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【患者さん必見】メトホルミンの副作用|下痢・吐き気・乳酸アシドーシスの注意点

メトホルミンは、2型糖尿病の治療に広く用いられている飲み薬です。
世界中で使われている最も古い糖尿病薬の一つであり、血糖値を下げる効果に加えて、体重増加を抑える傾向や心血管イベントを抑制する可能性も指摘されています。
しかし、どんな薬にも副作用は存在します。
メトホルミンについても、「副作用が気になる」「どんな症状が出るの?」「気をつけることは?」といった不安や疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、メトホルミンを服用している方やこれから服用を検討されている方に向けて、メトホルミンの主な副作用について、その症状、原因、そして対策を詳しく解説します。
副作用が出た場合の対処法や、服用する上での注意点、よくある疑問についても解説していきますので、メトホルミンとの付き合い方を理解するための参考にしてください。

目次

メトホルミンの主な副作用とその症状

メトホルミンは比較的安全性の高い薬とされていますが、いくつかの副作用が知られています。
中でも最も多く見られるのは消化器系の症状です。
また、非常にまれではありますが、重篤な副作用として乳酸アシドーシスがあります。
ここでは、これらの主な副作用について、それぞれの症状と特徴を詳しく見ていきましょう。

消化器症状(下痢・吐き気・腹痛など)

メトホルミンの副作用で最も頻繁に経験されるのが、胃腸に関する不調です。
具体的には、下痢、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲不振などが挙げられます。
また、口の中に金属のような味を感じる方もいらっしゃいます。

これらの消化器症状は、メトホルミンを飲み始めたばかりの頃や、薬の量を増やした時に起こりやすい傾向があります。
薬の作用機序が関わっていると考えられており、腸からの糖の吸収を抑えたり、消化管ホルモンに影響を与えたりすることが原因の一つとされています。

多くの場合、これらの症状は一時的なもので、体が薬に慣れてくると次第に軽減したり、消失したりします。
しかし、症状がひどい場合や長く続く場合は、自己判断せずに必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。
投与量を調整したり、徐放剤(薬の成分がゆっくり溶け出すタイプ)に変更したりすることで、症状が改善することがあります。

重大な副作用:乳酸アシドーシス

メトホルミンの副作用の中で最も注意が必要なのが、乳酸アシドーシスです。
これは非常にまれな副作用ですが、一度発症すると急速に進行し、命に関わる可能性もある重篤な状態です。

乳酸アシドーシスは、体内に乳酸が異常に蓄積することで血液が酸性に傾く病態です。
メトホルミンは肝臓での乳酸代謝を抑制する作用があるため、特定の条件下で乳酸が体内に溜まりやすくなり、乳酸アシドーシスを引き起こすリスクが高まります。

乳酸アシドーシスの初期症状は、風邪のひき始めや二日酔いと似ていて、気づきにくいことがあります。
以下のような症状が見られた場合は、乳酸アシドーシスを強く疑い、直ちに医療機関を受診する必要があります。

  • 吐き気、嘔吐
  • ひどい腹痛
  • 筋肉痛
  • だるさ(倦怠感)
  • 呼吸が速くなる、息苦しさ(過呼吸)
  • 意識がぼんやりする、意識がなくなる

特に、次に挙げるような乳酸アシドーシスのリスクが高い状況にある場合は、これらの症状に十分注意が必要です。

  • 腎臓や肝臓の機能が著しく低下している方
  • 脱水症状がある場合(下痢、嘔吐、発熱などがある時や、水分摂取が不十分な時)
  • 大量のアルコールを摂取している方、または慢性的にアルコール依存がある方
  • 心臓や肺に重い病気がある方
  • 高齢者の方(特に腎機能が低下している場合が多い)
  • 手術や検査(特に造影剤を使用する検査)の前後の期間
  • 食事を全く摂れない、または極端に少ない「シックデイ」の状態

これらのリスク因子を持つ方は、メトホルミンの服用が禁忌となる場合や、厳重な管理が必要となる場合があります。
乳酸アシドーシスを予防するためにも、メトホルミンを服用する際は、医師や薬剤師から十分に説明を受け、注意点を守ることが極めて重要です。

その他の注意すべき副作用

メトホルミンの副作用は消化器症状や乳酸アシドーシスだけではありません。
発生頻度は低いものの、知っておくべき副作用や注意点があります。

低血糖

メトホルミンは、血糖値を直接的に急激に下げる作用は弱いため、メトホルミン単独で重度の低血糖を起こすことは非常にまれです。
しかし、他の糖尿病治療薬(SU薬、インスリン製剤など)と併用している場合には、低血糖のリスクが高まることがあります。

低血糖の症状には、冷や汗、手足の震え、動悸、強い空腹感、めまい、脱力感、集中力の低下などがあります。
症状が進行すると、意識がもうろうとしたり、けいれんを起こしたり、昏睡に至ることもあります。

低血糖が疑われる場合は、すぐにブドウ糖10g(ブドウ糖を含む清涼飲料水、角砂糖など)を摂取して対処することが重要です。
万が一に備えて、常にブドウ糖や甘い飲み物を携帯しておくと安心です。
他の糖尿病薬と併用している場合は、低血糖のリスクについて医師や薬剤師とよく相談し、適切な対処法を確認しておきましょう。

ビタミンB12欠乏症

メトホルミンを長期間(通常数年以上)服用している方の一部で、ビタミンB12の吸収が妨げられ、ビタミンB12欠乏症を引き起こす可能性があることが知られています。
これは、メトホルミンが腸でのビタミンB12と内因子複合体の吸収を阻害することによると考えられています。

ビタミンB12は、赤血球の生成や神経系の機能維持に不可欠な栄養素です。
欠乏すると、貧血(巨赤芽球性貧血)や、手足のしびれ、神経痛、認知機能の低下といった神経系の症状が現れることがあります。

特に高齢者や、長期にわたって高用量のメトホルミンを服用している方は注意が必要です。
定期的な血液検査でビタミンB12の値を確認することが推奨されています。
もし欠乏が見られた場合は、ビタミンB12製剤を服用または注射で補充することで改善します。

肝機能・腎機能障害

メトホルミンは主に腎臓から排泄される薬です。
そのため、腎機能が低下している場合は薬が体内に蓄積しやすく、副作用、特に乳酸アシドーシスのリスクが著しく高まります。
このため、腎機能の程度によってはメトホルミンの用量を減らすか、服用が禁忌となります。
定期的な腎機能の検査(クレアチニンクリアランスやeGFRなど)は、メトホルミンを安全に服用するために非常に重要です。

肝機能障害がある場合も、乳酸の代謝がうまくいかなくなり、乳酸アシドーシスのリスクが高まるため、メトホルミンの服用には注意が必要です。
重度の肝機能障害がある場合は、メトホルミンは禁忌となります。
肝機能についても、定期的な検査が重要です。

横紋筋融解症・間質性肺炎

これらの副作用はメトホルミンでは非常にまれですが、他の薬剤と同様に注意が必要です。

  • 横紋筋融解症: 筋肉の細胞が壊れて、筋肉の成分(ミオグロビンなど)が血液中に流れ出す病態です。
    症状としては、筋肉痛、脱力感、手足のしびれなどが現れ、重症化すると尿が褐色になることがあります。
    腎臓に負担をかけるため、速やかな治療が必要です。
  • 間質性肺炎: 肺の間質(肺胞の壁とその周囲)に炎症が起こる病態です。
    症状としては、咳、息切れ、発熱などが現れます。

これらのまれな副作用の症状が現れた場合は、速やかに医師に連絡し、指示を仰ぐことが重要です。

副作用が起こりやすいケース・注意点

メトホルミンの副作用、特に重篤な乳酸アシドーシスは、特定の条件下でリスクが高まります。
安全にメトホルミンを服用するためには、どのような場合に注意が必要かを知っておくことが大切です。

服用開始時や増量時

先に述べたように、メトホルミンの消化器症状(下痢、吐き気、腹痛など)は、服用を開始したばかりの頃や、薬の量を増やした時に最も起こりやすい傾向があります。
これは、体が薬の作用に慣れていないためです。

このリスクを軽減するために、多くの場合は少量からメトホルミンの服用を開始し、体の様子を見ながら段階的に量を増やしていくという方法が取られます。
医師は患者さんの状態や血糖値を見ながら、最適な量を慎重に調整します。
もし、服用開始時や増量後に消化器症状が強く出た場合は、我慢せずに医師や薬剤師に相談しましょう。
用量の再調整や、薬の種類(徐放剤など)の変更で改善することがあります。

飲酒との関連

メトホルミンを服用中に過度の飲酒をすることは、乳酸アシドーシスのリスクを著しく高めるため、避けるべきです。
アルコールは肝臓での乳酸代謝を妨げる作用があり、メトホルミンと組み合わせることで、体内の乳酸が危険なレベルまで蓄積しやすくなります。

特に、空腹時や体調不良時、大量のアルコールを短時間で摂取する「一気飲み」は非常に危険です。
また、日常的に大量のアルコールを飲み続けることもリスクを高めます。

どの程度の飲酒なら安全かについては個人差があり、患者さんの全身状態やメトホルミンの服用量によっても異なります。
メトホルミンを服用している方がお酒を飲む場合は、必ず事前に医師に相談し、適切な量や頻度について指導を受けてください。
基本的に、メトホルミン服用中の飲酒は控えるか、少量に留めるのが安全です。

腎機能・肝機能が低下している場合

メトホルミンのほとんどは、体内で代謝されずにそのままの形で腎臓から尿として排泄されます。
したがって、腎機能が低下している場合は、メトホルミンの排泄が遅れて体内に蓄積しやすくなります。
薬の濃度が高くなると、副作用、特に乳酸アシドーシスの発症リスクが非常に高まります。

このため、腎機能の指標であるeGFR(推算糸球体濾過量)の値が一定以下の場合、メトホルミンの用量を減らしたり、全く服用できなくなったりします。
メトホルミンの服用中は、定期的に腎機能の検査を受け、医師が適切に用量を調整することが不可欠です。

肝機能が低下している場合も、乳酸の代謝機能が障害されるため、乳酸アシドーシスのリスクが高まります。
重度の肝機能障害がある方はメトホルミンを服用できません。
肝機能についても、定期的な検査が重要です。

高齢者や脱水状態

高齢者は、一般的に腎機能が低下していることが多い上、脱水になりやすい傾向があります。
これらの要因はどちらも乳酸アシドーシスのリスクを高めます。
特に夏場の暑い時期や、体調を崩して食欲がなく水分摂取が不十分な時などは注意が必要です。

脱水状態は、体内の水分量が減ることで血液が濃縮され、腎臓への血流量も減るため、メトホルミンの排泄が滞りやすくなります。
また、脱水自体も乳酸の産生を増やす可能性があります。
下痢や嘔吐、発熱などの体調不良時(シックデイ)は脱水になりやすいため、特に注意が必要です。

高齢者や脱水になりやすい状況にある場合は、こまめな水分補給を心がけることが大切です。
体調が悪い時は、メトホルミンの服用を一時的に中止する必要があるかどうか、必ず医師や薬剤師に相談してください。

食事との関係(食前・食後・食事を抜いた場合)

メトホルミンは、食後または食事と一緒に服用することが推奨されています。
これは、食後に服用することで、胃腸への負担が軽減され、吐き気や下痢といった消化器症状が出にくくなるためです。
薬の吸収速度が緩やかになり、副作用の発現を抑える効果が期待できます。

もし食事を抜いてしまった場合は、メトホルミンの服用もスキップすることが望ましいです。
特に、メトホルミンは他の血糖降下薬と異なり、単独で重度の低血糖を起こすリスクは低いですが、食事を抜いた状態で服用すると、多少なりとも血糖値が下がりすぎる可能性があります。
また、空腹時に服用すると、消化器症状が出やすくなることもあります。

ただし、服用方法については医師や薬剤師から個別の指示がある場合がありますので、必ずその指示に従ってください。
徐放剤の場合は、服用方法が異なることもあります。

服用パターン 推奨されるタイミング 副作用リスク(主に消化器症状) 注意点
通常錠 食後または食事と一緒 軽減される 飲み忘れに注意
徐放錠 医師の指示による 通常錠より低い傾向 服用方法を医師に確認
食事を抜いた場合 服用しない方が良い場合が多い 高まる可能性がある 低血糖リスクもわずかに上昇
空腹時(推奨されない) 高まる 消化器症状や不快感が増す可能性

副作用を疑った時の対応と予防

メトホルミンを服用中に「いつもと違うな」と感じる症状が現れた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
また、副作用をできるだけ起こさないためには、日頃からどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。

症状が出たらまずどうする?

メトホルミン服用中に何らかの症状が現れた場合、その症状が副作用なのか、他の原因によるものなのかを自己判断することは難しいです。
大切なのは、不安に思ったらすぐに医療従事者に相談することです。

  • 軽度の消化器症状(軽い下痢、吐き気、腹痛など): 服用開始時や増量時に見られる軽い症状であれば、体が慣れるのを待つか、次回の受診時に医師に相談するという対応で良い場合が多いです。
    ただし、症状が強く日常生活に支障が出る場合や、数日経っても改善しない場合は、早めに医師や薬剤師に連絡しましょう。
    自己判断で薬の量を減らしたり、服用を中止したりしないでください。
  • 乳酸アシドーシスが疑われる重篤な症状(ひどい吐き気・腹痛、過呼吸、意識障害など): これらの症状が突然現れた場合は、直ちにメトホルミンの服用を中止し、救急医療機関を受診するか、かかりつけの医師に緊急連絡してください。
    一刻を争う状況である可能性があります。
    家族にもメトホルミンを服用していること、乳酸アシドーシスの症状を知っておいてもらうと安心です。

医師・薬剤師への連絡タイミング

どのような症状で、いつ医師や薬剤師に連絡すべきかの目安は以下の通りです。

症状 連絡タイミング 伝えるべき情報
軽い下痢、吐き気、腹痛(服用開始/増量時) 次回受診時 または 数日様子見 いつから症状が出ているか、症状の程度、日常生活への影響
強い下痢、吐き気、腹痛、数日続く消化器症状 早めに医師/薬剤師へ連絡 症状の詳細、始まった時期、服用量、食事との関係、水分摂取量
ひどい吐き気、腹痛、筋肉痛、過呼吸、だるさ 直ちに医療機関へ連絡 メトホルミンを服用していること、症状の詳細、体調の変化、飲酒や食事の状況
手足のしびれ、貧血症状 次回受診時 または 早めに相談 症状が始まった時期、程度、他に気になる症状があるか
咳、息切れ、発熱(風邪症状と異なる場合) 早めに医師へ連絡 症状の詳細、始まった時期、服用薬、アレルギー歴
褐色尿、強い筋肉痛 早めに医師へ連絡 症状の詳細、始まった時期、体のどこに痛みがあるか、他に気になる症状があるか
低血糖が疑われる症状(冷や汗、震えなど) その場で対処し、次回受診時相談 症状が出た時の状況(食事、運動、他の薬)、ブドウ糖摂取で回復したか

体調に少しでも不安を感じたら、遠慮なく医療従事者に相談しましょう。
些細なことでも、重大な副作用のサインである可能性もゼロではありません。

副作用を軽減するための対策

メトホルミンの副作用を予防したり、症状を和らげたりするために、日常生活でできるいくつかの対策があります。

  • 少量から開始し、段階的に増量する: 医師の指示に従い、少量からメトホルミンの服用を開始し、体が慣れるのを待ちながらゆっくりと量を増やしていくことが、消化器症状を軽減する上で非常に有効です。
    徐放剤は通常錠よりも副作用が出にくい傾向があります。
  • 食後に服用する: 食事と一緒に、または食後すぐにメトホルミンを服用することで、胃腸への刺激を和らげ、消化器症状が出にくくなります。
  • 十分な水分補給: 特に夏場や運動時、体調不良時などは脱水になりやすいため、意識的に水分を摂取することが重要です。
    脱水予防は乳酸アシドーシスのリスク低減にも繋がります。
  • 過度な飲酒を避ける: 乳酸アシドーシスの最大のリスク因子の一つです。
    飲酒量や頻度については、必ず医師に相談し、指導を守りましょう。
  • シックデイへの対応: 発熱、下痢、嘔吐、食事が摂れないなど、体調が悪い時は、メトホルミンの服用を一時的に中止する必要がある場合があります。
    体調不良時は自己判断せず、かかりつけ医に連絡して指示を仰ぎましょう。
  • 定期的な検査を受ける: 医師から指示された血液検査(血糖値、HbA1c、腎機能、肝機能、ビタミンB12など)は必ず受けましょう。
    これらの検査で、副作用の兆候やリスクの程度を確認し、必要に応じて治療方針を調整することができます。
  • 服用中の薬をすべて伝える: 他の医療機関で処方されている薬や、市販薬、サプリメントなども含め、現在服用しているすべての薬を医師や薬剤師に正確に伝えてください。
    飲み合わせによって副作用のリスクが高まる薬があります。

これらの対策を実践することで、メトホルミンをより安全に、快適に服用することにつながります。

メトホルミンの服用に関するその他の疑問

メトホルミンの服用に関して、副作用以外にも様々な疑問をお持ちの方もいるでしょう。
「痩せるって本当?」「体に悪い薬なの?」「昔ニュースで見た回収騒動は?」など、よく聞かれる疑問について解説します。

体重減少(痩せる効果)について

メトホルミンを服用すると、体重が減少したり、増えにくくなったりする傾向があることが知られています。
これは、メトホルミンが以下のような作用を持つためと考えられています。

  • 食欲を抑制する作用: GLP-1という消化管ホルモンの分泌を促すことで、満腹感が増し、食欲が抑えられると考えられています。
  • 糖の吸収を抑制する作用: 腸からのブドウ糖の吸収をわずかに抑制します。
  • エネルギー消費への影響: エネルギー代謝に影響を与え、体重管理に有利に働く可能性があります。

ただし、メトホルミンは直接的な「痩せ薬」ではありません。
減量効果には個人差があり、大幅な体重減少が期待できるわけではありません。
しかし、肥満や過体重のある2型糖尿病患者さんにとっては、体重コントロールに役立つ可能性があり、心血管イベントのリスク低減にも寄与すると考えられています。

メトホルミンは血糖値を下げる目的で処方される薬であり、体重減少のみを目的として処方されることはありません。
あくまで糖尿病治療の一環として、体重管理にも良い影響を与える可能性がある、と理解しておきましょう。

併用禁忌薬はある?

メトホルミンには、併用が禁じられている「併用禁忌薬」や、併用に注意が必要な薬があります。
他の薬との飲み合わせによっては、メトホルミンの効果が強まりすぎたり、副作用のリスクが高まったりすることがあります。

特に重要な併用禁忌や注意が必要なケースをいくつか挙げます。

  • 造影剤を使用する検査: ヨード造影剤を用いたCT検査や血管造影検査などの前後一定期間は、メトホルミンの服用を中止する必要があります。
    造影剤は一時的に腎機能を低下させる可能性があり、メトホルミンとの併用で乳酸アシドーシスのリスクが著しく高まるためです。
    検査の種類や患者さんの腎機能によって中止期間は異なりますので、検査を受ける際は必ず担当の医師にメトホルミンを服用していることを伝えてください。
  • 特定の心血管系薬剤: 一部の心不全治療薬や、腎機能に影響を与える可能性のある薬との併用には注意が必要です。
  • アルコール: 前述の通り、過度の飲酒は乳酸アシドーシスのリスクを高めるため禁忌です。
  • 腎機能や肝機能に影響を与える他の薬剤: これらの臓器の機能が低下するとメトホルミンの排泄・代謝に影響するため、併用には注意が必要です。

また、メトホルミンは他の糖尿病治療薬(SU薬、インスリン、DPP-4阻害薬など)と併用されることが多いですが、これらの併用では低血糖のリスク管理が重要になります。

市販薬やサプリメントの中にも、メトホルミンの効果に影響を与えたり、副作用を強めたりする可能性があるものがあります。
例えば、一部の漢方薬や栄養ドリンクなどがこれにあたる場合があります。

現在服用しているすべての薬(処方薬、市販薬、サプリメント、健康食品など)を、医師や薬剤師に正確に伝えることは、薬の安全な使用のために極めて重要です。
お薬手帳などを活用して、管理しましょう。

メトホルミンは体に悪い?(安全性とリスク)

「メトホルミンは体に悪い薬なの?」と不安に思う方もいるかもしれません。
しかし、メトホルミンは世界中で最も広く、長い間使われている糖尿病治療薬の一つであり、その安全性は確立されています。
適切に使用されれば、血糖値を効果的にコントロールし、糖尿病による合併症(特に心血管疾患)のリスクを低減する可能性も示唆されています。

メトホルミンには確かに副作用のリスクがあります。
特に重篤な乳酸アシドーシスについては十分な注意が必要であり、禁忌や注意が必要な条件があることを理解しておくことが重要です。
しかし、このリスクは特定の状況下で高まるものであり、多くの患者さんにとっては適切に管理できる範囲のリスクです。

メトホルミンが「体に悪い」のではなく、「適切に使用しないとリスクが高まる可能性がある」と理解するのが正しいでしょう。
医師の指示通りに服用し、定期的な検査を受け、体調の変化に注意していれば、メトホルミンは糖尿病治療において非常に有用で安全性の高い薬剤と言えます。
メリットとリスクを正しく理解し、医師とよく相談しながら治療を進めることが大切です。

過去の一部製剤回収(NDMA問題)について

2020年頃に、一部のメトホルミン製剤から発がん性物質とされるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が国の定める基準値を超えて検出され、自主回収が行われたというニュースがありました。
これにより、メトホルミンを服用している多くの患者さんが不安を感じられたかと思います。

NDMAは、食品(加工肉、魚など)や飲料、大気など、様々なものにごく微量含まれている物質です。
今回の問題は、医薬品の製造過程や保管状況によって、意図せず不純物としてNDマが生成・混入したことが原因とされています。

日本の厚生労働省や製薬会社は迅速に対応し、基準値を超えるNDMAが検出された製剤は回収されました。
現在日本国内で流通しているメトホルミン製剤は、国の基準値を満たしており、現時点では問題なく使用できると考えられています。

この問題は、メトホルミンという薬自体の有効性や安全性(乳酸アシドーシスなどのリスク)とは別の問題です。
ただし、医薬品の品質管理の重要性を改めて認識させられる出来事でした。
服用しているメトホルミンの製薬会社について気になる場合は、医師や薬剤師に確認することも可能です。

メトホルミンは市販されている?

メトホルミンは、医師の処方が必要な「医療用医薬品」です。
薬局やドラッグストアで、処方箋なしに購入することはできません。

メトホルミンは、患者さんの病状、他の合併症、腎機能・肝機能、併用薬などを総合的に判断して、医師が適切と判断した場合に処方される薬です。
用量設定も慎重に行う必要があり、定期的な検査によるフォローアップも不可欠です。

インターネットなどで「メトホルミン 個人輸入」といった情報を見かけることがあるかもしれませんが、これは非常に危険です。
個人輸入で入手した医薬品は、品質が保証されておらず、偽造品である可能性が高いです。
有効成分が全く含まれていなかったり、不純物が混入していたりするリスクがあり、健康被害につながる恐れがあります。
また、個人輸入した医薬品による健康被害は、「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となります。

メトホルミンを服用したい場合、またはメトホルミンについて相談したい場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けてください。

まとめ:メトホルミン服用は医師の指示に従いましょう

メトホルミンは、2型糖尿病治療の第一選択薬として世界中で広く使われている、効果的で安全性の高い薬です。
血糖コントロールに優れ、心血管イベント抑制の可能性も期待できるなど、多くのメリットがあります。

しかし、全ての薬と同様に、メトホルミンにも副作用は存在します。
最も一般的な消化器症状から、まれではあるものの重篤な乳酸アシドーシスまで、様々な副作用のリスクを知っておくことは、安全に治療を続ける上で非常に重要です。

この記事で解説したように、メトforminの副作用は、服用方法の工夫や、起こりやすい状況(腎機能低下、飲酒、脱水など)に注意することで、リスクを軽減することが可能です。

メトホルミンを服用する上で最も大切なことは、自己判断せず、必ず医師や薬剤師の指示に従うことです。

  • 指示された用量・用法を守って服用する。
  • 定期的な診察や検査をきちんと受ける。
  • 服用中の他の薬やサプリメントを全て医師に伝える。
  • 体調の変化や気になる症状があれば、すぐに医師や薬剤師に相談する。

これらの点を守り、医療従事者と密に連携することで、メトホルミンを安全かつ効果的に使用し、糖尿病治療を成功に導くことができます。
メトホルミンに関する不安や疑問があれば、遠慮なくかかりつけの医師や薬剤師に相談してください。

免責事項: 本記事は、メトホルミンの副作用に関する一般的な情報提供を目的としています。
個々の患者さんの病状、体質、併用薬等によって、発生する可能性のある副作用やその程度は異なります。
記事中の情報は、個人の病状や治療に関する医学的なアドバイスの代わりになるものではありません。
メトホルミンの服用に関しては、必ず医師または薬剤師にご相談ください。

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