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【簡単】躁鬱(双極性障害)セルフチェック|症状と診断の目安

ご自身の気分や行動の波に「躁うつ病」の可能性を感じ、「躁鬱チェック」について調べている方もいらっしゃるかもしれません。もしかしたら、以前からうつ病の診断を受けているけれど、治療がうまくいかない、気分の波がある気がする、といった不安を抱えている方もいるかもしれません。

「躁うつ病」という言葉は耳にしても、実際にどのような病気で、どんな症状が出るのか、うつ病とはどう違うのか、分かりにくい部分も多いでしょう。この記事では、双極性障害(いわゆる躁うつ病)の主な症状や特徴、うつ病との違い、考えられる原因などについて詳しく解説します。自己チェックの際の注意点もお伝えしますので、ご自身の状態を振り返る参考にしてください。ただし、ここでご紹介するチェックリストはあくまで目安です。正確な診断や適切な治療のためには、必ず専門医にご相談ください。

目次

躁鬱病(双極性障害)とは

躁鬱病は、正式には「双極性障害」と呼ばれる精神疾患です。特徴的なのは、「躁状態(あるいは軽い躁状態である軽躁状態)」と「うつ状態」という、両極端な気分の波を繰り返すことです。

一般的に知られている「うつ病」は、気分の落ち込みが続く単極性の疾患ですが、双極性障害の場合は、うつ状態だけでなく、気分が異常に高揚したり、活発になったりする躁状態(または軽躁状態)が現れる期間があります。この気分の波の間に、比較的落ち着いた正常な気分(安定期)が訪れることもあります。

双極性障害は、気分の波の程度によって大きく2つのタイプに分けられます。

  • 双極性I型障害: 著しい躁状態とうつ状態を繰り返します。躁状態が非常に激しく、本人の社会生活に重大な支障をきたしたり、入院が必要になったりすることもあります。
  • 双極性II型障害: 軽躁状態とうつ状態を繰り返します。軽躁状態は躁状態ほど激しくないため、本人や周囲が病気だと気づきにくいことがあります。むしろ、活動的で調子が良い時期だと捉えられることも少なくありません。

双極性障害は、気分の波が生活に大きな影響を与え、仕事や人間関係に困難を生じさせることがあります。しかし、適切な治療を継続することで、多くの場合、症状をコントロールし、安定した生活を送ることが可能です。

躁状態の症状をチェック

ここでは、双極性障害の躁状態(特に双極性I型障害で見られる著しい躁状態)で現れやすい代表的な症状を挙げます。ご自身や身近な人に、これらの症状が当てはまる期間があったか振り返ってみましょう。

異常な気分の高揚や開放感が続く

気分が異常に明るく、ハイテンションになります。根拠なく自信満々で、何でもできるような万能感に溢れます。普段はしないような大胆な行動をとったり、陽気で社交的になったりします。

根拠のない自信や誇大妄想が見られる

自分は特別な人間だ、天才だ、と信じ込むなど、現実離れした自信を持つことがあります。裕福になった、著名人とのつながりがある、特別な使命があるといった、現実にはあり得ないような誇大な考え(誇大妄想)にとらわれることもあります。

睡眠時間が短くても平気

睡眠欲求が著しく低下します。夜通し活動したり、ほとんど眠らなくても日中元気に過ごせたりします。本人は疲労を感じにくいですが、体は休息を必要としています。

多弁になり、話が飛ぶ

尋常でなくよくしゃべるようになります。次々と新しいアイデアが浮かび、話があちこちに飛びがちで、聞いている側はついていくのが難しくなります。思考があまりにも速く、考えが次々と連想される観念奔逸(かんねんほんいつ)という状態になることもあります。

怒りっぽく、些細なことでイライラする

気分が高揚しているだけでなく、非常に易刺激性(いしげきせい)が高まり、些細なことにも過敏に反応して怒りっぽくなることがあります。ちょっとしたことで激昂したり、攻撃的な言動をとったりすることもあります。

向こう見ずな行動や散財が増える

判断力が低下し、衝動的な行動が増えます。高価なものを衝動買いして多額の借金をしたり、事業に手を出して失敗したり、危険な性的行動をとったりと、自分や周囲に大きな損害を与える可能性のある行動をとることがあります。

注意散漫で集中できない

多くのことに興味を持ちますが、どれにも集中して取り組むことができません。気が散りやすく、一つのことを最後までやり遂げることが難しくなります。

これらの症状は、単に一時的に気分が良い、調子が良いといった状態とは異なります。通常の状態から明らかに逸脱しており、周囲から見ても「何かおかしい」「普段と違う」と感じられるほど、著しい変化が現れるのが特徴です。

うつ状態の症状をチェック

躁状態や軽躁状態の後、あるいは周期的に、双極性障害のうつ状態が現れます。双極性障害のうつ状態は、単極性のうつ病の症状とよく似ています。以下の症状が当てはまる期間があったか振り返ってみましょう。

気分がひどく落ち込み、何も手につかない

ゆううつな気分がほとんど一日中、ほとんど毎日続きます。将来に希望が持てず、悲観的になります。ベッドから起き上がることさえ辛く、日常生活を送ることが困難になります。

楽しいことや趣味に興味を持てない

以前は楽しめていた趣味や活動、仕事などに対して、全く興味や喜びを感じられなくなります。何をしてもつまらない、という無気力な状態(興味・喜びの喪失)になります。

疲れやすく、体がだるい

特別な活動をしていないのに、体がひどく疲れてだるく感じます。全身の倦怠感が強く、休息しても回復しないように感じます。

眠れない、または眠りすぎる

睡眠パターンに変化が現れます。寝つきが悪く、夜中に何度も目が覚めてしまう(不眠)こともあれば、逆に一日中眠ってしまい、起きているのが辛い(過眠)こともあります。早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」も特徴的な症状の一つです。

食欲がない、または食べすぎる

食欲が著しく低下して体重が減ることが多いですが、逆に過食になり体重が増えることもあります。味覚の変化を感じることもあります。

考えがまとまらず、決断できない

思考力や集中力が低下し、考えがまとまらなくなります。簡単なことでさえ、何をすべきか判断したり、決断したりすることが非常に難しくなります。

自分を責め、死について考えることがある

自分自身を価値のない人間だと感じたり、過去の出来事を悔やんで自分をひどく責めたりします(罪責感、無価値感)。絶望感が深まり、死ぬことばかり考えてしまう、希死念慮(きしねんりょ)が生じることもあります。

これらのうつ状態の症状は、日常生活や社会生活に大きな影響を与えます。仕事に行けなくなったり、友人や家族との交流を避けたりするようになることもあります。

軽い躁鬱(軽躁状態)の症状

双極性II型障害の特徴である軽躁状態は、双極性I型障害の躁状態よりも症状が軽い状態を指します。本人はむしろ気分が良く、調子が良いと感じていることが多く、周囲も病気だと気づきにくいことがあります。しかし、社会生活や対人関係に問題を引き起こす可能性があります。

軽躁状態の主な症状は、躁状態の症状と似ていますが、その程度が著しくなく、通常は入院が必要になったり、社会生活に重大な支障をきたしたりするほどではありません。

  • 気分がいつもより高揚したり、開放的になったり、あるいは易刺激性になったりする状態が、少なくとも連続4日間以上続き、日常とは明らかに異なります。
  • この期間に、以下の症状のうち3つ(または易刺激性のみの場合は4つ)以上が見られます(躁状態の症状と同じ項目です)。
    • 自尊心の肥大、または誇大性
    • 睡眠欲求の減少(例: 3時間しか眠らなくても休息できたと感じる)
    • 普段より多弁であるか、話そうとし続ける
    • 観念奔逸、または考えが競い合っているような主観的な感覚
    • 注意散漫(例: 関係のない、または重要でない外部の刺激に注意がすぐに引きつけられる)
    • 目標志向的な活動(社会的活動、仕事や学校での活動、性的活動など)の増加、または精神運動性の焦燥
    • 向こう見ずな行動で、その行動がもたらす可能性のある苦痛な結末を認識していないもの(例: 衝動的な買いあさり、性的無分別、愚かな投資)

軽躁状態の期間は、本人は「調子が良い」「効率が良い」と感じていることもあり、仕事や創作活動がはかどるように見えることもあります。しかし、判断力が低下しているため、不用意な発言で人間関係を損ねたり、衝動的な行動で後々困るような事態を招いたりすることもあります。軽躁状態の後には、必ずと言っていいほどうつ状態が訪れ、その落差に苦しむことになります。

双極性障害とうつ病の違い

双極性障害とうつ病は、どちらも気分の波が症状の中心となる精神疾患ですが、根本的に異なる病気です。特に、うつ状態の症状が似ているため混同されやすいですが、躁状態や軽躁状態の有無が決定的な違いです。

双極性障害とうつ病の主な違いを以下の表にまとめました。

項目 双極性障害 うつ病
気分の波 躁状態(軽躁状態)とうつ状態を繰り返す うつ状態のみ
躁状態/軽躁状態の有無 ある ない
経過 躁・うつ・安定期を周期的に繰り返すことが多い うつ状態が持続する
治療の中心 気分安定薬、非定型抗精神病薬など 抗うつ薬など
抗うつ薬の使用 単独使用で躁転やラピッドサイクラー化のリスク 主要な治療薬
遺伝的要因 うつ病より関連性が高い傾向がある 関連性はあるが、双極性障害よりは低い傾向
発症年齢 比較的若い年齢(20代~30代)で発症が多い 幅広い年齢層で発症
自殺リスク うつ病と同様にリスクがある リスクがある

双極性障害のうつ状態に対して、うつ病と同じように抗うつ薬のみで治療を行うと、躁状態を誘発したり(躁転)、気分の波の周期が短くなったり(ラピッドサイクラー化)するリスクがあります。そのため、正確な診断に基づいて適切な治療を行うことが非常に重要です。

「うつ病だと思って治療を受けているが、なかなか良くならない」「抗うつ薬を飲んでいるのに、かえって気分が高揚する時期がある」といった場合は、実は双極性障害である可能性も考えられます。このような場合は、改めて専門医に相談し、診断を見直してもらうことが大切です。

双極性障害になりやすい性格や特徴

双極性障害の発症に、特定の性格や特徴が必ずしも直接的な原因となるわけではありません。しかし、研究では、ある種の気質や傾向を持つ人が、双極性障害を発症しやすい可能性が指摘されています。これは、「気質」と呼ばれる、生まれつき持っている反応パターンや感情の傾向と関連があると考えられています。

双極性障害との関連が言われることのある気質や特徴には、以下のようなものが挙げられます。

  • 循環気質(Cyclothymic temperament): 気分や活動性が比較的短い周期で変動しやすい傾向。明るく活動的な時期と、憂鬱で内向的な時期を繰り返すが、その波は双極性障害ほど著しくなく、病気とまでは言えない状態。双極性障害の診断に至る前に、このような気質を持つ人がいると考えられています。
  • 活発で社交的、あるいは芸術的・創造的: 躁状態や軽躁状態では活動性が高まることから、元々エネルギッシュで社交的な人、あるいは芸術的な才能や創造性に富む人が双極性障害を発症しやすい、といった見方もあります。しかし、これは症状が現れた際の「表れ方」と関連があるのかもしれません。
  • 過敏で傷つきやすい(メランコリー親和型気質の一部): 伝統的なうつ病の概念で言われることのある「メランコリー親和型気質」の一部(例: 真面目、責任感が強い、完璧主義)は、双極性障害のうつ状態にも関連する可能性がありますが、双極性障害全体に共通する性格像としては確立されていません。

重要なのは、これらの性格や特徴が「原因」というよりも、病気を発症しやすい「リスク要因」として考えられるということです。特定の性格だからといって必ず双極性障害になるわけではなく、また、これらの特徴を持たない人も発症することがあります。

もしご自身に上記のような傾向があり、かつ気分の波に悩んでいる場合は、その気質と双極性障害の関連について、専門医に相談してみるのも良いでしょう。ただし、性格そのものを否定的に捉える必要はありません。

躁鬱病の原因として考えられること

双極性障害の明確な原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられており、単一の原因で起こる病気ではないことが分かっています。

現在、主な原因として考えられているのは以下の要素です。

  • 遺伝的要因: 双極性障害は、遺伝的な影響が大きい病気の一つと考えられています。家族の中に双極性障害の方がいる場合、そうでない場合と比較して発症リスクが高まることが分かっています。ただし、遺伝子を持っている人が必ず発症するわけではなく、あくまで「なりやすさ」に関わる要因です。特定の単一遺伝子ではなく、複数の遺伝子が複雑に関与していると考えられています。
  • 脳機能の異常: 近年の脳科学の研究により、双極性障害の方の脳では、特定の神経伝達物質(ドーパミンやセロトニンなど)の調節機能に異常がある可能性や、感情や思考を司る脳の特定の部位(前頭前野や扁桃体など)の構造や機能に違いが見られる可能性が指摘されています。これらの脳機能の異常が、気分の波や症状を引き起こすと考えられています。
  • 環境要因・心理社会的要因: 遺伝的・生物学的な要因に加えて、ストレスとなるような出来事(大切な人との死別、失業、人間関係のトラブルなど)や、生活リズムの大きな変化(睡眠不足、海外旅行など)が、気分の波を引き起こすきっかけとなることがあります。特に、最初の躁状態やうつ状態は、強いストレスの後に出現しやすい傾向があります。

これらの要因が単独で作用するのではなく、生まれつきの体質(遺伝的要因、脳機能の傾向)に、環境からのストレスが加わることで、病気が発症したり、再発したりすると考えられています。

正確な原因が不明であるからといって、治療法がないわけではありません。脳機能の異常や気分の波をターゲットにした薬物療法や、ストレス対処法、生活リズムの調整を学ぶ精神療法など、効果が確立された治療法があります。

躁鬱の周期と気分の切り替わり

双極性障害の気分の波(躁状態・軽躁状態、うつ状態、安定期)の現れ方や周期は、患者さんによって非常に多様です。波の高さや深さ、続く期間、次の波が来るまでの間隔は、一人ひとり異なります。

  • 周期性: 気分の波が規則的に繰り返すこともあれば、不規則なこともあります。年に数回の波を繰り返す人もいれば、数年に一度しか大きな波が来ない人もいます。
  • 波の期間: 躁状態やうつ状態が数週間から数ヶ月続くことが一般的です。軽躁状態は躁状態より期間が短い傾向があります。安定期は数ヶ月から数年に及ぶこともあります。
  • ラピッドサイクラー: 1年間に4回以上の気分のエピソード(躁、軽躁、うつ)を繰り返す場合、「ラピッドサイクラー」と呼ばれます。これは双極性障害の一つの病型として認識されており、治療がやや難しい場合があります。
  • 混合状態: 躁状態とうつ状態の症状が同時に、あるいは非常に短期間で入れ替わりながら出現することがあります。「気分は落ち込んでいるのに、考えがぐるぐる回って落ち着かない」「イライラして怒りっぽいのに、ひどく悲しい」といった状態です。混合状態は診断や治療が難しく、患者さんにとって非常に辛い状態です。
  • 気分の切り替わり: 躁状態からうつ状態へ、あるいはうつ状態から躁状態へ、比較的急激に気分が切り替わることもあれば、ゆっくりと時間をかけて移行することもあります。気分の切り替わりのきっかけも様々で、ストレス、睡眠不足、特定の薬物などが影響することもあります。

気分の周期や切り替わりのパターンを理解することは、再発予防や早期発見に役立ちます。日々の気分や活動性を記録する「ライフチャート」をつけることは、自身の波のパターンを知るのに有効な方法の一つです。

双極性障害の診断基準(DSM-5)

双極性障害の診断は、精神科医が患者さんの症状、経過、家族歴などを総合的に判断して行います。国際的に広く用いられている診断基準の一つに、アメリカ精神医学会が発行する『精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版(DSM-5)』があります。

DSM-5における双極性障害の診断は、主に過去にどのような気分のエピソード(躁病エピソード、軽躁病エピソード、大うつ病エピソード)があったかに基づいています。

  • 双極性I型障害: 少なくとも1回の躁病エピソードがあれば診断されます。通常、大うつ病エピソードも経験しますが、双極性I型障害の診断には必須ではありません。
    • 躁病エピソードの基準: 異常に高揚した、開放的な、あるいは易刺激的な気分と、目標指向的な活動またはエネルギーの増加が、少なくとも1週間以上、ほとんど毎日、一日中持続する期間があること。この期間に、特定の症状(自尊心の肥大、睡眠欲求の減少、多弁、観念奔逸、注意散漫、活動の増加、向こう見ずな行動)のうち3つ(または易刺激性のみの場合は4つ)以上が見られ、症状が著しく、社会生活や職業上の機能に重大な障害を引き起こしているか、または入院が必要であること。あるいは精神病性の特徴(幻覚や妄想)があること。
  • 双極性II型障害: 少なくとも1回の軽躁病エピソードと、少なくとも1回の大うつ病エピソードの両方がある場合に診断されます。躁病エピソードの既往があってはなりません。
    • 軽躁病エピソードの基準: 異常に高揚した、開放的な、あるいは易刺激的な気分と、活動またはエネルギーの増加が、少なくとも連続4日間以上、ほとんど毎日、一日中持続する期間があること。この期間に、特定の症状のうち3つ(または易刺激性のみの場合は4つ)以上が見られ、その期間は日常とは明らかに異なること。症状は社会生活や職業上の機能に重大な障害を引き起こすほどではないか、または入院が必要ではないこと。精神病性の特徴がないこと。
    • 大うつ病エピソードの基準: 抑うつ気分、または興味や喜びの喪失を含む症状が、少なくとも連続2週間以上、ほとんど毎日、一日中持続する期間があること。この期間に、特定の症状(抑うつ気分、興味や喜びの喪失、体重や食欲の変化、睡眠の障害、精神運動性の焦燥または制止、疲労感、無価値感や罪責感、思考力・集中力の低下、希死念慮)のうち5つ以上が見られ、社会生活や職業上の機能に臨床的に意味のある苦痛や障害を引き起こしていること。

上記はDSM-5の診断基準の概要であり、実際にはより詳細な基準や判断が必要です。また、他の病気や薬物による影響を除外するための検討も行われます。これらの基準を読んだだけで自己診断を行うことは非常に危険です。

このチェックリストは診断ではありません

この記事でご紹介した躁状態、軽躁状態、うつ状態の症状リストは、ご自身の状態を振り返るための一つの目安として作成したものです。これらの症状に心当たりがあるからといって、必ずしも双極性障害であると診断されるわけではありません。

  • 症状の程度や持続期間: DSM-5などの診断基準では、それぞれの症状の程度や、それがどのくらいの期間続いたか、社会生活にどの程度影響しているかなどが、診断において非常に重要視されます。単に一時的に気分が変動しただけであれば、病気とは言えないこともあります。
  • 他の疾患の可能性: 気分の変動や身体症状は、双極性障害以外の様々な精神疾患(うつ病、注意欠陥多動性障害(ADHD)、境界性パーソナリティ障害など)や、身体的な病気、あるいは薬物やアルコールの影響によっても引き起こされることがあります。専門医は、これらの可能性も考慮して診断を行います。
  • 専門的な評価: 診断には、患者さんからの詳しい聞き取り(問診)に加え、必要に応じて家族からの情報、心理検査などが用いられます。総合的な評価によって初めて正確な診断が可能になります。

したがって、このチェックリストで当てはまる項目が多いと感じたとしても、それはあくまで「双極性障害の可能性があるため、専門医に相談してみることを強くお勧めします」というメッセージとして受け止めてください。

自己診断は、誤った認識や不要な不安を生む可能性があります。もしご自身の気分の波や症状について悩んでいるのであれば、迷わず専門医に相談することが、問題解決への第一歩となります。

診断や治療については専門医にご相談ください

ご自身の気分や行動の波に悩んでいる方、あるいは「もしかして双極性障害かもしれない」と感じている方は、必ず精神科や心療内科の専門医に相談してください。

双極性障害は、早期に正確な診断を受け、適切な治療を開始することが非常に重要な病気です。診断が遅れたり、うつ病として不適切な治療を受けたりすると、病状が悪化したり、回復が遅れたりする可能性があります。

専門医に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • 正確な診断: 専門医が、あなたの症状、経過、家族歴などを丁寧に聞き取り、必要に応じて検査なども行い、正確な診断を下します。これにより、「うつ病だと思っていたら双極性障害だった」といった誤診を防ぎ、適切な治療へ繋がります。
  • 適切な治療計画: 双極性障害の治療は、主に気分安定薬を中心とした薬物療法と、心理教育などの精神療法を組み合わせて行われます。専門医があなたの病状や体質に合った薬を選び、副作用に注意しながら用量を調整し、最適な治療計画を立ててくれます。
  • 病気との付き合い方を学ぶ: 専門医や医療スタッフは、病気について正しい知識を伝え、気分の波の早期発見方法、ストレス対処法、生活リズムの整え方など、病気と上手く付き合っていくための具体的な方法を教えてくれます(心理教育)。
  • 再発予防: 双極性障害は再発しやすい病気ですが、適切な治療の継続と、自身の病気への理解を深めることで、再発リスクを大きく減らすことができます。専門医は、再発のサインに早期に気づくためのアドバイスや、再発予防のための維持療法を提案してくれます。
  • 回復へのサポート: 病気によって生じた仕事や人間関係の問題、将来への不安などについても、専門医や医療機関はサポートを提供してくれます。

初めて精神科や心療内科を受診することに抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、気分や心の不調は、体の病気と同じように誰にでも起こりうることあり、専門家の助けを借りることは決して恥ずかしいことではありません。「もしかしたら」と感じたら、まずは一度相談してみる勇気を持つことが大切です。

お近くの精神科や心療内科を探して、予約を取ってみましょう。インターネットで「地域名 精神科」「地域名 心療内科」などと検索すると、医療機関を見つけることができます。予約時には、現在の症状や相談したい内容を簡単に伝えると良いでしょう。

双極性障害の治療と付き合い方

双極性障害は、適切な治療を継続することで、多くの人が病状をコントロールし、安定した生活を送ることができるようになります。治療の目標は、気分の波を抑え、うつ状態や躁状態の頻度・重症度を減らし、再発を防ぎ、より良い生活の質を取り戻すことです。

主な治療法(薬物療法、精神療法)

双極性障害の治療は、主に以下の二本柱で行われます。

  • 薬物療法: 双極性障害の治療の根幹となるのが薬物療法です。
    • 気分安定薬: 気分の波をなだらかにし、躁状態とうつ状態の両方を予防する効果があります。リーマス(炭酸リチウム)、デパケン(バルプロ酸)、テグレトール(カルバマゼピン)などが代表的です。
    • 非定型抗精神病薬: 急性期の躁状態やうつ状態に効果があり、維持期にも気分安定作用として使用されることがあります。ジプレキサ(オランザピン)、セロクエル(クエチアピン)、ラツーダ(ルラシドン)などがあります。
    • 抗うつ薬: 双極性障害のうつ状態に使用されることもありますが、単独使用は躁転のリスクがあるため、気分安定薬などと併用するなど、慎重な使用が必要です。
    • その他: 補助的に、不安や不眠に対して抗不安薬や睡眠薬が処方されることもあります。

薬物療法は、効果が現れるまでに時間がかかったり、副作用があったりすることもあります。医師とよく相談しながら、自分に合った薬の種類や量を調整していくことが重要です。自己判断で服薬を中断することは、病状の悪化や再発につながるため絶対に避けましょう。

  • 精神療法(心理社会的治療): 薬物療法と並行して、あるいは回復期に、病気への理解を深め、再発予防や社会生活の質の向上を目指す精神療法が行われます。
    • 心理教育: 双極性障害についての正しい知識(病気の原因、症状、治療法、再発予防など)を学びます。自分自身の病気を理解することで、治療へのモチベーションが高まり、主体的に病気と向き合えるようになります。
    • 対人関係・社会リズム療法(IPSRT): 対人関係の問題と生活リズムの乱れが気分の波に影響することに着目し、対人関係のスキル向上や、規則正しい生活リズムの確立を目指します。
    • 認知行動療法(CBT): うつ状態の際に陥りやすいうつ病的な思考パターンを修正したり、問題解決スキルを身につけたりするのに役立ちます。

これらの精神療法は、薬物療法効果を高め、病気との付き合い方を学ぶ上で非常に有効です。

治療継続と再発予防の重要性

双極性障害は慢性的な経過をたどりやすい病気であり、一度良くなっても再発する可能性が高いです。そのため、症状が落ち着いたからといって自己判断で治療をやめず、医師の指示に従って治療を継続すること(維持療法)が極めて重要です。

再発予防のためには、以下の点に注意することが推奨されます。

  • 服薬を続ける: 医師から指示された薬を、症状が安定していても毎日忘れずに服用することが最も重要です。
  • 生活リズムを整える: 特に睡眠不足は躁状態の引き金になりやすいです。毎日決まった時間に寝て起きるなど、規則正しい生活を心がけましょう。
  • ストレス管理: ストレスは気分の波を悪化させる要因となります。自分に合ったストレス解消法を見つけ、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
  • 病気のサインを早期に発見する: 自分の気分の波のパターンを知り、躁状態やうつ状態になり始めの微妙なサイン(例: 少し寝なくても平気になった、イライラすることが増えた、体がだるいなど)に早期に気づけるようにしましょう。
  • 定期的な通院: 症状が安定していても、定期的に専門医の診察を受け、病状や服薬状況を確認してもらいましょう。

周囲の理解とサポート

双極性障害の患者さんにとって、家族や友人、職場の同僚など、周囲の人たちの理解とサポートは大きな支えとなります。

周囲の人は、病気について正しい知識を持ち、患者さんの気分の波や言動が病気によるものであることを理解することが大切です。責めたり批判したりするのではなく、病気と闘っている本人を温かく見守り、サポートする姿勢が求められます。

患者さん自身も、病気であることをオープンに話せる相手を見つけたり、必要な時には周囲に助けを求めたりすることが、孤立を防ぎ、回復への道を歩む上で助けになります。家族向けの心理教育プログラムなども開催されており、家族が病気への理解を深める機会を持つことも推奨されます。

まとめ

この記事では、「躁鬱チェック」に関心を持つ方へ向けて、双極性障害の主な症状、うつ病との違い、原因、診断、治療などについて解説しました。

双極性障害は、躁状態(軽躁状態)とうつ状態という極端な気分の波を繰り返す病気です。躁状態では気分が高揚し活動的になりますが、判断力が低下してトラブルを起こしやすく、うつ状態では気分が落ち込み何も手につかなくなります。うつ病と間違われやすいですが、躁状態や軽躁状態の有無が診断の重要なポイントであり、治療法も異なります。

この記事でご紹介した症状リストは、あくまでご自身の状態を振り返るための参考です。これらの症状に心当たりがある場合や、気分の波に悩んでいる場合は、自己判断せず、必ず精神科や心療内科の専門医に相談してください。

双極性障害は適切な診断と治療を継続することで、病状をコントロールし、安定した生活を送ることが十分に可能です。専門医と協力し、病気と上手に付き合っていく方法を見つけていくことが、回復への最も確かな道です。


免責事項: 本記事は、双極性障害に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的アドバイスや診断を行うものではありません。読者の皆様ご自身の健康状態に関する懸念については、必ず医療専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて行ったいかなる行為についても、筆者および公開元は一切の責任を負いません。

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