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妊娠中クラミジア「心当たりない」と思ったら|原因と赤ちゃんへの影響・対策

妊娠中に受けた妊婦健診で、「クラミジア陽性」という診断結果を聞いて、驚き戸惑っている方もいらっしゃるかもしれません。
特に、心当たりがない、つまりパートナー以外との性行為や、思い当たるような出来事がないのに、なぜ?と不安に感じている方もいるでしょう。

クラミジア感染症は性感染症の一つですが、「心当たりがない」という状況でも陽性になることは、決して珍しいことではありません。
その背景には、クラミジアという細菌の特性や、感染の広がり方など、いくつかの理由が隠されています。

この記事では、妊娠中にクラミジア陽性でも心当たりがない理由、妊娠中のクラミジア感染が母体と赤ちゃんに与える影響、そして今後の検査や治療、パートナーの対応などについて、産婦人科医の視点から詳しく解説します。
この情報が、あなたの不安を和らげ、適切な対処へとつながる一助となれば幸いです。

クラミジア感染は無症状が多い

クラミジア感染症が「サイレント・インフェクション(静かなる感染症)」と呼ばれるほど、自覚症状がないことが多いのが特徴です。
特に女性の場合、感染しても約8割の人が無症状と言われています。
子宮頸管に感染しても、痛みやかゆみ、おりものの異常など、はっきりとした症状が現れないことがほとんどです。

症状がないため、自分自身が感染していることに気づかないまま日常生活を送っているケースが多くあります。
自覚症状がないため、「自分は大丈夫」と思い込んでいることも少なくありません。
この無症状であることこそが、「心当たりがない」と感じる最大の理由の一つです。
症状が出ないまま何ヶ月、何年と経過することもあります。

クラミジアの潜伏期間が長い

クラミジアの潜伏期間は、感染してから症状が現れるまでの期間を指しますが、これが比較的長いことも、「心当たりがない」と感じる理由となります。
一般的に、クラミジアの潜伏期間は1〜3週間と言われていますが、人によっては数週間から数ヶ月、あるいはそれ以上に及ぶこともあります。

そのため、もし過去に感染機会があったとしても、その時期の出来事と現在の陽性診断が結びつかず、「いつ感染したのだろう」「最近は心当たりがないのに」と感じてしまうのです。
妊娠が判明して初めて妊婦健診で検査を受け、過去の感染が明らかになるというケースも多く見られます。

パートナーが無症状で感染している

クラミジアは性行為によって感染が広がるため、パートナーの感染状況が深く関わってきます。
男性の場合も、約半数が無症状であると言われています。
尿道に感染しても、軽い排尿時の不快感や痒み程度で、気づかないことも少なくありません。

もしパートナーが無症状でクラミジアに感染していた場合、性行為を通じてあなたに感染させてしまう可能性があります。
あなたにとってはパートナーとの通常の性行為であり、特に思い当たる「心当たり」はなくても、パートナーからの感染という可能性が考えられます。
パートナー自身も感染に気づいていないため、この「無症状のパートナーからの感染」も、「心当たりがない」と感じる重要な理由の一つです。

過去に感染していた可能性がある

クラミジア感染症は、一度感染して自然に治癒することは稀で、治療を受けないと菌が体内に残り続けることが一般的です。
過去にクラミジアに感染したことがあったとしても、無症状のまま経過していた場合、自分では気づかずに感染状態が続いていた可能性があります。

妊娠を機に初めてクラミジア検査を受け、過去の感染が検出されるというケースも考えられます。
特に、過去にパートナーが変わった経験がある場合、いつかの時点で感染し、それが無症状のまま持続していたという可能性も否定できません。
この場合も、最近の行動に心当たりがなくても陽性となることがあります。

性行為以外の感染経路は可能性が低い

クラミジア・トラコマチスは、主に粘膜の接触によって感染します。
最も一般的な感染経路は性器間の性行為ですが、オーラルセックスやアナルセックスによって、咽頭や直腸に感染することもあります。

一方で、性行為以外の経路での感染、例えば日常生活の中でタオルや浴槽、トイレの便座などを介して感染する可能性は極めて低いと考えられています。
クラミジア菌は、人間の体から離れると長時間生存するのが難しいため、こうした環境を介して感染することは現実的ではないとされています。

日常生活(風呂やトイレ)での感染はほぼない

念のため補足しておくと、お風呂を一緒にする、同じタオルを使う、公衆トイレを使うといった日常的な行為でクラミジアに感染することは、医学的にはほぼ考えられません。
クラミジア菌は非常にデリケートで、乾燥や温度変化に弱いため、体外ではすぐに死滅してしまいます。
したがって、「心当たりがない」という場合に、性行為以外の日常生活での接触を心配する必要はほとんどありません。

まとめると、妊娠中にクラミジア陽性でも心当たりがないと感じる主な理由は、クラミジア感染が無症状であることが多いこと、潜伏期間が長いこと、そしてパートナーが無症状で感染している可能性があるためです。
過去の感染が、無症状のまま持続していた可能性も考えられます。
これらの理由から、必ずしも最近の出来事や特定の性行為に結びつかない場合があるのです。

目次

妊娠中のクラミジア感染による母体と赤ちゃんへのリスク

妊娠中にクラミジア感染が判明した場合、無症状であっても放置することはできません。
なぜなら、クラミジア感染は、母体だけでなく、お腹の中の赤ちゃんにも様々な悪影響を及ぼす可能性があるからです。
早期に発見し、適切な治療を受けることが非常に重要です。

母体への影響(早産など)

妊娠中のクラミジア感染は、母体に以下のような様々なリスクをもたらす可能性があります。

  • 絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん): 胎児を包んでいる膜(絨毛膜と羊膜)や羊水に炎症が起きる状態です。
    クラミジア菌が子宮頸管から上行して感染することで発症します。
    絨毛膜羊膜炎は、早産の主要な原因の一つとなります。
  • 前期破水(ぜんきはすい): 出産が始まる前に、胎児を包む卵膜が破れて羊水が流れ出てしまう状態です。
    クラミジア感染による炎症が卵膜を弱くすることで起こりやすくなります。
    前期破水も早産の原因となり、また感染リスクを高めます。
  • 早産(そうざん): 妊娠22週以降37週未満での出産を早産といいます。
    クラミジア感染による絨毛膜羊膜炎や前期破水などが原因で、早産のリスクが高まります。
    早産で生まれた赤ちゃんは、体の機能が未熟なため、様々な健康上の問題を抱える可能性が高くなります。
  • 産後の子宮内膜炎: 出産後、子宮の内膜に炎症が起こる状態です。
    妊娠中のクラミジア感染が原因となることがあります。
    産後の回復を遅らせる原因となります。
  • 流産・子宮外妊娠: 妊娠初期のクラミジア感染が、流産や子宮外妊娠のリスクを高める可能性も指摘されています。

これらのリスクは、無症状のままでも進行する可能性があるため、自覚症状がないからといって安心してはいけません。
妊婦健診でのクラミジア検査は、これらのリスクを早期に発見し、回避するために非常に重要なのです。

赤ちゃんへの影響(肺炎・結膜炎)

母体がクラミジアに感染していると、出産時に産道を通る際に、赤ちゃんにクラミジア菌が感染してしまう可能性があります。
これを「垂直感染」といいます。
赤ちゃんがクラミジアに感染した場合、主に以下のような影響が出ることがあります。

  • 新生児結膜炎(しんせいじけつまくえん): 生後数日から数週間以内に発症することが多い目の感染症です。
    まぶたの腫れ、充血、膿のような目やになどの症状が出ます。
    適切な治療をしないと、角膜障害や視力障害につながる可能性もあります。
    クラミジアによる新生児結膜炎は、生後1ヶ月未満の赤ちゃんに発症する結膜炎の原因として最も頻繁に見られるものの一つです。
  • 新生児肺炎(しんせいじはいえん): 生後数週間から数ヶ月の赤ちゃんに発症することがある肺炎です。
    最初は鼻炎のような症状から始まり、咳や呼吸困難、無呼吸発作などを引き起こすことがあります。
    特徴的な咳として「スタッカート咳」と呼ばれる、断続的な咳が出ることがあります。
    重症化すると、呼吸管理が必要になることもあります。
  • 新生児咽頭炎: のどの炎症を起こすこともあります。

これらの赤ちゃんへの影響は、母体が妊娠中に適切な治療を受けなかった場合に、出産時の垂直感染によって起こります。
しかし、妊娠中にクラミジア感染が診断され、抗生物質による適切な治療を完了していれば、出産時の赤ちゃんへの感染リスクを大幅に減らすことができます。
そのため、妊娠中のクラミジア検査は、生まれてくる赤ちゃんを守るためにも非常に重要なのです。

妊娠中のクラミジア検査・診断・治療

妊娠中にクラミジア感染が判明した場合、適切な検査と治療を行うことで、母体や赤ちゃんへのリスクを最小限に抑えることができます。
ここでは、妊娠中のクラミジアに関する医療的な対応について詳しく見ていきましょう。

妊婦健診でのクラミジア検査

多くの自治体や医療機関では、妊婦健診の項目の一つとして、クラミジア検査が推奨または必須とされています。
検査のタイミングは、妊娠初期(通常、妊娠10〜12週頃)に行われることが多いです。
これは、もし感染が確認されても、妊娠期間中に安全に治療を行い、出産までに治癒させ、赤ちゃんへの感染リスクを減らすことができるためです。

妊婦健診でのクラミジア検査は、自覚症状の有無に関わらず、全ての妊婦さんを対象に行われます。
これは、前述の通りクラミジア感染が無症状であることが多いため、症状がない人でも感染している可能性を考慮しているからです。
この検査によって、自分では気づいていないクラミジア感染が早期に発見されることが多くあります。

クラミジアの診断方法

妊娠中のクラミジア検査は、主に以下のいずれかの方法で行われます。

  • 子宮頸管ぬぐい液: 外来で、子宮頸部から専用の綿棒で分泌物を採取して検査します。
    最も一般的に行われる方法です。
    この検体を用いて、クラミジアの遺伝子を検出するPCR法やTMA法といった高感度の検査が行われます。
  • 尿検査: 排尿時の尿(初尿、つまり出始めの尿)を採取して検査します。
    特に、子宮頸部からの検体採取が難しい場合や、男性の検査で用いられます。
    妊婦さんの場合でも、状況によっては尿検査が行われることがあります。
  • 咽頭ぬぐい液/直腸ぬぐい液: オーラルセックスやアナルセックスの経験がある場合など、性器以外への感染が疑われる際には、のどや直腸から検体を採取して検査することもあります。

採取された検体は、医療機関で検査されるか、検査機関に送られて解析されます。
診断は、主にこれらの検査でクラミジア・トラコマチスの遺伝子や抗原が検出されることによって確定されます。

妊娠中でも安全な治療薬

クラミジア感染症の治療には、抗生物質が用いられます。
妊娠中の治療においては、胎児への安全性が考慮された薬剤が選択されます。
日本で一般的に使用されるのは、主に以下の種類の抗生物質です。

  • マクロライド系抗生物質: アジスロマイシンなどが代表的です。
    妊娠中でも比較的安全性が高いとされており、胎児への影響も少ないと考えられています。
    通常、短期間(例えば1回の服用、または数日間)で治療が完了するものが多いです。
  • セフェム系抗生物質: 一部のセフェム系抗生物質も妊娠中のクラミジア治療に用いられることがあります。

【妊娠週数に応じた推奨薬剤の例】

妊娠週数 主に推奨される抗生物質の種類 備考
妊娠初期〜中期 マクロライド系(アジスロマイシン等) 安全性が確立されており、第一選択薬となることが多い。短期間の服用で済む場合が多い。
妊娠中期〜後期 マクロライド系、セフェム系など 妊娠週数や母体の状態に応じて選択される。テトラサイクリン系やニューキノロン系は原則として妊娠中は禁忌。

※これは一般的な情報であり、具体的な薬剤の種類、用量、服用期間は、担当の産婦人科医が妊娠週数、母体の健康状態、アレルギーの有無などを考慮して個別に判断します。
自己判断での服用は絶対に避けてください。

治療薬の選択にあたっては、担当医が最新の知見やガイドラインに基づき、最も安全で効果的な薬剤を処方します。
アレルギーなどがある場合は、必ず医師に伝えましょう。

治療期間と治癒確認

クラミジアの治療は、処方された抗生物質を指示通りに服用することで行われます。
薬剤によって服用期間は異なりますが、マクロライド系の場合は比較的短期間(例: アジスロマイシンは通常1回服用)で済むことが多いです。
医師から指示された期間、用法・用量を守って最後まで薬を飲み切ることが非常に重要です。
症状がなくなったとしても、自己判断で服用を中止してはいけません。
菌が完全に死滅せず、再燃したり薬剤耐性ができたりする可能性があります。

治療が完了した後、菌が完全に排除されたかを確認するために、「治癒確認検査」が行われます。
これは、治療終了後少なくとも3週間以上(推奨は3週間~1ヶ月後)経過してから、再度子宮頸管ぬぐい液や尿などを採取して行われます。
この検査でクラミジアが陰性であることが確認できれば、治療は成功と判断されます。

治癒確認検査で再び陽性となった場合は、薬剤が効きにくかった、パートナーからの再感染、または指示通りに薬を服用できなかった、といった可能性が考えられます。
その場合は、別の薬剤への変更など、再治療が必要となります。

パートナーの検査と治療の重要性

妊娠中のクラミジア感染が判明した場合、あなた自身の治療はもちろんのこと、パートナーの検査と治療も同時に行うことが非常に重要です。
これは、性行為感染症であるクラミジアの特性上、パートナーも感染している可能性が非常に高く、治療しなければ再感染を繰り返してしまう(ピンポン感染)リスクがあるためです。

パートナーも検査・治療が必要な理由

パートナーもクラミジアに感染している可能性が高い理由は、前述の通り男性のクラミジア感染も無症状であることが多いためです。
症状がないからといって感染していないとは限りません。

もしあなただけが治療を受けて治癒しても、パートナーが感染したままだと、性行為によって再びクラミジアに感染してしまいます。
これを「ピンポン感染」と呼びます。
ピンポン感染を繰り返していると、あなた自身も慢性的な炎症を起こしやすくなったり、不妊の原因となったりするリスクが高まります。
また、再度妊娠した場合にも、再びクラミジア感染のリスクを抱えることになります。

妊娠中に診断されたクラミジアを完全に治療し、再感染を防ぎ、安心して出産を迎えるためには、パートナーの協力が不可欠です。

再感染を防ぐために

パートナーの検査・治療を確実に行うことで、あなたへの再感染を防ぐことができます。
具体的な対応としては以下の点が重要です。

  • パートナーへの相談: まず、あなた自身がクラミジア陽性であったことをパートナーに正直に伝えます。
    心当たりがない状況であることや、クラミジア感染症の無症状の特性について説明し、性感染症であるためパートナーも感染している可能性が高いことを理解してもらう必要があります。
    デリケートな話ですが、二人の健康と、これから生まれてくる赤ちゃんの健康を守るために必要なことであることを丁寧に話しましょう。
  • パートナーの検査: パートナーもクラミジアの検査を受ける必要があります。
    男性の場合、主に尿検査で診断できます。
    泌尿器科や性感染症を専門とするクリニックなどで検査を受けられます。
    医療機関によっては、あなたがかかっている産婦人科がパートナーの検査も受け付けている場合もありますので、相談してみましょう。
  • パートナーの治療: パートナーの検査でクラミジア陽性と診断された場合は、あなたと同じタイミングで治療薬を服用することが推奨されます。
    同時に治療を開始することで、治療期間中のピンポン感染を防ぐことができます。
    パートナーが処方される薬剤は、あなたのものと同じ種類である場合も、そうでない場合もあります(妊娠中ではないため、使用できる薬剤の選択肢が広がることもあります)。
  • 治癒確認: パートナーも治療終了後、治癒確認検査を受けて、菌が消失したことを確認する必要があります。
  • 治療期間中の性行為について: あなたとパートナーが同時に治療を受けている期間中は、再感染を防ぐために性行為を控えるか、コンドームを正しく使用することが推奨されます。
    両方の治癒が確認されるまでは、油断しないことが大切です。

パートナーの検査・治療への協力は、二人の信頼関係の上に成り立ちますが、これは将来の家族の健康を守るための大切なステップです。
難しい側面もあるかもしれませんが、一人で抱え込まず、まずは担当の医師に相談して、どのようにパートナーに伝え、協力を求めるべきかアドバイスをもらうと良いでしょう。

妊娠中にクラミジア陽性になったら

妊娠中にクラミジア陽性と診断されたことは、あなたにとって大きなショックや不安をもたらすかもしれません。「心当たりがないのにどうして?」「赤ちゃんへの影響は?」といった様々な思いが頭を駆け巡るでしょう。しかし、最も大切なのは、一人で悩まず、落ち着いて適切な対応をとることです。

一人で悩まず産婦人科医に相談する

クラミジア陽性という診断結果を聞いたら、まずは担当の産婦人科医に率直な気持ちを伝えましょう。
心当たりのなさに対する疑問、赤ちゃんへの影響への不安、パートナーへの伝え方など、どんな小さなことでも構いません。
医師は、あなたの不安に寄り添い、正確な情報を提供してくれます。

  • 診断結果について詳しく聞く: なぜ心当たりがないのに陽性になったのか、考えられる原因についてもう一度説明を求めましょう。
    無症状感染や潜伏期間、パートナーの可能性など、不安が少しでも解消されるように質問しましょう。
  • 赤ちゃんへの影響について確認する: 現在の妊娠週数で、赤ちゃんにどのようなリスクが考えられるのか、具体的に確認しましょう。
    リスクを最小限にするために、どのような治療が必要なのか、治療によってリスクがどの程度軽減されるのかについても説明を受けましょう。
  • 治療計画について話し合う: 処方される薬剤の種類、服用方法、服用期間、治療後の治癒確認検査のタイミングなど、具体的な治療計画について詳しく聞きましょう。
    妊娠中でも安全な薬が処方されること、正しく服用すれば治癒する可能性が高いことを理解することで、安心して治療に取り組めます。
  • パートナーへの対応について相談する: パートナーにどのように伝えるべきか、パートナーがどこで検査や治療を受ければ良いのかなど、具体的なアドバイスを求めましょう。
    必要であれば、パートナーへの説明を医師からしてもらうことも可能か、相談してみましょう。

担当の産婦人科医は、あなたの妊娠経過や健康状態を最もよく把握しています。
信頼できる医師に相談することで、正しい情報を得て、冷静に次のステップに進むことができます。
不安な気持ちを抱え込まずに、まずは「相談する」という一歩を踏み出しましょう。

今後の治療計画と出産への影響を確認

クラミジア陽性と診断された場合、今後の妊娠経過、出産、産後にかけての計画は、担当医と密に連携して進めていくことになります。

  • 治療の実施と治癒確認: 処方された抗生物質をしっかりと服用し、必ず治癒確認検査を受けます。
    治癒が確認されれば、出産時の赤ちゃんへの感染リスクは大幅に低下します。
  • 出産方法について: 治癒が確認されれば、クラミジア感染が原因で出産方法(経腟分娩か帝王切開かなど)が変わることは基本的にありません。
    しかし、もし出産時までに治癒が確認できなかった場合や、非常に稀ですが母体の感染が重症化しているような場合は、出産方法について慎重に検討が必要になる可能性もあります。
    いずれにしても、担当医から具体的な説明がありますので、指示に従いましょう。
  • 産後のフォロー: 赤ちゃんが産道感染している可能性がある場合(治療が間に合わなかった場合など)、新生児期に結膜炎や肺炎を発症しないか注意深く観察が必要になります。
    必要に応じて、小児科医とも連携して赤ちゃんの健康管理が行われます。

妊娠中のクラミジア感染は、早期に発見し適切に対処すれば、ほとんどの場合、母子ともに大きな問題なく出産を迎えることができます。
重要なのは、陽性という結果に動揺しすぎず、すぐに医療機関を受診し、医師の指示に従って治療を完了させることです。
そして、パートナーも含めた対応を確実に行うことが、再感染を防ぎ、将来の家族の健康を守るために不可欠です。

よくある質問 (FAQ)

妊娠中のクラミジア感染について、「心当たりがない」という状況を含め、妊婦さんが抱きやすい疑問点にお答えします。

治療すれば赤ちゃんへの影響はなくなる?

妊娠中にクラミジア感染が判明し、抗生物質による適切な治療を完了して治癒が確認されれば、出産時に赤ちゃんが産道を通る際の感染リスクを大幅に減らすことができます。
治療によって母体からクラミジア菌が消失すれば、赤ちゃんが産道感染する可能性はほぼなくなると考えて良いでしょう。

ただし、治療が遅れた場合や、治癒確認検査で陰性とならなかった場合などは、赤ちゃんへの感染リスクが残るため、出産後の赤ちゃんの状態を注意深く観察する必要があります。
早期発見・早期治療が、赤ちゃんへの影響を防ぐ鍵となります。

いつから性行為を再開できる?

あなたとパートナーの両方がクラミジアの治療を完了し、その後の治癒確認検査で両方とも陰性となったことが確認できてから、性行為を再開するのが最も安全です。
治癒確認検査を受ける前に性行為を再開すると、まだどちらかが感染していた場合に再感染してしまうリスクがあります。
具体的な性行為再開のタイミングについては、担当の医師に確認してください。
通常は、治療終了後、治癒確認検査で陰性が確認されてからとなります。

治療薬の副作用は?

妊娠中に処方されるクラミジア治療薬(マクロライド系抗生物質など)は、比較的安全性が高い薬剤が選択されますが、全く副作用がないわけではありません。
一般的な副作用としては、吐き気や下痢などの消化器症状、軽い頭痛、めまいなどが挙げられます。
これらの副作用は一時的なものがほとんどで、服用を続けるうちに軽減することが多いです。

もし副作用がつらい場合や、アレルギー反応(発疹、かゆみなど)が出た場合は、我慢せずにすぐに担当の医師に相談してください。
自己判断で薬の服用を中止したり、量を減らしたりすることは、治療がうまくいかなくなる原因となります。

今後の妊娠に影響する?

妊娠中のクラミジア感染を適切に治療して治癒すれば、今回の感染が原因で今後の妊娠に影響が出る可能性は低いと考えられます。

しかし、もしクラミジア感染を長期間放置してしまったり、治療が不十分だったりすると、卵管や子宮などの生殖器に炎症が広がり、卵管が詰まるなどして、将来の不妊の原因となる可能性があります。
そのため、今回の妊娠中のクラミジア感染を確実に治療し、再感染を防ぐことが、今後の妊娠を考える上でも非常に重要です。

夫以外のパートナーの可能性についてどう考えるべきか?

「心当たりがない」という状況でクラミジア陽性となった場合、配偶者以外のパートナーとの関係を疑われることに対して、強い不安や戸惑いを感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、前述のように、クラミジア感染症は無症状感染や長い潜伏期間、パートナーの無症状感染など、様々な理由から「心当たりがない」状況で発覚することが多々あります。

医療機関として最も重要なのは、感染経路の可能性を探るよりも、現在感染しているクラミジアを確実に治療し、母体と赤ちゃんの健康を守ることです。
そして、パートナーの感染の可能性も考慮し、一緒に治療を進めることで再感染を防ぎ、将来的な健康リスクを回避することです。

性感染症の診断は、時に夫婦やパートナー間の信頼関係に大きな影響を与える可能性があります。
しかし、医療的な観点からは、過去の状況を追求するよりも、現在の感染に対して適切な対応をとることが最優先です。
あなたが抱える精神的な負担についても、一人で悩まず、必要であれば心理的なサポートが受けられる場所や、信頼できる相談相手を探すことも考えてみてください。
まずは、担当の医師に、あなたの不安な気持ちを正直に話してみましょう。

【まとめ】妊娠中クラミジア心当たりない、その時どうする?

妊娠中にクラミジア陽性という診断を受け、「心当たりがない」ことに強い不安や戸惑いを感じているあなたへ。
クラミジア感染症は無症状で経過することが多く、特に女性は自覚症状がないことがほとんどです。
また、感染していても症状が出るまでに時間がかかる(潜伏期間が長い)ことや、パートナーが無症状で感染していることから、性行為があったこと自体は認識していても、特定の「心当たり」に結びつかないケースは珍しくありません。

「心当たりがない=不貞行為があった」と直結するわけではないことを理解し、まずは落ち着くことが大切です。
重要なのは、陽性という事実を受け止め、適切に対応することです。

妊娠中のクラミジア感染は、放置すると母体には早産や前期破水などのリスクを、赤ちゃんには出産時の産道感染による新生児結膜炎や新生児肺炎などのリスクをもたらす可能性があります。
しかし、幸いなことに、クラミジア感染症は抗生物質によって治療可能です。
妊娠中でも安全性が確認されている薬剤が選択され、適切に服用すればほとんどの場合、治癒します。

クラミジア陽性と診断されたら、以下のステップを踏んでください。

  • 担当の産婦人科医に相談する: 診断結果に対する疑問や不安を率直に伝え、なぜ心当たりがないのか、赤ちゃんへの影響はどうか、今後の治療計画はどのようなものかなど、詳しく説明を受けましょう。
  • 医師の指示通りに治療薬を服用する: 処方された抗生物質を、期間や用量を守って最後まで飲み切ることが非常に重要です。
  • 治癒確認検査を必ず受ける: 治療終了後、一定期間をおいて再検査を受け、菌が完全に排除されたことを確認します。
  • パートナーの検査と治療を依頼する: パートナーも無症状で感染している可能性が高いため、必ず検査を受け、陽性の場合はあなたと同時に治療してもらうことが不可欠です。
    再感染を防ぎ、ピンポン感染を断ち切るために、パートナーの協力があなたの治癒、そして家族の健康を守る上で最も重要です。

妊娠中のクラミジア感染は、早期に発見し適切に対処すれば、母子ともに健康に出産を迎えることが十分に可能です。
「心当たりがない」という状況は、あなたが特別なわけではなく、クラミジアという感染症の特性によるものだと理解してください。
不安な気持ちは当然ですが、一人で抱え込まず、まずは担当の産婦人科医に相談し、今後の治療と対応について一緒に考えてもらいましょう。
正確な情報を得て、適切な医療を受けることが、あなた自身と生まれてくる赤ちゃん、そして家族の健康を守るための最善の道です。

免責事項:
本記事は、妊娠中のクラミジア感染症に関する一般的な情報提供を目的としています。
個々の症状や治療法については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。
本記事の情報に基づいて行われた行為によって生じた損害については、一切責任を負いかねます。

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