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【厳選】トリプトファンが多い身近な食べ物|セロトニン・睡眠への効果も

トリプトファンは、私たちが健康を維持するために不可欠な栄養素の一つです。しかし、体内で自然に生成されないため、日々の食事から意識的に摂取する必要があります。特に、心の健康や睡眠の質に関わる重要な物質の材料となるため、その重要性は近年ますます注目されています。

この記事では、トリプトファンとは何か、なぜ食事からの摂取が大切なのかを詳しく解説します。さらに、トリプトファンを豊富に含む食品をランキング形式でご紹介し、それぞれの含有量や食品グループごとの一覧もお伝えします。また、体内でトリプトファンがどのように働き、メンタルや睡眠にどのように影響するのか、そして効果的に摂取するための具体的な方法まで掘り下げていきます。日々の食事にトリプトファンを上手に取り入れて、心身の健康を目指しましょう。

トリプトファンは、20種類あるアミノ酸のうちの一つで、人間が生きていく上で欠かせない「必須アミノ酸」に分類されます。必須アミノ酸とは、体内で十分に合成することができないか、あるいは全く合成できないアミノ酸のことで、食事を通じて外部から摂取する以外に補給する手段がありません。タンパク質を構成する要素であるアミノ酸の中でも、特にトリプトファンは私たちの心身の機能にとって重要な役割を担っています。

トリプトファンは、単にタンパク質の材料となるだけでなく、体内で様々な物質に変換されます。最もよく知られている役割の一つが、脳内で働く神経伝達物質であるセロトニンの前駆体となることです。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分や感情の安定、精神的な落ち着きに関与しています。また、食欲や睡眠、体温調節など、多くの生理機能にも影響を与えています。

さらに、セロトニンは睡眠を調節するホルモンであるメラトニンに変換されます。メラトニンは私たちの体内時計に作用し、自然な眠りを誘う働きがあります。このように、トリプトファンはセロトニンやメラトニンといった重要な生体物質の合成に関わることで、私たちのメンタルヘルスや睡眠の質に深く関わっているのです。

食事からトリプトファンを適切に摂取することは、これらの重要な機能を円滑に進めるために非常に大切です。不足すると、セロトニンやメラトニンの合成が滞り、気分の落ち込み、不安感の増加、睡眠障害などが引き起こされる可能性も考えられます。日々の食生活の中で、トリプトファンを意識的に取り入れることの重要性がお分かりいただけるでしょう。

目次

トリプトファンを多く含む食べ物ランキング

トリプトファンは、タンパク質を豊富に含む様々な食品に含まれています。ここでは、特にトリプトファンの含有量が多い代表的な食品をランキング形式でご紹介します。これらの食品を日々の食事に取り入れることで、効率的にトリプトファンを摂取することができます。ランキングは、一般的に食品100gあたりの含有量に基づいています。

食品100gあたりのトリプトファン含有量ランキング

食品のトリプトファン含有量は、種類や調理法によって異なりますが、ここでは代表的な生の状態や一般的な加工状態での含有量を参考にランキングを作成しました。

  • 大豆、大豆たんぱく(乾燥、粉末など加工品): 非常に高い含有量を示します。乾燥大豆や、大豆を加工して高濃度にした大豆たんぱく製品は特に豊富です。
  • 魚介類(特に乾燥品や加工品、一部の青魚): にしん、かつお節、まぐろなどに多く含まれます。乾燥させることで成分が凝縮されるため、含有量が高くなる傾向があります。
  • 乳製品(チーズなど加工品): 特にパルメザンチーズなどの硬質チーズは、水分が少なくタンパク質が凝縮されているため、トリプトファンも多く含まれます。
  • : 鶏卵は、手軽に入手でき、栄養バランスも優れています。卵黄、卵白ともにトリプトファンを含んでいます。
  • 肉類: 牛肉、豚肉、鶏肉など、一般的な肉類にも比較的多く含まれます。

以下で、ランキング上位の食品や、日々の食事で取り入れやすい食品について詳しく見ていきましょう。

卵(鶏卵、卵白含む)

鶏卵は、良質なタンパク質の供給源であり、トリプトファンもバランス良く含まれています。全卵1個(約60g)あたり約80~90mg程度のトリプトファンが含まれていると言われています。卵白にも卵黄にも含まれており、ゆで卵、目玉焼き、オムレツなど、様々な料理に使えるため、朝食に取り入れることで、セロトニンの合成に必要なトリプトファンを朝から補給しやすい食品です。

にしん、かずのこ

魚介類の中では、にしんやその卵であるかずのこに比較的多くのトリプトファンが含まれています。特に乾燥させたり加工したりしたにしん(例えば身欠きにしんなど)は、水分が抜けて成分が濃縮されるため、含有量が高くなります。普段の食卓に頻繁に上る食品ではないかもしれませんが、加工品などを利用する機会があれば意識してみると良いでしょう。かつお節や煮干しなども乾燥魚介類であり、トリプトファンが豊富です。

大豆、大豆たんぱく

植物性食品の中でトリプトファンが非常に豊富なのが大豆です。乾燥大豆では、100gあたり500~600mg以上のトリプトファンが含まれているとされます。豆腐、納豆、豆乳、きな粉といった大豆製品も、加工の過程で含有量は変化しますが、依然として良い供給源です。特に、大豆をさらに加工してタンパク質を濃縮した「大豆たんぱく」の粉末などは、非常に高い含有量を示します。ヴィーガンやベジタリアンの方にとっては特に重要なトリプトファン源となります。

牛乳および乳製品

牛乳やヨーグルト、チーズといった乳製品もトリプトファンの供給源です。特にチーズは種類によって含有量が大きく異なり、パルメザンチーズのような硬質チーズは水分が少なくタンパク質が凝縮されているため、100gあたり1000mgを超えるトリプトファンを含むものもあります。牛乳やヨーグルトは水分が多いですが、手軽に摂取できるため、毎日続けることでトリプトファン補給に役立ちます。

その他のトリプトファンを含む食品

上記の食品以外にも、多くの食品にトリプトファンは含まれています。

  • 肉類: 牛、豚、鶏などの赤身肉や鶏むね肉。
  • 魚介類: まぐろ(特に赤身)、かつお、鮭、あじなど。乾燥させたかつお節や煮干しは含有量が凝縮されています。
  • 穀類: 米、パン、パスタなど。特に全粒穀物。
  • 種実類: アーモンド、くるみ、カシューナッツ、ごまなど。
  • 野菜・果物: バナナ、アボカド、ほうれん草など。ただし、他の食品群に比べると含有量は控えめです。

このように、様々な食品に含まれているため、バランスの取れた食事を心がけることで、自然とトリプトファンを摂取することができます。

食べ物別トリプトファン含有量一覧

より具体的に、様々な食品に含まれるトリプトファンの含有量を見ていきましょう。以下の表は、一般的な食品の100gあたりのトリプトファン含有量(目安)を食品グループ別にまとめたものです。これはあくまで目安であり、製品や調理法によって変動することをご了承ください。

食品グループ 食品名 トリプトファン含有量(mg/100g)目安 備考
肉類 鶏むね肉(生) 270 脂肪が少なく高タンパク
豚ロース(生) 250
牛もも肉(生) 240
魚介類 かつお節 800-1000 乾燥品で凝縮されている
まぐろ(赤身) 280
鮭(生) 250
あじ(生) 200
乳製品・卵 パルメザンチーズ 1000-1200 硬質チーズで高含有
カマンベールチーズ 350-400
牛乳(普通牛乳) 40-50 手軽な摂取源
ヨーグルト(無糖) 40-50
鶏卵(全卵) 130-150 1個あたり約80-90mg
大豆製品 大豆(乾燥) 500-600
豆腐(木綿) 100-120
納豆 150-180 発酵食品
豆乳(無調整) 40-50
きな粉 250-300 大豆を焙煎・粉砕
穀類・種実類 玄米 80-90 全粒穀物
ごま 200-250
アーモンド 200-250
くるみ 150-200
果物・野菜 バナナ 10-15 他の栄養素との相乗効果あり
アボカド 20-30
ほうれん草 10-15

肉類に含まれるトリプトファン

鶏むね肉、豚ロース、牛もも肉など、普段よく食べる肉類には、比較的安定してトリプトファンが含まれています。これらはタンパク質全体の量が多いので、自然とトリプトファンの摂取にも繋がります。例えば、鶏むね肉100gあたり約270mgのトリプトファンが含まれており、これは厚生労働省が推奨する1日の目安量(成人で約400mg)の一部を十分に補う量となります。様々な調理法で楽しめるため、飽きずに摂取しやすい食品群です。

魚介類に含まれるトリプトファン

魚介類もトリプトファンの良い供給源です。特に、かつお節や煮干しのような乾燥させた魚製品は、水分が抜けて栄養が凝縮されるため、非常に高い含有量を示します。かつお節は100gあたり800mg以上、ものによっては1000mg近くのトリプトファンを含むこともあります。だしとして使うだけでなく、おひたしやご飯にかけたりと、少量でもトリプトファンを補給できる便利な食品です。生魚では、まぐろの赤身やかつお、鮭などもトリプトファンを比較的多く含んでいます。

乳製品・卵に含まれるトリプトファン

前述の通り、乳製品や卵はトリプトファンの代表的な供給源です。特にチーズは種類によって含有量の幅が大きく、パルメザンチーズのような硬質チーズは少量でも多くのトリプトファンを摂取できます。牛乳やヨーグルトは、含まれる量はそれほど多くありませんが、毎日の習慣として摂取しやすいため、継続的なトリプトファン補給に適しています。卵は、栄養バランスの良さから「完全栄養食品」とも呼ばれ、トリプトファンも含めて様々な栄養素を同時に摂取できる優れた食品です。

大豆製品に含まれるトリプトファン

植物性食品の中では、大豆とその加工品がトリプトファンを非常に豊富に含んでいます。乾燥大豆はもちろんのこと、豆腐、納豆、豆乳、きな粉といった加工品も良い供給源です。特に納豆は、トリプトファンに加えてビタミンB6(トリプトファンからセロトニンを合成するのに必要)や食物繊維なども含むため、トリプトファン摂取の観点からも優れた食品と言えます。ヴィーガンやベジタリアンの方だけでなく、健康志向の方にも積極的に取り入れていただきたい食品群です。

穀類・種実類に含まれるトリプトファン

米やパンといった主食となる穀類にもトリプトファンは含まれていますが、他の食品群に比べると含有量は控えめです。しかし、摂取量が多い食品であるため、日々の総摂取量に貢献しています。特に玄米や全粒粉パンのような全粒穀物は、白米や精製されたパンに比べて栄養価が高く、トリプトファンも含め様々な栄養素をバランス良く摂取できます。ごまやアーモンド、くるみなどの種実類にもトリプトファンは含まれており、おやつや料理のアクセントとして少量加えるだけでも補給できます。

果物・野菜に含まれるトリプトファン

果物や野菜には、他の食品群ほど多くのトリプトファンは含まれていません。しかし、全く含まれていないわけではなく、例えばバナナやアボカド、ほうれん草などにも微量ながら含まれています。果物や野菜はビタミンやミネラル、食物繊維といった、トリプトファンの代謝を助けたり、全体的な健康をサポートしたりする栄養素が豊富です。特にバナナは、トリプトファン自体は少量ですが、セロトニン合成に必要なビタミンB6や、脳へのトリプトファン移行を助ける糖質を含むため、トリプトファン摂取の効率を高める食品としてよく挙げられます。

バランスの取れた食事を心がけ、様々な食品群からトリプトファンを摂取することが重要です。特定の食品に偏るのではなく、多様な食材を組み合わせることで、他の必要な栄養素も同時に摂取でき、トリプトファンの効果を最大限に引き出すことにも繋がります。

トリプトファンが体内で果たす役割

トリプトファンがなぜそれほど重要視されるのか、その体内で果たす具体的な役割についてさらに詳しく見ていきましょう。トリプトファンの主な役割は、セロトニンやメラトニンといった神経伝達物質やホルモンの合成に関わることです。これらの物質は、私たちの心身の機能に広範な影響を与えています。

セロトニン生成との関係

トリプトファンは、脳内で神経伝達物質であるセロトニンに変換されるための出発点(前駆体)です。セロトニンは、脳内で精神安定作用や幸福感、リラックス効果をもたらす重要な役割を果たしています。また、セロトニンは感情や気分の調整、衝動の抑制、社会的な行動などにも関わることが知られています。

セロトニンの生成には、トリプトファンだけでなく、ビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムといった他の栄養素も必要です。これらの栄養素が不足していると、トリプトファンを十分に摂取してもセロトニンが効率的に生成されない可能性があります。

セロトニンレベルが低下すると、気分の落ち込み、不安感、イライラ感が増したり、衝動的な行動につながったりすることが示唆されています。そのため、トリプトファンを適切に摂取し、セロトニンの合成をサポートすることは、メンタルヘルスを良好に保つ上で非常に重要と考えられています。

睡眠ホルモン「メラトニン」への変換

セロトニンは、さらに脳の松果体という部分で、睡眠を調節するホルモンであるメラトニンに変換されます。メラトニンは、私たちの体内時計(概日リズム)に作用し、「夜になると眠くなる」「朝になると目が覚める」という自然な眠りと覚醒のリズムを作り出す主要な役割を担っています。

夜間になると、メラトニンの分泌が増加し、体温を下げたり、心拍数を落ち着かせたりして、体が眠りにつく準備を始めます。朝になり光を浴びると、メラトニンの分泌は抑制され、目が覚めるよう促されます。

トリプトファンからセロトニンを経てメラトニンが生成されるこの経路は、スムーズな睡眠を確保するために不可欠です。トリプトファンやセロトニンが不足すると、メラトニンの合成が減少し、寝つきが悪くなる、夜中に目が覚めやすくなる、といった睡眠の質の低下を招く可能性があります。質の高い睡眠は、日中のパフォーマンスや長期的な健康にとって非常に重要であるため、トリプトファンを十分に摂取し、メラトニン生成をサポートすることは、健康的な生活を送る上で欠かせない要素と言えるでしょう。

メンタル安定や気分の調整

セロトニンとメラトニンの働きを通じて、トリプトファンは私たちのメンタル安定や気分の調整に大きく貢献しています。

  • 気分の向上: セロトニンが十分に分泌されることで、気分が明るくなったり、幸福感を感じやすくなったりすることが期待されます。「幸せホルモン」と呼ばれる所以です。
  • ストレス軽減: セロトニンは、ストレスに対する体の反応を和らげる効果も持つと考えられています。精神的な落ち着きをもたらし、不安や緊張を軽減する手助けをします。
  • 睡眠の質の改善: メラトニンの適切な分泌は、自然な睡眠リズムを整え、深い眠りを促します。質の良い睡眠は、精神的な疲労回復に繋がり、日中の集中力やモチベーションの維持にも不可欠です。
  • 衝動性の抑制: セロトニンは、衝動的な行動や感情の爆発を抑える働きも持っているとされています。

これらのことから、トリプトファンを適切に摂取することは、単に体に必要なアミノ酸を補給するだけでなく、日々の精神状態を良好に保ち、ストレスに適切に対処し、質の高い睡眠を得るために非常に重要な要素であることがわかります。特に現代社会では、ストレスや不規則な生活によりメンタルや睡眠の質に悩みを抱える人が多いため、食事からのトリプトファン摂取の重要性は増していると言えるでしょう。

トリプトファンを食事で効果的に摂取する方法

トリプトファンを体内で効率良く利用するためには、単にトリプトファンを多く含む食品を食べるだけでなく、摂取方法にもいくつかポイントがあります。他の栄養素との組み合わせや摂取のタイミングを工夫することで、トリプトファンからセロトニンやメラトニンへの変換をよりスムーズに行うことが期待できます。

摂取量の目安とタイミング

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、成人のトリプトファンの1日あたりの推奨量は、体重1kgあたり約4mgとされています。例えば、体重50kgの人であれば1日約200mg、体重60kgの人であれば1日約240mg、体重70kgの人であれば1日約280mgが目安となります。ただし、これは必要最低限の量であり、セロトニンやメラトニンの合成を十分にサポートするためには、もう少し多めに摂取することが望ましいという考え方もあります。タンパク質の推奨量(成人男性65g、女性50g)を満たす食事をしていれば、およそ推奨量以上のトリプトファンは摂取できると考えられます。

トリプトファンを摂取するタイミングとしては、朝食時がおすすめです。朝にトリプトファンを摂取することで、日中のセロトニン合成を促進し、精神的な安定や覚醒状態をサポートすることが期待できます。また、日中にしっかりセロトニンが作られると、それが夜間にメラトニンに変換され、スムーズな入眠に繋がる可能性も示唆されています。例えば、朝食に卵料理、ヨーグルト、納豆、ご飯やパンといったトリプトファンを含む食品を取り入れると良いでしょう。

ビタミンB6や炭水化物との組み合わせ

トリプトファンを体内でセロトニンに変換するためには、ビタミンB6が必須の補酵素として働きます。したがって、トリプトファンを含む食品と一緒にビタミンB6が豊富な食品を摂取することで、セロトニンの合成効率を高めることができます。ビタミンB6は、かつお、まぐろ、鮭などの魚類、鶏肉(特にささみ)、牛肉、レバー、バナナ、パプリカ、にんにく、ごま、くるみなどに多く含まれています。例えば、まぐろのお刺身(トリプトファン・ビタミンB6)、鶏むね肉のソテー(トリプトファン・ビタミンB6)、バナナヨーグルト(トリプトファン・ビタミンB6)、納豆ご飯(トリプトファン・ビタミンB6)といった組み合わせは理にかなっています。

また、トリプトファンが脳へ効率良く取り込まれるためには、炭水化物を一緒に摂取することが効果的と言われています。食事から摂取したアミノ酸は、脳へ移行する際に血液脳関門という関所を通る必要がありますが、他のアミノ酸と競合します。炭水化物を摂取すると、インスリンが分泌され、脳へ移行する際に競合しやすい一部のアミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシンといった分岐鎖アミノ酸など)が筋肉に取り込まれやすくなります。これにより、血液中のトリプトファンの割合が相対的に高まり、脳へ移行しやすくなるのです。ご飯、パン、麺類、イモ類、果物といった炭水化物源を、トリプトファンを含むタンパク質食品と組み合わせて摂取することをおすすめします。例えば、ご飯と納豆、パンとチーズ、パスタとミートソース、バナナとヨーグルトといった組み合わせは、トリプトファン摂取の効率を高めるのに役立ちます。

バナナなど特定の食品について

バナナは「トリプトファンが含まれているから睡眠に良い」と言われることがよくありますが、実際にはトリプトファン自体の含有量は他の食品に比べてそれほど多くありません。しかし、バナナにはトリプトファンだけでなく、セロトニン合成に必要なビタミンB6や、脳へのトリプトファン移行を助ける糖質がバランス良く含まれています。そのため、これらの栄養素の相乗効果によって、トリプトファン摂取の効果を高める食品として知られているのです。就寝前にバナナを食べることで、リラックス効果やスムーズな入眠が期待できるという考え方もありますが、多量の糖質摂取は血糖値の急激な上昇を招く可能性もあるため、量には注意が必要です。バナナだけでなく、ヨーグルトや牛乳、ナッツなど、他のトリプトファンやビタミンB6を含む食品と組み合わせるのも良いでしょう。

このように、トリプトファンは単独で摂取するだけでなく、他の必要な栄養素(特にビタミンB6や炭水化物)とバランス良く組み合わせることが、体内で有効に活用されるための鍵となります。日々の献立を考える際に、これらの点を意識してみましょう。

トリプトファン摂取に関する注意点

トリプトファンは私たちの体にとって重要な栄養素ですが、摂取する際にいくつか注意しておきたい点があります。特にサプリメントを利用する場合や、特定の状況下では留意が必要です。

過剰摂取の可能性

通常の食事を通じてトリプトファンを過剰に摂取することは、まず心配する必要はありません。食品に含まれるトリプトファンの量は、健康な人が普段の食事で過剰になるほど多くないためです。私たちの体には、栄養素の摂取量を調整する機能が備わっており、食品からの過剰摂取は自然と避けられるようになっています。

ただし、トリプトファンをサプリメントとして高用量で摂取する場合には注意が必要です。過去には、トリプトファンを含むサプリメントの摂取により、「好酸球増加・筋肉痛症候群(EMS)」と呼ばれる健康被害が発生した事例が報告されています。これは、サプリメントの製造過程で混入した不純物が原因であった可能性が高いとされていますが、トリプトファン自体の過剰摂取による影響も完全に否定はできません。サプリメントで摂取する場合は、製品の品質を確認し、推奨される用量を守ることが重要です。

過剰なトリプトファン摂取がセロトニン症候群(セロトニンが過剰になることで起こる精神神経症状、自律神経症状など)を引き起こす可能性も理論上は考えられますが、これも食品からの摂取で起こることは極めて稀です。主に、セロトニンに作用する薬剤(抗うつ薬など)を服用している方が、トリプトファンサプリメントを高用量で併用した場合などにリスクが高まる可能性があります。

サプリメントと食品摂取の違い

トリプトファンのサプリメントは、特定の栄養素を手軽かつ高濃度で摂取できるという利便性があります。しかし、前述のような健康被害のリスクや、他の薬との相互作用の可能性、そして体内での吸収・利用効率が食品から摂取する場合と異なる可能性がある点に注意が必要です。

一方、食品からトリプトファンを摂取する最大のメリットは、トリプトファンだけでなく、セロトニン合成に必要なビタミンB6やナイアシン、マグネシウム、そして脳への移行を助ける炭水化物など、他の重要な栄養素もバランス良く同時に摂取できることです。食品は複合的な栄養素の宝庫であり、それぞれの栄養素が互いに助け合って体内で有効に働きます。また、食品からの摂取では、過剰になる心配がほとんどなく、安全に摂取できます。

これらの理由から、トリプトファンはまず日々の食事から十分に摂取することを基本とするのが望ましいと考えられます。バランスの取れた食生活を送ることで、多くの場合は必要なトリプトファン量を満たすことができます。食事だけで十分に摂取できない場合や、医師や管理栄養士などの専門家から推奨された場合に限り、サプリメントの利用を検討するのが賢明でしょう。自己判断での高用量サプリメント摂取は避け、不安な点があれば必ず専門家に相談してください。

まとめ:トリプトファンを多く含む食べ物を日々の食事に取り入れよう

トリプトファンは、私たちの体内で作ることができない必須アミノ酸であり、精神安定や幸福感に関わるセロトニンや、睡眠を調節するメラトニンといった重要な物質の材料となります。そのため、日々の食事から意識的に摂取することが、心身の健康、特にメンタルヘルスや睡眠の質を良好に保つ上で非常に重要です。

この記事では、卵、大豆製品、乳製品、肉類、魚介類などにトリプトファンが多く含まれていることをご紹介しました。中でも、かつお節やパルメザンチーズ、乾燥大豆などは特に含有量が多い食品です。しかし、特定の食品に偏るのではなく、様々な食品をバランス良く組み合わせることが大切です。

トリプトファンを効果的に摂取するためには、セロトニン合成に必要なビタミンB6や、脳への移行を助ける炭水化物を一緒に摂ることを意識しましょう。朝食時にこれらの栄養素を含む食品を組み合わせることで、日中のセロトニン合成を促し、夜間のメラトニン生成に繋げることが期待できます。例えば、納豆ご飯に卵をプラスしたり、ヨーグルトにバナナやナッツを加えたりといった簡単な工夫でも、トリプトファン摂取の効率を高めることができます。

通常の食事からトリプトファンを過剰に摂取する心配はほとんどありませんが、サプリメントを利用する際は、製品の品質に注意し、推奨量を守ることが重要です。基本的には、バランスの取れた食事から必要なトリプトファンを摂取することを目指しましょう。

もし、気分の落ち込みが続く、強い不安を感じる、慢性的な不眠に悩んでいるといった場合には、トリプトファンを含む食品を意識するだけでなく、専門家(医師やカウンセラーなど)に相談することをお勧めします。栄養状態だけでなく、様々な要因が心身の不調に関わっている可能性があるため、適切な診断とアドバイスを受けることが大切です。

日々の食卓に、トリプトファンを豊富に含む多様な食品を彩り豊かに取り入れてみてください。おいしく食事をしながら、心も体も健やかに過ごしましょう。

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