私たちの睡眠は、一晩のうちに性質の異なるいくつかの段階を繰り返しています。その中でも特に重要な役割を担っているのが「ノンレム睡眠」です。ノンレム睡眠は、脳と体に深い休息をもたらし、日中の活動で生じた疲労を回復させるために不可欠です。この記事では、ノンレム睡眠の定義やレム睡眠との違い、それぞれの睡眠段階の特徴、そして私たちの健康にもたらす重要な役割について詳しく解説します。さらに、質の高いノンレム睡眠を増やすための具体的な方法や、睡眠サイクルにおけるノンレム睡眠の周期についても掘り下げていきます。自分の睡眠について理解を深め、より質の高い休息を得るためのヒントを見つけましょう。
ノンレム睡眠とレム睡眠の定義
ノンレム睡眠(Non-Rapid Eye Movement sleep)は、眼球の急速な動き(Rapid Eye Movement)が見られない睡眠です。脳の活動が鎮まり、体も比較的リラックスした状態になります。入眠直後に現れやすく、睡眠時間の大部分を占めます。
一方、レム睡眠(Rapid Eye Movement sleep)は、その名の通り、眼球が急速に動くのが特徴的な睡眠です。脳は活動的で、夢をよく見ると言われるのもこの段階です。体は力が抜けた状態になりますが、脳は起きている時に近い状態にあるため「逆説睡眠」とも呼ばれます。
脳と体の状態:レム睡眠との違い
ノンレム睡眠とレム睡眠では、脳と体の状態が大きく異なります。主な違いは以下の通りです。
- 脳の活動:
ノンレム睡眠: 脳の活動は鎮静化し、脳波は徐波(遅い波)が中心になります。特に深いノンレム睡眠では、脳全体の活動が低下します。
レム睡眠: 脳は活発に活動しており、脳波は起きている時に近い速い波(速波)が見られます。 - 眼球運動:
ノンレム睡眠: 眼球の動きはほとんどありません。
レム睡眠: 眼球が素早く左右に動くのが特徴です。 - 筋肉の状態:
ノンレム睡眠: 筋肉はある程度緊張を保っていますが、徐々に弛緩していきます。特に深いノンレム睡眠では体の動きが少なくなります。
レム睡眠: 全身の筋肉がほぼ完全に弛緩し、麻痺したような状態になります。これは夢を見ている最中に体が実際に動いてしまわないようにするためと考えられています。 - 自律神経の働き:
ノンレム睡眠: 心拍数や呼吸、血圧、体温などは安定し、代謝も低下します。副交感神経が優位になり、体が休息に適した状態になります。
レム睡眠: 心拍数や呼吸、血圧などが不規則になりやすく、体温調節機能も低下します。交感神経と副交感神経の活動が変動しやすい不安定な状態です。
特徴:レム睡眠との違いを比較
ノンレム睡眠とレム睡眠の主な特徴を比較すると、それぞれの睡眠の役割が見えてきます。
特徴 | ノンレム睡眠 | レム睡眠 |
---|---|---|
脳の活動 | 低い(徐波中心) | 高い(速波中心) |
眼球運動 | ほとんどない | 素早く動く |
筋肉の状態 | ある程度の緊張を保ちつつ弛緩 | ほぼ完全に弛緩(麻痺状態) |
自律神経 | 安定(副交感神経優位)、代謝低下 | 不安定(心拍・呼吸・血圧変動)、体温調節低下 |
夢の内容 | 断片的で覚えにくい、思考的な夢 | ストーリー性があり、鮮明で覚えやすい夢 |
主な役割 | 脳と体の休息、疲労回復、成長ホルモン分泌 | 脳の情報整理、記憶の定着、精神的な安定 |
睡眠サイクルでの出現 | 入眠直後から始まり、特に前半に多い | 睡眠サイクルが進むにつれて増える |
覚醒しやすさ | 深いノンレム睡眠中は覚醒しにくい | 比較的覚醒しやすい |
このように、ノンレム睡眠は脳と体の「休息と回復」を、レム睡眠は脳の「活動と情報処理」を担っていると言えます。どちらも健康な睡眠には不可欠な要素です。
ノンレム睡眠の役割と重要性
ノンレム睡眠は、単に眠っているだけの時間ではありません。私たちの体と心にとって非常に重要な様々な役割を果たしています。特に、脳と体の回復、成長ホルモンの分泌、そして記憶の整理・定着に深く関わっています。
脳の疲労回復とノンレム睡眠
日中、私たちの脳は膨大な情報処理を行い、多くのエネルギーを消費します。ノンレム睡眠、特に深いノンレム睡眠の段階では、脳全体の活動が大幅に低下し、日中の疲労から回復する時間となります。脳細胞のメンテナンスが行われ、細胞内に溜まった老廃物などが除去されると考えられています。これは、脳の機能を維持し、翌日の活動に備えるために非常に重要です。質の高いノンレム睡眠が不足すると、脳の疲労が十分に回復せず、集中力や判断力の低下につながることがあります。
体の休息とノンレム睡眠
ノンレム睡眠中は、筋肉の緊張が和らぎ、心拍数や呼吸も安定するため、体も深く休息することができます。日中の活動で疲弊した筋肉や組織の修復、エネルギーの蓄積が行われます。また、免疫システムの働きもノンレム睡眠中に促進されると考えられており、体の抵抗力を高める上でも重要な役割を果たしています。風邪をひいたときなどに眠りが深くなるのは、体が回復のためにノンレム睡眠を求めていることの表れとも言えます。
成長ホルモン分泌とノンレム睡眠
ノンレム睡眠、特に最も深い睡眠段階(N3)に入ると、脳下垂体から成長ホルモンが大量に分泌されます。成長ホルモンは、子供の成長を促進するだけでなく、大人にとっても非常に重要なホルモンです。大人の体内では、細胞の修復や再生、代謝の調節、筋肉量の維持、骨密度の維持、脂肪分解などに深く関わっています。質の高い深いノンレム睡眠が不足すると、成長ホルモンの分泌が低下し、体調不良や老化の促進につながる可能性があります。
記憶の整理・定着とノンレム睡眠
睡眠は記憶とも密接に関わっています。ノンレム睡眠中は、日中に経験した出来事や学習した情報が脳内で整理され、重要な情報が長期記憶として定着されるプロセスが行われると考えられています。特に、宣言的記憶(言葉で説明できる知識や出来事に関する記憶)の定着にノンレム睡眠が関与しているという研究結果があります。質の高いノンレム睡眠をとることで、学習効果を高めたり、新しい情報を効果的に記憶したりすることが期待できます。
ノンレム睡眠の睡眠段階(深さ)
ノンレム睡眠は、その深さによってさらに3つの段階に分けられます。これらの段階は、脳波の特徴によって分類されます。
ノンレム睡眠の3つの段階(N1, N2, N3)
ノンレム睡眠は、浅い方から順に以下の3つの段階に分けられます。
- N1(睡眠段階1):
最も浅いノンレム睡眠で、眠り始め(入眠期)にあたる段階です。
脳波は、起きている時に近いベータ波から、少し遅いアルファ波、さらに遅いシータ波へと変化していきます。
ウトウトしているような状態で、外部からの刺激で簡単に目が覚めます。
睡眠時間全体に占める割合はわずかです。 - N2(睡眠段階2):
N1よりもやや深い睡眠段階です。睡眠時間全体の約半分を占めます。
脳波には、シータ波に加えて、「睡眠紡錘波(すいみんぼうすい波)」や「K複合(K-complex)」と呼ばれる特徴的な波が現れます。
睡眠紡錘波は、外部からの刺激を遮断するフィルターのような役割を果たしていると考えられています。
N1よりは覚醒しにくいですが、まだ比較的浅い眠りです。 - N3(睡眠段階3):
最も深いノンレム睡眠であり、「徐波睡眠(じょはすいみん)」とも呼ばれます。
脳波には、振幅の大きい非常に遅い波である「デルタ波」が多く出現します。
この段階では、脳の活動は著しく低下し、体も最もリラックスした状態になります。
外部からの刺激に対して最も覚醒しにくく、無理に起こされると強い眠気や混乱を感じることがあります。
成長ホルモンが最も多く分泌される重要な段階です。
浅いノンレム睡眠(N1, N2)について
浅いノンレム睡眠であるN1とN2は、深い休息というよりは、深い眠りへ移行するための準備段階と言えます。
- N1(入眠期)は、文字通り眠りに入っていく transition phase です。意識が薄れ始め、軽い刺激でもすぐに目が覚めてしまうような状態です。
- N2は、睡眠サイクルの中で最も長く、一晩の睡眠時間のかなりの割合を占めます。睡眠紡錘波やK複合が出現することで、脳が外部からのノイズを遮断し、より深い睡眠へと移行するのを助けています。完全に深い眠りではありませんが、この段階を経ることで、脳と体が徐々に休息モードに入っていきます。
浅いノンレム睡眠も、睡眠サイクルを適切に進める上で重要な役割を果たしています。
深いノンレム睡眠(N3)とは?
深いノンレム睡眠(N3、徐波睡眠)は、心身の回復にとって最も重要な段階です。この段階で脳と体は最大限の休息を得られます。
- 脳: 脳の活動が最も低下し、脳脊髄液の流れが促進され、脳の老廃物(アミロイドベータなど)が除去されるという研究報告もあります。これは、認知機能の維持や認知症予防の観点からも注目されています。
- 体: 筋肉の緊張が緩み、心拍数や呼吸、体温が低下し、基礎代謝が抑制されます。体の修復や成長ホルモンの分泌が活発に行われます。
特に睡眠サイクルの前半で多く出現し、時間の経過とともにその割合は減少していきます。質の高いノンレム睡眠を得るためには、このN3段階をしっかりと確保することが重要です。
ノンレム睡眠は深い眠りか浅い眠りか?
ノンレム睡眠には、N1(浅い)、N2(やや浅い)、N3(深い)という3つの段階があります。したがって、ノンレム睡眠全体としては、浅い眠りから深い眠りまでを含みます。しかし、一般的に「深いノンレム睡眠」と言う場合は、特に重要なN3段階を指すことが多いです。一方、「浅いノンレム睡眠」と言えば、N1やN2段階を指します。睡眠の質を考える上では、N3段階が十分に得られているかどうかが重要な指標の一つとなります。
睡眠サイクルにおけるノンレム睡眠の周期
私たちの睡眠は、一晩を通してノンレム睡眠とレム睡眠が約90分周期で繰り返されています。この周期的な変動の中で、ノンレム睡眠の現れ方にも特徴があります。
一晩のノンレム睡眠とレム睡眠のサイクル
健康な成人の睡眠は、入眠から始まり、まずノンレム睡眠の浅い段階(N1、N2)を経て、深い段階(N3)に入ります。その後、浅いノンレム睡眠に戻り、最初のレム睡眠が出現します。この一連の流れが約90分で一つのサイクルを形成し、一晩に4~5回繰り返されます。
- 睡眠サイクルの始まり: 眠りにつくと、まずノンレム睡眠が始まります。N1、N2と徐々に深くなり、最も深いN3段階に到達します。
- サイクルの進行: N3段階から再びN2、N1と浅くなり、そこで最初のレム睡眠が現れます。
- 繰り返される周期: レム睡眠の後、再びノンレム睡眠(N1またはN2)から次のサイクルが始まります。
このサイクルの特徴は、一晩の睡眠の前半で、深いノンレム睡眠(N3)が多く出現するということです。脳と体の疲労回復は主にこの前半の深いノンレム睡眠で行われるため、入眠直後からしっかりと眠りにつくことが重要になります。そのため、眠り始めの質が、一晩の睡眠全体の質を大きく左右するとも言われます。
寝た直後のノンレム睡眠(入眠期)について
眠りに入ってすぐの段階は、ノンレム睡眠のN1(入眠期)からN2、そしてN3へと移行していきます。つまり、寝た直後はノンレム睡眠であると言えます。最初の睡眠サイクルでは、特に深いノンレム睡眠(N3)の時間が長くなる傾向があります。これは、日中の疲労を最初に集中的に回復させようとする体の仕組みと考えられます。
周期の長さと繰り返しの回数
睡眠サイクルは約90分ですが、これはあくまで平均的な長さであり、個人差や年齢、その日の体調によって多少変動します。一晩に繰り返されるサイクルの回数は、総睡眠時間によって異なりますが、一般的には7~8時間の睡眠で4~5回程度繰り返されます。
また、サイクルの進行とともに、ノンレム睡眠とレム睡眠の割合が変化します。
- 前半のサイクル: 深いノンレム睡眠(N3)の割合が多く、レム睡眠の時間は比較的短いです。
- 後半のサイクル: 深いノンレム睡眠(N3)は減少し、浅いノンレム睡眠(N2)とレム睡眠の時間が長くなります。特に起床前にはレム睡眠の割合が増え、夢を見やすくなります。
このように、睡眠サイクル全体を通してノンレム睡眠とレム睡眠がバランスよく出現し、それぞれが異なる役割を果たしながら心身の回復を支えています。
ノンレム睡眠の理想的な時間・割合
健康な睡眠を確保するためには、総睡眠時間だけでなく、ノンレム睡眠が適切な時間・割合を占めているかどうかも重要です。
睡眠時間全体に占めるノンレム睡眠の割合
成人の場合、一晩の睡眠時間全体のおよそ80%がノンレム睡眠、残りの20%がレム睡眠で構成されるのが一般的です。ノンレム睡眠の内訳は、N1が5%程度、N2が50%程度、N3(深いノンレム睡眠)が15~25%程度と言われています。
ただし、これはあくまで一般的な割合であり、個人差があります。重要なのは、特に脳と体の回復に深く関わる深いノンレム睡眠(N3)が十分な時間確保されているかという点です。
理想とされるノンレム睡眠の時間
「理想的なノンレム睡眠時間」を具体的に示すのは難しいですが、目安としては、成人の場合、深いノンレム睡眠(N3)が総睡眠時間の15~25%程度を占めていることが望ましいとされています。例えば、7時間睡眠であれば、約63分~105分程度が深いノンレム睡眠にあたる計算になります。
ただし、これに満たない場合でも、日中の眠気や疲労感がなく、心身ともに健康であれば、必ずしも問題があるわけではありません。睡眠の質は、時間だけでなく、連続性や深さなど、様々な要素が複合的に関わります。
年齢によるノンレム睡眠の変化
ノンレム睡眠、特に深いノンレム睡眠(N3)のパターンは、年齢によって大きく変化します。
- 乳幼児: 生後数ヶ月の乳幼児は、ノンレム睡眠とレム睡眠の区別がつきにくく、睡眠時間の約50%がレム睡眠とも言われます。その後、成長とともにノンレム睡眠の割合が増加します。
- 子供: 学童期から思春期にかけて、成長ホルモンの分泌が盛んな時期であり、深いノンレム睡眠(N3)の割合が最も多くなります。
- 成人: 20代をピークに、加齢とともに深いノンレム睡眠(N3)の割合は徐々に減少していきます。
- 高齢者: 高齢になるにつれて、深いノンレム睡眠はさらに減少し、浅いノンレム睡眠(N1, N2)や中途覚醒が増える傾向があります。総睡眠時間も短くなる傾向が見られます。
このように、年齢による自然な変化もあるため、自分自身の年齢や体質に合わせた睡眠の質を目指すことが大切です。加齢による深いノンレム睡眠の減少は避けられませんが、生活習慣を改善することで、質の低下を最小限に抑えることは可能です。
ノンレム睡眠の質を高めるには?増やし方
「しっかり眠ったはずなのに、疲れが取れない」「日中も眠気を感じる」といった悩みは、ノンレム睡眠、特に深いノンレム睡眠の質が低いことが原因かもしれません。ノンレム睡眠の質を高め、深い眠りを増やすためには、日中の過ごし方や寝る前の習慣が重要です。
ノンレム睡眠が浅い・少ない原因
ノンレム睡眠が浅くなったり、深いノンレム睡眠が少なくなったりする原因は様々です。
- ストレスや不安: 精神的なストレスは、脳を覚醒させてしまい、深い眠りに入りにくくします。
- 不規則な生活リズム: 毎日寝る時間や起きる時間がバラバラだと、体内時計が乱れ、睡眠サイクルが不安定になります。
- カフェインやアルコールの摂取: 寝る前のカフェインは脳を覚醒させ、アルコールは一時的に眠気を誘いますが、睡眠の後半で質を低下させ、特にレム睡眠を増やし、ノンレム睡眠を浅くすることが知られています。
- 寝室環境: 寝室が明るすぎる、うるさい、温度や湿度が不適切などの環境要因は、睡眠を妨げます。
- 運動不足や過度な運動: 全く運動しない、あるいは寝る直前に激しい運動をすると、睡眠の質が低下する可能性があります。
- 喫煙: ニコチンには覚醒作用があり、睡眠を浅くすることがあります。
- 特定の疾患や薬: 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害や、うつ病などの精神疾患、あるいは服用している薬の影響でノンレム睡眠が障害されることがあります。
- 加齢: 上述のように、年齢とともに深いノンレム睡眠は自然に減少する傾向があります。
これらの原因に心当たりがある場合は、まずそれらを改善することから始めましょう。
質の高いノンレム睡眠を増やす生活習慣
質の高いノンレム睡眠を得るためには、日中の活動から意識することが大切です。
- 規則正しい生活を送る: 毎日ほぼ同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけましょう。休日も平日との差を1~2時間以内にとどめると、体内時計が安定しやすくなります。
- 適度な運動を取り入れる: 定期的な運動は睡眠の質を高める効果があります。ただし、寝る直前の激しい運動は避け、就寝3時間前までには終えるようにしましょう。
- バランスの取れた食事: 寝る直前の食事は胃腸に負担をかけ、睡眠を妨げる可能性があります。夕食は寝る3時間前までに済ませるのが理想です。また、セロトニンの材料となるトリプトファンを多く含む食品(乳製品、大豆製品、ナッツ類など)や、メラトニンの分泌を助けるマグネシウムなどを積極的に摂ることも良いとされています。
- カフェイン・アルコール・タバコを控える: 午後以降のカフェイン摂取は避け、寝る前のアルコールや喫煙は控えましょう。
- 寝室環境を整える: 寝室は暗く、静かで、快適な温度(18~22℃程度)と湿度(50%程度)に保ちましょう。
- 日中に十分な光を浴びる: 朝起きたらすぐに太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされ、夜に自然な眠気を誘います。
寝る前にできること:ノンレム睡眠を深くするために
寝る前の過ごし方も、入眠しやすく、深いノンレム睡眠を得るために重要です。
- ぬるめのお風呂に入る: 就寝1~2時間前に38~40℃程度のぬるめのお風呂にゆっくり浸かると、一時的に体温が上がり、その後下がる過程で眠気を誘いやすくなります。
- リラックスする時間を作る: 寝る前に仕事や心配事から離れ、心身をリラックスさせましょう。軽いストレッチ、静かな音楽を聴く、アロマテラピーなどが有効です。
- 寝る前のスマホやPCを避ける: 画面から発せられるブルーライトは脳を覚醒させてしまいます。就寝1時間前からは使用を控えるのが理想です。
- 寝床は眠るためだけの場所にする: 寝床で本を読んだり、スマホを操作したりする習慣があると、「寝床=眠る場所」という関連付けが弱まります。眠気を感じてから寝床に入るようにしましょう。
- 軽い読書など静かな活動: 眠れない時は無理に寝ようとせず、一度寝床から出て、静かな場所で軽い読書などをして眠気を感じたら再び寝床に戻るのも一つの方法です。
これらの方法を継続することで、深いノンレム睡眠を増やし、睡眠全体の質を高めることが期待できます。
コア睡眠とノンレム睡眠の関係性
最近、「コア睡眠」という言葉を聞くことがあります。これは、短時間睡眠でも健康を維持できるとされる概念ですが、このコア睡眠においてもノンレム睡眠は非常に重要な役割を果たしています。
コア睡眠の定義
「コア睡眠」とは、一晩の睡眠時間のうち、脳と体の回復に最低限必要とされる時間帯を指すことがあります。一般的に、睡眠の前半部分、特に深いノンレム睡眠(N3)が多く出現する最初の2~3サイクルを指すことが多いです。この時間帯にしっかりと眠ることで、たとえ総睡眠時間が短くても、ある程度の疲労回復効果が得られると考えられています。ただし、これはあくまで概念的なものであり、すべての人に当てはまるわけではありません。人によって必要な睡眠時間や睡眠の質は異なります。
コア睡眠におけるノンレム睡眠の重要性
コア睡眠という概念において、ノンレム睡眠、特に深いノンレム睡眠(N3)は極めて重要です。なぜなら、脳と体の物理的な疲労回復やメンテナンス、成長ホルモンの分泌は、主にこの深いノンレム睡眠で行われるからです。たとえ短時間しか眠れなかったとしても、このコア睡眠の時間帯に質の高い深いノンレム睡眠を十分に確保できていれば、日中のパフォーマンスへの影響を最小限に抑えられる可能性があります。
しかし、これは推奨されるべき睡眠の形ではありません。慢性的な睡眠不足は、心身の健康に様々な悪影響を及ぼします。コア睡眠という考え方は、やむを得ず睡眠時間が短くなってしまった場合に「せめてこの時間帯は質の高い眠りを確保しよう」という意識を持つために役立つかもしれませんが、本来は、自分にとって必要な十分な睡眠時間を確保し、ノンレム睡眠とレム睡眠がバランスよく出現する質の高い睡眠を目指すことが何よりも大切です。
ノンレム睡眠に関するよくある質問
ノンレム睡眠について、よく寄せられる質問にお答えします。
ノンレム睡眠とレム睡眠はどっちが深い眠りですか?
ノンレム睡眠の特に深い段階(N3)の方が、レム睡眠よりも深い眠りです。 ノンレム睡眠は脳の活動が鎮静化し、体もリラックスしていますが、レム睡眠は脳が活発に活動しており、体は脱力していても脳は覚醒に近い状態にあるためです。覚醒しやすさで比較しても、深いノンレム睡眠中は外部からの刺激で目が覚めにくいですが、レム睡眠中や浅いノンレム睡眠中は比較的目が覚めやすいです。
ノンレム睡眠は深い睡眠と浅い睡眠のどちらが多いのでしょうか?
ノンレム睡眠は、浅い方からN1, N2, N3の3つの段階に分けられます。このうち、N2が最も長く、睡眠時間全体の約50%を占めると言われています。N1は入眠直後の短い段階で、N3(深いノンレム睡眠)は15~25%程度です。したがって、ノンレム睡眠全体としては、深いノンレム睡眠(N3)よりも、浅い・やや浅いノンレム睡眠(N1, N2)の方が時間的に多いと言えます。しかし、質の観点からはN3の確保が非常に重要です。
ノンレム睡眠とは何ですか?
ノンレム睡眠とは、眼球の急速な動きが見られない睡眠のことで、脳の活動が鎮静化し、体が休息している状態です。睡眠の大部分を占め、脳や体の疲労回復、成長ホルモンの分泌、記憶の整理・定着といった重要な役割を果たしています。深さによってN1(浅い)、N2(やや浅い)、N3(深い)の3段階に分けられます。
寝た直後はノンレム睡眠ですか?
はい、健康な成人の場合、寝た直後はノンレム睡眠から始まります。 具体的には、まず最も浅いノンレム睡眠であるN1(入眠期)に入り、その後N2、そして最も深いノンレム睡眠であるN3へと移行していきます。最初の睡眠サイクルで特に深いノンレム睡眠が多く出現します。
ノンレム睡眠しかない場合は異常ですか?
はい、ノンレム睡眠しかない場合は異常である可能性が高いです。 健康な睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に、約90分周期で繰り返されることによって成り立っています。レム睡眠は、脳の情報処理や精神的な安定に重要な役割を果たしています。ノンレム睡眠しか出現しない、あるいはレム睡眠が極端に少ない場合は、何らかの睡眠障害や脳機能の異常などが考えられます。気になる症状がある場合は、専門医に相談することをお勧めします。
まとめ
ノンレム睡眠は、私たちの睡眠において非常に重要な役割を担っています。脳と体の疲労を回復させ、成長ホルモンを分泌し、記憶を整理・定着させるなど、健康な心身を維持するために不可欠です。ノンレム睡眠には浅い段階から深い段階まであり、特に深いノンレム睡眠(N3)は質の高い休息を得るために重要です。
健康な睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠が約90分周期でバランスよく繰り返されることで成り立っています。特に睡眠の前半には深いノンレム睡眠が多く出現するため、入眠直後からスムーズに眠りにつくことが大切です。
ノンレム睡眠の質を高めるためには、規則正しい生活習慣、適度な運動、バランスの取れた食事、そして快適な寝室環境が鍵となります。また、寝る前のカフェインやアルコールの摂取を控え、リラックスできる時間を作ることも有効です。
「しっかり眠っているはずなのに疲れが取れない」と感じている方は、ノンレム睡眠の質が低下している可能性があります。この記事で解説した情報を参考に、日々の生活習慣や寝る前の過ごし方を見直し、より質の高いノンレム睡眠を目指しましょう。質の高い睡眠は、日中のパフォーマンス向上だけでなく、長期的な健康維持にもつながります。
免責事項: この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや診断に代わるものではありません。個別の健康状態に関するご相談は、必ず医療機関にご相談ください。