MENU

ADHDで障害者手帳は取得できる?対象者・申請方法・メリット総まとめ

ADHD(注意欠陥・多動性障害)の特性を持つ方にとって、日々の生活の中で「うっかりミスが多い」「締め切りを守れない」「衝動的に行動してしまう」「やるべきことの優先順位がつけられない」といった困りごとは少なくありません。これらの特性は、仕事や学業、人間関係など、様々な場面で負担となることがあります。しかし、これらの困りごとに対して、適切なツールや工夫を用いることで、生活をスムーズにし、自己肯定感を高めることが可能です。

そのツールのひとつとして注目されているのが「手帳」です。「ただのスケジュール帳でしょ?」と思うかもしれませんが、ADHDの特性に合わせて選び、効果的に活用することで、驚くほど日々の困りごとが軽減されることがあります。手帳は、単に予定を書き込むだけでなく、頭の中にある様々な情報や思考、感情を整理し、行動を計画し、実行に移すための強力なサポーターとなり得るのです。

この記事では、ADHDの方が手帳を使うメリットや効果、特性に合った手帳の選び方、そして挫折せずに手帳を活用し続けるための具体的な方法までを詳しく解説します。手帳を通じて、あなたらしいペースで、より計画的で穏やかな毎日を手に入れるヒントを見つけてください。

目次

ADHD 手帳 なぜ使う?メリットと効果

ADHDの特性には、不注意、衝動性、多動性といったものがあります。これらの特性は、日常生活において様々な困難を引き起こす原因となります。例えば、

  • 不注意: 集中力が持続しにくい、細かいミスが多い、忘れ物をする、話を聞き漏らす、作業を最後まで終えられない。
  • 衝動性: 思いつきで行動する、順番を待てない、衝動買いをする、感情を抑えられない。
  • 多動性: 落ち着きがない、ソワソワする、じっとしているのが苦手。

これらの特性から、「やるべきことが頭の中でごちゃごちゃになる」「何から手をつけていいかわからない」「締め切りが迫っているのに他のことをしてしまう」といった状況が生まれやすくなります。

手帳は、このようなADHD特有の困りごとに対する具体的な解決策を提供してくれます。手帳を使うことで得られるメリットは多岐にわたります。

ADHD の主な困りごとと手帳による解決策

ADHDの人が日常で直面しやすい代表的な困りごとに対し、手帳がどのように役立つのかを具体的に見ていきましょう。

ADHDの主な困りごと 手帳による解決策の例
予定や締め切りを忘れる 予定を書き込む、締め切り日を強調してマークする、リマインダー代わりに手帳を開く習慣をつける
忘れ物が多い 出かける前に確認する持ち物リストを手帳に作っておく、前日に行う準備リストを書き出す
作業の段取りや優先順位付けが苦手 タスクを書き出し、重要度や緊急度で色分けする、ステップごとにタスクを細分化して書き出す
集中力が続かず、気が散りやすい 休憩時間を計画的に書き込む、作業時間をブロックで区切って手帳に記録する(タイムボックス)
やるべきことが頭の中で整理できない 思いついたこと、やるべきことをすべて手帳に書き出して「見える化」する
時間の見積もりが苦手で遅刻しやすい 各タスクにかかる時間を手帳に書き出し、実際にかかった時間と比較して記録する(時間ログ)
衝動的な行動(例: 衝動買い)が多い 欲しいものを手帳にリストアップし、数日考えてから本当に必要か判断する、予算を手帳で管理する
過去の経験を振り返り、次に活かすのが苦手 日々のログ(できたこと、感じたこと)を手帳に記録し、定期的に見返す習慣をつける

このように、手帳は単なるスケジュール管理ツールではなく、ADHDの特性によって生じる様々な認知的な課題や行動の困難さに対して、具体的なサポートを提供してくれる外部ツールとして機能します。

ワーキングメモリの負荷を軽減

ADHDの特性の一つに、ワーキングメモリ(短期的に情報を記憶・処理する能力)の弱さがあると言われています。ワーキングメモリが弱いと、複数の指示を同時に覚えたり、考えながら作業を進めたりすることが難しくなります。頭の中で情報を保持しておくのが苦手なため、「あれ?何をしようとしてたんだっけ?」「さっき言われたこと、忘れちゃった…」といったことが頻繁に起こり得ます。

手帳は、このワーキングメモリの負荷を大幅に軽減してくれます。頭の中で覚えておく必要のある情報をすべて手帳に「外出し」することで、頭の中をすっきりさせ、目の前のタスクに集中しやすくなります。やるべきこと、考えたいこと、忘れたくないことなど、すべてを手帳に書き出すことで、脳のリソースを「覚える」ことではなく「考える」「実行する」ことに使えるようになります。これは、ADHDの人にとって非常に大きなメリットです。

衝動的な行動を抑制する助けに

衝動性は、ADHDの特性の一つであり、後先考えずに「やりたい!」と思ったことをすぐに行動に移してしまう傾向があります。これにより、計画が狂ったり、トラブルに巻き込まれたりすることもあります。

手帳を使うことは、衝動的な行動を抑制する助けになります。例えば、何か新しいことを始めたいと思ったとき、すぐに実行に移すのではなく、まず手帳にそのアイデアを書き出してみます。「いつから始めるか」「何が必要か」「どのくらいの時間がかかりそうか」といった計画を手帳上で検討する時間を持つことで、一時の衝動に任せるのではなく、冷静に判断を下す習慣を身につけることができます。また、衝動買いしそうになったときに、一度手帳の欲しいものリストに書き留め、本当に必要かどうかを数日後に再検討するといった使い方も有効です。手帳が、行動と行動の間に「考える時間」を意図的に作り出す緩衝材となってくれるのです。

時間管理・段取りを見える化

ADHDの人は、時間の経過を感覚的に捉えるのが苦手な傾向があります。「時間管理が難しい」「締め切りが迫っているのに気づかない」「タスクにかかる時間を見誤る」といった困りごとが生じやすいのはそのためです。

手帳、特に時間軸が明確なバーチカルタイプやタイムログ形式の手帳は、時間を「見える化」するのに非常に役立ちます。予定だけでなく、タスクにかかる時間をブロックで塗りつぶしたり、実際に作業にかかった時間を記録したりすることで、時間の流れを視覚的に把握できるようになります。これにより、時間に対する感覚が養われ、計画性が向上します。また、大きなプロジェクトを小さなタスクに分解し、それぞれに所要時間を割り振って手帳に書き出すことで、全体の段取りが明確になり、何から手をつけるべきかが分かりやすくなります。

忘れ物・遅刻の防止

忘れ物や遅刻は、不注意や時間管理の苦手さから起こりやすいADHDの困りごとです。これらの頻発は、自信喪失にもつながりかねません。

手帳を「忘れ物・遅刻防止ツール」として活用することも効果的です。例えば、外出前や前日の夜に確認する「持ち物チェックリスト」を手帳の決まったページに作っておきます。会議やアポイントメントの前には、必要な書類や物を手帳に書き出し、準備ができたらチェックボックスにチェックを入れる習慣をつけます。また、移動時間や準備時間も考慮した上で、家を出る時間や到着目標時間を手帳に具体的に書き込むことで、遅刻を防ぐ意識が高まります。手帳を見るという行動が、これらの忘れや遅れを防ぐトリガーとなるのです。

ADHD 特性に合う手帳タイプ・選び方

世の中には様々なタイプの手帳があり、それぞれ特徴が異なります。ADHDの特性は人それぞれ異なるため、「このタイプの手帳が絶対におすすめ!」と断言することは難しいですが、ご自身の特性やライフスタイル、手帳に何を求めたいかに合わせて選ぶことが非常に重要です。

手帳の種類別メリット・デメリット

代表的な手帳タイプをいくつか紹介し、それぞれのメリット・デメリット、そしてADHDの人にどう向きそうかを考えてみましょう。

手帳タイプ 主な特徴 ADHDの特性に合う点 ADHDの特性に合わない点
マンスリー 1ヶ月の予定が一覧できるカレンダー形式 月全体の流れや締め切りを一目で把握しやすい、シンプルで書き込みやすい 各日のスペースが狭く、詳細なタスク管理やログには不向き、時間が連続している感覚を掴みにくい
ウィークリー 1週間が見開きになっているタイプ(バーチカル、ホリゾンタルなど) 1週間の予定とタスクをまとめて管理しやすい、週ごとの目標設定や振り返りがしやすい マンスリーと比べて全体像を把握しにくい、フォーマットによっては時間が把握しにくい場合も
バーチカル式 1日の時間軸が縦に並んでいて、予定やタスクを時間ごとに書き込めるウィークリー 時間の経過を視覚的に捉えやすい、タスクの所要時間を見積もり・記録しやすい、タイムボックスでの作業管理がしやすい スペースが限られる場合がある、時間軸に縛られるのが苦手な人には向かない
ホリゾンタル式 1日ごとのスペースが横に並んでいるウィークリー ある程度の書き込みスペースがある、時間軸にとらわれすぎずにタスクを書き出せる、柔軟性が高い 時間管理には向きにくい、時間が前後して書き込まれると混乱しやすい
1日1ページ 1日が見開きまたは1ページになっているタイプ 思考やタスクを自由に書き出せるスペースが豊富、ログや日記としても使える、ごちゃごちゃ書きたい人に向く 毎日埋めるのが負担になる可能性がある、全体像を把握しにくい、持ち運びには不向きなサイズが多い
セパレート 見開きで上下が分かれており、違う情報を同時に表示できる(例: 月間+週間) 複数の情報を同時に確認できるため、情報を行き来する手間が省ける、全体像と詳細を並行して見たい人に向く 特殊なフォーマットに慣れが必要、手帳の種類が限られる
フリータイプ 日付や時間軸があらかじめ印刷されていないタイプ 完全に自由なフォーマットで使える、気分や必要に応じてレイアウトを変えられる、クリエイティブな使い方に向く 自分で構造を決めるのが苦手な人には向かない、書き方が定まらず混乱する可能性がある

バーチカル式手帳の活用法

ADHDで時間管理やタスクの実行が苦手な方には、バーチカル式手帳が特に有効な場合があります。縦軸に時間が設定されているため、1日の時間の流れを視覚的に捉えやすく、「この時間は〇〇をする」「次の時間は△△に移動する」といった形で、時間のブロックごとに予定やタスクを書き込むことができます。

具体的な活用例としては、

  • タイムボックス: 「9:00-10:00 企画書作成」「10:00-10:15 休憩」「10:15-11:30 メール返信」のように、タスクごとに作業時間を割り振って書き込みます。タイマーと併用することで、時間内に集中して作業を進める訓練になります。
  • 時間見積もりと実績: 予定の横に(見積もり時間:30分)と書き、実際に作業が終わったら(実際にかかった時間:45分)と追記します。これを繰り返すことで、タスクにかかる時間を見積もる精度が高まります。
  • 空白時間の把握: バーチカルを見れば、空いている時間が一目でわかります。この空白時間に「突発的なタスクを入れる」「休憩や気分転換に使う」など、柔軟に対応できます。

時間軸があることで、時間に「流されている」感覚から、「時間をコントロールしている」感覚に変わりやすく、計画通りに進められた達成感も得やすいでしょう。

セパレートダイアリーの使い勝手

セパレートダイアリーは、見開きページが上下に分かれており、上段でマンスリー、下段でウィークリー(バーチカルまたはホリゾンタル)を確認できるタイプなどがあります。複数の情報を同時に見たい、全体像と詳細をすぐに行き来したい、という方にとって便利な手帳です。

ADHDの特性を持つ方で、

  • 月全体の大きな流れ(締め切り、イベントなど)を常に把握しておきたいが、同時に週ごとの詳細なタスク管理もしたい。
  • 仕事の予定とプライベートの予定を分けて管理したい(上下で使い分ける)。
  • 長期的な目標と短期的なタスクを結びつけたい。

といったニーズがある場合に有効です。ページを行き来する手間が省けるため、情報へのアクセスがスムーズになります。

1日1ページ手帳で詳細記録

「頭の中で考えがまとまらない」「思いついたことをすぐに書き留めたい」「その日の出来事や感情を詳しく記録したい」という方には、1日1ページタイプの手帳が適しています。十分なフリースペースがあるため、タスクリスト、メモ、アイデア、日記、感情のログなど、様々な情報を詰め込むことができます。

ADHD特性との関連では、

  • 思考の整理: 脳内でごちゃごちゃしている考えを、文字や図で書き出すことで整理できます。ブレインストーミングの場所としても最適です。
  • ログ記録: その日できたこと、難しかったこと、かかった時間、気分などを記録することで、自己理解が深まり、次にどう活かすかが見えやすくなります。
  • 情報の一元化: 打ち合わせの内容、読んだ本の感想、ふと気づいたことなど、様々な情報を1日のページに集約できます。

毎日ページを埋めるのは負担に感じるかもしれませんが、必ずしも全て埋める必要はありません。「書きたいことだけ書く」「タスクリストだけ書く」など、柔軟に使うのが継続のコツです。

マンスリー・ウィークリー併用

市販の手帳に多い、マンスリーページとウィークリーページ(ホリゾンタルまたはバーチカル)がセットになったタイプも、ADHDの人にとって有効な選択肢です。

  • マンスリーページ: 月全体の予定や締め切りを確認し、大きな流れを把握するのに使います。重要な予定や締め切りは目立つようにマークしておきましょう。
  • ウィークリーページ: 週ごとの詳細なタスク管理や日々の予定記入に使います。マンスリーで確認した大きな予定を週ごとのタスクに落とし込む作業を行います。

全体像(マンスリー)と詳細(ウィークリー)を組み合わせて使うことで、より計画的な行動が可能になります。どちらのページをメインで使うか、どのように連携させるかは、ご自身の使いやすい方法を見つけてください。

ADHD の特性に合わせた選び方のポイント

手帳の種類だけでなく、他にもADHDの特性に合わせた手帳選びの重要なポイントがあります。

視覚的な情報の整理しやすさ

ADHDの人は、視覚的な情報処理が得意な場合と苦手な場合があります。自分の特性に合わせて、情報の整理がしやすいデザインやフォーマットを選びましょう。

  • シンプルなデザイン: 余計な装飾が少なく、罫線や枠がすっきりしている方が、集中しやすく情報が見やすい場合があります。
  • 色分けやアイコン: 重要な予定やタスク、カテゴリごとに色分けしたり、簡単なアイコンを使ったりすることで、情報が直感的に理解しやすくなります。最初から色分けしやすいデザインの手帳もあります。
  • フォーマットの固定: 決まった場所に決まった情報を書くフォーマットが決まっている方が、迷わずに書き進められる場合があります。逆に、自由度が高い方が書きやすい人もいます。

試し書きをしたり、実際に手帳の中身を見たりして、自分にとって「見やすい」「書き込みやすい」と感じるものを選びましょう。

書き込みスペースの確保

タスクが多い日や、思考を整理するためにたくさん書き出したい場合など、十分な書き込みスペースがあることは非常に重要です。

  • 1日あたりのスペース: 普段のタスク量や、手帳をどのように使いたいか(タスクリスト、メモ、ログなど)を考えて、1日あたりのスペースが十分にあるか確認しましょう。
  • フリースペース: 月間や週間のページだけでなく、自由に使えるメモページが多い手帳も便利です。思いついたことや、とりあえず書いておきたいことを一時的に書き留める場所として活用できます。

スペースが狭すぎると、書ききれずに他の場所にメモしてしまい、情報が散らばる原因になります。少し大きすぎるかな、と思うくらいがちょうど良い場合もあります。

持ち運びやすさ・サイズ感

手帳は、常に携帯して「すぐに開ける」「すぐに書き込める」状態にしておくことが、ADHDの人が継続して使う上で非常に重要です。

  • サイズ: いつも持ち歩くバッグやポケットに入るサイズか確認しましょう。大きすぎると持ち運ぶのが億劫になり、小さすぎると書き込みにくくなります。A5やB6サイズが一般的で使いやすいでしょう。
  • 重さ: 厚みのある手帳や、カバーが重い手帳は、毎日持ち歩くのが負担になることがあります。紙質やカバーの素材も考慮して、可能な限り軽いものを選びましょう。
  • 耐久性: 頻繁に開いたり、バッグの中で他のものとぶつかったりすることを考えると、ある程度の耐久性がある素材や製本方法が望ましいです。

「書きたいと思ったときに手元にない」という状況を避けるために、持ち運びのハードルが低い手帳を選ぶことが継続の鍵となります。

素材・デザインによる集中補助

手帳の紙質やカバーのデザインといった要素も、ADHDの人の手帳活用に影響を与えることがあります。

  • 紙質: 書き心地の良い紙質の手帳を選ぶと、書くこと自体が楽しくなり、手帳を開くモチベーションにつながります。ペンとの相性も確認しましょう。
  • カバーのデザイン: 好きな色やデザイン、触り心地の良いカバーを選ぶことも、手帳への愛着を深め、頻繁に触れたくなる理由になります。視覚的な刺激が少ないシンプルなデザインが良いか、逆に鮮やかで目を引くデザインが良いかは、個人の好みや集中特性によります。
  • 触覚的な要素: カバーの素材感(ツルツル、ザラザラなど)や、開きやすさ、ページのめくりやすさなども、意外と重要です。ストレスなく使えるものを選びましょう。

手帳は毎日使うものだからこそ、機能性だけでなく、自分の五感に心地よく響くものを選ぶことで、手帳とのポジティブな関係を築きやすくなります。

ADHD 手帳 効果的な使い方・書き方

手帳を選んだら、次は実際にどのように使うかです。ADHDの特性を考慮した、効果的な使い方や書き方のコツを紹介します。

To Doリスト作成のコツ

やるべきことをリストアップするTo Doリストは、ADHDの人にとって非常に強力なツールですが、書き方によっては overwhelmed (圧倒されてしまう)感じてしまうこともあります。

  • タスクを細分化する: 「企画書を作成する」といった大きなタスクは、「情報収集」「構成を考える」「目次を作る」「本文を書く(パート1)」「本文を書く(パート2)」「図やグラフを入れる」「推敲する」のように、具体的な小さなステップに分けましょう。一つ一つのステップが小さければ、取り掛かりやすくなります。
  • 具体的な行動を書き出す: 抽象的な表現(例: 連絡)ではなく、具体的な行動(例: 〇〇さんに電話する)を書きましょう。何をするべきかが明確になります。
  • 優先順位をつける: 全てのタスクに同じ重要度はありません。締め切りが近いもの、重要なもの、短時間で終わるものなど、自分なりの基準で優先順位をつけましょう。数字や記号、色分けなどで優先順位を視覚的に示すのも良い方法です。
  • 完了したらチェック!: タスクが完了したら、チェックボックスにチェックを入れたり、線を引いて消したりしましょう。達成感が得られ、次のタスクへのモチベーションにつながります。
  • リストは溜め込まない: あまりに多くのタスクがリストに並ぶと、やる気をなくしてしまうことがあります。1日にこなせそうな量だけをリストアップしたり、週ごとにリストを見直したりするなど、リストを管理可能な状態に保つ工夫が必要です。完了できなかったタスクは、翌日や翌週に移動させましょう。

時間割・スケジュール管理の方法

ADHDの人は、時間の見積もりや、複数の予定・タスクを時間軸に沿って配置するのが苦手な傾向があります。手帳を使って時間割やスケジュールを管理する際のコツです。

  • 予定だけでなく、作業タスクも書き込む: 会議やアポイントメントといった固定された予定だけでなく、「企画書作成」「メールチェック」といった作業タスクも、行う時間帯を決めて手帳に書き込みましょう。これにより、「いつ何をやるか」が明確になります。
  • バッファタイムを設定する: 予定と予定の間に、移動時間や休憩時間といった「バッファタイム(余裕時間)」を意識的に設定しましょう。予期せぬ遅延や、タスクが予定より長引いた場合にも対応しやすくなります。
  • 視覚的に時間を捉える: 色分けペンで仕事の時間は青、プライベートの時間は緑、休憩時間は黄色のように色分けしたり、マーカーで作業時間帯を塗りつぶしたりすることで、1日の時間の使い方が一目でわかります。
  • 「かかる時間」を見積もる練習: 各タスクの横に、そのタスクにかかるであろう時間を(見積もり: 30分)のように書き出してみましょう。そして、実際に終わったら(実績: 45分)のように記録します。この「見積もり」と「実績」を比較することで、時間感覚が養われていきます。
  • 定期的にスケジュールを見直す: 朝、昼、夜など、1日のうちに何度か手帳を開いて、予定やタスクを確認する習慣をつけましょう。これにより、「うっかり忘れていた!」を防ぎやすくなります。

メモ・アイデアの記録法

ADHDの人は、ひらめきやアイデアが豊富に出てくる一方で、それをすぐに忘れてしまったり、どこにメモしたかわからなくなったりすることがよくあります。手帳を「アイデアの金庫」として活用しましょう。

  • メモ専用スペースを作る: 手帳の巻末にあるフリーページをメモ専用にする、あるいは1日1ページ手帳の空きスペースを活用するなど、すぐにメモできる場所を確保しておきましょう。
  • 思いついたら即メモ!: 「これいいかも!」「あれもやらなきゃ!」と思いついたら、その瞬間に手帳を開いて書き留めましょう。数分後には忘れてしまう可能性が高いので、スピードが命です。
  • キーワードだけでもOK: 長文で書く必要はありません。後から思い出せるように、キーワードや簡単な図だけでも良いので書き留めましょう。
  • 情報の関連付け: 複数のページにメモした場合でも、後から関連する情報を見つけやすいように、ページ番号を振ったり、簡単な目印(付箋や色)をつけたりしておくと便利です。

振り返り・ログの活用

手帳は未来の予定を書くだけでなく、過去の記録(ログ)として活用することも、ADHDの人にとって非常に有益です。

  • 「できたこと」を記録する: ADHDの人は、できなかったことに目が行きがちで、自己肯定感が低くなりやすい傾向があります。1日の終わりに、「今日できたこと」を小さくても良いので書き出してみましょう。タスクの完了だけでなく、「時間通りに起きられた」「忘れ物をしなかった」といったことも立派な「できたこと」です。これにより、ポジティブな側面に目を向けられるようになります。
  • かかった時間や難易度を記録する: 各タスクにかかった時間や、やってみて感じた難易度(簡単だった、難しかった、集中できた、気が散ったなど)を記録しておくと、今後の計画を立てる際の参考になります。
  • 気付きや反省を書き出す: 「〇〇の作業は思ったより時間がかかった」「△△をすることで効率が上がった」「この時間帯は集中しやすい」といった気付きや反省点を書き出しましょう。これは、次回の計画や行動を改善するための貴重なデータとなります。
  • 定期的な見直し: 1日、1週間、1ヶ月の終わりに、手帳のログを見返す習慣をつけましょう。自分がどのように時間を使っているか、どんな時に集中できるか、どんな時に躓きやすいかなど、客観的に自分を分析するのに役立ちます。

手帳を続けるための工夫

ADHDの特性として、新しい習慣を身につけるのが難しかったり、飽っぽかったりする傾向があります。手帳を使い始めたものの、途中で挫折してしまう…という経験を持つ方もいるかもしれません。しかし、いくつかの工夫を取り入れることで、手帳を継続しやすくすることができます。

ハードルを下げる最初のステップ

いきなり完璧な手帳の使い方を目指さないことが大切です。まずは、続けられそうな「簡単なステップ」から始めましょう。

  • まずは「開く」ことから: 毎日決まった時間に手帳を開く、という行動だけを習慣にすることから始めましょう。中身を書かなくても良いので、まずは開く。食後や寝る前など、既存の習慣と紐づけるのも効果的です。
  • 1項目だけ書いてみる: 1日に書く内容は、予定を1つだけ、タスクを1つだけ、今日の「できたこと」を1つだけなど、最もハードルが低い項目から始めましょう。それが習慣になったら、少しずつ書き込む内容を増やしていきます。
  • 「楽しさ」を取り入れる: 好きなデザインの手帳を選ぶだけでなく、書き心地の良いペンを使う、可愛いシールやスタンプを使う、色鉛筆で色を塗るなど、手帳タイムを楽しい時間にする工夫を取り入れましょう。
  • 目につく場所に置く: 机の上、リビングのテーブル、ベッドサイドなど、常に目につく場所に手帳を置いておきましょう。手に取りやすくなり、書き忘れを防ぎやすくなります。

習慣化させるためのアイデア

手帳を使う行動を日常生活に定着させるためのアイデアです。

  • 「手帳タイム」を設定する: 毎日5分でも良いので、「手帳を開く時間」をスケジュールに組み込みましょう。朝起きてすぐ、お昼休み、寝る前など、無理なく続けられる時間帯を選びます。
  • 既存の習慣と結びつける: 「朝食を食べたら手帳を開く」「歯磨きが終わったら翌日のタスクを書き出す」のように、すでに習慣になっている行動の直後に手帳を開く行動をセットにすると、忘れにくくなります。
  • リマインダーを活用する: スマホのリマインダー機能で、「手帳を開く時間ですよ」と通知するように設定しましょう。
  • 誰かにチェックしてもらう: 家族や信頼できる友人に、「今日、手帳使った?」と声かけしてもらうのも効果的です。外部からの働きかけがあると、モチベーションを維持しやすくなります。(ただし、負担にならないように注意が必要です)
  • 完璧主義を手放す: 「書けなかった日があってもOK」「空白があってもOK」と自分に許可を出しましょう。書けなかった自分を責めるのではなく、「明日からまた使おう」と切り替えることが大切です。

ADHD 手帳 選び方・種類別おすすめ

(ここでは、具体的な商品名を挙げるのではなく、ADHDの特性に合う手帳の「特徴」を持った手帳タイプやシリーズの例を挙げる形式で記述します。)

ADHDの方におすすめできる手帳には、いくつかの特徴が見られます。ご自身の好みや特性に合わせて、以下のようなポイントを持つ手帳を探してみてください。

おすすめの手帳ブランド・商品(特徴ベースの例示)

  • 時間管理に強いバーチカルタイプ:
    • 特徴:1日ごとの時間軸が縦に並び、時間をブロックで区切って管理しやすい。
    • 例:『EDiT(エディット)』のバーチカルタイプや、『ジブン手帳』のBiz(ビジネス向け)など、時間軸が細かく設定されているもの。タスクの開始・終了時間を見積もり、実行記録をつけるのに役立ちます。
  • 自由度が高くログにも向くデイリータイプ:
    • 特徴:1日1ページまたは見開き1ページで、フリースペースが豊富。タスクリスト、メモ、思考整理、ログなど多様な使い方が可能。
    • 例:『ほぼ日手帳』のオリジナル(文庫サイズ)やカズン(A5サイズ)など。日付入りのものから、完全にフリーのタイプまであります。毎日同じように使うのが苦手でも、その日の気分で自由に書き込めます。
  • 複数の情報を同時に見られるセパレートタイプ:
    • 特徴:見開きで上下が分かれており、月間カレンダーと週間バーチカルなどを同時に確認できる。
    • 例:『セパレートダイアリー』シリーズなど。全体像と詳細をページを行き来せずに見たい場合に便利です。
  • シンプルなフォーマットのウィークリータイプ:
    • 特徴:罫線や枠がシンプルで、視覚的な情報過多にならない。ある程度の書き込みスペースがある。
    • 例:『無印良品』の週間ノートや、『ロルバーンダイアリー』のウィークリータイプなど。シンプルな見た目で、自分で色分けや装飾をしてカスタマイズしやすいです。
  • 持ち運びやすい小型軽量タイプ:
    • 特徴:バッグやポケットに入れやすいサイズで、紙やカバーが軽量。
    • 例:A6サイズやB6サイズの手帳全般。薄手のものや、カバーのない簡易的なタイプなども検討できます。常に携帯して、思いついたときにすぐに書き込めるようにすることが重要です。

これらの特徴を持つ手帳を参考に、文具店やオンラインストアで実際に見たり触ったりして、自分にとって使いやすそうな一冊を見つけるのがおすすめです。

ADHD 手帳 以外に使えるツール(アプリ等)

手帳はアナログなツールですが、ADHDの困りごとをサポートするツールは手帳だけではありません。手帳と組み合わせて使う、あるいは手帳が合わない場合の代替となるデジタルツールやその他のツールも有効です。

ツールタイプ 主な機能 メリット デメリット ADHD特性との相性
スマホアプリ カレンダー、To Doリスト、リマインダー、ノート、時間記録、集中支援(ポモドーロ) 常に携帯しているためアクセスしやすい、通知機能が豊富、自動的に繰り返しの設定ができる、検索が容易 スクリーンタイムが増える、他のアプリに気を取られやすい、電池切れのリスク、視覚的な情報過多になりやすい場合がある リマインダーや通知機能は忘れ物防止に役立つ、時間記録や集中支援機能は時間管理や作業効率向上に有効。ただし、アプリ自体に気を取られるリスクも。
PC・タブレット カレンダー、タスク管理、ノート、マインドマップ、プロジェクト管理 大画面で見やすい、大量の情報を管理しやすい、他のツールとの連携が容易 常に携帯しにくい、起動に時間がかかる場合がある、デバイス自体に気を取られやすいリスク 複雑なタスクやプロジェクトの全体像把握に役立つ。思考を整理するのに広い画面は便利。
音声入力ツール 音声で文字入力、メモ作成 思いついたことをすぐに記録できる、書く手間が省ける 誤認識の可能性、周囲の環境に左右される、プライベートな内容は使いにくい場合がある 手で書くのが億劫なときや、移動中にアイデアがひらめいたときに便利。
ホワイトボード アイデア出し、タスクリスト、計画の可視化 自由度が高い、複数人で共有しやすい、消したり書き直したりが容易 持ち運びできない、物理的なスペースが必要 大きな画面で全体像を視覚的に捉えやすい。思いついたことをすぐに書き出せる。
付箋 タスク、メモ、アイデア、リマインダー 手軽に書ける、貼る場所を選ばない、優先順位の変更が容易 紛失しやすい、情報が散らばる、見栄えが悪くなる場合がある 思いついたことを一時的に書き留めるのに便利。完了したタスクを剥がすことで達成感も。

手帳とこれらのツールを組み合わせて使う「ハイブリッド式」もおすすめです。例えば、手帳で大まかなスケジュールと毎日のタスクリストを管理し、スマホのリマインダーで重要な締め切りや予定を通知する、ホワイトボードで大きなプロジェクトの全体像を把握するといった使い方です。

どのツールが合うかは個人差が大きいため、いくつか試してみて、自分にとって最も使いやすく、効果を実感できる組み合わせを見つけることが大切です。完璧なツールは存在しないので、それぞれのツールのメリットを活かし、デメリットを他のツールで補うような使い方を考えてみましょう。

まとめ:ADHDと手帳でより良い毎日を

ADHDの特性によって生じる日々の困りごとは、時に大きなストレスや負担となり得ます。「自分はダメだ…」と自己肯定感が低くなってしまうこともあるかもしれません。しかし、それはあなたのせいではなく、脳の特性によるものです。そして、その特性に対する適切なサポートがあれば、困りごとを軽減し、自分らしく能力を発揮することが可能です。

手帳は、ADHDの特性によって生じるワーキングメモリの負荷、時間管理の難しさ、衝動性といった課題に対して、非常に効果的なサポートツールとなり得ます。手帳を外部の脳として活用することで、頭の中を整理し、計画的に行動するための手助けとなります。忘れ物や遅刻を防ぎ、やるべきことを明確にし、できたことに目を向けることで、自己肯定感を高めることにもつながります。

もちろん、手帳は万能な魔法のツールではありません。手帳を使うこと自体が負担に感じることもあるかもしれませんし、使い始めたからといって全ての困りごとが一瞬で解決するわけではありません。しかし、この記事で紹介した様々な手帳タイプや使い方、継続の工夫を参考に、ご自身の特性やライフスタイルに合った方法を試してみる価値は十分にあります。

最初から完璧を目指す必要はありません。まずは「毎日手帳を開く」ことから始めたり、「今日やるべきことを1つだけ書き出す」ことから始めたりするなど、ハードルを低く設定してスモールステップで取り組んでみましょう。手帳を書くこと自体を楽しい習慣にするために、お気に入りの手帳やペンを選ぶことも大切です。

手帳は、あなたの目標達成や日々の困りごと解決をサポートしてくれる、心強いパートナーになり得ます。ぜひ、あなたにとって最適な手帳を見つけ、活用してみてください。手帳を通じて、あなたの毎日がより計画的で、穏やかで、そして何よりあなたらしい、希望に満ちたものになることを願っています。


免責事項:

この記事は、ADHDの特性を持つ方々が手帳を活用するための一般的な情報提供を目的としています。ADHDの診断や治療は、専門の医師にご相談ください。また、手帳の活用方法や効果には個人差があります。ご自身の特性や状況に合わせて、無理のない範囲で取り組んでください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次