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腟中隔(ちつちゅうかく)の原因・症状・治療法|月経困難や性交痛は?

腟中隔について、「もしかして自分も?」「診断されたけど詳しく知りたい」と考えている方へ。
このページでは、腟中隔の基本的な情報から、原因、どのような症状が現れるのか、病院での診断方法、そして多くの人が気になる治療法(特に手術)の内容や費用、さらには妊娠・出産への影響まで、網羅的に解説します。
ご自身の状況を理解し、適切な医療機関を受診するための参考にしてください。

目次

腟中隔とは?その定義と種類

腟中隔(ちつちゅうかく)とは、女性の腟の中に存在する、通常はないはずの「壁」や「膜」のことを指します。
これは、腟が形成される胎児期の発達過程で生じる先天的な異常です。
腟の空間を隔てるように存在するため、その存在部位や形状によって様々な影響を及ぼす可能性があります。

腟中隔は、大きく分けて以下の2つの種類に分類されます。

  • 縦腟中隔(じゅうちつちゅうかく): 腟を左右に分割するように存在する壁です。
    腟の入口から奥に向かって、部分的に、あるいは全体にわたって伸びていることがあります。
    縦に完全に腟を二つに分けてしまっている場合もあれば、途中で終わっている不完全な場合もあります。
  • 横腟中隔(おうちつちゅうかく): 腟を上下に分割するように存在する壁や膜です。
    腟の入口から子宮に向かう途中のどこかに、仕切りのように存在します。
    完全に腟腔を閉鎖してしまうものから、小さな穴が開いているもの、膜のように薄いものまで、様々な形態があります。

これらの腟中隔は、その種類や大きさ、厚さ、場所によって、全く自覚症状がない場合から、様々な不調を引き起こす場合まであります。
そのため、まずはご自身の状態がどのようなものなのかを正確に把握することが重要です。

腟中隔の原因と発生頻度

腟中隔は、病気や怪我によって後天的にできるものではなく、生まれたときから存在する「先天性」の異常です。
なぜこのような状態が起こるのか、その原因と、どのくらいの頻度で発生するのかを見ていきましょう。

腟中隔の原因(先天性)

腟や子宮などの女性器は、胎児がお母さんのお腹の中で成長する際に、いくつかの組織が融合したり変化したりして形成されます。
特に腟は、ミュラー管と呼ばれる2本の管が癒合し、さらにその一部が消失するなどの複雑なプロセスを経て作られます。

腟中隔は、このミュラー管の形成や癒合、あるいはその後の退縮といった発生過程に異常が生じることによって発生すると考えられています。

  • 縦腟中隔: 2本のミュラー管が十分に癒合しなかったり、癒合した後に通常は吸収されるべき組織が吸収されずに残ってしまったりすることで生じると考えられています。
  • 横腟中隔: 腟の形成過程で、本来であれば連続するはずの組織の間に、膜のようなものが残存したり、特定の部位の退縮が不十分であったりすることで生じると考えられています。

このように、腟中隔は胎児期の非常に早い段階で起こる発生異常に起因するため、予防することはできません。
遺伝的な要因や特定の環境要因が関与している可能性も研究されていますが、現時点では明確な原因が特定されているわけではありません。

腟中隔の発生頻度と確率

腟中隔の正確な発生頻度を把握することは難しいとされています。
なぜなら、自覚症状がないまま一生涯を過ごす人も多く、診断される機会がない場合があるためです。
しかし、婦人科の診察や画像検査などによって見つかるケースを基にした調査では、その発生頻度は数千人から数万人に1人程度と報告されています。

ただし、この数字は診断されたケースに基づくものであり、実際にはもっと多くの人が腟中隔を持っている可能性も指摘されています。
縦腟中隔と横腟中隔では、縦腟中隔の方が比較的多く見られる傾向にあると言われています。

多くの場合は単独で見つかりますが、まれに子宮の形態異常(重複子宮や双角子宮など)や、腎臓や尿管の異常といった他の先天性異常を合併していることもあります。
そのため、腟中隔が診断された場合には、これらの合併症の有無についても検査が行われることがあります。

腟中隔の主な症状

腟中隔があることによる症状は、その種類(縦隔か横隔か)、場所、大きさ、厚さ、そして個人差によって大きく異なります。
全く症状がなく、婦人科の検診や妊娠・出産時に初めて発見されるケースも少なくありません。

自覚症状がない場合

腟中隔があっても、特に症状を伴わないケースは多く見られます。
これは、中隔が小さかったり薄かったりする場合や、腟の機能に大きな影響を与えない場所に存在する場合に起こりやすいです。

自覚症状がない場合、以下のような状況で偶然発見されることがあります。

  • 婦人科の診察や検診: 普段の婦人科検診で内診を受けた際に、医師によって指摘されることがあります。
  • 思春期以降の月経開始: 横腟中隔で完全に腟が閉鎖されている場合、月経血の排出ができず、下腹部痛や腰痛などの症状で受診し、診断されることがあります。
  • 性交渉の開始: 性交時に痛みを感じたり、挿入が難しかったりすることで気づくことがあります。
  • 妊娠・出産時: 妊娠中の診察や分娩時に腟中隔が見つかることがあります。

このように、自覚症状がない場合でも、体の変化やライフイベントをきっかけに発見されることがあります。

性交痛や月経異常など起こりうる症状

腟中隔が存在することで、以下のような様々な症状が現れることがあります。
これらの症状は、腟中隔が腟の空間を物理的に妨げたり、特定の機能に影響を与えたりすることで起こります。

  • 性交痛(ディスパレウニア):
    • 特に腟の入口付近や中間部に縦腟中隔がある場合、性交渉の際に中隔が引き伸ばされたり、圧迫されたりすることで痛みを伴うことがあります。
    • 中隔が邪魔をして挿入が困難になることもあります。
  • 月経異常・月経困難症:
    • 横腟中隔が腟の途中や奥に存在し、月経血の通り道を狭めたり、完全に閉鎖したりしている場合に問題となります。
    • 完全に閉鎖されている場合(完全横腟中隔)、月経血が腟や子宮に溜まってしまい、強い下腹部痛、腰痛、腹部の膨満感などを引き起こします。
      これは、初潮を迎えても月経が来ない(無月経)にも関わらず周期的な痛みを伴うことで気づかれることが多いです。
    • 小さな穴が開いている不完全な横腟中隔の場合でも、月経血の排出がスムーズに行われず、月経期間が長引いたり、経血量が異常に多かったり少なかったり、強い月経痛(月経困難症)を引き起こすことがあります。
  • タンポンの使用が困難:
    • 特に縦腟中隔がある場合、タンポンを挿入しようとすると中隔に当たってしまい、奥まで入らなかったり、違和感や痛みを伴ったりすることがあります。
  • 繰り返す腟炎:
    • 縦腟中隔によって腟が二つの空間に分かれている場合、一方の腟に月経血が溜まりやすくなったり、清浄がしにくくなったりすることで、細菌感染や炎症を繰り返しやすくなることがあります。
  • 分娩時の問題:
    • 後述しますが、腟中隔がある場合、自然分娩の際に児頭が中隔に引っかかったり、中隔が損傷したりするリスクがあり、分娩の進行に影響を与える可能性があります。

これらの症状は、他の婦人科疾患でも起こりうるため、自己判断は禁物です。
気になる症状がある場合は、必ず婦人科を受診し、正確な診断を受けることが大切です。

腟中隔の診断方法

腟中隔は、自覚症状がなくても婦人科の診察で偶然見つかることも多いですが、症状がある場合は、その症状の原因を調べる過程で診断されます。
診断は、問診や内診から始まり、必要に応じて画像検査が行われます。

診断の手順と流れ

婦人科で腟中隔の診断に至るまでの一般的な手順は以下の通りです。

  • 問診: 医師が現在の症状(月経周期、経血量、月経痛の有無、性交痛の有無、妊娠・出産の既往、その他の既往歴など)について詳しく聞き取ります。
    症状がある場合は、いつ頃から始まったのか、どのような時に症状が強いのかなどを具体的に伝えます。
  • 内診: 腟鏡を使って腟の内部を観察し、腟や子宮の状態を目視で確認します。
    この際、腟の中に壁や膜(腟中隔)が存在するかどうか、その場所、大きさ、形態などを確認します。
    縦腟中隔であれば、腟が二つに分かれている様子が観察できます。
    横腟中隔であれば、腟の途中に膜が見えたり、指を進めようとしてもそれ以上奥に進めなかったりすることで疑われます。
    内診は腟中隔の診断において非常に重要なステップです。
  • 画像検査(必要に応じて): 内診で腟中隔が疑われた場合や、その種類や広がり、子宮や他の臓器の合併症の有無を詳しく調べるために、超音波検査やMRIなどの画像検査が行われます。
  • 診断の確定: これらの情報(問診、内診、画像検査の結果)を総合して、医師が腟中隔の診断を確定し、その種類や状態、合併症の有無を評価します。

症状がない場合は、婦人科検診などで偶然見つかり、そのまま経過観察となることも多いです。
しかし、症状がある場合や、将来の妊娠・出産を控えている場合などは、詳細な検査と今後の治療方針についての相談が進められます。

内診や超音波検査、MRIなどの診断方法

腟中隔の診断に用いられる主な検査方法とその特徴は以下の通りです。

検査方法 内容 腟中隔でわかること
内診 腟鏡を使用して腟内部を目視で観察し、医師が指で触診する検査。 腟中隔の有無、位置、種類(縦隔・横隔の判別)、大きさ、おおよその厚さや硬さ。腟以外の異常(子宮や卵巣の腫れなど)も確認。
経腟超音波検査 腟内に超音波プローブを挿入して、子宮や卵巣、腟などを画像化する検査。 腟中隔の厚さ、形状、周囲組織との位置関係を詳細に把握。特に横腟中隔による腟閉鎖の上部に溜まった月経血(血液貯留)を確認。子宮の形態異常や卵巣の状態も同時に評価。
経腹超音波検査 下腹部に超音波プローブを当てて、子宮や卵巣、膀胱などを画像化する検査。 腟中隔自体の描出は難しい場合もあるが、横腟中隔による血液貯留の確認や、子宮の形態異常、腎臓・尿管の異常など、合併症の評価に有用。
MRI検査 磁力と電磁波を用いて体の断面図を作成する検査。 腟中隔の種類、長さ、厚さ、骨盤内の他の臓器(子宮、膀胱、直腸など)との正確な位置関係や解剖学的構造を非常に詳細に把握できる。特に複雑な形態異常や合併症が疑われる場合に有用。

腟中隔の治療法と手術

腟中隔は、その存在自体が直ちに健康を害するわけではありません。
そのため、全ての腟中隔に治療が必要なわけではありません。
治療が必要となるのは、症状があったり、将来的な妊娠・出産に影響が懸念される場合などです。
治療の主体は手術による腟中隔の切除です。

腟中隔に治療が必要なケース

以下のような場合には、腟中隔の治療(主に手術)が検討されます。

  • 症状がある場合:
    • 強い性交痛があり、性生活に支障をきたしている場合。
    • 月経血の排出が妨げられ、強い月経痛やその他の月経異常(経血貯留など)を引き起こしている場合。
      特に横腟中隔による完全閉鎖の場合は、月経血が体内に溜まることで感染や他の臓器への圧迫などの問題が生じるため、早急な治療が必要です。
    • タンポンの使用が困難で、日常生活に不便を感じている場合。
    • 腟炎を繰り返しやすい場合。
  • 妊娠・出産に影響が懸念される場合:
    • 縦腟中隔が大きい場合や硬い場合など、自然分娩の妨げとなる可能性が高いと判断される場合。
      妊娠前に予防的に手術を行うか、分娩中に切開するかなどが検討されます。
    • 横腟中隔がある場合。
      妊娠自体は可能でも、妊娠の維持や分娩方法に影響する可能性があります。
  • その他:
    • まれに心理的な負担が大きい場合など。

逆に、自覚症状が全くなく、医師からも治療の必要性がないと判断された場合は、特に治療を行わず経過観察となることが一般的です。
ただし、将来の妊娠・出産を希望する場合は、その影響について医師とよく相談し、必要に応じて妊娠前に手術を検討することもあります。

腟中隔切除術(手術方法)

腟中隔の主な治療法は、手術によってその壁や膜を切除することです。
手術方法は、腟中隔の種類(縦隔か横隔か)や、場所、大きさ、厚さなどによって異なります。

  • 縦腟中隔切除術:
    • 比較的簡便な手術です。
    • 腟鏡で腟内を観察しながら、腟中隔を電気メスやレーザー、あるいは通常のメスなどを用いて切開・切除します。
    • 通常、縫合の必要はありませんが、出血が多い場合などは軽く縫合することもあります。
    • 手術時間も短く、多くの場合、日帰りまたは1~2泊程度の入院で行われます。
    • 中隔が非常に厚い場合や、複雑な形態の場合は、少し難易度が上がることもあります。
  • 横腟中隔切除術:
    • 縦腟中隔の切除に比べると、一般的に難易度が高くなります。
    • 特に完全な横腟中隔で腟が閉鎖している場合は、中隔の上部に溜まった月経血を排出させ、さらに腟の上下の断端をつなぎ合わせる必要があります。
    • 中隔の厚さや、子宮までの距離によって手術方法が異なります。
      薄い膜状であれば比較的容易ですが、厚い場合は切除後の断端を縫合したり、皮膚移植などを用いて新たな腟腔を作成したりする必要が生じる場合もあります。
    • 手術時間は縦隔切除より長くなり、入院期間も数日から1週間程度かかることがあります。
    • 術後に腟が狭くならないように、定期的な診察や、必要に応じて腟ダイレーター(拡張器)を用いたケアが必要となる場合もあります。

どちらの手術も、全身麻酔または下半身麻酔(脊椎麻酔など)で行われるのが一般的です。
手術後は、一定期間の安静や、性交渉の制限、定期的な経過観察が必要です。
術後の痛みや出血、感染などのリスクもありますが、適切なケアと医師の指示に従うことで、多くの場合良好な経過をたどります。

腟中隔手術の費用と保険適用

腟中隔切除術は、病気に対する治療として行われるため、基本的に保険適用となります。
保険適用となることで、医療費の自己負担額は原則として総医療費の1~3割となります(年齢や所得によって異なります)。

手術費用は、手術方法、入院期間、医療機関(病院の種類や所在地)などによって異なりますが、一般的な目安としては以下のようになります。

項目 費用目安(保険適用後、自己負担3割の場合) 備考
縦腟中隔切除術 数万円~10万円程度 日帰りまたは短期入院の場合。麻酔や検査費用は別途。
横腟中隔切除術 10万円~数十万円程度 中隔の厚さや手術方法、入院期間によって大きく異なる。麻酔や検査費用は別途。
入院費用 1日あたり1万円~2万円程度 病室の種類(個室など)によって異なる。

上記はあくまで目安であり、個々の状況や医療機関によって費用は変動します。
また、手術費用以外に、術前の検査費用、麻酔費用、薬剤費、入院中の食事代や個室代などが別途かかる場合があります。

高額な医療費がかかる場合でも、「高額療養費制度」を利用することで、自己負担額に上限が設けられています。
この制度を利用すれば、所得に応じた上限額以上の医療費は還付されます。
事前に加入している健康保険組合などに申請することで、窓口での支払いを軽減することも可能です。

手術を検討する際は、担当の医師や病院の医療相談室、または加入している健康保険組合に、具体的な手術内容、入院期間、予想される費用、高額療養費制度の利用について確認することをおすすめします。

腟中隔と妊娠・出産への影響

腟中隔があることが、将来の妊娠や出産にどのような影響を与えるのかは、多くの女性にとって大きな関心事です。
その影響は、腟中隔の種類や状態によって異なります。

妊娠への影響(不妊、流産リスク)

腟中隔があることが、直接的な不妊の原因になることは比較的少ないとされています。
性交渉が可能であれば、受精・着床に至るまでの生殖機能自体に問題はないことが多いからです。
しかし、全く影響がないわけではありません。

  • 性交痛による影響: 性交痛がひどく、性交渉の頻度が減ってしまうことで、結果的に妊娠しにくくなる可能性はあります。
    この場合は、腟中隔の治療(手術)によって性交痛が改善すれば、妊娠の可能性が高まります。
  • 横腟中隔による影響: 横腟中隔がある場合、特に不完全なものであっても、受精卵が子宮に着床し、妊娠が成立したとしても、その後の経過に影響を与える可能性が指摘されています。
    • 流産・早産リスク: 横腟中隔があることによって、子宮頸部や腟上部の血流が悪くなったり、解剖学的な問題が生じたりすることで、流産や早産のリスクがわずかに高まる可能性が研究で示唆されています。
      ただし、全ての横腟中隔がリスクを高めるわけではなく、中隔の場所や厚さなどによって異なると考えられています。
    • 不妊治療との関連: 不妊治療として人工授精や体外受精を行う場合、腟中隔の種類によっては器具の挿入が難しくなるなど、治療の進行に影響を与える可能性もあります。

縦腟中隔は、通常、妊娠の成立や維持に直接的な影響を与えることはほとんどありません。

もし腟中隔が見つかった場合で、将来妊娠を希望しているのであれば、その腟中隔の種類や状態が妊娠にどのような影響を与える可能性があるのか、また、妊娠前に治療が必要かどうかなどを、専門医とよく相談することが非常に重要です。
不安な場合は、妊娠を試みる前に一度婦人科を受診し、相談してみましょう。

出産方法(経膣分娩、帝王切開)

腟中隔がある場合、出産方法について検討が必要となることがあります。
経膣分娩(自然分娩)が可能かどうかは、腟中隔の種類、場所、大きさ、硬さなどによって判断されます。

  • 縦腟中隔がある場合:
    • 小さく薄い縦腟中隔であれば、経膣分娩が可能であり、分娩中に児頭が中隔を圧迫することで自然に断裂する場合もあります。
    • しかし、大きく厚い縦腟中隔の場合や、中隔が非常に硬い場合は、分娩の進行を妨げたり、分娩中に中隔が不規則に裂けて大量出血を引き起こしたりするリスクがあります。
      このようなケースでは、分娩前に予防的に縦腟中隔を切除する手術を行うか、あるいは分娩中に中隔を計画的に切開して分娩路を確保することが検討されます。
    • 中隔の状態によっては、最初から帝王切開が選択されることもあります。
  • 横腟中隔がある場合:
    • 完全な横腟中隔は、腟が閉鎖されているため、経膣分娩は不可能です。
      妊娠が成立したとしても、帝王切開での分娩が必須となります。
    • 不完全な横腟中隔の場合、中隔に穴が開いていても、その場所や硬さ、穴の大きさによっては、児頭が通過できない場合があります。
      この場合も帝王切開が選択されます。
    • 穴が十分に大きく、薄い横腟中隔であれば経膣分娩が可能な場合もありますが、分娩中に中隔が裂けるリスクや、その後の腟の形態への影響なども考慮して、慎重に判断されます。

妊娠中に腟中隔が見つかった場合、担当の産科医が腟中隔の状態を詳しく評価し、最も安全な分娩方法について提案します。
必ずしも帝王切開になるわけではありませんが、経膣分娩を選択する場合でも、分娩の進行状況によっては帝王切開に切り替える可能性も十分にあり得ます。
ご自身の腟中隔の状態について医師とよく話し合い、理解を深めることが大切です。

中隔処女膜について

腟中隔と混同されやすいものに「中隔処女膜(ちゅうかくしょじょまく)」があります。
これらは同じ「中隔」という言葉が含まれますが、医学的には異なる状態です。

処女膜は、腟の入口付近に存在する薄い膜で、通常は中央に月経血や分泌液を排出するための穴が開いています。
処女膜の形状には個人差があり、通常は輪状ですが、いくつかの形態異常があります。

中隔処女膜とは、この処女膜に中央を縦に走る帯状の組織が存在し、処女膜の開口部が左右二つに分かれている状態を指します。

特徴 腟中隔(縦腟中隔) 中隔処女膜
場所 腟の内部(入口から奥まで様々) 腟の入口、処女膜のレベル
組織 腟壁と同じ組織でできている場合が多い 処女膜と同じ組織でできている
形状 腟を左右に分ける壁状 処女膜を左右に分ける帯状
症状 性交痛、タンポン困難、分娩時の問題など 性交痛(特に初体験時)、タンポン困難
発生時期 胎児期の腟形成過程 胎児期の処女膜形成過程

中隔処女膜がある場合も、性交時に痛みを感じたり、タンポンが使いにくかったりすることがあります。
症状がある場合や、性交渉に支障がある場合は、簡単な切開手術によって治療することが可能です。
これは、腟中隔切除術に比べると、より簡便な手術となります。

中隔処女膜は、縦腟中隔と見間違いやすいことがありますが、診断は比較的容易で、治療方法も異なります。
自己判断せず、必ず婦人科で正確な診断を受けるようにしましょう。

腟中隔に関するよくある質問(FAQ)

腟中隔について、患者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
不安や疑問の解消に役立ててください。

腟中隔が見つかったらどうすれば良いですか?

腟中隔が見つかったとしても、過度に心配する必要はありません。
まずは、診断してくれた医師の説明をよく聞き、ご自身の腟中隔がどのような種類で、どのような状態(場所、大きさ、厚さなど)なのかを正確に理解しましょう。

症状がある場合は、その症状が腟中隔によって引き起こされている可能性が高いと考えられますので、今後の治療(主に手術)について医師とよく相談します。
治療が必要と判断された場合は、手術内容、リスク、メリット、費用、入院期間などについて詳しく説明を受け、納得した上で治療方針を決定します。

症状が全くない場合は、必ずしも治療が必要とは限りません。
医師から「経過観察でよい」と言われた場合は、そのまま日常生活を送って問題ないことがほとんどです。
ただし、将来の妊娠・出産について不安がある場合は、その可能性のある影響について医師に質問し、必要に応じて妊娠前に手術を検討することもできます。

最も重要なのは、自己判断せず、必ず専門医(婦人科医)の診断とアドバイスに従うことです。

腟中隔があっても性生活は可能ですか?

はい、腟中隔の種類や場所によっては、全く問題なく性生活を送ることが可能です。
特に、小さく薄い中隔や、腟の奥の方にある中隔の場合は、性交渉に影響を与えないことが多いです。

しかし、腟の入口付近や中間部に大きく厚い縦腟中隔がある場合や、不完全な横腟中隔がある場合は、性交渉の際に中隔が邪魔になったり、伸展されて痛みを伴ったりすることがあります。
この性交痛が強い場合は、性生活に支障をきたす可能性があります。

性交痛がある場合は、無理に性交渉を続けることで痛みが悪化したり、心理的な負担が大きくなったりすることがあります。
このような場合は、性交痛の原因が腟中隔であるかどうかを婦人科で確認し、必要に応じて腟中隔の切除術を検討することで、性交痛の改善が期待できます。
手術によって中隔がなくなれば、通常通り性生活を送ることが可能になります。

パートナーがいる場合は、腟中隔について説明し、一緒に婦人科を受診したり、治療について話し合ったりすることも、不安を軽減するために有効です。

腟中隔は自然に治りますか?

残念ながら、腟中隔が自然に消滅したり、小さくなったりして自然に治ることはありません。
腟中隔は胎児期に形成された先天性の構造物であり、成長してもその存在がなくなるわけではありません。

症状がない場合は治療の必要はありませんが、一度できた腟中隔が時間とともに消えることは期待できません。

したがって、腟中隔による症状(性交痛、月経困難症、タンポン困難など)がある場合や、将来の妊娠・出産に影響が懸念される場合は、自然治癒を待つのではなく、手術による切除という治療が必要となります。

もし腟中隔について不安な点がある場合は、一人で悩まず、必ず婦人科医に相談し、正確な情報と適切なアドバイスを得るようにしましょう。


免責事項

本記事は、腟中隔に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療法の推奨を行うものではありません。
個々の症状や状態は異なりますので、腟中隔が疑われる場合や診断された場合は、必ず専門の医療機関を受診し、医師の診断と指示に従ってください。
本記事の情報に基づいて行われたいかなる行為についても、当方では一切の責任を負いかねます。
情報の正確性には努めていますが、常に最新の医学的知見に基づいているとは限りません。

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