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レキサルティを服用する前に知っておきたい効果、副作用、注意点

レキサルティは、主に統合失調症や、既存治療で十分な効果が得られない場合のうつ病・うつ状態に対して処方されるお薬です。これらの疾患は脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが関与していると考えられており、レキサルティはこのバランスを調整することで症状の改善を目指します。この記事では、レキサルティの効果や副作用、OD錠の特徴、他の薬剤との比較、使用上の注意点など、服用を検討されている方やそのご家族が知っておくべき重要な情報を詳しく解説します。正確な情報に基づき、安心して治療に取り組むための一助となれば幸いです。

レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)は、2017年に日本で発売された非定型抗精神病薬です。大塚製薬とH.ルンドベック社によって共同開発されました。主に脳内のドパミン受容体やセロトニン受容体に作用し、神経伝達物質の活動を調整することで、統合失調症やうつ病の症状を改善します。

レキサルティは、「ドパミンD2受容体部分アゴニスト作用」と「セロトニン5-HT1A受容体部分アゴニスト作用」、さらに「セロトニン5-HT2A受容体拮抗作用」を持つことが特徴です。これらの作用の組み合わせにより、ドパミンの過剰な活動を抑えつつ、不足している部分を補うといった、バランスの取れた作用を発揮すると考えられています。これにより、統合失調症の陽性症状(幻覚・妄想など)だけでなく、陰性症状(意欲低下・感情鈍麻など)や認知機能障害への効果も期待されています。また、うつ病においては、既存の抗うつ薬で改善が見られないケースでの増強療法(既存の抗うつ薬に加えて使用すること)として承認されています。

目次

レキサルティの効能・効果

レキサルティの日本における承認された効能・効果は以下の通りです。

  • 統合失調症
  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)

統合失調症への効果

統合失調症は、思考や感情、行動をまとめる能力が低下し、現実とのつながりが薄れてしまう病気です。幻覚や妄想などの陽性症状、意欲や感情の低下といった陰性症状、注意や記憶などの認知機能障害などがみられます。

レキサルティは、ドパミンD2受容体の部分アゴニストとして作用することで、ドパミンの過活動が関わる陽性症状を軽減します。また、セロトニン5-HT1A受容体への部分アゴニスト作用や5-HT2A受容体への拮抗作用が、陰性症状や認知機能障害の改善にも寄与すると考えられています。臨床試験では、プラセボ(偽薬)と比較して、統合失調症の様々な症状に対する有効性が確認されています。

うつ病・うつ状態への効果

うつ病・うつ状態は、気分が落ち込み、興味や喜びを感じにくくなる精神疾患です。不眠や食欲不振、疲労感、集中力の低下、将来への悲観などが症状として現れます。

レキサルティは、単独の抗うつ薬としては承認されていません。日本の添付文書では、「既存治療(主に抗うつ薬)で十分な効果が認められない場合のうつ病・うつ状態」に対して、既存の抗うつ薬に加えて使用する増強療法として承認されています。うつ病における作用機序の詳細は完全には解明されていませんが、ドパミンやセロトニン系の調整作用が、抗うつ効果を増強すると推測されています。既存の抗うつ薬だけでは効果が不十分な場合に、レキサルティを少量併用することで、気分の落ち込みや意欲の低下といった症状の改善が期待できます。

効果の現れ方には個人差があり、すぐに効果を実感できるわけではありません。統合失調症の場合、数週間から数ヶ月かけて徐々に効果が現れることが一般的です。うつ病の増強療法として使用する場合も、効果が出るまでにある程度の期間が必要となることがあります。

レキサルティの副作用

どの薬剤にも副作用のリスクは存在し、レキサルティも例外ではありません。レキサルティの副作用は、その作用機序に関連して起こることがあります。多くの場合、軽度で一時的なものですが、注意が必要な副作用もあります。

レキサルティの主な副作用

レキサルティの臨床試験で比較的多く報告されている副作用には以下のようなものがあります。

  • アカシジア: 静止不能症とも呼ばれ、じっとしていられなくなり、足をもぞもぞ動かしたり、そわそわと歩き回ったりする落ち着きのなさとして現れます。非定型抗精神病薬でみられることのある副作用の一つで、特に治療初期に現れることがあります。我慢せずに医師に相談することが重要です。
  • 傾眠(眠気): 薬の作用により眠気を感じやすくなることがあります。特に服用初期や用量増加時に見られることがあります。日中の眠気が強い場合は、日常生活に影響が出る可能性があるため注意が必要です。
  • 体重増加: 食欲が増したり、代謝に影響したりすることで体重が増加する場合があります。長期にわたって服用する場合、体重管理に注意が必要です。
  • 振戦(手足の震え): 特に指先に細かな震えが生じることがあります。
  • ジスキネジア: 口をもぐもぐさせたり、舌を出し入れしたりといった不随意運動(自分の意思とは関係なく体が動いてしまうこと)が現れることがあります。長期的な服用で見られることがあります。

これらの副作用は、用量の調整や他の薬剤との併用、あるいは時間経過とともに軽減されることがあります。症状が現れた場合は、自己判断で薬を中止せず、必ず医師に相談してください。

レキサルティの重大な副作用

発生頻度は低いものの、特に注意が必要な重大な副作用として、添付文書には以下のものが記載されています。

  • 悪性症候群: 高熱、筋肉の硬直、発汗、頻脈、意識障害などが現れる可能性のある重篤な副作用です。発現した場合は、直ちにレキサルティの投与を中止し、適切な処置が必要です。
  • 遅発性ジスキネジア: 長期にわたる服用で、口周囲や舌、手足などに不随意運動が現れることがあります。一度発現すると治療が難しい場合もあるため、継続的な観察が必要です。
  • 糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡: 高血糖、悪心、嘔吐、腹痛、口渇、多尿、頻尿などが現れ、意識障害に至る可能性があります。服用中にこれらの症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。服用開始前や服用中には、血糖値などの検査が行われることがあります。
  • 横紋筋融解症: 筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中のミオグロビン上昇、尿が赤褐色になるなどの症状が現れる可能性があります。
  • 麻痺性イレウス: 腸の動きが悪くなり、食欲不振、吐き気、嘔吐、ひどい便秘、お腹の張りや痛みなどが現れる可能性があります。
  • 無顆粒球症、白血球減少: 非常にまれですが、感染に対する抵抗力が低下する可能性があります。発熱や喉の痛みなどが見られた場合は、血液検査が必要になることがあります。
  • 肺塞栓症、深部静脈血栓症: 足の痛みや腫れ、息切れ、胸の痛みなどが現れる可能性があります。特に、長期臥床や手術後など、血栓ができやすい状況にある場合は注意が必要です。
  • 肝機能障害: 肝臓の機能を示す数値(AST, ALT, γ-GTPなど)の上昇、黄疸などが見られることがあります。

これらの重大な副作用は非常にまれですが、万が一症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。

副作用の発現頻度について

添付文書によると、レキサルティの臨床試験で報告された副作用の発現頻度は以下のようになっています(主なものの一部抜粋)。

副作用の種類 統合失調症の臨床試験での発現率(%) うつ病の臨床試験(増強療法)での発現率(%)
アカシジア 13.6 2.2
傾眠 6.7 6.1
体重増加 5.8 3.7
振戦 3.6 0.6
ジスキネジア 2.2 0.3
悪心 3.3 3.7
便秘 1.8 1.8
疲労 2.2 1.3
口渇 1.7 1.0
CK(CPK)上昇 1.9 1.0
プロラクチン上昇 0.6 0.5

※上記はあくまで臨床試験で報告された頻度の一部であり、ここに記載されていない副作用や、上記よりも低い頻度で発生する副作用も存在します。また、これらの頻度は患者さんの状態や併用薬などによって変動する可能性があります。副作用については個人差が大きいため、気になる症状があれば必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。

レキサルティの剤形

レキサルティは、内服薬として提供されており、以下の2種類の剤形があります。

  • レキサルティ錠
  • レキサルティOD錠

レキサルティOD錠について

レキサルティOD錠は、「Orally Disintegrating Tablet」の略で、口腔内崩壊錠と呼ばれる剤形です。唾液や少量の水で、口の中で素早く溶けるように作られています。

レキサルティOD錠の特徴とメリット:

  • 水なしで服用可能: 口の中で速やかに溶けるため、水がない場所でも服用できます。これは、外出先や夜間の服用など、水分をすぐに確保できない状況で非常に便利です。
  • 嚥下(えんげ)が困難な方にも: 錠剤を飲み込むのが苦手な方や、高齢で嚥下機能が低下している方でも比較的容易に服用できます。
  • 薬を隠して服用できる: 人前で水と一緒に錠剤を服用することに抵抗がある場合でも、OD錠なら目立たずに服用しやすいというメリットがあります。

レキサルティOD錠の服用方法:

OD錠は、舌の上にのせると唾液で溶け始めます。溶けたら唾液と一緒にそのまま飲み込んでも構いませんし、少量の水で服用しても問題ありません。ただし、溶けたものを噛み砕いたり、完全に溶けきる前に飲み込んだりすると、効果が変わる可能性があるため注意が必要です。また、OD錠は湿気に弱いため、服用直前にPTPシートから取り出すようにしてください。

OD錠は、利便性の高い剤形ですが、医師から処方された量や方法を必ず守って服用することが重要です。錠剤とOD錠で効果や安全性に大きな違いはありませんが、剤形の選択は医師と相談して決定します。

レキサルティの用法・用量

レキサルティの用法・用量は、対象となる疾患や患者さんの状態によって異なります。必ず医師の指示に従って服用してください。自己判断で用量を変更したり、中止したりすることは絶対に避けてください。

統合失調症の場合:

通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgから服用を開始します。その後、患者さんの状態に応じて1日量として2mgに増量されます。維持用量としては、1日2mgが一般的です。症状や忍容性によっては、1日4mgまで増量できる場合があります。ただし、用量の増減は必ず医師の指示の下で行われます。

服用は1日1回、食前・食後どちらでも構いませんが、毎日決まった時間に服用することで、体内のお薬の濃度を一定に保ちやすくなります。

うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合)の場合:

通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回0.5mgから服用を開始します。その後、患者さんの状態に応じて1日量として1mgに増量されます。レキサルティは既存の抗うつ薬に加えて使用するため、単独で使用されることはありません。

うつ病に対する効果判定にはある程度の期間が必要です。通常、数週間から数ヶ月かけて効果が現れるかを慎重に評価します。

用量に関する重要な注意点:

  • 開始用量: 副作用の発現を抑えるため、少量から開始することが一般的です。
  • 増量: 効果や副作用の発現状況を見ながら、医師が慎重に判断して増量します。急激な増量は副作用のリスクを高める可能性があります。
  • 維持用量: 症状が安定した後も、再発予防のために継続して服用することが重要です。維持用量も患者さんによって異なります。
  • 自己判断での中止・変更の禁止: 症状が改善したと感じても、医師の指示なく服用を中止したり、用量を減らしたりすると、症状が再発したり悪化したりする危険性があります。また、飲み忘れが多い場合や、気になる症状がある場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。

レキサルティと他の薬との比較

レキサルティは非定型抗精神病薬に分類されますが、同じ分類の薬剤や、似たような疾患に用いられる薬剤は他にも複数あります。ここでは、いくつかの代表的な薬剤とレキサルティを比較してみます。

レキサルティとエビリファイの違い

エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)は、レキサルティと同じくドパミンD2受容体部分アゴニスト作用を持つ非定型抗精神病薬です。作用機序が似ているため、比較されることが多い薬剤です。

比較項目 レキサルティ(ブレクスピプラゾール) エビリファイ(アリピプラゾール)
作用機序の重点 ドパミンD2受容体に対する部分アゴニスト作用、セロトニン5-HT1A受容体に対する部分アゴニスト作用、セロトニン5-HT2A受容体に対する拮抗作用のバランス。D2受容体への結合親和性はエビリファイより高いとされる。 ドパミンD2受容体に対する部分アゴニスト作用、セロトニン5-HT1A受容体に対する部分アゴニスト作用、セロトニン5-HT2A受容体に対する拮抗作用。D2受容体への内活性はエビリファイの方が高いとされる。
適応疾患(日本) 統合失調症、うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合) 統合失調症、双極性障害における躁症状の改善、うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合)、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
主な副作用 アカシジア、傾眠、体重増加、振戦など アカシジア、不眠、体重増加、振戦、落ち着きのなさなど
アカシジア エビリファイと比較してアカシジアの発現率が低い傾向があるという報告がある 比較的アカシジアが出やすいとされる
傾眠 エビリファイと比較して傾眠が出やすい傾向がある 比較的傾眠が出にくいとされる(不眠を訴えるケースもある)
剤形 錠剤、OD錠 錠剤、散剤、内用液、OD錠、持続性注射剤

レキサルティはエビリファイの「次世代」として開発されており、エビリファイで問題となることの多いアカシジアを軽減しつつ、効果のバランスを調整することを目指した薬剤と言えます。ただし、効果や副作用の現れ方には個人差があり、どちらの薬剤が適しているかは患者さんの状態や医師の判断によります。

レキサルティとラツーダ

ラツーダ(一般名:ルラシドン塩酸塩)も非定型抗精神病薬で、統合失調症や双極性障害におけるうつ状態に用いられます。ドパミンD2、セロトニン5-HT2A、セロトニン5-HT7受容体への拮抗作用が主な作用機序とされています。

比較項目 レキサルティ(ブレクスピプラゾール) ラツーダ(ルラシドン)
主な作用機序 D2部分アゴニスト、5-HT1A部分アゴニスト、5-HT2A拮抗 D2拮抗、5-HT2A拮抗、5-HT7拮抗
適応疾患(日本) 統合失調症、うつ病(増強療法) 統合失調症、双極性障害におけるうつ状態
代謝への影響 体重増加や脂質・糖代謝への影響が他の薬剤と比較して少ない傾向があるとされる 体重増加や脂質・糖代謝への影響が比較的少ないと報告されている。ただし、高プロラクチン血症には注意が必要。
アカシジア ラツーダと比較してアカシジアは少ない傾向があるという報告がある アカシジアが出やすい副作用の一つとして知られている
薬物相互作用 CYP3A4、CYP2D6による代謝を受けるため、相互作用に注意が必要 CYP3A4による代謝を受けるため、相互作用に注意が必要
食事の影響 食事の影響は少ない 吸収率が食事の影響を受けるため、食事と一緒に服用する必要がある

ラツーダは代謝系の副作用が比較的少ない点が評価されていますが、食事と一緒に服用する必要がある、アカシジアが出やすいといった特徴があります。一方、レキサルティは食事の影響が少なく、アカシジアも比較的少ないとされます。どちらの薬剤が適しているかは、患者さんの症状、体質、併用薬などを総合的に判断して決定されます。

レキサルティとリスペリドン

リスペリドンは、比較的古くから使われている非定型抗精神病薬です。ドパミンD2受容体とセロトニン5-HT2A受容体への強い拮抗作用が主な作用機序です。統合失調症のほか、双極性障害の躁症状、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性などに用いられます。

比較項目 レキサルティ(ブレクスピプラゾール) リスペリドン
主な作用機序 D2部分アゴニスト、5-HT1A部分アゴニスト、5-HT2A拮抗 D2拮抗、5-HT2A拮抗
適応疾患(日本) 統合失調症、うつ病(増強療法) 統合失調症、双極性障害における躁症状の改善、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
錐体外路症状 リスペリドンと比較して錐体外路症状(振戦、筋強剛、アカシジアなど)が出にくい傾向があるとされる D2受容体への強い拮抗作用により、錐体外路症状が出やすいとされる
プロラクチン上昇 プロラクチン上昇作用は比較的少ないとされる プロラクチン上昇作用が強く、生理不順や乳汁分泌、性機能障害などが起こりやすい
鎮静作用 リスペリドンと比較して鎮静作用は弱い傾向がある 比較的鎮静作用が強いとされる
剤形 錠剤、OD錠 錠剤、細粒、内用液、OD錠、口腔内崩壊フィルム、持続性注射剤

リスペリドンは強い抗精神病効果が期待できる一方で、錐体外路症状やプロラクチン上昇といった副作用が問題になることがあります。レキサルティは、リスペリドンと比較してこれらの副作用が軽減されていると考えられています。しかし、個々の患者さんに対する効果や副作用は異なります。

レキサルティとトリンテリックス

トリンテリックス(一般名:ボルチオキセチン)は、抗うつ薬として用いられる薬剤です。レキサルティは主に抗精神病薬ですが、うつ病の増強療法として使われるため、抗うつ薬であるトリンテリックスとの比較も考えられます。トリンテリックスは、セロトニントランスポーター阻害作用のほか、複数のセロトニン受容体(5-HT1Aアゴニスト、5-HT3/5-HT7拮抗など)に対する作用を持つ、比較的新しいタイプの抗うつ薬です。

比較項目 レキサルティ(ブレクスピプラゾール) トリンテリックス(ボルチオキセチン)
主な分類 非定型抗精神病薬(うつ病には増強療法として使用) 抗うつ薬
主な作用機序 D2部分アゴニスト、5-HT1A部分アゴニスト、5-HT2A拮抗など セロトニントランスポーター阻害、複数セロトニン受容体への作用など
適応疾患(日本) 統合失調症、うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合) うつ病・うつ状態
主な副作用 アカシジア、傾眠、体重増加、振戦など 悪心、便秘、嘔吐、眩暈、頭痛など
性機能への影響 性機能障害の副作用は他の抗精神病薬と比較して少ない傾向があるとされる 他のSSRI/SNRIと比較して性機能障害の副作用が少ない傾向があるという報告がある
吐き気・悪心 悪心は副作用として報告されている 悪心(吐き気)は比較的多く見られる副作用の一つ

レキサルティは主に精神病症状を改善する薬であり、うつ病には既存の抗うつ薬の効果を高める目的で使用されます。一方、トリンテリックスはうつ病そのものに対する治療薬です。作用機序も異なり、副作用プロファイルも異なります。どちらの薬剤が適切かは、患者さんの診断、症状の重さ、既存治療への反応、他の疾患の有無、併用薬などを総合的に考慮して医師が判断します。

これらの比較は一般的な傾向を示すものであり、個々の患者さんにおいて効果や副作用の現れ方は異なります。薬剤の選択は、必ず医師と十分に相談した上で行ってください。

レキサルティ使用上の注意点

レキサルティを安全に服用するためには、いくつかの注意点があります。

併用注意・禁忌

レキサルティは他の薬剤との相互作用を起こす可能性があります。特に以下の薬剤との併用には注意が必要です。

  • CYP3A4阻害薬: レキサルティは主に肝臓の酵素であるCYP3A4によって代謝されます。CYP3A4の働きを妨げる薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシンなど)と併用すると、レキサルティの血中濃度が上昇し、副作用が出やすくなる可能性があります。併用する際は、レキサルティの用量を減らすなどの調整が必要になる場合があります。
  • CYP3A4誘導薬: CYP3A4の働きを高める薬剤(リファンピシン、カルバマゼピンなど)と併用すると、レキサルティの血中濃度が低下し、効果が弱まる可能性があります。
  • CYP2D6阻害薬: レキサルティはCYP2D6によっても代謝されます。CYP2D6の働きを妨げる薬剤(キニジン、パロキセチン、フルオキセチンなど)と併用すると、レキサルティの血中濃度が上昇し、副作用が出やすくなる可能性があります。
  • 中枢神経抑制剤(バルビツール酸誘導体等): これらの薬剤と併用すると、鎮静作用が強く現れる可能性があります。
  • 降圧剤: レキサルティの副作用として起立性低血圧が報告されており、降圧剤と併用すると血圧が下がりすぎる可能性があります。
  • 抗パーキンソン病薬: これらの薬剤との相互作用により、効果が減弱したり、副作用が強まったりする可能性があります。
  • QT延長を起こすことが知られている薬剤: 不整脈のリスクを高める可能性があります。

これらの薬剤以外にも、市販薬や健康食品、サプリメントなど、服用しているものがある場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。

併用禁忌薬はありませんが、上記のような注意が必要な薬剤は多数あります。

また、アルコールは中枢神経抑制作用を持つため、レキサルティと併用すると眠気やふらつきなどが強く現れる可能性があります。服用中はできるだけアルコールの摂取を控えることが推奨されます。

服用中の注意点(運転等)

レキサルティの服用により、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあります。そのため、以下のような活動には注意が必要です。

  • 自動車の運転: 自動車の運転など、危険を伴う機械の操作は避けてください。
  • 高所での作業: 高い場所での作業など、転倒のリスクがある状況では特に注意が必要です。
  • アルコールの摂取: 前述の通り、アルコールはレキサルティの副作用を増強させる可能性があるため控えるべきです。

これらの活動を行う必要がある場合は、必ず医師に相談し、服用時間や仕事内容などを考慮して指示を仰いでください。

その他使用上の注意点

  • 高齢者: 高齢者では薬の代謝や排泄が遅れることがあり、副作用が出やすくなる可能性があります。少量から開始するなど、慎重な投与が必要です。
  • 妊婦、授乳婦: 妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与されます。授乳中の女性が服用する場合は、授乳を中止する必要があります。これらのケースに該当する場合は、必ず医師に相談してください。
  • 小児: 日本では小児に対する有効性・安全性は確立していません。
  • 錐体外路症状: 特に高齢者において、転倒の原因となることがあります。注意深く観察が必要です。
  • 血糖値の変動: 糖尿病やその既往歴がある方、あるいは糖尿病のリスク因子(肥満、家族歴など)を持つ方は、血糖値の悪化に注意が必要です。定期的な血糖値の検査が行われることがあります。
  • 急な中断: 自己判断で急に服用を中止すると、離脱症状や症状の悪化を招く可能性があります。中止・減量が必要な場合は、医師の指示の下、徐々に行われます。

レキサルティの添付文書情報

薬剤の最も正確で詳細な情報は、製薬会社が作成し、厚生労働省が承認した添付文書に記載されています。レキサルティの添付文書には、以下のような情報が含まれています。

  • 組成、性状
  • 効能・効果、用法・用量
  • 薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)
  • 薬効薬理(作用機序の詳細、動物実験データなど)
  • 臨床成績(国内外の臨床試験結果、副作用発現頻度など)
  • 使用上の注意(禁忌、慎重投与、重要な基本的注意、相互作用、高齢者・妊婦・授乳婦・小児等への投与、過量投与、適用上の注意など)
  • 薬学的情報(安定性、保存方法など)

添付文書は、医療従事者が安全かつ適切に薬剤を使用するための情報源ですが、患者さん自身も服用する薬剤について理解を深めるために参照することが推奨されます。インターネットで「レキサルティ 添付文書」と検索すると、製薬会社のウェブサイトなどで最新の添付文書(PDFファイルなど)を閲覧することができます。ただし、添付文書に記載されている情報は専門的な内容も含まれるため、不明な点は医師や薬剤師に確認するようにしてください。

まとめ|レキサルティに関する重要な情報

レキサルティ(ブレクスピプラゾール)は、統合失調症およびうつ病・うつ状態(既存治療で不十分な場合)に用いられる非定型抗精神病薬です。脳内のドパミンやセロトニン系のバランスを調整することで効果を発揮すると考えられています。特に、ドパミンD2受容体部分アゴニスト、セロトニン5-HT1A受容体部分アゴニスト、セロトニン5-HT2A受容体拮抗作用を持つ点が特徴です。

主な効果として、統合失調症の陽性症状・陰性症状・認知機能障害の改善や、既存の抗うつ薬では効果不十分なうつ病の症状改善が期待できます。服用方法としては1日1回服用し、OD錠という口の中で溶ける剤形も利用可能です。

副作用としては、アカシジア、傾眠、体重増加などが比較的多く報告されていますが、悪性症候群や遅発性ジスキネジア、糖尿病関連の副作用などの重大なものもまれに起こりうるため注意が必要です。副作用の出現には個人差が大きく、気になる症状が現れた場合は速やかに医師に相談することが重要です。

他の非定型抗精神病薬(エビリファイ、ラツーダ、リスペリドンなど)や抗うつ薬(トリンテリックスなど)と比較した場合、レキサルティはアカシジアや代謝系への影響、性機能障害といった副作用が比較的少ない傾向があると考えられています。しかし、薬剤の選択は、患者さんの症状、体質、既往歴、併用薬などを総合的に考慮して、医師が判断します。

レキサルティの使用にあたっては、特定の薬剤(CYP3A4やCYP2D6に関わる薬剤など)との相互作用に注意が必要であり、併用薬がある場合は必ず医師に伝えてください。また、眠気などが起こる可能性があるため、服用中は自動車の運転や危険な機械の操作を避ける必要があります。アルコールの摂取も控えるべきです。

レキサルティに関する最も信頼できる情報は添付文書に記載されています。服用前に添付文書を確認し、内容について不明な点があれば医師や薬剤師に質問することが推奨されます。自己判断での用量変更や服用中止は、症状の悪化や再発、離脱症状を招く危険性があるため、絶対に避けてください。

レキサルティによる治療を受ける際は、医師の指示を厳守し、定期的な診察を受けて、効果や副作用の状況を共有することが非常に大切です。正確な情報に基づいて、医師と連携しながら治療を進めていくことが、症状の改善と安定した日常生活につながります。

免責事項:

この記事は、レキサルティ(ブレクスピプラゾール)に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医学的なアドバイスや診断、治療を推奨するものではありません。薬剤の服用に関しては、必ず医師の指示に従ってください。個々の患者さんの状態や治療法については、担当の医師にご相談ください。この記事の情報に基づいて行われた行為によって生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

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