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疥癬はどのくらい感染する?感染率と病型別の感染リスク

疥癬は、皮膚の浅い部分に寄生する小さなダニによって引き起こされる皮膚の病気です。強いかゆみを伴い、適切な治療を受けないと自然に治ることはありません。疥癬の感染力は、原因となる疥癬の種類によって大きく異なり、「疥癬 感染率」について不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。この記事では、疥癬の種類ごとの感染経路や感染力、主な症状、そして感染を広げないための予防策について詳しく解説します。ご自身の症状や周囲の状況に不安がある方は、ぜひ最後まで読んで、適切な対応の参考にしてください。

疥癬とは?原因と種類

疥癬は、医学的には「疥癬症」と呼ばれ、ヒゼンダニ(ヒトヒゼンダニ)という非常に小さなダニが皮膚の角質層に寄生することで発症します。このダニが皮膚の中を掘り進んで「疥癬トンネル」を作り、卵を産むことで症状が現れます。疥癬は誰にでも感染する可能性があり、衛生状態が悪いからといってかかる病気ではありません。主に人から人へ感染します。

目次

疥癬の原因:ヒゼンダニとは

疥癬の原因となるヒゼンダニは、体長がわずか0.2mm~0.4mm程度の肉眼ではほとんど見えない小さな節足動物です。メスのダニは皮膚の角質層にもぐりこみ、トンネルを掘りながら1日に数個の卵を産み、約1ヶ月生存します。卵から孵化した幼虫は、数回の脱皮を経て成虫になり、再び皮膚内で繁殖を繰り返します。かゆみは、このダニの活動や糞、死骸などに対するアレルギー反応によって引き起こされると考えられています。

疥癬の種類:通常疥癬と角化型疥癬

疥癬には、症状や感染力が異なる「通常疥癬(つうじょうかいせん)」「角化型疥癬(かくかがたかいせん)」の二つのタイプがあります。

  • 通常疥癬: ダニの寄生数が比較的少ないタイプです。主に手や指の間、腕、わきの下、お腹などに赤いブツブツやかゆみが現れます。感染力はそれほど強くなく、感染には長時間にわたる皮膚の接触が必要です。
  • 角化型疥癬: 免疫力が低下している人(高齢者、寝たきりの人、免疫抑制剤を使用している人など)に多く見られる重症のタイプです。皮膚が厚く角化し、カサカサしたり、かさぶたのようになります。このタイプでは、皮膚に寄生しているダニの数が数百万匹から数百万匹と異常に多く、感染力が非常に強いのが特徴です。ノルウェーで最初に見つかったため、「ノルウェー疥癬」と呼ばれることもあります。

疥癬の主な感染経路と感染力

疥癬は主に人から人へ感染しますが、その感染力は疥癬の種類によって大きく異なります。

疥癬の感染経路:直接接触と間接接触

疥癬の主な感染経路は以下の二つです。

  • 直接接触: 感染者の皮膚と自分の皮膚が直接触れることによる感染です。疥癬トンネルは皮膚の浅い部分にあり、ダニは皮膚から離れると長く生存できません。そのため、通常疥癬の場合、感染には
    手をつなぐ、添い寝をする、長時間抱き合うといった、
    長時間かつ密接な皮膚接触が必要です。
  • 間接接触: 感染者が使用した寝具、衣類、タオルなどを介してダニが付着し、そこから皮膚に感染する経路です。通常疥癬では、ダニの数が少ないため間接接触での感染リスクは低いとされています。しかし、
    角化型疥癬の場合は、ダニの数が非常に多いため、短時間の接触や間接接触(同じベッドで寝る、同じタオルを使うなど)でも容易に感染が成立します。

通常疥癬の感染力

通常疥癬は、皮膚に寄生しているダニの数が数十匹から数百匹程度と少ないため、感染力は比較的弱いとされています。日常生活での短時間の接触(握手など)で感染することはほとんどありません。感染が成立するためには、
前述の通り、長時間にわたる密接な皮膚接触が必要となります。家庭内で感染が広がる場合も、同居家族間での添い寝や介護など、肌が触れ合う機会が多い場合に起こりやすい傾向があります。

角化型疥癬の感染力は非常に強い

角化型疥癬は、皮膚に寄生しているダニの数が桁違いに多く(数百匹から数百万匹)、感染力が極めて強いのが最大の特徴です。厚く角化した皮膚の中には大量のダニが含まれており、皮膚から剥がれ落ちたフケや垢にも生きたダニが付着しています。このため、
患者が触れたもの(寝具、衣類、床、椅子など)には大量のダニが付着している可能性が高く、短時間の接触や、同じ部屋にいるだけでも、環境中のダニを介して感染するリスクがあります。病院や高齢者施設などで集団感染を引き起こす原因となることが多いのが角化型疥癬です。

疥癬患者との接触による感染リスク

疥癬患者さんとの接触による感染リスクは、疥癬の種類(通常疥癬か角化型疥癬か)、接触の程度(時間、密接さ)、そして接触した相手の免疫状態など、いくつかの要因によって異なります。

  • 通常疥癬の場合: 日常的な短時間の接触であれば、感染のリスクは低いと考えられます。しかし、同居家族や介護者など、長時間・密接に肌が触れ合う機会が多い場合は、感染のリスクが高まります。患者さんと接触した後は、手洗いをしっかり行うなどの基本的な衛生対策が重要です。
  • 角化型疥癬の場合: ダニの数が非常に多いため、感染リスクは格段に高まります。短時間の皮膚接触だけでなく、患者さんが使用した寝具や衣類、触れた場所を介した間接的な接触でも感染が起こり得ます。角化型疥癬の患者さんと接する際には、手袋やガウンの着用、マスク、使い捨ての寝具カバーを使用するなど、徹底した感染予防策が必要となります。

風呂や寝具からの感染可能性

風呂や寝具は、疥癬の間接接触感染経路として注意が必要です。

  • 風呂: 同じ湯船に浸かるだけで通常疥癬がうつる可能性は低いとされています。しかし、脱衣所のマットや椅子、タオルなどを共有することで間接的に感染するリスクはゼロではありません。特に角化型疥癬の場合は、剥がれ落ちた角質に大量のダニが含まれている可能性があるため、注意が必要です。公衆浴場などでは、患者さんの協力と施設の衛生管理が重要になります。家庭内で患者がいる場合は、一番最後に入浴する、浴槽を洗う、タオルは使い分けるなどの配慮が望ましいです。
  • 寝具: ベッドや布団は、特に睡眠中に長時間肌が触れ合うため、感染が起こりやすい場所です。通常疥癬でも、同じベッドで添い寝をすることで感染するリスクがあります。角化型疥癬の場合、寝具には大量のダニや角質が付着しているため、
    同じ寝具を共有することは非常に危険です。使用した寝具は毎日交換し、適切に処理(洗濯・乾燥・掃除機掛けなど)する必要があります。

このように、疥癬の感染リスクは、主に接触の程度と疥癬の種類(ダニの数)によって大きく変わります。特に角化型疥癬は感染力が強いため、厳重な注意が必要です。

疥癬の症状と潜伏期間

疥癬に感染しても、すぐに症状が出るわけではありません。潜伏期間があり、その後特徴的な症状が現れます。

疥癬の初期症状と特徴

疥癬の最も特徴的な初期症状は、
激しいかゆみ
皮膚の発疹です。

  • 初期の発疹: 最初は虫刺されのような小さな赤いブツブツ(丘疹)として現れることが多いです。これらの発疹は、ダニが皮膚にもぐりこみやすい手や指の間、手首、ひじ、わきの下、お腹、股、お尻など、比較的皮膚の柔らかい部分や擦れやすい部分によく見られます。
  • かゆみ: 特に夜間、寝る前やお風呂で体が温まった時に強くなるのが疥癬のかゆみの大きな特徴です。これは、夜間にダニの活動が活発になるためと考えられています。かゆみがあまりに強いため、眠れなくなったり、かきむしって皮膚を傷つけてしまうこともあります。

疥癬トンネルの見つけ方(肉眼)

疥癬トンネルは、メスのヒゼンダニが皮膚の角質層に掘り進んだトンネルです。長さは数ミリから1センチメートル程度で、
皮膚の表面にできる、灰色がかった細い線状の盛り上がりとして肉眼でも確認できることがあります。先端には、ダニが小さな黒い点として見えることもあります。疥癬トンネルは、手や指の間、手首の内側、足の裏、陰部などに見られることが多いです。注意深く観察することで、診断の手がかりになります。

耐え難いかゆみ

疥癬のかゆみは、一般的な湿疹などによるかゆみとは異なり、非常に強いのが特徴です。「耐え難いかゆみ」と表現されることも多く、睡眠障害を引き起こすほどです。この激しいかゆみは、ヒゼンダニそのものよりも、ダニの糞や分泌物などに対する体の
アレルギー反応によって引き起こされると考えられています。かゆみが強いからといって、強くかきむしると皮膚が傷つき、細菌感染(二次感染)を起こしてとびひのような状態になることもあります。

症状の写真

(ここに疥癬トンネル、丘疹、結節、角化病変などの代表的な症状の写真が入ります。通常疥癬と角化型疥癬の違いを示す写真があると良いでしょう。)

潜伏期間について

疥癬の潜伏期間は、初めて感染した場合と、過去に感染したことがある場合(再感染)で異なります。

  • 初めて感染した場合: ダニが皮膚に寄生してから症状が現れるまで、通常
    4週間~6週間と比較的長い潜伏期間があります。この期間中は自覚症状がないため、知らないうちに周囲に感染を広げてしまう可能性があります。
  • 再感染の場合: 過去に疥癬にかかったことがある人が再び感染した場合、体がダニに対して既に免疫反応を起こしやすくなっているため、潜伏期間は短く、
    数日~2週間程度で症状が現れることが多いです。

角化型疥癬の場合は、免疫力が低下しているためにダニが異常繁殖しやすく、潜伏期間が通常疥癬よりも短い場合や、ダニが寄生してから比較的早期に症状が重くなる傾向があります。

疥癬の検査・診断

疥癬が疑われる場合、正確な診断のためには医療機関での検査が必要です。

ヒゼンダニの検出方法と検出率

疥癬の最も確実な診断方法は、皮膚からヒゼンダニそのものやその卵、糞などを検出することです。主な検出方法としては以下のものがあります。

  1. 顕微鏡検査: 疥癬トンネルや新しい発疹、角化病変などの病変部から、メスやセロハンテープなどを使って皮膚のごく一部を採取し、顕微鏡で観察する方法です。経験のある医師や検査技師が行えば、ダニ本体や卵、糞塊などを確認できます。ただし、通常疥癬の場合はダニの数が少ないため、採取部位によってはダニが見つからず、検出率が100%ではありません。
  2. ダーモスコピー検査: ダーモスコープという拡大鏡を使い、病変部を詳細に観察する方法です。皮膚を傷つけることなく、疥癬トンネルやその先端のダニの姿(「デルタ翼」のような特徴的な形に見えることがあります)を確認できる場合があります。これもダニの検出に役立ちますが、経験が必要です。

診断のポイント

疥癬の診断は、これらの検査結果と患者さんの
臨床症状(かゆみの特徴、発疹の種類や分布)、そして
周囲の感染状況(家族や施設内で同様の症状の人がいないか)などを総合的に判断して行われます。特に夜間に強いかゆみがあり、手や指の間などに特徴的な発疹がある場合は、疥癬が強く疑われます。診断には、皮膚科の専門医の診察を受けることが重要です。自己判断で市販のかゆみ止めなどを使用していると、診断が遅れたり、症状が非典型的になり診断を困難にすることがあります。

疥癬の治療法

疥癬は適切な治療薬を使用することで治癒が可能ですが、自己判断での治療は難しく、必ず医師の指導のもとで行う必要があります。

疥癬の治療薬と方法

疥癬の治療には、主にダニを駆除するための外用薬や内服薬が用いられます。

  • 外用薬:
    • イオウ含有軟膏: 比較的古くから使われている治療薬です。毎日全身に塗布します。かぶれやすい場合があるため注意が必要です。
    • クロタミトンクリーム(オイラックス®など): かゆみを抑える効果もあります。毎日全身に塗布します。ダニを駆除する効果はイオウ剤やペルメトリンほど強くないとされることもあります。
    • ペルメトリンクリーム(スミスリン®クリーム): 現在、通常疥癬の治療薬として最も一般的に推奨されている薬剤の一つです。体幹や四肢を中心に、首から下の全身に塗布し、一定時間(通常8~12時間)放置してから洗い流すという方法で用いることが多いです。週に1回など、決められた間隔で複数回使用します。高いダニ駆除効果が期待できます。
    • γ-BHCローション: かつて広く使われていましたが、副作用の懸念から日本では現在製造・販売されていません。
  • 内服薬:
    • イベルメクチン(ストロメクトール®): 経口で服用するダニ駆除薬です。体重に応じた量を1回服用し、必要に応じて1週間後に再度服用します。外用薬の塗布が困難な場合(全身に病変がある、寝たきりなど)や、角化型疥癬の治療に特に有効です。高いダニ駆除効果がありますが、妊娠中の女性や乳幼児、体重が15kg未満の小児などには使用できません。

通常疥癬にはペルメトリンクリームやイベルメクチンが、角化型疥癬にはイベルメクチンが第一選択薬となることが多いです。治療期間や使用方法は、患者さんの状態や疥癬の種類によって異なるため、必ず医師の指示に従ってください。

治療期間と再発予防

疥癬の治療期間は、症状が完全に消失するまで続けます。かゆみや発疹がすぐに消えるわけではなく、ダニが死滅してもアレルギー反応によるかゆみはしばらく続くことが多い(これを「疥癬後掻痒(かいせんごそうよう)」といいます)ため、治療効果の判定には時間が必要です。通常、
数週間から数ヶ月かかる場合もあります。自己判断で治療を中断すると、生き残ったダニが再び繁殖し、再発するリスクが高まります。医師から治療終了の指示があるまで、根気強く治療を続けることが重要です。

再発予防のためには、治療薬の使用だけでなく、以下の対策も並行して行う必要があります。

  • 患者さんの衣類や寝具の処理: ダニが付着している可能性のある衣類や寝具は、熱処理(50℃以上で10分以上の熱湯洗濯または乾燥機の使用)や適切な洗濯を行います。
  • 周囲の人への対応: 感染源となった患者さんと接触した可能性のある家族や共同生活者なども、症状の有無にかかわらず、同時に治療を開始したり、予防的に薬剤を使用したりすることが推奨される場合があります。これは、無症状の潜伏期間にある人からの感染拡大を防ぐためです。
  • 部屋の掃除: 特に角化型疥癬患者さんが使用した場所は、剥がれ落ちた角質に大量のダニがいる可能性があるため、毎日丁寧に掃除機をかけ、ダニを除去します。

これらの再発予防策は、特に集団発生を防ぐ上で非常に重要です。

疥癬の予防策

疥癬の感染を防ぐためには、早期発見と適切な対策が鍵となります。

家庭や施設での感染予防

家庭内や高齢者施設、病院など、人が集まる場所での疥癬の感染予防には、以下の点が重要です。

  • 早期発見と早期隔離: 疥癬を疑う症状(特に夜間の強いかゆみなど)がある場合は、速やかに医療機関を受診し、診断を確定させます。診断がついた場合は、可能な範囲で個室での対応や、不必要な他者との接触を避けるなどの対策を行います。
  • 標準予防策の徹底: 感染者だけでなく、すべての人に対して行うべき基本的な感染予防策です。特に、介護や医療行為など、患者さんの皮膚に触れる可能性がある場合は、
    使い捨て手袋やガウンを着用し、ケアの前後には
    流水と石鹸による手洗いまたはアルコール消毒を徹底します。手すりやドアノブなど、多くの人が触れる場所の清掃も重要です。
  • 衣類・寝具の適切な管理: 感染者が使用した衣類や寝具は、共有せず、適切に処理します(後述)。

衣類や寝具の衛生管理

ヒゼンダニは熱に弱いため、衣類や寝具に付着したダニを死滅させるためには、熱処理が有効です。

  • 洗濯・乾燥: 衣類やリネン類は、
    50℃以上の熱湯で10分以上洗濯するか、乾燥機を高温で使用することで、ほとんどのダニを死滅させることができます。通常の洗濯だけではダニは死滅しないため注意が必要です。
  • すぐに洗濯できないもの: すぐに洗濯できない衣類やぬいぐるみなどは、
    ビニール袋などに入れて数日間密閉しておくと、ダニは餓死するとされています(ダニの種類によって生存期間は異なりますが、ヒトヒゼンダニは皮膚から離れると長くは生きられません)。
  • 部屋の掃除: 特に角化型疥癬患者さんが過ごした場所は、剥がれ落ちた角質に大量のダニがいる可能性があるため、毎日丁寧に掃除機をかけます。掃除機の後は、吸い取ったゴミを速やかに処理します。

感染が疑われる場合の対応

もし自分自身や周囲の人に疥癬が疑われる症状が現れた場合は、以下の対応が推奨されます。

  • 速やかに医療機関を受診: 自己判断せず、まずは皮膚科を受診しましょう。医師に症状を詳しく伝え、疥癬の可能性について相談します。特に、集団発生の可能性がある施設などでは、早期の診断が非常に重要です。
  • 診断がつくまでの間の注意: 診断が確定するまでは、念のため以下の点に注意し、周囲への感染拡大を防ぐように心がけましょう。
    • タオルや寝具の共有を避ける。
    • 他の人との長時間にわたる密接な皮膚接触を避ける。
    • 衣類は毎日着替え、洗濯する。

診断が確定したら、医師の指示に従って適切な治療と感染対策を速やかに開始することが、自分自身の治癒と周囲への感染拡大防止のために最も重要です。

疥癬を放置した場合のリスク

疥癬は、適切な治療を受けずに放置すると、様々なリスクが生じます。

放置による重症化(角化型疥癬への進行)

通常疥癬を治療せずに放置していると、特に高齢者や免疫力が低下している人では、ダニが異常に増殖し、重症の
角化型疥癬に進行するリスクがあります。角化型疥癬は、皮膚が厚く硬くなり、カサカサしたり、かさぶた状になったりする、見た目にも重症な状態です。大量のダニが寄生しているため、かゆみが軽度である場合もありますが、全身に症状が広がり、治療も困難になることがあります。

周囲への感染拡大

疥癬を放置すると、感染源である患者さんの皮膚から絶えずダニが周囲にばらまかれることになり、
家族、共同生活者、介護者など、周囲の人々への感染リスクが非常に高まります。特に角化型疥癬の場合は、前述のように感染力が非常に強いため、放置することは集団感染を引き起こす直接的な原因となります。抵抗力の弱い高齢者や乳幼児、病気で免疫が低下している人などに感染が広がると、重症化する可能性もあります。自分のためだけでなく、周囲の人々を守るためにも、疥癬は早期に発見し、適切に治療することが極めて重要です。

疥癬に関するよくある質問

疥癬についてよくある質問とその回答をまとめました。

疥癬は自然に治りますか?

いいえ、疥癬は自然に治ることは極めて稀です。 ヒゼンダニは人の皮膚内で繁殖を続けるため、治療薬によってダニを駆除しない限り、症状が改善することはありません。放置すると悪化したり、周囲の人に感染を広げたりするリスクが高いため、必ず医療機関で診断を受け、適切な治療を開始する必要があります。

温泉やプールでうつる可能性は?

公衆浴場やプールで通常疥癬がうつる可能性は低いと考えられています。 通常疥癬の感染には長時間・密接な皮膚接触が必要だからです。ただし、脱衣所のベンチやマット、貸し出しのタオルなどを介した間接接触によるリスクはゼロではありません。角化型疥癬の場合は、ダニの数が多いため感染リスクは高まりますが、一般的な公衆浴場では施設の衛生管理が行われているため、過度に心配する必要はないことが多いです。念のため、患部を覆うなどの配慮をしたり、利用後はよく体を洗い流したりすると良いでしょう。

ペットから疥癬に感染しますか?

人が疥癬にかかる原因となるヒゼンダニは、犬や猫などのペットに寄生するダニとは種類が異なります。 動物の疥癬(動物疥癬、犬疥癬など)の原因となるダニ(イヌヒゼンダニなど)が一時的に人に寄生して、腕などに赤いブツブツや強いかゆみを起こすことはありますが、人の皮膚では繁殖できないため、数週間で自然に治癒することがほとんどです。これを「仮性疥癬(かせいかいせん)」と呼びます。ペットに皮膚病がある場合は、動物病院で診てもらうことをお勧めします。ただし、診断は見た目では難しい場合があるため、ご自身の症状が気になる場合は皮膚科を受診してください。

疥癬の診断は何科で受けられますか?

疥癬の診断と治療は、主に
皮膚科で行われます。皮膚の症状やかゆみがある場合は、お近くの皮膚科を受診してください。特に高齢者施設や病院などで発生した場合は、感染対策の観点からも速やかに専門医に相談することが重要です。

項目 通常疥癬 角化型疥癬(ノルウェー疥癬)
ダニの数 数十匹~数百匹 数十万匹~数百万匹
主な症状 夜間の強いかゆみ、赤い丘疹 皮膚の角化・肥厚、かさぶた、全身に広がる
かゆみの程度 強い 軽度またはほとんどない場合も
感染力 比較的弱い(長時間・密接な接触が必要) 非常に強い(短時間・間接接触でも感染しうる)
発症しやすい人 誰にでも 免疫力が低下している人(高齢者、寝たきり、ステロイド・免疫抑制剤使用者など)
治療 外用薬(ペルメトリンなど)、内服薬(イベルメクチン) 内服薬(イベルメクチン)、外用薬(ペルメトリンなど)の併用など

【まとめ】疥癬の感染率と予防策について

疥癬は、ヒゼンダニが皮膚に寄生することで起こる病気で、特に夜間の激しいかゆみが特徴です。疥癬の感染力は、ダニの数が少ない通常疥癬では比較的弱いものの、ダニが異常繁殖する角化型疥癬では非常に強く、短時間の接触や間接接触でも感染リスクがあります。

疥癬は自然に治ることはなく、放置すると重症化したり、周囲に感染を広げたりするリスクが高まります。そのため、
疥癬が疑われる症状(特に夜間の強いかゆみや、手や指の間にできた線状のトンネルのようなもの)がある場合は、自己判断せず、速やかに皮膚科を受診し、正確な診断と適切な治療を受けることが最も重要です。

治療は外用薬や内服薬によって行われ、指示された期間、根気強く続ける必要があります。また、衣類や寝具の熱処理、周囲の人の検査・治療、部屋の掃除といった感染対策も並行して行うことが、自分自身の治癒と周囲への感染拡大を防ぐために不可欠です。

疥癬は怖い病気ではありませんが、正しく理解し、適切に対処することが大切です。不安な点があれば、必ず専門機関である皮膚科にご相談ください。

【免責事項】
本記事は、疥癬に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的診断や治療の代替となるものではありません。個別の症状や治療については、必ず医療機関で医師にご相談ください。本記事の情報に基づいて行った行為によって生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます。

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