ヤーズ28錠は、月経困難症や子宮内膜症に伴う疼痛の改善、そして避妊目的で処方される超低用量ピル(OC/LEP)の一つです。女性ホルモンである卵胞ホルモンと黄体ホルモンが低用量で配合されており、ホルモンバランスを調整することで様々な効果をもたらします。正しく服用することで、生理痛やPMS(月経前症候群)の症状を和らげ、計画的なライフスタイルをサポートする避妊効果も期待できます。
しかし、すべての薬と同様に、ヤーズ28にも正しい飲み方や注意点、そして副作用が存在します。特に、服用を検討する上で最も懸念されることの一つに血栓症のリスクがあります。この血栓症については、正しい知識と適切な対応を知っておくことが非常に重要です。
この記事では、ヤーズ28錠について、その効果や期待できること、具体的な飲み方、注意すべき副作用、そしてヤーズフレックスという似た名前のピルとの違いなど、服用を検討している方や現在服用中の方が知っておくべき情報を詳しく解説します。ヤーズ28に関する疑問や不安を解消し、ご自身の健康管理に役立てるための一助となれば幸いです。
ヤーズ28とは?期待できる効果
ヤーズ28錠は、ドロスピレノン(黄体ホルモン)とエチニルエストラジオール(卵胞ホルモン)という2種類の女性ホルモンが配合された超低用量ピルです。ホルモン量が非常に少ないため、従来の低用量ピルと比較して副作用が軽減されているとされています。主に、つらい生理の症状を和らげたり、妊娠を望まない期間の避妊のために使用されます。
配合されている黄体ホルモンであるドロスピレノンには、体内の水分やナトリウムの貯留を抑える作用(抗ミネラルコルチコイド作用)や、男性ホルモンの働きを抑える作用(抗アンドロゲン作用)があることが特徴です。これにより、ピル服用中に起こりやすいむくみや、ニキビ、多毛といった症状の改善も期待できる場合があります。
ヤーズ28錠が処方される主な目的は以下の通りです。
月経困難症への効果
月経困難症とは、生理中に日常生活に支障をきたすほどのつらい症状(腹痛、腰痛、吐き気、頭痛、倦怠感など)が現れる状態を指します。ヤーズ28錠を服用することで、月経困難症の症状を効果的に軽減することが期待できます。
その仕組みは、ヤーズ28錠に含まれるホルモンが脳に作用し、卵胞の発育や排卵を抑制することにあります。排卵が抑制されると、卵巣から分泌されるホルモンの変動が小さくなり、子宮内膜の増殖が抑えられます。生理は、増殖した子宮内膜が剥がれ落ちる際に起こりますが、内膜の厚みが抑えられることで、剥がれ落ちる量も減り、結果として生理の出血量が減少し、それに伴う子宮の収縮も穏やかになります。この子宮の過度な収縮が生理痛の主な原因の一つであるため、痛みが軽減されるというわけです。
また、子宮内膜でプロスタグランジンという痛みを引き起こす物質の産生が抑制されることも、月経困難症の改善に寄与します。生理痛だけでなく、生理に伴う頭痛や吐き気、腰痛といった全身の症状も緩和されることが多いです。
避妊効果について
ヤーズ28錠は、適切に服用した場合に高い避妊効果が期待できます。避妊効果が発揮される主なメカニズムは以下の3つです。
1. 排卵の抑制: ピルに含まれるホルモンが脳下垂体に作用し、卵巣からの卵子の放出(排卵)を抑制します。排卵がなければ、妊娠は成立しません。これが最も主要な避妊メカニズムです。
2. 頚管粘液の変化: 子宮の入り口にある頚管の粘液を変化させ、精子が子宮内に入りにくくします。
3. 子宮内膜の変化: 子宮内膜を着床しにくい状態に変化させます。
これらの作用により、正しく毎日決まった時間に服用することで、非常に高い確率で妊娠を防ぐことができます。一般的に、ヤーズ28のようなOC/LEPを正しく服用した場合の避妊成功率は99%以上と報告されています。ただし、これは「理想的な使用(飲み忘れなく毎日同じ時間に服用)」をした場合であり、「一般的な使用(飲み忘れなどを含む)」での避妊成功率はこれより少し下がるとされています。確実に避妊効果を得るためには、医師や薬剤師から指導された通り、毎日忘れずに服用することが極めて重要です。
子宮内膜症に伴う疼痛改善
子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所(卵巣、腹膜など)にできる病気です。この病巣は生理周期に合わせて増殖・剥離を繰り返し、炎症や周囲組織との癒着を引き起こし、強い生理痛や慢性的な骨盤痛、性交時痛などの原因となります。
ヤーズ28錠は、子宮内膜症に伴うこれらの痛みを改善する効果も期待できます。ピルに含まれるホルモンが、異所性にできた子宮内膜症病巣の増殖を抑制し、活動を抑えることで、炎症や痛みを軽減します。月経困難症と同様に、排卵を止め生理の回数を減らすことで、病巣の活動が抑えられ、痛みの緩和につながります。ヤーズ28は、月経困難症の改善に加え、子宮内膜症の治療薬としても用いられます。
ただし、ヤーズ28錠は子宮内膜症そのものを完全に治癒させる薬ではなく、あくまで病巣の進行を抑制し、痛みを和らげる対症療法の一つです。治療方針については、病状や医師の判断によって異なります。
ヤーズ28の正しい飲み方と注意点
ヤーズ28錠を安全かつ効果的に服用するためには、正しい飲み方を理解し、いくつかの注意点を守ることが非常に重要です。処方されたシートには28錠の錠剤が含まれており、それぞれに飲むべき順番が決められています。
28日周期の服用方法
ヤーズ28錠は、28日を1周期として毎日1錠ずつ服用します。シートには24錠の実薬(有効成分が含まれているピンク色の錠剤)と、4錠の偽薬(有効成分が含まれていない白色の錠剤)が入っています。
服用は、シートに記載されている順番に従って、毎日決まった時間に水またはぬるま湯で飲みます。時間はいつでも構いませんが、毎日同じ時間に服用することで飲み忘れを防ぎやすくなります。食前・食後どちらでも服用できますが、服用時間が毎日大きく異ならないように注意しましょう。
24日間連続で実薬を服用した後、続く4日間は偽薬を服用します。この偽薬を服用している期間に、通常は生理に似た出血(消退出血)が起こります。
飲み始め方と2シート目以降
ヤーズ28錠を初めて服用する場合、通常は生理が始まった日(月経第1日目)から服用を開始します。生理が始まった日から数日遅れて開始することも可能ですが、この場合は服用開始から最初の7日間はコンドームなどの他の避妊法を併用する必要があります。必ず医師の指示に従って飲み始めてください。
1シート28錠をすべて飲み終えたら、翌日から続けて新しいシートの服用を開始します。実薬の最後の錠剤を飲んだ日の翌日、または偽薬の最後の錠剤を飲んだ日の翌日に、新しいシートの1錠目(実薬)を飲み始めます。偽薬期間中に消退出血が終わっていなくても、次のシートを開始することが重要です。休薬期間を設けてしまうと、避妊効果が低下する可能性があります。
2シート目以降も、この28日周期を繰り返し、毎日忘れずに服用を続けることで、効果が維持されます。
飲み忘れた場合の対処法
ヤーズ28錠は、毎日決まった時間に服用することが効果を維持するために非常に重要です。もし飲み忘れてしまった場合は、飲み忘れた日数や時期によって対応が異なります。対処法は、必ず医師や薬剤師から事前に指導を受けておくか、添付文書を確認してください。一般的な対処法は以下の通りです(ただし、必ず専門家の指示に従ってください)。
1錠飲み忘れた場合: 飲み忘れたことに気づいた時点で、すぐに飲み忘れた1錠を服用します。そして、その日の分も通常通り服用します。つまり、一度に2錠服用することになります。この場合、通常は避妊効果が維持されると考えられます。
2錠以上飲み忘れた場合: 飲み忘れた錠数が2錠以上の場合や、シートの特定の時期(例えば、最初の週や最後の週)に飲み忘れた場合は、避妊効果が低下している可能性が高くなります。気づいた時点で直ちに最後に飲み忘れた1錠を服用し、それ以降は通常通り服用を続けますが、服用開始から7日間は他の避妊法(コンドームなど)を併用する必要があります。もし飲み忘れがあった周期に性交渉があった場合は、妊娠の可能性についても考慮し、医師に相談してください。
偽薬期間(白色の錠剤)の飲み忘れは、有効成分が含まれていないため、特に問題ありません。ただし、偽薬期間が長くなると避妊効果が低下する可能性があるため、できるだけスケジュール通りに服用することが望ましいです。
生理(消退出血)について
ヤーズ28錠を服用している間に起こる出血は、「生理」ではなく「消退出血」と呼ばれます。これは、実薬の服用を止めて偽薬を服用する期間に、体内のホルモン濃度が一時的に低下することによって起こる、子宮内膜からの出血です。
消退出血は通常、偽薬を服用している期間(4日間)の間に始まります。出血量や期間は通常の生理よりも少なく、短いことが多いです。また、出血が全く起こらない場合もあります。偽薬期間に出血がなくても、次のシートを予定通り開始することが重要です。偽薬期間に消退出血がなかった場合でも、妊娠の可能性が低いことを確認するためにも、医師に相談することをお勧めします。特に、実薬を飲み忘れたり、他の薬との相互作用が疑われる場合で、消退出血がなかった場合は、妊娠検査薬を使用するか医師に相談して妊娠の可能性を否定する必要があります。
勝手に休薬しても大丈夫?
ヤーズ28錠は、月経困難症や子宮内膜症の治療、避妊目的のために継続して服用することが前提の薬です。自己判断で服用を中断したり、休薬期間を勝手に設けたりすることは絶対に避けましょう。
勝手に休薬することによるリスクは以下の通りです。
避妊効果の消失: 服用を中断すると排卵が再開し、避妊効果がなくなります。妊娠を望まない場合は、他の避妊法を行う必要があります。
不正出血: 服用パターンが変わることでホルモンバランスが崩れ、予期せぬ不正出血が起こりやすくなります。
元の症状の再燃: 月経困難症や子宮内膜症の治療で服用していた場合、症状(生理痛など)が再び悪化する可能性があります。
血栓症のリスク: ピル服用による血栓症リスクは、服用開始後数ヶ月が最も高いとされています。自己判断で服用を中断・再開を繰り返すと、その度にリスクが上昇する可能性が指摘されています。
もし服用を中止したい場合は、必ず事前に医師に相談し、適切な中止方法やその後の健康管理について指導を受けてください。
ヤーズ28とヤーズフレックスの違い
ヤーズ28錠とヤーズフレックス錠は、どちらもバイエル薬品から販売されている超低用量ピルであり、有効成分としてドロスピレノンとエチニルエストラジオールを同じ量だけ配合しています。しかし、その服用方法や適応症には重要な違いがあります。
比較項目 | ヤーズ28錠 | ヤーズフレックス錠 |
---|---|---|
服用方法 | 実薬24錠 + 偽薬4錠を毎日1錠服用(計28日周期) | 実薬のみ最長120日まで連続服用、出血があれば休薬期間 |
服用日数 | 28日周期固定 | 最長120日まで連続可能 |
適応症 | 月経困難症、子宮内膜症に伴う疼痛、避妊 | 月経困難症、子宮内膜症に伴う疼痛 |
偽薬の有無 | あり(4錠) | なし |
生理(消退出血)の頻度 | 毎周期(28日ごと)に発生 | 服用期間に応じて調整可能(生理回数を減らせる) |
服用日数の違い
最も大きな違いは、服用する実薬の日数です。ヤーズ28は24日間の実薬服用後に4日間の偽薬期間を設ける28日固定周期です。これにより、毎月決まった時期に消退出血が起こります。
一方、ヤーズフレックスは、基本的に最長120日間連続して実薬を服用します。服用期間中に出血がない場合はそのまま継続し、出血があった場合には、出血が3日以上続いた場合に最大4日間の休薬期間を設けます。その後、出血が止まっているかに関わらず、再び実薬の服用を開始します。この柔軟な服用方法により、生理(消退出血)の回数を年に数回に減らすことが可能です。
適応症の違い
ヤーズ28錠は、月経困難症、子宮内膜症に伴う疼痛、そして避妊の3つの適応症を持っています。
対して、ヤーズフレックス錠の適応症は、月経困難症と子宮内膜症に伴う疼痛のみであり、避妊には適応がありません。ヤーズフレックスは生理の回数を減らすことで、これらの疾患に伴う痛みを軽減することを主な目的としています。ヤーズフレックス服用中に避妊を希望する場合は、必ず他の避妊法を併用する必要があります。
偽薬の有無
ヤーズ28錠は、シートに24錠の実薬と4錠の偽薬が含まれています。偽薬は、服用習慣を継続させるために含まれており、飲み忘れを防ぐ役割も果たします。
ヤーズフレックス錠には、偽薬はありません。すべて実薬のシートとなっており、出血パターンに合わせて休薬期間を設ける点が特徴です。
ヤーズフレックスは生理の回数を減らしたい方には魅力的ですが、不正出血が起こりやすいという側面もあります。どちらのピルがご自身の症状やライフスタイルに適しているかは、医師とよく相談して決めることが重要です。
ヤーズ28の主な副作用
ヤーズ28錠は、超低用量ピルであるため比較的副作用が少ないとされていますが、全くないわけではありません。ホルモン剤であるため、体内のホルモンバランスの変化に伴う様々な症状が現れる可能性があります。副作用の感じ方には個人差があり、飲み始めの数ヶ月は体が慣れるまで症状が出やすい傾向がありますが、多くの場合、服用を続けるうちに軽減していきます。
起こりやすい副作用(太る?眠気?)
ヤーズ28の服用で比較的起こりやすいとされる副作用には、以下のようなものがあります。
不正出血: シートの途中で生理以外の出血が見られることがあります。飲み始めによく起こりますが、通常は服用を続けるうちに落ち着きます。出血量が多い場合や長く続く場合は医師に相談が必要です。
吐き気、嘔吐: 服用初期に現れることがあります。服用時間を夕食後など寝る前にすることで軽減されることがあります。
頭痛: 軽度な頭痛が起こることがあります。
乳房の張り、痛み: ホルモンの影響で乳房が張ったり、痛んだり感じることがあります。
感情の変化: 気分の落ち込みやイライラなど、精神的な変化を感じる人もいます。
腹痛、下痢: 消化器系の不調が現れることがあります。
体重増加(太る?)については、ピルを服用すると太るというイメージを持つ方も多いですが、ヤーズに含まれるドロスピレノンには抗ミネラルコルチコイド作用があり、むくみを軽減する効果があるため、体重増加をきたしにくい、あるいはむくみが改善して痩せたように感じる人もいます。大規模な研究では、ピル服用と体重増加の明確な因果関係は示されていません。もし体重増加が気になる場合は、食生活や運動習慣の見直しも合わせて検討しましょう。
眠気については、ヤーズ28の添付文書に記載されている副作用ではありませんが、ホルモンバランスの変化によって倦怠感や眠気を感じる人もいるかもしれません。もし眠気がひどい場合は、医師に相談してみましょう。
これらの副作用の多くは軽度であり、体の慣れとともに改善することが多いです。しかし、症状が辛い場合や長く続く場合は、自己判断せずに必ず医師に相談してください。他の種類のピルへの変更や、症状を和らげるための対処法についてアドバイスをもらえるでしょう。
重大な副作用(血栓症など)
ヤーズ28錠を含むOC/LEPの服用で、最も注意が必要な副作用は血栓症(血の塊ができる病気)です。血栓症は命に関わる可能性のある重大な副作用であり、そのリスクはゼロではありません。ピルを服用していない女性と比較して、OC/LEP服用中は血栓症を発症するリスクがわずかに高まります。ただし、妊娠中や分娩後と比較すると、ピル服用中の血栓症リスクは低いとされています。
血栓症は、血管の中に血の塊(血栓)ができ、血管を詰まらせることで、様々な臓器に障害を引き起こす病気です。肺(肺血栓塞栓症)、足(深部静脈血栓症)、脳(脳梗塞)、心臓(心筋梗塞)などで発生する可能性があります。
血栓症の初期症状には、以下のようなものがあります。これらの症状に気づいたら、すぐにピルの服用を中止し、医療機関を受診してください。
突然の息切れ、呼吸困難、胸の痛み(特に深呼吸や咳をしたとき)
片方の足や腕の急な痛み、腫れ、赤み、熱感(特にふくらはぎ)
激しい頭痛(特に今まで経験したことのない突然の頭痛)
めまい、失神
手足のしびれ、脱力、麻痺
視野の異常、見えにくさ
しゃべりにくい、言葉が出にくい
血栓症のリスクを高める要因としては、喫煙、肥満(BMIが高い)、年齢(特に35歳以上)、高血圧、糖尿病、脂質異常症、血栓症の家族歴、長時間の乗り物移動(エコノミークラス症候群)、手術後などが挙げられます。特に喫煙は血栓症リスクを著しく高めるため、ピル服用中は禁煙することが強く推奨されます。
血栓症以外にも、まれではありますが以下のような重大な副作用が報告されています。
アナフィラキシー様症状: 全身の発疹、じんましん、息苦しさなど重いアレルギー反応。
肝機能障害、黄疸: 肝臓の働きが悪くなる。
視力障害: 血栓症によるものを含む視力の低下や視野の異常。
これらの副作用についても、異常を感じたらすぐに医療機関を受診することが必要です。
副作用が現れた時の対応
ヤーズ28錠の服用中に副作用が現れた場合、その症状によって対応が異なります。
軽度な副作用(不正出血、吐き気、頭痛、乳房の張りなど):
飲み始めによく見られる症状で、多くの場合、体が慣れるにつれて数ヶ月以内に自然に改善します。症状が我慢できる範囲であれば、そのまま服用を続けて様子を見ることが一般的です。しかし、症状が強く辛い場合や、長く続く場合は、自己判断せずに処方してもらった医師に相談してください。他の種類のピルへの変更や、症状を和らげる対症療法が検討されることがあります。
重大な副作用(血栓症を疑う症状など):
前述したような血栓症の初期症状(激しい頭痛、息切れ、手足の痛み・腫れなど)や、その他重大な副作用を疑う症状が現れた場合は、直ちにヤーズ28の服用を中止し、すぐに医療機関を受診してください。救急性の高い状態である可能性があるため、ためらわずに医療機関に連絡することが重要です。受診する際は、ピルを服用していることを必ず医師に伝えてください。
副作用について不安がある場合は、どんな些細なことでも構いませんので、必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。正確な情報と適切なアドバイスを得ることが、安全にピルを服用するために最も大切です。
ヤーズ28を服用できない人・注意が必要な人
ヤーズ28錠は、女性ホルモンの働きに影響を与える薬であるため、すべての人に安全に服用できるわけではありません。特定の健康状態にある方や、特定の薬を服用している方は、ヤーズ28を服用することで健康上のリスクが高まる可能性があります。医師は診察の際に、問診や検査を通じてこれらのリスク因子がないかを確認し、ヤーズ28を処方しても問題ないかを判断します。
服用禁忌・慎重投与
以下に該当する方は、原則としてヤーズ28を服用することができません(服用禁忌)。また、以下には該当しないものの、特定の状態にある方は、服用する際に特に慎重な検討と注意が必要となる場合があります(慎重投与)。ご自身の健康状態や病歴について、正確に医師に伝えることが非常に重要です。
【服用禁忌(原則として服用できない方)】
血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患またはその既往歴がある方: 血栓症を起こすリスクが極めて高いため。
血栓症のリスク因子が複数ある方: 特に、高年齢、喫煙者、肥満(BMI≧30)、家族歴、高血圧、弁膜症、心房細動、長期間寝たきりの状態、大きな手術を受けた後など。
診断されていない異常性器出血がある方: 出血の原因を特定するまで服用できません。悪性腫瘍の可能性を否定するため。
重度の肝機能障害または肝腫瘍がある方: 薬の代謝に影響が出る可能性があるため。
腎機能障害または副腎機能障害がある方: ドロスピレノンの抗ミネラルコルチコイド作用により、カリウム値に影響が出る可能性があるため。
ホルモン依存性悪性腫瘍(乳がん、子宮体がんなど)またはその疑いがある方: ホルモンが腫瘍の増殖を促進する可能性があるため。
妊娠中または妊娠している可能性のある方、授乳中の方: 胎児や乳児への影響が懸念されるため。
本剤の成分に対し過敏症の既往歴がある方: アレルギー反応を起こす可能性があるため。
片頭痛(前兆を伴う)がある方: 脳卒中のリスクを高める可能性があるため。
重症の糖尿病、高血圧症がある方: 血栓症のリスクが高まるため。
耳硬化症(妊娠中に悪化したことがある方)がある方: 症状が悪化する可能性があるため。
【慎重投与(服用に注意が必要な方)】
軽度の肝機能障害、腎機能障害がある方
軽度の高血圧症、糖尿病、脂質異常症がある方
てんかん、うつ病、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性大腸炎、溶血性尿毒症症候群、鎌状赤血球症など、特定の疾患がある方
肥満の方
家族に血栓症の既往がある方
高齢者(一般的に40歳以上で血栓症リスクが上昇)
喫煙者(特に35歳以上で血栓症リスクが著しく上昇)
これらの情報に加え、医師は患者さんの生活習慣(喫煙、飲酒、運動習慣)、既往歴、家族歴などを総合的に判断し、ヤーズ28が適切かどうかを判断します。自己判断せず、必ず正直に正確な情報を医師に伝えるようにしましょう。
飲み合わせに注意が必要な薬
ヤーズ28錠は、他の薬や健康食品と併用することで、相互作用が起こり、ヤーズの効果が弱まったり、逆に効果が強まって副作用が出やすくなったり、併用している薬の効果に影響が出たりする可能性があります。ヤーズ28を服用する際は、現在服用しているすべての薬、OTC医薬品(市販薬)、サプリメント、健康食品などを必ず医師や薬剤師に伝えてください。
特に注意が必要なのは以下のようなものです。
セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品: ピルの効果を弱め、不正出血や避妊失敗のリスクを高める可能性があります。
特定の抗生物質: 一部の抗生物質(テトラサイクリン系、ペニシリン系など)は、腸内細菌に影響を与え、ピルの吸収を妨げる可能性が指摘されています(ただし、この相互作用については議論があり、影響は限定的という意見もあります)。念のため、併用する場合は医師に相談し、必要に応じて他の避妊法を併用することが推奨されます。
特定の抗真菌薬: ピルの血中濃度を上昇させ、副作用が出やすくなる可能性があります。
特定の抗HIV薬: 相互作用により、ピルまたは抗HIV薬の効果に影響が出る可能性があります。
特定の抗けいれん薬(てんかん治療薬など): ピルの代謝を促進し、効果を弱める可能性があります。
特定の解熱鎮痛薬: 一部の成分(アセトアミノフェンなど)との相互作用が報告されています。
血糖降下薬: 糖尿病治療薬の効果に影響を与える可能性があります。
ラモトリギン(てんかん治療薬): ラモトリギンの効果を弱める可能性があります。
これらは代表的な例であり、ここに挙げられていない薬や食品でも相互作用が起こる可能性はあります。必ず専門家に確認するようにしてください。飲み合わせに問題がないか確認することは、ヤーズ28を安全に服用する上で非常に重要です。
ヤーズ28に関するよくある質問
ヤーズ28錠について、服用を検討している方や服用中の方がよく抱く疑問について解説します。
海外での避妊効果は?
ヤーズ28錠(有効成分:ドロスピレノン、エチニルエストラジオール)は、世界中で広く使用されているOC/LEPです。日本国内では、月経困難症、子宮内膜症に伴う疼痛、そして避妊の適応で承認されています。海外においても、ヤーズと同様の成分・用量のピル(例えば、アメリカでは Yaz という商品名で販売)は、避妊薬として広く使われており、適切な使用下では高い避妊効果が認められています。
したがって、有効成分や用量が同一であれば、海外で販売されているヤーズと同等のピルも避妊効果は期待できます。ただし、個人輸入などで入手した海外製品は、品質や成分が保証されない偽造薬のリスクや、添付文書が読めずに正しい飲み方や注意点、副作用のリスクを理解できない危険性があります。医薬品は必ず医療機関で処方されたものを服用することが最も安全です。
ヤーズと他のピルの違いは?
ヤーズ28錠は「超低用量ピル」に分類され、配合されている卵胞ホルモンの量が50μg未満のものを指します。特にヤーズ28は卵胞ホルモン量が20μgと非常に少なく、「超低用量」の中でも最も少ない部類に入ります。低用量ピルは卵胞ホルモン量が50μg未満ですが、20μgより多いものが多いです。超低用量ピルは、低用量ピルよりも副作用(特に吐き気や頭痛、むくみなど)が軽減されていると考えられています。
ヤーズ28のもう一つの特徴は、配合されている黄体ホルモンが「ドロスピレノン」であることです。ドロスピレノンは、他のピルに含まれる黄体ホルモンとは異なり、抗ミネラルコルチコイド作用(むくみや体重増加を抑える効果)や抗アンドロゲン作用(ニキビや多毛を改善する効果)を持つとされています。
他のピルには、配合されているホルモンの種類や量、周期の中でのホルモン量の変化パターン(1相性、2相性、3相性など)によって様々な種類があります。例えば、月経困難症の治療薬として使用されるLEPには、ヤーズ28の他に、ルナベル、フリウェル、ジェミーナなどがあり、それぞれ特徴が異なります。
どのピルが適しているかは、個人の症状、体質、ライフスタイル、治療目的(月経困難症治療なのか、避妊も含むのかなど)によって異なります。必ず医師と相談し、ご自身に最適なピルを選択することが重要です。
体重が増えることはありますか?
ピルの服用によって体重が増えることを心配される方は多くいますが、ヤーズ28に含まれる黄体ホルモンであるドロスピレノンは、むくみの原因となる水分やナトリウムの貯留を抑える働き(抗ミネラルコルチコイド作用)があるため、他のピルと比較して体重が増えにくい、むしろむくみが改善して体重が減るという方もいます。
多くの研究では、ピル服用と体重増加の間に明確な因果関係は認められていません。ピルを服用し始めて体重が増えたと感じる場合でも、それが本当にピルの影響なのか、食生活の変化や年齢に伴う変化なのかを区別することは難しいです。
もしヤーズ28の服用中に体重増加が気になる場合は、食事や運動習慣を見直したり、医師に相談したりすることをお勧めします。ピル以外の原因が考えられる場合や、他の種類のピルへの変更が検討される場合もあります。しかし、一般的にはヤーズ28の服用による顕著な体重増加は起こりにくいと考えられています。
ヤーズ28について医療機関に相談しましょう
ヤーズ28錠は、医師の処方箋が必要な医療用医薬品です。インターネットなどで個人輸入された製品は、品質や安全性が保証されておらず、偽造薬であるリスクや、正しい情報なしに服用することによる健康被害の危険性が非常に高いため、絶対に避けてください。
ヤーズ28の服用を検討している場合、あるいは服用中に疑問や不安が生じた場合は、必ず医療機関(産婦人科など)を受診し、医師に相談しましょう。
医師は、あなたの健康状態、既往歴、家族歴、現在服用中の薬などを詳しく確認し、ヤーズ28があなたにとって安全かつ適切な選択肢であるかを判断します。また、ヤーズ28の効果、正しい飲み方、起こりうる副作用(特に血栓症のリスクとそのサイン)について詳しく説明してくれます。不明な点や不安な点があれば、遠慮なく質問しましょう。
オンライン診療を活用しているクリニックもあります。対面での受診が難しい場合や、プライバシーに配慮したい場合には、オンラインで医師の診察を受けて処方を受けることも可能です。ただし、オンライン診療であっても、必ず正規の医療機関を利用するようにしましょう。
まとめ
ヤーズ28錠は、月経困難症や子宮内膜症に伴う痛みの改善、そして避妊効果が期待できる超低用量ピルです。有効成分であるドロスピレノンには、むくみを軽減する効果なども期待できます。
ヤーズ28を安全かつ効果的に使用するためには、毎日決まった時間に正しく服用することが非常に重要です。飲み忘れた場合の対処法や、偽薬期間中の出血について正しく理解しておく必要があります。また、ヤーズフレックスとは服用方法や適応症が異なる点に注意が必要です。
ピル服用による最も注意すべき副作用は血栓症です。血栓症の初期症状を理解し、疑われる症状が現れた場合には直ちに服用を中止し、医療機関を受診することが命を守るために不可欠です。その他にも様々な副作用の可能性があり、体調に異変を感じた場合は自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
ヤーズ28は、服用できない方や慎重な服用が必要な方がいらっしゃいます。ご自身の健康状態や服用中の薬について、正確な情報を医師に伝えることが大切です。
ヤーズ28に関するすべての疑問や不安は、必ず医療機関で専門家に相談してください。医師の適切な診断のもと、正しい知識を持って服用することで、ヤーズ28はあなたの健康とQOL(生活の質)向上に役立つ心強い味方となるでしょう。
免責事項:
本記事はヤーズ28錠に関する一般的な情報提供を目的としており、医療行為を代替するものではありません。個人の健康状態や状況に応じた診断、治療、服用の判断は、必ず医師の診察を受け、その指示に従ってください。本記事の情報に基づいて行われたいかなる行為についても、当方は責任を負いません。