「妊娠しにくい人の特徴」について不安を感じていらっしゃる方もいるかもしれません。赤ちゃんを授かることは、多くの人にとって自然な流れのように思える一方で、様々な要因が複雑に関わり合っています。「妊娠しにくい」と感じる背景には、特定の体質や生活習慣、あるいは過去の病歴などが影響している可能性があります。しかし、これらの特徴に気づき、適切な知識を得ることで、将来に向けた前向きな一歩を踏み出すことができます。この記事では、妊娠に関わる男女それぞれの体の特徴や、妊娠を遠ざけてしまう可能性のある生活習慣、病気などについて詳しく解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めていただき、必要であれば専門機関への相談を検討するきっかけにしていただければ幸いです。
妊娠しにくい女性の特徴
女性の妊娠には、卵子、卵管、子宮、そしてホルモンバランスが複雑に連携している必要があります。これらのいずれかに問題があると、妊娠しにくくなる可能性があります。ここでは、妊娠しにくい女性によく見られる特徴について解説します。
年齢が与える影響
女性の年齢は、妊娠において非常に重要な要素です。特に30代後半から卵子の質と数が減少し始め、40代になるとその傾向はより顕著になります。
卵子は女性が生まれたときに一生分が作られ、年齢と共に一緒に年を重ねていきます。そのため、年齢が上がると卵子の質が低下し、染色体異常を持つ卵子の割合が増加します。染色体異常を持つ卵子は受精しても正常に分割が進まなかったり、着床しにくかったり、流産の原因になったりする可能性が高まります。また、卵子の数(卵巣予備能)も年齢と共に減少します。これは、月経周期ごとに一定数の卵子が減少し続けるためです。卵巣予備能の指標として用いられるAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値も、年齢と共に低下するのが一般的です。
具体的には、自然妊娠率のピークは20代後半から30代前半とされており、35歳を過ぎると徐々に低下し、40歳を過ぎるとさらに急速に低下すると言われています。これは、単に妊娠しにくくなるだけでなく、妊娠した場合でも流産や合併症のリスクが高まることとも関連しています。
月経周期・生理痛などの異常
月経は女性ホルモンの働きによって調節されており、妊娠可能な状態であるかどうかのバロメーターとも言えます。月経周期や生理痛に異常がある場合、妊娠しにくい原因が隠れている可能性があります。
月経周期が不規則
正常な月経周期は25〜38日程度とされています。これよりも短い場合(頻発月経)や長い場合(稀発月経)、あるいは全く来ない場合(無月経)は、排卵が正常に行われていない可能性があります。
- 周期が短い(頻発月経): 黄体機能不全などが考えられ、受精卵が着床するための子宮内膜が十分に成熟しない可能性があります。
- 周期が長い(稀発月経)/ 無月経: 排卵が稀であったり、全くなかったり(無排卵)する可能性が高いです。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などが原因として考えられます。排卵がなければ妊娠は成立しません。
月経周期が毎月大きく変動したり、何ヶ月も月経が来なかったりする場合は、婦人科を受診し、原因を調べることが重要です。
生理痛が重い・性交痛がある
強い生理痛(月経困難症)や性交痛がある場合、子宮や卵管、卵巣に何らかの病気が隠れている可能性があります。
- 子宮内膜症: 子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所(卵巣、卵管、腹膜など)にできる病気です。強い生理痛や性交痛、排便痛などが特徴的な症状として現れることがあります。卵巣にできるとチョコレート嚢胞、卵管周囲にできると卵管の癒着を引き起こし、卵子のピックアップや受精卵の移動を妨げる可能性があります。
- 子宮筋腫: 子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。できる場所や大きさによっては、月経量の増加や生理痛、不正出血を引き起こします。子宮内膜の近くにできた筋腫は、受精卵の着床を妨げる可能性があります。
- 骨盤内炎症性疾患(PID): 子宮や卵管、卵巣などが細菌感染によって炎症を起こす病気です。多くの場合、性感染症(クラミジアなど)が原因となります。自覚症状が軽いこともありますが、進行すると卵管が癒着したり詰まったりして、不妊の大きな原因となります。性交痛や不正出血などが症状として現れることがあります。
これらの病気は、早期に発見し治療することで妊娠の可能性を高めることができます。気になる症状がある場合は、我慢せずに医療機関に相談しましょう。
体重が適正範囲外(痩せすぎ・太りすぎ)
体格指数(BMI:Body Mass Index)が妊娠のしやすさに関わることが分かっています。BMIは体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m) で計算されます。
- 痩せすぎ(BMI 18.5未満): 極端なダイエットや偏った食事、過度な運動などでエネルギー不足になると、脳の視床下部からのホルモン分泌が抑制され、卵巣機能が低下したり、無月経になったりすることがあります。必要な栄養素が不足することも、妊娠に必要な体の準備を妨げる可能性があります。
- 太りすぎ(BMI 25以上): 肥満はホルモンバランスを乱し、排卵障害を引き起こす可能性が高まります。特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と関連が深いことが知られています。また、妊娠後も妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などのリスクが高まります。
適正な体重(BMI 18.5~24.9)を維持することは、ホルモンバランスを整え、排卵を正常化するために重要です。健康的な食事と適度な運動を心がけましょう。
喫煙・飲酒などの生活習慣
喫煙や過度な飲酒は、女性の妊孕性(妊娠する力)に悪影響を及ぼします。
- 喫煙: 卵巣の機能を低下させ、卵子の質を劣化させたり、卵子の減少を加速させたりすることが知られています。閉経が早まる傾向もあり、体外受精の成功率も低下させます。また、喫煙は卵管の動きを悪くし、受精卵の子宮への移動を妨げる可能性もあります。受動喫煙も影響があるため、パートナーが喫煙者の場合も注意が必要です。
- 飲酒: 適度な飲酒であれば大きな影響はないとされますが、多量飲酒はホルモンバランスを乱したり、排卵に影響を与えたりする可能性があります。妊娠が判明してからの飲酒は、胎児の発育に深刻な影響を与えるため、妊活中から控えることが推奨されます。
- カフェイン: 過剰なカフェイン摂取も、妊娠の可能性をわずかに低下させるという報告があります。全くゼロにする必要はありませんが、控えめにすることが望ましいでしょう。
- 睡眠不足や過度のストレス: ホルモンバランスの乱れや、心身の疲労につながり、妊孕性に影響を与える可能性があります。規則正しい生活と十分な休息、ストレス解消を心がけることが大切です。
健康的な生活習慣は、妊娠しやすい体を作るための基本です。
過去の病気や手術(性感染症、開腹手術など)
過去にかかった病気や受けた手術が、現在または将来の妊娠に影響を与えることがあります。
- 性感染症(STD): 特にクラミジア感染症や淋病などは、自覚症状がないまま進行し、卵管に炎症を起こして卵管を閉塞させたり、骨盤内に癒着を引き起こしたりすることがあります。卵管が詰まると、卵子と精子が出会えず、自然妊娠が非常に困難になります。過去に性感染症にかかったことがある場合、あるいは感染の可能性がある場合は、検査を受けることを検討しましょう。
- 開腹手術・骨盤内の手術: 子宮筋腫や子宮内膜症、虫垂炎などで開腹手術や骨盤内の手術を受けたことがある場合、手術の傷跡や炎症によって骨盤内に癒着が生じ、卵管や卵巣の動きが悪くなったり、卵管が詰まったりするリスクがあります。
- 子宮や卵巣の手術: 子宮筋腫核出術や卵巣嚢腫摘出術など、子宮や卵巣そのものに対する手術は、手術後の組織の修復過程で癒着が生じたり、卵巣組織を一部失ったりして卵巣機能が低下したりする可能性があります。
- その他の病気: 甲状腺疾患(甲状腺機能亢進症・低下症)、糖尿病、自己免疫疾患、抗がん剤治療や放射線治療などは、卵巣機能やホルモンバランスに影響を与え、妊孕性を低下させる可能性があります。
過去の病歴や手術歴は、医師に正確に伝えることが重要です。
子宮や卵管、卵巣の問題
前述の病気や手術に関連して、子宮や卵管、卵巣そのものに構造的または機能的な問題がある場合も、妊娠しにくさの原因となります。
- 卵管性不妊: 卵管が閉塞したり狭窄したりしている状態です。卵子と精子が出会う場所であり、受精卵を子宮へ運ぶ卵管の機能が損なわれると、自然妊娠は難しくなります。骨盤内炎症性疾患や子宮内膜症、過去の腹部手術などが主な原因となります。
- 排卵障害: 卵子が正常に成熟・排卵されない状態です。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、高プロラクチン血症、視床下部・下垂体の機能低下などが原因として挙げられます。規則正しい月経がない場合や、基礎体温で排卵が確認できない場合に疑われます。
- 子宮性不妊: 子宮の形に異常がある場合(子宮奇形)、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮腔内癒着などが原因で、受精卵が着床しにくかったり、妊娠を維持できなかったりします。
- 卵巣機能不全: 卵巣から十分な女性ホルモンが分泌されず、卵子の成熟や排卵がうまくいかない状態です。加齢による自然な卵巣機能の低下だけでなく、若年でも発症することがあり(早発卵巣不全)、染色体異常や自己免疫疾患などが原因となることもあります。AMH値が低い、FSH値が高いなどの検査結果で疑われます。
これらの問題は、不妊検査によって診断され、それぞれに適した治療法が検討されます。
妊娠しにくい男性の特徴
妊娠には男性側の妊孕性も不可欠です。精子の質や数に問題があったり、精子の通り道に問題があったりすると、妊娠しにくくなります。男性側の原因は、不妊全体の約半数に関わっていると言われています。
年齢が与える影響
女性ほど劇的ではありませんが、男性も年齢が妊孕性に影響を与えることが分かっています。一般的に、精子の質は30代後半から徐々に低下し始めると言われています。
年齢と共に、精子のDNA損傷が増加したり、精子の運動率や正常形態率が低下したりする傾向が見られます。また、精液量や精子を産生する能力もわずかに低下する可能性があります。高齢の男性の場合、パートナーの妊娠率が低下したり、流産のリスクがわずかに増加したりするという研究報告もあります。ただし、個人差が大きく、80代でも子供を授かる男性もいるため、女性ほど年齢の影響は決定的ではありません。しかし、年齢を重ねるにつれてパートナーの年齢も上がることが多いため、夫婦両方の年齢を考慮することが重要です。
喫煙・飲酒などの生活習慣
女性と同様、喫煙や過度な飲酒は男性の妊孕性にも悪影響を及ぼします。
- 喫煙: 精子の数、運動率、正常形態率を低下させることが多くの研究で示されています。また、精子のDNA損傷を増加させる可能性もあります。喫煙によって精子を産生する能力が低下したり、精子の機能そのものが損なわれたりするため、禁煙は男性不妊の改善に非常に有効です。
- 飲酒: 適量であれば問題ないことが多いですが、過度な飲酒は男性ホルモンであるテストステロンの分泌を低下させ、精子形成に悪影響を与える可能性があります。
- 肥満: 肥満は男性ホルモンのバランスを崩し、精子の質や数を低下させる可能性があります。適正な体重を維持することが重要です。
- その他の生活習慣: ストレス、睡眠不足、長時間のサウナや熱い風呂(睾丸の温度上昇は精子形成に悪影響)、タイトな下着なども精子に影響を与える可能性があると言われています。
健康的な生活習慣は、良質な精子を作るために不可欠です。
ストレス・疲労
精神的なストレスや慢性的な疲労は、男性のホルモンバランスを乱し、精子形成に影響を与える可能性があります。ストレスによってテストステロンの分泌が低下したり、自律神経のバランスが崩れたりすることが、精巣の機能に影響を与えると考えられています。また、心身の疲労は性欲の低下や勃起障害(ED)につながることもあり、これが性交の頻度やタイミングに影響し、妊娠の機会を減らしてしまう可能性もあります。
精子の問題(数、運動率、形態)
男性不妊の最も一般的な原因は、精子そのものに関する問題です。これは「造精機能障害」と呼ばれ、精巣で精子がうまく作られない、あるいは精子の質が低い状態を指します。
精子の問題は主に以下の3つの観点から評価されます。
- 精子の数(濃度): 精液1mlあたりの精子の数が少ない状態を乏精子症といいます。精子の数が少なければ、卵子までたどり着ける精子の絶対数が減るため、妊娠しにくくなります。
- 精子の運動率: 前に進む力の強い精子の割合が低い状態を精子無力症といいます。運動率が低いと、精子が卵子まで到達し、卵子の殻を破って受精する能力が低下します。
- 精子の形態: 精子の頭部、頸部、尾部の形に異常がある精子の割合が高い状態を奇形精子症といいます。正常な形態の精子が少ないと、受精する能力が低下する可能性があります。
これらの問題が単独である場合もあれば、複数組み合わさって現れる場合もあります。精液検査によってこれらの問題を評価することができます。精索静脈瘤、ホルモン異常、遺伝的要因、過去の病気(おたふく風邪による睾丸炎など)などが原因として考えられます。
過去の病気や手術
過去にかかった病気や受けた手術が、男性の妊孕性に影響を与えることもあります。
- 性感染症(STD): クラミジア感染症や淋病などが、精子の通り道である精路に炎症を起こし、閉塞させてしまうことがあります。精路が詰まると、精巣で作られた精子が射精されなくなり、無精子症の原因となることがあります。
- 停留精巣: 胎児期に精巣が陰嚢まで下降しきらず、腹腔内や鼠径部に留まっている状態です。精巣は陰嚢の温度(体温より低い)でないと正常な精子を作ることができません。早期に手術で陰嚢内に移動させても、精子形成能力が十分に回復しない場合があります。
- おたふく風邪(流行性耳下腺炎)による睾丸炎: 思春期以降におたふく風邪にかかると、合併症として睾丸炎を発症することがあります。睾丸炎によって精巣の機能がダメージを受け、精子を作る能力が著しく低下したり、失われたりする可能性があります。
- 鼠径ヘルニア手術: 手術の方法によっては、精子の通り道や精巣への血流に影響を与える可能性がごくまれにあります。
- 化学療法・放射線療法: がん治療などで抗がん剤治療や放射線治療を受けた場合、精子形成機能に重篤なダメージを与える可能性があります。治療前に精子凍結保存を検討することが重要です。
- その他: 糖尿病や腎不全、神経疾患なども、性機能や精子形成に影響を与える可能性があります。
過去の病歴や手術歴は、医師に正確に伝える必要があります。
夫婦ともに当てはまる「子供を授からない」共通点
女性または男性、あるいはその両方に特定の身体的な特徴や問題が見られない場合でも、妊娠しないことがあります。夫婦間の問題や心理的な要因も、妊娠のしにくさに関係することがあります。
タイミング法の問題
自然妊娠を試みる上で、排卵日に合わせて性交を行う「タイミング法」は非常に重要です。しかし、排卵日を正確に特定できていない、あるいは性交の頻度やタイミングが適切でない場合、妊娠の機会を逃している可能性があります。
- 排卵日の特定ミス: 月経周期が不規則な場合や、自己判断で排卵日を予測している場合、正確な排卵日を把握できていないことがあります。基礎体温の計測や排卵検査薬の使用、あるいは医療機関での超音波検査などで排卵日を正確に特定することが重要です。
- 性交回数の不足: 妊娠の確率を最大限に高めるには、排卵期に複数回性交することが望ましいとされています。週に1~2回程度の性交があれば、ほとんどの場合、排卵期をカバーできると言われますが、性交回数が極端に少ない場合は妊娠の機会そのものが減ってしまいます。
- 性交のタイミングのずれ: 排卵日当日の性交が最も妊娠しやすいと考えられがちですが、実際には排卵の数日前から排卵日当日までが最も妊娠しやすい期間です。精子は女性の体内で数日間生存できるため、排卵日よりも前に性交しておくことも有効です。排卵日だけを狙いすぎると、かえってプレッシャーになったり、タイミングを逃したりすることがあります。
正確な知識に基づき、プレッシャーになりすぎない範囲でタイミング法を試みることが大切です。
ストレスや心理的要因
妊活が長期化するにつれて、夫婦ともに精神的なストレスを抱えることが多くなります。「早く妊娠したい」「なんで授からないんだろう」といった焦りや不安、周囲からのプレッシャー、夫婦間のすれ違いなどが、心身に大きな影響を与えます。
過度なストレスは、女性の場合、ホルモンバランスを乱し、排卵や着床に影響を与える可能性があります。男性の場合も、ホルモンバランスや精子の質に影響を与えたり、性欲の低下やEDにつながったりすることがあります。また、ストレスによって性交そのものが義務的になり、自然な性行為が減ってしまうことも、妊娠の機会を減らす一因となります。
夫婦で協力し、互いの気持ちを理解し合いながら、ストレスを軽減するための工夫(趣味やリフレッシュ、夫婦での話し合いなど)をすることが重要です。必要であれば、カウンセリングなどを利用するのも良いでしょう。
妊娠しにくい「着床」に関する特徴
受精卵が無事に子宮内膜に接着し、根を下ろす過程を「着床」といいます。受精はうまくいっても、着床がうまくいかないために妊娠が成立しない、あるいは早期に流産してしまうことがあります。着床のしにくさに関わる女性側の特徴について解説します。
子宮内膜の状態
受精卵が着床するためには、子宮内膜が適切な状態であることが必要です。子宮内膜は月経周期に合わせて厚くなり、受精卵を受け入れる準備をします。
- 子宮内膜が薄すぎる: 排卵期や黄体期に子宮内膜が十分に厚くならない場合(一般的に7mm以下)、受精卵が着床しにくくなります。ホルモンバランスの異常(特にエストロゲン不足)、過去の手術(流産手術などによる子宮腔内癒着)、血流障害などが原因として考えられます。
- 子宮内膜が厚すぎる、または異常がある: 子宮内膜ポリープや子宮粘膜下筋腫、子宮内膜の過形成などがあると、子宮内腔が変形したり、内膜の状態が悪くなったりして、着床を妨げる可能性があります。
- 慢性子宮内膜炎: 細菌感染などによって子宮内膜に慢性的な炎症が起きている状態です。自覚症状がないことが多いですが、子宮内膜の受容能を低下させ、着床不全や習慣性流産の原因となることがあります。
子宮内膜の状態は、超音波検査や子宮鏡検査、子宮内膜組織検査などで調べることができます。
ホルモンバランス
着床や妊娠の維持には、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)のバランスが非常に重要です。これらのホルモンが適切に分泌されないと、子宮内膜が受精卵を受け入れられる状態になりません。
- 黄体機能不全: 排卵後に卵巣にできる黄体から分泌されるプロゲステロンが不足している状態です。プロゲステロンは子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に保ち、妊娠を維持するために重要なホルモンです。プロゲステロンが不足すると、子宮内膜が十分に成熟せず、着床がうまくいかなかったり、着床しても早期に流産してしまったりすることがあります。
- 高プロラクチン血症: 母乳を作るホルモンであるプロラクチンが必要以上に多く分泌されている状態です。プロラクチンが高いと排卵が抑制されたり、黄体機能が低下したりして、妊娠しにくくなることがあります。
これらのホルモンバランスの異常は、血液検査で調べることができます。原因に応じてホルモン補充療法などの治療が行われます。
妊娠しにくい特徴に心当たりがある場合の対策
もしご自身やパートナーに「妊娠しにくいかもしれない」と感じる特徴に心当たりがある場合でも、悲観する必要はありません。適切な対策を講じることで、妊娠の可能性を高めることができます。
生活習慣の見直し
まずは、ご自身やパートナーの生活習慣を見直してみましょう。健康的な体を作ることは、妊孕性を高めるための第一歩です。
- バランスの取れた食事: ビタミン、ミネラル、タンパク質などをバランス良く摂取しましょう。特に、葉酸は妊娠初期の胎児の発育に重要であり、妊活中からの摂取が推奨されます。男性も、亜鉛やセレンなどのミネラル、ビタミン類が精子形成に重要と言われています。
- 適度な運動: 適正体重の維持につながるだけでなく、血行を促進し、ストレス解消にも役立ちます。ただし、女性の過度な運動は無月経の原因となることがあるため注意が必要です。男性も、激しすぎる運動はテストステロンを低下させる可能性があるため、無理のない範囲で行いましょう。
- 十分な睡眠: 規則正しい生活を送り、十分な睡眠時間を確保しましょう。睡眠不足はホルモンバランスの乱れにつながることがあります。
- 禁煙・節酒: 喫煙は男女ともに妊孕性を著しく低下させます。妊活を始めたら、できるだけ早く禁煙しましょう。飲酒も控えめにすることが望ましいです。
- ストレス管理: 妊活によるプレッシャーや日々のストレスをうまく解消する方法を見つけましょう。趣味やリラクゼーション、パートナーとのコミュニケーションなどが有効です。
これらの生活習慣の改善は、すぐに効果が現れるわけではありませんが、長期的に続けることで妊娠しやすい体へとつながります。
専門機関への相談・検査
気になる特徴に心当たりがある場合や、一定期間(年齢にもよりますが、一般的に1年程度)妊活しても妊娠しない場合は、一人で悩まずに専門機関に相談することをお勧めします。不妊の原因は男女どちらかにある場合もあれば、両方にある場合、あるいは原因不明の場合もあります。専門医に相談することで、適切な検査を受け、ご夫婦それぞれの状況に合ったアドバイスや治療を受けることができます。
不妊検査の内容
不妊検査は、女性と男性それぞれに行われます。主な検査内容は以下の通りです。
検査対象 | 検査内容 | 目的 |
---|---|---|
女性 | 基礎体温測定 | 排卵の有無、月経周期、黄体期の長さなどを把握する。 |
経腟超音波検査 | 子宮や卵巣の形や大きさ、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫などの有無、卵胞の発育状況、子宮内膜の厚さなどを確認する。 | |
ホルモン検査(採血) | 生理周期に合わせて、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、エストロゲン、プロゲステロン、プロラクチン、男性ホルモンなどの分泌状態を調べ、排卵障害や黄体機能不全などを診断する。AMH(抗ミュラー管ホルモン)は卵巣予備能の目安となる。 | |
卵管造影検査(子宮卵管造影検査) | 子宮腔の形や卵管が通っているか(閉塞・狭窄の有無)を調べる。造影剤を注入し、X線で撮影する。 | |
子宮鏡検査 | 子宮内腔に細い内視鏡を挿入し、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮腔内癒着、慢性子宮内膜炎などを直接観察する。 | |
腹腔鏡検査 | 腹部に小さな穴を開け、内視鏡を挿入し、子宮内膜症、卵管周囲の癒着、卵巣の異常などを診断・治療する(手術を兼ねる場合がある)。 | |
男性 | 精液検査 | 精子の数、運動率、形態、精液量などを調べる。男性不妊の基本的な検査。何度か検査を行うことがある。 |
ホルモン検査(採血) | 精子形成に関わるホルモン(FSH、LH、テストステロンなど)の分泌状態を調べる。 | |
超音波検査 | 精巣の大きさや、精索静脈瘤の有無などを調べる。 | |
染色体検査・遺伝子検査 | 重度の造精機能障害などがある場合に、染色体異常や遺伝子異常(Y染色体微小欠失など)の有無を調べる。 | |
夫婦 | 性交後検査(フーナーテスト) | 性交後、女性の頸管粘液中の精子の状態(数、運動性)を調べる。現在は実施しないクリニックも多い。 |
抗精子抗体検査 | 女性の体内に、精子を攻撃してしまう抗体ができていないかを調べる。 |
これらの検査によって、不妊の原因が特定されることがあります。原因が分かれば、それに合わせた治療法を選択することができます。
適切な治療法の選択
不妊検査の結果に基づいて、医師からご夫婦の状況に最も適した治療法が提案されます。治療法には様々な段階があり、原因や年齢などによって選択肢が異なります。
- タイミング法: 基礎体温や超音波検査などで正確な排卵日を特定し、そのタイミングで性交を行う方法です。排卵障害がある場合は、排卵誘発剤を用いることもあります。
- 人工授精(AIH): 排卵日に合わせて、良好な状態に処理した精子を子宮内に注入する方法です。タイミング法でうまくいかない場合や、男性側に軽度の精子の問題がある場合などに選択されます。
- 体外受精(IVF): 卵巣から卵子を採取し、体の外で精子と受精させ、できた受精卵を培養して子宮に戻す方法です。卵管性不妊、排卵障害、男性不妊(精子の数が極端に少ない、運動率が低いなど)、原因不明不妊など、幅広い原因に対して行われます。
- 顕微授精(ICSI): 体外受精の一種で、特に精子の数や運動率が極端に少ない場合や、精子の形態に問題がある場合などに選択されます。卵子に1つの精子を直接注入して受精させます。
これらの治療法は、ステップアップ方式で行われることが一般的ですが、ご夫婦の年齢や原因によっては、最初から体外受精などの高度生殖補助医療が推奨される場合もあります。どの治療法を選択するかは、医師とよく話し合い、納得した上で決めることが重要です。
まとめ|まずは専門家へ相談を
「妊娠しにくい人の特徴」について、男女別に様々な可能性を解説しました。年齢、生活習慣、体格、月経や性機能に関する異常、過去の病気や手術歴など、様々な要因が妊娠しにくさに関係していることがお分かりいただけたかと思います。
もし、ご自身やパートナーにこれらの特徴に心当たりがある場合、あるいは特に原因は思い当たらないけれども一定期間妊活しても授からない場合は、一人で悩まずに専門機関に相談することをお勧めします。不妊の原因は一つとは限りませんし、夫婦どちらか、あるいは両方にあることもあります。専門家による正確な診断と適切なアドバイス、そしてご夫婦に合った治療を受けることが、赤ちゃんを授かるための最も確実なステップです。
妊活は時に精神的な負担が大きいものですが、情報を得て、専門家と協力することで、前向きに進むことができます。まずはお近くの婦人科や不妊専門クリニック、あるいは泌尿器科(男性の場合)に相談してみてください。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を推奨するものではありません。個人の健康状態や状況については、必ず医療機関を受診し、専門医の判断を仰いでください。