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急性アルコール中毒 初期症状はこれ!危険なサインを見逃すな

急性アルコール中毒は、短時間で大量のアルコールを摂取することで、血中アルコール濃度が急激に上昇し、脳や全身の臓器に機能障害を引き起こす非常に危険な状態です。特に若い人や、お酒に強くない人が無理な飲み方をすると起こりやすく、場合によっては命に関わることもあります。急性アルコール中毒の初期症状を知っておくことは、自分自身や周囲の人の安全を守るために非常に重要です。危険なサインを見逃さず、迅速かつ適切な対処法を身につけることが、もしもの時の重症化を防ぐ鍵となります。この記事では、急性アルコール中毒の初期症状から危険な進行段階、救急搬送の判断基準、そして応急手当の方法まで、正しい知識を詳しく解説します。

目次

急性アルコール中毒とは?原因とメカニズム

急性アルコール中毒は、体内でアルコールを分解・処理できる能力を超えて、短時間に大量のアルコールを摂取した際に発生する中毒症状です。アルコールは、口から摂取されると胃や小腸から速やかに吸収され、血流に乗って全身を巡ります。特に脳は血流が豊富であるため、アルコールの影響を強く受けやすい臓器です。

アルコールが体に与える影響

アルコール(エタノール)は、神経系に抑制的に作用する物質です。少量であればリラックス効果や気分を高揚させる作用がありますが、量が増えるにつれて脳の様々な機能を抑制し始めます。

  • 脳: アルコールは脳の神経伝達物質の働きを乱し、思考力、判断力、協調運動能力、記憶力などを低下させます。酔いが進むと、運動機能の中枢や呼吸・循環を司る脳幹にも影響が及び、意識障害や呼吸抑制を引き起こす可能性があります。
  • 肝臓: アルコールは主に肝臓で分解されます。まずアセトアルデヒドという毒性の強い物質に分解され、さらに酢酸へと分解されて最終的に水と二酸化炭素になって体外へ排出されます。短時間に大量のアルコールを摂取すると、肝臓の処理能力が追いつかず、血中にアセトアルデヒドが蓄積し、吐き気や顔面紅潮といった不快な症状を引き起こします。
  • 循環器系: アルコールは血管を拡張させ、顔面紅潮や体温の放出を促します。大量摂取は血圧を変動させたり、心臓に負担をかけたりすることもあります。
  • 消化器系: 胃酸の分泌を促したり、消化管の運動を変化させたりします。これが吐き気や嘔吐の原因となることがあります。
  • 腎臓: 利尿作用があり、体の水分を失わせることで脱水症状を引き起こしやすくなります。
  • 体温調節: アルコールによって血管が拡張し体温が奪われやすくなるほか、脳の体温調節機能が抑制されることで、低体温になるリスクが高まります。

血中アルコール濃度と酔いの関係

アルコールの酔いの程度は、血中に含まれるアルコールの濃度(血中アルコール濃度)によって大きく変化します。血中アルコール濃度の上昇に伴って、脳の機能抑制が進行し、それに伴う症状が現れます。

一般的な目安として、以下のように段階分けされます。ただし、個人差(性別、年齢、体重、体質、飲酒経験、体調など)が大きく影響します。

血中アルコール濃度(%) 酔いの段階 主な症状
0.02 ~ 0.05 爽快期 気分が軽快になる、皮膚が赤くなる、判断力が少し鈍る
0.06 ~ 0.10 酩酊初期 陽気になる、手の動きが不確実になる、抑制が取れる、体温が上がりやすくなる、ろれつが回りにくくなる、初期症状が現れやすい
0.11 ~ 0.15 酩酊期 気が大きくなる、大声や独り言が多くなる、怒りっぽくなる、立つとふらつく、吐き気や嘔吐が見られることも
0.16 ~ 0.30 泥酔期 まっすぐ歩けない、何度も同じ話を繰り返す、意識がはっきりしない、おう吐を繰り返す、初期症状が悪化し、危険なサインが出始める
0.31 ~ 0.40 昏睡期 揺り動かしても起きない、失禁する、呼吸が浅く遅い、体温が下がる、顔色が蒼白になる、命に関わる非常に危険な状態
0.41 ~ 死の危険 呼吸中枢が麻痺、呼吸停止、心停止

急性アルコール中毒は、特に酩酊初期から泥酔期にかけて、血中アルコール濃度が急激に上昇する過程で発症しやすく、昏睡期に至ると非常に危険な状態となります。短時間での大量摂取は、この血中アルコール濃度を急激に、かつ危険なレベルまで上昇させてしまう最大の原因です。

急性アルコール中毒の初期症状・前兆

急性アルコール中毒の初期症状は、酔いが深まるにつれて現れるサインであり、これを見逃さないことが早期発見と適切な対応につながります。これらの症状は、脳やその他の臓器がアルコールの影響を受け始めていることを示しています。

これがサイン!見逃せない初期症状

急性アルコール中毒の初期症状は多岐にわたりますが、比較的早い段階で現れやすいものとして、以下のようなサインがあります。

  • 吐き気・嘔吐: アルコールやその分解物であるアセトアルデヒドが胃や脳の嘔吐中枢を刺激することで起こります。飲酒中に吐き気を感じたり、実際に吐いてしまったりするのは、体がこれ以上アルコールを受け付けないという危険信号の可能性があります。特に、普段あまり吐かない人が吐いた場合は注意が必要です。
  • めまい・立ちくらみ: アルコールが脳の平衡感覚をつかさどる部分に影響を与えたり、血管拡張による血圧変動が起こったりすることで生じます。立ち上がろうとした際にフラついたり、座っていてもフワフワするような感覚がある場合は注意が必要です。
  • 顔色が悪い・青白い: 大量飲酒により、末梢血管が収縮したり、脱水や低血糖が進んだりすると、顔色が悪くなることがあります。初期の顔面紅潮とは異なり、血の気が引いたような青白い顔色になるのは危険なサインです。
  • 意識がぼんやりする・反応が鈍い: 呼びかけに対する反応が遅くなったり、会話のつじつまが合わなくなったりします。眠そうに見えることもありますが、単なる眠気ではなく、意識レベルが低下している可能性があります。
  • ろれつが回らない: 舌や唇、顎などの筋肉をコントロールする脳の機能が抑制されることで、言葉が不明瞭になります。「さ」と「た」の区別がつかなくなる、滑舌が悪くなるなど、普段の話し方と明らかに異なる場合は注意が必要です。
  • 体温の異常(寒気、震え): アルコールは一時的に体温を上昇させますが、量が増えると体温調節機能が麻痺し、逆に体温が奪われやすくなります。寒気を感じたり、体が震えたりする場合は、体温が危険なほど低下しているサインかもしれません。
  • 落ち着きがない・攻撃的になる: 抑制が外れることで、普段はおとなしい人が大声を出したり、突然怒り出したりすることがあります。これは脳の理性を司る部分の機能が低下しているサインです。

これらの初期症状は、単なる「ひどい酔い」として見過ごされがちですが、放っておくと症状が進行し、命に関わる危険な状態に陥る可能性があります。「ちょっと様子がおかしいな」と感じたら、すぐに飲酒を止めさせ、注意深く様子を見ることが重要です。

症状が出始めたらどうなる?

初期症状が現れ始めた段階は、血中アルコール濃度が上昇し、脳機能の抑制が進行している状態です。この段階でさらに飲酒を続けたり、適切な対処がなされなかったりすると、症状はより深刻なものへと進行していきます。

具体的には、以下のような状態になるリスクが高まります。

  • 嘔吐が止まらなくなる: 胃の中のアルコールが全て排出されても、アセトアルデヒドの影響で吐き気が続き、胃液などを繰り返し吐くことがあります。
  • 意識レベルの低下: 呼びかけに対する反応がさらに鈍くなり、軽い刺激(肩を叩くなど)にも反応しなくなる可能性があります。完全に眠り込んでしまったように見えても、実際は意識障害を起こしている危険性があります。
  • 運動機能の麻痺: 自分一人で立つことや歩くことが全くできなくなり、座っていることも難しくなります。支えなしでは姿勢を保てず、倒れ込んでしまうこともあります。
  • 呼吸・循環機能への影響: 血中アルコール濃度がさらに上昇すると、呼吸を司る脳幹の機能が抑制され、呼吸が浅く、遅くなることがあります。また、脈拍や血圧にも異常が出ることがあります。
  • 低体温: 体温調節機能がさらに麻痺し、体が急速に冷えていきます。特に冬場や屋外など寒い環境では、低体温症のリスクが非常に高まります。

初期症状は、体が「もうこれ以上アルコールを処理できない」と発しているサインです。この警告を無視して飲酒を続けることは、非常に危険な行為であり、次に説明する泥酔期、そして命に関わる昏睡期へとあっという間に進行してしまう可能性があります。

症状の進行:危険な段階とサイン

急性アルコール中毒は、血中アルコール濃度の上昇に伴って段階的に進行します。初期の不快な症状から始まり、最終的には意識消失や呼吸停止に至ることもあります。それぞれの段階で現れるサインを理解しておくことは、危険な状態を早期に察知するために不可欠です。

段階別の症状(酩酊期、泥酔期、昏睡期)

先述の血中アルコール濃度と酔いの関係で示した段階のうち、特に注意が必要なのが酩酊期以降です。

酔いの段階 血中アルコール濃度(目安) 主な症状
酩酊期 0.11 ~ 0.15 % – 気分が高揚し、感情の起伏が激しくなる
– 気が大きくなり、大胆な行動をとる
– 大声で話す、歌うなど抑制が効かなくなる
– 同じ話を繰り返す
– まっすぐ立てない、ふらつく
吐き気、嘔吐
– 記憶が曖昧になる(ブラックアウト)
泥酔期 0.16 ~ 0.30 % – 意識が混濁し、反応が鈍い(揺り動かしてもはっきりしない)
– 自分一人で立つ・歩くことができない
– 呂律が全く回らない、 incoherent(支離滅裂)な会話
おう吐を繰り返す
– 身体の感覚が鈍くなる
体温が低下する
失禁する
昏睡期 0.31 % 以上 意識がない(強い痛み刺激にも反応しない)
呼びかけや刺激に全く反応せず、熟睡しているように見えるが違う
呼吸が浅く、不規則または遅い
脈が速いまたは遅い、不規則
体温が著しく低い(低体温)
顔色が蒼白、唇が紫
– 瞳孔が開いていることがある
痙攣

特に泥酔期から昏睡期への進行は非常に危険です。泥酔期で見られる「意識がはっきりしない」「おう吐を繰り返す」「体温低下」「失禁」といったサインは、体が生命維持に関わる機能にも支障をきたし始めていることを示しています。

命に関わる危険な状態とは?

急性アルコール中毒で最も恐ろしいのは、昏睡期に陥り、以下の生命に関わる危険な状態になることです。

  • 意識消失: 脳の機能が極度に抑制され、外部からのあらゆる刺激に反応しなくなります。これは単に寝ているのではなく、脳が危険な状態にあることを意味します。
  • 呼吸抑制・呼吸停止: アルコールが呼吸中枢を麻痺させると、呼吸が浅く遅くなり、最終的には呼吸が停止することがあります。これが直接的な死因となることも少なくありません。
  • 誤嚥(ごえん): 意識がない状態で嘔吐した場合、吐瀉物(食べたものや胃液)が気管に入り込み、窒息したり、肺炎を引き起こしたりするリスクが非常に高くなります。特に、仰向けに寝かせていると誤嚥の危険性が高まります。
  • 低体温症: 体温調節機能が麻痺し、体から熱が急速に奪われます。特に寒い場所で倒れている場合、体温が危険なレベルまで低下し、臓器の機能障害や不整脈を引き起こす可能性があります。
  • 低血糖: アルコールの分解には糖分が使われるため、飲酒量が多い場合や空腹時に飲酒した場合、血糖値が危険なほど低下することがあります。低血糖は意識障害や痙攣を引き起こし、脳に深刻なダメージを与える可能性があります。
  • 不整脈: 大量飲酒は心臓に負担をかけ、危険な不整脈を引き起こすことがあります。

これらの状態は、救急処置が遅れると命に関わります。泥酔期を超え、昏睡期に近づいているサイン(強い刺激にも反応しない、呼吸がおかしい、体が冷たいなど)を見つけたら、すぐに救急車を要請する必要があります。

救急車を呼ぶべき判断基準

急性アルコール中毒は、進行すると非常に危険な状態になるため、迷ったときはためらわずに救急車を呼ぶことが重要です。特に以下のサインが見られた場合は、一刻も早い医療機関での処置が必要です。

すぐに救急が必要なサイン

以下の状態の人がいたら、すぐに119番通報し、救急車を呼んでください。

  • 呼びかけや刺激に全く反応せず、眠り込んでいる(意識がない)。
    大声で呼びかけたり、肩を強く叩いたり、つねったりしても反応しない。
  • 呼吸がおかしい。
    呼吸が非常に浅い、遅い(1分間に10回以下が目安)。
    呼吸をしていない。
    いびきのような異常な呼吸音(舌が気道を塞いでいる可能性)。
    呼吸が不規則。
  • 顔色が非常に悪い、唇が紫色になっている。
    血の気がなく、蒼白。酸素が足りていない兆候。
  • 体が冷たい、体温が著しく低い。
    特に冬場や屋外で倒れている場合。低体温症の危険。
  • おう吐した物が詰まって、息が苦しそう。
    誤嚥による窒息の危険。
  • 痙攣(けいれん)を起こしている。
    アルコールによる脳の興奮または低血糖によるもの。
  • 尿や便を漏らしている(失禁)。
    泥酔期以降の危険なサイン。
  • いびきをかいて寝ているが、いくら揺さぶっても起きない。
    単なる熟睡ではなく、意識がない状態の可能性があります。

これらのサインは、脳や呼吸・循環機能が危険なレベルで抑制されていることを示しています。一刻も早く医療機関での専門的な治療を受ける必要があります。

判断に迷ったらどうする?

「これって救急車を呼ぶほどなのかな…?」「ただのひどい酔いかもしれない」と判断に迷うこともあるかもしれません。しかし、急性アルコール中毒の場合、容態は急変することがあります。迷っている間に危険な状態に陥ることも少なくありません。

  • 判断に迷う場合は、まず119番に電話して相談する。
    現在の状況(飲酒量、時間、本人の様子、具体的な症状など)を伝えれば、通信指令員が救急車が必要かどうかの判断をサポートしてくれます。
  • #7119(救急安心センター事業)に電話して相談する。
    一部の地域で実施されているサービスです。急な病気やけがに関して、看護師や相談員が症状を聞き取り、緊急度を判断して、受診できる医療機関や救急車の要請についてアドバイスしてくれます。お住まいの地域で実施されているか確認しておくと良いでしょう。
  • 一人で抱え込まず、周囲の人に助けを求める。
    家族、友人、居酒屋の店員など、周りにいる人に状況を伝え、一緒に判断したり、協力して対処したりすることが重要です。
  • 本人の「大丈夫」を鵜呑みにしない。
    酔っている本人は正確な判断ができません。「大丈夫だから」と言っても、症状が見られる場合は危険な可能性があります。

「迷ったら救急車を呼ぶ」くらいの気持ちでいることが、結果的に命を救うことにつながります。手遅れになるよりは、早めに専門家の判断を仰ぐ方が安全です。

急性アルコール中毒の応急手当・対処法

救急車を呼んだ場合でも、到着までの間に適切な応急手当を行うことが非常に重要です。誤った対処はかえって状況を悪化させる可能性もあるため、正しい知識に基づいて行動する必要があります。

意識がある人への対応

完全に意識を失っているわけではなく、呼びかけに反応したり、自分で動けたりする段階(酩酊初期〜酩酊期の一部)の場合の対応です。

  1. まずは飲酒を中止させる: これ以上アルコールを摂取させないことが最優先です。
  2. 楽な体勢で休ませる: 座らせるか、衣服を緩めて楽な姿勢で寝かせます。ただし、仰向けに寝かせると吐いた場合に誤嚥する危険があるため、可能であれば体を横向きにさせて、吐きやすいように枕などを調整して頭を少し高くすると良いでしょう。
  3. 保温する: アルコールによって体温が奪われやすいので、毛布などをかけて体を冷やさないようにします。
  4. 吐き気がある場合は、吐かせるのではなく、吐きやすいようにサポートする: 無理に指などを喉に突っ込んで吐かせようとすると、食道や胃を傷つけたり、かえって誤嚥のリスクを高めたりする可能性があります。本人が自然に吐く場合は、吐きやすいように頭を支えたり、顔を横に向けさせたりして、吐瀉物が気管に入らないように介助します。
  5. 水分補給を促す: 脱水症状を防ぐため、水やスポーツドリンクなどを少量ずつ飲ませます。ただし、無理に飲ませると誤嚥の危険があるため、本人が自分で飲める場合に限ります。また、ジュースやお茶は胃に負担をかけることがあるため、水かスポーツドリンクが望ましいです。
  6. 一人にしない: 急に容態が変化する可能性があるので、誰かがそばについて継続的に観察することが重要です。

意識がない人への対応(回復体位など)

呼びかけや刺激に反応しない、自分で体を動かせないなど、意識がない場合は非常に危険な状態です。救急車を呼んだら、以下の応急手当を行います。

  1. 気道確保(回復体位にする): これが最も重要です。意識がない人は、舌の根元が喉に落ち込んで気道を塞いだり、吐瀉物を誤嚥したりする危険性が高いため、気道を確保できる「回復体位」にします。
    まず、倒れている人のそばに膝立ちになります。
    近くにある腕を、頭の方へ曲げておきます。
    遠くにある腕を、胸の上に持ってきて、手の甲を頬に当てます。
    遠くにある脚の膝を立てます。
    近くにある肩と、立てた膝を支えながら、ゆっくりと手前に倒して横向きにします。
    下の腕は前に出し、頭は少し後ろに反らせて、顔がやや下向きになるように調整します。口から唾液や吐瀉物が流れ出やすくなります。
    上の膝を曲げて、安定した体勢にします。
    呼吸をしているか、吐き気はないかなど、継続的に観察します。
    (※注:専門的な訓練を受けていない場合は、無理に回復体位をとらせようとして体を傷つけないように注意が必要です。安全が確保できる範囲で、横向きにすることだけでも誤嚥のリスクを減らせます。)
  2. 体を温める: 毛布などをかけて、体温が低下しないように保温します。ただし、厚着をさせすぎると逆効果になることもあるため、適切な保温に留めます。
  3. 絶対に一人にしない: 救急隊が到着するまで、そばを離れず、呼吸や顔色、体温などを注意深く観察し続けます。容態が急変した場合にすぐに対応するためです。
  4. 首や胸の締め付けを緩める: ネクタイ、ベルト、ブラジャーなど、体を締め付けているものを緩めて、呼吸や血行を楽にします。
  5. 情報提供の準備: 救急隊が到着したら、飲酒量、時間、症状の経過、応急手当の内容などを正確に伝えられるように準備しておきます。

絶対に行ってはいけないこと

急性アルコール中毒の人に対して、良かれと思って行った行為が、かえって危険を招くことがあります。以下の行為は絶対に行わないでください。

  • 無理に吐かせる: 指などを突っ込んで無理に吐かせようとすると、気管に入り込んで窒息させたり、食道や胃を傷つけたりする危険があります。
  • 無理に立たせる・歩かせる: 転倒して頭を強く打つなどの二次的な事故につながります。
  • 熱い風呂に入れる・冷水をかける: 急激な体温変化は体に大きな負担をかけ、危険な状態を引き起こす可能性があります。
  • 無理に水を飲ませる: 意識がない場合や、おう吐している最中に無理に飲ませると、誤嚥の危険が高まります。
  • さらにアルコールを飲ませる: 酔いを醒まそうとして飲ませることは絶対にやめましょう。アルコール濃度をさらに高め、症状を悪化させるだけです。
  • コーヒーやカフェイン飲料を飲ませる: カフェインは覚醒作用がありますが、アルコールの分解を早める効果はなく、心臓に負担をかけたり、脱水を進めたりする可能性があります。
  • 単なる寝不足だと思って放置する: 意識がない場合は、単なる寝不足や深酒による眠りとは全く異なります。命に関わる状態の可能性があるので、放置は絶対に禁物です。
  • 仰向けに寝かせる: 吐いた場合に吐瀉物が気管に入り込みやすく、誤嚥・窒息の危険が非常に高まります。必ず横向きの回復体位にするか、それが難しければせめて横向きに寝かせます。

これらの「やってはいけないこと」を理解し、正しい応急手当を実践することが、救急隊が到着するまでの間の容態悪化を防ぐために極めて重要です。

回復にかかる時間と起こりうる後遺症

急性アルコール中毒から回復するまでの時間は、摂取したアルコールの量、血中アルコール濃度のピーク、個人のアルコール分解能力、体調、受けた治療など、様々な要因によって異なります。軽症であれば数時間で回復することもありますが、重症の場合は回復に時間がかかり、後遺症が残る可能性もあります。

回復時間の目安

アルコールは主に肝臓で分解されますが、その速度には限界があります。一般的に、健康な成人男性の場合、アルコール分解速度は1時間に体重1kgあたり約0.1gと言われています。これは、ビール中ビン1本分(アルコール約20g)を分解するのに約3時間かかる計算になります。

急性アルコール中毒になるほどの大量のアルコールが摂取されている場合、血中アルコール濃度が十分に下がり、脳や臓器の機能が回復するまでにはかなりの時間がかかります。泥酔状態から意識が回復するまでに数時間かかるのは珍しくありません。昏睡期まで進んでしまった場合は、医療機関での処置を受けても意識が戻るまでに半日以上、あるいはそれ以上かかることもあります。

回復時間は、年齢や性別、体質、飲酒経験のほか、当日の体調や空腹具合などにも大きく左右されます。女性は一般的に男性よりもアルコール分解能力が低い傾向にあります。

急性アルコール中毒の次の日の症状

急性アルコール中毒から回復した後も、しばらく体調がすぐれないことがあります。いわゆる「ひどい二日酔い」と似た症状が出ることが多いですが、急性アルコール中毒を経験した後の不調はより重く長引く傾向があります。

一般的な次の日の症状としては以下のようなものがあります。

  • 頭痛: アルコールの血管拡張作用や脱水などが原因。
  • 吐き気・食欲不振: アルコールやアセトアルデヒドによる胃腸へのダメージ。
  • 倦怠感・脱力感: 全身の疲労や栄養不足。
  • 喉の渇き: 脱水症状。
  • 体の痛み(筋肉痛など): 不自然な姿勢で長時間いたことによるもの。
  • 軽い意識障害や記憶障害: 前日の出来事を思い出せない、判断力が鈍いなど。

これらの症状は、アルコールが体から完全に排出され、臓器の機能が回復するにつれて徐々に軽減していきます。十分な休息、水分補給、消化の良い食事などが回復を助けます。ただし、症状が重い場合や長引く場合は、合併症や後遺症の可能性もあるため、医療機関を受診することも検討してください。

後遺症の可能性

軽度の急性アルコール中毒であれば、通常、一時的な不調で済み、後遺症が残ることはほとんどありません。しかし、重症の場合、特に昏睡状態が長く続いたり、低酸素状態、低血糖、低体温などが深刻であったりした場合は、後遺症が残る可能性があります。

起こりうる後遺症としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 脳機能障害: 意識障害が長く続いた場合、脳細胞にダメージが及び、記憶力低下、集中力低下、人格の変化、運動機能障害などの後遺症が残ることがあります。特に低酸素脳症は深刻な脳ダメージを引き起こす可能性があります。
  • 臓器への影響: 一度の大量飲酒でも、肝臓、膵臓、腎臓などの臓器に一時的な炎症や機能障害を引き起こすことがあります。重症の場合は、これらの臓器に慢性的なダメージが残り、将来的に病気のリスクを高める可能性も指摘されています。
  • 精神的な影響: 急性アルコール中毒になったこと自体がトラウマとなり、飲酒に対する恐怖心や不安感が残ることがあります。また、アルコール依存症のリスクを高める要因となる可能性も否定できません。
  • 誤嚥による肺炎: 意識がない状態で誤嚥を起こし、細菌が肺に入り込むことで肺炎を発症した場合、治療が長引いたり、重症化したりすることがあります。

特に若い頃の急性アルコール中毒は、まだ発達途上にある脳に影響を与える可能性も指摘されています。一度の経験が必ずしも重い後遺症につながるわけではありませんが、命に関わる危険があることに加え、将来の健康リスクを高める可能性も考慮し、急性アルコール中毒は絶対に避けるべきです。

急性アルコール中毒を予防するには?

急性アルコール中毒は、適切な知識と注意があれば十分に予防できるものです。自分自身や周囲の人を危険から守るために、以下の点を心がけましょう。

安全な飲酒量・飲み方

「安全な飲酒量」は個人差が非常に大きいですが、一般的に推奨される適量は、1日あたり純アルコール量で20g程度とされています。これは、ビール中ビン1本(500ml)、日本酒1合(180ml)、ワイングラス2杯(240ml)、ウイスキー・ブランデーのダブル1杯(60ml)程度に相当します。女性は男性よりも少ない量が目安となります。

急性アルコール中毒の最大の原因は「短時間での大量摂取」です。これを避けるための具体的な飲み方は以下の通りです。

  • 自分の適量を知る: 自分の体質や体調を考慮し、無理のない範囲で楽しむ量を把握します。
  • 一気飲み・早飲みをしない: アルコールの吸収が急激になり、血中アルコール濃度が危険なレベルまで急上昇します。非常に危険な行為です。
  • 空腹で飲まない: 胃に食べ物が入っていないと、アルコールが急速に吸収されます。飲酒前には何か食べ物を摂りましょう。油っぽいものや乳製品はアルコールの吸収を穏やかにする効果があると言われます。
  • 「チェイサー」を飲む: アルコール飲料の間に水やお茶を飲むことで、アルコールの摂取ペースを落とし、脱水症状を防ぐことができます。
  • 強いお酒をロックやストレートで飲まない: アルコール度数の高いお酒を飲む場合は、水割りやソーダ割りなどにして、アルコール濃度を薄めてゆっくり飲むようにしましょう。
  • 複数種類のお酒を混ぜて(ちゃんぽんして)飲まない: 様々な種類のお酒を飲むと、自分がどれだけアルコールを摂取したのか把握しにくくなります。また、炭酸飲料で割るとアルコールの吸収が早まるという説もあります。
  • 休憩を挟む: 連続して飲み続けるのではなく、途中でソフトドリンクを挟むなど、飲まない時間を作りましょう。
  • 無理強いしない・させない: 飲めない人に飲酒を強要する「アルコールハラスメント」は、急性アルコール中毒を引き起こす原因となります。周りの人が飲んでいても、自分のペースで、あるいは飲まないという選択を尊重しましょう。

予防のための注意点

安全な飲み方だけでなく、以下のような点にも注意が必要です。

  • 体調が悪い時は飲酒を控える: 風邪気味、寝不足、疲労困憊など、体調が優れない時はアルコール分解能力が低下している可能性があります。
  • 服用している薬がある場合は医師に相談する: 薬の種類によっては、アルコールとの併用で思わぬ副作用が出たり、アルコールの分解が遅れたりすることがあります。
  • 未成年者は絶対に飲酒しない: 未成年者の飲酒は法律で禁止されているだけでなく、心身の発達に悪影響を及ぼし、アルコール依存症のリスクも高めます。
  • 飲酒後に乗り物の運転をしない: 飲酒運転は極めて危険であり、法律で厳しく罰せられます。
  • 周囲の人にも気を配る: 一緒に飲んでいる人が酔いすぎていないか、顔色や言動に異変がないかなど、お互いに注意し合いましょう。

これらの予防策を実践することで、急性アルコール中毒のリスクを大幅に減らすことができます。飲酒は適量・適切な方法で、楽しいものに留めることが大切です。

まとめ

急性アルコール中毒は、短時間での大量飲酒によって引き起こされる、命に関わる可能性のある非常に危険な状態です。「急性アルコール中毒 初期症状」を見逃さず、その進行段階ごとの危険なサインを理解しておくことが重要です。

初期の吐き気やめまい、ろれつが回らないといったサインが出始めたら、すぐに飲酒を中止し、様子を注意深く観察してください。酩酊期を超えて泥酔期、そして昏睡期へと進行すると、意識障害、呼吸抑制、低体温、低血糖、誤嚥など、生命に関わる危険な状態に陥るリスクが高まります。

  • もし、呼びかけに全く反応しない、呼吸がおかしい、体が冷たい、痙攣しているなどの危険なサインが見られたら、迷わずすぐに救急車(119番)を呼んでください。
  • 救急車を待つ間は、意識がない人には回復体位をとらせ、気道確保と体温低下の予防に努めます。
  • 無理に吐かせる、無理に立たせる、無理に水を飲ませる、熱い風呂に入れるなど、誤った応急手当は絶対に行わないでください。

急性アルコール中毒は、適切な飲酒習慣によって十分に予防できます。自分の適量を知り、一気飲みや早飲みを避け、空腹時を避ける、チェイサーを飲むといった基本的なルールを守りましょう。また、体調が悪い時の飲酒は控えることも大切です。

急性アルコール中毒に関する正しい知識を持ち、万が一の際に冷静かつ適切に対処できることが、自分自身や大切な人の命を守ることにつながります。安全な飲酒を心がけ、楽しい時間を過ごしましょう。

免責事項:本記事は、急性アルコール中毒に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代替するものではありません。急性アルコール中毒が疑われる場合や、体調に不安がある場合は、速やかに医療機関を受診するか、救急車を要請してください。本記事の情報によって生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

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