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認知行動療法の簡単な始め方 | 自分でできるセルフケアステップ

認知行動療法を「やってみたいけれど難しそう」「セルフで簡単にできる方法はないの?」と考えていませんか?
認知行動療法は、特別な知識がなくても、基本的な考え方といくつかの簡単なステップを知っていれば、日々の生活の中で実践できます。
自分の考え方のクセに気づき、感情や行動をコントロールするスキルを身につけることは、心の安定や問題解決に役立ちます。
この記事では、認知行動療法の基本的な考え方から、今日からセルフで簡単に始められる具体的なやり方まで、ステップごとにわかりやすく解説します。
ノートやアプリを使った実践方法、よくある疑問にもお答えしますので、ぜひ最後まで読んで、あなたに合った方法を見つけてください。

目次

認知行動療法とは?基本的な考え方

認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)は、私たちが出来事に対して抱く「認知」(考え方やものの見方)に焦点を当て、それに働きかけることで、感情や行動の変化を目指す心理療法です。

この療法では、私たちの感情や行動は、出来事そのものによって直接引き起こされるのではなく、「出来事をどう捉えるか」という認知によって影響されると考えます。
例えば、同じ失敗をしたとしても、「自分はダメだ」と考える人もいれば、「良い経験になった」と考える人もいます。この考え方の違いが、その後の落ち込み具合や、次にどう行動するかを左右するのです。

認知行動療法は、この認知と感情、行動の間に存在する密接なつながりを理解し、より健康的で現実的な考え方や行動パターンを身につけることを目的とします。
否定的な考え方(「自動思考」と呼ばれます)に気づき、それが状況に対してどれだけ適切か検討し、必要であればよりバランスの取れた考え方に修正していきます(「認知再構成」)。
同時に、考え方だけでなく、具体的な行動を変えること(「行動活性化」「行動実験」)も重視します。
例えば、落ち込んでいる時に家に閉じこもるのではなく、あえて散歩に出かけるといった行動の変化が、気分や考え方にも良い影響を与えることがあります。

難しく聞こえるかもしれませんが、要は「自分の考え方・感じ方・行動のクセを知り、それを少しずつ良い方向に変えていこう」というシンプルな考え方に基づいています。
特別な設備や高度な技術は必要なく、紙とペン、あるいはスマホ一つあれば、セルフで実践を始めることができるのです。

認知行動療法の効果と対象

認知行動療法は、幅広い心の悩みや精神的な不調に対して効果が期待できる心理療法として、世界中で広く用いられています。その効果は多くの研究によって科学的に証明されています。

どのような悩みや症状に効果がある?

認知行動療法は、主に以下のような悩みや精神疾患に対して効果が期待できるとされています。

  • うつ病: ネガティブな自動思考(「自分には価値がない」「どうせうまくいかない」など)に働きかけ、活動レベルを上げる行動活性化を通して、抑うつ気分を軽減します。
  • 不安障害:
    • パニック障害:パニック発作に対する恐怖心や破局的な考え方に働きかけ、回避行動を減らします。
    • 社交不安障害:人前での評価に対する過度な恐れや否定的な自己イメージを修正し、社交場面での不安を軽減します。
    • 全般性不安障害:コントロールできない過剰な心配や不安に働きかけ、問題解決スキルを向上させます。
    • 強迫性障害:強迫観念と強迫行為のメカニズムを理解し、不安に耐えるスキルを身につけます。
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害): トラウマに関する否定的な認知や感情に働きかけ、安全な場所であるという感覚を取り戻すことを支援します。
  • 不眠症: 睡眠に関する不合理な考え方や、睡眠を妨げる行動パターンを修正します。
  • ストレス関連の問題: 日常生活におけるストレスの多い状況に対する考え方や対処法を学び、ストレス反応を軽減します。
  • 慢性的な痛みの管理: 痛みに対する破局的な考え方や、痛みを避ける行動パターンに働きかけ、QOL(生活の質)の向上を目指します。
  • 自己肯定感の低さ: 自分自身や将来に対する否定的な考え方を修正し、より現実的で肯定的な自己イメージを築くことを支援します。
  • 怒りのコントロール: 怒りを引き起こす状況や考え方のパターンを特定し、建設的な対処法を学びます。

認知行動療法は、特定の精神疾患だけでなく、日常生活での対人関係の悩み、仕事のストレス、育児の悩みなど、幅広い「生きづらさ」や「心の負担」の軽減にも有効です。「簡単」なステップから始められるため、少しでも心の状態を改善したいと感じる方にとって、取り組みやすいアプローチと言えるでしょう。

認知行動療法に向かない人とは?

認知行動療法は多くの人に有効ですが、すべての人やすべての状況に万能なわけではありません。セルフで実践する場合や、専門家のサポートを受ける場合でも、以下のようなケースでは、認知行動療法が効果を発揮しにくい、あるいは他のアプローチが優先されることがあります。

  • 重度の精神病症状がある場合: 幻覚や妄想が強いなど、現実検討能力が著しく損なわれている場合は、認知行動療法を進めるのが難しいことがあります。まずは薬物療法などで症状を安定させることが優先されることが多いです。
  • 重度のうつ病で活動性が極端に低下している場合: 起き上がることや思考記録をつけること自体が困難なほどエネルギーが低下している場合は、認知行動療法の実践が大きな負担になる可能性があります。まずは休息や他の治療が必要です。
  • 緊急性の高い自殺念慮がある場合: 安全の確保が最優先です。すぐに医療機関や専門機関に相談する必要があります。
  • 知的な障害や発達上の特性により、抽象的な思考や記録が難しい場合: 認知行動療法の基本的なプロセス(考え方を客観的に捉える、記録するなど)が難しい場合があります。ただし、その人に合わせた方法でアレンジすることは可能です。
  • 自分の考えや感情を探求することに抵抗が強い場合: 認知行動療法は内省を伴うため、これに強い抵抗がある場合は進めにくいかもしれません。
  • 現在の問題が、認知や行動よりも、深刻な環境要因(例:DV、貧困など)に強く起因している場合: 環境調整や社会的な支援が優先されるべき問題もあります。

また、セルフで「簡単」に実践する場合、自分自身の状態を客観的に捉えることが難しい場合があります。特に、自分の認知の歪みが大きい場合や、問題が複雑に絡み合っている場合は、一人で解決しようとするには限界があります。
セルフでの実践はあくまで補助的なものと考え、つらい時は無理せず専門家(医師や公認心理師など)に相談することが重要です。専門家は、個々の状況に合わせて認知行動療法をカスタマイズし、安全かつ効果的に進めるためのサポートをしてくれます。

認知行動療法の簡単なやり方・基本的なステップ

認知行動療法をセルフで「簡単」に始めるための基本的なステップは、主に以下の3つに分けられます。これらを繰り返すことで、考え方や行動のパターンを変えていく練習をします。

ステップ1:状況と感情・自動思考を記録する(思考記録)

これが認知行動療法の出発点であり、最も重要なステップの一つです。特定の出来事や状況に対して、自分がどのように感じ、どのような考えが頭に浮かんだのかを客観的に記録します。これを「思考記録」と呼びます。最初は難しく感じるかもしれませんが、まずは以下の項目を書き出すことから始めてみましょう。

  • 状況(Situation): いつ、どこで、何が起こったか? 誰と一緒にいたか? 具体的に描写します。
    • 例:「今日の昼休み、職場の休憩室で、同僚たちが楽しそうに話しているのを見たとき」
  • 感情(Emotion): そのとき、どのような感情が湧き上がったか? 複数の感情があっても構いません。それぞれの強さを0%から100%で評価してみましょう。
    • 例:「悲しい(80%)、孤独(70%)、羨ましい(50%)」
  • 自動思考(Automatic Thought): その感情が湧き上がった瞬間に、頭の中にパッと浮かんだ考えやイメージは何か? これは「無意識のつぶやき」のようなものです。
    • 例:「みんな輪になっていて、自分だけ仲間外れだ。私は誰からも必要とされていないんだ。ここにいても仕方ない。」

思考記録は、自分の感情や行動が、どのような考えと結びついているのかを明らかにするのに役立ちます。自分が普段どんな考え方のクセを持っているのか、「見える化」することで、次のステップにつながります。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは1日に1回、印象に残った出来事について記録することから始めましょう。

ステップ2:自動思考に反論する(認知再構成)

ステップ1で見つけた「自動思考」が、本当に状況に対して最も現実的でバランスの取れた考え方なのかを検討し、必要であれば修正していくステップです。これを「認知再構成(Cognitive Restructuring)」と呼びます。自動思考は、しばしば現実とはかけ離れた極端なものだったり、否定的な方向に偏っていたりします。それに気づき、別の考え方を探る練習をします。

自動思考に反論するために、自分自身に問いかける質問をいくつか考えてみましょう。このプロセスは、まるで探偵になったように、自動思考の「証拠」を集めたり、別の可能性を検討したりするようなものです。

  • 自動思考を支持する証拠は何だろう?
  • 自動思考に反論する証拠は何だろう?
  • 他の可能性や、別の視点から見たらどう考えられるだろう?
  • この自動思考に囚われていることで、どんなデメリットがあるだろう?
  • もし友人が同じ状況で同じことを考えていたら、何とアドバイスするだろう?
  • 最も現実的でバランスの取れた考え方は何だろう?

これらの質問に答えることで、最初の自動思考が必ずしも唯一の真実ではないことに気づけるはずです。そして、「他の可能性」や「バランスの取れた考え方」を見つけ出します。

  • ステップ1の例に対する反論の例:「確かに同僚は楽しそうだったけど、誰も私を無視したわけじゃない。休憩室にいた時間も短かったし、話しかけられるタイミングがなかっただけかもしれない。以前、別の同僚と話して盛り上がったこともあった。みんなが必要としていないというのは極端すぎる考えだ。もう少し話しかけやすい雰囲気だったら、自分から声をかけてみることもできるかもしれない。あるいは、別の時間に休憩を取ることも考えてみよう。」

このように、自動思考を鵜呑みにせず、証拠に基づいて検討し、より柔軟な考え方を身につけていくのが認知再構成です。

ステップ3:行動を変化させる(行動活性化・行動実験)

考え方を変えるだけでなく、行動にも働きかけることが認知行動療法の重要な要素です。抑うつや不安を感じているとき、人は活動量が減ったり、苦手な状況を避けたりしがちです。これがさらに気分を落ち込ませたり、不安を増大させたりする悪循環を生むことがあります。そこで、意識的に行動を変えることで、この悪循環を断ち切り、良い循環を生み出すことを目指します。

  • 行動活性化(Behavioral Activation): 気分が落ち込んでいるときに、あえて活動レベルを上げることを目指します。楽しかったこと、達成感があったこと、義務感を感じていたけれど避けていたことなど、少しでも「やってみようかな」と思える行動を計画し、実行します。
    • 例:「ずっと部屋に引きこもっていたけれど、近所の公園まで散歩に行ってみる」「趣味だった読書を30分だけやってみる」「友人に短いメッセージを送ってみる」

    これらの行動は、最初は大したことないように思えるかもしれませんが、達成感や小さな喜びを感じる機会を作り出し、気分を改善するきっかけになります。

  • 行動実験(Behavioral Experiment): 自分の持っている「~したらどうなるだろう」という予測(自動思考)が本当に正しいのかを、実際の行動を通して検証する実験です。
    • 例:「もし人前で少しでもどもったら、きっと笑われるだろう」という予測を持っている人が、「あえて簡単な挨拶を人前でしてみる」という実験を行い、実際にどうなるかを確認する。

    多くの「恐れていたこと」は実際には起こらないか、起こっても自分が思っていたほどひどいことにはならないことに気づくことができます。これにより、不安の予測が非現実的であることを学び、回避行動を減らすことができます。

ステップ1~3は、一度行って終わりではなく、何度も繰り返すことで身についていきます。まずは小さな一歩から、セルフでできる範囲で試してみましょう。

認知行動療法の7つの質問とは?

認知行動療法の実践、特にステップ2の「認知再構成」でよく使われる、自動思考に反論するための具体的な質問リストとして「コラム法」や「7つの質問」などが知られています。ここでは、認知再構成を深めるための代表的な7つの質問を紹介します。これらの質問に順番に答えていくことで、自動思考を多角的に検証し、よりバランスの取れた考え方を見つける助けになります。

質問 意図・目的 思考記録の例に対する回答例
1. 自動思考を支持する証拠は何ですか? 自分の考えが正しいと思える根拠を探す。 同僚たちは自分たちの輪だけで楽しそうに話していて、私の方を見向きもしなかった。私が休憩室に入っても、特に話しかけてこなかった。
2. 自動思考に反論する証拠は何ですか? 自分の考えとは異なる事実や可能性を探す。 休憩室にいたのはほんの5分くらいだった。休憩時間が終わる間際だったのかもしれない。ただ単に、みんなで共通の話題で盛り上がっていただけかもしれない。以前、別の同僚とは仕事の話で長時間話したことがある。私に話しかけようとしてくれた同僚も過去にはいた。私が少し離れた場所に立っていたので、話しかけにくかったのかもしれない。
3. 他の可能性は何ですか? 最初の自動思考以外の解釈を探る。 みんなが仲が良いだけで、私を仲間外れにしているわけではない。たまたまその時、会話の波に入れなかっただけだ。彼らは単に世間話をしていて、深い意味はなかった。彼らも私に話しかけようとしていたが、私が別のことをしていたので遠慮したのかもしれない。
4. もし友人が同じ状況だったら、何とアドバイスしますか? 客観的な視点を取り戻す。 「それはたまたまタイミングが悪かっただけだよ」「彼らも悪気はなかったと思うよ」「もっと話しかけやすい場所に行ってみたり、自分から声をかけてみたらどうかな?」「そんなことで自分自身を否定する必要はないよ」とアドバイスするだろう。
5. 自動思考に囚われていることのメリット・デメリットは何ですか? その考え方に固執することの利点・欠点を評価する。 メリット:傷つかないで済む(かもしれない)。
デメリット:孤独感が増す。自分から関わろうとしなくなる。気分が落ち込む。同僚との関係を深める機会を失う。いつまでも「仲間外れだ」という嫌な気持ちを引きずる。
6. 最も現実的でバランスの取れた考え方は何ですか? 証拠に基づいて、最も適切だと思われる考え方を組み立てる。 「同僚たちはたまたまその時、自分たちの間で盛り上がっていただけで、私を意図的に仲間外れにしたわけではない。次に休憩室にいるときに、自分から挨拶してみたり、話に入れそうなタイミングがあれば参加してみよう。たとえ今回話せなくても、他の場面で交流できる機会はある。」
7. この新しい考え方で、感情はどのように変化しますか? 考え方の変化による感情の変化を予測・確認する。 悲しい(80%)→ 悲しい(20%)、孤独(70%)→ 孤独(10%)、羨ましい(50%)→ 羨ましい(10%)。代わりに、少し「希望」(30%)や「落ち着き」(40%)が出てくるかもしれない。新しい考え方によって、気分が少し楽になり、次にどうするかを前向きに考えられるようになる。

これらの質問は、一つの例です。自分にとって問いかけやすい質問をアレンジしたり、数を減らしたりしても構いません。重要なのは、自動思考を批判的に検討し、別の考え方を探るプロセスを実践することです。

セルフで認知行動療法を行う方法

「簡単」にセルフで認知行動療法を実践するための具体的な方法をいくつかご紹介します。特別な道具や知識は必要ありません。今日から始められるものばかりです。

ノートやワークシートを使った実践

最も一般的で手軽な方法の一つが、ノートや専用のワークシートを使うことです。思考記録や認知再構成のプロセスを書き出すことで、自分の考えや感情を「見える化」し、客観的に捉えることができます。

  • ノート: どんなノートでも構いません。日付と、ステップ1で説明した「状況」「感情」「自動思考」の項目を書き出すスペースを作りましょう。そして、ステップ2の「反論する証拠」「別の可能性」「バランスの取れた考え方」などを書き出すスペースも設けます。自由にフォーマットを作れるのが利点です。
  • ワークシート: 認知行動療法の書籍に付属していたり、インターネット上で無料のテンプレートが公開されていたりします。あらかじめ項目が用意されているため、それに沿って書き込むだけで実践できます。初心者にとっては、どのように記録すればよいか分かりやすいでしょう。

ワークシートの簡単な構成例を以下に示します(これはあくまで一例です。)。

日付: 時間帯:
状況 いつ、どこで、何が起こったか?(客観的な事実のみ)
例:
感情 どのような感情?(例:悲しい、不安、怒り、喜びなど)それぞれの強さ(0~100%)
例:
自動思考 頭にパッと浮かんだ考えやイメージ(感情と結びついたもの)
例:
反論する証拠 自動思考が正しくない、または他の可能性を示す証拠は?
例:
他の可能性 自動思考以外の考え方や解釈は?
例:
バランスの取れた考え方 証拠に基づいた、より現実的で柔軟な考え方は?
例:
実践後の感情 バランスの取れた考え方を採用した結果、感情はどう変化したか?(強さの変化も)
例:
今後の行動 今回の学びを踏まえて、次に似た状況になったらどう行動するか?
例:

毎日決まった時間に書く習慣をつける、あるいは感情が強く動いた時に記録するなど、自分に合った方法で継続することが大切です。最初は書くのに時間がかかるかもしれませんが、続けていくうちに自然とできるようになります。

スマホアプリの活用

最近では、認知行動療法の実践をサポートするスマートフォンアプリも多数開発されています。これらのアプリは、思考記録を簡単に入力・管理できたり、感情や思考のパターンをグラフ化してくれたり、認知再構成のための質問をガイドしてくれたりする機能を備えています。

  • メリット:
    • 手軽に記録できる(スマホさえあればいつでもどこでも)。
    • 継続しやすいようにリマインダー機能などがある。
    • 自分のパターンを視覚的に把握しやすい。
    • ワークシートを持ち歩く必要がない。
  • デメリット:
    • アプリによっては機能が限定的であったり、有料であったりする。
    • プライバシーに関する懸念がある場合がある。
    • あくまでツールであり、自分自身の内省や努力は必要。

アプリストアで「認知行動療法」「CBT」「思考記録」といったキーワードで検索すると、様々なアプリが見つかります。いくつか試してみて、自分にとって使いやすいものを選んでみましょう。アプリを使うことで、思考記録の習慣化が楽になるかもしれません。

セルフで実践する際の注意点・落とし穴

セルフで認知行動療法を実践することは非常に有効ですが、いくつか注意しておきたい点があります。

  1. 完璧を目指さない: 最初から全てのステップを完璧に行おうとすると、かえって負担になり挫折しやすくなります。まずは「思考記録だけやってみる」「週に数回だけ記録する」など、小さな目標から始めましょう。
  2. 自動思考を批判しすぎない: 自動思考は悪いものではありません。単に頭に浮かんだ考えであり、それに「良い」「悪い」のレッテルを貼る必要はありません。目的は、その考えが状況に対してどれだけ適切か、他の考え方はないかを検討することです。自分を責めるのではなく、客観的に観察する姿勢を持ちましょう。
  3. 気分の落ち込みや不安が増すことがある: 自分のネガティブな考え方に向き合う過程で、一時的に気分が落ち込んだり、不安が増したりすることがあります。これは変化の過程で起こりうることで、必ずしも悪いサインではありませんが、あまりにつらい場合は無理せず休憩したり、一旦中止したりすることが重要です。
  4. セルフでの限界を知る: セルフでの実践は、あくまで自分自身で行う補助的な方法です。問題が根深い場合、セルフでは自分の認知の歪みに気づきにくかったり、適切な対処法が見つけられなかったりすることがあります。
  5. 症状が悪化する場合: セルフで実践しているうちに、かえって症状が悪化したり、精神的に不安定になったりした場合は、すぐに実践を中止し、専門家(医師やカウンセラー)に相談してください。

セルフでの実践は、自分のペースで手軽に取り組めるメリットがありますが、専門家によるサポートとは異なります。困った時、行き詰まった時、あるいはより深く学びたい時は、遠慮なく専門家の助けを借りましょう。

より深く学ぶには?書籍や専門家の活用

セルフでの簡単な実践に慣れてきたり、さらに深く認知行動療法を学びたいと感じたりした場合、あるいはセルフでは限界を感じる場合には、以下のような方法を検討してみましょう。

  • 書籍: 認知行動療法に関する一般向けの解説書やワークブックが多数出版されています。これらの書籍は、療法の原理をより詳しく説明したり、具体的な実践方法や豊富なワークシートを提供したりしています。自分の抱える悩みに特化した書籍(例:不安専門、うつ専門など)を探してみるのも良いでしょう。書籍を選ぶ際は、著者が認知行動療法に詳しい専門家であるか、内容が平易で分かりやすいかなどを基準にすると良いでしょう。
  • 専門家(医師、公認心理師、臨床心理士など): 精神科医、心療内科医、あるいは心理カウンセラーなどの専門家から、認知行動療法のセッションを受けることができます。専門家は、あなたの抱える問題や状況を詳しく聞き取り、あなたに合った認知行動療法を計画し、実施してくれます。セルフでは気づきにくい認知の歪みを指摘してくれたり、難しいステップを丁寧にガイドしてくれたりします。また、必要に応じて他の治療法(薬物療法など)と組み合わせることも可能です。
    • 医療機関: 精神科や心療内科では、医師の診察のもと、認知行動療法が提供されることがあります。保険適用となる場合もあります。
    • カウンセリング機関: 病院に併設された相談室や、民間のカウンセリングルームなどで、公認心理師や臨床心理士による認知行動療法を受けることができます。こちらは保険適用外となる場合が多いです。
    • オンラインカウンセリング: 近年では、オンラインで認知行動療法のセッションを受けられるサービスも増えています。自宅から気軽に専門家のサポートを受けたい場合に便利です。

セルフでの実践はあくまで導入や日々のメンテナンスとして捉え、困ったときや大きな変化を望む場合は、専門家のサポートを積極的に活用しましょう。自分に合った学び方やサポート体制を見つけることが、認知行動療法を効果的に続ける鍵となります。

まとめ:簡単な認知行動療法で考え方を変えよう

この記事では、「認知行動療法 やり方 簡単」をテーマに、セルフで実践できる基本的なステップと方法をご紹介しました。

認知行動療法は、出来事そのものではなく、それに対する自分の「考え方(認知)」が感情や行動に影響を与えるという考えに基づいています。この考え方を変えることで、心の状態を改善し、より生きやすくなることを目指します。

セルフで簡単に始めるための基本的なステップは、以下の3つです。

  1. 思考記録: 状況、感情、頭に浮かんだ「自動思考」を客観的に書き出す。
  2. 認知再構成: 自動思考に反論する証拠を探し、別の可能性を検討し、よりバランスの取れた考え方を見つける。
  3. 行動変化: 気分を改善するための行動を計画・実行する(行動活性化)、または自分の予測が正しいか行動で試す(行動実験)。

これらのステップは、ノートやワークシート、スマホアプリなどを活用することで、日々の生活の中で手軽に実践できます。まずは完璧を目指さず、小さなことから始めてみましょう。

ただし、セルフでの実践には限界があることも理解しておくことが重要です。つらい時や、セルフではうまくいかないと感じる時は、無理せず専門家(医師や公認心理師など)に相談することをためらわないでください。書籍などを活用してさらに深く学ぶことも、効果を高める助けになります。

認知行動療法は、継続することで少しずつ効果を実感できるものです。「簡単」なステップから始めて、あなた自身の考え方や行動のパターンに気づき、より健康的でポジティブな方向へと変えていく練習を重ねていきましょう。今日から、あなたの心のケアを始めてみませんか?

※本記事は認知行動療法の基本的な考え方とセルフでの簡単な実践方法を提供するものであり、専門的な医療行為や診断に代わるものではありません。ご自身の心身の状態に不安がある場合は、必ず医療機関や専門機関にご相談ください。

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