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疥癬(かいせん)の症状と見分け方|写真で解説!かゆみ・発疹の特徴

疥癬(かいせん)は、ヒゼンダニという非常に小さなダニが皮膚の角質層に寄生して起こる皮膚の病気です。主な症状は強いかゆみと特徴的な皮疹で、特に夜間に症状が悪化しやすい傾向があります。適切な診断と治療を受ければ完治できる病気ですが、診断が遅れたり、治療が不十分だったりすると、本人だけでなく周囲の人にも感染を広げてしまう可能性があります。疥癬が疑われる症状に気づいたら、早めに医療機関を受診することが大切です。

目次

疥癬とは?原因と感染経路

疥癬の原因となるヒゼンダニ

疥癬の原因となるのは、「ヒトヒゼンダニ」(Sarcoptes scabiei var. hominis)と呼ばれる種類のダニです。このダニは非常に小さく、体長はメスで約0.4mm、オスで約0.2mm程度しかなく、肉眼で確認することは困難です。
メスのヒゼンダニは、人間の皮膚の角質層に疥癬トンネルと呼ばれる横穴を掘って寄生し、そこで卵を産み増殖していきます。孵化した幼虫は皮膚表面に出て脱皮を繰り返し、成虫となってさらに寄生を広げます。

疥癬は人からうつるのか(感染経路)

疥癬は、主に人から人への直接的な接触(濃厚な接触)によって感染します。皮膚と皮膚が長時間直接触れ合うことで、ダニが移動してうつります。具体的には、以下のような状況で感染する可能性が高いとされています。

  • 寝具や衣類の共有: 同じベッドで寝る、同じ衣類を共有するなど。
  • 介護や医療: 介護施設や医療機関などで、患者さんの体を介助したり、処置を行ったりする際の接触。
  • 性的接触: 性行為によって感染する可能性もあります。
  • 集団生活: 介護施設、病院、寮、刑務所など、多くの人が集団で生活する場所では感染が広がりやすい傾向があります。

一方で、ヒゼンダニは人間の皮膚から離れると長時間生存できないため、衣類や寝具、家具などからの間接的な接触による感染力は通常弱いとされています。しかし、後述する「角化型疥癬」の場合はダニの数が非常に多いため、衣類や寝具を介した感染リスクも高まります。
空気感染はしません。日常生活における短時間の接触(握手など)で感染するリスクは低いと考えられていますが、感染者との濃厚な接触は避けることが重要です。

疥癬の主な症状と特徴

疥癬の症状は、主に「激しいかゆみ」と「特徴的な皮膚の発疹(皮疹)」です。これらの症状は、ヒゼンダニが皮膚に寄生し、疥癬トンネルを掘る際に生じる刺激や、ダニの糞や死骸などに対するアレルギー反応によって引き起こされます。

激しいかゆみ(特に夜間)

疥癬の最も特徴的な症状は、非常に強いかゆみです。このかゆみは、特に夜間に寝床に入って体が温まったときに強くなる傾向があります。昼間はそれほどでもないのに、夜になるとかゆくて眠れない、といった訴えが多いのが特徴です。
これは、夜間にダニの活動が活発になるため、あるいは日中の活動中は意識が分散されているためなど、いくつかの要因が考えられています。掻きすぎると皮膚が傷つき、湿疹化したり、細菌感染を起こしてとびひになったりすることもあります。

通常疥癬の皮膚の見た目(皮疹、結節)

通常疥癬の場合、皮膚には以下のような様々なタイプの皮疹が現れます。

  • 紅斑(こうはん): 赤い斑点。
  • 丘疹(きゅうしん): 小さく盛り上がった赤いブツブツ。
  • 水疱(すいほう): 小さな水ぶくれ。
  • 結節(けっせつ): 盛り上がったしこりのようなもの。特に陰部、お尻、肘、脇の下などに赤褐色で比較的硬い結節ができることがあります。これはダニに対するアレルギー反応が強く出たもので、「疥癬結節」と呼ばれます。疥癬結節は治療後もしばらく残存することがあります。

これらの皮疹は、後述する好発部位によく見られます。

特徴的な疥癬トンネル

疥癬のもう一つの特徴的な所見は、皮膚に掘られた「疥癬トンネル」です。

疥癬トンネルとは

疥癬トンネルは、メスのヒゼンダニが皮膚の角質層に掘る、長さ数ミリから1センチメートル程度の白い線状、あるいは灰褐色の線状の構造物です。トンネルの先端付近には、ダニの虫体や卵が確認できることがあります。
肉眼で見つけるのが難しい場合もありますが、ルーペやダーモスコピー(皮膚表面を拡大して観察する医療機器)を用いると確認しやすくなります。疥癬トンネルは、特に皮膚の柔らかい部分や角質層が薄い部分にできやすく、指の間、手首の内側、手のひら、足の裏などに好発します。この疥癬トンネルを見つけることが、疥癬の診断において重要な手がかりとなります。

疥癬の種類と症状の違い

疥癬には、病状の重さやダニの数によって主に「通常疥癬」と「角化型疥癬(ノルウェー疥癬)」の2つのタイプがあります。それぞれ症状や感染力が大きく異なります。

通常疥癬

最も一般的な疥癬のタイプです。寄生しているヒゼンダニの数は比較的少なく、通常数十匹程度です。
主な症状は前述の通り、夜間に強くなる激しいかゆみと、体幹や四肢に見られる赤いブツブツ(丘疹)、疥癬トンネル、疥癬結節などです。症状が現れるまでには感染から通常1ヶ月程度の潜伏期間があります。
感染力は、角化型疥癬に比べて弱いですが、皮膚と皮膚の濃厚な接触によって人から人へうつります。

角化型疥癬(ノルウェー疥癬)

角化型疥癬は、通常疥癬よりもはるかに重症で、非常に感染力が強いタイプです。主に免疫力が低下した状態にある人に発症しやすいことが知られています(例:高齢者、寝たきりの方、免疫抑制剤を使用している方、エイズの方など)。
このタイプの疥癬では、寄生しているヒゼンダニの数が異常に多く、数十万匹から数百万匹にも達することがあります。
症状は通常疥癬とは大きく異なり、皮膚が厚くなり、カサカサしたり、魚のうろこや牡蠣殻のように硬く盛り上がったりする「角化」が広範囲に見られます。特に、手足、肘、膝、お尻、頭部などに著明な角化が現れることが多いです。
角化が厚くなるため、かゆみは通常疥癬ほど強くない、あるいはほとんどないこともあります。しかし、厚くなった角質の中には大量のヒゼンダニが含まれており、皮膚から剥がれ落ちる角質片が感染源となるため、非常に感染力が強いです。衣類、寝具、床などに落ちた角質片を介しても感染が広がる可能性があるため、施設などでの集団発生の原因となりやすいタイプです。

疥癬の種類別比較

特徴 通常疥癬 角化型疥癬(ノルウェー疥癬)
ダニの数 比較的少ない(数十匹) 非常に多い(数十万~数百万匹)
主な症状 激しいかゆみ(特に夜間)、丘疹、結節 広範囲の厚い角化、かゆみは軽いかほとんどない
皮疹の特徴 赤いブツブツ、結節、疥癬トンネル 皮膚の肥厚、カサカサ、硬い盛り上がり(角化)
感染力 濃厚な皮膚接触 非常に強い(衣類、寝具などからも)
発症しやすい 誰でも 免疫力が低下した人(高齢者、寝たきり、免疫抑制状態など)
潜伏期間 約1ヶ月 短いこともある

疥癬の初期症状と潜伏期間

初期段階の症状

疥癬に初めて感染した場合、すぐに症状が出るわけではありません。通常、感染してから約1ヶ月程度は無症状の期間(潜伏期間)があります。この潜伏期間中もダニは皮膚の中で増殖を始めています。
初期症状は、軽いかゆみや、虫刺されのような小さな赤いブツブツとして現れることが多いです。これらの症状は非特異的であるため、湿疹や他の虫刺されと間違われやすく、疥癬だと気づかずに過ごしてしまうことがあります。この期間にも、すでに皮膚の下ではダニが疥癬トンネルを掘り始めています。
角化型疥癬の場合、免疫状態によっては潜伏期間が短縮されることもあります。
再感染の場合(一度疥癬にかかった人が再び感染した場合)は、体がダニに対して既にアレルギー反応を起こしやすい状態にあるため、比較的早い時期(数日〜2週間程度)に強いかゆみなどの症状が現れることがあります。

症状が現れるまでの期間

前述の通り、通常疥癬では感染から症状が現れるまでにおよそ1ヶ月かかります。この期間は、メスのヒゼンダニが皮膚に潜り込み、産卵し、卵が孵化して幼虫が成長し、アレルギー反応を引き起こすのに十分な数のダニが増えるために必要な時間と考えられています。
角化型疥癬の場合は、ダニの増殖スピードが速かったり、免疫反応が通常と異なったりするため、この潜伏期間が短くなることもあります。
潜伏期間中は自覚症状がないため、気づかないうちに周囲の人に感染させてしまうリスクがあることに注意が必要です。特に集団生活の場では、感染者が無症状のまま過ごすことで、知らず知らずのうちに感染が広がってしまうことがあります。

症状が出やすい体の部位

疥癬の症状は、体の特定の部位に現れやすい傾向があります。これは、ヒゼンダニが皮膚の構造や温度などを好む場所を選んで寄生するためと考えられています。

通常疥癬で症状が出やすい部位:

  • 指の間: 特に薬指や小指の間。疥癬トンネルが見つけやすい部位の一つです。
  • 手首の内側: 手のひら側。こちらも疥癬トンネルができやすい場所です。
  • 肘の内側、脇の下: 皮膚が柔らかい部分。
  • 下腹部、へその周り:
  • 股間、外陰部: 特に男性では陰嚢(いんのう)に疥癬結節ができやすいことで知られています。
  • 乳首、乳輪部: 女性や若い男性に症状が出やすいことがあります。
  • お尻: 特にお尻の割れ目やその周囲。
  • 足の裏、足の側面: 特に子供や高齢者でよく見られます。

顔や頭部には通常は症状が出にくいとされていますが、乳児や高齢者、免疫力が低下している人の場合は、顔や頭部にも皮疹が現れることがあります。

角化型疥癬で症状が出やすい部位:

角化型疥癬の場合は、体の広範囲に症状が現れることが多いですが、特に角化が著明になりやすい部位があります。

  • 手足: 手のひらや足の裏に厚い角化が起こることが多いです。
  • 肘、膝: 関節の突出部分。
  • お尻:
  • 頭部、顔面: 通常疥癬ではまれですが、角化型疥癬では頭部や顔面にも厚い角化が見られることがあります。
  • 体幹、背中: 広範囲にびまん性の皮疹が広がることがあります。

これらの部位に、前述したような特徴的なかゆみや皮疹が現れていないか、注意深く観察することが重要です。特に、夜間の激しいかゆみが特定の部位から始まった場合は、疥癬を疑うきっかけになります。

疥癬かどうかの判断(自己判断と受診)

夜間の激しいかゆみや体にできた発疹を見て、もしかして疥癬かも?と心配になる方もいるかもしれません。しかし、これらの症状は他の皮膚疾患(湿疹、じんましん、アトピー性皮膚炎、薬疹、他の虫刺されなど)でも起こりうるため、自己判断だけで疥癬であると決めつけるのは危険です。

疥癬が疑われる症状チェックリスト

以下の項目に当てはまる場合は、疥癬の可能性が考えられます。あくまでセルフチェックの目安としてご利用ください。

  • 夜、寝床に入って体が温まるとかゆみが強くなるか?
  • 家族や身近な人(介護を受けている人、同じ施設の人など)に、同じようなかゆみや発疹の症状があるか?
  • 指の間、手首、脇の下、下腹部、股間、お尻、乳首などに、小さな赤いブツブツや線状の跡(疥癬トンネルかもしれない)が見られるか?
  • これらの部位に、硬くて赤っぽいしこり(疥癬結節かもしれない)があるか?
  • 最近、高齢者施設や病院など、集団生活の場所に出入りしたか、あるいはそこで働いているか?
  • 皮膚科で治療を受けているが、なかなかかゆみが改善しないか?(他の皮膚疾患と診断されている場合でも、疥癬が隠れている可能性もゼロではありません)
  • 皮膚全体がカサカサして厚くなり、うろこ状になっている部分があり、身近な人に同じような症状の人がいるか?(角化型疥癬の可能性)

これらのチェック項目に複数当てはまる場合や、症状が改善しない場合は、速やかに医療機関を受診することが強く推奨されます。

診断には医療機関での検査が必要

疥癬の確定診断は、医師による診察と検査によって行われます。自己判断では正確な診断は困難です。

医療機関で行われる診断方法:

  1. 視診: 医師が患者さんの皮膚を詳しく観察し、特徴的な皮疹(丘疹、結節、疥癬トンネルなど)や好発部位を確認します。
  2. ダーモスコピー: 皮膚表面を拡大して観察する機器(ダーモスコープ)を用いて、疥癬トンネルやトンネルの先端にいるヒゼンダニの虫体、卵、糞などを探します。視診だけでは見つけにくい場合でも、ダーモスコピーを使用することで診断精度が高まります。
  3. 皮膚掻爬検査(ひふそうはけんさ): 皮疹のある部分(特に疥癬トンネルが見られそうな場所)の皮膚表面を、メスなどで軽くこすり取って検体を採取します。採取した検体をスライドガラスに乗せ、顕微鏡で観察することで、ヒゼンダニの虫体、卵、糞などを確認します。これが疥癬の確定診断のために最も信頼性の高い方法です。

これらの検査は通常、痛みはほとんどありません。特に皮膚掻爬検査でヒゼンダニが見つかれば、診断は確定となります。
症状や状況によっては、検査を行わずに典型的な症状から臨床的に診断する場合もありますが、正確な診断と適切な治療のためには、これらの検査が重要となります。
受診すべき科は、一般的には皮膚科です。皮膚科専門医であれば、疥癬の診断・治療に習熟しています。

疥癬の治療法と薬

疥癬は、自然に治癒することはほとんどありません。放置すると症状が悪化し、感染も広げてしまうため、必ず医療機関を受診して適切な治療を受ける必要があります。

疥癬は自然に治るか

いいえ、疥癬は自然に治ることは期待できません。ヒゼンダニは人間の皮膚に寄生して栄養を摂り、増殖を続けるため、治療を行わない限り、かゆみや皮疹は悪化し、全身に広がっていく可能性があります。また、ダニが増殖し続ければ、それだけ周囲への感染リスクも高まります。
そのため、疥癬と診断された場合は、必ず医師の指示に従って治療薬を使用し、治療期間をしっかり守ることが重要です。

治療に使われる塗り薬と飲み薬

疥癬の治療には、主にヒゼンダニを駆除するための外用薬(塗り薬)や内服薬(飲み薬)が用いられます。通常疥癬と角化型疥癬では、治療法が異なる場合があります。

通常疥癬の主な治療薬:

  1. イベルメクチン内服薬(商品名:ストロメクトール):
    • 作用:ヒゼンダニの神経系に作用して殺虫効果を発揮します。
    • 使用方法:通常、体重に応じた用量を1回服用します。効果を確実にするため、1週間後に再度服用する場合が多いです。
    • 特徴:飲み薬なので全身に効果が期待でき、塗り薬の塗布が難しい人にも使用できます。ただし、妊婦、授乳婦、5歳未満の小児、体重15kg未満の小児には原則として使用できません。
    • 注意点:空腹時に服用することが推奨されています。副作用として吐き気や腹痛などが起こることがありますが、比較的安全性の高い薬です。
  2. ペルメトリンクリーム(商品名:スミスリンクリーム):
    • 作用:ヒゼンダニの神経系に作用して殺虫効果を発揮します。
    • 使用方法:入浴後、首から下の全身(顔や頭を除く)に塗布し、12時間後に洗い流します。これを週に1回行い、数週間繰り返します。
    • 特徴:外用薬として最も一般的に使用されます。塗り残しがないように、家族などに手伝ってもらって丁寧に塗布することが重要です。
    • 注意点:皮膚への刺激感やかゆみ、発疹などが起こることがあります。顔や頭部への塗布は通常行いません。

角化型疥癬の主な治療薬:

角化型疥癬はダニの数が非常に多いため、通常疥癬よりも強力な治療が必要です。

  • イベルメクチン内服薬とペルメトリンクリームの併用療法が推奨されることが多いです。
  • 内服薬を複数回服用したり、塗り薬をより頻繁に塗布したりすることもあります。
  • 厚くなった角質を取り除くために、サリチル酸ワセリンなどの角質溶解剤が併用されることもあります。

かゆみに対する対症療法:

疥癬の治療を開始しても、かゆみはすぐに消失しないことが多いです。これは、死んだダニやその代謝物に対するアレルギー反応がしばらく続くためです。かゆみが強い場合は、医師の判断で抗ヒスタミン薬などのかゆみ止めが処方されることがあります。ただし、かゆみ止めだけではヒゼンダニは駆除できないため、必ずダニ駆除薬と併用する必要があります。

治療期間と周囲への対応

疥癬の治療期間は、通常疥癬であれば数週間から1ヶ月程度が目安となります。角化型疥癬の場合は、ダニの数が多いため、より長期間の治療が必要となることがあります。
治療薬でヒゼンダニは死滅しますが、皮膚に残った死骸などに対するアレルギー反応として、かゆみや一部の皮疹は治療後も数週間から1ヶ月程度続くことがあります(これを「治療後のかゆみ」または「残存症状」と呼びます)。これは治癒の過程で起こりうる反応であり、必ずしも治療が失敗したわけではありませんが、心配な場合は医師に相談しましょう。

周囲への対応の重要性:

疥癬は感染する病気であるため、患者さん本人の治療だけでなく、周囲への感染拡大を防ぐための対策や、すでに感染している可能性がある家族や施設入所者への対応が非常に重要です。

  • 家族や濃厚接触者の診察: 患者さんと一緒に暮らしている家族や、介護者など、濃厚な接触があった人は、症状が出ていなくても一緒に医療機関を受診し、感染していないか確認することが推奨されます。
  • 同時治療: 複数の感染者が出た場合や、感染リスクの高い接触者がいる場合は、感染拡大を防ぐために、症状の有無にかかわらず、家族全員や施設入所者・職員などを対象に、同時期に一斉に治療を行うことが非常に効果的です。
  • 施設での対応: 介護施設や病院などで疥癬の患者さんが確認された場合、感染対策マニュアルに沿って、患者さんの隔離、使用した寝具・衣類の適切な処理、職員の健康チェック、接触者の特定と検査・治療など、組織的な対応が必要となります。特に角化型疥癬の場合は、非常に強い感染力を持つため、厳重な感染対策が求められます。

治療薬を適切に使用し、同時治療や環境整備などの対策をしっかり行うことで、疥癬は根治が可能です。

疥癬の予防策

疥癬に感染しないためには、ヒゼンダニとの接触を避けることが最も重要です。また、もし感染してしまっても、周囲に広げないための予防策があります。

感染予防の基本:

  • 濃厚接触の回避: 疥癬の患者さんとの皮膚と皮膚の長時間の接触は避けましょう。特に症状のある人との寝具や衣類の共有はしないことが大切です。
  • 身の回りの清潔: 介護施設や病院など、感染リスクのある環境にいる場合は、使用する寝具や衣類、タオルなどが清潔に保たれているか確認しましょう。

感染が確認された場合の感染拡大予防策:

患者さん本人や、患者さんのご家族・施設関係者が行うべき対策です。

  • 寝具・衣類の処理: 患者さんが使用した寝具(シーツ、毛布など)や衣類は、ヒゼンダニが付着している可能性があります。
    • 毎日交換し、洗濯することが推奨されます。
    • 洗濯後、乾燥機にかける(50℃で10分以上の加熱)ことでダニを死滅させることができます。乾燥機がない場合は、アイロンをかけることでも効果があります。
    • すぐに洗濯できないものは、大きなビニール袋などに入れ、数日間密封しておく(ダニの寿命が短いため)ことも補助的な対策となります。
  • 部屋の掃除: 患者さんが過ごした部屋は、丁寧に掃除機をかけましょう。特に、角化型疥癬の場合は、剥がれ落ちた角質片に大量のダニが含まれている可能性があるため、床や家具の表面などを念入りに掃除することが重要です。掃除機のごみパックは、舞い散らないように注意して捨てるようにしましょう。
  • 手洗い: 患者さんのケアを行った後などは、石鹸で丁寧に手洗いを行いましょう。
  • タオルや衣類の個別使用: 患者さんと他の家族や施設利用者との間で、タオルや衣類、寝具を共有しないように徹底しましょう。
  • 入浴: 患者さんは、可能であれば毎日入浴し、体の清潔を保つことが推奨されます。入浴時に皮膚を強くこすりすぎると、かえって皮膚を傷つけてしまうので注意しましょう。
  • 同時治療: 前述の通り、集団感染を防ぐためには、感染リスクのある人が同時期に治療を開始することが非常に重要です。

これらの予防策は、患者さんの治療と並行して行うことで、再感染を防ぎ、周囲への感染拡大を効果的に抑制することができます。

症状があれば皮膚科医に相談を(まとめ・CTA)

疥癬は、ヒゼンダニの寄生によって引き起こされる皮膚の病気です。特に夜間の激しいかゆみや、指の間、手首、股間などにできる赤いブツブツや線状の跡(疥癬トンネル)、硬いしこり(疥癬結節)が特徴的な症状です。
通常疥癬と、免疫力が低下した人に起こりやすい角化型疥癬があり、角化型疥癬はダニの数が非常に多く、感染力も強いのが特徴です。
疥癬は自然治癒せず、放置すると症状が悪化し、周囲の人にも感染を広げてしまいます。しかし、適切な診断と治療を受ければ完治可能な病気です。

もし、ご自身やご家族、あるいは介護を受けている方や施設の入所者などに、上記のような疥癬を疑わせる症状が見られる場合は、自己判断せず、できるだけ早く皮膚科を受診することをお勧めします
皮膚科医による診察や検査によって正確な診断が得られれば、適切な治療薬が処方され、治療を開始することができます。また、周囲への感染拡大を防ぐための具体的な対策についてもアドバイスを受けることができます。
早期発見・早期治療が、ご自身の症状改善だけでなく、大切な人や周囲への感染を防ぐために最も重要です。心配な症状がある場合は、迷わず皮膚科の専門医にご相談ください。

免責事項:
本記事の情報は、一般的な知識の提供を目的としたものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。ご自身の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の判断を仰いでください。本記事の情報に基づいて行われた行為によって生じたいかなる結果に関しても、当方は一切責任を負いません。

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