シンフェーズは、国内で広く処方されている低用量ピルの一つです。主に避妊を目的として使用されますが、生理痛や月経前症候群(PMS)の緩和、肌荒れの改善といった副効用も期待できます。複数の種類のピルが存在する中で、シンフェーズは「3相性ピル」と呼ばれるグループに属し、ホルモン配合量が周期の中で変化する特徴を持っています。しかし、シンフェーズT28は2025年1月で販売が中止されることが発表されており、現在服用されている方やこれから服用を検討されている方にとっては、今後の情報や代替薬について知っておくことが重要です。この記事では、シンフェーズの効果や副作用、正しい飲み方、そして販売中止に関する情報まで、シンフェーズピルについての疑問を解決できるよう、分かりやすく解説します。
シンフェーズは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの2種類が配合された「配合剤」と呼ばれる低用量ピルの一つです。特に、シンフェーズは「3相性ピル」に分類されます。
3相性ピルの最大の特徴は、1シート28錠(多くの場合は実薬21錠と偽薬7錠)の中で、ホルモンであるレボノルゲストレル(プロゲステロンの一種)の配合量が3段階に変化することです。自然なホルモンバランスの変動に近いパターンを再現することで、周期の途中で起こりやすい不正出血を減らすことを目指して設計されています。
具体的には、シートの飲み始め(前半)、中間、終わり(後半)でレボノルゲストレル量が異なり、シートを進めるごとにホルモン量が増加していくのが一般的です。これにより、体のリズムに合わせたホルモン補充が可能となり、より自然な周期を保ちやすくなると考えられています。
シンフェーズT28の場合、実薬21錠のうち、7錠、5錠、9錠の順でホルモン配合量が変化し、残りの7錠は偽薬(プラセボ錠)となっています。このホルモン量の段階的な変化が、単相性ピルとは異なる特徴であり、体への負担を軽減しながら避妊効果を得ることを目的としています。
シンフェーズの主な効果と避妊率
シンフェーズは、避妊目的で開発された薬剤ですが、女性ホルモンのバランスを調整することで、様々な効果をもたらします。
避妊効果について(避妊率、いつから)
シンフェーズの最も主要な効果は避妊です。配合されている2種類の女性ホルモンが、主に以下の3つのメカニズムによって妊娠を防ぎます。
- 排卵の抑制: 脳下垂体に作用し、卵胞の成熟と排卵を促すホルモン(ゴナドトロピン)の分泌を抑制します。これにより、卵子が卵巣から放出されなくなり、妊娠が成立しなくなります。
- 子宮内膜の変化: 子宮内膜を受精卵が着床しにくい状態に変化させます。内膜が十分に厚くならないため、たとえ排卵があったとしても着床が困難になります。
- 頸管粘液の変化: 子宮の入り口にある頸管の粘液を粘稠(ねんちょう)にし、精子が子宮内へ侵入しにくくします。
これらの効果が複合的に働くことで、非常に高い避妊効果が得られます。正しい方法でシンフェーズを継続して服用した場合の年間避妊失敗率(パール指数)は0.3%と報告されており、これは100人の女性が1年間ピルを正しく服用した場合に、約0.3人しか妊娠しないことを意味します。つまり、避妊率は約99.7%と極めて高いレベルです。
避妊効果がいつから得られるかについては、飲み始めのタイミングによって異なります。通常は生理が始まった日から服用を開始しますが、この場合は服用を開始したその日から避妊効果が期待できます。生理開始日以外から服用を開始した場合は、服用開始から最低でも7日間は他の避妊法(コンドームなど)を併用することが推奨されます。これは、ピルの成分が体内で十分に作用し、確実に排卵が抑制されるまでに時間がかかるためです。
生理痛やPMSへの効果
シンフェーズは、避妊効果以外にも多くの副効用が期待できます。その一つが、生理痛(月経困難症)や月経前症候群(PMS)の症状緩和です。
生理痛の主な原因の一つは、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンという物質です。ピルを服用すると、子宮内膜の増殖が抑えられ、それに伴ってプロスタグランジンの産生量も減少します。これにより、子宮の収縮が抑えられ、生理痛が軽くなる効果が期待できます。出血量自体も減少することが多く、貧血の改善にもつながる場合があります。
PMSは、排卵後の黄体期に女性ホルモンが変動することで起こると考えられています。イライラ、気分の落ち込み、むくみ、乳房の張りなど、様々な身体的・精神的な症状が現れます。シンフェーズを服用することで排卵が抑制され、ホルモンレベルが比較的安定するため、PMSの症状が軽減されることが期待できます。ホルモン変動による心身の不調に悩まされている方にとって、シンフェーズは有効な選択肢となり得ます。
その他効果(ニキビ等)
シンフェーズを含む低用量ピルには、ニキビ(ざ瘡)や肌荒れの改善効果も期待できます。男性ホルモンは皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を増やしてニキビの原因となりますが、ピルに含まれる女性ホルモンが男性ホルモンの働きを抑えることで、皮脂の分泌が抑制され、ニキビができにくくなる効果があります。特に、プロゲステロンの一種であるレボノルゲストレルは男性ホルモンの働きを抑える作用を持つため、ニキビ改善効果が期待できます。
また、シンフェーズは、子宮内膜症の進行を抑制したり、月経困難症の治療薬としても処方されることがあります。これらの疾患は、子宮内膜が子宮以外の場所にできることで激しい生理痛や不妊を引き起こすことがありますが、ピルによって生理をコントロールし、内膜の増殖を抑えることで症状の緩和が図れます。
その他、シンフェーズの服用により、生理周期が規則的になり、いつ生理が来るか予測しやすくなるというメリットもあります。これは、旅行などの予定を立てる上で非常に便利です。
シンフェーズの副作用(眠気, 不正出血など)
シンフェーズを含む低用量ピルは、適切に使用すれば安全性の高い薬剤ですが、全く副作用がないわけではありません。服用を開始したばかりの頃や、体調の変化によって一時的に様々な症状が現れることがあります。
よくある副作用
シンフェーズの服用で比較的よく見られる副作用には以下のようなものがあります。
- 吐き気、嘔吐
- 頭痛
- 乳房の張りや痛み
- むくみ
- 不正出血(月経以外の出血)
- 腹痛
- 眠気
- 気分の変化(イライラ、落ち込みなど)
- 体重の変化(増加または減少)
これらの症状は、体がホルモンバランスの変化に慣れるまでの数周期で改善することがほとんどです。多くの場合、軽度であり、生活に支障をきたすほどではありません。症状が続く場合や、気になる場合は医師に相談しましょう。
眠気について
低用量ピルに含まれるプロゲステロンには、眠気を誘発する作用があると言われています。シンフェーズを飲み始めてから眠気を感じるようになったという方もいらっしゃいます。特に服用初期や、夜に服用している場合に感じやすいかもしれません。
もし眠気が日常生活に影響を与えるほど強い場合は、医師に相談してみましょう。服用時間を変更する(例:夜寝る前に飲む)、または他の種類のピルへの変更を検討することで症状が改善することがあります。ただし、自己判断で服用を中止したり、服用時間を大きくずらしたりすることは避けてください。
不正出血について
不正出血は、シンフェーズの服用中によく見られる副作用の一つです。特に服用開始から最初の数周期は、体がピルによるホルモン変化に慣れていないため、生理予定日以外に出血(不正出血、点状出血、または生理のような出血)が見られることがあります。
シンフェーズのような3相性ピルは、ホルモン量の段階的な変化によって不正出血を減らすように設計されていますが、それでも体質や体の状態によっては不正出血が起こる可能性があります。
不正出血が少量で、かつ短期間であれば、ほとんどの場合は心配ありません。数周期服用を続けるうちに落ち着くことが一般的です。しかし、以下のような場合は注意が必要です。
- 出血量が多い場合
- 出血が長期間続く場合(例えば、3周期以上続く場合)
- 強い腹痛などを伴う場合
- 飲み忘れがあった後に多量の出血がある場合
これらの場合は、ピルの効果が十分に得られていない可能性や、他の原因による出血の可能性も考えられるため、必ず医師の診察を受けましょう。医師は問診や内診などを行い、原因を特定し適切な対処法をアドバイスしてくれます。自己判断でピルの服用をやめたり、量を調整したりしないでください。
重大な副作用と初期症状
低用量ピルの服用で最も注意すべき重大な副作用は、血栓症(血の塊が血管を詰まらせる病気)です。頻度は非常に低いですが、命に関わる可能性のある副作用です。血栓症のリスクは、ピルを服用していない女性に比べてわずかに上昇することが知られています。特に、喫煙者、肥満、高血圧、糖尿病、家族に血栓症の既往がある方などはリスクが高まります。
血栓症の初期症状には、以下のようなものがあります。これらの症状が現れた場合は、すぐにピルの服用を中止し、救急医療機関を受診してください。
- A:Abdominal pain(激しい腹痛)
- C:Chest pain(激しい胸痛、息切れ)
- H:Headache(激しい頭痛)
- E:Eye problems(見えにくい、視野が狭くなる、失明)
- S:Severe leg pain(ふくらはぎの痛み、腫れ、むくみ)
これらは、”ACHES(エイチーズ)”と呼ばれる重要な初期症状です。この他にも、呂律が回らない、体の片側に力が入らないなどの症状が現れることもあります。これらの症状に気づいたら、夜間や休日であってもためらわずに医療機関を受診することが極めて重要です。早期に発見し適切な治療を受ければ、重篤な状態になるのを防ぐことができます。
シンフェーズの正しい飲み方・飲み忘れ対処法
シンフェーズの効果を最大限に引き出し、安全に服用するためには、正しい飲み方を守ることが非常に重要です。特に飲み忘れは、避妊効果を低下させたり、不正出血の原因となったりするため注意が必要です。
服用のタイミングと継続
シンフェーズT28は、1シートに28錠入っています。通常は生理が始まった日からシートの1番目の錠剤(ホルモン量が一番少ない実薬)を飲み始め、毎日決められた時間に1錠ずつ順番通りに服用します。28錠すべてを飲み終えたら、翌日から新しいシートの1番目の錠剤を飲み始めます。偽薬期間(多くの場合は最後の7錠)中には消退出血(生理に似た出血)が起こりますが、出血がなくても新しいシートを飲み始める必要があります。
毎日同じ時間に服用することが推奨されます。これは、体内のホルモン濃度を一定に保ち、効果を安定させるためです。飲む時間は朝でも夜でも構いませんが、ご自身のライフスタイルに合わせて飲み忘れにくい時間帯を選ぶと良いでしょう。目覚まし時計やスマートフォンのリマインダー機能などを活用するのも効果的です。
飲み忘れた場合の対応
飲み忘れは、シンフェーズの効果を低下させる最も一般的な原因です。飲み忘れた場合の対応は、飲み忘れた錠剤の数やシートのどの時期に飲み忘れたかによって異なります。
一般的に、1錠の飲み忘れであれば、気づいた時点で直ちに飲み忘れの錠剤を服用し、その日も通常の時間にその日の錠剤を服用します。つまり、1日に2錠飲むことになります。その後は通常通り服用を続ければ、避妊効果は維持されると考えられています。
2錠以上飲み忘れた場合は、避妊効果が大きく低下する可能性があります。この場合も、気づいた時点で直ちに飲み忘れの錠剤のうち前日のものを服用し、その日も通常の時間にその日の錠剤を服用します(最大で1日に2錠)。その後はシートの指示通り服用を続けますが、飲み忘れがあった周期では、その後の7日間は性交渉を避けるか、コンドームなどの他の避妊法を必ず併用する必要があります。また、もし飲み忘れがあった後の無防備な性交渉があった場合は、緊急避妊も検討が必要です。
飲み忘れが複数回あった場合や、シートの後半(特に偽薬の直前)で飲み忘れた場合は、対応が複雑になることがあります。シートを最後まで飲まずに新しいシートを早めに開始する必要がある場合などもあります。詳細は、製品に添付されている説明書や、日本産婦人科学会などの信頼できる医療機関が提供している低用量ピル服用ガイドラインを確認するか、必ず処方を受けた医師や薬剤師に相談してください。自己判断で対応を誤ると、意図しない妊娠につながるリスクが高まります。
飲み始めについて
シンフェーズを初めて服用する場合、最も一般的な飲み始めのタイミングは生理が始まった日(月経第1日目)です。この日から服用を開始した場合、その日から避妊効果が期待できます。
生理が始まってから2日目~5日目に服用を開始することも可能ですが、この場合は服用開始から最低でも7日間は他の避妊法を併用する必要があります。
生理周期の途中で服用を開始する場合は、妊娠していないことを確認した上で、次の生理が来るまでは必ず他の避妊法を併用してください。
初めてピルを服用する際は、医師から詳しい飲み方や注意点について説明を受け、不明な点はその場で質問することが大切です。
シンフェーズと他の低用量ピルを比較(トリキュラー,アンジュ等)
低用量ピルにはシンフェーズ以外にも様々な種類があり、それぞれホルモンの種類や配合量が異なります。特に3相性ピルには、シンフェーズの他にトリキュラーやアンジュなどがあります。
主な3相性ピルとの比較
シンフェーズ、トリキュラー、アンジュは、いずれもレボノルゲストレルをプロゲステロン成分として含む3相性ピルです。ホルモンの配合量が周期の中で3段階に変化するという基本的な特徴は共通していますが、それぞれの錠剤に含まれるレボノルゲストロゲンの具体的な配合量や、シート内での色の区別などが異なります。
ピル名 | ホルモン配合量の変化(エストロゲン量/レボノルゲストレル量) | 特徴 |
---|---|---|
シンフェーズ | 段階的に増加 | ホルモン量が3段階に変化し、不正出血を抑制する設計。 |
トリキュラー | 段階的に増加 | シンフェーズと同様にホルモン量が3段階に変化。世界的に広く使用されている3相性ピル。 |
アンジュ | 段階的に増加 | トリキュラーとほぼ同じホルモンパターンを持つ3相性ピル。 |
これらの3相性ピルは、ホルモン変動が自然な周期に近いことから、周期の安定化や不正出血の軽減を目指して使用されます。ただし、どのピルが合うかは個人差が大きく、体質や副作用の出方によって最適なピルは異なります。
2相性・1相性ピルとの違い
低用量ピルは、ホルモン配合量の変動パターンによって主に以下の3種類に分けられます。
- 1相性ピル: 実薬すべての錠剤で、ホルモンの種類と配合量が一定です。ホルモンバランスが一定に保たれるため、周期が安定しやすく、休薬期間を調整して生理の時期を移動しやすいという特徴があります。不正出血は3相性ピルに比べてやや起こりやすい傾向があると言われることもありますが、これも個人差が大きいです。
- 2相性ピル: 実薬の途中で、ホルモン量が2段階に変化します。現在、国内ではあまり普及していません。
- 3相性ピル(シンフェーズ, トリキュラー, アンジュなど): 実薬の途中で、ホルモン量が3段階に変化します。自然なホルモン変動に近いパターンを再現することで、周期の安定化や不正出血の軽減を目指します。
どのタイプのピルが適しているかは、服用目的(避妊だけでなく、生理痛やPMS改善など)、過去のピル服用経験、体質、既往歴などを考慮して医師が判断します。シンフェーズは3相性ピルとして、ホルモン変動による体調の変化を気にされる方などに処方されることがありました。
シンフェーズT28の販売中止について
シンフェーズT28は、残念ながら販売が中止されることが決定しています。現在服用されている方や、これから服用を検討されていた方にとっては、非常に重要な情報です。
販売終了時期と背景
シンフェーズT28は、2025年1月をもって販売が終了される予定です。これは、製造販売元であるファイザー株式会社の決定によるものです。販売中止の背景には、製品の供給体制の見直しや、グローバルでの戦略的な判断など、様々な要因が考えられます。必ずしも製品自体に安全性や有効性の問題があったわけではありませんが、日本の市場から姿を消すことになります。
販売中止の時期が具体的に定められているため、現在シンフェーズT28を服用している方は、計画的に代替薬への切り替えを進める必要があります。
現在服用中の人はどうすれば良い?
現在シンフェーズT28を服用している方は、まず主治医に相談することが最も重要です。販売中止の時期が近づくにつれて、在庫状況によっては継続して処方を受けることが難しくなる可能性があります。
医師は、現在の体の状態やピルの服用状況、服用目的などを踏まえ、シンフェーズに代わる最適なピルについて一緒に検討してくれます。服用目的が避妊のみなのか、それとも生理痛やPMSの改善なども重視したいのかによって、代替薬の選択肢は変わってきます。
多くの場合は、他の3相性ピル(トリキュラーやアンジュなど)や、ホルモン量が一定の1相性ピルの中から、体質や期待する効果に合ったものが提案されるでしょう。医師の指示に従って、適切な時期に代替薬へスムーズに切り替えることが大切です。焦らず、早めに医師に相談することをおすすめします。
代替となるピル候補
シンフェーズT28の代替となるピルとしては、以下のようなものが考えられます。
- 他の3相性ピル:
- トリキュラーT28、アンジュ28: これらはシンフェーズと同様に3相性ピルであり、ホルモンの種類も同じレボノルゲストレルです。配合パターンも似ているため、シンフェーズからの切り替え候補としてよく挙げられます。ただし、具体的なホルモン量はわずかに異なるため、体質によっては合う合わないがあります。
- 1相性ピル:
- ラベルフィーユ28、ジェミーナ配合錠、ルナベル配合錠LD/ULD、フリウェル配合錠LD/ULDなど: これらの1相性ピルは、シート中のホルモン量が一定です。レボノルゲストレルを含むもの(ラベルフィーユ、ジェミーナなど)や、別の種類のプロゲステロンを含むものがあります。生理痛やPMSの治療目的でシンフェーズを服用していた場合は、治療効果が期待できる低用量ピルや超低用量ピルが代替候補となることもあります。
どのピルが代替薬として最適かは、個々の症状、体質、既往歴などを総合的に考慮して医師が判断します。自己判断でピルを変更するのではなく、必ず医師に相談し、処方を受けてください。医師は、それぞれのピルの特徴や期待できる効果、副作用について詳しく説明してくれるでしょう。
シンフェーズの処方を受けるには
シンフェーズを含む低用量ピルは、医師の処方が必要な医療用医薬品です。薬局やドラッグストアなどで市販されているものではありません。購入するためには、必ず医師の診察を受ける必要があります。
病院・クリニックでの処方
シンフェーズの処方を受ける最も一般的な方法は、婦人科などの医療機関を受診することです。医師は、服用を希望する理由、既往歴(血栓症、高血圧、糖尿病など)、アレルギーの有無、喫煙習慣、現在の体調などを詳しく問診します。必要に応じて、血圧測定や内診、血液検査などが行われる場合もあります。これらの診察を通して、ピルの服用が可能かどうか、そしてどの種類のピルが最適かを医師が判断し、処方箋を発行します。処方箋を持って調剤薬局で薬を受け取る、または院内処方であればその場で薬を受け取ることができます。
対面診療のメリットは、医師に直接会ってじっくり相談できることや、内診などの検査が必要な場合にその場で受けられることです。初めてピルを服用する方や、持病がある方などは、対面診療の方が安心できるかもしれません。
オンライン診療の利用
近年では、低用量ピルの処方をオンライン診療で行うクリニックも増えています。オンライン診療は、自宅や職場など、インターネット環境があればどこからでも診察を受けられるというメリットがあります。通院の手間や時間を省けるため、忙しい方や近くに医療機関がない方にとって便利な選択肢です。
オンライン診療の流れはクリニックによって異なりますが、一般的には、ウェブサイトやアプリから予約を行い、問診票を事前にオンラインで入力します。予約した時間になったら、スマートフォンやパソコンのビデオ通話機能を使って医師の診察を受けます。診察でピルが処方可能と判断されれば、決済後に自宅など指定の場所にピルが配送されます。
オンライン診療でも、医師による問診や健康状態の確認は必ず行われます。ただし、対面診療のような直接的な身体診察(内診など)は行われないため、オンライン診療が可能かどうかは、個人の健康状態やクリニックの方針によって異なります。初めてピルを服用する場合や、基礎疾患がある場合は、オンライン診療が可能か事前に確認するか、対面診療の方が適している場合もあります。
オンライン診療を利用する際は、信頼できる医療機関を選ぶことが重要です。価格だけでなく、診察体制や配送方法、サポート体制なども確認しましょう。
服用上の注意点
シンフェーズを安全に服用するためには、いくつかの重要な注意点があります。特に、併用してはいけない薬や、そもそも服用できない体質・病気がある場合は、思わぬ健康被害につながる可能性があります。
併用禁忌薬
シンフェーズに含まれるホルモンの代謝に影響を与える薬剤や、ピルが他の薬剤の効果に影響を与える場合があるため、飲み合わせに注意が必要です。特に以下の薬剤との併用は、シンフェーズの効果を弱めたり、あるいは増強させたり、重篤な副作用を引き起こす可能性があるため、併用禁忌または慎重な併用が必要とされる場合があります。
- てんかん治療薬(例:フェニトイン、バルビツール酸系薬剤、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、トピラマート): ピルのホルモン成分を分解し、効果を弱める可能性があります。
- HIV治療薬(例:リトナビル、ネルフィナビルなど、一部のプロテアーゼ阻害剤や非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤): ピルのホルモン成分の代謝に影響し、効果が変動する可能性があります。
- 一部の抗生物質・抗真菌薬(例:リファンピシン、グリセオフルビン): ピルのホルモン成分を分解し、効果を弱める可能性があります。
- セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品: ピルのホルモン成分の代謝を促進し、効果を弱める可能性があります。健康食品やサプリメントにも注意が必要です。
- 血糖降下薬: ピルが血糖値に影響を与える可能性があり、血糖降下薬の効果調節が必要になる場合があります。
これらの薬剤以外にも、シンフェーズの服用中に新しく薬を使い始める場合や、健康食品、サプリメントなどを摂取する場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。お薬手帳などを活用し、現在服用中の全ての薬を正確に伝えることが大切です。
服用できない人(禁忌)
以下に該当する方は、シンフェーズを服用してはいけません。これらの状態がある場合にシンフェーズを服用すると、重篤な健康被害、特に血栓症のリスクが高まる可能性があります。
- 現在または過去に血栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳血栓症、冠動脈血栓症など)になったことがある方: 血栓症を再発させるリスクが極めて高くなります。
- 血栓症を起こしやすい体質の方: 抗リン脂質抗体症候群、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症など、血栓症リスクを高める先天性または後天性の因子を持っている方。
- 血栓症の既往はないが、リスクが高い状態の方:
- 長時間安静にしている状態(例:術後、長期臥床)
- 重度の高血圧症
- 糖尿病性腎症または糖尿病網膜症を伴う糖尿病
- 重度の脂質代謝異常症
- 心臓弁膜症、心房細動などの心疾患
- 片頭痛で前兆がある方
- 40歳以上の方(特に喫煙者)
- 喫煙者(特に35歳以上)
- 診断が確定していない不正性器出血がある方: 出血の原因(悪性腫瘍など)を特定する前にピルを服用すると、診断が遅れる可能性があります。
- 乳がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、卵巣がんなどのエストロゲン依存性悪性腫瘍、またはその疑いがある方: ピルに含まれるホルモンが腫瘍の進行を促進する可能性があります。
- 重度の肝機能障害がある方: ピルに含まれるホルモンが肝臓で代謝されるため、肝臓に負担がかかる可能性があります。
- 妊娠中または授乳中の方: 妊娠中にピルを服用すると胎児に影響を与える可能性があり、授乳中に服用すると母乳の量や質に影響を与える可能性があります。
- シンフェーズに含まれる成分にアレルギーの既往がある方:
これらの禁忌事項に当てはまるかどうかは、ご自身の判断だけでなく、必ず医師の診断が必要です。問診の際には、ご自身の健康状態や既往歴、家族の病歴などを正確に医師に伝えましょう。
まとめ:シンフェーズについてよくある質問
シンフェーズは、避妊効果だけでなく、生理痛やPMSの緩和、ニキビ改善など様々な副効用が期待できる3相性低用量ピルです。正しく服用することで非常に高い避妊効果が得られますが、飲み忘れや特定の薬剤との併用には注意が必要です。また、シンフェーズT28は2025年1月に販売中止が予定されており、現在服用中の方は医師に相談し、代替薬への切り替えを検討する必要があります。
最後に、シンフェーズについてよくある質問をまとめました。
Q1:シンフェーズを飲むと太りますか?
A1:ピル服用開始後に体重が増加したと感じる方もいらっしゃいますが、ピル自体に直接的に脂肪を蓄積させる作用があるわけではありません。むくみによる一時的な体重増加や、ホルモンバランスの変化による食欲の変化などが考えられます。多くの場合は一時的で、長期的な服用による大幅な体重増加は稀です。気になる場合は医師に相談しましょう。
Q2:シンフェーズを飲むと生理がなくなりますか?
A2:シンフェーズのような低用量ピルを服用すると、偽薬期間中にホルモンが補充されないことで消退出血と呼ばれる生理に似た出血が起こります。これは自然な生理とは異なり、ピルによってコントロールされた出血です。通常は毎月決まった時期に出血がありますが、まれに全く出血がない場合や、不正出血が見られることもあります。数カ月ピルを服用しても全く出血がない場合は、医師に相談して妊娠の可能性がないか確認してもらうと良いでしょう。
Q3:シンフェーズの効果が出るまでどれくらいかかりますか?
A3:避妊効果については、生理が始まった日から服用を開始した場合はその日から期待できます。生理開始日以外から飲み始めた場合は、服用開始から7日間は他の避妊法を併用する必要があります。生理痛やPMS、ニキビなどの副効用については、効果を実感できるまでに数周期かかることが一般的です。体にピルが慣れてホルモンバランスが安定してくるまで、個人差はありますが、通常は2~3周期程度で効果を実感し始めると言われています。
Q4:シンフェーズを長期服用しても大丈夫ですか?
A4:低用量ピルは、適切に使用すれば長期的に服用しても安全性は高いとされています。むしろ、長期的な服用によって卵巣がんや子宮体がんのリスクを低下させるという報告もあります。ただし、血栓症などのリスクはゼロではないため、定期的に医師の診察を受け、健康状態を確認することが重要です。特に喫煙者や特定の既往歴がある方は、服用継続について医師とよく相談しましょう。
Q5:シンフェーズの値段はどれくらいですか?
A5:シンフェーズは保険適用される場合とされない場合があります。避妊目的の場合は原則として自費診療となり、クリニックによって価格は異なりますが、1シートあたり2,000円~3,000円程度が目安となることが多いです。月経困難症や子宮内膜症などの病気の治療目的で処方される場合は保険適用となり、費用負担は少なくなります。また、後発品(ジェネリック医薬品)がある場合は、先発品よりも安価になる傾向があります。正確な費用については、受診を検討している医療機関に直接お問い合わせください。
免責事項: 本記事は、シンフェーズに関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個人の健康状態や状況に対する医学的なアドバイスを提供するものではありません。シンフェーズの服用にあたっては、必ず医師の診察を受け、専門家のアドバイスに従ってください。記事内の情報は、執筆時点のものであり、医療情報は常に更新される可能性があります。本記事の情報に基づいて発生したいかなる結果についても、当方は一切の責任を負いかねます。