女性の体は神秘的で、その中でも毎月訪れる生理(月経)は、健康状態を示す大切なサインです。生理周期を正しく理解することは、体調管理はもちろん、妊娠計画や婦人科系の病気の早期発見にもつながります。しかし、「生理周期ってどう数えるの?」「私の周期は正常なの?」「なぜ生理が不規則になるんだろう?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。この記事では、生理周期の基本から、正常な周期の判断基準、計算方法、そして周期が乱れる原因とその対処法まで、分かりやすく解説します。あなたの体のリズムを知り、より健やかな毎日を送るための参考にしてください。
生理周期とは?基本概念を理解
生理周期の定義と数え方
生理周期とは、生理が始まった日から次の生理が始まる前日までの日数を指します。これは、医学的に最も一般的に使われる生理周期の定義です。
例えば、1月1日に生理が始まり、次の生理が1月28日に始まった場合、周期は27日(1月1日~1月27日)となります。この日数には、生理期間中の日数も含まれます。生理が終わってから次の生理が始まるまでの日数と勘違いしやすいので注意しましょう。
生理周期を正確に把握するためには、毎月生理が始まった日を記録することが重要です。カレンダーに印をつける、手帳に書き込む、あるいはスマートフォンアプリを利用するなど、続けやすい方法を見つけましょう。数ヶ月間記録することで、自分の平均的な生理周期が見えてきます。
平均的な生理周期の日数
健康な成人女性における平均的な生理周期は28日とされています。これはあくまで統計上の平均であり、個人差が非常に大きいのが特徴です。
多くの女性の生理周期は、25日から38日の間に収まります。この範囲内であれば、周期が多少変動しても一般的に正常とみなされます。
また、生理周期は生涯を通じて一定ではありません。思春期や更年期など、ホルモンバランスが大きく変動する時期には、周期が不安定になりやすい傾向があります。特に生理が始まったばかりの思春期には、周期が定着するまでに数年かかることも珍しくありません。
あなたの生理周期は正常?判断基準
自分の生理周期が正常範囲内かどうかを知ることは、体の状態を把握する上で非常に大切です。ここでは、正常な生理周期の判断基準について詳しく見ていきましょう。
正常な生理周期の範囲
日本産科婦人科学会では、健康な成人女性の正常な生理周期を25日から38日としています。この範囲内であれば、多少の日数のばらつきがあっても問題ないとされることが多いです。
ただし、これはあくまで目安であり、周期がこの範囲から少し外れていても、排卵が順調に行われており、症状がない場合は経過観察となることもあります。重要なのは、自分の周期が普段と比べて大きくずれていないか、そして体調に異常がないかという点です。
ご自身の生理周期が正常範囲内か確認するために、過去数ヶ月分の記録を見返してみましょう。もし、記録が曖昧であれば、これから数ヶ月は意識して記録をつけてみてください。
生理周期が25日でも正常?個人差について
「私の生理周期はいつも25日なんだけど、平均より短い気がする…これは正常なの?」と心配になる方もいるかもしれません。
前述の通り、生理周期が25日であれば、正常範囲(25日〜38日)に含まれます。周期が28日より短いからといって、すぐに異常があるわけではありません。生理周期には大きな個人差があり、体質や遺伝、ホルモンバランスなど、様々な要因によって決まります。
重要なのは、その周期が安定しているかどうかです。例えば、常に25日周期で安定している場合は、それがあなたにとっての「正常」なリズムである可能性が高いです。しかし、普段は28日周期なのに急に25日になった、あるいは25日と35日のように周期が大きく変動する場合は、何らかの異常が隠れている可能性も考えられます。
自分の「正常」な周期を知り、そこからの変化に気づくことが、体の異変を早期に察知する鍵となります。
生理が遅れるのは何日まで正常?
生理が予定日より遅れると、「妊娠したかも?」「何か病気?」と不安になるものです。では、生理は通常何日まで遅れても正常なのでしょうか。
生理周期の正常範囲は38日までとされています。したがって、前回の生理開始日から39日以上経っても次の生理が始まらない場合は、生理が遅れている、あるいは稀発月経の状態であると考えられます。
ただし、一時的なストレス、体調不良、生活習慣の変化、薬の服用などが原因で、誰でも周期が数日〜1週間程度ずれることはあります。生理予定日から1週間程度の遅れであれば、様子を見ても良い場合があります。
しかし、生理が2週間以上遅れる、あるいは3ヶ月以上生理が来ない(無月経)といった場合は、医療機関(婦人科)を受診することをおすすめします。妊娠の可能性を確認するほか、ホルモンバランスの乱れや他の病気が原因である可能性も考えられます。
生理周期の計算方法と排卵日
生理周期を計算することで、次の生理予定日や、妊娠しやすい時期(排卵日周辺)を予測することができます。ここでは、その方法について解説します。
簡単な生理周期の計算ツールやアプリ
最も手軽で正確に生理周期を管理・計算できるのは、生理周期管理アプリやWebサイトを利用する方法です。多くのアプリは、生理開始日と終了日を入力するだけで、自動的に生理周期を計算し、次の生理予定日や排卵予測日を表示してくれます。
- 計算アプリ・ツールのメリット
- 自動で計算してくれるので手間がかからない。
- 過去のデータを蓄積し、平均周期や傾向を把握しやすい。
- 生理日予測、排卵日予測、妊娠しやすい期間の表示など、機能が豊富。
- 体調や気分の記録機能があるものも多く、体調管理に役立つ。
- グラフ表示で周期の変動を視覚的に確認できる。
様々なアプリがあるので、デザインや機能など、自分に合ったものを選んで活用してみましょう。
アプリを使わない場合は、手動で計算することも可能です。
生理周期 = 前回の生理開始日から今回の生理が始まる前日までの日数
例えば、前回の生理開始日が1月1日、今回の生理開始日が1月28日なら、周期は27日です。この計算を数ヶ月分行い、平均値を出すことで、ご自身の平均的な生理周期を知ることができます。
排卵日と生理周期の関係
生理周期の長さは、主に排卵までの期間(卵胞期)と排卵から次の生理までの期間(黄体期)によって決まります。このうち、黄体期の日数は比較的安定しており、多くの女性で約14日間です。
この黄体期の長さが一定であるという特徴を利用して、生理周期から排卵日を予測する「オギノ式」などの方法があります。
排卵日予測 = 次回の生理予定日 - 14日
例えば、生理周期が28日の場合、生理開始日から28日後に次の生理が来ると予測されます。その14日前の生理開始から数えて14日目が、おおよその排卵日となります。
- 周期が短い場合(例: 25日周期)
排卵日予測 = 生理開始日 + (25日 – 14日) = 生理開始日から約11日目 - 周期が長い場合(例: 35日周期)
排卵日予測 = 生理開始日 + (35日 – 14日) = 生理開始日から約21日目
このように、生理周期が分かれば、おおよその排卵日を予測することができます。排卵日前後数日間は妊娠しやすい期間(妊活期)と呼ばれます。
ただし、この計算方法はあくまで目安です。生理周期が不規則な場合や、排卵が順調に行われていない場合は、正確な排卵日予測は難しくなります。より正確に排卵日を知りたい場合は、基礎体温の測定、排卵検査薬の使用、あるいは婦人科での超音波検査などを検討しましょう。
生理周期が不規則?原因と対処法
生理周期が定まらない、急に短くなった・長くなった、出血が長く続くなど、生理不順に悩む女性は少なくありません。生理不順は様々な原因で起こり、中には病気が隠れているケースもあります。
生理不順の原因と症状
生理不順とは、生理周期が正常範囲(25日〜38日)から外れる状態や、周期が安定しない状態を指します。主な症状としては、以下のようなものがあります。
- 頻発月経: 生理周期が24日以下。短期間に何度も生理が来る。
- 稀発月経: 生理周期が39日以上3ヶ月未満。生理がなかなか来ない。
- 無月経: 3ヶ月以上生理が来ない状態。
- 過長月経: 生理の期間が8日以上続く。
- 過短月経: 生理の期間が2日以下で終わってしまう。
- 過多月経: 経血量が異常に多い。夜用ナプキンでも2時間持たない、血の塊が多いなど。
- 過少月経: 経血量が異常に少ない。ナプキンがほとんど汚れない、数滴で終わるなど。
- 不正出血: 生理期間以外に出血がある。
これらの生理不順は、以下のような様々な原因によって引き起こされます。
カテゴリ | 主な原因 | 影響 |
---|---|---|
生活習慣 | ストレス(精神的・肉体的)、急激な体重の増減、過度なダイエット、睡眠不足、不規則な生活リズム、運動過多 | ホルモンバランスの乱れ、脳からの指令への影響 |
ホルモン異常 | 脳の視床下部や下垂体の機能異常、卵巣機能の低下、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、甲状腺機能の異常など | 排卵障害、黄体機能不全、生理周期の異常(頻発、稀発、無月経など) |
病気 | 子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜ポリープ、卵巣嚢腫、早期閉経など | 生理期間の異常(過長、過多)、不正出血、生理痛の悪化、周期の乱れなど |
その他 | 薬の副作用(精神安定剤、抗うつ薬など)、ピルの使用中止後、病後、環境の変化 | 一時的なホルモンバランスの乱れ、周期の変動 |
特にストレスは、脳の視床下部から分泌されるホルモンに影響を与え、生理周期をコントロールする指令がうまく伝わらなくなることで生理不順を引き起こしやすい代表的な原因です。
生理が10日以上続く場合は?
生理が8日以上続く状態を過長月経と呼び、これも生理不順の一つです。生理が10日、2週間と長く続く場合は、いくつかの原因が考えられます。
- ホルモンバランスの乱れ: 特に、排卵がうまくいかない無排卵周期症の場合、生理がだらだらと長く続くことがあります。これは、卵胞が成熟しても排卵せずにそのまま萎縮したり、黄体ホルモンが十分に分泌されなかったりすることで起こります。
- 子宮の病気:
- 子宮筋腫: 子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、できた場所や大きさによっては経血量を増やしたり、生理期間を長くしたりします。
- 子宮内膜ポリープ: 子宮の内膜にできる良性の隆起で、不正出血や過長月経の原因となることがあります。
- 子宮腺筋症: 子宮の筋肉の中に子宮内膜組織が入り込み増殖する病気で、子宮全体が硬く厚くなり、強い生理痛や過多月経、過長月経を引き起こします。
- その他の原因: 凝血異常(血液が固まりにくい体質や病気)、甲状腺機能異常、あるいはまれに子宮体がんの初期症状として過長月経が現れることもあります。
過長月経が続くと、貧血になりやすいだけでなく、病気が隠れている可能性もあるため、一度婦人科を受診して原因を調べてもらうことが大切です。
生理周期が短い・長い場合の注意点
生理周期が極端に短い(頻発月経)または長い(稀発月経)場合も、注意が必要です。
- 周期が短い(24日以下)場合:
- 無排卵月経: 周期が短くても実際には排卵が起きていない「無排卵月経」の可能性があります。見た目は生理でも、排卵がないため妊娠することはできません。また、ホルモンバランスの乱れが続いているサインでもあります。
- 黄体機能不全: 排卵後にできる黄体からのホルモン(プロゲステロン)分泌が不十分で、子宮内膜を維持できずに早く生理が来てしまう状態です。不妊の原因となることがあります。
- 周期が長い(39日以上)場合:
- 排卵障害: 卵胞がうまく育たなかったり、排卵が起きなかったりすることで周期が長くなります。これも不妊の原因の一つです。
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS): 卵巣に小さな卵胞がたくさんできてしまい、排卵しにくくなる病気です。周期が非常に長くなったり、無月経になったりすることが多いほか、男性ホルモンが増える症状(ニキビ、多毛など)が見られることもあります。
周期の短い・長いのどちらの場合も、背景にホルモンバランスの乱れや排卵障害が隠れていることが多く、妊娠を希望する場合や、他の症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診して相談することが重要です。
生理不順の改善策と生活習慣
生理不順の原因が病気ではない場合、多くは生活習慣の見直しやストレス軽減によって改善が期待できます。
- ストレス管理:
十分な休息を取り、睡眠時間を確保する。
リラックスできる時間を作る(好きな音楽を聴く、入浴、アロマテラピーなど)。
軽い運動やヨガ、ストレッチなどで体を動かす。
悩みを一人で抱え込まず、信頼できる人に相談する。 - バランスの取れた食事:
偏った食事や過度なダイエットは避け、様々な食品から栄養を摂取する。
特に鉄分は生理で失われやすいため、積極的に摂る(レバー、ほうれん草、大豆製品など)。
冷たいものの摂りすぎに注意し、体を温める食事を心がける。 - 適度な運動:
血行を促進し、ホルモンバランスを整えるのに役立ちます。ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど、無理なく続けられるものがおすすめです。
ただし、過度な激しい運動は逆にストレスとなり、生理不順を招くことがあるため注意が必要です。 - 体重管理:
急激な体重の増減や、標準体重から大きく外れる痩せすぎ・太りすぎは、ホルモンバランスを乱す大きな原因となります。健康的な範囲で適正体重を維持することが重要です。 - 体を冷やさない:
体が冷えると血行が悪くなり、骨盤内の血流も滞りやすくなります。靴下や腹巻、ブランケットなどを利用して体を温めましょう。
これらの生活習慣の見直しを行っても生理不順が改善しない場合や、他の症状(強い痛み、不正出血、めまいなど)を伴う場合は、迷わず婦人科を受診してください。医師の診断に基づき、ホルモン療法(低用量ピルなど)や漢方薬の服用、必要に応じて手術などの治療が行われます。
生理周期の段階と体の変化
生理周期は、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の分泌量の変化によって、いくつかの段階に分けられます。それぞれの段階で体の状態や心に変化が起こります。
卵胞期、排卵期、黄体期:各段階の特徴
生理周期は大きく分けて「卵胞期」「排卵期」「黄体期」「月経期(生理期間)」の4つの段階を経て繰り返されます。これらの段階は、卵巣の中で卵胞が育ち、排卵し、子宮内膜が厚くなり、そして剥がれ落ちるという一連のプロセスに対応しています。
段階 | 期間の目安 | ホルモン分泌の変化 | 体と心の変化 |
---|---|---|---|
月経期 | 生理が始まってから終わるまで(約3~7日) | エストロゲン、プロゲステロンともに低下 | 経血の排出、下腹部痛、腰痛、だるさ、貧血気味になることも。気分が落ち込みやすい人も。 |
卵胞期 | 生理が終わってから排卵まで(約7~10日) | エストロゲンが増加 | 体調が安定し、肌や髪のツヤが良くなる。気分も前向きになりやすい。性欲が高まることも。基礎体温は低温期。 |
排卵期 | 排卵前後の数日間(約3~5日) | エストロゲンがピーク、LH(黄体形成ホルモン)が急増(LHサージ)→排卵、プロゲステロンが少し増加 | 軽い下腹部痛や出血(排卵痛・排卵出血)、おりものの量が増え透明で伸びるようになる。基礎体温が一時的に下がることも。 |
黄体期 | 排卵後から次の生理まで(約14日) | プロゲステロンが増加、エストロゲンも増加傾向→後半で急激に低下 | プロゲステロンの影響で体温が高温期に。子宮内膜が厚くなる。むくみ、便秘、胸の張り、眠気、イライラ、気分の落ち込みなどPMSの症状が出やすい。 |
(上記は一般的な目安であり、個人差があります。)
卵胞期には、卵巣の中でいくつかの卵胞が育ち始め、最も育ったものが一つだけ選ばれて排卵に向かいます。この時期はエストロゲンの分泌が増え、肌の調子が良いなどポジティブな変化を感じやすい期間です。
排卵期には、十分に成熟した卵胞から卵子が排出されます。この直前にLHサージという現象が起こり、これが排卵のトリガーとなります。排卵後は黄体期へと移行します。
黄体期は、排卵後の卵胞が黄体という組織に変化し、プロゲステロン(黄体ホルモン)を大量に分泌する期間です。プロゲステロンは子宮内膜を厚く柔らかくし、受精卵が着床しやすい状態を整えます。妊娠が成立しなかった場合は、黄体は衰退し、プロゲステロンとエストロゲンの分泌量が急激に低下し、子宮内膜が剥がれ落ちて生理が始まります。
生理周期と体調やメンタル
ホルモンバランスの変化は、体の状態だけでなく、メンタルにも大きな影響を与えます。特に黄体期に多くの女性が経験するのが、月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)です。
- 月経前症候群(PMS): 生理が始まる1〜2週間前から現れる、身体的・精神的な不調の総称です。生理が始まると症状が和らぐのが特徴です。
- 身体症状: むくみ(手足、顔)、胸の張りや痛み、頭痛、腰痛、肩こり、腹部膨満感、便秘や下痢、眠気、疲労感、肌荒れ、ニキビなど。
- 精神症状: イライラ、怒りっぽくなる、気分の落ち込み、不安感、集中力の低下、情緒不安定、涙もろくなる、無気力感など。
- 月経前不快気分障害(PMDD): PMSの症状の中でも、特に精神的な症状が重く、日常生活や人間関係に支障をきたす状態です。うつ病や不安障害に近い症状が現れることがあります。
これらの症状は、黄体期に増加するプロゲステロンが脳内の神経伝達物質の働きに影響を与えることなどが原因と考えられています。症状の程度には個人差があり、全く感じない人もいれば、非常に辛い思いをする人もいます。
PMSやPMDDの症状を和らげるためには、以下のようなセルフケアが有効な場合があります。
- 生活習慣の見直し: バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がける。特に、カフェインやアルコール、砂糖、塩分の摂りすぎは症状を悪化させることがあるため控えめにする。
- リラクゼーション: ストレスを解消する工夫をする。
- 記録をつける: 症状が出た日と生理周期を記録することで、自分の体のリズムや症状のパターンを把握し、対策を立てやすくする。
- 市販薬やサプリメント: 痛み止めや漢方薬(当帰芍薬散、加味逍遙散など)、ビタミンB6、カルシウム、マグネシウム、チェストツリーなどのサプリメントが有効な場合がある(使用前に薬剤師や医師に相談)。
セルフケアで改善が見られない場合や、症状が重く日常生活に支障が出ている場合は、婦人科を受診しましょう。症状や体の状態に合わせて、漢方薬、低用量ピル、向精神薬などが処方されることがあります。
生理周期の異常:受診の目安
「生理不順かな?」と感じても、「もう少し様子を見よう」と自己判断で先延ばしにしてしまう人もいるかもしれません。しかし、生理周期の異常は、体のSOSである可能性も。どのような場合に婦人科を受診すべきか、具体的な目安をご紹介します。
どんな生理の異常なら病院に行くべき?
以下のような生理や生理周期の異常が見られる場合は、一度婦人科を受診して相談することをおすすめします。
- 生理周期が大きく変動する:
- 今まで安定していた周期が、急に大きく短くなったり長くなったりする。
- 周期が24日より短い(頻発月経)状態が続く。
- 周期が39日より長い(稀発月経)状態が続く。
- 3ヶ月以上生理が来ない(無月経)。
- 経血量に異常がある:
- 経血量が異常に多い(過多月経)。ナプキンがすぐにずぶ濡れになる、大きな血の塊が出る、貧血症状(めまい、立ちくらみなど)を伴うなど。
- 経血量が異常に少ない(過少月経)。ほとんど出血しない、数滴で終わるなど。
- 生理期間に異常がある:
- 生理が8日以上続く(過長月経)。
- 生理が2日以下で終わる(過短月経)。
- 生理痛がひどい:
- 市販の鎮痛剤が効かないほどの激しい痛み。
- 生理が来るたびに痛みが強くなっている。
- 生理期間以外にも痛みが続く。
- 不正出血がある:
- 生理期間ではないのに出血がある。少量でも、続く場合は要注意。
- 性行為の際に出血がある。
- その他の症状:
- 生理不順とともに、急な体重の変化、ひどいニキビや多毛、強い疲労感、めまい、動悸、むくみなどの症状がある。
- 妊娠を希望しているのに、生理周期が不規則で排卵しているか分からない。
- 年齢的に閉経にはまだ早いのに、生理が来なくなった。
これらの症状は、単なる体調不良だけでなく、ホルモンバランスの異常、子宮や卵巣の病気(子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜ポリープ、卵巣嚢腫、多嚢胞性卵巣症候群など)、あるいは性感染症や悪性疾患(子宮頸がん、子宮体がんなど)のサインである可能性もあります。早期に原因を特定し、適切な治療を受けることが、その後の健康や将来の妊娠のためにも非常に重要です。
「これくらいで病院に行くのは大げさかな?」とためらわず、少しでも気になることがあれば、気軽に婦人科医に相談してみましょう。特に、今まで経験したことのない症状が現れた場合は、早めの受診をおすすめします。
婦人科での検査と治療
婦人科を受診すると、まず問診で現在の症状、生理周期、既往歴、アレルギー、家族歴などが詳しく聞かれます。正直に、具体的に伝えることが正確な診断につながります。生理周期については、記録をつけているものがあれば持参すると役立ちます。
問診の後、必要に応じて以下のような検査が行われます。
- 内診: 医師が指で子宮や卵巣の状態を触診します。
- 超音波検査: 経腟または経腹でプローブを当て、子宮や卵巣の大きさ、形、内部の状態、卵胞の数などを確認します。筋腫や嚢腫などの有無を調べることができます。
- ホルモン検査: 採血をして、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチンなどの値を調べ、ホルモンバランスの状態を確認します。排卵しているかどうかの判断や、多嚢胞性卵巣症候群、早期閉経などの診断に役立ちます。
- 血液検査: 貧血の有無や、甲状腺機能、血糖値などを調べることもあります。
- 子宮頸がん検診・子宮体がん検診: 不正出血がある場合や、年齢に応じて行われます。
- その他: 必要に応じて、MRI検査や子宮鏡検査などが実施されることもあります。
これらの検査結果に基づいて、生理周期の異常の原因が診断されます。原因に応じた治療法が選択されます。
原因 | 主な治療法 |
---|---|
生活習慣の乱れ、ストレス | 生活指導(食事、運動、睡眠)、ストレス軽減、カウンセリングなど |
ホルモンバランスの乱れ(排卵障害など) | ホルモン療法(低用量ピル、周期療法、排卵誘発剤など)、漢方薬 |
子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫など | 薬物療法(鎮痛剤、ホルモン療法など)、手術(筋腫や嚢腫の摘出、病巣の切除など) |
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) | ホルモン療法(低用量ピル、排卵誘発剤)、生活習慣改善(特に体重管理)、インスリン抵抗性改善薬など |
子宮内膜ポリープ | 外来での切除、子宮鏡下手術 |
治療法は、症状の重さ、年齢、妊娠の希望の有無などによって異なります。医師とよく相談し、納得した上で治療方針を決定しましょう。生理不順は、適切な治療によって改善することが多く、原因となっている病気を早期に発見・治療することで、将来の健康不安を減らすことにもつながります。
まとめ
生理周期は、女性の健康状態を映し出す鏡のようなものです。自分の生理周期の「普通」を知り、わずかな変化にも気づけるようになることが、健康管理の第一歩と言えるでしょう。
一般的に、生理周期は25日〜38日が正常範囲とされていますが、これには個人差があります。周期を正確に把握するためには、生理が始まった日を記録することが大切です。生理周期が分かれば、次の生理予定日や排卵日のおおよその予測も可能になり、妊娠計画などにも役立ちます。
しかし、生理周期が不規則になる場合も少なくありません。ストレスや生活習慣の乱れが原因であることも多いですが、子宮や卵巣の病気、ホルモン異常が隠れている可能性も否定できません。特に、周期が大きく変動する、経血量や期間に異常がある、強い生理痛や不正出血があるといった場合は、「これはおかしいな」というサインかもしれません。
生理に関する不安や疑問がある場合は、一人で悩まず、勇気を出して婦人科医に相談してください。早期に受診することで、原因を特定し、適切なアドバイスや治療を受けることができます。自分の体と向き合い、生理周期を味方につけて、心身ともに健康な日々を送りましょう。
免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医療的な診断や個別の助言を行うものではありません。個々の健康状態や生理に関する症状については、必ず医師や医療専門家にご相談ください。記事の内容に基づいてご自身で判断したり、治療法を決定したりすることは避けてください。