生理痛に悩む女性にとって、生理痛薬はつらい症状を和らげる大切なアイテムです。しかし、薬の種類が多くてどれを選べば良いかわからない、正しい飲み方が分からないという方も少なくありません。この記事では、生理痛薬の種類や効果、ご自身の症状に合った薬の選び方、効果的な飲み方、そして薬が効かない場合の対処法まで、薬剤師の視点から詳しく解説します。つらい生理痛を少しでも楽にするために、ぜひ参考にしてください。
生理痛薬の種類と効果
生理痛は、子宮を収縮させる「プロスタグランジン」という物質の分泌によって引き起こされることが多いとされています。生理痛薬の多くは、このプロスタグランジンの生成を抑えることで痛みを和らげる効果があります。ここでは、代表的な鎮痛成分と漢方薬について見ていきましょう。
鎮痛成分による分類
生理痛薬に含まれる主な鎮痛成分は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれるグループに属するものが多いです。NSAIDsは、体内で炎症や痛みを引き起こすプロスタグランジンという物質を作る酵素(シクロオキシゲナーゼ:COX)の働きを阻害することで効果を発揮します。
一口にNSAIDsといっても、成分によってCOXへの作用の仕方や、効果の強さ、副作用の出やすさなどが異なります。
生理痛に効く主な成分
市販されている生理痛薬に含まれる代表的な鎮痛成分は以下の通りです。それぞれの特徴を理解して、ご自身の痛みに合った成分を選びましょう。
イブプロフェン
イブプロフェンは、プロスタグランジンの生成を抑える効果が高く、特に痛みの原因物質にしっかり作用することで知られています。速やかに吸収されやすい特徴があり、比較的早く効果が現れると感じる方が多い成分です。主に痛みを抑える作用と炎症を抑える作用を持ち、生理痛のほかにも頭痛、関節痛、筋肉痛など幅広い痛みに使用されます。比較的胃への負担が少ないとされていますが、全くないわけではありません。
ロキソプロフェン
ロキソプロフェンも、イブプロフェンと同様にNSAIDsの一種で、強い鎮痛効果が期待できます。「プロドラッグ」という形になっており、服用後に体内で効果を発揮する形に変化することで、胃への負担を軽減する工夫がされています。速効性も期待できる成分ですが、人によっては胃痛やむかつきなどの副作用が現れることもあります。もともとは医療用として使われていましたが、現在は市販薬としても広く利用されています。
アセトアミノフェン
アセトアミノフェンは、他のNSAIDsとは少し作用機序が異なり、主に脳の中枢神経に作用して痛みの感覚を和らげると考えられています。炎症を抑える作用はほとんどありませんが、鎮痛効果と解熱効果があります。他のNSAIDsに比べて胃腸への負担が非常に少なく、眠くなる成分が含まれていないことが多いのが特徴です。ただし、効果の強さはイブプロフェンやロキソプロフェンに比べてマイルドであるため、比較的軽度な生理痛に適しています。空腹時でも服用しやすいとされています。
その他の成分
上記の主要成分の他に、生理痛薬には痛みを和らげる補助的な成分や、生理痛に伴う他の症状に効果を発揮する成分が含まれていることがあります。
- 鎮痙成分: 子宮の過度な収縮による「キリキリとした痛み」に有効な成分です。ブチルスコポラミン臭化物などがこれにあたります。痛みのタイプが「差し込むような、痙攣するような痛み」の場合は、鎮痛成分に加えて鎮痙成分が含まれている薬が効果的なことがあります。
- カフェイン: 鎮痛成分の働きを助け、効果を高める作用があると言われています。また、眠気やだるさを和らげる効果も期待できます。ただし、カフェインに敏感な方や、夜間の服用には注意が必要です。
- 眠気をおさえる成分: 無水カフェインなどが含まれていることがあります。
- 胃粘膜保護成分: アルミニウムやマグネシウムの化合物、合成ヒドロタルサイトなどが含まれており、鎮痛成分による胃への負担を和らげる目的で配合されています。
- ビタミンB群: 疲労回復を助ける目的で配合されることがあります。
これらの補助成分は、製品によって配合されているかどうかが異なります。ご自身の症状に合わせて、成分表をよく確認して選びましょう。
漢方薬について
西洋薬の鎮痛剤とは異なり、漢方薬は体全体のバランスを整えることで生理痛の根本的な改善を目指すという考え方に基づいています。生理痛の原因を「冷え」「血行不良(瘀血)」などと捉え、それぞれの体質や症状に合わせて処方が異なります。
生理痛によく用いられる代表的な漢方薬としては、以下のようなものがあります。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん): 冷え性でむくみやすく、貧血気味の方の生理痛に適しています。血行を促進し、体を温める作用があるとされます。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん): ストレスやイライラ、精神的な不安定さを伴う生理痛に適しています。気の巡りを良くし、精神を安定させる作用があるとされます。
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん): 比較的体力があり、のぼせや肩こりを伴う生理痛に適しています。血行不良を改善する作用があるとされます。
漢方薬は即効性よりも継続して服用することで体質を改善していくというアプローチのため、痛みが始まってからすぐに効くというよりは、生理期間を通して症状が和らぐことを期待する薬です。また、個人の体質によって合う合わないがあるため、自己判断せずに専門家(医師や薬剤師、登録販売者)に相談することをおすすめします。
生理痛薬の適切な選び方
様々な種類の生理痛薬の中から、自分にぴったりの一錠を見つけるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
痛みのタイプ・強さで選ぶ
生理痛の感じ方は人それぞれです。痛みのタイプや強さに合わせて、適した成分を選びましょう。
- ズキズキ、ガンガンする痛み(炎症が強い場合): プロスタグランジンによる炎症が主な原因と考えられるため、イブプロフェンやロキソプロフェンなど、炎症を抑える作用が強いNSAIDsが適しています。
- キリキリ、シクシク、差し込むような痛み(子宮の収縮が強い場合): 鎮痛成分に加えて、子宮の過度な収縮を抑える鎮痙成分(ブチルスコポラミン臭化物など)が配合された薬が効果的な場合があります。
- 比較的軽度な痛み、胃が弱い、眠くなると困る: 胃への負担が少なく、炎症を抑える作用がマイルドなアセトアミノフェンが適しています。
痛みの強さがひどい場合は、より効果が期待できるイブプロフェンやロキソプロフェンを主成分とする薬を検討できます。ただし、効果が強い成分ほど副作用のリスクも高まる可能性があるため注意が必要です。
症状に合わせて選ぶ(頭痛、吐き気など)
生理痛は下腹部痛だけでなく、頭痛、腰痛、吐き気、だるさ、眠気などを伴うことがあります。複数の症状がある場合は、それらの症状にも効果を発揮する成分が含まれているか確認しましょう。
主な症状 | 適した成分・工夫 |
---|---|
下腹部痛(ズキズキ) | イブプロフェン、ロキソプロフェンなどNSAIDs |
下腹部痛(キリキリ) | 鎮痙成分(ブチルスコポラミン臭化物など)配合薬 + 鎮痛成分 |
頭痛 | イブプロフェン、ロキソプロフェン、アセトアミノフェンなど(生理痛薬に含まれる成分) |
腰痛 | イブプロフェン、ロキソプロフェンなどNSAIDs |
吐き気 | 胃粘膜保護成分配合薬、アセトアミノフェン(胃への負担が少ない) |
眠気・だるさ | カフェイン配合薬(ただし就寝前は注意) |
速効性で選ぶ
生理痛の痛みが強い時、早く効果が出てほしいと思うものです。一般的に、錠剤やカプセルよりも、液剤や速崩錠(口の中で溶けるタイプ)の方が吸収が早く、効果の発現も早い傾向があります。また、成分によっても吸収速度に違いがあります。例えば、イブプロフェンは比較的早く吸収されると言われています。ただし、体質や胃腸の状態によって個人差はあります。
眠くなりにくい薬を選ぶ
仕事中や運転中など、眠くなると困る場面では、眠気を引き起こす可能性のある成分が含まれていない薬を選ぶことが重要です。多くの生理痛薬の鎮痛成分自体は眠気を引き起こしにくいとされていますが、まれに総合感冒薬(風邪薬)など、他の目的の薬と成分が重複しており、眠くなる成分(抗ヒスタミン薬など)が含まれていることがあるため注意が必要です。製品の添付文書にある「してはいけないこと」や「相談すること」、「成分・分量」の欄をよく確認し、「眠気」に関する記載がないかチェックしましょう。アセトアミノフェン単一成分の薬は、一般的に眠くなる成分を含んでいません。
胃への負担を考慮して選ぶ
NSAIDs系の鎮痛成分は、プロスタグランジンの生成を抑える過程で、胃の粘膜を保護する働きを持つプロスタグランジンも一緒に抑えてしまうため、胃に負担をかける可能性があります。普段から胃腸が弱い方や、空腹時に薬を飲む必要がある場合は、胃への負担が少ない薬を選ぶことが望ましいです。
- アセトアミノフェン: 胃への負担が非常に少ない成分です。
- ロキソプロフェン: プロドラッグ製剤であり、胃での変化が少ないため比較的胃への負担が少ないとされています。
- 胃粘膜保護成分配合薬: 鎮痛成分と一緒に胃薬成分が配合されている薬もあります。
可能であれば食後に服用するのが望ましいですが、痛みで食事が摂れない場合は、アセトアミノフェン単一成分の薬や、胃粘膜保護成分配合薬を検討するか、薬剤師や登録販売者に相談しましょう。
体質や既往歴に合わせた注意点
持病がある方や、現在他の薬を服用している方は、生理痛薬を選ぶ際に特に注意が必要です。
- 喘息: NSAIDsは喘息発作を誘発する可能性があります(アスピリン喘息など)。過去に鎮痛剤で喘息発作を起こしたことがある方は、必ず医師や薬剤師に相談し、アセトアミノフェンを選択するなど慎重な判断が必要です。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍: 胃腸の粘膜が荒れている状態のため、NSAIDsの服用は症状を悪化させる可能性があります。必ず医師に相談してください。
- 腎臓病: NSAIDsは腎臓への血流を減少させる可能性があり、腎機能に影響を与えることがあります。腎臓病がある方は医師に相談してください。
- 心臓病、高血圧: 一部のNSAIDsは、心血管系のリスクを高める可能性が指摘されています。持病がある方は医師に相談してください。
- 他の薬との飲み合わせ: 他の鎮痛剤(成分が重複する)、血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)、一部の降圧薬、抗うつ薬など、一緒に飲むと相互作用を起こす可能性のある薬があります。現在服用中の薬がある場合は、必ず医師や薬剤師に相談し、飲み合わせを確認してください。特に、別の痛み止め(頭痛薬など)を飲んでいる場合は、成分が重複して過剰摂取になる危険があるため絶対に避けましょう。
- アレルギー: 過去に薬でアレルギー症状が出たことがある場合は、その成分や類似成分が含まれていないか確認が必要です。
安全に生理痛薬を使用するためにも、不安がある場合は必ず医療の専門家に相談することが大切です。
生理痛薬の正しい飲み方・タイミング
生理痛薬の効果を最大限に引き出し、安全に服用するためには、正しい飲み方とタイミングを知ることが重要です。
薬を飲むベストなタイミング
生理痛薬は、「痛みがひどくなってから」ではなく、「痛みが始まるか、少しでも予兆を感じたとき」に服用するのが最も効果的です。
生理痛の主な原因であるプロスタグランジンは、生理が始まる直前から分泌が増加し、分泌量が多くなると痛みが強くなります。薬は、このプロスタグランジンの生成自体を抑えることで効果を発揮します。痛みがひどくなってから薬を飲むと、すでに大量のプロスタグランジンが体内で作られてしまっているため、薬が効きにくかったり、効果が現れるまでに時間がかかったりすることがあります。
痛みの予兆(「そろそろ痛くなりそう」「生理が始まったばかりで、まだ軽い痛みだけど心配」など)を感じたら、早めに服用することで、プロスタグランジンが増えすぎるのを抑え、痛みのピークを和らげることができます。
空腹時の服用について
NSAIDs系の鎮痛剤は、胃への負担を考慮して食後に服用することが推奨されています。これは、胃の中に食べ物があることで薬の成分が胃壁に直接触れる機会が減り、胃粘膜への刺激を和らげることができるためです。
しかし、生理痛の痛みがひどくて食事が摂れない場合や、空腹時にどうしても薬を飲みたい場合もあるでしょう。その際は、以下のような対応が考えられます。
- アセトアミノフェン単一成分の薬を選ぶ: アセトアミノフェンは胃への負担が少ないため、空腹時でも比較的服用しやすいとされています。
- 胃粘膜保護成分配合薬を選ぶ: 胃薬成分が含まれているため、胃への負担軽減が期待できます。
- 少量でも何か食べてから飲む: 軽くでもいいので、パンや牛乳など何か口にしてから薬を飲むことで、胃への負担を軽減できます。
- 医師や薬剤師に相談する: 空腹時の服用について不安がある場合は、専門家に相談し、指示を仰ぎましょう。
基本的には添付文書の指示に従い、食後服用が指定されている場合は食後に飲むように心がけましょう。
用法・用量を守ることの重要性
生理痛薬の効果を十分に得るためには、製品ごとに定められた用法・用量を厳守することが非常に重要です。
- 服用回数と間隔: 1日に服用できる回数や、次に服用するまでの間隔(例: 1日3回まで、4時間以上の間隔をあけるなど)が定められています。痛みが続くからといって、勝手に服用回数を増やしたり、間隔を詰めて飲んだりすることは絶対に避けてください。体内の薬の濃度が必要以上に高くなり、重篤な副作用を引き起こすリスクが高まります。
- 1回の量: 1回に服用する錠数や量が決まっています。効果が不十分に感じても、自己判断で増量しないでください。
- 服用期間: 長期間連用することは推奨されていません。一般的に、市販薬の鎮痛剤は痛みが続く間だけ服用し、漫然と飲み続けるべきではありません。
添付文書に記載されている用法・用量は、有効性と安全性が確認された範囲で定められています。不明な点があれば、薬剤師や登録販売者に確認しましょう。用法・用量を守って正しく使用することが、生理痛薬の効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えるための基本です。
生理痛薬に関するQ&A
生理痛薬に関してよくある疑問にお答えします。
ロキソニンとイブ、どっちが効く?
「ロキソニン」はロキソプロフェン、「イブ」はイブプロフェンを主成分とする市販薬の代表的なブランド名です。(ただし、「イブ」シリーズにはイブプロフェン以外の成分を含む製品や、イブプロフェン配合でも容量が異なる製品が多数存在します。)
どちらが「効く」かは、痛みの性質や個人の体質によって異なります。
- ロキソプロフェン(ロキソニンなど): 医療用として長い実績があり、強い鎮痛効果と速効性が期待できる成分です。プロドラッグのため胃への負担も比較的少ないとされますが、副作用として胃の不調が現れることもあります。
- イブプロフェン(イブなど): ロキソプロフェンと同様に強い鎮痛・抗炎症作用を持ち、幅広い痛みに有効です。ロキソプロフェンに比べてやや効果の発現が穏やかとされることもありますが、個人差が大きいです。胃への負担はアセトアミノフェンよりは大きいですが、ロキソプロフェンよりは少ないと感じる人もいます。
どちらの成分がより効果的かは、試してみなければ分からない部分があります。初めて生理痛薬を選ぶ際は、薬剤師や登録販売者に相談し、ご自身の症状や体質に合った方を試してみるのが良いでしょう。もし一方を試して効果が不十分であれば、次に別の成分を試してみるという方法もあります。ただし、同じ成分の薬や、異なる成分でも同じ作用を持つ薬を同時に服用することは避けなければなりません。
生理痛に風邪薬は使える?
一部の風邪薬には、鎮痛成分としてアセトアミノフェンやイブプロフェンなどが含まれていることがあります。これらの成分は生理痛の痛みを和らげる効果も持つため、風邪薬を生理痛の緩和に使用できる場合もあります。
ただし、注意が必要です。
- 成分の重複: 風邪薬には、鼻水やくしゃみを抑える成分(抗ヒスタミン薬)、咳止め成分、痰を出しやすくする成分など、生理痛には不要な成分が多数含まれています。これらの成分の中には、眠気を引き起こしたり、口の渇きなどの副作用を引き起こしたりするものがあります。
- 生理痛薬との併用: 風邪薬と生理痛薬を同時に服用すると、同じ鎮痛成分を過剰に摂取してしまう危険があります。例えば、風邪薬と生理痛薬の両方にイブプロフェンが含まれている場合、それぞれの製品の用法・用量を守って飲んでも、イブプロフェン全体の量が上限を超えてしまう可能性があります。
したがって、生理痛の痛みを和らげる目的で風邪薬を「積極的に使用する」ことは推奨されません。生理痛には、生理痛に特化した薬を使用するのが最も適切です。もし手元に風邪薬しかなく、どうしても痛みがつらい場合は、含まれている鎮痛成分を確認し、その成分が単一で配合された生理痛薬と同程度の容量であることを確認の上、自己責任で使用することになりますが、基本的には推奨されません。他の薬との飲み合わせや、思わぬ副作用のリスクを避けるためにも、生理痛には生理痛薬を使用し、どちらを飲むか迷う場合は専門家に相談しましょう。
生理痛薬と一緒に飲んではいけない薬は?
生理痛薬(特にNSAIDs)には、一緒に飲むと相互作用を起こし、効果が強くなりすぎたり、副作用が出やすくなったり、あるいは効果が弱まったりする薬があります。代表的な例としては以下が挙げられます。
- 他の鎮痛剤(特にNSAIDs): 同じ種類の鎮痛成分や、同じようにプロスタグランジン合成を阻害する他のNSAIDs(例えば、イブプロフェンを飲んでいるのにロキソプロフェンを追加で飲む、など)を一緒に飲むと、成分の量が過剰になり、胃腸障害や腎機能障害などの副作用リスクが飛躍的に高まります。複数の鎮痛剤を同時に使用することは絶対に避けてください。
- 抗血栓薬(血液をサラサラにする薬): ワルファリンやアスピリン(低用量アスピリン療法で使用する場合)などとNSAIDsを併用すると、出血のリスクが高まる可能性があります。
- 一部の降圧薬: 一部の降圧薬(ACE阻害薬やARBなど)の効果を弱めてしまう可能性があります。
- 利尿薬: 利尿薬の効果を弱めたり、腎臓への負担を増したりする可能性があります。
- リチウム製剤、メトトレキサート: これらの薬剤の血中濃度を上昇させ、副作用が出やすくなる可能性があります。
これらはあくまで一例であり、他にも飲み合わせに注意が必要な薬は多数あります。現在、病院で処方された薬や他の市販薬を服用している場合は、生理痛薬を購入・服用する前に必ず医師や薬剤師、登録販売者に相談し、飲み合わせを確認してください。おくすり手帳を見せるなどして、現在服用中の全ての薬を正確に伝えることが重要です。
妊娠中・授乳中に飲める生理痛薬は?
妊娠中や授乳中の生理痛薬の使用は、お腹の赤ちゃんや母乳を介して赤ちゃんに影響を与える可能性があるため、非常に慎重な判断が必要です。
- 妊娠中: 妊娠中のNSAIDsの服用は、特に妊娠後期において、胎児の循環器系や腎臓に影響を与える可能性があることが指摘されています。妊娠の週数によってリスクが異なりますが、自己判断での服用は絶対に避けるべきです。アセトアミノフェンは妊娠中でも比較的安全に使用できるとされていますが、それでも医師の指示なく安易に服用すべきではありません。妊娠中の生理痛については、必ず産婦人科医に相談し、安全な対処法や処方薬についてアドバイスを受けてください。
- 授乳中: 母乳に移行する成分もあります。一般的に、アセトアミノフェンやイブプロフェンは母乳への移行が比較的少ないとされ、医師や薬剤師の判断のもと、授乳中でも使用可能な場合があります。しかし、ロキソプロフェンなど、他の成分についてはより注意が必要な場合があります。授乳中の生理痛についても、自己判断で市販薬を服用するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談し、安全な薬の種類や服用量について指示を仰ぎましょう。
妊娠・授乳中は、薬の影響が自分だけでなく赤ちゃんにも及ぶ可能性があるため、普段以上に慎重になる必要があります。必ず医療の専門家と相談してください。
生理痛薬が効かない場合の対処法
適切な生理痛薬を選び、正しいタイミングで服用しても痛みが十分に和らがない場合もあります。その際に考えられる原因と、薬以外の対処法について解説します。
薬が効かない原因
生理痛薬が効かない、または効果が弱いと感じる場合、いくつかの原因が考えられます。
- 痛みの原因がプロスタグランジンだけではない: 生理痛には、子宮の収縮以外にも、体の冷え、骨盤の歪み、ストレスなど様々な要因が関わっています。薬はプロスタグランジンの生成を抑えるのには有効ですが、それ以外の原因による痛みには効果が限定的かもしれません。
- 薬の選択が合っていない: 痛みのタイプ(ズキズキ、キリキリなど)や強さに対して、選んだ薬の成分や強さが合っていない可能性があります。例えば、子宮の痙攣による痛みが強いのに、鎮痙成分が含まれていない薬を飲んでいる場合などです。
- 服用タイミングが遅い: 痛みがピークに達してから薬を飲んでも、プロスタグランジンの生成を抑えきれず、効果が得られにくいことがあります。痛みの予兆の段階で飲むことが重要です。
- 用法・用量を守っていない: 用量を少なくしすぎたり、服用間隔が短すぎたり(効かないからといって短時間で何度も飲んだり)すると、適切に効果が得られないだけでなく、副作用のリスクも高まります。
- 薬の成分が体に合わない: 特定の成分が体質的に効きにくい、あるいは吸収されにくいといった個人差も考えられます。
- 背景に病気が隠れている: 生理痛だと思っていた痛みが、子宮内膜症や子宮筋腫といった別の婦人科疾患によるものである場合、市販の生理痛薬だけでは痛みを十分にコントロールできないことがあります。
薬以外の生理痛の緩和方法
薬だけに頼らず、日常生活の中で生理痛を和らげるための様々な方法があります。薬と併用することで、より効果を実感できることもあります。
温める
体を温めることは、生理痛の緩和に非常に有効です。温めることで血行が促進され、子宮や骨盤周りの筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減されると考えられています。
- 使い捨てカイロ: 下腹部や腰、仙骨(お尻の割れ目の少し上あたり)に貼ると効果的です。直接肌に貼らず、衣類の上から使用し、低温やけどに注意しましょう。
- 湯たんぽ・ホットパック: 自宅にいる時にゆっくり温めたい場合に適しています。
- 入浴: ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、体全体が温まりリラックス効果も得られます。アロマオイルなどを加えて香りを楽しみながら入浴するのも良いでしょう。
- 温かい飲み物: 生姜湯、ハーブティー(カモミールなど)、ココアなど、体を温める効果のある飲み物を摂るのもおすすめです。
ツボ押し
生理痛に効果があるとされるツボを刺激することも、痛みの緩和に役立ちます。リラックスした状態で行いましょう。
- 三陰交(さんいんこう): 内くるぶしの中心から指4本分ほど上の、骨の後ろ側に位置するツボです。婦人科系の疾患に広く用いられる代表的なツボで、生理痛、生理不順、冷え性などに効果があるとされます。
- 合谷(ごうこく): 手の甲側、親指と人差し指の骨の付け根の間にあるツボです。全身の痛みに効果があるとされ、生理痛にも用いられます。ただし、妊娠中は刺激を避けるべきツボでもあります。
- 血海(けっかい): 膝のお皿の内側の上端から指3本分ほど上に位置するツボです。血行を良くする効果があると言われ、生理痛や生理不順に用いられます。
これらのツボを、気持ち良いと感じる程度の強さで、ゆっくりと数回押したり揉んだりしてみましょう。
軽い運動
適度な運動は血行を促進し、生理痛の緩和につながることがあります。痛みがひどい時は無理せず休みますが、動けるくらいの痛みの時は試してみましょう。
- ウォーキング: 無理のない範囲で散歩をすることで、気分転換にもなり、血行も良くなります。
- ストレッチ: 特に腰やお腹周りの軽いストレッチは、筋肉の緊張を和らげる効果があります。
- ヨガ: 生理痛に特化したポーズや、リラックス効果の高いヨガは、心身の緊張をほぐし痛みを和らげることが期待できます。
- 骨盤周りの体操: 骨盤周りの血行を促進する簡単な体操も有効です。
ただし、激しい運動はかえって体を疲れさせたり、痛みを悪化させたりする可能性があるので避けましょう。
食事や生活習慣の改善
日頃の食事や生活習慣を見直すことも、生理痛の軽減につながります。
- 体を温める食材を摂る: 生姜、根菜類、香味野菜(ネギ、ニラなど)など、体を温める効果のある食材を意識的に摂りましょう。
- 冷たい飲食物や体を冷やす食材を控える: アイスクリーム、冷たい飲み物、夏の野菜(きゅうり、トマトなど)の摂りすぎに注意しましょう。
- バランスの取れた食事: 貧血予防のために鉄分を多く含む食品(レバー、ほうれん草など)を摂ったり、ビタミンやミネラルをバランス良く摂取したりすることが大切です。
- カフェインやアルコールの摂取を控える: 摂りすぎは体を冷やしたり、血行を悪くしたりする可能性があるため、生理期間中は控えるのが望ましいです。
- 質の良い睡眠: 十分な睡眠をとることは、体の回復やホルモンバランスの安定に繋がります。
- ストレスマネジメント: ストレスは生理痛を悪化させる要因の一つです。リラックスできる時間を作り、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
- 体を締め付ける服装を避ける: 締め付けの強い下着や服装は血行を妨げ、痛みを悪化させる可能性があります。ゆったりとした服装を選びましょう。
これらの生活習慣の改善は、生理痛だけでなく、月経前症候群(PMS)の症状緩和や、全体的な健康維持にも繋がります。すぐに効果が出なくても、継続することで体質が改善される可能性があります。
病院を受診する目安
市販の生理痛薬やセルフケアを試しても痛みが改善しない場合や、痛みが日常生活に大きな支障をきたしている場合は、早めに婦人科を受診することが重要です。生理痛の背景に別の病気が隠れている可能性もあるため、専門医の診断を受けることが大切です。
市販薬で改善しない場合
市販の生理痛薬を正しい用法・用量で数ヶ月間試しても、痛みが十分に和らがない、または痛みがだんだんひどくなっていると感じる場合は、一度婦人科を受診しましょう。市販薬で対応できる範囲を超えているか、あるいは薬が効きにくいタイプの痛みである可能性があります。
痛みがひどい・日常生活に支障がある場合
生理痛が原因で、以下のような状況に頻繁になる場合は、月経困難症の可能性や、他の病気が隠れている可能性が高いため、すぐに受診を検討してください。
- 学校や仕事を休まなければならない
- 痛みがひどくて起き上がれない、動けない
- 吐き気や嘔吐、めまい、貧血などがひどい
- 痛みが年々ひどくなっている
- 痛みの期間が長くなってきた
- 生理期間以外にも下腹部や腰が痛むことがある
これらの症状は、単なる生理痛ではなく、治療が必要な婦人科疾患(子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症など)が原因である可能性も考えられます。早期に診断を受け、適切な治療を開始することが重要です。
鎮痛剤が手放せない状態
生理期間中、常に鎮痛剤を飲んでいないと耐えられない、鎮痛剤の量が増えている、鎮痛剤を飲む頻度が高い、といった状態も、医療機関を受診する目安となります。鎮痛剤に頼りすぎると、胃腸障害などの副作用リスクが高まるだけでなく、痛みの根本原因が見過ごされてしまう可能性があります。また、一部の鎮痛剤を連用することで、「薬剤誘発性の頭痛」を引き起こすケースもあります。医師に相談し、痛みの原因を探り、より根本的な治療法について話し合うことが大切です。
月経困難症の可能性について
生理期間中に日常生活を送るのが困難なほどのひどい生理痛は、「月経困難症」と呼ばれます。月経困難症には、特に病気がないにもかかわらず生理痛が起こる「機能性月経困難症」と、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因で起こる「器質性月経困難症」があります。
器質性月経困難症の場合、原因となっている病気を治療しない限り、痛みが改善しないだけでなく、不妊などの問題に繋がる可能性もあります。生理痛は「誰にでもあるものだから」と我慢せず、ひどい場合は必ず医療機関を受診し、月経困難症の診断を受けるとともに、その原因に病気が隠れていないかを確認してもらいましょう。医師と相談しながら、適切な治療法(ホルモン療法や低用量ピルなど)を選択することで、生理痛から解放される可能性があります。
薬剤師監修|生理痛薬に関するまとめ
生理痛は多くの女性が経験するつらい症状ですが、適切な生理痛薬の選択と使用、そして必要に応じた病院受診によって、その痛みを大きく和らげることが可能です。
- 生理痛薬には、プロスタグランジンの生成を抑えるNSAIDs(イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)やアセトアミノフェン、そして体質改善を目指す漢方薬など、様々な種類があります。
- ご自身の痛みのタイプ(ズキズキ、キリキリなど)や強さ、伴う症状(頭痛、吐き気など)、体質(胃の弱さ、眠気など)に合わせて、最適な成分や配合の薬を選びましょう。迷ったときは、薬剤師や登録販売者に相談するのが最も確実です。
- 生理痛薬は、痛みがひどくなってから飲むのではなく、痛みの「予兆」を感じた段階で早めに服用することが効果的です。
- 製品に記載された用法・用量を必ず守り、過剰摂取や自己判断での増量は絶対に避けてください。
- 現在他の薬を服用している場合や、既往歴がある場合は、必ず医師や薬剤師に相談し、飲み合わせや安全性を確認しましょう。
- 妊娠中や授乳中の方は、自己判断せず必ず医師に相談してください。
- 市販薬が効かない場合や、痛みが日常生活に支障をきたすほどひどい場合は、我慢せず婦人科を受診しましょう。月経困難症や、その背景に隠れた婦人科疾患の可能性を調べてもらうことが重要です。
- 薬だけでなく、体を温める、ツボ押し、軽い運動、食事や生活習慣の見直しといったセルフケアも有効です。薬と併用することで痛みの緩和に繋がることがあります。
生理痛は一人で抱え込まず、適切な知識を持って対処し、必要であれば専門家の助けを借りましょう。ご自身に合った方法を見つけて、生理期間を少しでも快適に過ごせるようになることを願っています。
免責事項: この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の製品の効果を保証するものではありません。また、個々の症状に対する診断や治療を推奨するものではありません。生理痛の症状や薬の使用については、必ず医師や薬剤師、登録販売者にご相談ください。