不妊症の基本的な定義と現状
「不妊症」とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性行為を継続しているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態を指します。この「一定期間」については、かつては2年間とされていましたが、近年では日本産科婦人科学会により1年間と定義されることが一般的になりました。これは、理由がはっきりしない不妊でも、約8割のカップルが1年以内に妊娠に至るというデータに基づいています。1年経っても妊娠しない場合、何らかの原因が潜んでいる可能性が考えられるため、専門機関への相談が推奨されています。
日本では、晩婚化や社会構造の変化に伴い、不妊に悩むカップルが増加傾向にあります。厚生労働省のデータによると、日本の夫婦の約5.5組に1組が不妊の検査や治療を受けたことがあると報告されており、これは決して他人事ではない、身近な問題となっています。不妊の原因は女性側だけにあるのではなく、男性側、あるいは夫婦双方にある場合、そして原因が特定できない場合など多岐にわたります。そのため、不妊について考える際には、パートナーと共に向き合うことが重要です。
不妊症になりやすい人の特徴【男女別】
不妊症のリスクを高める可能性のある特徴や原因は、性別によって異なりますが、共通する生活習慣や環境要因も存在します。ここでは、女性、男性、そして夫婦双方に関わる可能性のある不妊のリスク要因について詳しく見ていきましょう。
女性に多い不妊の特徴と原因
女性の不妊の原因は多岐にわたり、卵子、卵管、子宮、ホルモンバランスなど、妊娠に関わる様々な要因が複雑に影響し合います。以下に、女性が不妊症になりやすいとされる主な特徴や原因を挙げます。
加齢による影響
女性の生殖機能は、残念ながら年齢とともに変化します。特に30代半ば以降から卵子の数と質が低下し始め、40代に入るとその傾向が顕著になります。卵子の質の低下は、受精率や胚の発育率の低下、さらには流産率の上昇につながります。また、年齢が上がると、子宮筋腫や子宮内膜症など、妊娠を妨げる婦人科系の病気のリスクも高まります。
月経周期の異常(月経不順、無月経など)
正常な月経周期は、約25日から38日とされています。この周期が大きく乱れたり、期間が極端に長かったり短かったりする場合、排卵が正常に行われていない可能性があります。月経不順や無月経は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や視床下部・下垂体の機能障害など、ホルモンバランスの異常が原因であることが多く、これらは排卵障害を直接引き起こし、妊娠を難しくします。
生理痛が重い・不正出血がある
重度の生理痛(月経困難症)や、月経期間以外の出血(不正出血)は、子宮や卵巣に何らかの異常があるサインかもしれません。例えば、子宮内膜症は生理痛の強い原因として知られていますが、子宮や卵管の癒着を引き起こし、卵管の通過障害や着床障害の原因となることがあります。また、子宮筋腫や子宮腺筋症なども、生理痛や不正出血を引き起こし、不妊につながる可能性があります。これらの症状がある場合は、放置せずに婦人科を受診することが大切です。
過去の婦人科系疾患や手術(子宮内膜症、卵管炎、性感染症など)
過去に婦人科系の病気を経験したり、その手術を受けたりしたことも、不妊のリスクになり得ます。特に、卵管炎や骨盤腹膜炎は、クラミジアなどの性感染症が原因で起こることが多く、卵管が癒着したり詰まったりして、卵子や精子、受精卵が通過できなくなる卵管性不妊の大きな原因となります。子宮や卵巣の手術も、部位や内容によっては癒着を引き起こしたり、卵巣の機能が低下したりして、不妊につながる可能性があります。
体重が適正範囲外(肥満・痩せすぎ)
適切な体脂肪率は、女性ホルモンの分泌や排卵に深く関わっています。BMI(体格指数)が18.5未満の「痩せ」や25以上の「肥満」は、ホルモンバランスを崩しやすく、排卵障害のリスクを高めます。極端なダイエットや摂食障害も、無月経を引き起こすことがあります。反対に、過度な肥満も排卵異常やPCOSのリスクを高めるだけでなく、妊娠後の合併症リスクも上昇させます。適正な体重を維持することが、妊娠しやすい体づくりには不可欠です。
喫煙習慣
喫煙は、女性の生殖機能に多大な悪影響を及ぼします。卵巣の老化を早め、卵子の質を低下させることが知られています。これにより、自然妊娠だけでなく、体外受精などの不妊治療の成功率も低下させます。また、流産や早産の可能性も高まります。パートナーの喫煙も、受動喫煙を通じて女性の体に悪影響を及ぼす可能性があります。
過度な飲酒
適量を超えるアルコール摂取も、女性ホルモンのバランスを乱し、排卵に影響を与える可能性があります。特に、毎日の多量飲酒は不妊のリスクを高めることが示唆されています。妊娠を希望する場合は、アルコールの摂取量を控えるか、控えることが望ましいとされています。
ストレスが多い
慢性的なストレスは、脳の視床下部や下垂体に影響を及ぼし、排卵をコントロールするホルモンの分泌を乱すことがあります。これにより、月経不順や無排卵につながり、不妊の原因となることがあります。仕事や人間関係、不妊治療そのものから生じるストレスなど、様々な要因が影響し得ます。適切なストレス管理は、心身の健康だけでなく、妊娠abilityの維持にも重要です。
男性に多い不妊の特徴と原因
男性の不妊は、主に精子の問題、精子の通り道の問題、そして勃起や射精の問題に分けられます。女性と比較して自身の生殖機能について意識する機会が少ないかもしれませんが、男性側の要因も不妊全体の約半分に関与すると言われています。
精子の量や運動率、形態の異常
男性不妊の最も一般的な原因は、精液所見の異常です。精子の数が少ない(乏精子症)、運動率が低い(精子無力症)、正常な形の精子が少ない(奇形精子症)など、これらの異常は精子が卵子まで到達し、受精する能力を低下させます。原因としては、原因不明の場合が多いですが、生活習慣、環境要因、遺伝的な問題などが関与していると考えられています。
過去の病気や手術(おたふく風邪、性感染症など)
思春期以降におたふく風邪(流行性耳下腺炎)にかかった場合、精巣炎を合併することがあり、これが精子を作る能力を低下させる可能性があります。また、クラミジアなどの性感染症が精巣上体炎を引き起こし、精子の通り道が詰まる原因となることもあります。鼠径ヘルニアの手術なども、精管に影響を与える可能性がゼロではありません。
生活習慣(喫煙、飲酒、ストレスなど)
女性と同様に、男性も生活習慣が精子の質に影響を与えます。喫煙は、精子の数や運動率、形態を悪化させることが多くの研究で示されています。過度な飲酒も、精子の形成に悪影響を及ぼす可能性があります。また、慢性的なストレスや睡眠不足、偏った食生活なども、ホルモンバランスや精子の質に影響を与える要因となり得ます。
さらに、精巣は体温よりやや低い温度を好むため、長時間のサウナや熱いお風呂、ノートパソコンを長時間膝の上で使用する、きつすぎる下着を着用するなども、精子の質に悪影響を与える可能性が指摘されています。
夫婦双方に関わる原因・原因不明不妊
不妊の原因は、女性側、男性側、あるいはその両方にある場合があります。また、検査をしても原因が特定できない原因不明不妊も少なくありません。
- 夫婦双方の要因: 例えば、女性に軽度の排卵障害があり、男性に軽度の精液所見異常があるなど、単独では大きな問題にならないような要因が複数組み合わさることで、結果として妊娠に至らないケースがあります。また、性交の頻度やタイミング、ED(勃起不全)なども、夫婦間の協力が必要な問題として不妊に関わります。
- 原因不明不妊: 不妊の検査を行っても、医学的な原因が特定できないケースが全体の20~30%程度を占めると言われています。原因不明とされても、実際にはまだ解明されていない微細な問題(例えば、卵子や精子の質のわずかな問題、受精や着床の過程における見えない問題など)が存在する可能性があり、不妊治療によって妊娠に至るケースも多くあります。
【ランキング】不妊の主な原因の内訳
不妊の原因は多岐にわたりますが、その割合は男女でほぼ半々と言われています。日本生殖医学会や厚生労働省などの統計に基づくと、不妊の原因の内訳は概ね以下のようになります(原因が重複する場合もあるため、合計が100%を超えることがあります)。
原因 | 割合(目安) | 詳細 |
---|---|---|
女性側の原因 | 約40% | 排卵障害、卵管因子(卵管閉塞・狭窄)、子宮因子(子宮筋腫・内膜症)、頸管因子など |
男性側の原因 | 約40% | 精液所見異常(乏精子症、精子無力症、奇形精子症など)、精子の輸送路障害、造精機能障害など |
夫婦双方の原因 | 約20% | 女性と男性双方に軽度の要因がある場合、性交障害(EDなど) |
原因不明不妊 | 約20% | 標準的な検査では原因が特定できない場合 |
注:上記の割合はあくまで一般的な目安であり、調査によって数値は異なります。原因が複数にまたがるケースも含まれます。
この内訳からもわかるように、不妊は女性だけの問題ではなく、男性側の検査や治療も非常に重要です。夫婦で協力して原因を探り、適切な対策や治療を選択していく姿勢が大切です。
不妊症かもしれない?セルフチェックリスト
ご自身の体調や状況を振り返ってみましょう。以下の項目に当てはまる場合、不妊のリスクが高い可能性があり、専門機関への相談を検討する一つの目安となります。
あなたに当てはまる項目は?
- 女性のチェックリスト
- 年齢が35歳以上である。
(解説:卵子の数と質が低下し始める年齢です。) - 月経周期が24日より短い、または39日より長いなど、大きく不規則である。
(解説:排卵が正常に行われていない可能性があります。) - 以前は規則的だったのに、最近月経周期が乱れるようになった。
(解説:ホルモンバランスの変化や何らかの異常を示唆している場合があります。) - 生理痛が非常に重く、日常生活に支障がある。
(解説:子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れている可能性があります。) - 月経期間以外に不正出血がある。
(解説:子宮や卵巣の病気、ホルモン異常のサインかもしれません。) - 過去にクラミジアなどの性感染症にかかったことがある。
(解説:卵管の炎症や癒着を引き起こし、不妊の原因となることがあります。) - 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫などの婦人科系疾患の診断を受けたことがある、または治療中である。
(解説:これらの病気は妊娠を妨げる可能性があります。) - 過去に子宮や卵巣の手術を受けたことがある。
(解説:癒着や卵巣機能低下のリスクがあります。) - BMIが18.5未満(痩せすぎ)または25以上(肥満)である。
(解説:ホルモンバランスの乱れや排卵障害につながる可能性があります。) - 毎日、または頻繁に喫煙している。
(解説:卵子の質を低下させ、卵巣の老化を早めます。) - 習慣的に多量のアルコールを摂取している。
(解説:ホルモンバランスや排卵に影響を与える可能性があります。) - 慢性的に強いストレスを感じている。
(解説:ホルモンバランスを乱し、排卵障害につながることがあります。) - 以前は妊娠経験があるが、その後なかなか妊娠しない(続発性不妊)。
(解説:新たな原因が生じている可能性があります。) - 男性のチェックリスト
- 精液の量が少ないと感じる、または質に不安がある。
(解説:精液所見の異常がある可能性があります。) - 過去におたふく風邪にかかったことがある(特に思春期以降)。
(解説:精巣炎を合併し、精子形成に影響した可能性があります。) - 過去に性感染症にかかったことがある。
(解説:精子の通り道が詰まる原因となることがあります。) - 鼠径ヘルニアなど、陰部周辺の手術を受けたことがある。
(解説:精管に影響を与えた可能性があります。) - 毎日、または頻繁に喫煙している。
(解説:精子の質(数、運動率、形態)を低下させます。) - 習慣的に多量のアルコールを摂取している。
(解説:精子形成に悪影響を与える可能性があります。) - 慢性的に強いストレスを感じている、または睡眠不足である。
(解説:ホルモンバランスや精子の質に影響を与える可能性があります。) - 長時間、精巣が高温になるような状況(サウナ、熱い風呂、膝上でのPC使用など)が多い。
(解説:精子の質に悪影響を与える可能性があります。) - 勃起不全(ED)や射精障害がある。
(解説:性交自体が困難になり、妊娠に至りません。)
これらのチェック項目に当てはまる項目が多いからといって、必ずしも不妊症であると診断されるわけではありません。しかし、リスク要因を把握し、必要に応じて専門機関で詳しい検査を受けることの重要性を示唆しています。特に、1年間(女性が35歳以上の場合は半年程度)避妊せずに性行為を継続しても妊娠しない場合は、当てはまる項目があるかどうかにかかわらず、一度専門医に相談することをおすすめします。
不妊の不安を感じたら専門機関へ【検査と受診】
不妊に関する不安を一人で抱え込む必要はありません。早い段階で専門機関に相談し、適切な検査を受けることが、問題の早期発見と解決への第一歩となります。
不妊検査の主な種類
不妊検査は、原因を特定するために男女それぞれに行われます。基本的な検査は比較的短期間で行えるものが多いですが、原因を詳しく調べるためには追加の検査が必要となる場合もあります。
検査対象 | 検査の種類 | 目的 | 方法 |
---|---|---|---|
女性 | 問診・基礎体温測定 | 全体的な健康状態、月経周期、性交の状況、既往歴などを把握。排卵の有無や時期を推測。 | 医師との面談、自分で毎日の体温を記録。 |
婦人科診察・超音波検査 | 子宮や卵巣の状態(大きさ、形、卵胞の発育など)を評価。子宮筋腫や卵巣嚢腫の有無を確認。 | 内診台での視診、触診、経腟超音波検査。 | |
ホルモン検査 | 排卵や月経周期に関わるホルモン(FSH, LH, プロラクチン, エストラジオールなど)の分泌状態を評価。多嚢胞性卵巣症候群なども診断。 | 採血。通常、月経周期の特定の時期に行われます。 | |
卵管造影検査 | 卵管が詰まっていないか、子宮の形に異常がないかを確認。不妊の原因として最も多い卵管因子の診断に重要。 | 子宮の入り口から造影剤を注入し、レントゲン撮影。 | |
フーナーテスト | 性交後の頸管粘液中の精子の数や運動率を確認。頸管粘液と精子の相性、性交のタイミングなどを評価。 | 性交後に、頸管粘液を採取して顕微鏡で観察。 | |
抗精子抗体検査 | 女性の体内に精子に対する抗体がないかを確認。抗体があると精子の運動が妨げられ、受精しにくくなる。 | 採血。 | |
男性 | 精液検査 | 精子の数、運動率、形態、精液量などを評価。男性不妊の原因の特定に最も重要。 | 禁欲期間を設けた後、マスターベーションで採取した精液を検査機関で分析。 |
ホルモン検査 | 精子形成に関わるホルモン(FSH, LH, テストステロンなど)の分泌状態を評価。 | 採血。 | |
染色体検査・遺伝子検査 | 精子形成に影響を与える染色体や遺伝子の異常がないかを確認。重度の精液所見異常がある場合などに検討されます。 | 採血。 | |
泌尿器科医による診察 | 精巣の大きさや状態、精索静脈瘤の有無などを確認。 | 視診、触診、超音波検査など。 |
これらの検査は、専門の不妊治療クリニックや、不妊治療を扱っている産婦人科、泌尿器科などで受けることができます。
受診を検討すべきタイミング
一般的に、不妊症の定義である「1年間避妊せずに性行為を継続しても妊娠しない場合」が、不妊検査・治療の開始を検討する一つの目安となります。
ただし、以下のような場合は、1年を待たずに早めに専門医に相談することをおすすめします。
- 女性が35歳以上である場合:年齢による卵子の質の低下が懸念されるため、半年程度で相談を検討しましょう。
- 月経不順や無月経、重い生理痛、不正出血など、妊娠に関わる体の異常が以前から自覚されている場合。
- 過去に婦人科系の病気や性感染症にかかったことがある場合。
- 男性側で精液所見に不安がある場合や、過去におたふく風邪など精子形成に影響しうる病気にかかったことがある場合。
- 夫婦で不妊に関する強い不安を感じている場合。
早期に相談することで、原因を早く特定し、必要に応じて適切な治療を開始できます。また、原因が見つからなかったとしても、専門家からアドバイスを受けることで、不安が軽減されることもあります。
不妊症でも妊娠は可能?治療法について
不妊症と診断されても、決して妊娠の可能性がないわけではありません。不妊の原因やカップルの状況に応じて、様々な治療法が選択肢としてあります。適切な治療を受けることで、多くのカップルが妊娠に至っています。
不妊治療の選択肢
不妊治療には、主に以下の段階があります。原因や状況に合わせて、これらの治療法の中から適切なものが選択されます。
- 一般不妊治療
- タイミング法: 基礎体温や超音波検査などで排卵日を予測し、その日に合わせて性交を行う方法です。最も自然妊娠に近い方法であり、不妊治療の第一歩として行われることが多いです。
- 人工授精(AIH): 排卵日に合わせて、洗浄・濃縮した良好な精子を子宮内に注入する方法です。精子の運動率が低い場合や、フーナーテストで問題がある場合などに選択されることがあります。
- 生殖補助医療(ART: Assisted Reproductive Technology)
- 体外受精(IVF: In Vitro Fertilization): 採卵によって卵子を体外に取り出し、精子と混ぜて受精させる方法です。培養器で数日間育てた受精卵(胚)を子宮に戻します。卵管が詰まっている場合や、人工授精で妊娠に至らない場合などに広く行われます。
- 顕微授精(ICSI: Intracytoplasmic Sperm Injection): 精子数が極端に少ない、運動率が低い、または通常の体外受精で受精しない場合などに選択されます。細い針を使って精子を卵子の中に直接注入して受精させる方法です。
これらの治療法の他にも、原因に応じた薬物療法(排卵誘発剤など)や手術療法(子宮筋腫や子宮内膜症、卵管の癒着などの治療)が行われることもあります。
治療成功の可能性
不妊治療の成功率は、治療法や不妊の原因、そして特に女性の年齢に大きく左右されます。一般的に、タイミング法や人工授精よりも、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療の方が成功率は高い傾向にあります。
体外受精による妊娠率は、女性の年齢が若いほど高く、30歳未満では移植あたりの妊娠率が40%を超えることもありますが、30代後半になると徐々に低下し、40代になるとさらに下がります。
女性の年齢 | 移植あたりの妊娠率(目安) |
---|---|
~29歳 | 40%以上 |
30~34歳 | 35~40% |
35~39歳 | 20~35% |
40歳~ | 20%以下 |
注:上記の数値はあくまで目安であり、クリニックや個人の状況によって大きく異なります。
男性不妊の場合も、精液所見の程度によって治療法が異なり、顕微授精によって多くのケースで妊娠が可能です。
不妊治療には、身体的・精神的な負担や経済的な負担が伴いますが、適切な情報収集と専門医との十分な相談を通じて、ご夫婦にとって最善の治療法を選択していくことが重要です。
不妊症のリスクを減らすためにできること
不妊のリスクを高める要因の中には、ご自身の努力で改善できるものも少なくありません。日頃の生活習慣を見直すことは、妊娠しやすい体を作るだけでなく、心身の健康維持にもつながります。
健康的な生活習慣の実践
- 禁煙・節煙: 男女ともに、喫煙は生殖機能に悪影響を与えます。妊娠を希望するなら、できる限り禁煙しましょう。
- 適度な飲酒: 過度な飲酒は男女ともに生殖機能に影響を与える可能性があります。適量を心がけるか、控えることが望ましいです。
- バランスの取れた食事: ビタミン、ミネラル、抗酸化物質などを豊富に含む、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。特に亜鉛は男性の精子形成に、葉酸は女性の卵子や妊娠初期の胎児の発育に重要と言われています。
- 適正体重の維持: 痩せすぎも肥満もホルモンバランスを崩し、排卵障害や精子の質の低下につながる可能性があります。BMI 18.5~25未満を目標に、無理のない範囲で体重管理をしましょう。
- 適度な運動: 適度な運動は血行を促進し、ストレス解消にもつながります。ただし、過度な運動は女性のホルモンバランスを乱す可能性があるため注意が必要です。
- 質の良い睡眠: 十分な睡眠は、ホルモンバランスを整えるために重要です。
- ストレス管理: ストレスは男女ともにホルモンバランスを乱し、生殖機能に悪影響を与える可能性があります。趣味やリラクゼーションなどで、自分に合った方法でストレスを解消しましょう。
- 体を冷やさない: 特に女性は、体を冷やすと血行が悪くなり、骨盤内の機能に影響を与える可能性があります。温かい服装を心がけましょう。
- 化学物質や環境ホルモンへの注意: 日常生活の中に潜む化学物質や環境ホルモンが生殖機能に影響を与える可能性も指摘されています。過度に心配する必要はありませんが、可能な範囲で注意することも考慮しましょう。
早期の相談・検査の重要性
「もしかしたら不妊症かもしれない…」という不安を抱えながら、時間だけが過ぎてしまうのは、精神的な負担が大きいだけでなく、特に女性にとっては年齢による卵子の質の低下という現実的な問題につながります。
不妊の原因の中には、早期に発見して治療を開始すれば比較的スムーズに妊娠に至るものもあります。また、原因が特定できない場合でも、専門家のアドバイスを受けることで、妊娠の可能性を高めるための具体的な行動や治療の選択肢を知ることができます。
まずは、パートナーと話し合い、不安を共有することから始めましょう。そして、もし少しでも気になることや不安がある場合は、躊躇せずに婦人科や泌尿器科、または不妊治療専門のクリニックに相談することをおすすめします。専門家は、科学的な根拠に基づいた情報を提供し、お二人の状況に合わせた適切なアドバイスやサポートをしてくれます。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、前向きに妊娠への道を歩んでいきましょう。
【免責事項】
この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を推奨するものではありません。不妊に関するご自身の状況や健康状態については、必ず専門の医療機関にご相談ください。記事の情報に基づいてご自身の判断で行動された結果について、当方は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。