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生理?不正出血?違いが分からない女性へ|見分け方と危険なサイン

多くの女性が経験する「出血」。生理なのか、それとも不正出血なのか、判断に迷うことはありませんか?
普段の生理と少し違うかもと感じる出血は、気になるものですよね。
不正出血は、ホルモンバランスの乱れによる一時的なものから、深刻な病気が隠れている場合まで、原因は多岐にわたります。
自己判断で様子を見てしまうと、病気の発見が遅れてしまう可能性もあります。
この記事では、不正出血と生理の根本的な違いから、考えられる様々な原因、そして「これって不正出血?」と思った時に知っておきたい受診の目安や婦人科での検査について詳しく解説します。
不安な出血を放置せず、ご自身の体と向き合うための参考にしてください。

不正出血と生理の違い

女性にとって定期的に経験する生理(月経)は、体の自然なサイクルの一部です。一方で、生理期間ではないのに起こる出血は「不正出血」と呼ばれます。
この二つは、見た目では似ていることがありますが、その発生メカニズムや原因は全く異なります。

生理は、妊娠に至らなかった場合に、厚くなった子宮内膜が剥がれ落ち、血液とともに体外に排出される現象です。これは女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの周期的な変動によって厳密にコントロールされています。
通常、約25日から38日の周期で起こり、出血期間は3日から7日程度です。

一方、不正出血は、この正常な生理周期から外れて起こるあらゆる出血を指します。
生理の周期や期間とは無関係に発生するため、いつ起こるか予測がつきにくいのが特徴です。
不正出血の原因は多岐にわたり、ホルモンバランスの一時的な乱れのような心配の少ないものから、子宮や卵巣の病気、中にはがんのような重篤な疾患が隠れている場合まであります。

根本的な違いは、ホルモン周期に伴う子宮内膜の生理的な剥離によるものか、それ以外の様々な要因によるものか、という点にあります。
生理は「計画的な出血」であり、不正出血は「計画外の出血」と捉えることができます。

目次

不正出血とは?生理との根本的な違い

改めて、不正出血の定義を確認しましょう。
不正出血とは、生理期間ではない時期に、性器(主に子宮や腟)から起こるすべての出血を指します。
経血のように量が多い場合もあれば、ごく少量の茶色っぽい出血が下着に付着する程度の場合もあります。
出血の色も鮮血から茶色、ピンクなど様々です。

生理は、脳の視床下部、下垂体、そして卵巣という連携によって分泌される女性ホルモンの働きで成り立っています。
まず、卵巣から分泌されるエストロゲンが増加し、子宮内膜が厚くなります。
排卵後にはプロゲステロンが分泌され、子宮内膜をさらに成熟させて妊娠に備えます。
妊娠が成立しないと、これらのホルモンが急激に減少し、その結果として子宮内膜が剥がれて生理が起こるのです。
この一連のサイクルは、正常な場合はほぼ一定の周期で繰り返されます。

これに対し、不正出血はこのようなホルモンの周期的な変動とは異なる原因によって引き起こされます。

生理と不正出血の根本的な違いをまとめると、以下のようになります。

項目 生理(月経) 不正出血
発生時期 ほぼ一定の周期(約25~38日)で起こる 生理期間以外のいつでも起こりうる
発生原因 ホルモン周期に伴う子宮内膜の生理的な剥離 ホルモンバランスの乱れ、子宮・卵巣・腟の病気、その他の要因など多岐にわたる
周期性 周期的なパターンがある 周期性がない、突発的に起こることが多い
出血源 主に子宮内膜 子宮内膜、子宮頸部、腟、外陰部など様々
生理的か 健康な女性に自然に起こる生理的な現象 原因によっては病気のサインである可能性がある

不正出血は、出血源が子宮内膜だけでなく、子宮頸部(子宮の入り口)、腟、さらには外陰部からの出血である可能性も含まれます。
例えば、腟炎による炎症や外傷、子宮頸管ポリープ、子宮頸部びらんなどからも出血することがあります。

不正出血が起こった場合、まず「なぜ生理期間ではないのに出血しているのか?」という原因を探ることが重要です。

見た目だけでの判断は難しい

「出血の色や量、期間で、これが生理なのか不正出血なのか、あるいは不正出血だとしても原因が何かを自分で見分けられるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、残念ながら見た目だけで正確に判断することは非常に難しいのが現実です。

例えば、排卵期出血や着床出血のように、不正出血であっても量が少なく、期間も1~2日で終わる場合があります。
これは、生理の始まりかけや終わりかけの出血と見分けがつきにくいことがあります。
また、ホルモンバランスの大きな乱れが原因で、生理ではないのに、まるで生理のように大量の出血が数日続く「無排卵性出血」と呼ばれるタイプの不正出血もあります。
この場合、本人は「生理が来た」と思っていても、実際は排卵を伴わない不正出血なのです。

逆に、ごく少量の茶色い出血が生理予定日頃に始まり、「今回は量が少ない生理だな」と思っていたら、それが着床出血だったというケースや、数日後に本格的な生理が始まるサインだったというケースもあります。

出血の色についても、鮮血、茶色、ピンク、黒っぽいなど様々ですが、これも原因によって一律に決まるわけではありません。
出血してから時間が経つと酸化して茶色っぽくなるなど、出血自体の古さによっても色は変わります。

見た目だけで判断することの難しさは、以下のようなケースに代表されます。

  • 少量・短期間の出血: 排卵期出血、着床出血、子宮頸管ポリープ、がんの初期など、原因が多岐にわたり、生理の始まりかけや終わりかけと区別がつきにくい。
  • 量が多い・長期間の出血: ホルモンバランスの大きな乱れ(無排卵性出血)、子宮筋腫、子宮体がんなど、重篤な原因の可能性も含むが、見た目は生理と区別がつきにくい。
  • 性交後の出血: 子宮頸部びらん、子宮頸管ポリープ、子宮頸がんなど、特定の部位からの出血を示唆することがあるが、炎症や軽い傷でも起こりうるため、見た目だけでは原因を特定できない。

このように、出血の見た目だけで「これは大丈夫な出血だ」「これは病気による出血だ」と自己判断することは危険です。
出血の時期、量、色、期間、そして痛みの有無などの随伴症状を合わせて考え、不安を感じる場合は専門家である婦人科医に相談することが最も賢明な対応と言えるでしょう。

不正出血の主な原因と種類

不正出血の原因は非常に多岐にわたるため、すべての可能性を網羅することは難しいですが、大きく分けると「機能性出血(病気ではない原因)」と「器質性出血(病気が原因)」、そして「その他の原因」に分類できます。
ここでは、それぞれの代表的な原因について詳しく解説します。

機能性出血(心配のいらない出血)

機能性出血は、子宮や卵巣そのものに明らかな病変が見られないにも関わらず起こる出血です。
主に女性ホルモンのバランスが一時的に乱れることによって引き起こされます。
比較的少量で短期間で治まることが多く、経過観察で問題ない場合が多いですが、繰り返す場合や症状が強い場合は治療が必要になることもあります。

排卵期出血

生理周期のちょうど真ん中あたり、つまり排卵期に起こる少量の出血です。
卵巣から卵子が排出される際に、一時的にエストロゲンというホルモンが急激に変動することが原因と考えられています。

  • 起こる時期: 生理が始まってから約2週間後(次の生理予定日の約2週間前)。
  • 特徴:
    • 出血量はごく少量であることがほとんどで、下着に少し付着する程度や、トイレットペーパーで拭いた時に気づく程度です。
    • 出血の色はピンクっぽい、あるいは茶色っぽいことが多いです。
    • 出血期間は1~2日程度で、長くても数日で自然に止まります。
    • 出血と同時に、軽い下腹部痛やおりものの変化(透明で伸びる、サラサラするなど排卵期特有のおりもの)を伴うこともあります。

排卵期出血は生理的な現象であり、基本的に心配する必要はありません。
ただし、出血量が多い、痛みが強い、数日経っても止まらないといった場合は、排卵期出血以外の原因も考慮し、婦人科を受診することをおすすめします。

黄体機能不全などホルモンバランスの乱れ

生理周期は、エストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンによって精密にコントロールされています。
これらのホルモンの分泌や働きに乱れが生じると、子宮内膜が不安定になり、生理期間ではないのに出血することがあります。

代表的なものが黄体機能不全です。
排卵後に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)の量が不足したり、その働きが不十分だったりする場合に起こります。
プロゲステロンは妊娠を維持するために子宮内膜を安定させる働きがありますが、この働きが弱いと、生理予定日よりも前に子宮内膜の一部が剥がれてしまい、不正出血として現れます。

  • 起こる時期: 生理予定日よりも数日前や、生理が終わってから次の生理までの期間中にだらだらと続くことがあります。
  • 特徴:
    • 出血量は少量であることが多く、茶色っぽい色が目立ちます。
    • 出血期間は数日続くこともあります。
    • 不妊の原因になったり、妊娠初期に流産しやすくなったりすることがあります。

黄体機能不全以外にも、様々な要因がホルモンバランスを乱し、不正出血を引き起こす可能性があります。

  • ストレスや過労: 脳の視床下部という部位は、ホルモン分泌の司令塔の役割を担っていますが、ストレスや過労は視床下部の働きを阻害し、ホルモンバランスを乱すことがあります。
  • 無理なダイエットや体重の急激な変化: 体脂肪率が極端に低下したり、急激な体重変動があったりすると、ホルモンバランスに影響が出ることがあります。
  • 睡眠不足: 生活リズムの乱れもホルモンバランスに影響を与えます。
  • 思春期や更年期: ホルモン分泌が不安定な時期は、生理周期が乱れたり不正出血が起こりやすくなったりします。
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など: 卵巣の機能異常によってホルモンバランスが乱れ、生理不順や不正出血を引き起こすことがあります。

これらのホルモンバランスの乱れによる不正出血は、原因を取り除く(ストレス軽減、生活習慣改善など)ことで改善する場合が多いです。
しかし、原因が特定できない場合や、症状が続く場合は、婦人科でのホルモン療法などが有効な場合があります。

器質性出血(病気が原因の出血)

器質性出血は、子宮、腟、卵巣などの臓器に病変(腫瘍、炎症、傷など)が存在し、そこから出血が起こるものです。
機能性出血と異なり、病変そのものが原因であるため、適切な診断と治療が必要です。
中には放置すると命に関わる病気が含まれるため、器質性出血が疑われる場合は必ず婦人科を受診することが重要です。

子宮や腟の炎症、ポリープ、びらん

腟や子宮頸部に炎症や病変があると、出血の原因となることがあります。

  • 腟炎: 細菌や真菌(カンジダなど)、トリコモナスなどの感染によって腟に炎症が起き、粘膜がただれたり傷ついたりして出血することがあります。おりものの変化(量、色、臭い)、かゆみ、痛みを伴うことが多いです。
  • 子宮頸管炎: 子宮頸管が炎症を起こすと、粘膜が脆くなり、少量出血したり、性交後に出血しやすくなったりします。クラミジアや淋菌などの性感染症が原因となることもあります。
  • 子宮頸管ポリープ: 子宮頸管にできる良性の腫瘍(ポリープ)は、小さくても血管が豊富に含まれているため、刺激が加わると簡単に出血します。特に、性交後や内診後に出血しやすいのが特徴です。通常は外来で簡単に切除できます。
  • 子宮腟部びらん: 子宮頸部の表面がただれたように見える状態です。これは病気ではなく生理的なもの(特に若い女性に多い)の場合が多いですが、性交後や内診後に出血の原因となることがあります。ただし、びらんの背景に炎症や異形成(前がん病変)がないか確認が必要です。

これらの原因による出血は、炎症を抑える治療や、ポリープの切除などで改善することがほとんどです。

子宮筋腫、子宮内膜症

子宮筋腫や子宮内膜症は、女性に比較的多い病気ですが、不正出血の原因となることがあります。

  • 子宮筋腫: 子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。筋腫ができる場所や大きさによって症状は異なりますが、子宮の内腔に突き出してできる「粘膜下筋腫」は、小さくても過多月経(生理の量が異常に多くなること)や不正出血の大きな原因となります。筋腫による出血は、生理期間が長くなったり、生理とは別にだらだらと出血が続いたりすることがあります。多くの場合、強い生理痛や貧血も伴います。
  • 子宮内膜症: 本来子宮の内腔にのみ存在するはずの子宮内膜組織が、卵巣や腹膜など子宮以外の場所にできてしまう病気です。できた場所で生理と同じように増殖・剥離を繰り返すため、炎症や周囲組織との癒着を引き起こします。子宮内膜症が子宮の筋肉の中にできる「子宮腺筋症」の場合、子宮が大きくなり、過多月経や不正出血、強い生理痛の原因となります。

これらの病気による不正出血は、症状の程度や患者さんの状況(妊娠希望の有無など)によって、薬物療法や手術など様々な治療法が検討されます。

子宮頸がん、子宮体がん

不正出血の原因として、最も注意が必要なのが、がんなどの悪性腫瘍です。

  • 子宮頸がん: 子宮の入り口(頸部)にできるがんです。初期には自覚症状がほとんどないことが多いですが、進行すると不正出血が現れることがあります。特に、性交後に出血するのが特徴的な症状の一つです。そのほか、普段のおりものとは違う、ピンク色や茶色がかった、あるいは膿のような臭いを伴うおりものや出血が続くこともあります。子宮頸がんは若い世代にも増えているため、定期的な子宮頸がん検診を受けることが早期発見に繋がります。
  • 子宮体がん: 子宮の奥(体部)にできるがんです。子宮内膜から発生することが多いため、「子宮内膜がん」とも呼ばれます。子宮体がんの最も典型的な症状は不正出血です。特に、閉経後の不正出血は、子宮体がんの可能性を強く疑い、すぐに専門医の診察を受ける必要があります。閉経前であっても、生理不順や、生理とは違う時期の出血がある場合は注意が必要です。

がんによる不正出血は、病変が大きくなるにつれて出血量が増えたり、出血が止まりにくくなったりすることがあります。
早期発見・早期治療が非常に重要なので、不正出血があった場合は「もしかしたら…」という意識を持って婦人科を受診することが大切です。

性感染症

特定の性感染症(STI)が、子宮頸管や子宮内膜に炎症を引き起こし、不正出血の原因となることがあります。

  • クラミジア感染症、淋菌感染症: これらの細菌は、子宮頸管に感染して炎症を起こす「子宮頸管炎」の主な原因となります。子宮頸管の粘膜が炎症によって脆くなり、出血しやすくなります。症状は軽い出血や、おりものの変化、下腹部痛などですが、自覚症状がほとんどないことも少なくありません。放置すると、子宮内膜炎や卵管炎、骨盤内炎症性疾患(PID)へと進行し、不妊症や子宮外妊娠の原因となる可能性もあります。
  • その他: ヘルペスや梅毒などの性感染症が外陰部や腟に病変を作り、そこから出血することもあります。

性感染症が疑われる場合は、パートナーとともに検査・治療を受けることが重要です。

その他の原因

機能性出血や器質性出血に明確に分類されない、あるいは複数の要因が絡み合って不正出血が起こるケースもあります。

妊娠初期の出血(着床出血など)

妊娠のごく初期に、少量の出血が見られることがあります。

  • 着床出血: 受精卵が子宮内膜にもぐり込む(着床する)際に、子宮内膜の一部が傷ついて起こる出血です。生理予定日頃に起こることが多く、出血量はごく少量で、ピンク色や茶色っぽい色が1~2日程度続くのが特徴です。ただし、着床出血は妊娠した人全員に起こるわけではなく、起こらない人もいます。
  • その他: 妊娠初期には、絨毛膜下血腫(胎盤になる組織と子宮の間に血液が溜まる状態)や、切迫流産、子宮外妊娠など、様々な原因で出血が起こる可能性があります。妊娠の可能性がある時期に出血があった場合は、着床出血だと自己判断せず、必ず産婦人科を受診して確認することが重要です。

薬剤による影響(ピルなど)

特定の薬剤の副作用として不正出血が起こることがあります。

  • 低用量ピル: 低用量ピルを服用し始めたばかりの頃や、飲み忘れ、服用時間のズレなどによって、生理期間ではないのに少量の出血が見られることがあります。これは「ブレイクスルー出血」と呼ばれ、ホルモンバランスが安定していない時期に起こりやすい現象です。通常は服用を続けるうちに改善しますが、続く場合や量が多い場合は医師に相談が必要です。
  • 避妊リング(IUD): 避妊目的で子宮内に装着する避妊リングの影響で、少量の出血や茶色っぽいおりものが続くことがあります。
  • その他の薬剤: 抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)など、出血を伴うリスクのある薬剤を服用している場合にも、不正出血が起こることがあります。

ストレスや体調不良

精神的なストレスや過労、睡眠不足、生活リズムの乱れ、体調を崩したときなどは、脳の視床下部や下垂体の働きに影響を与え、ホルモンバランスが乱れやすくなります。
このホルモンバランスの乱れが、機能性出血として不正出血を引き起こすことがあります。
自律神経のバランスが崩れることも、不正出血と関連があると考えられています。

更年期や閉経周辺期の出血

閉経が近づき、女性ホルモンの分泌が大きく変動する更年期(一般的に40代半ばから50代半ば)や、その周辺期は、生理周期が不安定になり、不正出血が起こりやすくなります。

  • 生理周期が短くなったり長くなったりする。
  • 生理の量が今までと変わる(増える・減る)。
  • 生理とは違う時期に不規則な出血が起こる。

この時期の不正出血の多くは、ホルモンバランスの乱れによるもの(機能性出血)ですが、中には子宮体がんや子宮頸がん、子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどの病気が隠れている可能性もあります。
特に、閉経後(生理が完全に止まって1年以上経過した後)に再び出血があった場合は、ホルモン補充療法などによる出血の場合を除いて、必ず婦人科を受診して原因を確認することが非常に重要です。

こんな時は要注意!不正出血で婦人科を受診する目安

不正出血の原因は様々であり、中には様子を見ていても問題ないケースもありますが、一方で、早期発見・早期治療が必要な病気が隠れていることもあります。
そのため、「これって不正出血かな?」と思ったら、自己判断せずに婦人科を受診して相談することが最も安心できる対応です。

特に、以下のような状況に当てはまる場合は、積極的に婦人科を受診することをおすすめします。

  • 出血の量や期間
  • 随伴症状(腹痛、腰痛、発熱など)
  • 性交後の出血
  • 閉経後の出血

出血の量や期間

  • 生理の時と同じか、それ以上の量が出血している。
  • 出血が止まらず、ダラダラと続いている(数日以上)。
  • 普段の生理期間よりも明らかに長く出血が続いている。
  • 一度止まったかと思ったのに、再び出血が始まった。

量が多かったり、長く続いたりする不正出血は、子宮筋腫や子宮体がん、ホルモンバランスの大きな乱れなど、病気が原因である可能性が高まります。
出血量が多い場合は、貧血を引き起こすこともあります。

随伴症状(腹痛、腰痛、発熱など)

出血とともに、以下のような症状を伴う場合は、炎症や感染症、子宮外妊娠などの可能性も考えられます。

  • 強い下腹部痛や腰痛がある。
  • 発熱がある。
  • おりものの量、色、臭いがいつもと違う(黄色っぽい、緑っぽい、魚のような臭いなど)。
  • 吐き気や嘔吐、めまい、冷や汗などの全身症状がある。
  • 性交時や排尿・排便時に痛みがある。

これらの随伴症状は、腟炎、子宮頸管炎、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤内炎症性疾患(PID)、あるいは子宮外妊娠など、緊急性の高い状態を示唆している可能性があります。

性交後の出血

性行為の後に毎回、あるいは頻繁に出血が見られる場合は、子宮頸部や腟に原因がある可能性が考えられます。

  • 性交の後、少量でも出血がある。
  • 内診や性器を触った後に出血しやすい。

このような出血は、子宮頸管ポリープ、子宮腟部びらん、子宮頸管炎などが比較的多い原因ですが、子宮頸がんの初期症状である可能性も否定できません。
特に子宮頸がんは早期に発見できれば治療の選択肢も増え、予後も良い場合が多いため、性交後出血がある場合は必ず一度婦人科を受診して検査を受けることを推奨します。

閉経後の出血

生理が完全に止まってから1年以上経過した状態を「閉経」と言います。
閉経後に不正出血がみられた場合は、少量であっても必ず婦人科を受診してください。

閉経後の出血は、女性ホルモンが低下して腟や子宮の粘膜が萎縮することによって起こる萎縮性腟炎などが原因の場合もありますが、子宮体がんや子宮頸がん、子宮肉腫など、悪性腫瘍が隠れている可能性が閉経前よりも高くなります。

「もう生理もないし大丈夫だろう」と自己判断で放置せず、「閉経後の出血は要注意」という意識を持って、すぐに専門医に相談することが非常に重要です。

受診を検討する際のポイントまとめ

状況 受診の目安 考えられる可能性(一部)
出血の量 生理並み、またはそれ以上の量 ホルモンバランスの乱れ、子宮筋腫、子宮体がんなど
出血の期間 普段の生理より長い、ダラダラ続く、止まらない ホルモンバランスの乱れ、子宮筋腫、子宮体がん、子宮内膜症など
出血の頻度 繰り返す、頻繁に起こる ホルモンバランスの乱れ、子宮筋腫、ポリープ、炎症など(原因の特定が必要)
随伴症状 強い腹痛・腰痛、発熱、おりもの異常、吐き気など 炎症、感染症、子宮外妊娠、骨盤内炎症性疾患など
特定の状況 性交後の出血 子宮頸管ポリープ、びらん、子宮頸がん、子宮頸管炎など
閉経後の出血 子宮体がん、子宮頸がん、萎縮性腟炎など
その他 不安が強い、気になる、自己判断に自信がない 様々な可能性。安心のためにも受診を推奨。

もちろん、上記の項目に当てはまらなくても、「いつもと違うな」「なんだか心配だな」と感じたら、遠慮なく婦人科を受診して構いません。
専門医に相談することで、原因を特定し、適切なアドバイスや治療を受けることができます。

婦人科での検査内容

不正出血で婦人科を受診した場合、医師は原因を特定するためにいくつかの検査を行います。
どのような検査が行われるのか、事前に知っておくと、受診への不安を少しでも軽減できるでしょう。
一般的な検査の流れと内容を説明します。

問診と内診

まずは医師による丁寧な問診が行われます。
以下の点について詳しく聞かれますので、ご自身の状況をできるだけ正確に伝えられるように整理しておくと良いでしょう。

  • 出血について:
    • いつから始まったか?
    • 出血の量(生理と比べて多いか少ないか、どのくらいでナプキンやタンポンを交換するか)?
    • 出血の色(鮮血、茶色、ピンク、黒っぽいなど)?
    • 出血の期間(何日くらい続くか)?
    • 出血は常に続いているか、それとも出たり止まったりするか?
    • 生理周期との関係(生理予定日頃か、排卵期頃か、生理の終わりかけかなど)?
    • 性交の後に出血しやすいか?
    • 閉経後か?
  • その他の症状: 腹痛、腰痛、発熱、おりものの変化、排尿・排便時の痛みなど、出血以外の症状はあるか?
  • 生理周期: 普段の生理周期、生理期間、生理の量、生理痛の有無など。
  • 既往歴: これまでに婦人科系の病気にかかったことがあるか(子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、がんなど)。
  • 妊娠の可能性: 性行為の有無、避妊方法、最終月経はいつかなど。
  • 薬剤の服用: 低用量ピル、ホルモン剤、血液をサラサラにする薬など、現在服用している薬はあるか。
  • 生活習慣: ストレス、睡眠、食生活、運動習慣など。

問診の後、内診台に移動し、内診が行われます。

  • 視診: 腟鏡(クスコ)を腟に挿入し、腟の壁、子宮頸部の状態を直接目で確認します。出血源がどこか(子宮頸部か、腟かなど)や、子宮頸部びらん、ポリープ、炎症、腫瘍の有無などを調べます。
  • 触診: 内診台でお腹の上からと、腟に指を入れて、子宮や卵巣の大きさ、形、位置、硬さ、可動性などを触って確認します。痛みがないかどうかも確認します。子宮筋腫や卵巣嚢腫などがある場合、触診でわかることがあります。

内診は少し緊張するかもしれませんが、医師が原因を探る上で非常に重要な検査です。
リラックスして臨むように心がけましょう。

腟からの超音波検査

内診と合わせて行われることが多い検査です。
経腟プローブという細長い超音波器具を腟に挿入し、子宮や卵巣を内側から詳しく観察します。

  • 子宮: 子宮の大きさ、形、子宮内膜の厚さ、子宮筋腫や子宮腺筋症の有無などを調べます。不正出血の原因が子宮内膜の異常や、子宮筋腫(特に粘膜下筋腫)である場合、超音波検査で病変を確認できます。
  • 卵巣: 卵巣の大きさ、形、腫れ(卵巣嚢腫など)の有無を調べます。卵巣の異常がホルモンバランスの乱れにつながり、不正出血の原因となることもあります。

超音波検査は痛みもほとんどなく、子宮や卵巣の状態をリアルタイムで確認できる、非常に有用な検査です。

子宮がん検診、おりもの検査

不正出血の原因としてがんや感染症が疑われる場合には、追加の検査が行われます。

  • 子宮頸がん検査(細胞診): 子宮頸部の表面をブラシやヘラのようなもので軽くこすり、細胞を採取して顕微鏡で調べる検査です。痛みはほとんどありません。子宮頸がんや前がん病変を発見するために行われます。性交後出血がある場合や、定期検診を受けていない場合は、この検査が行われることが多いです。
  • 子宮体がん検査(細胞診): 子宮の奥にある子宮内膜の細胞を採取して調べる検査です。細いチューブを子宮の入り口から挿入して細胞を吸引したり、内膜を軽く擦ったりして細胞を採取します。子宮頸がん検査と比べて少し痛みを伴うことがありますが、我慢できる程度のことが多いです。閉経後の出血や、生理不順が続いている場合の不正出血で、子宮体がんの可能性が考えられる場合に行われます。
  • おりもの検査: 腟からおりものを採取し、細菌培養検査や顕微鏡検査を行います。腟炎や子宮頸管炎の原因となっている細菌(カンジダ、トリコモナス、GBSなど)や、クラミジア、淋菌などの性感染症の有無を調べます。随伴症状としておりものの異常がある場合や、性感染症の疑いがある場合に行われます。

血液検査、尿検査

必要に応じて、全身の状態やホルモンバランスなどを調べるために血液検査や尿検査が行われることがあります。

  • 血液検査:
    • 貧血の有無: 出血量が多い場合、貧血になっていないか確認します。
    • ホルモン値: 生理周期や不正出血の時期に応じて、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)、甲状腺ホルモン、プロラクチンなどの値を測定し、ホルモンバランスの乱れがないか調べます。
    • 感染症の有無: 炎症を示す反応(CRPなど)や、特定の感染症(性感染症など)の抗体を調べることがあります。
    • 腫瘍マーカー: がんが疑われる場合に、特定の腫瘍マーカーの値を調べることがありますが、腫瘍マーカーだけで診断はできません。
  • 尿検査: 妊娠の可能性がある場合、妊娠反応検査を行います。

これらの検査を組み合わせて行うことで、不正出血の正確な原因を特定し、適切な治療方針を決定することができます。
不安なことは遠慮なく医師に質問し、納得した上で検査や治療を受けるようにしましょう。

不正出血に関するよくある質問

不正出血に関して、多くの人が疑問に感じやすい点について、Q&A形式で解説します。

不正出血が一日だけで終わった

Q: 茶色っぽい不正出血が一日だけで終わりました。これは生理ではないですよね?様子を見て大丈夫でしょうか?

A: 不正出血の可能性が高いです。一日だけの少量の出血の場合、時期によっては排卵期出血や着床出血の可能性が考えられます。
これらは病気ではない生理的な出血の場合が多いです。
しかし、子宮頸管ポリープや子宮頸部びらんからの出血、あるいはごく初期の子宮頸がんなど、他の原因による出血である可能性もゼロではありません。

一度きりで、その後出血が繰り返されず、特に気になる症状(痛みなど)もない場合は、しばらく様子を見ても良いかもしれません。
ただし、出血が繰り返し起こる場合、量が少しずつ増えてきた場合、あるいは少しでも不安を感じる場合は、念のため婦人科を受診して相談することをおすすめします。
特に性交後に出血があった場合は、一日だけで終わったとしても一度受診しましょう。

生理が終わってすぐ、または2週間後にまた出血した(生理が2回きたように感じる)

Q: 生理が終わって数日後にまた出血がありました。量も生理の時ほどではありませんが、数日続いて「生理が2回きたみたい」な感じです。これは何でしょうか?

A: 生理が終わってすぐの出血は、生理の時の子宮内膜の剥がれ残りが排出されている場合もありますが、そうではない不正出血の可能性も考えられます。
特に、数日続く場合は、ホルモンバランスの乱れ(機能性出血)や、子宮筋腫(粘膜下筋腫など)や子宮腺筋症による出血の可能性が疑われます。

Q: 生理が終わってちょうど2週間くらい経った頃にまた出血がありました。これは生理なのでしょうか?

A: 生理周期が順調な方の場合、生理が終わって約2週間後頃は排卵期にあたります。
この時期の少量の出血であれば、排卵期出血の可能性が非常に高いです。
排卵期出血は生理的なもので心配いりませんが、出血量が多かったり、数日以上続いたりする場合は、排卵期出血ではない可能性も考慮し、婦人科を受診しましょう。

生理が2回きたように感じる不規則な出血が続く場合は、ホルモンバランスの乱れが原因の機能性出血である可能性が考えられますが、子宮筋腫や子宮内膜症、あるいは稀に子宮体がんなどが原因の場合もあります。
繰り返すようであれば、一度婦人科で診察を受けることを強くおすすめします。

生理前の少量の不正出血は大丈夫?

Q: 生理が始まる数日前から、茶色っぽい少量の出血があります。これは生理前のサインでしょうか?大丈夫ですか?

A: 生理前に少量の茶色っぽい出血が見られる場合、いくつかの原因が考えられます。

  • 黄体機能不全: 生理前に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)が不足していると、子宮内膜が完全に維持できず、生理予定日より少し前に一部が剥がれて出血することがあります。これはホルモンバランスの乱れによる機能性出血です。黄体機能不全がある場合、妊娠しにくかったり、妊娠初期に流産しやすかったりすることがあります。
  • 生理の始まりかけ: 生理が始まる際に、古い経血が少量ずつ排出されて茶色っぽく見えることがあります。
  • 子宮頸管ポリープやびらん: 性交などわずかな刺激で出血し、それが生理前にたまたま見られる。

生理前の少量の出血が毎回起こる、出血量が少しずつ増えてきた、期間が長くなってきた、あるいは出血以外に生理痛がひどいなどの症状を伴う場合は、黄体機能不全や子宮筋腫などの病気が隠れている可能性も考えられます。
「生理前だから大丈夫」と安易に自己判断せず、気になる場合は婦人科で相談しましょう。

不正出血と妊娠の可能性は?

Q: 生理予定日頃に少量の出血がありました。これは不正出血ですか?それとも妊娠による出血(着床出血など)でしょうか?

A: 生理予定日頃の出血は、生理が始まった可能性も、不正出血の可能性も、そして妊娠による出血(着床出血など)の可能性も考えられます。

  • 生理: 生理が始まったばかりで量が少ない、または期間が短い場合。
  • 不正出血: ホルモンバランスの乱れなど、生理とは異なる原因による出血。
  • 着床出血: 妊娠超初期に起こる可能性のある出血。生理予定日頃に起こり、少量のピンク〜茶色っぽい出血が1〜2日程度続くことが多いですが、個人差があります。

妊娠の可能性がある時期(性行為があった場合)に出血があった場合は、自己判断で着床出血だと決めつけず、まず妊娠検査薬を試してみるか、産婦人科を受診して確認することが重要です。
妊娠初期の出血は、着床出血のような心配のない場合もありますが、切迫流産や子宮外妊娠など、すぐに処置が必要な状態である可能性も含まれるからです。妊娠検査薬で陽性反応が出た場合は、必ず産婦人科を受診しましょう。

まとめ:不正出血で迷ったら、まずは専門医へ相談を

不正出血は、生理以外の性器からのあらゆる出血を指し、その原因は多岐にわたります。
見た目だけで生理との違いや原因を正確に判断することは難しく、中にはがんなどの重篤な病気が隠れている可能性もあります。

機能性出血のようにホルモンバランスの一時的な乱れによる心配の少ない出血もあれば、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸がん、子宮体がん、性感染症など、病気が原因で起こる器質性出血もあります。
妊娠初期の出血や薬剤による影響なども、不正出血の原因として考えられます。

特に、以下の場合は要注意シグナルとして、迷わず婦人科を受診することを強く推奨します。

  • 生理の時と同じか、それ以上の量が出血している。
  • 出血がダラダラと長く続いている。
  • 強い下腹部痛や腰痛、発熱などの随伴症状がある。
  • 性交の後に出血する。
  • 閉経後に不正出血があった(少量でも!)。
  • 不安が強い、心配でたまらない。

婦人科では、問診、内診、超音波検査、必要に応じて子宮がん検診やおりもの検査などを行い、不正出血の原因を詳しく調べることができます。
原因が特定できれば、それに応じた適切な治療やアドバイスを受けることができます。

「これくらい大丈夫かな?」と自己判断で様子を見てしまうと、病気の発見が遅れてしまうリスクがあります。
ご自身の体を守るためにも、「生理とは違うかも」「いつもと何か違う」と感じたときは、遠慮せず婦人科の専門医に相談してください。
早期に受診することで、適切な診断と治療につながり、安心して過ごすことができます。

この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の症状に対する診断や治療方針を示すものではありません。
ご自身の症状について不安がある場合は、必ず医療機関を受診して専門医にご相談ください。

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