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ソノヒステログラフィーとは?子宮の検査で何がわかる?

ソノヒステログラフィーは、不妊検査の一つとして行われることの多い検査です。
超音波(エコー)と生理食塩水などを使って、子宮の内側(子宮内腔)の状態を詳しく調べることで、不妊の原因となる可能性のある病変を見つけることができます。
子宮の形態異常や、子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫、子宮内腔癒着などが不妊の原因となっているケースは少なくありません。
この検査は、これらの異常を効果的に評価するために行われます。
検査を受けることに不安を感じる方もいらっしゃると思いますが、検査の目的や手順、痛み、費用などをあらかじめ知っておくことで、安心して臨むことができるでしょう。

目次

ソノヒステログラフィーとは?検査の目的

ソノヒステログラフィー(Saline Infusion Sonohysterography:SHG)は、経腟超音波検査では詳細な観察が難しい子宮内腔の状態を、より鮮明に映し出すための特殊な超音波検査です。
生理食塩水を子宮内腔に注入することで、子宮の内壁を一時的に広げ、その状態で超音波を使って観察します。
これにより、通常のエコー検査では見落としがちな小さな病変や形態異常を発見しやすくなります。

この検査の主な目的は、不妊の原因となりうる子宮内腔の異常を特定することです。
受精卵が着床し、妊娠が継続するためには、子宮内腔が健康な状態であることが非常に重要です。
ソノヒステログラフィーは、この着床の場である子宮内腔に問題がないかを確認するために行われます。

特に、原因不明不妊と診断された場合や、体外受精を検討している場合に、子宮内腔の状態を事前に評価するために推奨されることがあります。
子宮鏡検査や卵管造影検査と組み合わせて行われることもあります。

ソノヒステログラフィーでわかること

ソノヒステログラフィーを行うことで、以下のような子宮内腔の状態や病変を確認することができます。

  • 子宮内腔の形状と大きさ: 子宮内腔が正常な三角形や洋ナシ形をしているか、拡大や変形がないかを確認します。
    子宮奇形(例:中隔子宮、双角子宮)の一部を評価するのに役立ちます。
  • 子宮内膜の状態: 子宮内膜の厚さや均一性を評価します。
    ただし、子宮内膜の質や組織学的異常(例:慢性子内膜炎)を直接診断するものではありません。
  • 子宮内腔内の病変: 子宮内腔に突出している可能性のある病変を検出します。
    生理食塩水を注入することで、液体の中に病変が浮かび上がり、その位置、大きさ、形状がより明確に描出されます。
  • 卵管開口部の状態: 子宮内腔から卵管へとつながる開口部(卵管口)にポリープなどの病変がないかを確認できます。
    ただし、卵管の通過性自体を直接評価する検査ではありません。

これらの情報から、子宮内腔が妊娠に適した環境であるかどうかを判断し、必要に応じて追加の検査や治療方針を検討するための重要な手がかりが得られます。

どのような病変が見つかるか(ポリープ・筋腫など)

ソノヒステログラフィーによって検出されやすい、不妊の原因となりうる代表的な子宮内腔の病変は以下の通りです。

  • 子宮内膜ポリープ: 子宮内膜の一部が過剰に増殖してできる良性の腫瘍です。
    子宮内腔に突出することで、受精卵の着床を妨げたり、不正出血の原因となったりすることがあります。
    ソノヒステログラフィーでは、生理食塩水の中でポリープが明確な塊として観察されやすいです。
  • 粘膜下筋腫: 子宮の筋肉(子宮筋層)にできる良性の腫瘍(子宮筋腫)のうち、特に子宮内腔に突出してくるタイプのものです。
    大きさや位置によっては、子宮内腔を変形させたり、内膜の血流を悪化させたりして、着床障害や流産の原因となることがあります。
    ソノヒステログラフィーでは、子宮内腔を圧迫・変形させる筋腫として描出されます。
  • 子宮内腔癒着: 過去の手術(流産手術、帝王切開など)や感染症によって、子宮内壁がくっついてしまう状態(アッシャーマン症候群など)です。
    子宮内腔が狭くなったり、内膜の面積が減少したりすることで、着床が困難になったり、月経量が極端に少なくなったりします。
    ソノヒステログラフィーでは、生理食塩水が均一に広がらなかったり、欠損部が見られたりすることで癒着が疑われます。
  • 子宮奇形: 生まれつきの子宮の形の異常です。
    子宮内腔を縦に隔てる中隔がある中隔子宮や、子宮が二つに分かれている双角子宮などがあります。
    ソノヒステログラフィーは、これらの子宮内腔の形態異常を評価するのに役立ちます。
    ただし、子宮全体の形態を正確に診断するにはMRIなどの検査が必要な場合もあります。

これらの病変が見つかった場合、その種類、大きさ、位置、そして患者さんの状況に応じて、子宮鏡下手術による切除など、その後の治療方針が検討されます。
ソノヒステログラフィーは、これらの治療が必要かどうかを判断するための最初のステップとなる重要な検査です。

検査の手順と流れ

ソノヒステログラフィーは、比較的短時間で完了する検査です。
通常、外来で行われます。
一般的な検査の手順と流れは以下の通りです。

  • 準備: 検査台(内診台)に座り、通常の経腟超音波検査と同じように準備をします。
    医師から検査に関する説明を受け、同意書にサインを求められることもあります。
  • 経腟超音波検査: まず、生理食塩水を注入する前に、通常通り経腟超音波で子宮や卵巣の状態を確認します。
    これにより、子宮の傾きや大きさ、周辺の臓器との位置関係などを把握します。
  • 器具の挿入: 子宮の入り口(子宮頸部)を消毒した後、細く柔らかいカテーテルを子宮内腔まで挿入します。
    カテーテルは非常に細いものが使用されます。
  • 生理食塩水の注入: カテーテルを通じて、滅菌された生理食塩水を少量ずつ子宮内腔にゆっくりと注入します。
    注入量によって子宮内腔が広がり、内壁の凹凸や病変が観察しやすくなります。
  • 超音波による観察: 生理食塩水を注入しながら、経腟超音波プローブを使って子宮内腔の様子を様々な角度から観察します。
    モニターに映し出される画像をリアルタイムで確認し、異常がないか、病変がある場合はその特徴を詳しく評価します。
  • 検査終了: 観察が終了したら、カテーテルを抜きます。
    注入された生理食塩水は自然に体外に排出されるか、体内に吸収されます。
    検査台から降りて、着替えをします。
  • 結果説明: 医師から検査結果について説明を受けます。
    見つかった病変や異常について、今後の治療方針や追加の検査について話し合います。

この流れはあくまで一般的なものであり、クリニックや医師によっては多少異なる場合があります。

検査で使用するもの(カテーテル・生理食塩水)

ソノヒステログラフィー検査で主に用いられるのは、「カテーテル」と「生理食塩水」です。
それぞれの役割は以下の通りです。

  • カテーテル: 子宮頸部から子宮内腔へ生理食塩水を注入するための細い管です。
    非常に柔らかい素材でできており、先端が丸くなっているなど、子宮を傷つけないように配慮されています。
    このカテーテルを子宮頸管を通して子宮内腔に留置し、そこから生理食塩水を注入します。
    カテーテルの挿入時には、子宮の入り口を固定するために鉗子(かんし)を使用することがありますが、これは痛みの原因の一つとなることがあります。
  • 生理食塩水: 滅菌された生理食塩水が、子宮内腔を一時的に拡張させるための造影剤として使用されます。
    超音波検査では、液体は黒く映し出されるため、生理食塩水で満たされた子宮内腔は黒く描出されます。
    この黒い空間の中に、子宮内膜やポリープ、筋腫などの組織(白く映る)が浮かび上がることで、その形状や位置関係がより鮮明に観察できるようになります。
    生理食塩水は生体に対して安全であり、注入後は自然に体内に吸収されるか、体外に排出されるため、体に残る心配はありません。

これらの器具と造影剤を使用することで、通常のエコー検査だけでは不明瞭な子宮内腔の詳細な情報を得ることができます。

具体的な検査の進め方

具体的な検査の進め方は、患者さんの状況や医師の判断によって微調整されることがありますが、基本的な流れは以下のようになります。

  • 問診: 検査前に、これまでの病歴や現在の症状、アレルギーの有無などを医師に伝えます。
    妊娠の可能性がないかどうかも確認されます。
  • 内診と超音波検査: 内診台に上がり、通常の経腟超音波で子宮と卵巣を観察します。
    子宮の向きや大きさ、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの大きな病変がないか確認します。
  • 子宮頸部の消毒: 膣鏡(クスコ)を挿入し、子宮頸部(子宮の入り口)を消毒します。
    これは感染を防ぐために重要なステップです。
  • カテーテルの挿入と固定: 細いカテーテルを子宮頸管に沿って子宮内腔までゆっくりと挿入します。
    カテーテルが抜けないように、バルーンが付いているタイプの場合はバルーンを膨らませて子宮頸部に固定することもあります。
    固定に鉗子を使用する場合もあります。
  • 生理食塩水の注入と同時観察: カテーテルから生理食塩水を少しずつ注入しながら、経腟超音波プローブで子宮内腔をリアルタイムで観察します。
    モニターを見ながら、子宮内腔がどのように広がるか、内壁に異常がないかなどを確認します。
    注入量は数mlから数十ml程度で、子宮内腔が十分に広がる最小限の量が注入されます。
  • 様々な角度からの観察: 超音波プローブの向きを変えたり、患者さんに少し体位を変えてもらったりしながら、子宮内腔全体を様々な断面から観察します。
    これにより、病変の全体像や位置を正確に把握します。
  • カテーテルの抜去と終了: 観察が完了したら、カテーテルを抜去します。
    必要に応じて、検査後の注意点や内服薬(抗生剤など)の説明があります。

検査中は、痛みや違和感を感じることがありますが、深呼吸するなどリラックスを心がけると痛みが和らぐ場合があります。
検査時間は通常10分〜15分程度で終了します。

検査にかかる時間

ソノヒステログラフィー検査そのものにかかる時間は、一般的に10分から15分程度です。
この時間には、カテーテルの挿入、生理食塩水の注入、超音波による観察が含まれます。

ただし、これは検査室に入ってから出るまでの時間であり、クリニックに到着してから診察を受け、検査準備を行い、検査後に結果説明を聞いて帰宅するまでの全体の所要時間は、クリニックの混雑状況や検査前の診察、検査後の説明時間によって異なります。
一般的には、1時間から2時間程度をみておくと良いでしょう。

予約制のクリニックであれば待ち時間は比較的少ないかもしれませんが、検査前の問診や医師との相談、検査後の説明に十分な時間が取られることもあります。
特に、検査で異常が見つかった場合や、今後の治療方針について詳しく相談したい場合は、さらに時間がかかる可能性があります。

検査当日は、時間に余裕を持って来院することをお勧めします。
また、検査後に出血や軽い腹痛がある場合があるため、無理な予定は入れずに、自宅でゆっくり休めるように調整すると安心です。

痛みと合併症のリスク

ソノヒステログラフィー検査を受けるにあたって、多くの方が気になるのが「痛み」と「合併症のリスク」です。
検査の特性上、ある程度の痛みや不快感が生じる可能性がありますが、一般的には安全性の高い検査とされています。

ソノヒステログラフィーは痛い?痛みの程度

ソノヒステログラフィーの痛みの感じ方は、個人差が非常に大きいです。
全く痛みを感じない人もいれば、生理痛のような鈍い痛みを感じる人、強い痛みを感じる人もいます。

痛みの主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • カテーテル挿入時の刺激: 子宮頸部から子宮内腔へカテーテルを挿入する際に、刺激や圧迫感を感じることがあります。
    子宮頸管が狭い方や、過去に子宮頸部の手術を受けたことがある方は、より痛みを感じやすい場合があります。
  • 生理食塩水注入による子宮の拡張: 生理食塩水が子宮内腔に注入されると、子宮が一時的に引き伸ばされるように拡張されます。
    この拡張によって、生理痛に似たキューっとした鈍い痛みや、お腹の張りのような感覚が生じることがあります。
    生理食塩水の一部が卵管に流れ込むことで、下腹部や腰に痛みを感じることもあります。
  • 子宮頸部の固定(鉗子使用時): カテーテル挿入時に子宮頸部を鉗子で把持して固定する場合、その際に痛みを感じることがあります。

痛みを軽減するために、検査前に鎮痛剤(痛み止め)を服用することを推奨される場合があります。
検査前に医師に痛みが心配であることを伝えて相談してみましょう。
また、検査中はできるだけリラックスし、深呼吸をすることで、子宮の緊張が和らぎ、痛みが軽減されることもあります。

多くの場合は一過性の痛みであり、検査終了後には速やかに和らぎます。
しかし、痛みが強い場合や我慢できない場合は、遠慮なく医師や看護師に伝えましょう。

検査後の症状(出血・痛み)

ソノヒステログラフィー検査後、数時間から1~2日程度、以下のような症状が現れることがあります。
これらは一時的なものであり、多くの場合自然に改善します。

  • 少量の出血(不正出血): カテーテルを挿入する際に子宮頸部がわずかに傷ついたり、子宮内膜から少量の出血が見られたりすることがあります。
    通常はおりものに少量混じる程度か、薄いピンク色や茶色っぽい出血です。
    ナプキンなどで対応できる程度の量であることがほとんどです。
  • 軽い腹痛や下腹部違和感: 検査中に生理食塩水が注入されたことによる子宮の収縮や刺激により、生理痛のような軽い腹痛や下腹部に張ったような違和感が続くことがあります。
    多くは軽い痛みであり、鎮痛剤を使用するほどではない場合が多いです。

これらの症状は、検査後の正常な反応として起こりうるものです。
多くの場合、安静にしていれば数時間から1日で改善します。

ただし、以下のような症状が現れた場合は、感染などの合併症の可能性もあるため、速やかに検査を受けたクリニックに連絡し、医師の診察を受けるようにしてください。

  • 強い腹痛が続く、あるいは悪化する
  • 多量(生理のような量)の出血が続く
  • 発熱がある(37.5℃以上など)
  • おりものの量が増えたり、色がいつもと違ったり、嫌な臭いがしたりする

これらの症状に注意しながら、検査後は無理をせず安静に過ごすことが大切です。

起こりうる合併症と注意点

ソノヒステログラフィーは比較的安全な検査ですが、稀に合併症が起こる可能性もゼロではありません。
起こりうる主な合併症と、検査を受ける上での注意点は以下の通りです。

  • 感染症: 子宮内腔に細菌が入り込むことで、子宮内膜炎や骨盤内炎症性疾患を引き起こす可能性があります。
    特に、検査時にすでに膣炎や子宮頸管炎がある場合、過去に骨盤内感染症の既往がある場合などはリスクが高まります。
    感染予防のために、検査前に抗生剤が処方されたり、検査後に抗生剤が処方されたりすることがあります。
    検査後の強い腹痛や発熱、悪臭のあるおりものなどは感染の兆候であるため、すぐに医療機関に連絡が必要です。
  • 迷走神経反射: 痛みや緊張によって、血圧が低下し、めまい、冷や汗、吐き気などが起こることがあります。
    一時的なものですが、横になって安静にすることで回復します。
    痛みが苦手な方や不安が強い方は、事前に医師に相談しましょう。
  • アレルギー反応: 使用する生理食塩水に対してアレルギー反応を起こす可能性は極めて低いですが、万が一重篤なアレルギー反応が起きた場合は、迅速な処置が必要です。
    過去に薬剤などでアレルギーを起こしたことがある場合は、事前に医師に伝えてください。
  • 子宮穿孔: 非常に稀ですが、カテーテル挿入時に子宮の壁を傷つけてしまう可能性があります。
    経験豊富な医師が行う検査であれば、このリスクは非常に低いですが、強い痛みが続く場合などは注意が必要です。

検査を受ける上での注意点:

  • 妊娠の可能性がない時期に行う: 上述の通り、妊娠初期の胎児への影響を避けるため、生理直後など妊娠の可能性が低い時期に行います。
  • 性行為の制限: 検査後、感染予防のために数日間(多くは2~3日程度)は性行為を控えるように指導されることがあります。
  • タンポンの使用制限: 検査後に出血がある場合でも、感染予防のためにタンポンの使用は避けるよう指導されることがあります。
    ナプキンを使用してください。

これらの合併症のリスクや注意点について、検査前に医師から十分な説明を受け、不明な点があれば質問することが大切です。

費用と保険適用について

ソノヒステログラフィー検査にかかる費用は、保険が適用されるかどうか、また医療機関によって異なります。

ソノヒステログラフィーは保険適用される?

はい、ソノヒステログラフィーは、不妊の原因を調べるための検査として医師が必要と判断した場合に、健康保険が適用されます。

不妊症の診断や治療の一環として、子宮内腔の病変(ポリープ、筋腫、癒着など)の評価を目的として行う場合に保険診療として認められます。

保険適用となる場合、医療費の自己負担割合は、年齢や加入している健康保険の種類によって異なりますが、通常は3割負担となります。

自費診療の場合の目安費用

保険適用外でソノヒステログラフィー検査を受けるケースは、稀ですが全くないわけではありません(例:不妊症とは関連しない目的で行う場合など)。
しかし、不妊検査として一般的に行われる場合は保険適用されると考えて良いでしょう。

仮に自費診療となる場合の費用は、医療機関が自由に設定できるため、大きく異なります。
目安としては、1万円~3万円程度が考えられます。
これには、検査自体の費用だけでなく、検査前の診察料や、必要に応じて処方される薬剤(抗生剤など)の費用が含まれる場合と含まれない場合があります。

保険適用の場合の目安費用:

保険適用される場合、検査費用自体は数千円程度になることが多いです。
ただし、これに加えて診察料や薬剤費などがかかるため、合計で数千円から1万円程度となるのが一般的です(3割負担の場合)。

項目 保険適用(3割負担)目安費用 自費診療目安費用(参考)
ソノヒステログラフィー検査料 数千円 1万円~3万円
診察料 数百円~数千円 医療機関による
薬剤費(抗生剤など) 数百円~数千円 医療機関による
合計目安 数千円 ~ 1万円程度 1万円 ~ 3万円程度

*上記の金額はあくまで目安であり、使用する薬剤や検査内容の詳細、医療機関によって変動します。
正確な費用については、事前に医療機関に確認することをお勧めします。*

不妊治療専門のクリニックや総合病院など、医療機関の規模や設備によっても費用が異なる場合があります。
また、高額療養費制度の対象となるかは、他の診療内容や月の医療費合計によって変わってきます。

費用について不明な点がある場合は、検査を受ける前にクリニックの受付や担当医に遠慮なく確認しましょう。

検査を受ける最適なタイミング

ソノヒステログラフィー検査は、生理周期の中で適切なタイミングで行うことが非常に重要です。
これは、検査の精度を高めるためと、妊娠している可能性を避けるためです。

生理周期における検査時期

ソノヒステログラフィー検査を受けるのに最適な時期は、生理の出血が完全に終わった直後から排卵日までの間(卵胞期)です。

具体的には、生理開始日から数えて5日目から10日目頃に実施されることが多いです。

この時期が適している理由は以下の通りです。

  • 妊娠の可能性が低い: 生理直後であるため、この周期に妊娠している可能性はほぼありません。
    万が一妊娠している状態で検査を行うと、胎児に影響を与えるリスクがあるため、これを避けることが最も重要です。
  • 子宮内膜が薄い: 生理直後は子宮内膜が最も薄い時期です。
    子宮内膜が薄い方が、ポリープや粘膜下筋腫などの子宮内腔に突出する病変が、子宮内膜に隠れることなく明確に観察しやすくなります。
    子宮内膜が厚くなると、小さな病変が見えにくくなる可能性があります。
  • 出血の影響が少ない: 生理の出血が残っていると、生理食塩水と混ざって画像が見えにくくなる可能性があります。
    出血が終わった時期であれば、このような影響を最小限に抑えることができます。

逆に、排卵後や生理前、生理中は検査に適していません。
排卵後は子宮内膜が厚くなっているため病変が見えにくく、また妊娠している可能性も出てくるためです。
生理中は出血によって観察が困難になります。

検査の予約をする際には、必ず直近の生理開始日をクリニックに伝えて、検査の適切なタイミングを相談してください。
生理周期が不規則な場合は、事前に医師に相談し、検査日を決めるための準備(ホルモン検査など)が必要となる場合もあります。

他の検査との比較

ソノヒステログラフィーは子宮内腔の評価に有効な検査ですが、不妊検査には他にも様々な種類があります。
特に子宮に関連する検査としては、子宮鏡検査や卵管造影検査が挙げられます。
それぞれの検査には特徴があり、目的や得られる情報が異なります。

ソノヒステログラフィーと子宮鏡検査の違い

項目 ソノヒステログラフィー(SHG) 子宮鏡検査(HSC)
検査方法 生理食塩水を注入し、超音波で子宮内腔を観察 細いスコープ(カメラ)を子宮内腔に挿入し、直接観察
得られる情報 子宮内腔の形態、病変の有無・位置・大きさ(立体的な評価に優れる) 子宮内腔の色や表面の状態、小さな病変の形態や質感(視覚的な評価に優れる)
検出得意な病変 ポリープ、粘膜下筋腫、子宮内腔癒着、子宮奇形(中隔など) ポリープ、粘膜下筋腫、子宮内腔癒着、子宮内膜炎など(小さな病変や表面の変化に強い)
卵管の評価 卵管口の病変の有無を確認できるが、卵管の通過性は評価できない 卵管口を直接観察できるが、卵管の通過性は評価できない
侵襲性 比較的低い(カテーテル挿入、生理食塩水注入) ソノヒステログラフィーよりやや高い(スコープ挿入)
痛み 個人差が大きいが、生理痛様の痛みを感じることがある 個人差が大きいが、スコープ挿入時や生理食塩水注入時に痛みを感じることがある
検査時間 10~15分程度 5~15分程度
利点 比較的簡便、低コスト、放射線被曝がない 肉眼で直接観察できるため、病変の質的な情報が得やすい。
診断と同時に簡単な処置(例:生検)が可能な場合がある。
欠点 画像が不明瞭な場合がある、小さな病変や表面の変化は見えにくい場合がある スコープ挿入時の不快感や痛みがある、感染のリスクがある
適応 子宮内腔のスクリーニング検査、病変の位置・大きさ評価 詳細な病変の評価、子宮内膜炎の診断、診断的生検、治療(ポリープ切除など)

ソノヒステログラフィーは、子宮内腔全体の構造や病変の有無、位置などを手軽にスクリーニングするのに適しています。
一方、子宮鏡検査は、より詳細に病変の表面の状態や色などを直接観察したい場合や、小さな病変を見つけたい場合に有効です。
ソノヒステログラフィーで病変が疑われた場合に、確定診断や治療方針決定のために子宮鏡検査が追加で行われることもよくあります。

ソノヒステログラフィーと卵管造影検査の違い

項目 ソノヒステログラフィー(SHG) 卵管造影検査(HSG)
検査目的 子宮内腔の形態や病変の評価 卵管の通過性(詰まっていないか)の評価、子宮内腔の評価
造影剤 生理食塩水(超音波で見やすい液体) ヨード造影剤(レントゲンで見やすい液体)
使用機器 経腟超音波装置 レントゲン装置
得られる情報 子宮内腔の形状、病変の有無・位置・大きさ 子宮内腔の形状、卵管の形状・走行・通過性、卵管周囲の癒着の有無
放射線被曝 なし あり(ごく少量)
痛み 個人差が大きいが、生理痛様の痛みを感じることがある 個人差が大きいが、造影剤注入時に強い痛みを感じることがある場合がある
検査時間 10~15分程度 15~30分程度(撮影時間含む)
利点 簡便、低コスト、放射線被曝がない、生理食塩水で安全 子宮内腔と卵管の両方を評価できる、卵管の通過性診断に必須
欠点 卵管の通過性は評価できない、病変の質的な情報が得にくい 放射線被曝がある、ヨード造影剤によるアレルギーリスクがある、痛みが比較的強い場合がある
適応 不妊検査の初期、子宮内腔病変が疑われる場合 不妊検査の初期、卵管の通過性評価が必須な場合、子宮内腔評価も同時に行う場合

ソノヒステログラフィーは、子宮内腔の状態を詳しく調べることに特化した検査であり、卵管の通過性は分かりません。
一方、卵管造影検査は、子宮内腔の評価も一部行いますが、主に卵管が詰まっていないか、卵管の形に異常がないかを確認するための検査です。

不妊検査の基本的な流れとしては、経腟超音波、ホルモン検査、精液検査などと並行して、卵管の通過性を評価する卵管造影検査と、子宮内腔の状態を評価するソノヒステログラフィーや子宮鏡検査が行われることが一般的です。
どの検査から行うか、あるいは複数の検査を組み合わせるかは、患者さんの状況や医師の判断によって決められます。

ソノヒステログラフィーに関するよくある質問(Q&A)

ソノヒステログラフィーの手順は?

ソノヒステログラフィーの手順は、まず内診台で通常の経腟超音波検査を行い、子宮や卵巣の状態を確認します。
次に、子宮頸部を消毒し、細いカテーテルを子宮内腔へ挿入します。
カテーテルから生理食塩水をゆっくりと注入し、子宮内腔を広げた状態で、経腟超音波プローブを用いて子宮内腔の形状や内壁、病変の有無などを様々な角度から詳細に観察します。
観察後、カテーテルを抜いて終了です。
全体で10~15分程度の検査時間です。

ソノヒステログラフィーは保険適用ですか?

はい、ソノヒステログラフィーは、不妊の原因を調べるために医師が必要と判断した場合に、健康保険が適用される検査です。
自己負担割合は通常3割となり、診察料や薬剤費を含めて合計で数千円から1万円程度になることが多いです。

ソノヒステログラフィーは痛みますか?

痛みの感じ方には個人差が非常に大きいです。
全く痛みを感じない人もいれば、生理痛のような鈍い痛みや、カテーテル挿入時の刺激による痛みを感じる人もいます。
生理食塩水注入による子宮の拡張や、カテーテル固定のための鉗子使用などが痛みの原因となり得ます。
痛みが心配な場合は、事前に医師に相談し、鎮痛剤の服用などを検討してもらうことができます。
多くの場合は一過性の痛みで、検査後には速やかに改善します。

ヒステロファイバースコープ検査とはどんな検査ですか?

ヒステロファイバースコープ検査とは、一般的に「子宮鏡検査」のことを指します。
細くしなやかなファイバー(内視鏡)の先端にカメラが付いており、これを子宮頸部から子宮内腔に挿入し、モニター画面を見ながら子宮内腔を直接観察する検査です。
ソノヒステログラフィーが超音波で間接的に内腔を評価するのに対し、子宮鏡検査は内腔の様子を肉眼で直接観察できるのが特徴です。
病変の色や表面の状態、小さな変化などを詳しく確認できます。
診断だけでなく、小さなポリープの切除や組織の採取(生検)などの簡単な治療も同時に行える場合があります。

検査後、すぐ妊娠しても大丈夫ですか?

ソノヒステログラフィー検査自体が妊娠に悪影響を与えるという報告はほとんどありません。
生理食塩水は体にとって安全な液体であり、放射線被曝もありません。
しかし、検査後に少量の出血や軽い腹痛が続く場合や、感染のリスクを考慮して、検査を受けた周期のタイミング法や人工授精は避けるよう推奨されるクリニックもあります。
これは主に感染リスクをゼロに近づけるためと、検査による身体への負担を考慮してのことです。
体外受精の場合は、採卵や移植のスケジュールに合わせて検査時期が調整されます。
検査後の具体的な避妊期間や性行為の制限については、必ず検査を受けた医師の指示に従ってください。

検査で異常が見つかったらどうなりますか?

ソノヒステログラフィーで子宮内腔に異常(ポリープ、筋腫、癒着、形態異常など)が疑われた場合、その病変の種類、大きさ、位置、そして患者さんの症状や年齢、今後の治療方針に応じて、追加の検査や治療が検討されます。

  • 追加の検査: 疑われた病変をより詳しく調べるために、子宮鏡検査やMRIなどの画像検査が追加で行われることがあります。
  • 治療: 病変の種類によっては、不妊の原因となっている可能性が高いため、治療が推奨されます。
    例えば、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫、子宮内腔癒着などは、子宮鏡下手術によって切除や剥離が行われることが一般的です。
    子宮奇形の場合は、種類によって手術の適応や方法が異なります。
  • 経過観察: 小さな病変で、症状もなく、不妊の原因である可能性が低いと判断された場合は、すぐに治療せず経過観察となることもあります。

検査結果については、医師から詳しく説明があり、今後の治療方針について相談しながら決定していくことになります。

検査を受けられない場合はありますか?

以下のような場合は、ソノヒステログラフィー検査を受けることができない、あるいは慎重に行う必要がある場合があります。

  • 妊娠中の可能性が高い時期: 上述の通り、妊娠初期の胎児への影響を避けるため、生理直後など妊娠の可能性が低い時期に行います。
  • 現在、性器出血が多い: 生理中の多量の出血や、検査時点で不正出血が多い場合は、内腔の観察が困難なため、出血が治まってから行います。
  • 骨盤内炎症性疾患など、感染症にかかっている、あるいはその疑いがある: 検査によって感染を広げてしまうリスクがあるため、炎症が治まってから行います。
  • 重度の心疾患や呼吸器疾患など、検査を受けること自体が体に大きな負担となる場合: 患者さんの全身状態を考慮し、医師が検査の可否を判断します。
  • 使用するカテーテルや造影剤(生理食塩水)に既知のアレルギーがある場合: 極めて稀ですが、アレルギーのリスクを避けるため、医師に必ず伝えてください。

これらの条件に当てはまる可能性がある場合は、予約時や診察時に必ず医師に伝えるようにしましょう。

まとめ:ソノヒステログラフィー検査について

ソノヒステログラフィー(SHG)は、不妊検査において子宮内腔の状態を詳しく評価するための重要な検査です。
生理食塩水を子宮内腔に注入し、超音波を用いて観察することで、通常のエコー検査では見つけにくい子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫、子宮内腔癒着、子宮奇形などの病変を検出することができます。
これらの病変は、受精卵の着床を妨げたり、流産の原因となったりする可能性があるため、不妊の原因を特定する上で非常に有用な情報が得られます。

検査自体は10~15分程度と短時間で終わりますが、カテーテル挿入時や生理食塩水注入時に生理痛のような痛みや不快感を感じることがあります。
痛みの感じ方には個人差が大きいため、不安な場合は事前に医師に相談し、必要に応じて鎮痛剤を使用することも可能です。
検査後には少量の出血や軽い腹痛が見られることがありますが、多くは一時的なものです。
稀ではありますが、感染症などの合併症のリスクもゼロではないため、検査後の体調には注意し、強い痛みや発熱などの症状がある場合は速やかに医療機関に連絡することが大切です。

ソノヒステログラフィーは、不妊検査として医師が必要と判断した場合に健康保険が適用されます。
費用は保険適用で数千円から1万円程度が目安となります。
検査は、妊娠の可能性がなく子宮内膜が薄い時期、具体的には生理終了直後から排卵日までの間に行うのが最適です。

子宮内腔を評価する検査には、他に子宮鏡検査や、子宮と卵管の両方を評価する卵管造影検査などがあります。
ソノヒステログラフィーは超音波を使用し比較的簡便に行えるスクリーニング検査として、子宮鏡検査は内腔を直接観察し詳細な診断や簡単な治療も可能な検査として、卵管造影検査は卵管の通過性を確認する検査として、それぞれ特徴と役割が異なります。
どの検査が適切かは、個々の患者さんの状況や医師の判断によって決定されます。

ソノヒステログラフィーで子宮内腔の異常が見つかった場合、その後の治療方針について医師とよく相談することが重要です。
この検査によって、不妊の原因が明らかになり、適切な治療へと進むための道が開けることがあります。
検査に対して不安な点や疑問点があれば、遠慮なく医療機関に相談し、納得した上で検査に臨むようにしてください。

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