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毛ジラミ症かも?症状の見分け方|かゆみの特徴と肉眼で探すポイント

毛ジラミ症は、毛ジラミという小さな寄生虫が主に陰毛などの体毛に寄生することで引き起こされる皮膚の病気です。この病気の主なサインを知っておくことは、早期発見と適切な対処のために非常に重要です。この記事では、毛ジラミ症で現れる具体的な症状、初期症状、感染から症状が出るまでの期間、症状が出やすい体の部位、自分でできる確認方法、そして医療機関での診断や治療法について詳しく解説します。もし、ご自身の体に気になる症状がある場合、この記事の情報が少しでもお役に立てば幸いです。

目次

毛ジラミ症とは?

毛ジラミ症は、ヒトケジラミ(Phthirus pubis)という体長1〜3mm程度の小さな寄生虫が、主として人の陰毛などの体毛に寄生することで発症する外部寄生虫症の一種です。この寄生虫は、人の血液を吸って生存しており、その際に分泌される唾液などによって様々な症状を引き起こします。

毛ジラミは、その多くが性行為によって人から人へ感染しますが、例外的にタオルや寝具、衣類などを共有することによって感染する場合もあります。このため、毛ジラミ症は性感染症(STI: Sexually Transmitted Infection)の一つとして扱われることが多いですが、必ずしも性行為が原因とは限りません。

毛ジラミは、アタマジラミやコロモジラミとは種類が異なり、体の形がカニに似ていることから「カニシラミ」と呼ばれることもあります。また、非常に毛が太く断面が三角になっている陰毛に寄生しやすいという特徴があります。人の体温や湿度を好むため、体を離れると長くは生きられません。適切な治療を行えば比較的容易に完治する病気ですが、放置すると症状が悪化したり、他者へ感染させてしまうリスクがあります。

毛ジラミ症の主な症状

毛ジラミ症で最も一般的かつ特徴的な症状は、強いかゆみです。しかし、かゆみ以外にも、注意深く観察することで毛ジラミの存在を示すサインを見つけることができます。毛ジラミ症が疑われる場合に確認すべき主な症状は以下の通りです。

強いかゆみ

毛ジラミ症の症状として、多くの人が最初に気づくのが非常に強いかゆみです。このかゆみは、毛ジラミが皮膚から血を吸う際に注入する唾液に対するアレルギー反応によって引き起こされると考えられています。かゆみの程度は個人差がありますが、通常は耐え難いほどの強いかゆみを伴います。

特に、夜間に体が温まった時や入浴後にかゆみが強くなる傾向があります。これは、毛ジラミが活発になることや、血行が良くなることでアレルギー反応が増強されるためと考えられます。かゆみが強いため、無意識のうちに患部を掻きむしってしまい、皮膚に傷がついてしまうことも少なくありません。掻きすぎると、湿疹や皮膚炎、細菌による二次感染を引き起こし、さらに症状が悪化する可能性があります。

かゆみの部位は、毛ジラミが寄生している場所に一致します。最も多いのは陰毛部ですが、その他の体毛部にかゆみを感じる場合もあります。

虫体と卵の確認

毛ジラミ症の確実なサインは、毛に付着している毛ジラミの成虫や卵(シラミの卵)を直接確認することです。かゆみの原因が毛ジラミ症かもしれないと思ったら、少し勇気を出して、症状のある部位の毛を観察してみましょう。

成虫の特徴と見つけ方

毛ジラミの成虫は、体長が約1mm〜3mmと非常に小さく、灰色や褐色がかった色をしています。毛の色に近いことが多いため、明るい場所で注意深く観察しないと見つけにくいことがあります。体の形は平たく、カニのように幅広で、3対の足を持っています。この足の爪を使って毛にしっかりとつかまっています。

成虫は主に毛の根元近く、皮膚の表面に張り付くようにしてじっとしていることが多いです。素早く動き回ることは少なく、同じ場所に長く留まっている傾向があります。探し方のポイントとしては、以下の点に注意しましょう。

  • 明るい場所で観察する: 部屋の電気だけでなく、手元を照らせるライトなどを使うと見つけやすくなります。
  • 拡大鏡や虫眼鏡を使う: 小さな虫体を確認するために有効です。
  • 毛をかき分けて根元をじっくり見る: 毛の先端ではなく、皮膚に近い根元部分を重点的に観察します。
  • 動くものがないか注意する: じっとしていることが多いですが、ごくゆっくりと動くことがあります。

肉眼で確認できた場合は、ピンセットなどでそっと毛から剥がそうとしてみてください。毛にしっかりとつかまっている場合は、毛ジラミの可能性が高いです。剥がした虫体は、セロハンテープなどに貼り付けて医療機関へ持っていくと、診断の助けになることがあります。

卵(シラミの卵)の特徴と見つけ方

毛ジラミの卵は、シラミの卵(または「卵鞘(らんしょう)」)と呼ばれ、成虫よりもさらに小さい約0.8mm程度の大きさです。色は白色や黄白色をしており、毛ジラミのメスが毛の根元にセメントのような物質でしっかりと産み付けます。

卵はフケと間違われやすいことがありますが、フケは毛から簡単にとれるのに対し、シラミの卵は毛に強く固着しており、指でしごいても簡単には取れません。これがフケと卵を見分ける最も重要なポイントです。卵は楕円形をしており、産み付けられた場所で孵化するまで成長します。孵化済みの卵は、白っぽい抜け殻として毛に残ります。

卵の見つけ方も成虫と同様に、明るい場所で拡大鏡などを使い、毛の根元をじっくり観察します。特に、かゆみが強いと感じる部位の毛を重点的にチェックしましょう。卵は成虫よりも数が多いことが一般的ですので、成虫が見つからなくても卵が見つかることはよくあります。

卵を見つけた場合も、セロハンテープで採取して医療機関に持参すると良いでしょう。

血糞(黒い点状の汚れ)

毛ジラミは人の血液を吸って排泄します。この排泄物(血糞)が、下着や寝具に黒っぽい小さな点状の汚れとして付着していることがあります。これは毛ジラミがそこにいる、または以前そこにいた証拠の一つとなります。

血糞は、砂粒やホコリのような黒い点々で、濡れた布などで拭くと赤褐色に滲むことがあります。これは、吸血した血液成分が残っているためです。かゆみのある部位の下着や、使用したタオル、寝具などにこのような黒い点状の汚れがないか確認することも、毛ジラミ症のサインを見つける上で役立ちます。

これらの強いかゆみ、虫体や卵の確認、血糞が、毛ジラミ症の三大症状ともいえる重要なサインです。これらのうち一つでも当てはまる症状があれば、毛ジラミ症を強く疑い、適切な対処を検討する必要があります。

毛ジラミ症の初期症状と症状が出るまでの期間

毛ジラミ症に感染してから、自覚できる症状が現れるまでには、ある程度の時間がかかることが一般的です。

初期症状の特徴

毛ジラミ症の初期症状は、感染した毛ジラミの数や個人の感受性によって異なります。感染してすぐに強いかゆみを感じる人もいますが、最初はごく軽いかゆみや、何か皮膚に違和感がある程度の感覚で始まることも少なくありません。

初期の段階では、毛ジラミの数も少ないため、虫体や卵を見つけることも難しい場合があります。そのため、単なる乾燥や他の皮膚トラブルと勘違いしてしまうこともあります。しかし、時間とともに毛ジラミが繁殖し、吸血回数が増えるにつれて、かゆみは徐々に、そして急速に強くなっていきます。

「最近、陰部がかゆいな…」と感じ始めた頃が、もしかすると毛ジラミ症の初期段階かもしれません。この段階で早期に気づき、注意深く観察することが大切です。

感染から症状が出るまでの潜伏期間

毛ジラミに感染してから、アレルギー反応によるかゆみなどの症状が自覚できるようになるまでの期間を潜伏期間といいます。毛ジラミ症の潜伏期間は、一般的に感染から2週間〜2ヶ月程度とされています。

この期間は、毛ジラミが体毛に定着し、吸血を開始し、ある程度の数に増殖するのに要する時間と考えられます。感染直後は毛ジラミの数が少ないため、吸血されてもかゆみを感じるほどのアレルギー反応がまだ起きていない状態です。

潜伏期間中であっても、注意深く観察すればごく少数の毛ジラミや卵が見つかる可能性はあります。しかし、多くの場合、症状が出始めるまで感染に気づかないことがほとんどです。

症状が出やすい体の部位

毛ジラミは、特定の体の部位にある毛に寄生しやすいという特徴があります。その理由は、毛の太さや断面の形、生えている密度など、毛ジラミがしっかりと掴まって生息しやすい環境かどうかによります。

主な寄生部位(陰毛)

毛ジラミが最も好んで寄生し、症状が出やすい場所は陰毛です。陰毛は他の体毛に比べて太く、断面が三角形に近い形をしているため、毛ジラミの爪がしっかりと引っかかりやすく、固定しやすい構造になっています。また、陰部周辺は湿度が高く、衣類で覆われているため体温が保たれやすい環境であり、毛ジラミが生息するのに適しています。

毛ジラミ症の感染経路の多くが性行為であることも、陰毛部への寄生が多い大きな理由の一つです。性行為時の体接触により、毛から毛へと毛ジラミが移動することで感染が広がります。

陰毛部に寄生した場合、かゆみは主に陰部とその周辺(太ももの内側など)に強く現れます。自分で虫体や卵を確認する際も、まずは陰毛部を重点的に観察することが必要です。

その他の体毛部(ワキ毛、胸毛、髭、眉、まつ毛)

陰毛に次いで、毛ジラミが寄生する可能性があるのは、ワキ毛や胸毛、腹部の毛、大腿部の毛などです。これらの部位も、陰毛ほどではないにしても比較的太く、毛ジラミが掴まりやすい毛が生えている場合があります。これらの部位にかゆみがある場合は、毛ジラミの寄生を疑って確認する必要があります。

さらに稀なケースですが、髭や眉毛、まつ毛に寄生することもあります。特にまつ毛への寄生は「眼瞼毛ジラミ症」と呼ばれ、まぶたの縁にかゆみや炎症を引き起こします。まつ毛に寄生した場合、目への影響も考えられるため、自己判断せずに必ず眼科を受診する必要があります。

このように、毛ジラミは全身の様々な体毛部に寄生する可能性がありますが、最も頻度が高いのは陰毛部であることを理解しておくことが重要です。かゆみを感じる部位が陰毛部以外であっても、毛ジラミ症の可能性は否定できません。

性別による症状の違い(女性の場合など)

毛ジラミ症の基本的な症状(かゆみ、虫体、卵、血糞)に、性別による大きな違いはありません。男性でも女性でも、同様の症状が現れます。ただし、体の構造や生活習慣の違いから、症状の見つけやすさや、合併しやすい症状などに差が見られる場合があります。

女性特有の注意点

女性の場合、陰毛部に症状が出ることが多い点は男性と同様です。しかし、男性に比べて陰部周辺の構造が複雑で見えにくいため、自分で毛ジラミや卵を見つけるのがより難しい場合があります。特に、膣の周辺や大陰唇の内側など、ひだが多く入り組んだ部分は確認が困難です。

また、女性は掻きむしることによる皮膚の炎症や湿疹が外陰部や大腿部に広がりやすい傾向があります。強いかゆみが続くと、日常生活に支障をきたすだけでなく、精神的なストレスも大きくなります。

さらに、妊娠中に毛ジラミ症に感染した場合、使用できる薬剤が限られることがあります。自己判断で市販薬を使用せず、必ず産婦人科や皮膚科の医師に相談して、安全な治療法を選択する必要があります。

男性の一般的な症状

男性の場合も、陰毛部に強いかゆみを感じることが最も一般的な症状です。女性に比べて、比較的陰部周辺の毛を観察しやすいため、自分で虫体や卵を見つけやすいかもしれません。

男性特有の症状というよりは、陰毛以外の部位に毛ジラミが広がりやすい傾向が見られる場合があります。陰毛部から腹部の毛、胸毛、腕の毛などへと広がっていくケースです。これは、男性の方が体毛が濃く、寄生しやすい部位が多いことが関係していると考えられます。

いずれの性別でも、症状が出たら放置せず、早期に医療機関を受診することが重要です。恥ずかしい病気だと一人で悩まず、パートナーがいる場合はパートナーと一緒に治療を受けることが再感染の予防にもつながります。

毛ジラミ症かどうか自分で確認する方法

毛ジラミ症の疑いがある場合、まず自分で確認してみることは有効な一歩です。特に、強いかゆみがある部位を中心に、以下のポイントに注意して観察してみましょう。

チェックするポイント

自分で毛ジラミ症をチェックする際に確認すべき主なポイントは以下の3つです。

  • 強いかゆみがあるか?: 特に夜間や体が温まった時にかゆみが強くなるか確認します。掻きむしった跡や、皮膚の赤みがないかも見ます。
  • 毛に何か付着していないか?: 毛の根元を中心に、動く小さな虫(成虫)や、毛にしっかりと固着した白い粒(卵)がないかを探します。フケのように簡単にとれるものは卵ではありません。
  • 下着や寝具に黒い点状の汚れがないか?: 陰部が触れる部分の下着やシーツ、タオルなどに、砂粒のような黒い点々がないか確認します。

これらのポイントを意識しながら、明るい場所でじっくりと時間をかけて観察することが重要です。

鏡を使った確認方法

陰毛部など、自分の目で見えにくい場所を観察する際には、鏡を使うのが効果的です。

  • 手鏡と全身鏡を使う: 全身鏡の前に立ち、手鏡を使って見えにくい部分(特に陰部や太ももの内側など)を映して確認します。角度を変えながら、毛の根元を丁寧に見ていきます。
  • 明るい照明の下で行う: 自然光や、部屋の電気を明るくするか、懐中電灯などで手元を照らしながら行うと、小さな虫体や卵も見つけやすくなります。
  • 拡大鏡を使う: 虫眼鏡や拡大鏡があれば、より詳細に毛や皮膚の状態を確認できます。スマートフォンのカメラのズーム機能を使うのも一つの方法です。

自分で確認する作業は、精神的に抵抗があるかもしれませんが、毛ジラミ症は放置すると広がる病気です。早期発見のためにも、勇気を出して確認してみましょう。もし自分で見てよく分からない場合や、気持ち悪くて確認できない場合は、無理せず医療機関を受診してください。

医療機関での診断

自分で毛ジラミや卵が見つかった場合や、強いかゆみがあって毛ジラミ症が強く疑われる場合は、医療機関を受診して確定診断を受けることを強くおすすめします。自己判断での治療は、適切でない場合や、他の病気を見逃してしまうリスクがあるからです。

医療機関での毛ジラミ症の診断は比較的簡単に行われます。医師はまず患者さんの症状(かゆみの部位や程度など)について問診を行い、次に患部を視診します。専用のライトや拡大鏡を使って、体毛に付着している毛ジラミの成虫や卵がないかを確認します。

多くの場合、視診で虫体や卵を確認できれば診断が確定します。より詳しく確認するために、毛から採取した虫体や卵を顕微鏡で観察することもあります。これにより、毛ジラミ特有の形態を確認し、他の外部寄生虫やフケなどとの鑑別を行います。

医療機関で正確な診断を受けることで、適切な治療法に関するアドバイスや処方を受けることができ、安心して治療を進めることができます。

毛ジラミ症を放置した場合のリスク

毛ジラミ症は、自然に治る病気ではありません。放置しておくと、様々なリスクが生じます。

症状の継続と悪化

毛ジラミは人の血液を吸って繁殖し続けるため、治療しない限り寄生虫がいなくなることはありません。したがって、かゆみなどの症状は継続し、毛ジラミの数が増えるにつれてかゆみはさらに強くなります

強いかゆみを我慢できずに掻きむしることで、皮膚に傷がつきやすくなります。この傷口から細菌が感染し、化膿したり、湿疹や皮膚炎が広がるなどの二次感染を引き起こすリスクが高まります。また、掻き壊しによって皮膚が厚く硬くなる(苔癬化)こともあります。

パートナーなど他者への感染

毛ジラミ症は、主に性的接触によってパートナーへ感染させます。また、稀にですが、タオル、寝具、衣類、椅子などを共有することでも家族や同居人へ感染を広げてしまう可能性があります。

もし毛ジラミ症と診断された場合は、自分だけでなく、感染経路となった可能性のあるパートナーも一緒に検査・治療を受けることが非常に重要です。パートナーが治療を受けないままだと、自分が完治しても再び感染してしまう(ピンポン感染)リスクが高まります。家族や親しい友人など、同じ空間で長時間過ごす人がいる場合も、感染対策を検討する必要があります。

自然治癒は期待できない

毛ジラミは人の血液がないと生きていけません。また、一度体毛に産み付けられた卵は、自然に落ちることはほとんどなく、孵化して次の成虫になります。したがって、特別な治療をしない限り、毛ジラミ症が自然に治ることはありません

かゆみなどの症状が一時的に軽くなることがあったとしても、毛ジラミ自体が体内からいなくなったわけではないため、再び症状が悪化する可能性が高いです。自然治癒を期待して放置せず、必ず医療機関を受診するか、適切な市販薬を使用して治療を行う必要があります。

毛ジラミ症の治療法と治し方

毛ジラミ症は、適切な治療を行えば比較的簡単に治すことができる病気です。治療法には、医療機関で処方される薬を使用する方法と、市販薬を使用する方法、そして物理的な対策を組み合わせる方法があります。

病院での治療

医療機関を受診した場合、主に毛ジラミを殺す効果のある外用薬(ローションやシャンプーなど)が処方されます。代表的な薬剤として、フェノトリンという成分を含む製剤が用いられます。

  • 薬剤の使用方法: 処方された薬剤は、毛ジラミが寄生しているすべての体毛部分に塗布したり、泡立てて洗ったりして使用します。使用方法や塗布時間は薬剤によって異なりますので、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。通常、薬剤を塗布した後、一定時間置いてから洗い流すという手順を複数回繰り返す必要があります。
  • 治療期間: 卵は薬剤に対する抵抗性があるため、一度の薬剤使用だけではすべての卵を駆除できない場合があります。卵が孵化するのを待ってから再び薬剤を使用するために、数日〜1週間程度の間隔をあけて、合計2回または3回薬剤を使用することが推奨されます。これにより、孵化したばかりの幼虫や、前回の使用時に生き残った虫体を確実に駆除することを目指します。
  • 医師の指導: 医療機関で処方を受ける最大のメリットは、医師の正確な診断に基づき、個々の状況に合った薬剤の選択や使用方法、治療スケジュールについてきめ細やかな指導を受けられることです。また、かゆみが強い場合の対症療法として、かゆみ止めの飲み薬や塗り薬が処方されることもあります。

市販の薬

薬局などでも、毛ジラミ駆除のための市販薬が販売されています。これらの多くも、医療機関で処方される薬剤と同じ有効成分(フェノトリンなど)を含んでいます。

  • 市販薬の種類: ローションタイプ、シャンプータイプなどがあり、使用方法は製品によって異なります。パッケージの説明書をよく読み、指示通りに使用することが重要です。
  • 市販薬の注意点: 市販薬は手軽に入手できるというメリットがありますが、自己判断で使用することには注意が必要です。
    • 診断の不確かさ: 自分で毛ジラミ症だと判断したものの、実際は別の皮膚疾患である可能性があります。
    • 適切な使用方法: 使用方法を間違えると十分な効果が得られなかったり、皮膚トラブルを起こしたりするリスクがあります。
    • 耐性: 薬剤に対する耐性を持つ毛ジラミがいる可能性もゼロではありません。市販薬を正しく使っても症状が改善しない場合は、医療機関を受診すべきです。
    • 他の寄生部位: まつ毛など、特定の部位には市販薬が使用できない場合があります。

症状が軽度で、かつ毛ジラミ症であることを自分で比較的確信できる場合は、市販薬を試すことも一つの選択肢ですが、不安な場合や症状が改善しない場合は迷わず医療機関を受診しましょう。

物理的な対策(剃毛など)

薬剤による治療と並行して、または治療効果を高めるために、物理的な対策も重要です。

  • 剃毛: 寄生されている体毛をすべて剃ることは、毛ジラミや卵の生息場所を根本的に無くすため、非常に効果的な物理的対策です。特に、薬剤の使用が難しい場合や、薬剤の効果を補強したい場合に有効です。ただし、剃毛後もごく稀に皮膚に張り付いている虫体がいる可能性や、かゆみが残る場合があるため、完全に剃毛したからといって安心せず、皮膚の状態を観察することが大切です。
  • 衣類や寝具の処理: 毛ジラミは体から離れても、環境中で一時的に生存している可能性があります。再感染や他者への感染を防ぐために、治療と同時に使用していた下着、衣類、タオル、シーツ、枕カバーなどを適切に処理する必要があります。
    • 熱処理: 毛ジラミや卵は熱に弱いです。50℃以上の熱水に30分以上浸すか、乾燥機の熱で処理することが推奨されます。
    • 洗濯: 通常の洗濯(洗剤を使用)だけでも、多くの毛ジラミを洗い流すことができます。熱処理と組み合わせるとより効果的です。
    • 掃除機: ソファやカーペットなど、洗濯できない場所は丁寧に掃除機をかけ、吸い取ったゴミはすぐに処分します。
    • 密閉: すぐに洗濯できないものは、ビニール袋などに密閉して数週間保管しておくと、毛ジラミが死滅します(毛ジラミは人の血液がないと長く生きられません)。

これらの物理的な対策を薬剤による治療と組み合わせることで、より確実に毛ジラミを駆除し、再感染や拡大を防ぐことができます。

毛ジラミ症の治療方法を表にまとめると以下のようになります。

治療法 内容 メリット デメリット・注意点
病院での治療 医師の診断に基づき、外用薬(ローション、シャンプーなど)を処方。複数回使用が基本。 正確な診断、個人に合った薬剤・使用方法の指導、かゆみ止め処方 受診の手間、時間、費用がかかる
市販薬の使用 薬局などで購入できる毛ジラミ駆除薬(外用薬)。 手軽に入手できる、比較的安価 自己判断による誤診・不適切な使用のリスク、効果が不十分な場合も
物理的な対策 剃毛、衣類・寝具の熱処理・洗濯、掃除機など。 薬剤を使わない方法、薬剤の効果を補強できる 手間がかかる、完全に駆除できない場合がある(剃毛以外)、皮膚への刺激

これらの治療法は、単独で行う場合もあれば、組み合わせて行う場合もあります。最も確実なのは医療機関を受診し、医師の指導のもとで薬剤治療と物理的な対策を行うことです。

毛ジラミ症かもしれないと思ったら

もし、ご自身の体に毛ジラミ症を疑わせる症状(強いかゆみ、虫体、卵、血糞など)がある場合は、一人で悩まず、まずは適切な行動をとることが大切です。

相談すべき医療機関

毛ジラミ症の診断・治療は、以下の診療科で行うことができます。

  • 皮膚科: 皮膚や体毛に関する専門家ですので、毛ジラミ症の診断・治療に最も適しています。多くの場合、最初に相談すべき診療科です。
  • 泌尿器科(男性): 男性の場合、陰部周辺の症状であれば泌尿器科でも対応可能な場合があります。
  • 婦人科(女性): 女性の場合、外陰部周辺の症状であれば婦人科でも相談できる場合があります。
  • 性感染症科: 性感染症専門のクリニックであれば、毛ジラミ症を含む様々な性感染症の検査・治療を一度に行えます。性行為による感染が強く疑われる場合や、他の性感染症の可能性も気になる場合は選択肢の一つとなります。
  • 眼科: まつ毛に症状が出ている場合は、必ず眼科を受診してください。目に使用できる薬剤は限られているため、専門医の診断が必要です。

どの医療機関を受診するか迷う場合は、まずは皮膚科を受診するのが一般的です。受診の際には、いつからどのような症状があるのか、かゆみの程度、ご自身で何か見つけたもの(虫や卵らしきもの)があるかなどを具体的に伝えるようにしましょう。また、パートナーがいる場合は、パートナーの症状や感染経路についても正直に話すことが、適切な診断と治療、そして再感染予防のために重要です。

毛ジラミ症は恥ずかしい病気だと感じて、医療機関への受診をためらってしまう人もいるかもしれません。しかし、医療機関では守秘義務が厳守されており、プライバシーは保護されます。医師は様々な疾患を診てきている専門家です。悩みを打ち明け、早期に適切な治療を受けることが、症状の改善と、他者への感染拡大を防ぐために何よりも大切です。

まとめ

毛ジラミ症は、毛ジラミの寄生によって引き起こされる皮膚の病気で、主な症状は耐え難いほどの強いかゆみです。特に夜間や入浴後に悪化しやすいこのかゆみに加えて、体毛に付着した小さな虫体(毛ジラミの成虫)や白い粒(シラミの卵)、そして下着などに付着した黒い点状の汚れ(血糞)が重要なサインとなります。

症状が出やすい部位は主に陰毛部ですが、ワキ毛、胸毛、稀にまつ毛など、全身の体毛部に寄生する可能性があります。感染から症状が出るまでには通常2週間〜2ヶ月程度の潜伏期間があります。

毛ジラミ症は自然に治ることはなく、放置するとかゆみによる皮膚の炎症や二次感染が悪化したり、パートナーや家族など他者へ感染を広げたりするリスクがあります。

毛ジラミ症が疑われる場合は、自分で毛の根元などを注意深く観察することで、虫体や卵を見つけられることがあります。しかし、自己判断は難しく、他の病気との区別も必要です。最も確実なのは、皮膚科などの医療機関を受診して専門医の診断を受けることです。

医療機関では、主に毛ジラミを駆除する外用薬が処方されます。多くの場合、卵から孵化した虫も駆除するために、複数回の薬剤使用が必要です。薬剤治療と並行して、剃毛や、使用していた衣類・寝具の熱処理や洗濯などの物理的な対策を行うことも、治療を成功させる上で非常に重要です。

毛ジラミ症は、適切な診断と治療を行えば、比較的簡単に完治できる病気です。もし「毛ジラミ症かもしれない」と思ったら、一人で悩まず、できるだけ早く医療機関に相談してください。早期の対応が、ご自身の症状の改善と、大切な人への感染を防ぐことにつながります。


免責事項: 本記事は、毛ジラミ症の症状に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の診断や治療法を推奨するものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。本記事の情報に基づいて行われたいかなる行為についても、当方は一切の責任を負いません。

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