「自分が自分じゃない感覚」は、多くの人が一度は経験する可能性のある不思議で漠然とした感覚です。
体が自分のもののように感じられなかったり、周囲の現実が非現実的に思えたりと、その内容は人によって異なります。
「これって一体何だろう?」「もしかして何か大きな病気なの?」と不安に感じる方もいるかもしれません。
この記事では、「自分が自分じゃない感覚」がなぜ起こるのか、考えられる原因や症状、そしてもしその感覚に悩んだときにどうすれば良いのかについて詳しく解説します。
一人で抱え込まず、まずはこの感覚について理解を深めていきましょう。
自分が自分じゃない感覚とは?一般的な感覚と病気との関連
「自分が自分じゃない感覚」は、大きく分けて二つの主要な体験に分けられます。一つは「離人感」、もう一つは「現実感消失感」です。
これらの感覚は、健康な人でも強いストレスや疲労、睡眠不足などが原因で一時的に経験することがあります。
しかし、これらの感覚が持続的に現れたり、日常生活に支障をきたすほど強かったりする場合は、精神的な問題や病気と関連している可能性も考えられます。
離人感と現実感消失感の違い
「離人感」と「現実感消失感」は似ているように感じられますが、体験の対象が異なります。
- 離人感 (Depersonalization): 自分の体や精神的なプロセスから切り離されている、あるいは遠ざかっているように感じる感覚です。
自分がまるで傍観者であるかのように、自分の思考、感情、行動を観察しているような感覚を伴うことがあります。
自分の体がロボットのように感じられたり、声が自分の声ではないように聞こえたりすることもあります。 - 現実感消失感 (Derealization): 周囲の世界、つまり人、物、場所などが非現実的である、夢の中にいるようだ、あるいは霧がかかったようにぼやけて見えるなど、現実感が失われているように感じる感覚です。
見慣れた場所が全く違う場所のように感じられたり、親しい人が見知らぬ人のように感じられたりすることもあります。
どちらの感覚も、「解離」と呼ばれる心の働きの一つに関連しています。
解離は、通常であれば統合されている意識、記憶、自己同一性、環境の知覚などが一時的に分離してしまう状態を指します。
強いストレスやトラウマ体験から自分を守るための防衛機制として働くことがあります。
これらの違いをより明確にするために、以下の表でまとめてみましょう。
感覚の種類 | 体験の対象 | 具体的な感覚の例 |
---|---|---|
離人感 | 自分の体、精神的なプロセス | 自分が自分ではないように感じる、体がロボットのよう、感情が湧かない、声が自分の声でない |
現実感消失感 | 周囲の世界、環境 | 世界が非現実的、夢の中にいるよう、霧がかかったよう、見慣れた場所が見慣れない場所のよう |
この二つは同時に起こることも多く、「離人感・現実感消失症候群」として診断される場合もあります。
一時的な感覚と持続的な感覚の違い
「自分が自分じゃない感覚」は、その持続期間によって捉え方が大きく変わります。
- 一時的な感覚: 強烈なショックを受けたとき、極度の疲労や睡眠不足のとき、あるいは特定の薬物(合法・違法を問わず)の影響下にあるときなどに、一時的にこれらの感覚を経験することがあります。
これは脳が過負荷状態になったり、異常な刺激を受けたりした際に起こりうる自然な反応である場合が多く、原因が解消されれば感覚も自然に消えていくことがほとんどです。
特に心配する必要はありません。 - 持続的な感覚: 特に明確な原因がないにも関わらず、離人感や現実感消失感が繰り返し現れたり、数週間、数ヶ月、あるいはそれ以上にわたって継続したりする場合です。
これらの感覚によって強い苦痛を感じたり、学業や仕事、対人関係などの日常生活に大きな支障をきたしたりする場合は、単なる一時的な現象ではなく、精神的な問題や疾患のサインである可能性が高くなります。
この場合は、専門家による評価やサポートが必要となります。
持続的な「自分が自分じゃない感覚」は、「離人感・現実感消失症候群」をはじめとする解離性障害や、他の精神疾患(うつ病、不安障害、PTSDなど)の症状として現れることがあります。
したがって、感覚が長く続く場合や、つらいと感じる場合は、自己判断せずに専門家に相談することが大切です。
自分が自分じゃないと感じる時の具体的な感覚や症状
「自分が自分じゃない感覚」は抽象的で説明しにくいものですが、具体的にどのような体験として現れるのでしょうか。
ここでは、多くの人が経験する代表的な感覚や症状をいくつか紹介します。
ご自身の感覚と照らし合わせてみてください。
体が自分じゃない、ロボットのように感じる
これは離人感の典型的な症状の一つです。
自分の体が自分のものではなく、どこか遠い存在のように感じられたり、自分の意思とは無関係に動いているロボットの腕や足を見ているかのように感じられたりします。
体を動かしても、それが自分の体であるという実感が薄く、まるで操り人形になっているような奇妙な感覚を伴うこともあります。
鏡を見ても、そこに映っているのが自分であるという確信が持てず、見知らぬ人を見ているような感覚になる人もいます。
自分が自分を外から見ているような感覚(離人感)
これも離人感の代表的な症状です。
幽体離脱のように、自分の体から抜け出し、自分の行動や感情、思考を外側から客観的に観察しているかのように感じます。
会議で話している自分、道を歩いている自分などを、まるで映画を見ているかのように感じるのです。
この感覚は非常に現実離れしており、強い不安や恐怖を伴うこともあります。
自分の人生が自分のものではなく、誰か他の人の人生を傍観しているかのように感じられる人もいます。
現実感がない、夢の中にいるような感覚(現実感消失感)
これは現実感消失感の典型的な症状です。
周囲の世界が現実であるという実感が薄れ、すべてがぼんやりとしていたり、霞がかかっているように見えたりします。
まるで夢の中にいるような、あるいは映画のセットの中にいるような非現実的な感覚を伴います。
人や物が遠く感じられたり、声がくぐもって聞こえたりすることもあります。
時間の流れが遅く感じられたり、逆に早く感じられたりすることもあり、時間の感覚も歪むことがあります。
ふわふわする、ぼーっとする感覚
「自分が自分じゃない感覚」に伴って、頭がふわふわする、地面に足がついていないような感覚、あるいは常にぼーっとしていて頭がクリアにならないと感じることがあります。
これは、現実とのつながりが希薄になる感覚と関連している場合が多いです。
集中力が低下したり、思考がまとまらなくなったりすることもあり、学業や仕事に支障をきたす原因となります。
めまいや立ちくらみとは異なり、感覚的なものとして捉えられることが多いです。
気持ち悪い、違和感がある感覚
これらの奇妙な感覚は、多くの人にとって不快であり、強い違和感や気持ち悪さを伴います。
自分の心と体がバラバラになってしまったかのような感覚、あるいは世界が歪んでしまったかのような感覚は、人間にとって非常に不安定な状態です。
この不快感や違和感そのものが、さらなる不安やストレスを生み出し、感覚を悪化させる悪循環に陥ることもあります。
したがって、「気持ち悪い」「違和感がある」という感覚は、この状態を理解する上で非常に重要なサインとなります。
これらの具体的な感覚は、一時的なものであれば大きな問題にはなりませんが、持続的に現れたり、強烈な苦痛を伴ったりする場合は注意が必要です。
自分が自分じゃない感覚の様々な原因
「自分が自分じゃない感覚」は、単一の原因で起こるわけではありません。
様々な要因が複雑に絡み合って生じることが多く、その原因によって対処法も異なってきます。
主な原因として考えられるものをいくつか見ていきましょう。
心理的な原因(ストレス、不安、疲労)
最も一般的な原因の一つは、強い心理的な負荷です。
- ストレス: 仕事や人間関係の悩み、将来への不安など、長期にわたるストレスや、突発的な強いストレス(例えば事故に遭う、災害を経験するなど)は、脳に過剰な負担をかけ、解離症状を引き起こすことがあります。
現実から一時的に「逃避」するために、無意識のうちに解離的な反応が起こると考えられています。 - 不安: パニック障害や社交不安障害などの不安障害を持つ人は、強い不安感や緊張に伴って離人感や現実感消失感を経験することがあります。
特にパニック発作中は、現実感がなくなったり、自分が自分ではないような感覚に襲われたりすることがあります。 - 疲労・睡眠不足: 極度の肉体疲労や精神的疲労、慢性的な睡眠不足は、脳の機能低下を招き、一時的に現実感や自己認識の歪みを引き起こすことがあります。
体が疲れていると、心も不安定になりやすいため注意が必要です。
これらの心理的な原因による感覚は、原因となっているストレスや疲労が軽減されれば、自然に改善することが期待できます。
精神疾患との関連(離人症、不安障害、うつ病、PTSDなど)
「自分が自分じゃない感覚」が持続的で、日常生活に支障をきたす場合は、特定の精神疾患の症状として現れている可能性が高いです。
- 離人感・現実感消失症候群: まさにこの感覚が主な症状である疾患です。
後述しますが、この感覚が繰り返し起こり、あるいは持続し、本人に苦痛を与えたり、社会生活や職業生活に支障をきたしたりする場合に診断されます。
他の精神疾患や薬物の影響ではないことが診断の条件となります。 - パニック障害: 前述したように、パニック発作の症状として離人感や現実感消失感が現れることがあります。
発作が収まれば感覚も消えることが多いですが、発作への恐怖から不安が高まり、症状が固定化することもあります。 - うつ病: うつ病の症状の一つとして、感情の麻痺や現実感の喪失が起こることがあります。
何も感じられない、世界が色褪せて見えるといった感覚は、現実感消失感に近いものです。 - PTSD (心的外傷後ストレス障害): 過去のトラウマ体験がフラッシュバックする際に、その体験が現実ではないかのように感じられたり、自分がその場にいるのに感覚が麻痺したりすることがあります。
解離はPTSDの主要な症状の一つです。 - 急性ストレス障害: 強いトラウマ体験の直後に起こる可能性のある疾患で、解離症状が特徴的です。
- 境界性パーソナリティ障害: 強い感情の不安定さや対人関係の問題を持つ人が、ストレス時に解離症状を起こすことがあります。
- 統合失調症: まれに、現実との乖離としてこれらの感覚が現れることもありますが、通常は幻覚や妄想など他の症状が主となります。
これらの精神疾患と関連している場合は、その疾患自体の治療が必要となります。
身体的な原因(神経系、内分泌系などの疾患、薬物)
まれに、「自分が自分じゃない感覚」が身体的な疾患や物質の影響で引き起こされることもあります。
- 神経系の疾患: てんかん(特に側頭葉てんかん)の発作の前兆や症状として、現実感が歪んだり、奇妙な感覚に襲われたりすることがあります。
偏頭痛に伴ってこれらの感覚が現れることもあります。 - 内分泌系の疾患: 甲状腺機能亢進症や低下症など、ホルモンバランスの異常が精神症状を引き起こすことがあります。
- 低血糖: 血糖値が急激に低下すると、めまいや脱力感とともに現実感が薄れるような感覚を伴うことがあります。
- 薬物: 向精神薬の一部(特に抗不安薬や睡眠薬の急な中止)、ステロイド、特定の抗アレルギー薬などが、副作用として精神的な変調や解離症状を引き起こすことがあります。
違法薬物(マリファナ、LSD、ケタミンなど)の使用は、強い離人感や現実感消失感を引き起こすことがよく知られています。 - 睡眠時無呼吸症候群などによる睡眠の質の低下: 慢性的な睡眠不足と同様に、脳の機能に影響を与え、これらの感覚の原因となることがあります。
これらの身体的な原因が疑われる場合は、内科や神経内科などで詳しい検査を受ける必要があります。
原因が多岐にわたるため、安易に自己判断せず、医師の診断を受けることが重要です。
離人感・現実感消失症候群とは
「自分が自分じゃない感覚」が慢性的に続き、強い苦痛や生活への支障を伴う場合、「離人感・現実感消失症候群(Depersonalization/Derealization Disorder)」と診断されることがあります。
これはDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)において、解離性障害の一種として分類されています。
診断基準と主な特徴
診断は、主に医師による問診に基づいて行われます。
DSM-5における主な診断基準は以下の通りです(簡略化しています)。
- 離人感、現実感消失感、またはその両方の持続的な、あるいは反復的な体験がある。
- 離人感: 自分の体、心、感情、思考などが非現実的、切り離されている、外から見ているように感じる。
- 現実感消失感: 周囲の世界や人、物が非現実的、夢の中のよう、霧がかかったように感じる。
- これらの体験中も、現実検討能力(何が現実で何が非現実かを区別する能力)は保たれている。
つまり、自分が感じている感覚が異常であると認識できている。 - これらの感覚によって、著しい苦痛を感じているか、または社会的、職業的、あるいは他の重要な領域における機能に障害を引き起こしている。
- これらの感覚は、他の精神疾患(統合失調症、パニック障害、うつ病など)によって引き起こされたものではない。
- これらの感覚は、薬物乱用や他の身体疾患(てんかん、頭部外傷など)の生理学的な影響によるものではない。
主な特徴としては、常にこれらの感覚に悩まされていること、感覚の強さが変動すること、そして感覚そのものに対する強い不安や恐怖を伴うことが多い点が挙げられます。
患者さんは、自分が「おかしくなってしまったのではないか」「気が狂ってしまうのではないか」と恐れることがよくあります。
どのような人が離人感・現実感消失症候群になりやすい?
離人感・現実感消失症候群になりやすい人の特徴やリスク要因としては、以下のようなものが考えられます。
- トラウマ体験: 特に子ども時代の虐待(身体的、性的、精神的)やネグレクト、身近な人の死、事故、災害など、強い精神的なショックを伴う出来事を経験した人。
解離がトラウマからの防御メカニズムとして働き、それが慢性化することがあります。 - 強いストレスや不安: 長期にわたる過重なストレス、入試や就職、結婚などのライフイベントに伴う強いプレッシャー、あるいは慢性的な人間関係の悩みなども発症の引き金となることがあります。
- 特定の性格傾向: 感受性が強く、繊細な人、あるいは完璧主義で自分を厳しく律する傾向のある人などが、ストレスに対して解離的な反応を示しやすいという指摘もあります。
しかし、性格だけで発症が決まるわけではありません。 - 他の精神疾患の合併: 不安障害(特にパニック障害)、うつ病、強迫性障害、パーソナリティ障害などを合併している場合に、離人感・現実感消失症候群が発症しやすい、あるいは症状が重くなりやすいという報告もあります。
ただし、上記に当てはまる人が必ずこの疾患になるわけではありません。
また、特に明らかなトラウマやストレスの経験がなくても発症するケースもあります。
発症のメカニズムはまだ完全に解明されていませんが、脳機能の一部の異常(特に情動や自己認識に関わる部位)が関連している可能性が研究されています。
自分でできること・簡易セルフチェック
「自分が自分じゃない感覚」に悩んでいる場合、まずは自分の感覚を理解し、日常生活の中で試せる対処法を試してみることが大切です。
簡易的なセルフチェックも有効な場合があります。
自分の感覚を理解する第一歩
自分が感じている奇妙な感覚が何なのかを理解することは、不安を軽減する上で非常に重要です。
- 感覚の記録: どのような状況で、いつ、どれくらいの時間、どのような感覚(離人感か現実感消失感か、具体的な内容)が現れたかを記録してみましょう。
日記のように書き留めることで、パターンが見えてくることがあります。
また、感覚が現れる直前にどのような出来事があったか、どのような感情だったかを記録することも、原因を探る手がかりになります。 - 情報収集: この記事のように信頼できる情報源から、「自分が自分じゃない感覚」や解離、離人感・現実感消失症候群について学ぶことで、自分の状態が全く未知のものではないことを知り、安心できる場合があります。
ただし、インターネット上の情報には不正確なものや不安を煽るものもあるため、注意が必要です。
専門機関のウェブサイトなどを参考にしましょう。
日常生活で試せる対処法
自分でできる対処法は、主に「グラウンディング」と呼ばれる技法です。
グラウンディングは、意識を「今、ここ」の現実に戻すことを目的とします。
解離症状が現れたときに試してみましょう。
- 五感を使うグラウンディング:
- 視覚: 自分の周囲にあるものを5つ見つけ、その色や形を声に出してみる。
「青い椅子がある」「丸い時計が見える」など。 - 触覚: 自分の体に触れるものの感触(服の質感、椅子の硬さ)や、手で触れるものの感触(ペン、机の表面)に意識を集中する。
手をお湯や冷たい水につけて、その温度を感じてみるのも効果的です。 - 聴覚: 周囲の音に耳を傾ける。
エアコンの音、車の音、人の声など、聞こえる音を3つ以上数えてみる。 - 嗅覚: 強い香り(アロマオイル、コーヒー、石鹸など)を嗅いでみる。
- 味覚: ガムを噛む、ミントキャンディーを舐めるなど、味覚に刺激を与える。
- 視覚: 自分の周囲にあるものを5つ見つけ、その色や形を声に出してみる。
- 体の感覚に意識を向ける: 足が地面についている感覚、呼吸の感覚、体のどこかに軽く触れている感覚など、自分の体の一点に意識を集中させます。
- 軽い運動: 足踏みをしたり、ストレッチをしたり、少し歩いたりするなど、体を動かすことで現実感を取り戻しやすくなります。
- 冷たいものや熱いものに触れる: 冷たい水で顔を洗う、氷を触る、温かい飲み物を飲むなど、強い温度刺激は「今、ここ」を感じるのに役立ちます。
これらのグラウンディング技法は、感覚が現れたときに一時的に和らげる効果が期待できます。
日頃から練習しておくことで、いざというときに使いやすくなります。
また、ストレス管理や健康的な生活習慣も重要です。
- 十分な睡眠をとる
- バランスの取れた食事を心がける
- 適度な運動を取り入れる
- リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、ヨガなど)を試す
- 趣味や楽しい活動に時間を使う
これらの対処法は、あくまで症状を和らげるためのものであり、根本的な解決にはつながらない場合もあります。
症状が重い場合や、原因に精神疾患が関わっている場合は、専門家による治療が必要です。
簡易セルフチェックの例(自己判断せず、あくまで参考としてください)
以下の項目に複数当てはまる場合、離人感や現実感消失感の傾向があるかもしれません。
- 自分の体が自分のものではないように感じることがよくある
- 鏡に映る自分が別人のように見えることがある
- 自分の考えや感情が自分のものではないように感じることがある
- 周囲の世界が非現実的で、夢の中にいるように感じることがよくある
- 見慣れた場所が全く違う場所のように感じることがある
- 親しい人との間に隔たりを感じることがある
- これらの感覚によって、つらい気持ちになる、不安になる
- これらの感覚のために、日常生活(仕事、勉強、人間関係)に支障が出ている
(注:これは正式な診断ツールではありません。診断は必ず専門医が行います。)
専門家への相談を検討する目安
自分でできる対処法を試しても感覚が改善しない、あるいは悪化している、感覚によって日常生活に大きな支障が出ている場合は、専門家への相談を検討するタイミングです。
放置するとどうなる?
「自分が自分じゃない感覚」を放置すると、以下のような問題が生じる可能性があります。
- 症状の慢性化・悪化: 原因となっているストレスや精神疾患が未治療のままだと、感覚が消えずに続き、ますます強くなることがあります。
- 二次的な精神的問題: 常に奇妙な感覚に悩まされることで、強い不安、恐怖、うつ状態などが生じやすくなります。
「自分はおかしくなってしまった」という思い込みから、孤立を深めることもあります。 - 日常生活への支障: 集中力の低下、現実感の喪失は、仕事や学業のパフォーマンスを著しく低下させます。
また、人との関わりが難しくなり、対人関係にも影響が出ることがあります。 - 根本原因の悪化: もし背景にうつ病や不安障害、PTSDなどがある場合、それらの疾患が放置されることでさらに重症化するリスクがあります。
早期に相談することで、適切な診断と治療につながり、症状の改善や悪化の予防が期待できます。
相談できる場所(心療内科・精神科など)
「自分が自分じゃない感覚」について相談できる専門家は、主に以下の通りです。
相談先 | 特徴 | どのような相談に適しているか |
---|---|---|
心療内科 | ストレスなど心理的な要因が体に影響を与えている場合(心身症)を主に扱う。精神的な問題にも対応可能。 | ストレスが原因で体の不調(胃痛、頭痛など)とともに感覚が現れている場合。 比較的受診しやすい雰囲気。 |
精神科 | 幅広い精神疾患(うつ病、不安障害、統合失調症、解離性障害など)を専門的に扱う。薬物療法や精神療法を行う。 | 離人感・現実感消失症候群を含む、精神疾患が強く疑われる場合。 専門的な診断と治療を受けたい場合。 |
精神科専門のクリニック | 精神科と同様に精神疾患を扱うが、多くは外来診療中心。 比較的予約を取りやすい場合がある。 |
精神科への受診に抵抗がある場合、まずはクリニックで相談したい場合。 |
カウンセリングルーム | 臨床心理士や公認心理師などが、対話を通じて心理的な問題の解決を目指す。原則として診断や薬の処方は行わない。 | 心理的な原因(ストレス、トラウマ、人間関係)が大きいと考えられる場合。 じっくり話を聞いてほしい場合。 |
精神保健福祉センター | 公的な機関。精神的な問題に関する相談窓口。 医療機関への紹介や情報提供などを行う。 費用がかからない場合が多い。 |
どこに相談すれば良いか分からない場合。 まずは情報収集したい場合。 |
まずは心療内科や精神科を受診し、医師の診断を受けることをお勧めします。
医師は、あなたの症状や既往歴、生活状況などを詳しく聞き取り、必要に応じて血液検査や脳波検査などを行い、感覚の原因が身体的なものか、精神的なものか、あるいは両方が関わっているのかを判断します。
そして、適切な治療方針を提案してくれます。
離人感・現実感消失症候群の治療法概要
離人感・現実感消失症候群の治療は、原因や症状の程度によって異なりますが、主に以下の方法が組み合わせられます。
- 精神療法(心理療法):
- 認知行動療法 (CBT): 離人感や現実感消失感に対する恐怖や不安を軽減することに焦点を当てます。
これらの感覚を破局的に捉える思考パターンを修正し、感覚が現れても適切に対処する方法を学びます。
グラウンディング技法などもここで指導されます。 - 弁証法的行動療法 (DBT): 特に感情のコントロールや対人関係に問題を抱える人に有効とされます。
解離症状が現れたときの対処スキルを学びます。 - トラウマに焦点を当てた療法: もし過去のトラウマが原因となっている場合は、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)やTF-CBT(トラウマ焦点化認知行動療法)など、トラウマ処理に特化した精神療法が有効な場合があります。
解離症状はトラウマ記憶と強く結びついていることが多いため、トラウマを適切に処理することが症状の改善につながります。
- 認知行動療法 (CBT): 離人感や現実感消失感に対する恐怖や不安を軽減することに焦点を当てます。
- 薬物療法:
- 離人感・現実感消失症候群に特異的に有効な薬はまだありませんが、症状を軽減するために他の精神疾患の治療薬が試されることがあります。
例えば、不安が強い場合は抗不安薬(ただし依存性に注意が必要)、うつ症状を伴う場合は抗うつ薬(SSRIなどが試されることが多い)、パニック発作を伴う場合はパニック障害の治療薬などが処方されることがあります。
これらの薬が直接「自分が自分じゃない感覚」を消すわけではありませんが、背景にある症状を和らげることで、感覚も軽減されることが期待できます。
- 離人感・現実感消失症候群に特異的に有効な薬はまだありませんが、症状を軽減するために他の精神疾患の治療薬が試されることがあります。
- 支持的なアプローチ:
- 症状について理解を深め、不安を和らげるための心理教育。
- ストレス管理やリラクゼーション技法の習得。
- 健康的な生活習慣の確立。
治療には時間がかかる場合もありますが、適切な治療とサポートによって、症状は改善し、日常生活をよりスムーズに送れるようになる可能性は十分にあります。
重要なのは、一人で抱え込まず、専門家と共に根気強く取り組むことです。
まとめ:自分が自分じゃない感覚に悩んだら専門家へ相談を
「自分が自分じゃない感覚」は、一時的なものであれば多くの人が経験する可能性のある感覚です。
しかし、この感覚が頻繁に起こったり、長く続いたり、あるいは強い苦痛や日常生活への支障を伴う場合は、単なる一時的な現象ではなく、背景に何らかの精神的な問題や疾患(離人感・現実感消失症候群、不安障害、うつ病、PTSDなど)が隠れている可能性があります。
具体的な症状としては、体が自分のものではないように感じる離人感や、周囲の世界が非現実的に見える現実感消失感が挙げられます。
これらの感覚は、強いストレスや疲労、トラウマ体験、特定の精神疾患、あるいはまれに身体的な原因によって引き起こされます。
もしあなたがこれらの感覚に悩んでいるなら、まずは自分の感覚を記録し、グラウンディングなどのセルフケアを試してみましょう。
しかし、症状が改善しない場合や、つらいと感じる場合は、放置せずに心療内科や精神科といった専門家へ相談することが非常に重要です。
専門家は、正確な診断に基づいて、あなたに合った精神療法や薬物療法などの治療法を提案してくれます。
「自分が自分じゃない」という感覚は非常に孤独を感じやすいものですが、あなたは一人ではありません。
適切なサポートを受けることで、感覚を理解し、和らげ、より安定した日々を送ることができるようになります。
勇気を出して、第一歩を踏み出しましょう。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や助言を代替するものではありません。
ご自身の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。