うつ病の方への接し方に、あなたは悩んでいませんか?良かれと思ってかけた言葉が、かえって相手を傷つけてしまうこともあります。うつ病は、単なる「気の落ち込み」や「甘え」ではなく、脳の機能障害を伴う病気です。そのため、病気への理解がないまま接すると、本人を追い詰めてしまう可能性があります。「うつ病 接し方 禁句」について正しく理解し、適切な対応を学ぶことは、うつ病と向き合うご本人にとっても、支える周囲の方々にとっても、より良い関係性を築くために非常に重要です。この記事では、うつ病の人に「言ってはいけない」とされる禁句とその理由、そして本人に寄り添う適切な接し方や声かけについて詳しく解説します。
うつ病とは?正しく理解することの重要性
うつ病は、気分障害の一つであり、脳の働きに偏りが生じることで発症する病気です。単に悲しい気持ちになる、落ち込むといった一時的な感情の変動ではなく、持続的な気分の落ち込みや、これまで楽しめていたことへの興味・喜びの喪失などを特徴とします。これらの精神的な症状に加え、倦怠感、睡眠障害、食欲不振、頭痛や体の痛みといった身体的な症状を伴うことも少なくありません。
うつ病は、意志の力で簡単に乗り越えられるようなものではありません。病気によって脳の機能が低下しているため、思考力、集中力、判断力が低下し、日常生活を送ること自体が困難になることがあります。また、自分を責める気持ちや、将来への絶望感、価値がないと感じる無価値感などにとらわれやすくなります。
このような状態にあるうつ病の方にとって、「頑張れ」といった励ましの言葉や、「気の持ちようだ」といった精神論は、病気への理解がないと受け取られ、かえってプレッシャーや孤立感を与える可能性があります。うつ病を正しく病気として理解することは、接し方の根本的な心構えとなり、本人を傷つけずに寄り添うための第一歩となるのです。
うつ病の人に「言ってはいけない」禁句リスト
うつ病の方にとって、何気なく発せられた言葉が深く突き刺さり、回復を妨げたり、症状を悪化させたりすることがあります。ここでは、うつ病の人に「言ってはいけない」とされる代表的な禁句とその理由を詳しく解説します。
なぜその言葉が禁句になるのか?うつ病の特性を理解する
うつ病の人は、エネルギーが枯渇し、心身ともに非常に疲弊しています。意欲が湧かず、簡単なことでも大きな努力が必要になります。また、自己肯定感が著しく低下しており、自分には価値がない、誰からも必要とされていないと感じがちです。思考も悲観的になりやすく、物事の良い面を見るのが難しくなります。
このような心理状態にある人に対して、以下のような言葉は、その苦しみを理解してもらえない、否定されていると感じさせ、孤立感や罪悪感をさらに深めてしまう原因となります。
- 病気や症状を「甘え」や「気のせい」だと否定する言葉
- 現状の苦しさを過小評価する言葉
- 本人の努力不足を指摘する言葉
- 回復を急かす言葉
- 本人を責める言葉
これらの言葉は、うつ病という病気がもたらす「意欲の低下」「自己肯定感の低下」「悲観的な思考」といった特性と真っ向から対立するため、当事者にとっては非常に受け入れがたく、傷つきやすい言葉となるのです。
具体的な禁句の例
うつ病の方に言ってはいけない具体的な言葉の例と、なぜそれが禁句なのかを説明します。
「頑張って」「ポジティブに考えよう」など励まし系の禁句
最も代表的な禁句の一つです。一見、応援しているように聞こえますが、うつ病でエネルギーが枯渇している状態では、「頑張る」こと自体が非常に困難です。
- なぜ禁句なのか?
- 「頑張れない自分」を責めてしまう: もうすでに十分に頑張っているのに、それが周囲には伝わらず、さらに「頑張れ」と言われることで、「自分は頑張りが足りないダメな人間だ」と自分を責めてしまいます。
- プレッシャーになる: これ以上頑張れない状態での励ましは、本人にとって重圧となり、さらに追い詰められた気持ちになります。
- 病気への無理解を感じる: 病気で動けない状態を理解してもらえないと感じ、孤立感を深めます。
「ポジティブに考えよう」も同様です。うつ病によって思考回路が悲観的になっているため、簡単に前向きになることはできません。「そんなこともできないのか」と自己嫌悪に陥る可能性があります。
「気の持ちようだよ」「甘えだ」など否定・精神論系の禁句
うつ病という病気そのものを否定したり、本人の性格や精神力の問題にすり替えたりする言葉です。
- なぜ禁句なのか?
- 苦しみを否定される: 本人が感じている心身のつらさや苦しみを「気のせい」だと否定されることは、存在そのものを否定されたように感じさせます。
- 罪悪感を植え付ける: 「甘えだ」と言われることで、自分が怠けている、周囲に迷惑をかけているという罪悪感を強く感じ、苦しみを一人で抱え込もうとします。
- 病気への無理解を感じる: うつ病が脳の機能障害を伴う病気であることを理解していない言葉であり、本人にとっては深い失望と孤立感につながります。
「誰だってつらい」「もっと大変な人もいる」など比較・軽視系の禁句
本人の苦しみを他の人と比較したり、軽視したりする言葉です。
- なぜ禁句なのか?
- 苦しみを過小評価される: 自分の抱えるつらさや困難が、他人と比較されて小さく見られることで、「自分の苦しみは取るに足らないものなんだ」と感じ、さらに自己肯定感を失います。
- 相談しにくくなる: 自分の気持ちを話しても理解されない、軽んじられると感じ、誰にも相談できなくなり、孤立を深めます。
- 罪悪感を覚える: 「自分より大変な人がいるのに、自分はこんなことで苦しんでいるのか」と自分を責め、さらに罪悪感にとらわれます。
「早く元気になってね」「いつから仕事に行けるの?」など回復を急かす禁句
うつ病の回復には時間が必要であることを理解せず、早期の回復や社会復帰を求める言葉です。
- なぜ禁句なのか?
- プレッシャーになる: 回復を急かされることは、本人にとって大きなプレッシャーとなり、焦りや不安を感じさせます。
- 回復を遅らせる可能性がある: 休息が必要な時期に無理をしようとしてしまい、かえって回復が遅れたり、症状が悪化したりする可能性があります。
- 自分のペースを無視されると感じる: 病気の回復は本人のペースで行われるべきであり、それを無視されることで、自分の状態を理解してもらえないと感じます。
連絡や返信を催促する言葉
うつ病によって思考力や判断力が低下している、あるいはメッセージを読むことや返信すること自体に大きなエネルギーが必要な状態にある人への催促です。
- なぜ禁句なのか?
- 負担になる: メッセージを読み、内容を理解し、返信する、という一連の作業が、うつ病の方にとっては非常に大きな負担となります。
- 罪悪感を抱く: すぐに返信できない自分を「周囲に迷惑をかけている」「失礼な人間だ」と責めてしまい、罪悪感を抱きます。
- 連絡を取ること自体が怖くなる: 催促されることで、連絡ツールを開くこと自体がプレッシャーとなり、周囲とのつながりを断ってしまう可能性があります。
その他、無責任なアドバイスや冗談
本人の状況や病気について十分に理解していない、表層的なアドバイスや、病気を茶化すような冗談です。
- なぜ禁句なのか?
- 状況を理解していないと感じる: うつ病の苦しみや状況を理解せずに行われる無責任なアドバイスは、「何も分かっていないのに偉そうなことを言わないでほしい」と感じさせます。
- 病気を軽んじられる: うつ病という深刻な病気を茶化すような冗談は、本人の苦しみを馬鹿にされた、軽視されたと感じさせ、深く傷つけます。
- 信頼関係を損なう: 不適切な言葉は、本人と周囲との信頼関係を損ない、心の扉を閉ざしてしまう原因となります。
これらの禁句を避けることは、うつ病の方とのコミュニケーションにおいて非常に重要です。良かれと思った言葉でも、うつ病の特性を理解していなければ、本人を傷つけてしまう可能性があることを心に留めておきましょう。
言葉だけでなく、表情や態度も重要です。心配そうな顔をしすぎる、逆に腫れ物に触るような態度は、本人に「自分は周りに心配をかけている、扱いにくい存在だ」と感じさせてしまうこともあります。病気を特別視しすぎず、かといって病気を無視せず、自然体で接することを心がけるのが理想ですが、これは容易ではありません。次に、適切な接し方について見ていきましょう。
禁句のカテゴリ | 具体的な言葉の例 | なぜ禁句なのか?(うつ病の特性との関連) |
---|---|---|
励まし・精神論系 | 頑張って / 頑張りなよ / ポジティブに考えよう / 気の持ちようだよ / 甘えだ | エネルギー枯渇状態でのプレッシャー。病気の否定。自己肯定感の低下をさらに悪化させ、「頑張れない自分」への罪悪感、周囲への孤立感を深める。 |
比較・軽視系 | 誰だってつらいよ / もっと大変な人もいる / 考えすぎだよ / 時間が解決してくれるよ | 苦しみを過小評価されると感じ、自己肯定感をさらに失う。相談しにくくなり孤立感を深める。自分の苦しみは価値がないと感じる。 |
回復を急かす系 | 早く元気になってね / いつから仕事(学校)に行けるの? / 元気になったら〇〇行こう | 病気の回復には時間が必要であることを理解していない言葉。本人にとって大きなプレッシャー、焦り、不安となる。休息が必要な時期に無理をさせてしまう可能性。 |
催促系 | (連絡に対して)まだ返信ないけど大丈夫? / いつまでに〇〇できる? | 思考力・判断力の低下、メッセージの処理にエネルギーが必要な状態への無理解。返信できない自分を責める罪悪感、連絡ツールを開くこと自体が負担となり孤立を深める。 |
無責任なアドバイス系 | 〇〇すれば治るよ / 運動すればいいよ / 気分転換に△△行こう | 本人の状況や病気への無理解。実行できない自分を責める可能性。表層的な解決策の提示で、深刻な苦しみが理解されていないと感じる。 |
冗談・茶化し系 | まだそんなこと言ってるの? / また病気アピール? | 病気や苦しみを茶化される、馬鹿にされると感じる。深い傷つき、信頼関係の破壊。 |
うつ病の人への適切な接し方と声かけ
では、うつ病の方にはどのように接し、どのような言葉をかければ良いのでしょうか。禁句を避けることと同様に、適切な接し方を知ることは、本人を支え、回復をサポートするために非常に重要です。
うつ病の方に接する上での基本的な心構え
うつ病の方に接する上で、最も重要な心構えは、「うつ病は病気である」と理解することです。そして、その病気がもたらす症状(気分の落ち込み、意欲低下、思考力の低下など)は、本人の性格や怠慢ではなく、病気によるものであると認識することです。
- 病気として理解する: 本人の苦しみやできないことを、「病気の症状」として捉える。
- 本人のペースを尊重する: 無理に何かをさせようとせず、本人ができること、したいこと、休みたいときに休める環境を整える。回復には波があることを理解し、一進一退を繰り返す過程を見守る。
- 期待しすぎない: 病気によって、これまでできていたことができなくなっていることを受け入れる。過度な期待は本人へのプレッシャーとなる。
- 専門家と連携する: 医療機関での治療を第一とし、周囲は治療のサポートを行う。専門家のアドバイスを聞き、必要に応じて相談する。
- 自分の心身も大切にする: 支える側が疲弊しないよう、休息をとり、一人で抱え込まず、周囲に助けを求める。
これらの心構えを持つことで、本人に対して冷静かつ温かい態度で接することができるようになります。
具体的に本人に寄り添う接し方
具体的な行動や態度で、うつ病の方に寄り添う方法を説明します。
否定せず、話をただ聞く(傾聴)
うつ病の方は、自分のネガティブな感情や考えにとらわれがちですが、それを否定したり、解決策を提示したりするよりも、まずは本人の話をじっくりと聞くことが大切です。
- 共感を示す: 「つらいね」「それは大変だね」など、本人の気持ちに寄り添う言葉をかける。
- 判断しない: 本人の考えや感情を否定したり、評価したりせず、そのまま受け止める。
- 静かにそばにいる: 言葉が出なくても、ただ静かにそばにいるだけでも本人にとっては安心感につながることがあります。
- 相槌を打つ: 「うんうん」「なるほど」といった相槌や、「〜と思ったんだね」といった簡単な繰り返し(オウム返し)で、話を聞いていることを伝える。
アドバイスや解決策を求めるのは、本人がその準備ができたときです。それまでは、ただ耳を傾け、共感を示すことに徹しましょう。
安心できる居場所や時間を提供する
うつ病の方は、外出したり、人と交流したりすることが負担になることがあります。自宅など、本人が安心して過ごせる場所で、静かに過ごせる時間を提供することが重要です。
- 無理に誘わない: 外出やイベントなど、本人が負担に感じるような誘いは控えましょう。
- 一緒にいても無理に話さない: 一緒にいても、無理に会話を続ける必要はありません。同じ空間でそれぞれの時間を過ごすだけでも十分です。
- 静かで落ち着ける環境: 騒がしい場所や、刺激の多い環境は避けるように配慮しましょう。
本人が「ここにいても安心できる」「この人と一緒にいると無理しなくて済む」と感じられるような環境や関係性を提供することが大切です。
休息を最優先に見守る(ほっとくのではなく見守る)
うつ病の回復には、十分な休息が不可欠です。無理に活動させようとせず、本人が必要とするだけ休めるように見守ることが重要です。ここで言う「見守る」とは、「放っておく」ことではありません。
- 無理な活動をさせない: 散歩や軽い運動が効果的な場合もありますが、本人が乗り気でない場合は無理強いしない。
- 睡眠や食事のリズムをサポート: 可能であれば、規則正しい生活を送れるようにサポートする。ただし、これも無理のない範囲で。
- 危険な状態でないか注意する: 希死念慮や自傷行為の兆候がないか、注意深く見守る。異変を感じたら、速やかに専門家や周囲と連携する。
- 必要な時にサポートする: 食事の準備、入浴の介助、服薬の管理など、本人から助けを求められたり、必要だと感じたりしたときに、さりげなく手助けする。
「見守る」とは、本人の状態を注意深く観察しつつ、必要に応じて支援の手を差し伸べる、主体的な関わり方です。
うつ病の人にかけてほしい言葉の例
禁句を避けるだけでなく、うつ病の方にとって安心感を与えたり、気持ちを楽にさせたりする言葉を知っておくことも有効です。
- 共感と理解を示す言葉:
- 「つらいね」「しんどいね」
- 「それは大変だったね」
- 「よく頑張っているね」(ただし、過去の頑張りや現状維持に対するねぎらいとして)
- 「あなたの苦しさを全部理解することはできないかもしれないけど、あなたの味方だよ」
- 安心感を与える言葉:
- 「焦らなくて大丈夫だよ」
- 「ゆっくり休んでね」
- 「〇〇(家事など)は気にしないでね、こっちでやっておくから」
- 「あなたは一人じゃないよ」
- 「ただそばにいるよ」
- 存在を受け入れる言葉:
- 「いてくれるだけで嬉しいよ」
- 「あなたのことを大切に思っているよ」
これらの言葉は、本人の孤立感を和らげ、安心感を与え、自分は受け入れられていると感じさせる効果があります。ただし、これらの言葉をかける際も、押し付けがましくならないように、本人の反応を見ながら自然に伝えることが大切です。
LINEなど連絡ツールでの適切な対応
LINEやメールなどの連絡ツールでのやり取りも、うつ病の方にとっては負担になることがあります。適切な対応を心がけましょう。
返信を求めないメッセージを送る
メッセージを送る際は、「返信不要だよ」「気が向いたら連絡してね」といった言葉を添え、返信のプレッシャーを与えないようにしましょう。
- 一方的な情報提供に留める: 近況報告や共通の話題など、本人が読むだけでも済むような内容にする。
- 短く簡潔に: 長文や複雑な内容は避け、短く分かりやすいメッセージにする。
- ポジティブすぎる内容は避ける: 本人が落ち込んでいるときに、過度に明るいメッセージはかえってつらく感じさせることがあります。
必要以上に干渉しない距離感
メッセージのやり取りの頻度や内容についても、本人のペースを尊重し、必要以上に干渉しないようにしましょう。
- 連絡頻度を調整する: 毎日連絡する必要はありません。本人の負担にならない頻度で連絡を取る。
- プライバシーに配慮する: 病状やプライベートなことについて、無理に聞き出そうとしない。
- 既読スルーを気にしない: 返信がなくても、気にせず、本人が返信できるタイミングを待ちましょう。
LINEなどのツールは、対面でのコミュニケーションが難しい時期にもつながりを保つことができる有効な手段ですが、使い方を間違えると本人を追い詰めてしまう可能性もあります。本人の負担にならないような配慮が重要です。
うつ病の方を支える家族や周囲の心構え
うつ病の方を身近で支える家族や友人は、ご本人の苦しみを間近で見て、大きな精神的な負担を感じることがあります。支える側が疲弊しないように、自身の心身の健康も大切にすることが非常に重要です。
支える側が疲弊しないための注意点
うつ病の方のサポートは長期にわたることも少なくありません。献身的に支えようとするあまり、支える側が燃え尽きてしまう「共倒れ」を防ぐための注意点です。
自分の休息も大切にする
うつ病の方のケアに追われ、自分の時間や休息がおろそかになっていませんか?あなたが倒れてしまっては、本人を支えることができません。
- 休息時間を確保する: 睡眠時間を削ったり、趣味の時間をなくしたりせず、意識的に自分のための時間を作りましょう。
- 一人になる時間を持つ: ケアから離れ、リラックスできる一人だけの時間を持つことも大切です。
- 気分転換をする: 好きな音楽を聴く、映画を見る、散歩をするなど、心身をリフレッシュさせる活動を取り入れましょう。
- 外部のサポートを利用する: 一時的にケアを代わってもらえるサービスや、家族向けの相談窓口などを利用することも検討しましょう。
完璧なサポートを目指さない
うつ病の方を完璧にサポートしようと、全てを一人で抱え込んでしまう必要はありません。
- 抱え込みすぎない: 一人で解決しようとせず、周囲に助けを求めたり、悩みを打ち明けたりしましょう。
- 支援を求める: 家族や友人、職場の同僚など、サポートを分担できる人がいないか相談しましょう。
- 自分を責めない: うつ病の方の回復には波があります。うまくいかないことがあっても、自分を責めすぎないようにしましょう。「自分ができることをやる」という姿勢で十分です。
家族としての具体的なサポート方法
うつ病の方を家族として支える際の具体的な方法です。
- 服薬管理のサポート: 医師から処方された薬を、決められた通りに服用できているか見守る。服薬を忘れているようなら優しく声をかける。
- 通院の付き添い: 本人が一人で通院するのが難しい場合、付き添う。診察に同席し、医師に本人の普段の様子を伝えたり、疑問点を質問したりする。
- 日常生活のサポート: 食事の準備、入浴、着替えなど、本人にとって負担が大きい日常生活の行動をサポートする。ただし、本人ができることまでは奪わない。
- 病気に関する情報収集と共有: うつ病について正しく理解し、家族間で情報を共有する。地域の相談窓口や支援サービスについて調べる。
家族は最も身近な存在であり、大きな支えとなります。しかし、その分負担も大きくなりがちです。家族全体で協力し、一人に負担が集中しないように配慮することが重要です。
友人としての関わり方(関わりたくない時の対処も含む)
友人がうつ病になった場合、どのように関わるべきか悩むかもしれません。無理のない範囲で、本人のペースに合わせた関わり方を心がけましょう。
- 無理に励まさない: 禁句リストを参考に、励ましや精神論は避けましょう。
- 連絡は一方的でOK: LINEなどで「元気?」「体調どう?」といったメッセージを送る際に、「返信はいつでも良いからね」と一言添える。既読スルーされても気にしない。
- 短時間の面会: もし本人が会うことを希望するなら、短時間で、静かな場所で会うことを提案する。無理に話そうとせず、ただ一緒に時間を過ごすだけでも良い。
- 回復後の変化への理解: うつ病の回復には時間がかかり、回復しても以前とは少し変わることもあります。焦らず、変化を受け入れる姿勢が大切です。
もし、友人のうつ病と向き合うのがつらい、距離を置きたいと感じた場合:
これは決して悪いことではありません。あなたの心身の健康も非常に重要です。罪悪感を感じる必要はありません。
- 正直に伝えるのは難しい場合: 無理に連絡を取り続けたり、会ったりする必要はありません。少しずつ連絡の頻度を減らすなど、距離を置くことも一つの方法です。ただし、突然連絡を絶つと、本人を傷つけてしまう可能性もあります。
- 正直に伝えたい場合: 本人の状況を慮りつつ、「今は少し自分自身のことで精一杯で、すぐに力になれないかもしれない。でも、あなたのことを気にかけているよ」など、率直かつ配慮のある言葉で伝えることも考えられます。ただし、これも本人の状態によっては難しい場合があります。
- 共通の友人と相談する: 共通の友人がいる場合は、状況を相談し、協力を仰ぐことも有効です。
- 専門機関に相談する: 精神保健福祉センターなどでは、うつ病の方のご家族や友人からの相談も受け付けています。一人で悩まず、専門家の意見を聞くことも有効です。
友人としての関わりは、家族とは異なり、より柔軟な距離感を保つことができます。あなた自身の心を守ることも忘れずに、無理のない範囲でサポートできる方法を探しましょう。
専門機関や専門家への相談の重要性
うつ病の治療や回復には、医療機関や専門家のサポートが不可欠です。本人だけでなく、支える家族や周囲の人も、必要に応じて専門機関に相談することが非常に重要です。
どのような場合に相談すべきか
以下の場合は、速やかに専門機関や専門家への相談を検討しましょう。
- うつ病が疑われる症状が出ている: 気分の落ち込みが続き、日常生活に支障が出ている場合。
- 症状が改善しない、悪化している: 治療を受けていても症状が改善しない、あるいは悪化している場合。
- 希死念慮や自傷行為のサインがある: 「死にたい」「消えたい」といった言葉が出たり、自傷行為が見られたりする場合。緊急性が高い場合は、救急医療機関への連絡も検討。
- 本人や家族だけでは対応が困難な場合: 服薬を拒否する、引きこもりが深刻化する、暴力的な言動があるなど、家庭内だけでは対応が難しい状況。
- 支える側が精神的に追い詰められている: うつ病の方のケアに疲れ、自身の心身の健康に不安を感じ始めた場合。
- 病気についてもっと知りたい、適切な接し方についてアドバイスが欲しい: 病気について学びたい、具体的な対応方法について専門家のアドバイスを受けたい場合。
相談できる場所の種類
うつ病に関する相談ができる専門機関や専門家には、様々な種類があります。それぞれの特徴を理解し、状況に応じて適切な相談先を選びましょう。
相談先 | 主な役割・特徴 |
---|---|
精神科医・心療内科医 | うつ病の診断、薬物療法、精神療法など、医学的な治療を行う専門家。うつ病の治療の主体となる。本人の受診が基本だが、家族からの相談を受け付けている場合もある。 |
カウンセラー・臨床心理士 | 精神療法(カウンセリング)を行う専門家。本人の抱える悩みや問題に対して心理的なアプローチを行う。認知行動療法など、特定の技法を用いたカウンセリングも。医療機関に併設されている場合や、民間のカウンセリングルームがある。 |
精神保健福祉センター | 都道府県や政令指定都市に設置されている公的な相談機関。精神疾患に関する相談全般を受け付けており、本人だけでなく家族からの相談も可能。医師、保健師、精神保健福祉士などが対応する。電話相談や面談が可能。 |
保健所 | 地域住民の健康に関する相談窓口。精神保健に関する相談も受け付けている。保健師が対応することが多い。 |
市町村の窓口 | 地域によっては、精神保健福祉に関する専門の窓口や相談員を配置している場合がある。社会福祉士などが対応することが多い。 |
いのちの電話など | 緊急性の高い精神的な危機や自殺念慮に関する電話相談窓口。匿名で相談できる。 |
家族会 | 同じように精神疾患の方を持つ家族同士が集まり、情報交換や悩みの共有を行う場。体験談を聞いたり、支え合ったりすることができる。 |
まずはかかりつけ医に相談したり、地域の精神保健福祉センターや保健所に連絡してみるのも良いでしょう。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、うつ病と向き合っていくことが大切です。
【まとめ】うつ病 接し方 禁句を理解し、寄り添う
うつ病の方への接し方は、非常にデリケートであり、良かれと思った言葉が本人を傷つけてしまうこともあります。「うつ病 接し方 禁句」を理解することは、本人を傷つけずに寄り添うための第一歩となります。「頑張って」「気の持ちよう」といった励ましや精神論、比較や軽視、回復を急かす言葉は、エネルギーが枯渇し、自己肯定感が低下しているうつ病の方にとっては大きな負担やプレッシャーとなり、孤立感を深める原因となります。
適切な接し方とは、うつ病を病気として理解し、本人のペースを尊重することです。否定せずに話をじっくり聞く(傾聴)、安心できる居場所と時間を提供する、休息を最優先に見守る姿勢が重要です。また、「つらいね」「焦らなくて大丈夫」といった共感や安心感を与える言葉を選ぶこと、LINEなどでは返信を求めないメッセージを送るなどの配慮も有効です。
うつ病の方を支える家族や周囲の人も、自身の心身の健康を大切にし、一人で抱え込まず、休息をとること、完璧なサポートを目指さないことが重要です。そして何よりも、専門機関や専門家への相談をためらわないことが、本人と周囲の双方にとって、より良い回復への道につながります。
うつ病の回復には時間がかかり、波があります。焦らず、根気強く、病気と向き合う本人に寄り添い続ける姿勢が、何よりも大切なのです。
免責事項: 本記事は、うつ病の方への一般的な接し方に関する情報提供を目的としています。個々の状況に応じた具体的な対応や、うつ病の診断・治療については、必ず医師や精神保健の専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて行った行為によって生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いません。