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仙骨子宮靭帯とは?役割と骨盤臓器脱・子宮内膜症との関係

仙骨子宮靭帯とは、女性の骨盤内で子宮を支える重要な組織の一つです。
この靭帯は、子宮が骨盤内の適切な位置に保たれるために不可欠な役割を果たしています。
しかし、この靭帯に異常が生じると、痛みや不快感、さらには骨盤臓器脱や腰痛といった様々な問題を引き起こす可能性があります。

この記事では、仙骨子宮靭帯の正確な場所や解剖学的な構造、その重要な役割について詳しく解説します。
また、仙骨子宮靭帯に関連して生じる可能性のある痛みや腰痛の原因、骨盤臓器脱との関係性、さらには一般的な疑問点についても分かりやすく説明します。
女性の健康に関わる骨盤内の靭帯について理解を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

仙骨子宮靭帯は、女性の骨盤内に位置する結合組織の束です。
子宮を骨盤後壁にある仙骨に繋ぎ留める役割を担っており、子宮を安定させる上で非常に重要な支持構造の一つです。
主にコラーゲン線維や平滑筋線維で構成されており、ある程度の柔軟性と強度を兼ね備えています。

この靭帯は単に子宮を支えるだけでなく、骨盤内の他の臓器(膀胱や直腸など)が適切な位置に留まるのを助け、骨盤底全体の機能維持に貢献しています。

仙骨子宮靭帯の英語名

仙骨子宮靭帯の英語名は Uterosacral Ligament です。
解剖学や医学の文献では一般的にこの名称が使用されます。
「utero」は子宮を意味し、「sacral」は仙骨を意味します。

子宮を支える主な靭帯

子宮は仙骨子宮靭帯以外にも、複数の靭帯によって骨盤内に固定され、支えられています。
これらの靭帯が連携して機能することで、妊娠や日常の動作による子宮の位置変動を最小限に抑えています。
主な子宮支持靭帯には以下のものがあります。

基靭帯

基靭帯(Cardinal Ligament)は、子宮頸部の側面から骨盤壁に向かって広がる強固な靭帯です。
横靭帯とも呼ばれ、子宮を左右から支える主要な構造です。
血管や神経も豊富に通っており、子宮動静脈などがこの靭帯の中を通ります。
子宮下垂や子宮脱を防ぐ上で、仙骨子宮靭帯と並んで非常に重要な支持機構です。

膀胱子宮靭帯

膀胱子宮靭帯(Vesicouterine Ligament)は、子宮頸部の前面から膀胱の基部に向かって走行する靭帯です。
子宮と膀胱の位置関係を安定させる役割を持ちます。
この靭帯の弱化は、膀胱瘤(膀胱が腟側に飛び出す状態)に関連することがあります。

広靭帯

広靭帯(Broad Ligament)は、子宮の側面から骨盤壁に広がる二重の腹膜のひだです。
卵管、卵巣靭帯、固有卵巣索など、卵巣や卵管への血管や神経を通す役割も果たしています。
子宮を骨盤内に吊り下げるような形態を取りますが、他の靭帯と比較すると、子宮の支持力としては補助的な役割が大きいとされています。
広靭帯内には様々な構造が含まれており、子宮の可動性にも関与しています。

これらの靭帯が互いに協調して機能することで、子宮は妊娠していない状態でも骨盤中央の適切な位置に保たれ、妊娠中のサイズ変化にもある程度対応できるようになっています。
しかし、出産や加齢、ホルモンバランスの変化などにより、これらの靭帯が弱化すると、子宮や他の骨盤臓器の位置がずれる原因となります。

目次

仙骨子宮靭帯の場所と構造

仙骨子宮靭帯は、その名前の通り、仙骨と子宮を繋ぐ靭帯です。
骨盤の深い部分に位置しており、体表から直接触れることは難しい構造です。

骨盤内での正確な位置

仙骨子宮靭帯は、骨盤後壁の中央にある仙骨の前面から始まり、後方から前方に、やや下から上に走行して、子宮頸部の後面に付着します。
左右に一対存在しており、子宮頸部を後方に引き寄せ、骨盤前方に位置する恥骨や膀胱から離すように作用します。

より具体的には、仙骨のS2-S4レベルの前面あたりから始まり、骨盤内を通って前方に進み、子宮頸部の腟円蓋後方で子宮の線維性組織に結合します。
その走行中、直腸の側面をかすめるように走っており、直腸とも近接しています。

仙骨と子宮の関係性

仙骨は骨盤の後壁を形成する楔状の骨であり、脊柱の最下部に位置します。
子宮は骨盤腔内に位置する臓器であり、妊娠時には大きく拡張します。
仙骨子宮靭帯は、この固定された仙骨と、ある程度の可動性を持つ子宮とを繋ぐことで、子宮が過度に前方に傾いたり、下降したりするのを防いでいます。
仙骨子宮靭帯による固定があるからこそ、子宮は日常的な腹圧の変化や体位の変動に対しても比較的安定した位置を保つことができるのです。

靭帯の走行と組織

仙骨子宮靭帯は、仙骨前面から起こり、ほぼ後方から前方に、やや内側から外側に広がるように走行し、子宮頸部後面に付着します。
この走行によって、子宮は骨盤の中央よりやや後方に保たれやすくなります。

組織学的には、仙骨子宮靭帯は主に密性結合組織から成り立っており、特にコラーゲン線維が豊富です。
これにより、高い張力に耐えることができます。
また、平滑筋線維や血管、神経も含まれており、靭帯の機能性や周囲組織との連携に寄与しています。
特に、骨盤自律神経叢の一部である骨盤神経がこの靭帯の周囲を走行しているため、靭帯への刺激が痛みや自律神経系の症状を引き起こす可能性があります。

仙骨子宮靭帯の主な役割

仙骨子宮靭帯は、女性の骨盤内において複数の重要な役割を担っています。
これらの役割が損なわれると、様々な婦人科系および泌尿器科系の問題が生じる可能性があります。

子宮の支持・固定機能

仙骨子宮靭帯の最も主要な役割は、子宮を骨盤内の適切な位置に支持し、固定することです。
特に子宮頸部を仙骨側へ引っ張ることで、子宮の前傾・前屈位を保つのを助け、子宮下垂や骨盤臓器脱を防ぐ上で中心的な役割を果たします。
基靭帯とともに、子宮を骨盤内で安定させるための強固なアンカーポイントとなります。

骨盤臓器の位置維持

仙骨子宮靭帯は、子宮だけでなく、近接する他の骨盤臓器、特に直腸や膀胱の位置維持にも間接的に関与しています。
これらの臓器は骨盤底筋や他の靭帯とも連携して支持されていますが、子宮が適切な位置にあることは、周囲の臓器の配置にも影響を与えます。
仙骨子宮靭帯の弱化は、子宮脱だけでなく、直腸瘤(直腸が腟側に飛び出す状態)や膀胱瘤の発生リスクを高める可能性があります。

仙骨への影響

仙骨子宮靭帯は仙骨に付着しているため、靭帯の緊張や緩みが仙骨の安定性や動きに影響を与える可能性も指摘されています。
仙骨は脊柱の土台となる骨であり、骨盤全体、さらには体幹や下肢の動きにも関与しています。
仙骨子宮靭帯の異常が仙骨周囲の筋肉や神経に影響を及ぼし、腰痛や臀部痛の原因となることもあります。
骨盤全体のバランスを保つ上で、仙骨と子宮を繋ぐこの靭帯の健全性は重要です。

仙骨子宮靭帯の痛みと原因

仙骨子宮靭帯に痛みが生じる場合、それは様々な要因が考えられます。
靭帯自体の問題だけでなく、周囲の組織や機能障害が痛みを引き起こすこともあります。

痛みを感じやすいケース

仙骨子宮靭帯周辺に痛みを感じやすいのは、以下のようなケースです。

  • 月経周期: 生理前や生理中に骨盤内の血流が増加したり、ホルモンバランスが変動したりすることで、靭帯周辺に張りや痛みを感じることがあります。
    特に子宮内膜症がある場合、病巣が仙骨子宮靭帯に浸潤していると、激しい痛みを伴うことがあります。
  • 排便時や排尿時: 骨盤臓器脱により直腸や膀胱が下垂している場合、排便・排尿時に靭帯周辺に圧力がかかり、痛みや違和感を生じることがあります。
  • 性交時: 性交時の刺激が子宮頸部やその周囲に伝わり、仙骨子宮靭帯に牽引や圧迫がかかることで深部性交痛として痛みを感じることがあります。
  • 特定の体勢や動作: 長時間座り続けたり立ったりすること、重いものを持ち上げる際に腹圧がかかること、急な動きなどが靭帯への負荷となり、痛みを誘発することがあります。
  • 妊娠・出産後: 妊娠中はホルモンの影響で靭帯が緩みやすくなり、出産時には骨盤底や靭帯に大きな負担がかかります。
    出産後の回復過程で痛みを伴うことがあります。

靭帯の緩みや伸び

仙骨子宮靭帯の緩みや伸びは、痛みの原因として非常に一般的です。
主な要因は以下の通りです。

  • 出産: 妊娠中のホルモンによる影響に加え、分娩時の強力な牽引や圧迫によって靭帯が損傷したり、過度に引き伸ばされたりすることがあります。
    特に難産であったり、巨大児分娩であったりした場合にリスクが高まります。
  • 加齢と閉経: 加齢に伴い、靭帯を構成するコラーゲン線維の弾力性が失われたり、量が減少したりします。
    また、閉経後のエストロゲン減少は、骨盤底組織全体の萎縮や弱化を招き、靭帯の緩みを進行させます。
  • 慢性的な腹圧上昇: 慢性的な咳(喘息や喫煙)、重いものを繰り返し持ち上げる仕事、慢性的な便秘によるいきみ、肥満などは、持続的に骨盤底に高い圧力をかけ、靭帯を徐々に引き伸ばす原因となります。
  • 遺伝的要因: 結合組織の脆弱性に関わる遺伝的素因がある場合、靭帯が緩みやすい体質であることがあります。

靭帯が緩んだり伸びたりすると、子宮の支持性が低下し、痛みや違和感が生じやすくなります。
また、子宮や他の骨盤臓器が下垂し、後述する骨盤臓器脱の原因となります。

炎症や損傷

仙骨子宮靭帯そのものが炎症を起こしたり、損傷したりすることでも痛みは生じます。

  • 炎症: 骨盤内の炎症性疾患(例: 骨盤腹膜炎、付属器炎)が仙骨子宮靭帯に波及して炎症を引き起こすことがあります。
    子宮内膜症が仙骨子宮靭帯に病巣を形成した場合も、強い炎症や癒着を伴い、激しい痛みの原因となります。
  • 損傷: 転倒による外傷や、骨盤に関連する手術(子宮摘出術など)の際に、偶発的に靭帯が損傷を受ける可能性があります。
    スポーツ活動中の急な回旋や伸展動作によって、靭帯に過度な負荷がかかり、微細な損傷が生じることも考えられます。

骨盤臓器脱との関連性

仙骨子宮靭帯の弱化は、骨盤臓器脱と密接に関連しています。

骨盤臓器脱とは

骨盤臓器脱(Pelvic Organ Prolapse, POP)とは、骨盤内の臓器(子宮、膀胱、直腸、小腸、腟断端)が、骨盤底筋や支持靭帯の弱化によって本来の位置から下垂し、腟口から膨隆したり、体外に脱出したりする状態の総称です。
子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤、腟断端脱など、下垂する臓器によって様々なタイプがあります。

靭帯の弱化と骨盤臓器脱

骨盤臓器は、骨盤底筋群(ハンモック状に骨盤の下部を支える筋肉)と、骨盤内の靭帯や筋膜といった支持組織によって複合的に支えられています。
仙骨子宮靭帯は、子宮を後方から固定する主要な靭帯であり、その弱化は子宮を骨盤中央の適切な位置に保持する力を失わせます。

仙骨子宮靭帯を含む支持靭帯が緩んだり損傷したりすると、子宮が下方へ移動しやすくなります。
子宮が下垂すると、その上にある膀胱や、後方にある直腸も一緒に引きずられるように下垂しやすくなります。
特に仙骨子宮靭帯は子宮脱や腟断端脱(子宮摘出後の腟の最上部が下垂する状態)の発生に深く関わっており、これらの手術的な修復を行う際には、仙骨子宮靭帯やその代替となる組織を利用して腟や子宮を固定する手技(仙骨腟固定術など)が選択されることがあります。

つまり、仙骨子宮靭帯の健全性は、子宮や他の骨盤臓器が適切な位置に留まるために極めて重要であり、この靭帯の機能不全は骨盤臓器脱の主要な原因の一つと考えられています。

仙骨子宮靭帯と腰痛の関連性

仙骨子宮靭帯は骨盤後壁の仙骨に付着しているため、この靭帯の問題が腰痛を引き起こすことがあります。
骨盤は体幹の動きや姿勢に大きく関わる部位であり、骨盤内の臓器や支持組織の状態は、腰部の筋肉や神経にも影響を及ぼします。

なぜ仙骨子宮靭帯が腰痛に関わるのか

仙骨子宮靭帯が腰痛に関わるメカニズムはいくつか考えられます。

  • 仙骨への牽引: 仙骨子宮靭帯に異常な緊張が生じたり、短縮したりすると、靭帯が付着している仙骨を引っ張る力が生じます。
    仙骨は腰椎の下に位置し、骨盤の中心であるため、仙骨への牽引は骨盤全体の歪みや仙腸関節(仙骨と腸骨の間の関節)の不調を引き起こし、腰痛として感じられることがあります。
  • 骨盤の不安定性: 仙骨子宮靭帯を含む子宮支持靭帯が緩むと、骨盤内の臓器の位置が不安定になり、骨盤全体の安定性が損なわれることがあります。
    骨盤の不安定性を補うために、腰部や臀部の筋肉が過剰に緊張したり、不均衡な負荷がかかったりすることで、腰痛が生じやすくなります。
  • 神経への影響: 仙骨子宮靭帯の周囲には、骨盤内臓器や下肢に関連する神経(例:骨盤神経、坐骨神経の一部)が走行しています。
    靭帯の炎症、腫れ、または周囲組織との癒着によってこれらの神経が刺激されたり圧迫されたりすると、腰部、臀部、太もも、さらには下腿にかけての関連痛(放散痛)として腰痛を感じることがあります。
  • 骨盤底筋との連携: 仙骨子宮靭帯は骨盤底筋群とも機能的に連携しています。
    靭帯の機能障害は骨盤底筋の働きにも影響を与え、骨盤底全体のサポート機能が低下します。
    これにより、姿勢の保持や体幹の安定性が損なわれ、腰への負担が増加して腰痛を引き起こすことがあります。

仙骨子宮靭帯由来の腰痛の特徴

仙骨子宮靭帯に関連する腰痛には、いくつかの特徴が見られることがあります。

  • 仙骨周辺や尾骨の痛み: 仙骨子宮靭帯が仙骨に付着しているため、仙骨の中央やそのやや外側、あるいは尾骨のあたりに痛みを訴えることがあります。
  • 特定の体勢や動作での悪化: 長時間座っている、立ったままの姿勢、重いものを持つ、前屈みになるなどの動作で痛みが強くなることがあります。
    また、特定の座り方や寝方で痛みが変化することもあります。
  • 生理周期との関連: ホルモンバランスの変化により骨盤内の血流が増加したり、靭帯の緊張が変化したりすることで、月経前や月経中に腰痛が悪化することがあります。
    子宮内膜症が関連している場合は、生理中の腰痛が特に強い傾向があります。
  • 他の骨盤内症状との併発: 腰痛だけでなく、下腹部痛、骨盤痛、排便困難、排尿困難、性交痛などを伴うことがあります。
    これは、仙骨子宮靭帯の問題が他の骨盤臓器や組織にも影響を及ぼしている可能性を示唆します。
  • 朝に痛みが強い、または活動により悪化: 起床時に腰痛を感じることもあれば、一日の活動を通して痛みが強まることもあります。

ただし、これらの特徴は他の原因による腰痛とも共通することが多いため、仙骨子宮靭帯が原因であるかを正確に診断するには、専門的な評価が必要です。

関連する症状

仙骨子宮靭帯の問題は、腰痛以外にも以下のような様々な症状を引き起こす可能性があります。

  • 骨盤痛: 下腹部、骨盤深部、股の付け根、臀部などに慢性的な痛みや不快感が生じることがあります。
  • 性交痛(深部性交痛): 性行為の際に、腟の奥の方で痛みを感じることがあります。
    これは、性交時の衝撃が子宮頸部や仙骨子宮靭帯に伝わることで生じると考えられます。
  • 排便困難・排尿困難: 骨盤臓器脱により直腸や膀胱が下垂している場合、便が出にくくなったり(直腸瘤)、尿が出しにくくなったり(膀胱瘤)することがあります。
    また、排便時や排尿時に靭帯周辺に痛みを感じることもあります。
  • 違和感・異物感: 腟の中に何かが下がってくるような、または挟まっているような感覚(骨盤臓器脱の症状)を訴えることがあります。
  • 不正出血: 骨盤臓器脱により腟粘膜が擦れて傷ついたり、炎症を起こしたりすることで出血が生じることがあります。
  • 足の付け根や太ももの痛み: 仙骨子宮靭帯周辺の神経刺激が、下肢への放散痛を引き起こすことがあります。

これらの症状が複数見られる場合、仙骨子宮靭帯を含む骨盤底支持機構に問題が生じている可能性が考えられます。

仙骨子宮靭帯に関する疑問・Q&A

仙骨子宮靭帯や子宮を支える靭帯について、よくある疑問にお答えします。

子宮を支える靭帯はどこにありますか?

子宮を支える主な靭帯は、骨盤の深いところにあります。
具体的には、子宮の両側から骨盤壁に向かう「基靭帯」、子宮頸部の後ろから骨盤後壁(仙骨)に向かう「仙骨子宮靭帯」、子宮の前から膀胱に向かう「膀胱子宮靭帯」、そして子宮の側面を覆い骨盤壁に広がる腹膜のひだである「広靭帯」などがあります。
これらの靭帯が協調して子宮を骨盤内に固定しています。

子宮を支える靱帯は?

子宮を支える主要な靭帯は、「基靭帯」と「仙骨子宮靭帯」です。
特に基靭帯は子宮を左右から、仙骨子宮靭帯は後方から強力に支え、子宮が骨盤内の適切な位置に留まるための中心的な役割を果たしています。
これらの靭帯は、子宮下垂や子宮脱を防ぐ上で最も重要視されます。

膀胱子宮靭帯とは何ですか?

膀胱子宮靭帯は、子宮頸部の前面から膀胱の基部(底部)にかけて走行する短い靭帯です。
子宮と膀胱の位置関係を安定させる役割を持ちます。
この靭帯が弱化すると、膀胱が腟前壁側に下垂し、膀胱瘤(膀胱脱)の原因の一つとなることがあります。

仙骨腟固定術のデメリットは?

仙骨腟固定術は、骨盤臓器脱(特に腟断端脱や子宮脱)の治療法として広く行われる手術ですが、いくつかのデメリットやリスクが存在します。

仙骨子宮靭帯の手術(仙骨腟固定術)について

仙骨腟固定術(Sacrocolpopexy)は、下垂した腟の最上部(子宮がある場合は子宮頸部や子宮本体)を、人工のメッシュやご自身の組織を用いて、骨盤後壁にある仙骨前面の強固な靭帯(前縦靭帯など)に固定する手術です。
これにより、腟や子宮を骨盤内の高い位置に吊り上げて固定し、骨盤臓器脱を修復します。
腹腔鏡手術やロボット支援手術で行われることが多く、比較的成功率の高い手術法とされています。

仙骨腟固定術の主なデメリットやリスク:

  • メッシュ関連の合併症: 人工メッシュを使用する場合、メッシュが腟壁に露出したり(メッシュ露出)、周囲組織を傷つけたり(メッシュ収縮、疼痛)、感染を起こしたりする可能性があります。
    これらの合併症が生じた場合、追加の手術が必要となることがあります。
  • 手術自体のリスク: 全身麻酔や開腹・腹腔鏡手術に伴う一般的なリスク(出血、感染、腸閉塞、血栓症など)が存在します。
  • 排尿・排便機能への影響: 手術後に一時的あるいは永続的に排尿困難や尿失禁、便秘などの排泄機能障害が生じることがあります。
  • 性交痛: 手術によって腟の長さや形態が変化したり、メッシュが使用されたりすることで、性交痛が生じたり悪化したりする可能性があります。
  • 再発のリスク: 仙骨腟固定術の再発率は比較的低いとされていますが、全く再発しないわけではありません。
    特に他の部位(膀胱瘤、直腸瘤など)が新たに発生したり、悪化したりする可能性もあります。
  • 回復期間: 手術の種類(開腹か腹腔鏡か)や個人の状態によりますが、術後の回復には数週間から数ヶ月かかることがあります。

これらのデメリットやリスクを理解した上で、自身の状態やライフスタイルに最も適した治療法を医師と十分に相談して決定することが重要です。
仙骨子宮靭帯自体を修復・補強する手技もありますが、骨盤臓器脱の重症度やタイプに応じて最適な手術方法が選択されます。
手術以外の保存的治療法(骨盤底筋トレーニング、ペッサリーなど)も選択肢としてあります。

まとめ

仙骨子宮靭帯は、女性の骨盤内において子宮を仙骨に繋ぎ留め、子宮が適切な位置に保たれるための重要な支持靭帯です。
基靭帯をはじめとする他の靭帯と連携して、子宮だけでなく膀胱や直腸といった骨盤内臓器全体の安定化にも寄与しています。

出産、加齢、慢性的な腹圧上昇などの要因により、仙骨子宮靭帯が緩んだり損傷したりすると、骨盤内臓器の支持性が低下し、様々な問題が生じる可能性があります。
特に、仙骨子宮靭帯の弱化は骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤など)の主要な原因の一つです。

また、仙骨子宮靭帯の問題は、仙骨への牽引や骨盤の不安定化、周囲の神経への影響などを介して、腰痛や臀部痛を引き起こすことがあります。
月経周期や特定の動作に関連する骨盤深部痛、性交痛、排便・排尿トラブルなどの症状を伴うことも少なくありません。

仙骨子宮靭帯に関連する痛みや症状は、日常生活の質を著しく低下させる可能性があります。
これらの症状に心当たりがある場合は、自己判断せず、婦人科医や泌尿器科医などの専門医に相談することが大切です。
適切な診断を受けることで、骨盤底筋トレーニング、ペッサリーによる支持、あるいは手術(仙骨腟固定術など)といった様々な治療選択肢の中から、ご自身の状態に合った最適な治療法を見つけることができるでしょう。

仙骨子宮靭帯や骨盤底の健康は、女性が快適な生活を送る上で非常に重要です。
体の変化に気づいたら、ためらわずに医療機関を受診しましょう。

免責事項:
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療法を推奨するものではありません。
個々の症状に関しては、必ず専門の医療機関で医師にご相談ください。
記事の情報に基づいて行われた行為によって生じた損害について、当方は一切の責任を負いかねます。

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