夜驚症とは、睡眠中に突然、強い恐怖やパニックを伴って覚醒しかける睡眠障害の一つです。主に子供に多く見られますが、大人に起こることもあります。突然叫び声をあげたり、泣き出したりするため、見守る家族にとってはとても心配な現象です。この記事では、夜驚症の具体的な症状、子供と大人それぞれに異なる原因や誘発要因、ご家庭でできる対処法、そしてどのような場合に医療機関を受診すべきかについて、詳しく解説します。夜驚症でお悩みの方や、ご家族に夜驚症が見られる方は、ぜひ正しい知識を身につけ、適切な対応の参考にしてください。
夜驚症の主な症状
夜驚症のエピソードは、通常、眠りについてから数時間後、特に夜の前半に起こることが多いです。具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 突然の叫び声や泣き声: 眠っているにも関わらず、突然大きな声で叫んだり、泣き出したりします。
- 強い恐怖やパニックの表情: 顔は蒼白になったり、汗をかいたりし、強い恐怖や不安を感じているような表情になります。
- 身体的な活動: 座り込む、立ち上がる、ベッドから降りる、走り回ろうとするなどの行動を伴うことがあります。中には、激しく抵抗したり、攻撃的になったりする場合もあります。
- 呼びかけへの反応がない: 声をかけたり、触れたりしても、反応が鈍く、完全に覚醒しません。目を開けていることもありますが、焦点が合わず、周囲を認識していない状態です。
- イベント中の記憶がない: エピソード中に起こった出来事について、本人は翌朝になると全く覚えていません。無理に起こそうとしても、混乱するだけで、記憶には残りません。
- 短い持続時間: 通常、数分から長くても10分程度で自然に収まり、再び眠りにつきます。
これらの症状は非常に劇的で、見守る家族を驚かせ、不安にさせることがありますが、ほとんどの場合、本人に悪意があるわけではなく、意識がはっきりしない状態での行動です。
夜驚症と悪夢(夢魘)の違い
夜驚症とよく似た睡眠中の現象に「悪夢(あくむ)」がありますが、これらは発生する睡眠段階や、その後の状態に大きな違いがあります。
特徴 | 夜驚症(Sleep terror) | 悪夢(Nightmare) |
---|---|---|
発生する睡眠段階 | ノンレム睡眠(深い眠り) | レム睡眠(浅い眠り、夢を見やすい段階) |
発生時間 | 眠り始めから数時間後(夜の前半) | 夜の後半、明け方にかけて |
覚醒度 | 不完全(混乱している、呼びかけに反応しにくい) | 完全(比較的すぐに目を覚まし、状況を理解できる) |
イベント中の記憶 | ほとんどない | はっきり覚えている |
感情表現 | 強い恐怖、パニック、叫び、泣き、錯乱など | 夢の内容に関連した恐怖、不安 |
身体活動 | 激しい身体活動を伴うことが多い | ほとんど伴わない(寝たまま) |
再入眠 | 比較的容易に再び眠りにつく | 恐怖や不安から再入眠が困難な場合がある |
夜驚症は、ノンレム睡眠中の脳の覚醒異常によって体が活動的になる現象であり、本人はその出来事を記憶していません。一方、悪夢はレム睡眠中に見る怖い夢であり、目が覚めれば夢の内容を鮮明に記憶しており、恐怖感から目が覚めてしまうという違いがあります。この違いを理解することは、適切な対処法を選ぶ上で重要です。
夜驚症の原因
夜驚症は、脳の覚醒を調整するシステムの一時的な機能不全によって起こると考えられています。完全に解明されているわけではありませんが、いくつかの要因が関連していることがわかっています。原因は、子供の場合と大人の場合で若干異なる側面があります。
子供の夜驚症の原因
子供の夜驚症の主な原因は、脳の発達途中にあることです。睡眠中、特にノンレム睡眠から浅い睡眠や覚醒への移行がスムーズに行われない場合に起こりやすいと考えられています。子供の脳は発達途上であり、睡眠パターンも大人とは異なります。そのため、睡眠中の覚醒のコントロールがまだ十分に成熟しておらず、ノンレム睡眠からの移行がうまくいかないことで、夜驚症のような中途半端な覚醒状態が生じやすいのです。
また、遺伝的な要因も関与していると考えられています。両親や兄弟姉妹に夜驚症や夢遊病(同じくノンレム睡眠中の覚醒障害)の経験がある場合、子供も夜驚症を起こしやすい傾向があります。
さらに、子供の夜驚症を誘発する要因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 睡眠不足や疲労: 寝る時間が遅い、十分な睡眠時間を確保できていない、日中の活動でひどく疲れているなどが、ノンレム睡眠を深くし、その後の覚醒を不安定にすることがあります。
- 発熱: 体調不良による発熱も、睡眠パターンを乱し、夜驚症を引き起こす誘発要因となることがあります。
- ストレスや不安: 引っ越し、入学・進級、家族関係の変化など、子供にとっての精神的なストレスや不安も関与する可能性があります。
- 睡眠スケジュールの乱れ: 不規則な睡眠時間や、週末に寝だめするなど、睡眠サイクルが乱れることも誘発要因となります。
大人の夜驚症の原因
大人の夜驚症は、子供の頃から継続している場合と、成人になってから初めて発症する場合があります。大人の夜驚症の場合、子供の頃の脳の発達途上という要因は当てはまらないため、他の要因がより強く関与していると考えられます。
大人の夜驚症の主な原因や関連要因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 精神的なストレス: 仕事、人間関係、経済的な問題など、長期的な精神的ストレスや、トラウマ体験などが深く関わっていることが多いです。ストレスが睡眠の質を低下させ、ノンレム睡眠中の覚醒障害を引き起こしやすくします。
- 睡眠不足と不規則な生活: 子供と同様に、慢性的な睡眠不足や、交代勤務、夜更かしなどによる不規則な睡眠パターンは、大人の夜驚症の有力な誘発要因です。
- アルコールや特定の薬剤: 寝る前のアルコール摂取は、一時的に眠りを深くしますが、その後の睡眠を不安定にし、レム睡眠やノンレム睡眠中の異常を引き起こしやすくなります。抗うつ薬や向精神薬など、一部の薬剤も睡眠構造に影響を与え、夜驚症を誘発することがあります。
- 他の睡眠障害: 睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸が止まる、または弱くなる疾患)や、むずむず脚症候群(寝ている間に脚に不快な感覚が生じ、動かしたくなる疾患)など、他の睡眠障害があると、睡眠の質が低下し、夜驚症が起こりやすくなることがあります。これらの睡眠障害が夜驚症の根本原因となっている場合もあります。
- 神経疾患: ごく稀ですが、てんかんや脳腫瘍など、特定の神経疾患が大人の夜驚症の症状を引き起こすこともあります。成人になって初めて発症した場合や、症状が非典型的である場合は、他の疾患の可能性も考慮し、専門的な検査が必要となることがあります。
夜驚症を引き起こす要因(共通)
子供と大人に共通して、夜驚症のエピソードを誘発・悪化させる可能性のある要因をまとめると、以下のようになります。
- 睡眠不足
- 疲労
- 精神的・身体的ストレス
- 発熱や病気
- 睡眠スケジュールの乱れ
- 寝室環境(騒音、暑すぎる・寒すぎるなど)
- 寝る前のカフェインやアルコール摂取
- 特定の薬剤の使用
- 他の睡眠障害の合併
これらの要因をできるだけ取り除くことが、夜驚症の予防や軽減につながります。
夜驚症はいつまで続く?対象別の特徴
夜驚症の経過や、いつまで続くかは、発症した年齢によって特徴が異なります。
子供の夜驚症の特徴と経過
子供の夜驚症は、3歳から8歳頃に最も多く見られます。この時期の子供の脳は発達が著しく、睡眠パターンも変化しやすい段階にあります。
- 自然に消失することが多い: 子供の夜驚症の最も大きな特徴は、ほとんどの場合、思春期頃までに自然に消失するということです。脳の発達が進み、睡眠中の覚醒調節機能が成熟するにつれて、夜驚症のエピソードは減少し、やがて見られなくなることが一般的です。
- 頻度は様々: 毎日起こる子供もいれば、週に数回、あるいは月に数回程度という子供もいます。頻度が高いからといって、必ずしも重症であるとは限りませんが、家族にとっては負担が大きくなることがあります。
- 一時的な場合も: 風邪で熱が出ているときや、何か大きなイベント(運動会、発表会など)を控えて緊張しているときなど、一時的に夜驚症が起こることもあります。誘発要因がなくなれば、自然に治まることが多いです。
親御さんにとっては心配な現象ですが、「成長と共に自然に治まることが多い」ということを理解しておくことが大切です。過度に心配しすぎず、落ち着いて対処することが、子供の安心にもつながります。
大人の夜驚症の特徴と注意点
大人の夜驚症は、子供の頃から継続している場合と、成人期になってから初めて発症する場合があります。
- 継続しやすい傾向: 大人の夜驚症は、子供のように自然に消失する可能性が低い場合があります。特に、精神的な要因や他の睡眠障害、基礎疾患が背景にある場合は、それらの問題を解決しない限り、夜驚症のエピソードが継続しやすい傾向があります。
- 精神的な要因が強い: 大人の夜驚症は、子供に比べて精神的なストレスやトラウマ体験との関連が強いことが多いです。うつ病や不安障害などの精神疾患を合併している場合もあります。
- 他の睡眠障害の合併: 睡眠時無呼吸症候群など、他の睡眠障害が隠れている可能性もあります。
- 危険性の増大: 大人になると身体も大きくなり、力も強いため、夜驚症のエピソード中に暴れたり、ベッドから飛び降りたりした場合、子供よりも怪我をするリスクが高まります。
大人の夜驚症の場合、単なる睡眠の乱れと見過ごさず、原因となっている可能性のある精神的な問題や他の疾患がないか、専門的な視点からの評価を受けることが重要です。
赤ちゃんの夜驚(睡驚症)について
乳幼児期にも、寝ている間に突然泣き出したり、手足をばたつかせたりする現象が見られることがあり、これを「睡驚症(すいきょうしょう)」と呼んだり、広義には夜驚症に含めたりすることがあります。
- 夜驚症とは異なる場合も: 赤ちゃんの夜間の泣きは、単なる夜泣きや寝ぼけ、空腹、おむつ、暑い・寒いなどの不快感によるものであることがほとんどです。学童期以降に見られるような、明確な恐怖やパニック、錯乱状態を伴う典型的な夜驚症とは異なる場合が多いです。
- 睡眠パターンの未熟さ: 赤ちゃんの睡眠パターンは非常に未熟で、ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルも確立されていません。この睡眠構造の不安定さが、中途半端な覚醒や泣きにつながることがあります。
- 安全確保が重要: 赤ちゃんの睡驚症も、イベント中の安全確保が最も重要です。ベッドからの転落を防ぐなど、周囲の環境に注意しましょう。
赤ちゃんの夜間の泣きやぐずりは正常な発達過程の一部であることが多いですが、頻繁で激しい場合や、日中の様子にも気になる点がある場合は、小児科医に相談してみましょう。
夜驚症の治療と対処法
夜驚症の治療は、症状の重さや頻度、本人や家族の苦痛の程度、そして背景にある原因によって異なります。多くの場合、自宅でできる対策が中心となりますが、必要に応じて医療機関での専門的な治療が検討されます。
自宅でできる夜驚症の対策
夜驚症のエピソードが起こった時や、日頃からできる対策は、主に安全の確保と睡眠環境・生活習慣の改善です。
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エピソード中の安全確保:
- 見守る: 夜驚症のエピソード中は、無理に起こそうとせず、安全を見守ることが最も重要です。声をかけすぎたり、揺さぶったり、抱きかかえたりすると、かえって混乱させたり、抵抗されたりすることがあります。落ち着いて見守り、エピソードが自然に収まるのを待ちましょう。
- 危険物の排除: 周囲に危険なもの(家具の角、尖ったもの、割れやすいものなど)がないか確認し、片付けておきましょう。
- 戸締まり: 子供や大人が無意識のうちに外に出てしまわないよう、窓や玄関の鍵をしっかりかけましょう。
- 転落防止: ベッドからの転落の危険がある場合は、ベッドガードを使用したり、床にマットを敷いたりするなどの対策を検討しましょう。
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睡眠環境と生活習慣の改善:
- 十分な睡眠時間の確保: 睡眠不足は夜驚症の強力な誘発要因です。年齢に応じた十分な睡眠時間を確保できるよう、家族全体で心がけましょう。
- 規則正しい睡眠時間: 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように努め、睡眠と覚醒のリズムを整えることが大切です。週末の寝だめは、かえって体内時計を乱すことがあるため控えめにしましょう。
- 寝る前のリラックス習慣: 寝る前にリラックスできる時間を作ることで、スムーズに眠りに入ることができます。ぬるめのお風呂に入る、静かな音楽を聴く、絵本を読む(子供)、軽いストレッチをするなどが効果的です。
- 寝室環境の整備: 寝室は暗く、静かで、快適な温度に保ちましょう。寝る前にスマホやタブレットなどのブルーライトを浴びるのを避けることも重要です。
- 寝る前のカフェインやアルコールを控える: 特に大人の場合、これらは睡眠を浅くしたり、睡眠構造を乱したりするため、就寝前数時間は摂取を避けましょう。
- ストレスの軽減: 日中のストレスや不安が強い場合は、それを軽減するための対策を考えましょう。子供の場合は、話を聞いてあげる、安心させてあげるなどの精神的なサポートが有効です。大人の場合は、ストレスマネジメントの方法を学ぶ、趣味や運動で気分転換をするなどが役立ちます。
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予定された覚醒法(Scheduled Awakening):
- 子供の夜驚症に対して効果がある可能性のある方法です。夜驚症が起こりやすい時間帯を特定し(睡眠日誌をつけるなど)、その時間の15分~30分前に一度起こし、数分間覚醒させてから再び寝かせます。これにより、ノンレム睡眠の深い段階を中断させ、夜驚症のエピソードを防ぐ効果が期待できます。ただし、この方法は医師や専門家と相談の上、行うようにしてください。
医療機関での治療法
自宅での対策だけでは改善が見られない場合や、症状が重い場合、他の疾患が疑われる場合などは、医療機関での専門的な治療が検討されます。
- 原因疾患の治療: 大人の夜驚症の場合、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群などの他の睡眠障害、またはうつ病や不安障害などの精神疾患が原因となっていることがあります。これらの基礎疾患を治療することで、夜驚症の症状が改善することが期待できます。
- 精神療法: 特に大人の夜驚症で、精神的なストレスやトラウマが強く関与している場合、カウンセリングや認知行動療法などが有効な場合があります。睡眠に関する誤った考え方を修正したり、ストレス対処法を身につけたりすることで、睡眠の質を改善し、夜驚症の軽減を目指します。
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薬物療法: 夜驚症に対する第一選択の治療は薬物療法ではありません。しかし、症状が非常に頻繁で重度の場合、エピソード中に危険な行動を伴う場合、または日中の機能に著しい影響を与えている場合など、限定的な状況で薬物療法が検討されることがあります。
- 主にベンゾジアゼピン系薬剤(例: クロナゼパムなど)が使用されることがあります。これらの薬剤は、ノンレム睡眠の深い段階を浅くすることで、夜驚症のエピソードを抑制する効果が期待できます。
- ただし、ベンゾジアゼピン系薬剤には、眠気、ふらつきなどの副作用や、長期使用による依存性のリスクがあるため、使用は慎重に行われ、可能な限り短期間で中止を目指します。
- 子供への薬物療法はさらに慎重に行われ、専門医の判断が必要です。
薬物療法はあくまで対症療法であり、夜驚症の根本原因を解決するものではありません。薬剤の使用については、必ず医師とよく相談し、リスクとベネフィットを理解した上で行うようにしましょう。
夜驚症の治療方針は、年齢、症状の頻度や重症度、原因、合併症の有無などを総合的に判断して決定されます。自己判断で治療を行うのではなく、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
どんな時に受診すべき?夜驚症の診察
夜驚症は子供の成長過程でよく見られる現象であり、多くは自然に治まるため、すべてのケースで医療機関を受診する必要はありません。しかし、以下のような場合には、一度医療機関を受診して相談してみることを検討しましょう。
受診を検討する目安
- 症状が頻繁に起こる: 週に数回以上、あるいは毎晩のように夜驚症のエピソードが起こり、本人や家族の睡眠が妨げられている場合。
- エピソード中に危険な行動を伴う: 暴れる、ベッドから飛び降りようとする、部屋から出ようとするなど、本人や周囲の安全が確保できないような行動が見られる場合。
- 日中の機能に影響が出ている: 夜驚症による睡眠不足や恐怖感から、日中に眠気がひどい、集中力が低下する、学校や仕事に支障が出ている場合。
- 本人や家族が強い苦痛を感じている: 夜驚症に対する不安や心配が大きく、日常生活に影響を与えている場合。
- 症状が非典型的である、または他の症状を伴う: てんかん発作のような体のぴくつきやひきつけを伴う、日中にも似たような混乱が見られるなど、典型的な夜驚症とは異なる症状がある場合。
- 大人になってから初めて発症した: 成人期になってから初めて夜驚症の症状が出た場合、精神的な問題や他の睡眠障害、基礎疾患が隠れている可能性があるため、医療機関での評価が必要です。
- 自宅での対策を試しても改善しない: 規則正しい生活や睡眠環境の改善など、ご家庭でできる対策を継続しても症状が改善しない場合。
これらの目安に当てはまる場合は、専門家の視点からのアドバイスや評価を受けることで、適切な対処法や治療法が見つかる可能性があります。
夜驚症は何科で診てもらう?
夜驚症で受診する場合、最初に相談する科は年齢や状況によって異なります。
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子供の場合:
- 小児科: まずはかかりつけの小児科医に相談するのが一般的です。夜驚症であることや、他の病気がないかなどを判断してもらえます。
- 小児精神科、児童精神科: 夜驚症の背景に精神的な要因が強く疑われる場合や、行動上の問題などを伴う場合は、専門の精神科を紹介されることがあります。
- 小児神経科: 症状が非典型的で、てんかんなどの神経疾患との鑑別が必要な場合などに受診を検討します。
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大人の場合:
- 精神科、心療内科: 精神的なストレスや他の精神疾患との関連が疑われる場合に適しています。
- 睡眠外来: 睡眠障害全般を専門的に診る医療機関です。夜驚症の原因を詳しく調べたり、専門的な治療(睡眠環境の改善指導、予定された覚醒法、薬物療法など)を受けたりすることができます。睡眠ポリグラフ検査など、精密検査が必要な場合にも対応可能です。
- 神経内科: 成人期に初めて発症した場合で、てんかんなどの神経疾患との鑑別が必要な場合に選択肢となります。
まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのがスムーズなことが多いです。インターネットで「睡眠外来」「精神科 睡眠障害」などと検索して、専門性の高い医療機関を探すこともできます。
夜驚が頻繁に起こる場合
夜驚症が頻繁に起こると、本人だけでなく、一緒に寝ている家族も睡眠不足になったり、精神的に疲弊したりすることがあります。頻繁な夜驚の場合に特に考慮すべき点があります。
- 誘発要因の徹底的な見直し: 睡眠不足、ストレス、不規則な生活など、考えられる誘発要因をもう一度丁寧に確認し、可能な限りの対策を行いましょう。睡眠日誌をつけて、夜驚が起こる時間帯や、その前の状況(寝る時間、食事、活動内容など)を記録すると、原因や誘発要因が見えてくることがあります。
- 安全対策の強化: 頻繁に起こる場合は、エピソード中の危険な行動をとるリスクも高まります。寝室の安全確保は最優先で行いましょう。
- 専門家への相談の検討: 自宅での対策だけでは難しい場合、頻繁な夜驚は本人や家族の生活の質を著しく低下させる可能性があります。早めに専門医に相談し、医学的な評価やアドバイス、必要に応じて治療を検討することが大切です。他の睡眠障害や精神的な問題を合併している可能性も考慮されます。
頻繁な夜驚は、単なる寝ぼけとして軽く見過ごさず、睡眠の質や心身の状態に何らかの問題があるサインかもしれないと考えて、適切に対応することが重要です。
まとめと専門家への相談
夜驚症は、ノンレム睡眠中に起こる覚醒障害の一つで、睡眠中に突然恐怖を感じて叫んだり、身体を動かしたりしますが、本人はその出来事を記憶していません。主に子供に多く見られ、脳の発達に伴って思春期までに自然に消失することが多い良性の睡眠障害です。
しかし、大人にも起こることがあり、その場合は精神的なストレスや他の睡眠障害、基礎疾患が関連している可能性があります。子供でも大人でも、睡眠不足、疲労、ストレス、不規則な生活などが夜驚症を誘発することがわかっています。
ご家庭での対処としては、夜驚症のエピソード中の安全確保が最も重要です。無理に起こさず、周囲の危険物を取り除くなどして見守りましょう。日頃からは、規則正しい睡眠習慣、十分な睡眠時間の確保、ストレスの軽減など、睡眠環境や生活習慣の改善に努めることが予防や軽減につながります。子供の場合は、予定された覚醒法が有効な場合もありますが、医師の指導のもとで行いましょう。
症状が頻繁に起こる場合、危険な行動を伴う場合、日中の生活に支障が出ている場合、本人や家族の苦痛が大きい場合、または成人になってから初めて発症した場合は、医療機関への受診を検討してください。子供の場合は小児科や小児精神科、大人の場合は精神科、心療内科、睡眠外来などで相談できます。他の睡眠障害や基礎疾患が隠れていないか評価を受け、必要であれば専門的な治療(精神療法や限定的な薬物療法など)が検討されます。
夜驚症は本人にとって辛い経験ではないことが多いですが、見守る家族にとっては大きな負担となることがあります。一人で悩まず、家族で協力し、必要に応じて専門家のアドバイスやサポートを得ることが大切です。正しい知識を持ち、落ち着いて対応することで、夜驚症とうまく付き合い、改善を目指すことができます。
免責事項
この記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に関するアドバイスを提供するものではありません。個々の症状については、必ず医師や専門家にご相談ください。この記事の情報に基づいて行った行為によって生じた損害等について、当方は一切責任を負いません。