仕事中、デスクに向かっているときや会議中、運転中に、突然強い眠気に襲われ、一瞬意識が遠のくような感覚を経験したことはありませんか?これは単なる疲れや寝不足だと思われがちですが、その裏には様々な原因が潜んでいる可能性があります。
特に、意識が飛ぶほどの眠気は、仕事の効率を著しく低下させるだけでなく、思わぬ事故につながる危険性もはらんでいます。もしかしたら、見過ごせない体のサインかもしれません。
この記事では、仕事中の「意識が飛ぶ」ような危険な眠気の正体、その主な原因、今すぐできる応急処置、そして病院を受診すべき目安や何科に行けば良いのかを詳しく解説します。この情報が、あなたの眠気の問題を解決し、安全で快適な毎日を取り戻す一助となれば幸いです。
仕事中に「意識が飛ぶ」と感じるほどの強い眠気は、単に目が閉じそうになる居眠りとは少し異なる、独特の感覚かもしれません。多くの場合、これは「マイクロスリープ(瞬眠)」と呼ばれる現象と関係しています。
このセクションでは、マイクロスリープの具体的な定義と、それが仕事中の「意識が飛ぶ」という感覚とどのように結びついているのか、そしてその状態が仕事においてどのような危険性を伴うのかを解説します。
マイクロスリープ(瞬眠)とは
マイクロスリープは、数秒から数十秒程度のごく短い時間に生じる睡眠状態です。本人は眠ったという自覚がないことが多く、「ぼーっとしていた」「意識が飛んだ」と感じるケースがほとんどです。脳波を測定すると、起きている状態から睡眠状態(特にノンレム睡眠の初期段階)へと変化していることが確認されます。
通常の居眠りがある程度の時間(数分〜数十分)継続し、周囲の状況や刺激(声かけなど)で目が覚めるのに対し、マイクロスリープは非常に短時間で、本人に自覚がないまま、または自覚が非常に乏しいまま終了するのが特徴です。たとえ目を開けていても、脳は眠っている状態になることがあります。
仕事中に「意識が飛ぶ」マイクロスリープが起こる危険性
仕事中にマイクロスリープが起こると、その数秒〜数十秒の間に意識や集中力が完全に途切れてしまいます。これは、以下のような様々な危険性を引き起こします。
- 作業ミスや入力ミス: PCでの作業中に文字入力を間違えたり、必要な操作を忘れたりします。
- 会議中の内容を聞き逃す: 重要な議論や指示を聞き逃し、後でリカバリーに苦労します。
- 運転中の事故: 最も危険なケースです。数秒のマイクロスリープが、重大な交通事故につながる可能性があります。統計的にも、運転中の眠気は飲酒運転と同等、あるいはそれ以上に危険であると指摘されています。
- 機械操作中の事故: 工場や建設現場などで機械を操作している場合にマイクロスリープが起こると、自分自身や周囲の人を危険にさらすことになります。
- コミュニケーションの障害: 会話中に話が途切れたり、相手の言葉を理解できなかったりします。
特に、集中力が必要な作業や、わずかな判断の遅れが大きな影響を与える場面では、マイクロスリープは非常に深刻な問題となります。単なる不注意や集中力不足として片付けず、その背景にある原因を考えることが重要です。
仕事中に眠気で「意識が飛ぶ」主な原因
仕事中の「意識が飛ぶ」ほどの強い眠気やマイクロスリープは、単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って生じることがあります。多くの場合、根本には睡眠に関わる問題がありますが、それ以外の病気や生活習慣も大きく影響します。
ここでは、仕事中に危険な眠気が起こる主な原因を掘り下げて解説します。
睡眠不足・睡眠の質の低下
最も一般的でありながら、見過ごされがちな原因が慢性的な睡眠不足や睡眠の質の低下です。
必要な睡眠時間には個人差がありますが、一般的に成人には7〜8時間程度の睡眠が必要とされています。しかし、多忙な現代社会では、十分な睡眠時間を確保できていない人が少なくありません。毎日少しずつ睡眠時間が不足していくと、「睡眠負債」として蓄積され、日中の強い眠気として現れます。
また、たとえベッドにいる時間が長くても、睡眠の質が低ければ脳や体の休息は不十分になります。
- 睡眠の質を低下させる要因の例:
- 寝室の環境が悪い(騒音、光、不快な温度・湿度)
- 寝る直前のスマホやPCの使用(ブルーライトの影響)
- 寝る前のカフェインやアルコールの摂取
- 精神的な悩みやストレス
- 不規則な生活リズム
質の低い睡眠は、脳の覚醒レベルを適切に維持できなくさせ、日中の強い眠気やマイクロスリープを引き起こしやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害
日中の強い眠気の背後に、睡眠障害が隠れていることもあります。特に注意が必要なのが睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。
SASは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。これにより、睡眠中に体が酸素不足になり、脳が覚醒して呼吸を再開させようとします。この覚醒は本人が気付かないほど短時間である場合が多いですが、頻繁に起こるため深い睡眠が得られず、睡眠の質が著しく低下します。その結果、日中に耐えがたいほどの強い眠気に襲われるのです。
SASの主な症状は、激しいいびき、睡眠中の呼吸停止、日中の強い眠気ですが、他にも起床時の頭痛、集中力の低下、倦怠感などの症状が見られることがあります。肥満の方に多い傾向がありますが、痩せている方でも発症することがあります。
SAS以外にも、以下のような様々な睡眠障害が日中の過眠の原因となることがあります。
- 周期性四肢運動障害・むずむず脚症候群: 睡眠中に足などがピクつく、あるいは不快な感覚でじっとしていられないため、睡眠が妨げられます。
- 概日リズム睡眠障害: 体内時計が乱れ、望ましい時間に眠ったり起きたりできない状態です。
これらの睡眠障害は、専門的な診断と治療が必要です。
ナルコレプシー・特発性過眠症
睡眠不足やSASとは異なり、脳の機能異常によって引き起こされる、より重篤な睡眠障害としてナルコレプシーと特発性過眠症があります。これらは指定難病に含まれることもあり、専門医による正確な診断と治療が不可欠です。
ナルコレプシーは、日中に突然強い眠気に襲われ、場所や状況にかかわらず眠り込んでしまう「睡眠発作」が特徴的な病気です。居眠りをしてもすぐに眠気が解消されず、何度も繰り返すことがあります。また、ナルコレプシーの患者さんの約7割に「情動脱力発作(カタプレキシー)」が見られます。これは、笑ったり怒ったりといった強い感情の動きをきっかけに、突然体の力が抜けてしまう症状です。意識は保たれていることが多いですが、転倒などの危険を伴います。その他、入眠時幻覚(寝入りばなに現実感のある夢を見る)や金縛り(睡眠麻痺)といった症状を伴うこともあります。
特発性過眠症は、ナルコレプシーのような睡眠発作や情動脱力発作はありませんが、日中の耐えがたいほどの強い眠気が持続するのが特徴です。夜間の睡眠時間が長くても日中に眠気が改善せず、目覚めが悪かったり、居眠りから覚醒するのに時間がかかったりすること(睡眠酩酊)もあります。
これらの病気は、適切な治療を行わないと日常生活に大きな支障をきたし、学業や仕事、人間関係に深刻な影響を与える可能性があります。
薬の副作用・内分泌系の問題
服用している薬の副作用として眠気が現れることがあります。特に、抗ヒスタミン薬(アレルギー性鼻炎の薬など)、精神安定剤、抗うつ薬、一部の降圧剤などは眠気を引き起こしやすいことが知られています。市販薬の中にも眠気を催す成分を含むものがあります。新しい薬を飲み始めてから眠気が強くなった場合は、副作用の可能性を考慮し、医師や薬剤師に相談することが重要です。自己判断で服用を中止するのは危険です。
また、内分泌系の病気が日中の眠気の原因となることもあります。例えば、甲状腺機能低下症では、全身の代謝が低下し、倦怠感や疲労感とともに強い眠気を感じることがあります。糖尿病や貧血なども、原因となる可能性があります。これらの病気は、血液検査などで診断されます。
精神的な要因(うつ病など)
精神的な問題も、日中の過眠につながることがあります。うつ病の症状の一つとして、不眠(寝付けない、途中で目が覚める)はよく知られていますが、反対に過眠(長時間寝ても眠い、一日中眠い)が現れることも珍しくありません。気分の落ち込み、興味・関心の喪失、倦怠感、集中力の低下といったうつ病の他の症状とともに強い眠気がある場合は、精神科や心療内科への相談を検討しましょう。
ストレスや不安も睡眠に悪影響を与え、結果として日中の眠気を引き起こすことがあります。過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、夜間の睡眠を浅くしたり、寝つきを悪くしたりすることがあります。
不規則な生活習慣
現代社会では、不規則な生活習慣が原因で体内時計が乱れ、日中の眠気を引き起こしているケースが多く見られます。
- シフトワークや夜勤: 勤務時間が不規則な場合、体内時計と社会生活のリズムがずれやすく、睡眠時間が短くなったり睡眠の質が低下したりして、日中の強い眠気につながります。
- 時差ボケ: 海外出張などでの急激な時差移動は、一時的に体内時計を乱し、日中の眠気や夜間の不眠を引き起こします。
- 週末の寝だめ: 平日の睡眠不足を解消するために週末に長時間寝だめをすると、一時的には楽になったように感じますが、体内時計が乱れ、週明けに再び強い眠気に悩まされる原因となります。
体内時計の乱れは、睡眠覚醒リズムを不安定にし、日中の望ましくない時間帯に眠気を生じさせやすくします。
今すぐできる!仕事中の危険な眠気・「意識が飛ぶ」場合の対策・応急処置
仕事中に強い眠気、特に「意識が飛びそう」と感じた場合に、その場でできる応急処置や対策があります。これらは根本的な解決にはなりませんが、一時的に眠気をしのぎ、危険な状態を回避するために有効です。
ここでは、仕事中に眠気に襲われた際に試せる即効性のある対策を紹介します。
冷たい刺激やツボ押し
眠気を覚ますのに効果的なのは、脳を覚醒させるための物理的な刺激です。
- 顔を洗う: 冷たい水で顔を洗うと、皮膚の冷たい刺激が脳を活性化させ、眠気を一時的に軽減できます。
- 冷たい飲み物を飲む: キンと冷えた水をゆっくり飲むことも効果があります。冷たい刺激が胃を介して脳に伝わります。
- クールシートや濡れタオル: 首筋や顔にクールシートを貼ったり、濡れタオルを当てたりするのも良いでしょう。
- ツボ押し: 眠気に効くとされるツボを刺激することも試してみてください。
- 合谷(ごうこく): 手の甲側で、親指と人差し指の骨が交わる少し手前のくぼみ。少し強めに押すと効果的です。
- 中衝(ちゅうしょう): 中指の爪の生え際の中央。少し痛みを感じる程度に押します。
- 百会(ひゃくえ): 頭頂部で、両耳の一番高いところを結んだ線と、顔の中心を通る線が交わる点。優しく指の腹で押したり、円を描くようにマッサージしたりします。
これらの刺激は、一時的な覚醒効果をもたらしますが、効果が持続するわけではないことを理解しておきましょう。
カフェインやブドウ糖の摂取
眠気覚ましとして定番なのが、カフェインやブドウ糖の摂取です。
- カフェイン: コーヒー、お茶(緑茶、紅茶)、エナジードリンクなどに含まれています。カフェインはアデノシンという眠気を誘う物質の働きをブロックすることで、覚醒効果を発揮します。摂取後20〜30分程度で効果が現れ始めることが多いです。ただし、効果の現れ方や持続時間には個人差があります。また、夕方以降に大量に摂取すると夜間の睡眠を妨げる可能性があるため注意が必要です。
- ブドウ糖: 脳の唯一のエネルギー源です。血糖値が下がると脳の働きが鈍くなり、眠気や集中力の低下を招くことがあります。チョコレートやキャンディー、ジュースなどでブドウ糖を摂取すると、一時的に脳のエネルギーが補給され、眠気が和らぐことがあります。ただし、砂糖の摂りすぎは健康に良くありませんし、急激な血糖値の上昇と下降はかえって眠気を誘うこともあるため、適量に留めましょう。
カフェインもブドウ糖も、一時的な対処法であり、根本的な原因を解決するものではありません。依存しすぎないように注意が必要です。
短時間の仮眠(パワーナップ)
可能であれば、短時間の仮眠(パワーナップ)を取ることが、午後の眠気対策として非常に有効です。
理想的な仮眠時間は15〜20分程度とされています。これ以上長く寝てしまうと、深い睡眠に入ってしまい、目覚めが悪くなったり、夜の睡眠に悪影響を与えたりすることがあります。
- パワーナップのコツ:
- 午後早い時間帯(昼食後〜午後3時頃まで)に取るのが効果的です。
- 静かで暗い場所が理想ですが、難しければアイマスクや耳栓を利用するのも良いでしょう。
- 座ったままでも効果があります。
- アラームをセットして、寝すぎないように注意しましょう。
職場で仮眠を取るのが難しい場合は、休憩時間中にデスクで目を閉じてリラックスするだけでも、疲労回復に繋がることがあります。
体を動かす・換気する
同じ姿勢で長時間いると血行が悪くなり、眠気を誘いやすくなります。軽い運動や新鮮な空気を取り込むことも眠気対策になります。
- ストレッチや軽い運動: 席を立ってストレッチをしたり、職場の周りを少し歩いたりすることで血行が促進され、脳が活性化します。
- 換気: 室内の空気が滞っていると、酸素濃度が低下し、眠気を感じやすくなります。窓を開けて新鮮な空気を取り込むだけでも効果があります。
- 姿勢を正す: 猫背などの悪い姿勢は呼吸を浅くし、眠気を誘発することがあります。背筋を伸ばして正しい姿勢を保つよう意識しましょう。
これらの応急処置は、あくまで一時的なものです。頻繁に「意識が飛ぶ」ような眠気に襲われる場合は、より根本的な原因に目を向ける必要があります。
眠気で「意識が飛ぶ」状態が続く場合は要注意!病院受診の目安と何科
仕事中の「意識が飛ぶ」ような危険な眠気が、これらの応急処置を試しても改善しない場合や、頻繁に起こる場合は、単なる寝不足ではなく、何らかの病気が隠れている可能性があります。そのような場合は、自己判断せずに専門家である医師の診断を受けることが非常に重要です。
ここでは、どのような症状が現れたら病院を受診すべきか、そして何科に行けば良いのかを解説します。
病院を受診すべき症状・サイン
以下のような症状が続いている場合は、一度医療機関に相談することを強く推奨します。
- 週に複数回、あるいはほぼ毎日、意識が飛ぶような強い眠気に襲われる
- 十分な睡眠時間(7〜8時間以上)を確保しているにもかかわらず、日中の眠気が改善しない
- 眠気によって、仕事のパフォーマンスが著しく低下したり、ミスが増えたりしている
- 会議中や運転中など、眠ってはいけない場面で眠気に抵抗できない、あるいは実際に眠ってしまうことがある
- 眠気以外にも、激しいいびき、睡眠中の呼吸停止、起床時の頭痛、異常な倦怠感、気分の落ち込みなどの症状を伴う
- 仮眠をとっても眠気が解消されない、あるいはかえって悪化する
- 特定の時間帯(例:食後だけでなく、午前中から強い眠気がある)に強い眠気が出やすい
これらの症状は、睡眠不足だけでなく、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、特発性過眠症、あるいはその他の病気が原因である可能性を示唆しています。放置しておくと、仕事だけでなく、日常生活全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
何科を受診すべきか(脳神経内科・精神科・睡眠外来)
日中の強い眠気で病院を受診する場合、どの科に行けば良いか迷うかもしれません。症状によって適切な科が異なりますが、最初に相談しやすいのは、かかりつけ医や内科医でしょう。そこで症状を伝えて、より専門的な診療が必要かどうかを判断してもらうのが一般的な流れです。
専門的な診療が必要な場合は、以下の科への受診を検討します。
受診を検討する科 | 主な対象となる病気や症状 |
---|---|
睡眠外来・睡眠センター | 睡眠障害全般(睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、特発性過眠症、概日リズム睡眠障害、不眠症など)の診断・治療を行う専門施設。最も包括的な診療が期待できます。 |
脳神経内科 | ナルコレプシーや特発性過眠症など、脳の機能異常が原因と考えられる睡眠障害や神経系の病気。 |
精神科・心療内科 | うつ病や不安障害など、精神的な要因による過眠や睡眠障害。 |
耳鼻咽喉科 | 睡眠時無呼吸症候群(特に閉塞性睡眠時無呼吸タイプ)の原因となる鼻や喉の形態的な問題を診断・治療。 |
内科 | 甲状腺機能低下症、糖尿病、貧血など、全身の病気が原因の眠気や、初期の睡眠障害の相談。 |
ご自身の症状がどの科に当てはまるか判断が難しい場合は、まずはかかりつけ医や近くの内科を受診し、相談してみるのが良いでしょう。その際、いつからどのような眠気があるか、他の症状はないかなどを具体的に伝えられるようにメモしておくと診察がスムーズに進みます。
病院での主な検査内容
病院を受診すると、医師は問診や診察に加えて、必要に応じて以下のような検査を行います。これらの検査を通じて、眠気の原因を特定し、適切な治療法を見つけ出します。
- 問診・診察: 症状の詳細、睡眠習慣、生活リズム、既往歴、服用中の薬などについて詳しく聞かれます。
- 睡眠日誌の記録: 毎日、寝た時間、起きた時間、夜間覚醒の有無、日中の眠気の程度などを記録し、医師に提出します。客観的な睡眠覚醒パターンを把握するのに役立ちます。
- 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG): 一泊入院して行う検査です。睡眠中の脳波、眼球運動、筋電図、呼吸、心電図、血中酸素濃度などを同時に測定し、睡眠の深さや質、呼吸状態などを詳細に評価します。睡眠障害の診断に不可欠な検査です。
- 反復睡眠潜時検査(MSLT): PSG検査の翌日に行われることが多い検査です。日中に決められた間隔(通常2時間おき)で短時間(通常20分間)仮眠を取り、それぞれどのくらいの時間で眠りにつくか(睡眠潜時)を測定します。ナルコレプシーや特発性過眠症などの過眠症の診断に用いられます。
- ウェアラブル端末を用いた簡易検査: 自宅で就寝時に腕や指に装着して行う検査です。心拍や活動量などから睡眠状態を推定します。SASの簡易検査として用いられることもあります。
- 血液検査: 甲状腺ホルモン、血糖値、貧血の有無などを調べ、内分泌系の病気や貧血などが眠気の原因でないかを確認します。
- 必要に応じたその他の検査: 脳波検査や頭部MRIなど、他の原因が疑われる場合に検討されることがあります。
これらの検査結果に基づいて、医師が診断を下し、睡眠衛生指導(良い睡眠習慣のアドバイス)や薬物療法、CPAP療法(SASに対する治療法)などの治療法を提案します。
根本改善を目指す!日中の眠気・「意識が飛ぶ」状態の予防策
日中の「意識が飛ぶ」ような強い眠気は、一時的な応急処置だけでは根本的な解決にはなりません。日々の生活習慣を見直し、睡眠の質を高め、体内時計を整えることが、予防と根本改善のために最も重要です。
ここでは、危険な眠気を遠ざけるための予防策を具体的に紹介します。
規則正しい睡眠リズムを作る
体には約24時間の周期を持つ体内時計があり、これによって睡眠と覚醒のリズムが調整されています。このリズムが乱れると、日中の眠気や夜間の不眠が生じやすくなります。
- 毎日同じ時間に寝て起きる: 週末も平日から大きくずらさないように心がけましょう。理想的には、毎日同じ時間に就寝し、同じ時間に起床することで、体内時計が安定します。
- 朝、日光を浴びる: 起床後すぐにカーテンを開けたり外に出たりして、太陽の光を浴びましょう。光の刺激が体内時計をリセットし、覚醒を促します。
- 寝る前に強い光を避ける: 特にスマートフォンやPC、タブレットのブルーライトは脳を覚醒させてしまうため、就寝1〜2時間前からは使用を控えるのが理想です。
規則正しい生活を送ることが、良質な睡眠への第一歩です。
寝室環境を整える
快適な睡眠を得るためには、寝室の環境も重要です。
- 適切な温度と湿度: 一般的に、寝室の温度は20℃前後、湿度は50%前後が快適とされています。夏は涼しく、冬は暖かく保ちましょう。
- 光の遮断: 部屋を暗くすることで、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が促されます。遮光カーテンなどを利用して、外からの光が入らないようにしましょう。
- 騒音対策: 寝室は静かな環境が理想です。耳栓やホワイトノイズを活用することも有効です。
- 寝具の見直し: 体に合ったマットレス、枕、寝具を選ぶことも大切です。
五感に心地よい環境を整えることで、リラックスして眠りに入りやすくなります。
ストレスを適切に管理する
過度なストレスや悩みは、睡眠を妨げ、日中の眠気につながります。ストレスを溜め込まない工夫が必要です。
- リラクゼーションを取り入れる: 寝る前にぬるめのお風呂に入る、軽いストレッチをする、腹式呼吸や瞑想を行うなど、自分に合ったリラックス法を見つけましょう。
- 趣味や楽しみを持つ: 仕事以外の時間でリフレッシュできる時間を作ることも重要です。
- 悩み事を抱えすぎない: 一人で抱え込まず、信頼できる家族や友人、同僚に相談したり、必要に応じて専門家(カウンセラーなど)のサポートを受けたりすることも考えましょう。
食生活や運動習慣を見直す
健康的な食生活と適度な運動は、全身の健康だけでなく、睡眠の質にも良い影響を与えます。
- バランスの取れた食事: 栄養バランスの良い食事を規則正しく摂りましょう。特に、夕食は寝る直前に摂らず、就寝3時間前までに済ませるのが理想です。
- 寝る前の飲食を控える: 特に消化に時間がかかるものや、胃腸に負担をかけるものの摂取は避けましょう。
- 定期的な運動: 適度な運動は、寝つきを良くし、睡眠を深くする効果があります。ウォーキング、ジョギング、ヨガなどがおすすめです。ただし、寝る直前の激しい運動はかえって体を興奮させてしまうことがあるため、就寝3時間前までには終えるようにしましょう。
アルコール・カフェインの摂取タイミングに注意
アルコールやカフェインは、一時的に眠気を紛らわす効果があるように感じますが、実は睡眠の質を低下させたり、体内時計を乱したりする原因となります。
- 就寝前のアルコール: アルコールは一時的に眠気を誘いますが、睡眠の途中で覚醒を増やし、睡眠を浅くしてしまいます。「寝酒」は逆効果になることが多いです。
- 夕方以降のカフェイン: カフェインの覚醒効果は数時間持続します。個人差はありますが、夕方以降のカフェイン摂取は夜間の寝つきを悪くしたり、睡眠を浅くしたりする原因となります。
アルコールやカフェインの摂取量やタイミングを見直すことも、日中の眠気改善につながります。
まとめ:仕事中の危険な眠気・「意識が飛ぶ」状態を放置しない
仕事中の「意識が飛ぶ」ほどの強い眠気は、単なる一時的な疲れや寝不足と軽く考えず、体の重要なサインとして捉えることが非常に重要です。この現象は、多くの場合マイクロスリープと呼ばれる短い睡眠状態であり、仕事の効率を下げるだけでなく、運転中や機械操作中などの危険な状況では重大な事故につながる可能性も秘めています。
日中の危険な眠気の主な原因としては、睡眠不足や睡眠の質の低下が最も一般的ですが、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、特発性過眠症といった睡眠障害や、薬の副作用、内分泌系の病気、精神的な要因(うつ病など)、不規則な生活習慣など、様々な要因が考えられます。
眠気に襲われたその場でできる応急処置として、冷たい刺激やツボ押し、カフェインやブドウ糖の摂取、短時間の仮眠、体を動かす、換気するといった対策がありますが、これらは一時的なしのぎにすぎません。
もし、ご紹介したような「病院を受診すべき症状・サイン」に当てはまる場合は、放置せずに必ず医療機関に相談しましょう。特に、週に複数回眠気で意識が飛ぶ、十分な睡眠をとっても改善しない、眠気によって日常生活に支障が出ているといった場合は、睡眠障害などの病気が隠れている可能性が高く、専門的な診断と治療が必要です。受診する科は、睡眠外来、脳神経内科、精神科などが考えられますが、まずはかかりつけ医や内科に相談するのも良いでしょう。病院では、問診や睡眠日誌、終夜睡眠ポリグラフ検査などの詳細な検査が行われ、原因に基づいた適切な治療法が提案されます。
また、日々の生活の中で、規則正しい睡眠リズムを作る、寝室環境を整える、ストレスを適切に管理する、食生活や運動習慣を見直す、アルコール・カフェインの摂取タイミングに注意するなど、根本的な予防策に取り組むことが、長期的な改善には不可欠です。
仕事中の危険な眠気を放置せず、体の声に耳を傾け、適切な対処を行うことで、仕事のパフォーマンス向上はもちろん、健康で安全な毎日を取り戻しましょう。
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