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中用量ピルとは?低用量ピルとの違いや効果・副作用を解説

中用量ピルについて、その定義や低用量ピルとの違い、主な効果、副作用、正しい服用方法、そして入手方法に至るまで、詳しく解説します。中用量ピルは、女性の健康管理において重要な役割を果たす医薬品ですが、その特性を正しく理解することが非常に大切です。この記事を通して、中用量ピルに関する疑問や不安を解消し、ご自身の状況に合わせて適切に活用できるようになることを目指しましょう。

目次

中用量ピルとは?その定義と役割

中用量ピルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類の女性ホルモンを配合した合剤タイプの経口避妊薬です。低用量ピルや超低用量ピルと比較して、これらのホルモンの配合量が多いことが特徴です。主に、婦人科系の様々な症状の治療や管理に用いられます。

その役割は多岐にわたりますが、代表的なものとしては、月経周期の調整や、特定の婦人科疾患の治療補助が挙げられます。ホルモンバランスに作用することで、本来の生理周期とは異なるタイミングで出血を起こさせたり、特定のホルモン補充を行ったりすることが可能です。ただし、ホルモン量が多い分、後述する副作用のリスクも考慮する必要があります。

低用量ピルとの違い

中用量ピルと低用量ピルは、同じ女性ホルモンの合剤ですが、ホルモン配合量や主な使用目的、副作用の頻度などに違いがあります。これらの違いを理解することは、どちらのピルが自分の目的に合っているのかを判断する上で重要です。

ホルモン配合量の比較

最も明確な違いは、配合されている卵胞ホルモン(エストロゲン)の量です。

  • 低用量ピル: 卵胞ホルモンの量が50μg未満のものを指します。現在主流となっているOC(経口避妊薬)やLEP(月経困難症・子宮内膜症治療薬)のほとんどがこの分類に含まれます。さらに、卵胞ホルモン量が30μg以下のものは「超低用量ピル」と呼ばれることもあります。
  • 中用量ピル: 卵胞ホルモンの量が50μgのものを指します。低用量ピルに比べてホルモン量が多いため、効果の発現が比較的強く、特定の目的で短期間使用されることが多い傾向にあります。

ホルモン量が多いということは、それに伴う体の変化も大きい可能性があることを意味します。

期待できる効果・目的の比較

低用量ピルと中用量ピルでは、期待できる効果や主な使用目的が異なります。

項目 低用量ピル 中用量ピル
主な使用目的 避妊、月経困難症・子宮内膜症の治療、PMS/PMDDの軽減、ニキビ治療など 生理日移動、緊急避妊(代替手段として)、月経周期の調整、機能性子宮出血の治療など
長期服用 避妊や疾患治療のために長期間継続して服用されることが一般的 特定の目的で短期間服用されることが多い
避妊効果 正しく服用すれば高い避妊効果が得られる 主な目的ではないが、避妊効果もある(ただし、避妊目的で長期服用は一般的ではない)
月経困難症/PMS 第一選択肢として広く用いられる 短期間の症状緩和や周期調整に用いられることがあるが、長期的な治療には低用量ピルが優先
緊急避妊 効果なし 代替手段として用いられることがある(ヤッペ法)が、推奨はされない
生理日移動 可能 より確実性が高いとされる(ただしホルモン量が多い)

低用量ピルは、低いホルモン量で長期的な体の調整や避妊を行うのに適しています。一方、中用量ピルは、比較的短期間で生理周期を大きく操作したい場合や、止血目的などで用いられることがあります。

副作用の出やすさの比較

一般的に、ホルモン量が多いほど副作用が出やすい傾向にあります。

  • 低用量ピル: ホルモン量が少ないため、副作用も比較的軽いか、全く感じない人も多いです。ただし、飲み始めには吐き気、頭痛、不正出血などのマイナートラブルが起こることがあります。
  • 中用量ピル: 低用量ピルに比べてホルモン量が多いため、吐き気や頭痛などの副作用が出やすいとされています。特に飲み始めには症状を感じやすい人が多いです。また、血栓症などの重大な副作用のリスクも、低用量ピルよりわずかに高いという報告もあります。

そのため、長期的な使用には副作用のリスクが少ない低用量ピルが推奨されることが多いです。中用量ピルは、医師が必要と判断した場合に、特定の目的で短期間使用されるのが一般的です。

中用量ピルの主な効果と目的

中用量ピルは、そのホルモン量を活かして、主に以下のような目的で用いられます。

生理日移動(月経移動)

中用量ピルの最も一般的な使用目的の一つが、生理日移動です。旅行やイベント、試験など、生理のタイミングをずらしたい場合に、月経周期を一時的に操作するために服用します。生理を予定より遅らせたい場合と、早めたい場合で飲み方が異なります。ホルモン量が多いため、比較的高い確率で生理日を調整できるとされています。

  • 生理を遅らせる場合: 目的とする生理予定日の約5~7日前からピルの服用を開始し、生理を避けたい日まで毎日1錠服用します。服用を中止すると、数日後に生理(消退出血)が来ます。服用期間中は出血が起きないようにホルモンを維持するため、比較的確実性の高い方法とされます。
  • 生理を早める場合: 生理が始まった日から数えて5日目までにピルの服用を開始し、10~14日間毎日1錠服用します。服用を中止すると、数日後に生理(消退出血)が来ます。この方法だと、次の生理は本来の生理予定日よりも早く来るため、その後のイベント時に生理が重なるのを避けることができます。ただし、早めに服用を開始する必要があるため、直前になってからでは対応できない点に注意が必要です。

いずれの場合も、服用開始のタイミングや服用期間は、個人の生理周期や希望する移動時期によって調整が必要です。必ず医師の指示に従ってください。

緊急避妊(アフターピル)

性行為後に避妊に失敗した際に、妊娠を防ぐために緊急的に服用することがあります(緊急避妊)。かつては中用量ピルを複数回服用する「ヤッペ法」が行われていましたが、現在は副作用が少なく効果もより確実なレボノルゲストレル製剤などが主流となっています。中用量ピルによる緊急避妊は、現在の日本のガイドラインでは第一選択肢とはされていません。あくまで代替手段として、医師の判断で用いられる限定的なケースがあることを理解しておく必要があります。もし緊急避妊が必要になった場合は、速やかに医師に相談し、推奨される薬剤について説明を受けるようにしましょう。

ヤッペ法では、無防備な性行為後72時間以内に中用量ピルを2錠服用し、その12時間後にさらに2錠服用します。合計4錠の服用となります。効果はレボノルゲストレル製剤よりも劣り、副作用(特に吐き気)も強く出やすいとされています。

重要な注意点として、緊急避妊を希望する場合は、可能な限り早く医師に相談し、推奨されるレボノルゲストレル製剤などを処方してもらうようにしてください。性交後72時間を過ぎた場合でも、別の薬剤(ウリプリスタル酢酸エステル製剤)で対応可能な場合もありますので、諦めずに医療機関を受診することが大切です。

月経困難症・過多月経・PMSなどの改善

月経困難症(生理痛がひどい)、過多月経(経血量が異常に多い)、PMS(月経前症候群)などの症状緩和のために、中用量ピルが処方されることもあります。ただし、これらの症状の治療においては、通常、低用量ピルが第一選択肢となります。低用量ピルで効果が不十分な場合や、特定の状況下で中用量ピルが選択されることがあります。月経周期を整えることで、これらの症状の軽減が期待できます。

中用量ピルの種類

日本で処方される代表的な中用量ピルにはいくつかの種類があります。いずれも卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤ですが、含まれる黄体ホルモンの種類や量が異なります。

プラノバール配合錠

中用量ピルとして最も広く知られている薬剤の一つです。卵胞ホルモン(ノルゲストレル)と黄体ホルモン(レボノルゲストレル)が配合されています。主に生理日移動や、機能性子宮出血の治療、月経困難症やPMSなどの症状緩和、緊急避妊(ヤッペ法)などに用いられます。ホルモン量が多く、効果が比較的しっかり出るため、短期間での周期調整に適しています。

ノアルテン錠

ノアルテンは、黄体ホルモンであるノルエチステロン単独の製剤です。厳密には「中用量ピル(合剤)」とは異なりますが、月経周期の調整や止血目的など、中用量ピルと同様の目的で用いられることが多い薬剤です。単独製剤のため、ホルモンバランスへの作用の仕方が合剤とは異なり、医師が症状や目的に応じて使い分けます。

その他の主な中用量ピル

上記以外にも、中用量ピルに分類される薬剤や、中用量ピルと同様の目的で使用されるホルモン剤は存在します。例えば、プロゲストン錠(黄体ホルモン単独)なども、月経周期の調整や無月経の治療などに用いられることがあります。どの薬剤が適切かは、個々の症状、既往歴、体質などを踏まえて医師が判断します。必ず医師の診察を受けて、ご自身に合った薬剤を処方してもらうことが重要です。

中用量ピルの副作用

中用量ピルはホルモン量が多いため、低用量ピルに比べて副作用が出やすい傾向があります。しかし、その多くは一時的なものであり、体が慣れてくると軽減されることがほとんどです。一方で、まれに重篤な副作用が起こる可能性もゼロではありません。

よく見られる初期症状

中用量ピルを飲み始めて数日~数週間は、以下のようなマイナートラブルと呼ばれる初期症状が出やすいです。

  • 吐き気・嘔吐: 最も頻繁に見られる副作用の一つです。胃のむかつきを感じたり、実際に吐いてしまったりすることがあります。
  • 頭痛: 軽いものから、日常生活に支障をきたすようなものまで様々です。
  • 乳房の張り・痛み: ホルモンバランスの変化により、胸が張ったり、痛みを感じたりすることがあります。
  • むくみ: 体内に水分が溜まりやすくなり、顔や手足がむくむことがあります。
  • 不正出血: 生理ではない時期に出血が見られることがあります。これは「消退出血」とは異なるもので、ホルモンバランスが不安定な飲み始めに起こりやすいです。
  • 眠気: 眠気を感じやすくなる人もいます。
  • 倦怠感: 体がだるく感じることがあります。

これらの症状は、体がピルに含まれるホルモンに慣れてくるにつれて、徐々に軽減していくことがほとんどです。

服用を続けると軽減される?

多くの場合、中用量ピルを飲み始めて1~2周期(短期間の使用の場合は数日~1週間程度)で、体のホルモンバランスが安定し、初期の副作用は軽減されるか消失します。生理日移動などのために短期間服用する場合でも、飲み始めの数日間が一番症状が出やすい時期と言えます。もし症状がつらい場合は、自己判断で服用を中止せず、必ず医師に相談しましょう。

重大な副作用のリスク(血栓症など)

非常にまれですが、中用量ピルを含む経口避妊薬の服用によって、血栓症(血管の中に血の塊ができ、血管が詰まる病気)のリスクがわずかに高まることが知られています。血栓症は命に関わる場合もある重篤な副作用です。

血栓症のリスクは、特に以下のような場合に高まると言われています。

  • 喫煙者(特に35歳以上で1日15本以上喫煙する人)
  • 肥満の人
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患がある人
  • 長期間同じ姿勢でいること(手術後、旅行など)
  • 遺伝的に血栓ができやすい体質の人

血栓症の初期症状には以下のようなものがあります。これらの症状が一つでも現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

  • ふくらはぎの痛み・腫れ・赤み: 特に片足だけの場合。
  • 突然の息切れ、胸の痛み: 深呼吸で悪化する場合。
  • 手足のしびれ、麻痺、脱力: 体の片側だけの場合。
  • 激しい頭痛: いつもと違う、突然起こる、我慢できないような痛み。
  • 視力障害: 視界がかすむ、見えにくくなる、物が二重に見えるなど。

中用量ピルの服用を始める前には、医師がこれらのリスク因子がないかを丁寧に確認します。服用中も、もし体調に異変を感じたら、ためらわずに医師に相談することが大切です。

副作用が出た場合の対処法

軽い吐き気や頭痛などの初期症状であれば、少し様子を見たり、市販の鎮痛剤などで対処したりできる場合があります。ただし、症状が強くつらい場合や、日常生活に支障が出る場合は、我慢せずに処方した医師に相談しましょう。服用方法の変更や、他の薬剤への切り替えなどを検討してくれることがあります。

前述した血栓症を疑わせる症状(ふくらはぎの痛み、息切れ、胸痛、激しい頭痛など)が現れた場合は、すぐに服用を中止し、救急医療機関を受診してください。受診時には、中用量ピルを服用していることを医師に伝えるようにしましょう。

中用量ピルの正しい飲み方・服用方法

中用量ピルは、服用目的によって飲み方や開始時期が異なります。医師の指示通りの正しい方法で服用することが、効果を最大限に発揮し、副作用のリスクを抑えるために最も重要です。

生理日移動目的の場合

生理日を移動させたい場合、主に「生理を遅らせる」か「生理を早める」かの2つの方法があります。

  • 生理を遅らせる場合: 目的とする生理予定日の約5~7日前からピルの服用を開始し、生理を避けたい日まで毎日1錠服用します。服用を中止すると、数日後に生理(消退出血)が来ます。服用期間中は出血が起きないようにホルモンを維持するため、比較的確実性の高い方法とされます。
  • 生理を早める場合: 生理が始まった日から数えて5日目までにピルの服用を開始し、10~14日間毎日1錠服用します。服用を中止すると、数日後に生理(消退出血)が来ます。この方法だと、次の生理は本来の生理予定日よりも早く来るため、その後のイベント時に生理が重なるのを避けることができます。ただし、早めに服用を開始する必要があるため、直前になってからでは対応できない点に注意が必要です。

いずれの場合も、服用開始のタイミングや服用期間は、個人の生理周期や希望する移動時期によって調整が必要です。必ず医師の指示に従ってください。

緊急避妊目的の場合

前述の通り、中用量ピルを緊急避妊薬として用いるヤッペ法は、現在の日本のガイドラインでは推奨されていません。しかし、医師の判断で代替手段として用いられる場合はあります。

ヤッペ法では、無防備な性行為後72時間以内に中用量ピルを2錠服用し、その12時間後にさらに2錠服用します。合計4錠の服用となります。効果はレボノルゲストレル製剤よりも劣り、副作用(特に吐き気)も強く出やすいとされています。

重要な注意点として、緊急避妊を希望する場合は、可能な限り早く医師に相談し、推奨されるレボノルゲストレル製剤などを処方してもらうようにしてください。性交後72時間を過ぎた場合でも、別の薬剤(ウリプリスタル酢酸エステル製剤)で対応可能な場合もありますので、諦めずに医療機関を受診することが大切です。

飲み忘れた場合の対応

中用量ピルを飲み忘れた場合の対応は、目的や飲み忘れたタイミング、日数によって異なります。自己判断はせず、必ず処方を受けた医師や薬剤師に相談してください。

一般的に、飲み忘れに気づいた時点で、本来飲むべきだった分をすぐに服用します。ただし、次の服用時間が近い場合は、1回分を飛ばすなど対応が異なることがあります。生理日移動目的で服用中に飲み忘れると、予定通りに生理が移動できない可能性があります。緊急避妊目的の場合は、飲み忘れ自体が効果に大きく影響するため、再度医師に相談が必要です。

飲み忘れを防ぐためには、毎日決まった時間に服用する習慣をつけること、スマートフォンのアラーム機能などを活用することが有効です。

中用量ピルの値段・費用

中用量ピルは、原則として病気の治療目的で処方される場合を除き、健康保険が適用されない自由診療となります。そのため、費用は全額自己負担となり、病院やクリニックによって価格設定が異なります。

病院・クリニックでの費用相場

一般的な婦人科や産婦人科で中用量ピルを処方してもらう場合、以下の費用がかかることが多いです。

  • 診察料: 初診料、再診料がかかります。価格は医療機関によって異なりますが、初診で3,000円~5,000円程度が目安です。
  • 薬剤費: 処方される薬剤の種類や日数によって異なります。プラノバール配合錠の場合、1シート(21錠)あたり2,000円~4,000円程度が目安となることが多いです。生理日移動であれば10~14日程度の処方、緊急避妊であれば4錠の処方となります。

合計すると、診察料と薬剤費で数千円から1万円程度の費用がかかることが一般的です。

オンライン診療での費用

近年では、オンライン診療で中用量ピルを処方してもらうことも可能です。オンライン診療の場合、以下のような特徴があります。

  • 診察料: オンライン診療専門のクリニックでは、初診料や再診料が無料となっている場合もあります。
  • 薬剤費: クリニックによって価格設定が異なりますが、対面診療と比較して同等か、場合によっては少し安価なこともあります。
  • 配送料: 薬剤を自宅に配送してもらうための送料がかかります。

オンライン診療のメリットは、自宅や外出先から手軽に診察を受けられること、待ち時間が少ないことなどが挙げられます。一方で、対面での診察がないため、医師が直接状態を確認できないという側面もあります。信頼できる医療機関を選び、疑問点や不安な点はしっかりと医師に伝えることが大切です。

中用量ピルの入手方法

中用量ピルは「処方箋医薬品」に分類されるため、医師の診察を受けずに購入することはできません。必ず医療機関を受診して処方してもらう必要があります。

病院・クリニックでの処方

婦人科や産婦人科を受診し、医師の診察を受けて処方してもらうのが最も一般的な方法です。医師は問診や、必要に応じて内診や検査を行い、中用量ピルの服用が適しているか、副作用のリスクはないかなどを判断します。特に血栓症のリスクが高い基礎疾患がないか、喫煙習慣があるかなどを詳しく確認します。

オンライン診療での処方

前述の通り、オンライン診療でも中用量ピルの処方が可能です。特に生理日移動など、比較的シンプルな目的で、かつ体調に問題がない場合などに利用しやすい方法です。オンライン診療を提供するクリニックのウェブサイトから予約を行い、指定された日時にオンラインで医師の診察を受けます。診察後、問題がなければ薬剤が自宅に配送されるという流れになります。

市販薬として購入できる?

中用量ピルは、残念ながら現在の日本では市販薬としては販売されていません。薬局やドラッグストアで購入することはできません。これは、中用量ピルがホルモン量が多く、副作用のリスクもあるため、医師の適切な管理のもとで服用する必要があると考えられているからです。インターネット上には個人輸入代行サイトなどもありますが、偽造薬や品質の保証されていない薬が流通している危険性が非常に高いため、絶対に利用しないでください。健康被害のリスクだけでなく、副作用が起きた場合の公的な救済制度(医薬品副作用被害救済制度)の対象外となるなどのデメリットがあります。安全のためにも、必ず医療機関を通じて正規のルートで入手しましょう。

中用量ピルに関する注意点

中用量ピルは便利な医薬品ですが、服用する上でいくつか注意しておきたい点があります。安全に効果的に使用するために、以下の点を把握しておきましょう。

服用できないケース(禁忌事項)

以下に該当する方は、原則として中用量ピルを服用できません。

  • 血栓症の既往歴やリスクが高い方: 深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳血栓症、冠動脈疾患などの既往がある方、またはこれらのリスク因子(特定の遺伝的要因、長期臥床など)を持つ方。
  • 重度の肝機能障害がある方: ピルに含まれるホルモンは肝臓で代謝されるため、肝臓に負担がかかる可能性があります。
  • 診断が確定していない不正出血がある方: 出血の原因を特定するまで服用を始めるべきではありません。
  • 乳がん、子宮体がん、またはそれらの疑いがある方: 女性ホルモンが病状を悪化させる可能性があります。
  • 妊娠中または授乳中の方: 胎児や乳児に影響を与える可能性があります。
  • 重度の高血圧がある方: 血栓症のリスクが高まる可能性があります。
  • 糖尿病や脂質異常症でコントロールが不良な方: 血栓症のリスクが高まる可能性があります。
  • 前兆を伴う片頭痛がある方: 血栓症(特に脳卒中)のリスクが高まる可能性があります。
  • 35歳以上で1日15本以上の喫煙者: 血栓症のリスクが著しく高まります。
  • 中用量ピルの成分にアレルギーがある方:

これらは主な禁忌事項であり、この他にも服用できないケースがあります。必ず医師に既往歴や現在の健康状態、服用中の薬などを正確に伝え、服用可能かどうかの判断を仰いでください。

服用中の注意すべき点

中用量ピルを服用している間は、以下の点に注意が必要です。

  • 喫煙は避ける: 特に35歳以上の方は、喫煙によって血栓症のリスクが非常に高まります。服用中は禁煙することが強く推奨されます。
  • 他の薬との飲み合わせ: 一部の抗生物質、抗真菌薬、抗けいれん薬、セントジョーンズワートなどのハーブは、ピルの効果を弱めたり、逆に強めたりする可能性があります。現在服用している全ての薬剤やサプリメントについて、必ず医師や薬剤師に伝えてください。
  • 定期的な健診: 長期的に服用する場合は、年に1回程度、血圧測定や血液検査などを受けることが推奨されます。
  • 手術や長期臥床: 手術の予定がある場合や、病気などで長期間動けない状態が続く場合は、血栓症のリスクが高まるため、事前に医師に相談してください。場合によってはピルの服用を一時的に中止する必要があります。
  • 消化器症状: 嘔吐やひどい下痢が続く場合、ピルの成分が十分に吸収されず、効果が弱まる可能性があります。もし心配な場合は医師に相談してください。

医師に相談が必要な場合

以下のような場合は、自己判断せず速やかに医師に相談してください。

  • 副作用が強くつらい場合: 特に吐き気、頭痛などが我慢できないほどひどい場合。
  • 不正出血が続く、量が多い場合:
  • 飲み忘れてしまった場合:
  • 妊娠の可能性がある場合: 服用中に妊娠の兆候が現れたら、すぐに服用を中止し医師に相談してください。
  • 前述の血栓症を疑わせる症状が現れた場合: これは緊急性が高いため、すぐに医療機関を受診してください。
  • その他、体調に不安を感じる場合:

中用量ピルは医師の管理のもとで正しく服用すれば安全に使用できる医薬品ですが、体の変化に注意し、気になることがあれば必ず専門家に相談することが大切です。

まとめ:中用量ピルについて正しく理解しましょう

中用量ピルは、低用量ピルよりも多くの女性ホルモンを配合した医薬品です。主に生理日移動や、かつての緊急避妊(現在は推奨されない)、月経困難症や機能性子宮出血の治療といった特定の目的で、短期間服用されることが多いです。

低用量ピルと比較して、ホルモン量が多い分、効果が比較的しっかり出る一方で、吐き気や頭痛などの副作用が出やすい傾向にあります。また、まれではありますが、血栓症などの重篤な副作用のリスクもゼロではありません。

中用量ピルは医師の処方が必須であり、薬局などで市販されていません。入手するには、病院やクリニックを受診するか、オンライン診療を利用する必要があります。服用にあたっては、喫煙の有無、既往歴、服用中の他の薬などを医師に正確に伝え、自分に合った飲み方や注意点について十分な説明を受けることが非常に重要です。

この記事で解説した情報が、中用量ピルについて正しく理解し、ご自身の体のために適切な選択をする一助となれば幸いです。何か不安な点や疑問があれば、必ず医師や薬剤師といった医療の専門家に相談してください。

(免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の薬剤の服用を推奨するものではありません。中用量ピルの服用については、必ず医師の診察を受け、個々の状況に応じた適切な指導を受けてください。本記事の情報のみに基づいた自己判断による服用は避けてください。)

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