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体外受精のデメリット|身体・費用・精神的なつらさ・リスク

体外受精は、赤ちゃんを望む多くの夫婦にとって希望となる治療法の一つです。
しかし、自然妊娠とは異なるプロセスを経るため、それに伴う様々なデメリットやリスクが存在することも事実です。
治療を検討する際には、これらの側面を十分に理解し、納得した上で進めることが非常に重要です。
本記事では、体外受精のデメリットについて、身体的・精神的な負担、費用、生まれてくる子供への影響など、多角的な視点から詳しく解説します。
後悔のない選択をするために、ぜひ参考にしてください。

目次

体外受精で生まれてくる子供へのデメリット・リスク

体外受精で生まれた子供の健康や発達について、様々な研究が行われています。
全体的には、自然妊娠で生まれた子供と比べて大きな差はないとされていますが、いくつかの特定の疾患リスクがわずかに増加する可能性が指摘されています。

体外受精で生まれる子供にどんなリスクがある?

体外受精で生まれた子供に対する長期的な研究はまだ発展途上ですが、現時点での研究で指摘されている主なリスクについて解説します。
これらのリスクは、体外受精という医療行為そのものによるものなのか、それとも体外受精を選択せざるを得ない元々の不妊原因(親側の要因)によるものなのか、まだ明確に区別できていないものも多くあります。
過度に心配する必要はありませんが、情報として知っておくことは大切です。

先天性異常・障害のリスク

体外受精で生まれた子供において、特定の先天性異常や障害の発生率がわずかに増加する可能性が指摘されています。

自然妊娠と比較した障害児が生まれる割合

大規模な疫学調査などによると、体外受精で生まれた子供における全体的な先天性異常の発生率は、自然妊娠で生まれた子供と比較して、わずかに増加するという報告があります。
この増加は、特定の症例で顕著に見られることがあり、全てのリスクが均等に増えるわけではありません。

  • 具体的な先天性異常: 報告されているものとして、心血管系の異常、泌尿器系の異常、筋骨格系の異常、染色体異常(ただしこれは親の年齢の影響が大きい可能性も)、そして一部の希少疾患などが挙げられることがあります。
    しかし、これらのリスク増加は絶対的なものではなく、統計的な傾向として観察されているものです。

このわずかなリスク増加が、体外受精の手技そのもの(例: 卵子や精子の操作、培養環境)による影響なのか、あるいは体外受精を受けるカップルが抱える不妊の原因(例: 精子や卵子の質、親の年齢、遺伝的要因など)によるものなのかは、現在も研究が進められている論点です。
多くの研究は、両方の要因が複合的に影響している可能性を示唆しています。

報告されている長期的なリスク(悪性腫瘍、発達障害など)

体外受精で生まれた子供の長期的な健康状態についても、継続的な追跡調査が行われています。

  • 悪性腫瘍(がん)のリスク: 一部の研究で、体外受精児における小児がん(特に白血病や神経芽腫など)のリスクがごくわずかに増加する可能性が示唆されていますが、多くは統計的に有意な差が見られない、あるいは特定の種類の腫瘍に限られるといった結果であり、統一的な見解はまだ得られていません。
    全体として、体外受精が子供の将来的ながんリスクを大きく上昇させるという強いエビデンスは確立されていません。
  • 発達障害のリスク: 自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの発達障害との関連性についても研究されています。
    いくつかの報告では、体外受精児においてASDやADHDの診断率がわずかに高い傾向が見られたという結果がありますが、これも不妊原因や親の年齢、社会経済的背景など、他の要因が影響している可能性が指摘されており、体外受精との直接的な因果関係は明確ではありません。
  • エピジェネティック異常: 体外受精の培養過程などが、遺伝子の働きを調節するエピジェネティクスに影響を与え、特定の希少疾患(例: ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、エンジェルマン症候群など)のリスクをわずかに増加させる可能性が指摘されています。
    これらの疾患は非常に稀ですが、体外受精との関連が比較的強く示唆されている領域です。

これらの長期的なリスクに関する研究はまだ限定的であり、結論が出ていないものも多いです。
多くの体外受精児は健康に成長しており、過度に悲観的になる必要はありませんが、最新の研究結果について関心を持つことは重要です。

その後の成長に関する懸念

体外受精で生まれた子供の、出生後の成長や発達についても様々な観点から調査が行われています。

体外受精で生まれた子の特徴や経過

  • 身体的な成長: 多くの研究では、体外受精児の出生体重やその後の身体的な成長(身長や体重)は、自然妊娠で生まれた子供と比べて大きな差がないことが示されています。
    ただし、多胎妊娠の場合は早産や低出生体重のリスクが高まるため、その影響を受けることがあります。
  • 認知機能や学業成績: 知能指数(IQ)や学業成績についても、多くの追跡調査で体外受精児と自然妊娠児との間に有意な差は見られないという結果が得られています。
  • 心理的・社会的発達: 心理的な健康や社会性についても、現時点での研究では大きな懸念は示されていません。
    思春期以降の追跡調査はまだ数が少ないため、長期的な影響についてはさらなる研究が必要です。

総じて、体外受精で生まれた子供は、全体として健康に成長し、身体的・精神的な発達も自然妊娠で生まれた子供と同等であると考えられています。
しかし、上述したようなごくわずかなリスク増加の可能性や、まだ解明されていない長期的な影響については、今後の研究の進展を待つ必要があります。

体外受精治療全体のデメリット

体外受精は、個々のステップに伴う身体的・精神的な負担や、子供への影響リスクだけでなく、治療プロセス全体に関わるデメリットも存在します。

通院回数の多さ

体外受精は、女性の月経周期に合わせて治療を進めるため、非常に頻繁な通院が必要となります。

具体的な通院頻度:

  • 具体的な通院頻度: 卵胞を育てる期間中は、卵胞の成長やホルモン値をモニタリングするために数日に一度のペースで通院が必要です。
    採卵前にはほぼ毎日通院が必要になることもあります。
    採卵後、胚移植後も定期的な診察があります。
    1回の治療周期を通して、多い時には10回以上の通院が必要になることも珍しくありません。
  • 仕事や日常生活への影響: 頻繁な通院は、仕事のスケジュール調整を非常に難しくします。
    急な呼び出しや、特定の時間帯の受診が必要な場合もあり、仕事を持つ女性にとっては大きな負担となります。
    また、パートナーも検査や採卵などで通院が必要な場合があり、夫婦ともにスケジュールの調整が求められます。
    友人との約束や趣味など、これまでの日常生活にも影響が出ることがあります。

治療スケジュール調整の難しさ

体外受精の治療スケジュールは、個々の患者さんの体の状態や卵胞の成長に合わせて決定されるため、予測が難しく、急な変更が生じることもあります。

柔軟性の欠如:

  • 柔軟性の欠如: 卵胞の成長スピードは個人差があり、また同じ人でも周期によって異なります。
    そのため、「この日に採卵」「この日に移植」とあらかじめ確定することが難しく、直前の体調やホルモン値を見てスケジュールが決定されます。
    これにより、長期的な予定を立てることが困難になります。
  • 急な対応の必要性: 採卵日や移植日は、卵胞の成熟度を見極めて急に決定されることがあります。
    仕事や家庭の都合をその都度調整する必要があり、対応に追われることも少なくありません。
  • 予測不能な停止: 卵胞が十分に育たなかったり、ホルモン値が適切でなかったりする場合、その周期の治療が中止となることもあります。
    これにより、それまでかけた時間や労力、費用が無駄になってしまうという精神的な負担も伴います。

治療期間の長期化

体外受精は1回の治療で妊娠に至らないことが多いため、治療期間が長期化しやすいというデメリットがあります。

複数回の治療が必要:

  • 複数回の治療が必要: 妊娠率が1回の治療で100%ではないため、多くのカップルが複数回の治療を繰り返します。
    年齢や不妊の原因によって、妊娠に至るまでに数ヶ月から数年にわたる治療期間が必要になることがあります。
  • 治療による疲弊: 治療が長期化すると、身体的・精神的な負担、経済的な負担が蓄積され、心身ともに疲弊してしまいます。
    治療を続けるべきか、休むべきか、やめるべきかという判断に迷うことも多くなります。
  • 年齢による焦り: 特に女性の場合、年齢とともに卵巣機能や卵子の質が低下し、妊娠率が低下していくため、治療の長期化は焦りを生じさせ、「いつまで治療を続けられるのか」という不安につながります。

これらの治療全体のデメリットは、体外受精を検討する上で現実的に考慮すべき重要な点です。

体外受精「しないほうがいい」と考えてしまう理由

体外受精の治療を選択するにあたり、「しないほうがいいのではないか」と迷ったり、葛藤したりする夫婦は少なくありません。
そこには、体外受精のデメリットが大きく影響しています。

体外受精のデメリットがもたらす迷い

体外受精の様々なデメリットは、治療への一歩を踏み出すこと、あるいは治療を続けることに対する迷いや不安を引き起こします。

  • 身体的なつらさへの不安: 採卵の痛みやOHSSなどの合併症リスクに対する恐れから、身体的な負担を避けたいと感じることがあります。
  • 精神的な負担への抵抗: 治療期間中のストレス、不確実性による不安、結果が出なかった場合の落胆などを想像すると、精神的に耐えられるか自信が持てず、治療に消極的になることがあります。
  • 経済的な問題: 高額な治療費は、家計への大きな負担となり、「費用に見合うだけの結果が得られるのか」という疑問や、「経済的に治療を続けられるのか」という不安から治療をためらう理由になります。
  • 子供への影響に関する懸念: わずかではあるものの、生まれてくる子供への先天性異常や長期的な健康影響のリスクが指摘されていることに不安を感じ、「自然に任せるべきではないか」と考えてしまうことがあります。
  • 治療プロセスの負担: 頻繁な通院やスケジュール調整の難しさ、仕事や日常生活への影響を考えると、「これまでの生活を大きく変えてまで治療を受ける必要があるのか」と迷いが生じます。
  • 倫理的な側面: 卵子・精子の体外での操作、胚の選別、余剰胚の凍結・廃棄など、体外受精のプロセスに関わる倫理的な側面について深く考え、葛藤する方もいます。
  • 「後悔」への恐れ: 治療を受けても妊娠に至らなかった場合に、「あれほどつらい思いをして、時間もお金もかけたのに…」と後悔することを恐れ、治療に踏み切れない場合があります。
    一方で、治療を受けなかった場合に「あの時治療をしていれば」と後悔することを恐れる場合もあり、非常に難しい選択となります。

これらの迷いは、体外受精が持つ複雑な側面から生じる自然な感情です。
重要なのは、これらのデメリットや迷いを無視せず、夫婦で十分に話し合い、専門家と相談しながら、自分たちにとって最善の道を模索することです。

体外受精のデメリットを理解した上で

体外受精のデメリットについて深く理解することは、治療を進める上で非常に重要です。
しかし、デメリットだけを見て判断するのではなく、治療の全体像を把握することが求められます。

デメリットだけでなくメリットや成功率も知る重要性

体外受精のデメリットに焦点を当ててきましたが、この治療法にはもちろん大きなメリットもあります。

  • 妊娠の可能性を高める: タイミング法や人工授精などの一般不妊治療で結果が出ない場合でも、体外受精によって妊娠の可能性を飛躍的に高めることができます。
    特に、卵管因子、男性不妊、高齢などのケースでは、体外受精が最も妊娠への近道となる場合があります。
  • 原因に応じた対応: 不妊の原因が特定できている場合(例: 重度の男性不妊、卵管閉塞など)や、原因不明不妊の場合でも、体外受精は有効な治療法となり得ます。
  • 着床前診断などのオプション: 必要に応じて、胚の染色体異常などを調べる着床前診断(PGT-A/SR/M)を行うことで、流産のリスクを減らし、妊娠率を高める可能性があります(保険適用には制限あり)。

体外受精の成功率は、女性の年齢、不妊の原因、使用する胚の種類(新鮮胚か凍結胚か)、クリニックの技術などによって大きく異なります。
一般的に、女性の年齢が若いほど成功率は高く、高齢になるにつれて低下します。
全国的なデータや各クリニックの公表データを参考に、自分たちの状況における現実的な成功率について理解しておくことが、デメリットを乗り越える上でも重要です。

デメリットとメリット、そして成功率を総合的に理解することで、体外受精という選択肢が自分たちの状況に合っているのか、どのような期待値で治療に臨むべきなのかを、より現実的に判断することができます。

専門家へ相談し、十分な説明を受けること

体外受精のデメリットについて、インターネットや書籍などで情報収集することは大切ですが、最終的な判断をするためには専門家である医師や胚培養士、不妊カウンセラーへの相談が不可欠です。

  • 個別の状況に基づいた説明: 体外受精のリスクや成功率は、個々の患者さんの年齢、不妊原因、既往歴、体質などによって大きく異なります。
    医師は、これらの情報を踏まえて、あなたやあなたのパートナーにとって具体的なリスクや期待できる結果について、より正確な情報を提供してくれます。
  • リスクへの対策について: 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠など、具体的なリスクに対する予防策や、万が一発生した場合の対処法について説明を受けることができます。
    これにより、漠然とした不安が軽減されることがあります。
  • 治療以外の選択肢: 体外受精以外の治療法(人工授精など)や、治療を休む・終了するといった選択肢についても、メリット・デメリットを含めて説明を受けることができます。
  • 費用に関する詳細な説明: 保険適用の範囲、自己負担額の目安、追加費用が発生する可能性のある検査や治療について、具体的な説明を受けることが重要です。
    経済的な不安を軽減するためにも、事前にしっかりと確認しましょう。
  • 精神的なサポート: 不妊治療専門のカウンセラーがいるクリニックでは、治療に伴う精神的な負担や悩みについて相談することができます。
    夫婦関係、仕事との両立、治療の迷いなど、様々な問題に対する心理的なサポートを受けることが可能です。

体外受精のデメリットについて不安や疑問を感じたら、一人で抱え込まず、必ず専門家に相談してください。
十分な説明を受け、納得した上で治療方針を決定することが、後悔のない選択をするための最も重要なステップです。
夫婦で一緒に説明を聞き、話し合うことも大切です。

まとめ

体外受精は、多くの不妊に悩む夫婦に希望をもたらす高度な医療技術ですが、身体的・精神的な負担、高額な費用、生まれてくる子供への潜在的な影響など、無視できないデメリットやリスクが存在します。

本記事で解説した主なデメリットは以下の通りです。

  • 身体的な負担: 採卵・胚移植に伴う痛みや不快感、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの合併症リスク。
  • 精神的な負担: 治療の不確実性、ホルモン剤の影響、頻繁な通院、経済的な不安、結果が出ない場合の強い落胆や後悔。
  • 費用: 高額な治療費(保険適用後も自己負担が大きい場合がある)、治療期間の長期化による総額の増加。
  • 多胎妊娠リスク: 自然妊娠より高い可能性があり、母体・胎児双方にリスクを伴う(単一胚移植で低減は可能)。
  • 子供への影響: ごくわずかな特定の先天性異常や希少疾患リスクの増加可能性、長期的な健康影響に関する研究の不確実性。
  • 治療全体の負担: 頻繁な通院、スケジュール調整の難しさ、治療期間の長期化による心身の疲弊。

これらのデメリットは、「体外受精をしないほうがいいのではないか」という迷いにつながることがあります。
しかし、体外受精には妊娠の可能性を高めるという大きなメリットがあり、多くのカップルが赤ちゃんを授かるために選択する治療法です。

大切なのは、デメリットから目を背けるのではなく、それらを正確に理解し、メリットや成功率と合わせて総合的に判断することです。
そして何よりも、不妊治療の専門家である医師に相談し、個別の状況に基づいた詳細な説明を十分に受けることが不可欠です。
リスクに対する対策や、費用、治療以外の選択肢についても話し合いましょう。

体外受精は、夫婦にとって大きな決断を伴う治療です。
デメリットを理解した上で、夫婦でしっかりと話し合い、専門家のサポートを得ながら、納得のいく選択をしてください。
それが、たとえ結果がどうであっても、後悔を最小限にするための道と言えるでしょう。

免責事項: 本記事は、体外受精のデメリットに関する一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法を推奨したり否定したりするものではありません。
個々の状況に応じた正確な情報や診断、治療方針については、必ず医療機関で専門医にご相談ください。
医学的情報は日々更新される可能性があります。

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