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卵子凍結のデメリットを徹底解説|本当に知るべきリスクと費用

卵子凍結は、将来の妊娠に備えるための選択肢として注目されています。キャリア形成やパートナーとのタイミングなど、様々な理由から「今すぐの妊娠は難しいけれど、将来子供を持ちたい」と願う女性にとって、希望の光となる技術です。しかし、卵子凍結にはメリットだけでなく、知っておくべきデメリットも存在します。

この技術が提供する可能性の裏側には、身体的、経済的、そして精神的な側面での負担やリスクが伴います。卵子凍結を検討する際には、これらのデメリットを十分に理解し、自身の状況やライフプランと照らし合わせて慎重に判断することが非常に重要です。本記事では、卵子凍結のデメリットについて、費用やリスク、後悔の可能性などを専門的な視点から徹底的に解説します。後悔しない選択をするために、信頼できるクリニックの選び方や、医師との相談の重要性についても触れていきます。

目次

卵子凍結の主なデメリット

卵子凍結は、将来の選択肢を広げる有効な手段となり得ますが、メリットだけを見て決断するのは避けるべきです。このセクションでは、卵子凍結に伴う様々なデメリットについて詳しく解説します。

身体的な負担やリスク

卵子凍結のためには、卵巣刺激や採卵手術が必要です。これらは医療行為であり、身体への負担や特定のリスクが伴います。

採卵手術に伴うリスク(出血、感染など)

採卵手術は、経腟超音波ガイド下で細い針を使って卵巣から卵子を採取する手技です。多くの場合、静脈麻酔下で行われますが、医療行為である以上、いくつかのリスクが存在します。
最も一般的なリスクの一つに出血があります。針が血管を傷つけた場合、出血が起こる可能性があります。軽度な出血であれば自然に止まることが多いですが、稀に腹腔内出血など、より重篤な合併症に至る可能性もゼロではありません。
また、手術部位や周辺臓器の感染のリスクも考慮する必要があります。採卵針が卵巣や卵管、その他の骨盤内臓器を通過する際に、細菌が侵入する可能性があります。感染が起こると、腹痛や発熱などの症状が現れ、抗生剤による治療や、場合によっては追加の処置が必要になることもあります。
さらに、採卵針が卵巣以外の臓器(腸管、膀胱など)を傷つけてしまう可能性も、極めて稀ながら存在します。これらの合併症は頻繁に起こるわけではありませんが、手術を受ける上で認識しておくべきリスクです。リスクを最小限に抑えるためには、経験豊富な医師と設備の整ったクリニックを選ぶことが重要です。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク

卵子を複数個採取するために、採卵周期には通常、排卵誘発剤を使用して卵巣を刺激します。この刺激に対する卵巣の反応が過剰になった場合に起こるのが卵巣過剰刺激症候群(OHSS)です。
OHSSの症状は軽度から重度まで幅広くあります。軽度の場合は、腹部の張り、軽い吐き気、下腹部痛など比較的軽微な症状で済みます。しかし、重度になると、腹水や胸水が溜まり、お腹が大きく張って強い痛みや呼吸困難を伴うことがあります。さらに稀ではありますが、血液が濃縮されて血栓ができやすくなるなど、重篤な合併症を引き起こす可能性もあります。
OHSSの発症リスクは、年齢が若い方、もともと卵巣の機能が高い方(多嚢胞性卵巣症候群の方など)、以前にOHSSになったことがある方などで高い傾向があります。最近では、OHSSのリスクを抑えるための薬剤やプロトコル(刺激方法)が開発されていますが、完全にゼロにすることは難しいのが現状です。
医師は、患者さんの状態を慎重に評価し、OHSSのリスクを最小限に抑えるような薬剤の種類や量を調整します。治療周期中は、定期的な超音波検査や採血によって卵巣やホルモンの状態をモニタリングし、OHSSの兆候がないか注意深く観察が行われます。

薬剤による副作用(吐き気、頭痛など)

卵子凍結の準備過程では、卵巣を刺激したり、排卵のタイミングを調整したりするために様々なホルモン剤が使用されます。これらの薬剤にも副作用が起こる可能性があります。
よく見られる副作用としては、注射部位の痛みや赤み、腫れなどがあります。また、ホルモンバランスの変化に伴って、吐き気、頭痛、倦怠感、乳房の張り、むくみ、気分の変動(イライラするなど)といった症状が現れることもあります。
これらの副作用の程度や種類は個人差が大きく、ほとんど感じない方もいれば、強く感じる方もいます。通常、薬剤の使用期間中や使用後しばらくすると改善することがほとんどです。しかし、症状が重い場合や続く場合は、必ず医師に相談してください。使用する薬剤の種類や量を調整したり、症状を和らげるための対症療法を行ったりすることが可能です。
薬剤の自己判断による中止は、治療計画に影響を与える可能性があるため、必ず医師の指示に従うようにしましょう。

卵子凍結は痛い?

「卵子凍結は痛いのか?」という疑問は、多くの女性が抱く不安の一つです。結論から言うと、採卵手術自体は麻酔下で行われるため、手術中に強い痛みを感じることはほとんどありません。
採卵手術は、通常、静脈麻酔や局所麻酔、あるいはその両方を用いて行われます。静脈麻酔の場合は眠っている間に手術が終わるため、痛みを感じることはありません。局所麻酔の場合でも、痛みを和らげる処置が施されます。
ただし、麻酔の種類や量、個人の痛みの感じ方によって、術中に全く感覚がないわけではありません。鈍い痛みや圧迫感を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
手術が終わった後、麻酔が切れてくると、下腹部に生理痛のような痛みや違和感を感じることがあります。これは採卵したことによる卵巣の刺激や、術後の出血などによるものですが、多くの場合、市販の鎮痛剤で対処できる程度の痛みです。数日から1週間程度で改善することが一般的です。
また、採卵周期中に使用する排卵誘発剤の注射も、自己注射の場合は多少の痛みを伴うことがあります。針の太さや刺し方、注射する部位によって痛みの感じ方は異なります。
痛みの感じ方には個人差がありますが、手術中の痛みは麻酔でコントロールされ、術後の痛みも通常は軽度で済むことがほとんどです。痛みが強く不安な場合は、我慢せずに医師や看護師に相談することが大切です。

経済的な負担(費用)

卵子凍結は健康保険が適用されない自由診療となるため、比較的高額な費用がかかります。この経済的な負担は、卵子凍結を検討する上で無視できない大きなデメリットの一つです。

採卵・凍結にかかる費用(初期費用いくら?)

卵子凍結の初期費用は、採卵周期の準備から採卵手術、そして卵子の凍結に至るまでにかかる総額です。この費用はクリニックや個人の状態(必要な検査や薬剤の種類・量、採卵できる卵子の数など)によって大きく異なりますが、一般的には数十万円から100万円を超えることもあります。
費用の内訳としては、主に以下の項目が含まれます。

  • 検査費用: 採卵周期前に必要なホルモン検査、感染症検査、超音波検査など。
  • 薬剤費用: 卵巣を刺激するための排卵誘発剤(注射剤や内服薬)、排卵を促す薬剤、卵胞の発育を抑える薬剤など。薬剤の種類や量によって大きく変動します。
  • 採卵手術費用: 手術手技料、麻酔費用など。
  • 卵子凍結費用: 採取した卵子を凍結する技術料。凍結する卵子の数によって費用が異なる場合もあります。

例えば、標準的なプロトコルで複数の卵子を採取・凍結する場合、初期費用の目安は以下のようになります。

項目 費用の目安
検査費用 2万円~5万円
薬剤費用 10万円~40万円
採卵手術費用(麻酔含む) 20万円~50万円
卵子凍結費用 5万円~20万円(凍結数による)
合計 37万円~115万円

これはあくまで一般的な目安であり、高刺激法や低刺激法など、選択する治療法によって薬剤費用などが大きく変動します。また、採卵できる卵子の数が少ない場合や、目標とする卵子数を確保するために複数回採卵が必要になった場合は、その都度初期費用がかさむことになります。

保管にかかる年間費用

卵子を凍結した後、それを将来使用する時まで保管しておく必要があります。この保管には年間費用がかかります。
保管料はクリニックによって設定が異なりますが、年間で数万円程度が一般的です。例えば、年間3万円~5万円程度が多いようです。保管期間が長くなるほど、この費用は積み重なっていきます。
例えば、35歳で凍結した卵子を40歳で使用する場合、5年間の保管料がかかります。年間5万円だとすると、合計25万円の保管料が必要になります。さらに、凍結卵子を使用せず、例えば50歳まで保管を継続すると、保管期間は15年となり、保管料は75万円にもなります。
この保管料は、凍結した卵子の維持管理に必要な費用であり、凍結している限り発生し続けます。初期費用だけでなく、将来の使用までの期間を考慮した保管料も計画に入れておく必要があります。

融解・受精・移植にかかる費用

凍結した卵子を実際に使用して妊娠を目指す際には、別途費用がかかります。これは卵子を融解し、精子と受精させ、できた胚を子宮に戻す(胚移植)ための一連の費用です。
この費用もクリニックや治療内容によって異なりますが、一般的な体外受精(顕微授精を含む)の費用に準じます。目安としては、1回の融解・受精・移植周期あたり、数十万円から100万円程度かかることが多いです。
費用の内訳は以下のようになります。

  • 卵子融解費用: 凍結した卵子を融かす技術料。一度に融解する卵子の数によって費用が異なる場合もあります。
  • 受精費用: 融解した卵子と精子を受精させる費用。体外受精(IVF)または顕微授精(ICSI)の方法によって費用が異なります。多くの場合、凍結卵子は顕微授精が選択されます。
  • 胚培養費用: 受精卵を培養する費用。
  • 胚移植費用: 培養した胚を子宮に戻す手術費用。
  • 薬剤費用: 胚移植周期に子宮内膜を整えるための薬剤など。
項目 費用の目安
卵子融解費用 5万円~15万円
受精・培養費用 15万円~40万円
胚移植費用 10万円~30万円
薬剤費用 3万円~10万円
合計 33万円~95万円

これもあくまで目安であり、複数個の卵子を融解する場合や、培養日数が長くなる場合、アシステッドハッチングなど追加の技術を行う場合などは費用が加算されます。
初期費用、保管費用、そして将来の融解・受精・移植費用を合計すると、1回の卵子凍結・使用で100万円〜200万円以上かかる可能性があることを理解しておく必要があります。

助成金の現状と利用について

卵子凍結にかかる費用は高額であるため、経済的な負担を軽減するために助成金制度の利用を検討することが考えられます。
かつては、がん治療など医学的な理由で卵子凍結が必要な場合の助成金が国レベルでありましたが、近年では、健康な女性が将来に備えて行う「社会的卵子凍結」に対する国の助成金制度は、残念ながらありません(2024年現在)。
しかし、一部の地方自治体(都道府県や市区町村)が、独自に卵子凍結に対する助成制度を設けている場合があります。これらの制度は、居住地や年齢、所得などの条件が定められていることがほとんどです。助成金額も自治体によって異なり、費用の全額ではなく一部を補助するものが一般的です。
例えば、東京都や浦安市などが独自の助成制度を実施しています。内容は変更される可能性があるため、検討している方はお住まいの自治体のウェブサイトを確認したり、問い合わせてみたりすることが重要です。
また、企業によっては、従業員向けの福利厚生として卵子凍結費用の補助制度を設けているケースも出てきています。ご自身の勤務先でそのような制度がないか確認してみるのも良いでしょう。
助成金の利用を考える際は、制度の対象となるクリニックが指定されている場合があること、申請時期や手続きに期限があることなどを事前に確認しておく必要があります。残念ながら、現時点では多くの方が全額自己負担となる可能性が高いです。

将来的な妊娠・出産に関するリスク

卵子凍結は将来の妊娠の可能性を広げるものですが、凍結したからといって必ず妊娠・出産できるわけではありません。将来的な妊娠・出産に関するいくつかのリスクも理解しておく必要があります。

凍結・融解による卵子の質の低下、破損リスク

卵子凍結技術は飛躍的に進歩しており、特に「ガラス化凍結法」という急速凍結法が主流になってからは、凍結・融解による卵子へのダメージは大幅に軽減されています。
しかし、完全にリスクがないわけではありません。卵子は非常に繊細な細胞であり、凍結・融解の過程で細胞内の水分が氷晶化したり、温度変化によるストレスを受けたりすることで、完全に無傷でいられるとは限りません。ごく一部の卵子では、この過程で細胞が傷ついたり、死滅したりする可能性があります。
特に、卵子の「紡錘体」という染色体が整列する重要な部分がダメージを受けると、受精後の発生に影響を与える可能性があります。また、融解後に生存していても、機能が低下してしまう可能性も考えられます。
ただし、現在のガラス化凍結法では、融解後の卵子生存率は90%以上と非常に高く、凍結しなかった卵子と比べて妊娠率に大きな差はないという報告が多くなされています。技術的なリスクは低減されていますが、「凍結した全ての卵子が無事に融解でき、質を保っているわけではない」という点を理解しておくことが重要です。

凍結卵子を使用した場合の妊娠率・出産率(成功率)

卵子凍結の最も重要な「デメリット」の一つは、凍結した卵子を使っても、必ずしも妊娠・出産できるわけではないということです。成功率は、凍結した卵子の質や数、そして使用する際の女性の年齢など、様々な要因に左右されます。
成功率を考える上で最も重要なのは、卵子を凍結した時点での女性の年齢です。若い年齢(例えば30代前半まで)で凍結した卵子は質が良く、受精能力や妊娠に至る能力が高い傾向があります。一方、高齢(例えば40歳以上)になってから凍結した卵子は、染色体異常などを持つ可能性が高くなり、たとえ凍結・融解がうまくいっても、受精や胚の発育が順調に進まず、妊娠に至りにくい傾向があります。
一般的なデータとして、30代前半で凍結した卵子を使用した場合の出産率は、卵子1個あたり数%〜10%程度と言われています。つまり、出産に至るためには、ある程度の数の卵子を凍結しておくことが推奨されます。例えば、1人の子供を得るためには、年齢にもよりますが10〜20個程度の卵子を凍結しておくと、確率が高まると考えられています。
しかし、これらの数字はあくまで統計的な平均値であり、個人差が大きいです。卵巣機能や体質、使用する際の年齢や子宮の状態などによって、結果は大きく異なります。
凍結卵子を使った体外受精の成功率は、新鮮卵子を使った場合と比較して大きな差はないとされていますが、それでも1回の移植あたりの妊娠率や出産率は、若年でも50%〜60%程度(良好胚の場合)であり、複数回の移植が必要になることも少なくありません。
凍結した卵子があるからといって「これで将来は安泰」と過度に期待するのではなく、あくまで可能性を高めるための手段であり、成功が保証されているわけではない、という現実的な理解が必要です。

複数回採卵の必要性

将来的な出産に至る可能性を高めるためには、ある程度の数の良好な卵子を凍結しておくことが望ましいとされています。前述のように、1個の凍結卵子から出産に至る確率は高くありません。
もし1回の採卵で採取できた卵子の数が少なかった場合、目標とする数を確保するために複数回採卵が必要になることがあります。特に、高齢になるほど一度に採れる卵子の数は減り、質の良い卵子の割合も低下するため、複数回採卵が必要となる可能性が高まります。
複数回の採卵は、身体的な負担やリスク(採卵手術、OHSS、薬剤の副作用など)をその都度繰り返すことになります。また、採卵ごとに初期費用がかかるため、経済的な負担もその回数分だけ増大します。
最初に目標とする卵子数を設定し、1回の採卵でそれが達成できなかった場合の計画(追加採卵を行うかなど)や、それに伴う負担についても、事前に医師とよく話し合っておくことが重要です。

先天性異常(ダウン症など障害児)のリスクについて

卵子凍結によって生まれた子供に、先天性異常(ダウン症候群など)のリスクが高まるのではないか、という懸念を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
現在までの研究データでは、凍結保存した卵子や精子、胚を使用した体外受精によって生まれた子供に、凍結しなかった卵子や精子、胚を用いた体外受精や、自然妊娠の場合と比較して、先天性異常のリスクが高まるという明確な証拠は示されていません
日本の産婦人科医会や生殖医学会などの見解も、凍結技術自体が先天性異常のリスクを上昇させるというデータはない、というものです。
ただし、先天性異常のリスクは、主に卵子または精子の質の低下、特に卵子の質の低下と関連が深いです。そして、卵子の質は女性の年齢とともに低下します。つまり、高齢になってから凍結卵子を使用する場合、それは「高齢での出産」にあたるため、高齢出産に伴う先天性異常(特にダウン症候群のような染色体異常)のリスクは、自然妊娠や新鮮卵子による体外受精で高齢出産する場合と同様に存在します
卵子凍結は「卵子の若さを保存する」技術であり、将来使用する際にその「凍結時の年齢の卵子の質」を反映しますが、出産時の母体の年齢に伴うリスク(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開率の上昇など)は存在します。
先天性異常のリスクについて不安がある場合は、専門家によく相談し、正確な情報を得ることが大切です。

卵子凍結で何歳まで産める?

卵子凍結によって、理論上は閉経後でも妊娠・出産が可能になります。なぜなら、卵子凍結は将来使用する際にその「凍結時の年齢の卵子の質」を反映するため、若い頃に凍結した卵子を使えば、高齢になってからでも若い質の卵子による妊娠が可能になるからです。
しかし、実際に妊娠・出産が可能かどうかは、卵子の質だけでなく、妊娠・出産を維持するための母体の状態にも大きく左右されます。妊娠・出産は母体への負担が大きいため、ある一定以上の年齢になると、たとえ凍結卵子があっても、母体の健康状態や合併症のリスクを考慮して、生殖補助医療による妊娠・出産が難しくなる場合があります。
多くの医療機関では、生殖補助医療による胚移植の年齢上限を定めています。これは、高齢妊娠・出産に伴う母体や胎児のリスクが高まるためです。例えば、日本産科婦人科学会は、倫理的な観点から45歳を上限の目安として示していますが、個々のクリニックによって方針は異なります。中には40代後半や50歳を上限としている施設もありますが、非常に慎重な検討が必要です。
したがって、卵子凍結は卵子の寿命を延ばすものではありますが、「何歳になっても産める」というわけではありません。実際に妊娠を目指す際の母体の年齢上限や、その際の健康状態の重要性を理解しておく必要があります。

卵子凍結は意味ない?と言われる理由

卵子凍結に対して「意味ない」「お金の無駄」といった否定的な意見を聞くことがあります。これは、主に以下の二つの理由から来ていると考えられます。

  1. 凍結した卵子を結局使わないケースがあるため:卵子凍結は将来の不妊に備えるためのものですが、凍結後に自然妊娠できた、パートナーが見つからなかった、将来の状況が変わって子供を持つ選択をしなかったなど、様々な理由で凍結した卵子を使用しない女性も一定数います。この場合、採卵や凍結、保管にかかった費用が無駄になってしまったと感じる可能性があります。
  2. 凍結卵子を使用しても妊娠・出産に至らないケースがあるため:前述のように、凍結卵子を使用した場合の妊娠率や出産率は100%ではありません。特に凍結時の年齢が高かった場合や、凍結数が少なかった場合など、融解・受精・移植を行っても妊娠に至らず、結果的に費用や身体的負担が報われなかったと感じる場合があります。

確かに、これらのケースでは、かけた費用や労力に対して期待した結果が得られない可能性があります。しかし、卵子凍結はあくまで「将来妊娠できる可能性を高めるための保険」のようなものです。万が一、将来自然妊娠が難しくなった場合に、過去の若い質の卵子を使って妊娠に挑戦できるという選択肢を持てること自体に意味がある、と考えることもできます。
「意味があるかないか」は、個人の価値観や結果によって異なります。凍結した卵子を使わずに済んだとしても、「あの時凍結しておいたからこそ、安心して将来の選択肢を持てた」と感じる方もいます。一方で、使っても妊娠できなかった場合に「お金と時間の無駄だった」と感じる方もいるでしょう。
卵子凍結は、万能な解決策ではなく、あくまで将来の可能性の一つを確保するための手段であることを理解し、その上で「自分にとって意味があるか」を十分に検討することが重要です。

精神的・倫理的な側面

卵子凍結は身体的・経済的な負担だけでなく、精神的な側面や倫理的な問題も含まれます。これらの側面も、デメリットとして認識しておく必要があります。

凍結した卵子を使用しない可能性(後悔)

卵子凍結の大きな精神的なデメリットの一つは、凍結した卵子を最終的に使用しない可能性があることです。
例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 凍結後に自然妊娠できた。
  • 将来、子供を持ちたいと思えるパートナーが見つからなかった。
  • 自身の健康状態や、将来のライフプランの変化により、子供を持つ選択をしなくなった。
  • 融解・受精・移植を行ったが、妊娠に至らなかった。
  • 保管期間の上限を迎えた、または保管料の負担が大きくなり、継続を断念した。

これらの理由で使用しなかった場合、「あんなに費用をかけたのに」「身体的負担も伴ったのに」と後悔の念に駆られる可能性があります。特に経済的な負担が大きかった場合は、その思いが強くなるかもしれません。
卵子凍結は、あくまで「将来妊娠できる可能性を高めるための選択肢を一つ増やす」行為です。凍結したからといって、将来必ずその卵子を使って妊娠しなければならないわけではありませんし、将来の状況は予測できません。使用しない可能性があることも含めて検討し、費用対効果だけでなく、「選択肢を持てる安心感」など、自分にとっての価値は何なのかを深く考える必要があります。

後悔するケースとしないケース

卵子凍結後に「後悔した」と感じる人もいれば、「凍結しておいて良かった」と感じる人もいます。どのような場合に後悔しやすく、どのような場合に後悔しにくいのでしょうか。
後悔しやすいケース

  • 費用対効果を過度に重視していた場合: 高額な費用をかけたのに、結局使わなかったり、使っても妊娠に至らなかったりした場合に、費用が無駄になったと感じやすい。
  • 将来への過度な期待を抱いていた場合: 凍結すれば必ず妊娠できると信じ込んでいた結果、そうならなかった場合の失望が大きい。
  • 十分な情報収集や検討をせず、勢いで決めてしまった場合: デメリットやリスク、自身の将来像について深く考えないまま決断し、後になって現実とのギャップに直面する。
  • パートナーや家族との話し合いが不十分だった場合: 将来、卵子を使用する段になってパートナーと意見が合わなかったり、家族の理解が得られなかったりする。
  • 保管期間や費用の継続について考慮していなかった場合: 年間の保管料が負担になったり、保管期限が迫ってきたときにどうするか決めておらず悩んだりする。

後悔しにくいケース

  • デメリットやリスクを十分に理解し、納得して決断した場合: 費用や身体的負担、成功率、使用しない可能性などを全て受け入れた上で、将来の可能性を広げることに価値を見出している。
  • 「保険」としての側面を理解している場合: 使わない可能性も織り込み済みで、万が一の場合に備えられる安心感に価値を感じている。
  • 自身のライフプランを具体的に考えた上で、卵子凍結がその一環であると位置付けた場合: 将来のキャリアやパートナーシップなど、自身の人生設計の中で卵子凍結がどのような意味を持つのかを明確にしている。
  • 信頼できるクリニックで、医師と十分な相談を重ねて決断した場合: 専門家から正確な情報提供を受け、疑問や不安を解消した上で、納得感を持って進めている。

後悔を避けるためには、メリットだけでなくデメリットを真摯に受け止め、自身の価値観や将来像と照らし合わせて、時間をかけてじっくり検討することが何よりも大切です。

保管期間に関する問題

凍結した卵子には、保管期間が定められています。多くのクリニックでは、保管期間を1年単位で契約し、毎年更新するかどうかを確認するシステムをとっています。保管期間の上限については、クリニックのポリシーや、関連する学会のガイドラインなどによって異なります。
かつては、倫理的な観点から保管期間に上限が設けられているケースが多く、例えば「最長10年」などと定められていました。しかし、近年では技術の進歩や社会的なニーズの変化を受けて、長期間の保管を認めるクリニックも増えています。日本産科婦人科学会では、凍結卵子の保存期間を「原則として女性が閉経するまで」としつつも、「日本産科婦人科学会倫理委員会登録施設の責任において、本人の意思に基づき、閉経後も保存期間を延長しうる」という見解も示しており、長期保存の方向へシフトしつつあります。
しかし、保管期間が無制限というわけではなく、クリニックによっては何歳までといった上限や、契約更新の手続きが必要です。この保管期間が長くなるほど、年間費用が積み重なるという経済的な負担が増すことになります。
また、保管期間中にクリニックが閉院したり、被災したりといった不測の事態が起こるリスクもゼロではありません。信頼できるクリニックを選ぶとともに、万が一の事態に備えた対応策(他の施設への移管など)がどのように規定されているかを確認しておくことも重要です。
そして最も重要なのは、保管期間をどのように考え、いつまで保管を続けるのか、あるいは破棄するのかという意思決定を、将来いつか自分自身で行わなければならないということです。特に、将来使用する機会がなかった場合、卵子をどうするのかという倫理的な問題にも向き合う必要があります。

家族やパートナーとの同意、関係性の変化

卵子凍結は、将来の家族形成に関わる行為であるため、現在の家族や将来のパートナーとの関係性に影響を与える可能性があります。
特に、将来のパートナーができた際に、凍結卵子の使用について話し合い、同意を得る必要が出てきます。パートナーによっては、凍結卵子を使用することに抵抗があったり、自然な妊娠を望んでいたりするかもしれません。価値観の違いから、関係性がぎくしゃくしてしまう可能性もゼロではありません。
卵子凍結を行う時点で特定のパートナーがいない場合でも、将来そのような状況が起こりうることを想定し、この技術に関する自身の考えや決断を、将来のパートナーにどのように伝え、共にどのように考えていくか、ある程度の準備をしておくことが望ましいです。
また、親などの家族に卵子凍結について話す際も、理解が得られなかったり、余計な心配をかけてしまったりすることもあります。家族からのプレッシャーや期待を感じることもあるかもしれません。
卵子凍結は個人の選択ではありますが、それが将来の家族形成に繋がる可能性がある以上、クローズドな問題ではいられません。将来的に関わる可能性のある人々とのコミュニケーションや理解醸成の重要性を認識しておくべきです。

将来への過度な期待とプレッシャー

卵子凍結は、将来妊娠できる可能性を高めるという希望を与えてくれます。しかし、この希望が「凍結したから大丈夫」「これでいつでも子供が産める」といった過度な期待に繋がってしまうと、デメリットとなる可能性があります。
前述のように、凍結卵子を使用しても妊娠・出産に至る確率は100%ではありません。また、使用できる年齢にも上限があります。過度な期待を抱いていると、期待通りの結果が得られなかった場合に、大きな失望や喪失感を感じてしまうかもしれません。
また、「せっかく凍結したのだから使わなければ」「高いお金をかけたのだから無駄にしたくない」といった気持ちから、本来望んでいないタイミングや状況で卵子を使おうとしてしまい、それが精神的なプレッシャーとなる可能性もあります。
卵子凍結はあくまで可能性を広げるツールであり、将来を保証するものではありません。この現実をしっかりと受け止め、地に足の着いた状態で将来のライフプランを考えることが、過度な期待やプレッシャーに苦しまないために重要です。

年齢によるデメリット・リスクの変化

卵子凍結のデメリットやリスクは、卵子を凍結する年齢によって大きく変化します。年齢ごとの特性を理解することは、適切なタイミングを判断する上で不可欠です。

若い年齢での凍結(メリットとデメリット)

若い年齢、例えば20代後半から30代前半で卵子凍結を行うことには、大きなメリットがあります。この時期の卵子は質が良く、染色体異常を持つリスクが低いため、採取できる卵子の数も多く、将来の妊娠・出産に繋がる可能性(成功率)が高い傾向があります。少ない採卵回数で十分な数の良好な卵子を確保できる可能性も高まります。
一方、若い年齢で凍結することにはいくつかのデメリットも存在します。
最大のデメリットは、「本当に将来、凍結卵子が必要になるか分からない」という点です。若いうちであれば、自然妊娠できる可能性もまだ十分にありますし、将来のライフプラン(結婚、キャリアなど)が固まっていないことも多いです。多額の費用と身体的負担をかけたにも関わらず、結局凍結卵子を使用しなかった場合、「無駄だった」と感じる可能性があります。特に、経済的な負担は若い世代にとっては重くのしかかるかもしれません。
また、まだ必要性を強く感じていない段階で、将来への不安から漠然と凍結を決めてしまうと、後々後悔に繋がることもあります。
若い年齢での凍結は成功率が高いという技術的なメリットがありますが、その必要性や費用対効果について、より慎重な検討が求められると言えるでしょう。

高齢での凍結(リスクと成功率)

高齢、例えば40歳以上になってから卵子凍結を検討する場合、デメリットやリスクはより顕著になります。
まず、年齢とともに卵子の質が低下し、染色体異常を持つ卵子の割合が増加します。これは、将来凍結卵子を使用した場合の受精率、胚の発育率、妊娠率、出産率が低下し、流産率が上昇することを意味します。つまり、凍結卵子を使用しても、出産に至る成功率が低くなるという大きなデメリットがあります。
また、高齢になると卵巣の機能も低下し、一度の採卵で採取できる卵子の数が少なくなる傾向があります。十分な数の卵子を確保するためには、複数回採卵が必要になる可能性が高く、その都度、身体的・経済的な負担を繰り返すことになります。それでも、若い頃に比べて十分な数の良好な卵子が得られない可能性も高まります。
さらに、高齢での採卵手術は、若年者と比較してリスクがわずかに高まる可能性も否定できません。そして、たとえ若い頃に凍結した卵子を使用するとしても、実際に妊娠・出産を行う際の母体の年齢が高いため、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症リスク、帝王切開率の上昇といった高齢出産に伴うリスクが存在します。
高齢での卵子凍結は、若い頃に比べて成功率が低く、身体的・経済的な負担も大きくなるというデメリットがあります。それでも将来の可能性を少しでも高めたいという場合は、医師とリスクや現実的な成功率について十分に話し合い、納得した上で進めることが重要です。

卵子凍結に適した年齢とは(何歳がベスト?)

卵子凍結に適した年齢は、個人のライフプランや価値観によって異なりますが、医学的な観点から見ると、卵子の質が比較的良く、かつ将来の必要性も視野に入ってくる30代前半が一つの目安として推奨されることが多いです。
この年齢であれば、

  • 卵子の質がまだ高く、染色体異常のリスクも比較的低い。
  • 一度の採卵で、将来出産に至るために必要な数の卵子を確保できる可能性が高い。
  • 身体的な負担やOHSSのリスクも、若年者に比べて大きく高まるわけではない。
  • 将来のライフプランについて、ある程度具体的に考え始める年齢であり、卵子凍結の必要性を現実的に判断しやすくなる。

もちろん、30代後半でも卵子凍結は可能であり、40歳を過ぎてからでも一定数の良好な卵子が採取できる可能性はあります。しかし、年齢が高くなるほど、前述のデメリット(成功率の低下、複数回採卵の必要性、費用の増加など)は大きくなります。
逆に、20代後半などさらに若い年齢で凍結することも可能ですが、費用対効果や使用しないリスクについて慎重な検討が必要です。
「何歳がベストか」は一概には言えませんが、医学的な成功率と、自身のライフプランや経済状況を総合的に考慮して判断する必要があります。まずは信頼できるクリニックで、医師に相談してみることをお勧めします。医師は、個々の年齢、卵巣機能、既往歴などを踏まえて、最適なタイミングや治療計画についてアドバイスしてくれるはずです。

卵子凍結のデメリットを軽減するために

卵子凍結に伴うデメリットを完全にゼロにすることは難しいですが、それらを軽減し、後悔のない選択をするためにできることがあります。

信頼できるクリニック選びのポイント

卵子凍結は、高度な技術と専門知識を要する医療行為です。クリニック選びは、治療の安全性や成功率、そして精神的な安心感にも大きく影響します。デメリットを軽減するためにも、信頼できるクリニックを選ぶことが非常に重要です。以下のポイントを参考にしてください。

  • 生殖医療における実績と経験: 卵子凍結を含む生殖補助医療(ART)に特化したクリニックや、豊富な実績を持つクリニックを選びましょう。医師や胚培養士の技術力は、採卵の質や卵子の凍結・融解の成功率に直結します。クリニックのウェブサイトなどで、実績や専門医の在籍状況などを確認しましょう。
  • 十分な説明とカウンセリング: 卵子凍結のメリットだけでなく、デメリット、リスク、費用、成功率、保管期間などについて、納得がいくまで丁寧に説明してくれるクリニックを選びましょう。疑問や不安に対して誠実に対応してくれるかも重要なポイントです。カウンセラーや専門の相談員がいるかも確認すると良いでしょう。
  • 明確な費用提示: 治療にかかる費用(初期費用、保管料、将来の融解・受精・移植費用など)について、内訳を明確に提示し、説明してくれるクリニックを選びましょう。後から想定外の費用が発生しないよう、事前にしっかりと確認することが大切です。
  • 設備の充実度: 卵子の凍結・融解や培養には高度な設備が必要です。最新の技術(ガラス化凍結法など)に対応しているか、品質管理がしっかり行われているかなども、可能であれば確認したい点です。
  • 通いやすさ: 採卵周期中は、定期的な通院が必要になります。自宅や職場からのアクセスが良いかどうかも、負担を軽減する上で考慮に入れると良いでしょう。
  • 保管に関する規約: 卵子の保管期間、更新方法、費用、そして万が一の際の対応(クリニックの閉院や被災など)について、規約が明確であるかを確認しましょう。

複数のクリニックの情報を集め、可能であれば実際にカウンセリングを受けて比較検討することをお勧めします。

十分な情報収集と医師との相談

卵子凍結を検討する上で最も大切なことの一つは、十分な情報収集を行い、信頼できる医師とじっくり相談することです。
インターネットや書籍などで情報を集めることはもちろん重要ですが、情報の中には不正確なものや古いもの、偏ったものも含まれている可能性があります。特に医療情報は日々更新されるため、最新かつ正確な情報源(学会のガイドライン、公的な機関の情報、信頼できる医療機関のウェブサイトなど)を選ぶことが大切です。
そして、集めた情報を元に、必ず専門医に相談しましょう。医師は、あなたの年齢、卵巣機能(AMH値など)、健康状態、既往歴などを総合的に評価し、あなたにとっての卵子凍結のメリット・デメリット、現実的な成功率、かかる費用や期間、そして考えられるリスクについて、個別に詳しく説明してくれます。

  • 医師に質問すべきことの例:
    • 私の年齢で、どれくらいの数の卵子を採取できそうですか?
    • 将来出産に至る確率はどれくらいですか?(年齢別の一般的な成功率や、私のAMH値などを考慮した目安)
    • 採卵手術やOHSS、薬剤の副作用などのリスクについて詳しく教えてください。
    • 費用は総額でどれくらいかかりますか?内訳はどうなっていますか?
    • 卵子の保管期間はどれくらいですか?年間費用は?
    • もし複数回採卵が必要になった場合、どのようなスケジュールで、費用はどれくらいかかりますか?
    • 凍結卵子を使用する場合、何歳まで可能ですか?その際のリスクは?
    • 他の選択肢(例えば、胚凍結や若年卵巣組織凍結など)について教えてください。

自分の疑問や不安を率直に伝え、納得がいくまで質問を繰り返しましょう。医師との信頼関係を築くことが、安心して治療を進める上で不可欠です。また、可能であればパートナーや家族とも一緒に相談に行くと、共通理解を深めることができます。

デメリットだけでなくメリットも理解する重要性

卵子凍結のデメリットに焦点を当てて解説してきましたが、公平な判断をするためには、メリットもしっかりと理解しておくことが重要です。
卵子凍結の最大のメリットは、将来、妊娠・出産できる可能性を広げることができるという点です。特に、将来的に卵子の質が低下する前に凍結しておくことで、年齢を重ねてから自然妊娠が難しくなった場合でも、若い頃の質の良い卵子を使って妊娠に挑戦できるという選択肢を持つことができます。
これにより、以下のようなメリットが得られます。

  • 将来の不妊への不安軽減: 「もし将来子供が欲しくなったときに、もう卵子が残っていなかったらどうしよう」という漠然とした不安を和らげることができます。
  • ライフプランの柔軟性向上: 結婚や出産にとらわれすぎず、キャリア形成や学業、パートナーとの関係性など、自身の人生の選択肢をより自由に、柔軟に追求しやすくなります。
  • 心理的な安心感: 将来への備えがあるという安心感は、日々の生活や精神的なゆとりにつながることもあります。

デメリットだけを見て卵子凍結を諦めてしまうのではなく、デメリットとメリットの両方をバランス良く理解し、天秤にかけることが大切です。ご自身の価値観、ライフプラン、経済状況、そして将来への思いなど、様々な要素を総合的に考慮し、「自分にとって、デメリットを上回るメリットがあるか」をじっくりと検討しましょう。

卵子凍結に関するよくある質問

卵子凍結を検討している方がよく抱く疑問について、改めて回答します。

卵子を凍結すると何が危険ですか?

卵子を凍結する行為自体は、確立された技術であり、それ自体が直接的に危険なわけではありません。しかし、卵子凍結を行う過程や、凍結した卵子を将来使用する際に、いくつかのリスクやデメリットが伴います。
主なリスク・デメリットは以下の通りです。

  • 採卵手術のリスク: 出血、感染、周辺臓器損傷など、手術に伴う合併症のリスク(稀)。
  • OHSSのリスク: 卵巣刺激による過剰反応(軽度が多いが、重度化する可能性も)。
  • 薬剤の副作用: ホルモン剤による吐き気、頭痛、倦怠感などの一時的な症状。
  • 凍結・融解による卵子へのダメージ: ごく一部の卵子がこの過程で質が低下したり、破損したりする可能性。
  • 妊娠・出産に至らない可能性: 凍結卵子を使用しても、必ずしも妊娠・出産できるわけではない(成功率は凍結時の年齢や凍結数に依存)。
  • 経済的負担: 高額な初期費用、長期にわたる保管費用、将来の融解・受精・移植費用。
  • 精神的負担: 凍結卵子を使用しない可能性による後悔、将来への過度な期待やプレッシャー。

これらのリスクはゼロではありませんが、経験豊富な医師や設備の整ったクリニックを選び、十分に情報を得て納得した上で進めることで、リスクを最小限に抑えることが可能です。

卵子を冷凍するリスクは?

「卵子を冷凍するリスク」は、前述の「卵子を凍結すると何が危険ですか?」とほぼ同義と考えて良いでしょう。冷凍(凍結)という操作自体に伴うリスクと、その前後の医療行為や将来の使用に関するリスクを含みます。
具体的には、

  • 凍結・融解過程での卵子へのダメージ:ごく稀に、卵子が冷凍・解凍の過程でダメージを受け、生存しなかったり、質が低下したりするリスクがあります。ただし、最新のガラス化凍結法ではこのリスクはかなり低くなっています。
  • 技術的な問題: 非常に稀ですが、停電や機器の故障などにより、保管中の卵子に影響が出る可能性も理論上はゼロではありません。信頼できるクリニックでは、このような事態に備えた対策(予備電源、遠隔監視システム、災害対策など)を講じています。

これらの「冷凍する」という直接的な操作に関するリスクは、医療機関の技術力や管理体制によって大きく左右されます。信頼できるクリニックを選ぶことが、このリスクを最小限に抑える上で重要です。

卵子凍結でダウン症の確率が上がる?

結論から言うと、卵子凍結によってダウン症候群などの先天性異常の確率が上がるとする明確な科学的根拠は、現在のところありません。
ダウン症候群は、主に卵子の染色体異常(21番染色体が1本多い)によって起こります。卵子の染色体異常の頻度は、女性の年齢とともに上昇することが知られています。つまり、高齢で妊娠・出産するほど、ダウン症候群のお子さんが生まれる確率は高くなります。
卵子凍結は、卵子の質が比較的若い頃に凍結しておくことで、将来使用する際に「凍結時の年齢の質の卵子」を使えるようにする技術です。したがって、例えば30歳で凍結した卵子を40歳で使用する場合、その卵子が持っている染色体異常のリスクは30歳時点のリスクに近いと考えられます。
ただし、実際に妊娠・出産を行うのは40歳の母体です。高齢妊娠には、母体側の合併症リスク(妊娠高血圧症候群など)が高まることが知られています。先天性異常のリスクは、主に卵子の質(年齢)に依存すると考えられていますが、完全に母体の年齢が無関係であるとは断言できません。しかし、少なくとも「凍結という操作自体」がダウン症のリスクを上げるというデータは、現在のところ報告されていません。
不安な場合は、専門医に最新の知見や統計データについて確認することをお勧めします。

まとめ:卵子凍結のデメリットを理解し、後悔のない選択を

卵子凍結は、将来の妊娠に備えるための有効な手段となり得ますが、検討する際にはメリットだけでなく、デメリットについても十分に理解することが不可欠です。
主なデメリットとしては、採卵手術や薬剤に伴う身体的な負担やリスク、数十万円から数百万円にも及ぶ経済的な負担、そして凍結しても必ずしも妊娠・出産できるわけではないという将来的なリスク、さらには凍結した卵子を使用しない可能性から生じる精神的な後悔などが挙げられます。これらのデメリットは、特に凍結する年齢によってその程度が変化します。
しかし、これらのデメリットを知った上で、後悔のない選択をするための方法もあります。信頼できる実績のあるクリニックを選び、医師からご自身の状況に合わせた正確な情報や説明を十分に受け、疑問や不安を解消することが大切です。また、卵子凍結が提供する「将来の妊娠という選択肢を持てる」というメリットと、それに伴うデメリットを総合的に比較検討し、ご自身のライフプランや価値観と照らし合わせて、主体的に判断することが何よりも重要です。
卵子凍結は万能な魔法ではありませんが、情報武装し、専門家と連携しながら賢く利用すれば、確かに将来の可能性を広げる力を持っています。この記事が、あなたが卵子凍結について深く理解し、納得のいく決断をするための一助となれば幸いです。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法を推奨したり、個別の診断や治療を保証したりするものではありません。卵子凍結を含む生殖医療に関する判断は、必ず専門の医療機関で医師の診察を受け、ご自身の状況に基づいた十分な説明と相談の上で行ってください。医療技術や費用、助成制度に関する情報は変更される可能性があります。常に最新の情報をご確認ください。

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