口の周りにピリピリとした痛みや痒みを感じ、やがて小さな水ぶくれができてしまう口唇ヘルペス。「これは他の人にうつるのだろうか?」「うつる確率はどのくらい?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)というウイルスが原因で起こる感染症です。このウイルスは非常に感染力が高く、多くの人が知らず知らずのうちに感染していると言われています。
この記事では、口唇ヘルペスの感染力やうつる確率、具体的な感染経路から、ご自身や大切な人を守るための予防策までを詳しく解説します。
口唇ヘルペスの感染力と「うつる確率」
口唇ヘルペスの原因である単純ヘルペスウイルスは、感染力が非常に強いことで知られています。そのため、「うつる確率」を具体的な数値で示すことは難しいですが、症状が出ている人との接触は感染リスクが非常に高いと理解しておくことが重要です。
特に、口唇ヘルペスの特徴である水ぶくれ(水疱)の中には、ウイルスが大量に含まれています。この水ぶくれが破れて中の液体に触れると、高確率で感染する可能性があります。
口唇ヘルペスの感染力が高い時期とは?
口唇ヘルペスの感染力は、症状の段階によって異なります。最も感染力が高いのは、唇やその周りに水ぶくれができている時期です。
- 初期症状期(ピリピリ、チクチクする頃):この段階でも皮膚の表面にウイルスが排出され始めているため、感染の可能性があります。
- 水ぶくれ期:ウイルス量が最も多く、感染力がピークに達します。
- かさぶた期:水ぶくれが乾燥してかさぶたになると、ウイルス量は減少しますが、かさぶたが完全に剥がれ落ちるまでは、まだ感染する可能性があります。
症状が完全に治まるまでは、油断せずに予防策を続けることが大切です。
口唇ヘルペスの具体的な感染経路
口唇ヘルペスは、ウイルスが含まれた唾液や水ぶくれの液体が、皮膚や粘膜の小さな傷口から侵入することで感染します。主な感染経路は「直接的な接触」と「間接的な接触」の2つです。
直接的な接触(キス、性行為など)による感染
ウイルスを持っている人との直接的な接触は、最も感染リスクが高い経路です。
- キス、頬ずり
- オーラルセックスなどの性的な接触
- 症状が出ている手で触れられること
特に、症状が出ている相手とのキスは、ウイルスが直接粘膜に触れるため、非常に感染しやすい行為です。
間接的な接触(タオル、食器など)による感染
ウイルスが付着した物を介して感染することもあります。直接的な接触に比べればリスクは低いとされていますが、注意は必要です。
- タオルやハンカチの共有
- グラスや食器、カトラリーの共有
- リップクリームや口紅の貸し借り
特に、湿ったタオルなどではウイルスが生存しやすいため、家族間でもタオルの共有は避けるのが賢明です。
口唇ヘルペスがうつる期間と時期
口唇ヘルペスは、症状の経過によって「うつりやすさ」が変化します。どの期間に特に注意すべきかを理解しておきましょう。
口唇ヘルペスの症状経過とうつりやすさ
一般的な症状の経過と、それぞれの段階での感染リスクは以下の通りです。
初期症状(ピリピリ感)の時期
唇や口の周りにピリピリ、チクチク、ムズムズといった違和感やかゆみが出現します。この時点ですでにウイルスは活動を始めており、皮膚表面への排出が始まっている可能性があるため、他者への感染リスクがあります。
水ぶくれの時期
初期症状から半日〜1日ほどで、赤く腫れた部分に小さな水ぶくれ(水疱)が複数現れます。この水ぶくれの中にはウイルスが大量に含まれており、感染力が最も高い時期です。自分で水ぶくれを潰すのは、症状を悪化させ、他の部位へ感染を広げる(自家感染)原因にもなるため、絶対にやめましょう。
かさぶたの時期
数日経つと水ぶくれが破れ、乾いてかさぶたになります。この段階になるとウイルス量は減少し、感染力も低下していきます。しかし、かさぶたが完全に取れるまではウイルスが残っている可能性があるため、油断は禁物です。
感染から発症までの潜伏期間
単純ヘルペスウイルスに初めて感染してから症状が出るまでの潜伏期間は、一般的に2日〜2週間程度とされています。ただし、感染しても症状が出ない「不顕性感染」のまま、ウイルスが体内に潜伏し続けるケースも非常に多いです。
口唇ヘルペスに「うつらない人」はいるのか?
「口唇ヘルペスにうつらない人」は基本的にいないと考えられています。実際、日本の成人の半数以上が単純ヘルペスウイルスに感染しているというデータもあり、多くの人が自覚症状のないまま抗体を持っています(不顕性感染)。
一度感染すると、ウイルスは顔の三叉神経節などに潜伏し続けます。そして、風邪、疲労、ストレス、強い紫外線などで体の免疫力が低下したときに、ウイルスが再活性化して症状(再発)を引き起こします。
口唇ヘルペスの感染を防ぐための予防策
口唇ヘルペスの感染拡大を防ぐためには、症状が出ている人も、周りの人も、それぞれが適切な対策を取ることが大切です。
感染している人ができる予防策
もしご自身に症状が出ている場合は、周りの人にうつさないための配慮が必要です。
- 患部を触らない:無意識に触ってしまうと、手を介して他の場所や他人にウイルスを広げてしまいます。
- こまめに手を洗う:もし患部に触れてしまった場合は、すぐに石鹸で手を洗いましょう。
- キスや頬ずりを避ける:特に赤ちゃんや子ども、パートナーとの接触には注意が必要です。
- タオルや食器の共有を避ける:家族と生活していても、タオルやグラス、箸などは自分専用のものを用意しましょう。
- 水ぶくれを潰さない:症状の悪化や感染拡大の原因になります。
感染していない人ができる予防策
家族やパートナーなど、身近な人に症状が出ている場合は、以下の点に注意しましょう。
- 症状が出ている人の患部に触れない
- タオル、食器、カトラリーなどを共有しない
- 症状が出ている間のキスなどの直接的な接触は避ける
- こまめな手洗いを心がける
口唇ヘルペスの治療法と薬について
口唇ヘルペスの治療には、主に抗ウイルス薬が用いられます。薬には、塗り薬(軟膏・クリーム)、飲み薬(内服薬)、点滴などがあり、症状の程度によって使い分けられます。
治療のポイントは、できるだけ早く開始することです。ピリピリとした初期症状の段階で治療を始めると、症状の悪化を抑え、治りを早める効果が期待できます。
市販薬も販売されていますが、初めて口唇ヘルペスができた場合や、症状の範囲が広い、痛みが強いといった場合は、自己判断せず、皮膚科や内科など医療機関を受診しましょう。
口唇ヘルペスになる原因(ストレスなど)
一度、単純ヘルペスウイルスに感染すると、ウイルスは体外には排出されず、神経節に潜伏します。普段は免疫力によって活動が抑えられていますが、何らかのきっかけで免疫力が低下すると、ウイルスが再び活性化して再発します。
再発の引き金となる主な要因は以下の通りです。
- 疲労、睡眠不足
- 精神的なストレス
- 風邪や発熱
- 強い紫外線
- 月経前などホルモンバランスの変化
- 胃腸の不調
口唇ヘルペスを再発させないためには、日頃からバランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスを溜めない生活を送ることが大切です。
***免責事項***
本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。症状について不安な点がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。