「治し方」は、症状の頻度や危険性、原因によって異なります。
子供の夢遊病は自然に治ることが多いですが、大人の場合は背景に原因があることが多く、その治療が必要になります。
自宅でできる対処・予防策
病院での治療が必要ない場合や、症状が軽度な場合は、まず日常生活の中でできる対処・予防策を試すことが推奨されます。
これらは、夢遊病の誘因を減らし、睡眠の質を改善することに重点を置きます。
- 規則正しい睡眠習慣: 毎日できるだけ同じ時間に寝て、同じ時間に起きるようにします。週末の寝坊もほどほどにしましょう。十分な睡眠時間を確保することが重要です。
- 睡眠環境の整備: 寝室を暗く、静かで、快適な温度に保ちます。寝る直前のスマホやPCの使用は避けましょう。
- 寝る前の飲酒・喫煙を控える: 特にアルコールは夢遊病の誘因となるため、寝る前の摂取は避けるか減らしましょう。
- ストレス管理: ストレスや不安は睡眠の質を低下させます。リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、ヨガなど)、趣味、適度な運動などでストレスを発散させましょう。
- 就寝前にトイレに行く: 満腹や膀胱の不快感も睡眠を妨げ、夢遊病の誘因となることがあります。
- 安全対策の徹底: 既に述べたように、窓やドアの施錠、危険物の片付けなど、家の中の安全対策は最も重要です。
これらの対策を行うことで、夢遊病の頻度や重症度が軽減される可能性があります。
病院で行われる治療法
自宅での対策だけでは改善が見られない場合や、症状が重い、危険な行動がある、大人になってから発症した、他の睡眠障害や精神疾患の疑いがある場合は、専門医の診察を受ける必要があります。
病院では、まず問診や検査によって、夢遊病の頻度、行動の内容、危険性の評価、そして背景にある原因(睡眠不足、ストレス、他の睡眠障害、精神疾患、薬剤など)を特定します。
行われる可能性のある検査としては、以下のようなものがあります。
- 詳細な問診: 症状がいつから始まったか、どのくらいの頻度で起こるか、どのような行動をとるか、日中の眠気や疲労感はあるか、病歴や服薬歴、家族歴などを詳しく聞き取ります。
- 睡眠日誌の記録: 毎日の睡眠時間、寝る時間、起きる時間、中途覚醒の有無、夢遊病が起こった時間や内容などを記録してもらい、睡眠パターンを把握します。
- 睡眠ポリグラフ検査(PSG): 脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸、血中酸素濃度などを測定しながら一晩眠ってもらう検査です。夢遊病がノンレム睡眠中に起こっていることを確認したり、睡眠時無呼吸症候群などの他の睡眠障害が合併していないか調べたりするために行われます。
- ビデオPSG検査: 睡眠ポリグラフ検査と同時に、睡眠中の体の動きや行動をビデオで記録する検査です。夢遊病の具体的な行動パターンを把握するのに非常に有効です。
原因が特定されたら、それに応じた治療が行われます。
- 原因の治療: 睡眠時無呼吸症候群があればCPAP療法、精神疾患があれば薬物療法や精神療法、特定の薬剤が誘因であればその薬剤の変更や中止(医師の指示のもと)など、背景にある疾患や要因に対する治療を行います。
- 生活習慣の改善指導: 規則正しい睡眠、睡眠環境の整備など、自宅でできる対策について専門的なアドバイスを受けます。
- 安全対策の指導: 事故防止のための具体的な方法について指導を受けます。
薬物療法について
薬物療法は、夢遊病の症状が非常に頻繁に起こる場合や、本人や周囲に危険が及ぶ可能性がある行動をとる場合に検討されます。
使用される可能性のある薬剤としては、以下のようなものがあります。
- ベンゾジアゼピン系薬剤(特にクロナゼパム): 睡眠中の脳の興奮を抑え、深いノンレム睡眠を安定させることで、夢遊病の発生を抑制する効果が期待されます。症状が強い場合に短期間使用されることが多いですが、依存性などの問題もあるため、医師の慎重な判断のもとで使用されます。
- 抗うつ薬: 特に三環系抗うつ薬などが、ベンゾジアゼピン系薬剤と同様の効果を期待して使用されることがあります。
- メラトニン: 睡眠・覚醒リズムを調整するホルモンであるメラトニンの製剤が、特に子供の夢遊病に有効な場合があるという報告もあります。
薬物療法は、必ず医師の処方と指示のもとで行う必要があります。自己判断での使用や中止は危険です。
また、薬物療法のみでなく、原因の治療や生活習慣の改善と組み合わせて行うのが一般的です。
【夢遊病の「治し方」比較】
方法 | 特徴 | 適用されるケース | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
自宅での対策 | 睡眠習慣、環境、ストレス管理など、日常生活の改善。 | 軽度~中等度の症状。子供の夢遊病。誘因が生活習慣にある場合。 | 誰でもすぐに始められる。副作用がない。睡眠全体の質向上につながる。 | 即効性がない場合がある。症状が重い場合は効果が限定的。 |
安全対策 | 家の中の危険箇所をなくす、施錠などを徹底する。 | すべてのケースで最重要。特に危険な行動がある場合。 | 事故や怪我のリスクを大幅に減らせる。家族も安心できる。 | 症状自体をなくすわけではない。 |
原因の治療 | 背景にある睡眠障害や疾患、薬剤などに対する治療。 | 大人になってから発症した場合、他の疾患が疑われる場合。 | 根本的な原因を取り除くことで、症状の改善や消失が期待できる。 | 原因の特定に検査が必要な場合がある。原因によっては治療に時間がかかる。 |
薬物療法 | 脳の活動や睡眠構造に作用する薬剤を使用。 | 症状が頻繁で重い場合、危険な行動がある場合。他の方法で効果がない場合。 | 比較的早く症状を抑制できる可能性がある。 | 副作用のリスク(眠気、依存性など)。長期使用には注意が必要。根本治療ではない。 |
認知行動療法(CBT) | 睡眠に関する誤った考え方や行動を修正する。不安軽減など。 | ストレスや不安が強い場合。睡眠の質が低い場合。 | 薬を使わずに根本的な改善を目指せる。他の睡眠障害にも有効。 | 効果が出るまで時間がかかる場合がある。専門的なセラピストが必要。 |
催眠療法 | 特定のケースで有効との報告も。 | 一部のケースで試される。 | 薬を使わない。 | 効果に個人差がある。専門的なセラピストが必要。 |
専門医への相談が必要なケース
夢遊病は多くの子供が経験し、自然に治ることもありますが、中には専門的な診断や治療が必要なケースもあります。
「どのくらいで病院に行くべきなの?」と悩むこともあるでしょう。
受診を検討すべきタイミング
以下のような場合は、一度専門医に相談することを強くお勧めします。
- 症状が頻繁に起こる: 週に何度も症状が見られるなど、頻度が高い場合。
- 危険な行動が見られる: 家から出ようとする、窓を開ける、危険物を扱うなど、本人や周囲に怪我のリスクがある行動をとる場合。
- 症状が重く、生活に支障が出ている: 症状のために睡眠の質が低下し、日中の眠気や集中力低下につながっている場合。
- 大人になってから夢遊病が始まった: 大人の夢遊病は、背景に他の原因があることが多いため、必ず医療機関を受診して原因を特定することが重要です。
- 子供の夢遊病が思春期を過ぎても続いている: 自然に治ることが多い時期を過ぎても改善しない場合。
- 夢遊病以外の睡眠中の異常行動がある: 大きないびき、呼吸の停止、足のぴくつき、うなされる、叫ぶなどの他の症状が合併している場合。
- 日中に強い眠気や疲労感がある: 睡眠の質が低下しているサインかもしれません。
- 本人が夢遊病や睡眠について悩んでいる: 不安を感じていたり、睡眠への恐怖心があったりする場合。
- 家族が心配している: 特に、本人が症状に気づいていない場合でも、家族が安全面などを心配している場合。
- 特定の薬剤を服用している、あるいは最近飲み始めた: 服用中の薬が誘因となっている可能性を医師に確認する必要があります。
これらのサインが見られる場合は、放置せず、専門的な知識を持った医師に相談することが、適切な診断と治療につながります。
何科を受診すべきか?
夢遊病(睡眠時遊行症)を相談できる専門科はいくつかあります。
- 精神科: 精神的なストレスや不安、精神疾患が背景にある場合に関係が深いです。
- 心療内科: ストレスなどの心理的な要因が体に影響を及ぼしている場合に相談できます。
- 神経内科: 脳や神経系の問題が疑われる場合に専門的です。
- 睡眠外来: 睡眠障害全般を専門的に扱っているため、最も適切と言えます。睡眠ポリグラフ検査などの専門的な検査を受けることができる場合が多いです。
まずは、お住まいの地域の睡眠外来を探してみるのが良いでしょう。
もし近くに睡眠外来がない場合は、精神科や心療内科、神経内科に相談してみると良いでしょう。
受診する際は、いつから、どのくらいの頻度で、どのような症状が出るか、夜間の行動を記録した動画などがあれば、より正確な診断に役立ちます。
夢遊病に関するQ&A
夢遊病は自然に治る?
子供の夢遊病は、多くの場合、成長と共に自然に消失します。
特に小学校入学前から低学年にかけて発症した場合、思春期を迎える頃までには症状が見られなくなることがほとんどです。
一方、大人の夢遊病は、子供の頃から続いている場合や、大人になってから初めて発症した場合を含め、自然に消失することは少ない傾向があります。
大人の夢遊病は、睡眠不足やストレス、他の睡眠障害、精神疾患、薬剤など、背景に何らかの原因があることが多く、その原因が改善されない限り症状が続くことが一般的です。
そのため、大人の夢遊病の場合は、自然に治るのを待つのではなく、積極的に原因を特定し、対処することが重要になります。
大人になってから発症することはある?
はい、大人になってから初めて夢遊病を発症することはあります。
子供の頃に症状が全くなかった人でも、大人になってから突然夢遊病が始まるケースは少なくありません。
大人になってからの発症の場合、前述したように、ストレスや疲労、睡眠不足といった生活習慣の要因に加え、睡眠時無呼吸症候群などの他の睡眠障害、うつ病や不安障害などの精神疾患、服用中の薬剤などが強く関わっている可能性が高いと考えられます。
そのため、大人になってから夢遊病の症状が出始めた場合は、「疲れているだけだろう」と放置せず、必ず医療機関を受診して詳しい検査を受け、原因を特定することが非常に重要です。
原因を特定し、適切に対処することで、症状の改善や消失を目指すことができます。
(※注:上記5つのQ&Aは、提供された参考記事の見出しから抽出されたものですが、夢遊病に関する記事の内容と全く関連性がないため、ここでは回答を省略し、本来夢遊病に関するユーザーが疑問に思いそうな他のQ&Aを追加します。)
夢遊病は遺伝する?
遺伝的な要因は、夢遊病の発症に影響を与えると考えられています。
家族に夢遊病や、夜驚症(睡眠中に突然叫び声をあげるなどの症状)といった他のノンレム睡眠関連パラソムニアの人がいる場合、本人も夢遊病を発症するリスクが高まると言われています。
ただし、必ずしも遺伝するわけではなく、遺伝的要因に加えて睡眠不足やストレスなどの環境要因が組み合わさることで発症すると考えられています。
昼寝中に夢遊病は起こる?
夢遊病は、主に深いノンレム睡眠の段階で起こります。
この深いノンレム睡眠は、通常、夜間の睡眠、特に前半に多く出現します。
昼寝中にもノンレム睡眠はありますが、夜間の睡眠ほど深く長くならないことが多いため、昼寝中に夢遊病が起こることは比較的少ないとされています。
しかし、全く起こらないわけではなく、非常に疲れている場合など、昼寝でも深いノンレム睡眠が出現した場合には起こる可能性はあります。
夢遊病中に食べたものを覚えている?
夢遊病中に何かを食べるという行動(睡眠関連食行動障害と呼ばれる別のパラソムニアと関連する場合もある)をとったとしても、その間の出来事を覚えていることはほとんどありません。
夢遊病は意識が低い状態で行われるため、覚醒後にその時の行動を思い出せないのが典型的な特徴です。
目を覚ますと、なぜか食べ物が散らかっている、食べた形跡がある、といった状況に本人が驚くこともあります。
夢遊病と夜驚症は違うの?
夢遊病(睡眠時遊行症)と夜驚症は、どちらもノンレム睡眠中に起こるパラソムニアですが、症状が異なります。
夜驚症は、睡眠中に突然叫び声をあげて起き上がり、ひどく怯えたり、パニックになったりする状態です。
心拍数や呼吸数が上がり、汗をかくなどの自律神経症状も伴います。
夢遊病と同様に、本人はその間の出来事を覚えていないことがほとんどです。
一方、夢遊病は主に歩き回るなどの比較的穏やかな行動をとります。
夜驚症のようなパニックや恐怖を伴うことは稀です。
どちらも子供に多く見られ、脳の発達と関連があると考えられています。
同じ人が夢遊病と夜驚症の両方を経験することもあります。
【まとめ】夢遊病について正しく理解し、安全を確保することが重要
夢遊病(睡眠時遊行症)は、眠っている間に無意識に体を動かしたり、歩き回ったりする睡眠障害です。
特に子供に多く見られますが、大人になってから発症することもあり、原因は子供と大人で異なる傾向があります。
夢遊病中の行動は本人の意思とは無関係に行われ、その間の記憶はほとんどありません。
典型的には歩き回るなど比較的単純な行動が多いですが、窓から落ちる、外に出る、危険物を扱うといった危険な行動につながる可能性もゼロではありません。
ご家族などが夢遊病を起こしているのを見かけた場合は、何よりも本人の安全確保が最優先です。
大声で起こしたり、無理に引き止めたりせず、静かに見守りながら安全な場所に誘導するようにしましょう。
日頃から、家の窓やドアの施錠、危険物の片付けといった安全対策を講じておくことが非常に重要です。
子供の夢遊病は成長と共に自然に消失することが多いですが、大人の夢遊病は睡眠不足やストレス、他の睡眠障害などが背景にあることが多く、自然に治ることは少ない傾向があります。
もし、症状が頻繁に起こる、危険な行動が見られる、大人になってから発症した、他の睡眠障害の疑いがあるといった場合は、精神科、心療内科、神経内科、または睡眠外来の専門医に相談することをお勧めします。
専門医による診断と、必要に応じた治療(原因の治療、薬物療法など)によって、症状の改善や安全確保につながります。
夢遊病は正しく理解し、適切な対処法や予防策を知っておくことで、本人もご家族も安心して過ごせるようになります。
過度に恐れる必要はありませんが、気になる症状がある場合は、早めに専門家へ相談することを検討しましょう。
免責事項:
本記事は、夢遊病(睡眠時遊行症)に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。
個々の症状や状況については、必ず医師や専門家の診断を受けてください。
本記事の情報に基づいて行われた行為の結果について、当方は一切の責任を負いません。