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ウリプリスタル酢酸エステルとは?緊急避妊薬としての効果と生理への影響

ウリプリスタル酢酸エステルは、特定のホルモン受容体に作用することで、様々な効果をもたらす合成ステロイドです。
主に緊急避妊薬や子宮筋腫の治療薬として用いられています。
特に、緊急避妊薬としては「エラ」という製品の有効成分として知られ、性交後最大120時間(5日)以内まで高い避妊効果が期待できることから、注目されています。
しかし、その効果や安全性については、正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、ウリプリスタル酢酸エステルについて、その定義から緊急避妊薬としての効果、副作用、生理への影響、服用上の注意点まで、詳しく解説していきます。

定義と分類

ウリプリスタル酢酸エステル(Ulipristal Acetate, UPA)は、経口活性を持つ合成のステロイド化合物です。
薬理学的には、プロゲステロン受容体に対する選択的モジュレーター(SPRM)に分類されます。
これは、プロゲステロンという女性ホルモンが体内で働く際に必要な「受容体」に、ウリプリスタル酢酸エステルが結合し、プロゲステロンの働きを調整するというメカニズムです。

主な用途(緊急避妊薬、子宮筋腫治療薬)

ウリプリスタル酢酸エステルは、主に二つの異なる目的で臨床的に使用されています。

一つは緊急避妊薬(アフターピル)としての使用です。
予期せぬ性交後や避妊に失敗した場合に、妊娠を回避するために服用されます。
特に、性交後72時間を超えてしまった場合でも、最大120時間(5日)以内であれば避妊効果が期待できる点が大きな特徴です。
製品名としては「エラ(ella)」などが知られています。

もう一つは子宮筋腫治療薬としての使用です。
子宮筋腫は、子宮の筋肉組織にできる良性の腫瘍で、月経量の増加や貧血、下腹部痛などの症状を引き起こすことがあります。
ウリプリスタル酢酸エステルは、子宮筋腫のサイズを縮小させたり、関連症状(特に過多月経)を改善したりするために用いられます。
この用途では、緊急避妊薬よりも長期にわたって服用されることがあります。

このように、ウリプリスタル酢酸エステルは、作用するホルモン受容体は同じですが、用途や投与量、投与期間によって異なる効果を発揮する薬剤です。

目次

緊急避妊薬エラとしての効果と避妊率

ウリプリスタル酢酸エステルが最もよく知られている用途の一つが、緊急避妊薬としての使用です。
特に製品名「エラ(ella)」として、世界中で利用されています。

エラ(ella)について

エラ(ella)は、ウリプリスタル酢酸エステル30mgを有効成分とする緊急避妊薬です。
日本国内では未承認ですが、海外では広く使用されており、個人輸入などで入手されることがあります。
国内で承認されている緊急避妊薬の主成分はレボノルゲストレルですが、エラは異なる作用機序を持ち、より長い時間枠での効果が期待できるとされています。

避妊効果と成功率(120時間以内)

緊急避妊薬は、性交後に服用することで、妊娠に至る可能性を低下させるものです。
ウリプリスタル酢酸エステルの緊急避妊効果は、主に排卵を抑制することによって発揮されます。

臨床試験の結果から、ウリプリスタル酢酸エステル(エラ)は、性交後120時間(5日)以内に服用した場合に、妊娠の確率を有意に低下させることが示されています。
特に、性交から時間が経過するほど避妊効果はわずかに低下する傾向がありますが、72時間を超えても一定の効果が維持される点が、他の緊急避妊薬との違いとして挙げられます。

具体的な避妊成功率については、様々な研究がありますが、一般的に性交後120時間以内の服用で、期待される妊娠件数を約半数から3分の1程度に抑制すると報告されています。
例えば、避妊をしなかった場合に妊娠するであろう100人の女性がウリプリスタル酢酸エステルを服用した場合、妊娠するのは1~2人程度になるというデータがあります。
ただし、これはあくまで確率であり、100%の避妊を保証するものではありません。
効果は服用までの時間、生理周期のどのタイミングで性交があったか、個人の体質などによって変動します。

ウリプリスタル酢酸エステルの作用機序

ウリプリスタル酢酸エステルが緊急避妊薬として機能する主なメカニズムは以下の通りです。

  • 排卵抑制: 最も重要な作用です。
    プロゲステロンは、排卵の引き金となるLHサージ(黄体形成ホルモンの急激な分泌増加)を引き起こすのに重要な役割を果たします。
    ウリプリスタル酢酸エステルはプロゲステロン受容体に作用することで、LHサージを抑制または遅延させ、排卵を妨げます。
    これにより、性交によって腟内に侵入した精子が卵子と出会う機会をなくします。
    排卵直前(LHサージの立ち上がり時期)に服用した場合でも、排卵を効果的に抑制できる点が、他のアフターピルよりも優れているとされる理由の一つです。
  • 子宮内膜への影響: 一部の研究では、ウリプリスタル酢酸エステルが子宮内膜に影響を与え、受精卵の着床を阻害する可能性も示唆されています。
    しかし、この作用機序は補助的であり、主に排卵抑制が主な避妊メカニズムと考えられています。
  • 卵管の運動性への影響: 卵子や受精卵が卵管を移動する際の運動性にも影響を与える可能性が考えられていますが、詳細なメカニズムは完全に解明されていません。

重要なのは、ウリプリスタル酢酸エステルは既に子宮に着床した妊娠に対しては効果がないということです。
つまり、人工妊娠中絶薬とは異なり、妊娠を継続している状態を中断させる作用はありません。

他のアフターピルとの違い

緊急避妊薬として現在主に使われているのは、ウリプリスタル酢酸エステル(エラなど)とレボノルゲストレル(ノルレボなど)です。
両者にはいくつかの違いがあります。

特徴 ウリプリスタル酢酸エステル(エラ) レボノルゲストレル(ノルレボなど)
有効成分 ウリプリスタル酢酸エステル レボノルゲストレル
服用期限 性交後120時間(5日)以内 性交後72時間(3日)以内が推奨
(一部の状況では120時間まで効果の可能性)
主な作用機序 排卵抑制、特に排卵直前でも効果が高い 主に排卵抑制
排卵直前での効果 高い効果が期待できる 効果が低下する可能性がある
食事の影響 特定のデータはないが、一般的に食事の影響は少ないとされる 脂質の多い食事で吸収が遅れる可能性がある
吐き気・嘔吐の頻度 レボノルゲストレルと比較して少ない傾向 比較的多い
入手方法(日本国内) 基本的に海外からの個人輸入(推奨されない) 医療機関での処方(国内承認薬)

最も大きな違いは、服用可能な時間枠です。
ウリプリスタル酢酸エステルは性交後120時間以内と、レボノルゲストレル(推奨72時間以内)よりも長く効果が期待できます。
また、排卵直前での効果もウリプリスタル酢酸エステルの方が高いとされています。

ただし、日本国内で正規に承認されている緊急避妊薬はレボノルゲストレル製剤のみです。
ウリプリスタル酢酸エステル製剤(エラ)を個人輸入で入手することは可能ですが、偽造品の危険性や健康被害が発生した場合の救済制度が受けられないリスクがあるため、推奨されません。
緊急避妊が必要な場合は、速やかに医療機関を受診し、医師の診察を受けて国内承認薬(レボノルゲストレル)を処方してもらうことが最も安全で確実な方法です。

ウリプリスタル酢酸エステルの副作用

医薬品には効果だけでなく、副作用のリスクも伴います。
ウリプリスタル酢酸エステルも例外ではありません。
緊急避妊薬として、また子宮筋腫治療薬として使用された際に報告されている副作用について解説します。

よく見られる副作用一覧

ウリプリスタル酢酸エステルを服用した際によく見られる副作用は、一般的に軽度で一時的なものが多いとされています。
報告されている主な副作用は以下の通りです。

  • 頭痛: 最も頻繁に報告される副作用の一つです。
  • 悪心(吐き気): 吐き気を感じることがあります。
  • 腹痛: 下腹部を中心に痛みを伴うことがあります。
  • 疲労感: 体がだるく感じたり、疲れやすくなったりすることがあります。
  • めまい: 一時的にふらつきやめまいを感じることがあります。
  • 月経の変化: 予定していた生理とは異なる時期に出血したり、生理のタイミングや量が変化したりすることがあります(これについては後のセクションで詳しく解説します)。
  • 乳房の張りや痛み: 胸が張ったり、痛みを感じたりすることがあります。

これらの副作用は、服用後数時間から数日以内に現れることが多く、多くの場合自然に軽快します。
ただし、症状が重い場合や長く続く場合は、医療機関に相談することが重要です。

重大な副作用と注意点

ウリプリスタル酢酸エステルによる重篤な副作用は非常に稀ですが、全くないわけではありません。
特に子宮筋腫治療で長期に使用される場合に、肝機能への影響が報告されたケースがあります。

  • 肝機能障害: 子宮筋腫の治療で長期にわたって高用量のウリプリスタル酢酸エステルを服用した場合に、重度の肝機能障害が報告されたことがあります。
    このため、子宮筋腫治療薬として使用する際には、定期的な肝機能検査が推奨されています。
    緊急避妊薬として単回服用する場合には、重度の肝機能障害のリスクは極めて低いと考えられています。

緊急避妊薬として使用する際に特に注意すべき点は、服用後に不正出血があった場合でも、それが必ずしも避妊成功を意味するものではないことです。
また、重度の下腹部痛などが続く場合は、卵管妊娠(子宮外妊娠)の可能性も否定できないため、速やかに医療機関を受診する必要があります。

副作用が出た場合の対処法

ウリプリスタル酢酸エステル服用後に副作用が出た場合の一般的な対処法は以下の通りです。

  • 軽度の副作用(頭痛、吐き気など): 多くの場合、安静にしていれば自然に改善します。
    頭痛に対しては、市販の鎮痛剤(アセトアセトアミノフェンなど、ただし併用注意薬でないか確認)を服用することも可能ですが、不安な場合は医師や薬剤師に相談してください。
    吐き気がひどい場合は、水分をこまめに摂取し、消化の良いものを食べるようにしましょう。
    もし服用後3時間以内に嘔吐してしまった場合は、薬の成分が十分に吸収されていない可能性があるため、医療機関に連絡して再服用の要否を確認する必要があります。
  • 生理の変化: 服用後の生理周期の変化はよくあることです。
    予定日より早く来たり、遅れたりすることがあります。
    少量の不正出血が見られることもあります。
    これらの変化は一時的なものであることが多いですが、予定日を大幅に過ぎても生理が来ない場合や、出血が異常に多い・少ない、あるいは長期間続く場合は、必ず医療機関を受診してください。
    特に、予定生理が1週間以上遅れている場合は、妊娠の可能性を考慮し、妊娠検査薬を使用するか、医療機関で検査を受けることが推奨されます。
  • 重度の症状: 我慢できないほどの激しい腹痛、持続する強い吐き気や嘔吐、めまいがひどくて立てないなど、症状が重い場合や、息切れ、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)など肝機能障害を示唆するような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。

緊急避妊薬を服用した後は、性感染症を防ぐ効果はないため、必要な場合は検査を受けることも検討しましょう。
また、今後の避妊について医師や専門家と相談し、より確実な避妊方法を選択することが重要です。

服用と生理周期への影響

ウリプリスタル酢酸エステルはホルモンに作用する薬であるため、服用後の生理周期に影響を与える可能性が高いです。
どのような変化が起こりうるのか、また生理がこない場合に考えられることについて解説します。

服用後の生理の変化

ウリプリスタル酢酸エステル(緊急避妊薬)を服用した場合、最もよく見られる影響の一つがその後の生理周期の変化です。
具体的な影響は個人差がありますが、以下のようなパターンが報告されています。

  • 予定より早く生理が来る: 服用後数日から1週間程度で、少量の出血や、いつもより軽い生理のような出血が見られることがあります。
    これが本来の生理なのか、不正出血なのか判断が難しい場合もあります。
  • 予定通りに生理が来る: 服用しても、ほぼ予定通りのタイミングで生理が始まることもあります。
  • 予定より遅れて生理が来る: 最も一般的な影響の一つです。
    排卵を遅らせる作用があるため、その後の生理も予定より遅れることがあります。
    数日から1週間、あるいはそれ以上遅れることもあります。
  • 出血量の変化: いつもより出血量が多かったり少なかったりすることがあります。
  • 不正出血: 生理とは関係なく、少量の出血が断続的に見られることがあります。

これらの生理周期や出血パターンの変化は、薬の作用によって一時的にホルモンバランスが変動した結果として起こることがほとんどです。
服用後最初の生理は、いつもと異なるパターンになる可能性があることを理解しておきましょう。
多くの場合、次の周期には元のパターンに戻りますが、まれに数周期にわたって影響が続くこともあります。

服用後に生理がこない場合

ウリプリスタル酢酸エステルを服用した後、予定日から1週間以上経っても生理が来ない場合は、妊娠している可能性を考慮する必要があります。

ウリプリスタル酢酸エステルは高い避妊効果を持ちますが、100%ではありません。
服用タイミングが排卵後であった場合や、薬がうまく作用しなかった場合など、避妊に失敗する可能性はゼロではないのです。

生理が遅れている場合は、以下の対応を検討してください。

  • 妊娠検査薬の使用: 予定生理日から1週間以上遅れている場合、市販の妊娠検査薬で検査をしてみましょう。
    正確な結果を得るためには、適切な時期に正しく検査することが重要です。
  • 医療機関の受診: 妊娠検査薬で陽性反応が出た場合や、陰性でも生理が来ない状態が続く場合、あるいは不安な場合は、速やかに産婦人科などの医療機関を受診してください。
    医師による診察や検査で、妊娠の有無を確定できます。
    また、妊娠していた場合に子宮内妊娠か子宮外妊娠かを確認することも非常に重要です。
  • その他の原因: 妊娠以外にも、ストレス、体調不良、生活習慣の変化、別の病気など、生理が遅れる原因は様々です。
    妊娠の可能性が否定された後も生理不順が続く場合は、他の原因を調べるために医療機関を受診することをおすすめします。

緊急避妊薬を服用したこと自体が、精神的なストレスとなり、生理周期に影響を与えることもあります。
しかし、生理の遅れはまず妊娠の可能性を疑って対処することが大切です。

服用上の注意点

ウリプリスタル酢酸エステルを安全かつ効果的に使用するためには、いくつかの注意点があります。
特に、他の薬剤との相互作用や、特定の状態にある場合の服用については、十分な配慮が必要です。

授乳中の服用について

ウリプリスタル酢酸エステルを授乳中に服用することについては、添付文書や最新のガイドラインを確認することが重要です。
ウリプリスタル酢酸エステルは母乳中に移行することが確認されています。

緊急避妊薬として単回服用する場合、添付文書では、服用後一定期間は授乳を避けるよう指示されていることが多いです(例:服用後24時間など)。
これは、乳児への薬剤の影響を避けるためです。
具体的な避けるべき期間については、製品によって異なる場合があるため、必ず最新の添付文書や医師・薬剤師の指導に従ってください。

子宮筋腫治療薬として長期に服用する場合は、授乳中の安全性に関するデータが限られていることや、乳児への影響の可能性があることから、通常、授乳は中止することが推奨されます。

併用禁忌・注意薬

ウリプリスタル酢酸エステルは、特定の薬剤と一緒に服用することで、相互作用が起こる可能性があります。
これにより、ウリプリスタル酢酸エステルの効果が弱まったり、逆に副作用のリスクが高まったりすることがあります。
服用中の薬がある場合は、必ず医師や薬剤師に伝え、飲み合わせについて確認する必要があります。

特に注意が必要な薬剤には以下のようなものがあります。

  • CYP3A4酵素誘導薬: ウリプリスタル酢酸エステルは主にCYP3A4という肝臓の酵素によって代謝されます。
    この酵素の働きを強める薬(酵素誘導薬)と一緒に服用すると、ウリプリスタル酢酸エステルの分解が早まり、血中濃度が低下して避妊効果が弱まる可能性があります。
    例として、リファンピシン(抗生物質)、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール(いずれも抗てんかん薬)、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート、ハーブの一種)などが挙げられます。
    これらの薬剤を服用している場合は、ウリプリスタル酢酸エステルは推奨されないことがあります。
  • プロゲステロンを含む薬剤: ウリプリスタル酢酸エステルはプロゲステロン受容体に作用するため、プロゲステロンを含む薬剤(例:低用量ピル、ミニピル、黄体ホルモン製剤、子宮内システム(IUS)など)と同時に使用すると、それぞれの効果が打ち消し合ったり、予期せぬ影響が出たりする可能性があります。
    緊急避妊薬としてウリプリスタル酢酸エステルを服用した後、すぐに通常の避妊方法(低用量ピルなど)を開始する際には、開始タイミングや追加の避妊法(コンドームなど)の使用について、医師の具体的な指示を受ける必要があります。
  • 特定の抗HIV薬やアゾール系抗真菌薬など: CYP3A4酵素の働きを阻害する薬は、ウリプリスタル酢酸エステルの血中濃度を上昇させる可能性があり、副作用のリスクを高める可能性があります。

上記のリストは全てではありません。
現在服用している処方薬、市販薬、サプリメント、ハーブ製品など、全てについて必ず医師や薬剤師に申告し、ウリプリスタル酢酸エステルとの飲み合わせの安全性を確認してください。
自己判断での服用は危険です。

また、ウリプリスタル酢酸エステルは、既に妊娠している状態での妊娠維持には影響を与えませんが、子宮外妊娠に対しては効果がありません。
緊急避妊薬を服用しても、その後に重度の腹痛などの症状が現れた場合は、子宮外妊娠の可能性を疑い、速やかに医療機関を受診する必要があります。

添付文書から読み解く情報

医薬品の添付文書は、その薬に関する最も公式かつ詳細な情報源です。
ウリプリスタル酢酸エステルに関する情報も、添付文書には様々な重要な記載があります。
ただし、日本国内で流通しているのは海外製剤の個人輸入が主であり、その添付文書は日本語でない場合や、日本の規制とは異なる情報が含まれている可能性があります。

一般的に、医薬品の添付文書には以下の項目が含まれており、ウリプリスタル酢酸エステルに関しても同様です。

  • 製品名、一般名、有効成分: 薬の名前や有効成分の名前、含有量が記載されています。
  • 効能又は効果: どのような病気や症状に対して効果があるかが記載されています。
    緊急避妊薬としては「性交後における緊急避妊」などが、子宮筋腫治療薬としては「子宮筋腫に基づく症状(特に過多月経)の改善」などが記載されます。
  • 用法及び用量: 具体的にどのように服用するか、1回量、1日量、服用タイミングなどが詳細に指示されています。
    緊急避妊薬であれば「性交後○時間以内に1回×mgを服用」などが、子宮筋腫治療薬であれば「○ヶ月間、1日1回×mgを経口投与」などが記載されます。
  • 使用上の注意: 薬を使用する上で特に注意すべき事項が記載されています。
    • 慎重投与: 特定の病気を持っている患者や、特定の状態にある患者(例:肝機能障害、腎機能障害など)に投与する際に、特に注意が必要なケースが示されています。
    • 重要な基本的注意: 投与に際して知っておくべき重要な点や、患者への説明事項などが記載されています。
      例えば、緊急避妊薬の場合は「避妊効果は100%ではないこと」「性感染症を防ぐ効果はないこと」などが含まれます。
      子宮筋腫治療薬の場合は「定期的な肝機能検査の必要性」などが記載されます。
    • 特定の背景を有する者に関する注意: 高齢者、妊婦、授乳婦、小児など、特定の患者群への投与に関する注意点が記載されています。
      授乳中の服用を避けるべき期間などが具体的に示されることがあります。
    • 相互作用: 他の薬剤との飲み合わせに関する情報です。
      併用禁忌薬(一緒に服用してはならない薬)と併用注意薬(一緒に服用する際に注意が必要な薬)がリストアップされ、具体的な薬剤名や、相互作用によってどのような影響が出る可能性があるかが記載されています。
  • 副作用: 臨床試験や市販後の調査で報告された副作用の種類、頻度などが記載されています。
    重大な副作用とその他の副作用に分けて記載されていることが一般的です。
  • 薬物動態: 薬が体内でどのように吸収され、分布し、代謝され、排泄されるかに関する情報です。
    服用後どれくらいの時間で最高血中濃度に達するか、半減期はどのくらいかなどが記載されています。
    これは、効果が現れる時間や持続時間、服用間隔などを設定する根拠となります。
  • 薬効薬理: 薬が体内でどのように作用して効果を発揮するかのメカニズムが詳細に記載されています。
    プロゲステロン受容体への作用機序などが説明されます。
  • 臨床成績: 薬の有効性や安全性を評価するために行われた臨床試験の結果が記載されています。
    避妊成功率などのデータが示されます。

添付文書は専門的な言葉が多く含まれている場合もありますが、その薬を正しく理解し、安全に使用するために非常に重要な情報源です。
ウリプリスタル酢酸エステルを服用する機会がある場合は、入手した製剤の添付文書を必ず確認し、不明な点は医療専門家に質問するようにしましょう。
特に、海外製剤を個人輸入した場合は、日本の医療従事者がその製品の添付文書に精通しているとは限らないため、情報収集には十分注意が必要です。

よくある質問(Q&A)

ウリプリスタル酢酸エステルやそれを含む緊急避妊薬(エラ)に関して、よくある質問とその回答をまとめました。

ウリプリスタール法はアフターピルですか?

はい、ウリプリスタール法(ウリプリスタル酢酸エステルを有効成分とする緊急避妊法)は、緊急避妊(アフターピル)の一つです。
性交後、妊娠を回避するために使用される方法であり、避妊に失敗した場合や避妊できなかった場合の最終手段として用いられます。

「アフターピル」という言葉は、性交後に服用する避妊薬全般を指す通称であり、ウリプリスタル酢酸エステル製剤(エラなど)もレボノルゲストレル製剤(ノルレボなど)も、どちらもアフターピルに含まれます。
ウリプリスタル酢酸エステルは、より長い時間枠(120時間以内)での効果が期待できる点が特徴です。

ウリプリスタル酢酸エステルの効果は何ですか?(再掲・詳細化)

ウリプリスタル酢酸エステルには、主に以下の二つの臨床的な効果があります。

  • 緊急避妊効果: 性交後に服用することで、排卵を抑制または遅延させることにより、妊娠の可能性を低下させます。
    特に排卵直前の段階でも効果が期待できるとされており、性交後最大120時間以内まで効果が持続するとされています。
    ただし、既に受精・着床した妊娠を中断させる効果はありません。
  • 子宮筋腫に基づく症状の改善効果: 子宮筋腫のサイズを縮小させ、特に過多月経による出血量を減少させる効果があります。
    これにより、貧血の改善など、子宮筋腫に関連する症状の緩和が期待できます。
    この用途では、医師の管理のもと、一定期間継続して服用されます。

これらの効果は、いずれもウリプリスタル酢酸エステルが体内のプロゲステロン受容体に選択的に作用することによってもたらされます。
具体的な効果の現れ方や程度は、用途(緊急避妊か子宮筋腫治療か)、投与量、投与期間、個人の体質や状態によって異なります。

まとめ:ウリプリスタル酢酸エステルを正しく理解するために

ウリプリスタル酢酸エステルは、プロゲステロン受容体に作用する合成ステロイドであり、主に緊急避妊薬(エラなど)や子宮筋腫治療薬として使用されています。
緊急避妊薬としては、性交後最大120時間以内まで効果が期待できる点が特徴ですが、100%の避妊を保証するものではありません。
子宮筋腫治療薬としては、筋腫の縮小や症状緩和に効果を発揮します。

副作用として、頭痛、吐き気、腹痛などが比較的よく見られますが、多くは軽度で一時的です。
ただし、子宮筋腫治療での長期使用においては、稀に重篤な肝機能障害が報告されており、注意が必要です。
緊急避妊薬としての単回服用では、重篤な副作用のリスクは低いと考えられています。

服用後は生理周期に影響が出やすく、予定よりも早くまたは遅れて生理が来たり、不正出血が見られたりすることがあります。
予定生理が1週間以上遅れる場合は、妊娠の可能性を考慮し、妊娠検査や医療機関での診察を受けることが重要です。

また、ウリプリスタル酢酸エステルは特定の薬剤(CYP3A4誘導薬やプロゲステロン製剤など)と相互作用を起こす可能性があるため、服用中の薬がある場合は必ず医師や薬剤師に相談が必要です。
授乳中の服用に関しても注意が必要であり、添付文書や専門家の指示に従うべきです。

日本国内で正規に承認されている緊急避妊薬はレボノルゲストレル製剤のみであり、ウリプリスタル酢酸エステル製剤(エラ)は海外製剤の個人輸入が現状です。
個人輸入には偽造品の危険性や健康被害時の救済制度の問題など、様々なリスクが伴います。
緊急避妊が必要な場合は、安全のためにも速やかに医療機関を受診し、医師の診察のもと適切な薬剤を処方してもらうことが強く推奨されます。

ウリプリスタル酢酸エステルは有用な薬剤ですが、その効果、副作用、適切な使用方法、注意点について正しく理解し、必要に応じて医療専門家と相談しながら使用することが、自身の健康を守る上で最も重要です。

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