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性感染症の気になる症状と主な種類|検査や予防法を解説

「性感染症かもしれない…」「体のちょっとした変化が気になるけれど、誰に相談したら良いか分からない」そんな不安を抱えていませんか?性感染症(STI/STD)は、特別な人だけがかかる病気ではありません。性的な接触があれば、誰にでも感染する可能性があります。しかし、症状が分かりにくかったり、自覚症状がない場合も多いため、気づかないうちに進行してしまうことも少なくありません。

この記事では、性感染症について、その種類や症状、検査方法、治療、そして最も重要な予防策について、分かりやすく解説します。早期に発見し適切な治療を受けることで、ほとんどの性感染症は治癒が可能です。また、自分自身と大切なパートナーの健康を守るためにも、正しい知識を持つことが非常に重要です。不安を感じている方も、ぜひこの記事を読んで、性感染症への理解を深め、必要であれば専門機関への相談を検討する一歩を踏み出してください。

目次

性感染症とは?STI/STDとの違い

性感染症とは、性的な接触(性交、オーラルセックス、アナルセックスなど)によって人から人へ感染する病気の総称です。以前は「性病(せいびょう)」と呼ばれることが一般的でしたが、近年では「STI(Sexually Transmitted Infections)」や「STD(Sexually Transmitted Diseases)」という言葉が使われることが増えています。

STIとSTDは、どちらも性的な接触を介して広がる病気に関連する言葉ですが、厳密には意味合いが少し異なります。
STI(Sexually Transmitted Infections): 性行為によって引き起こされる「感染そのもの」を指します。病原体が体内に侵入し、感染が成立した状態を広く含みます。この時点ではまだ自覚症状が出ていないこともあります。
STD(Sexually Transmitted Diseases): STIが進行し、「病気として症状が現れた状態」を指します。感染が原因で、具体的な症状や病的な変化が体に現れている状態です。

現在では、感染した時点から捉える「STI」という言葉がより適切であるとして、世界保健機関(WHO)などでも推奨される傾向にあります。しかし、一般的には「性感染症」という言葉が広く使われており、STIとSTDの両方の意味合いを含んでいます。重要なのは、これらの病気が性的な接触によって感染するリスクがあること、そして早期に発見し対処することの重要性です。

性感染症の原因となる病原体は、細菌、ウイルス、真菌(カビ)、原虫など多岐にわたります。それぞれの病原体によって、引き起こされる症状や治療法が異なります。

気づきにくい?性感染症の初期症状・サイン

性感染症の恐ろしさの一つは、感染してもすぐに症状が出なかったり、症状が非常に軽微で気づきにくい場合が多いことです。これを「無症状」または「不顕性感染」と呼びます。特に女性は無症状のことが多く、感染に気づかないまま放置してしまうリスクが高まります。男性でも、クラミジアや淋病などが無症状のことがあります。

しかし、全く症状がないわけではありません。感染した場所や病原体によって、様々なサインが現れることがあります。これらの初期症状を知っておくことで、早期発見につながる可能性があります。

女性に多い性感染症の症状

女性の場合、性感染症の症状は男性に比べて分かりにくいことが多いです。特に子宮頸管への感染は、自覚症状がほとんどないことも珍しくありません。しかし、以下のようなサインに気づいたら注意が必要です。

  • おりものの変化: 量が増える、色(黄色、緑色など)や臭い(魚のような臭いなど)が変わる、泡状になる、かゆみを伴うなど。カンジダ、トリコモナス、淋病、クラミジアなどが原因となることがあります。
  • 不正出血: 性交時の出血や、生理以外の出血が見られることがあります。クラミジア、淋病などが原因となることがあります。
  • 排尿時の症状: 排尿時に痛みを感じる(排尿痛)、頻尿、残尿感など。膀胱炎と間違えられることもありますが、尿道や膀胱に炎症が起きている可能性があります。
  • 下腹部痛: クラミジアや淋病が上行感染して子宮内膜炎や卵管炎を起こすと、下腹部に痛みが現れることがあります。
  • 性交時の痛み: 性器の炎症やただれ、ヘルペスによる病変などによって、性交時に痛みを感じることがあります。
  • 外陰部のかゆみや不快感: 外陰部に持続的なかゆみや焼けるような感覚が現れることがあります。カンジダ、トリコモナス、ヘルペスなどが原因となることがあります。
  • 外陰部のしこりやイボ、ただれ: 性器ヘルペスによる水ぶくれやただれ、尖圭コンジローマによるイボ、梅毒によるしこり(硬結)やただれ(潰瘍)などが現れることがあります。

これらの症状は性感染症以外の原因でも起こりうるため、自己判断は禁物です。少しでも気になる症状があれば、婦人科や泌尿器科を受診しましょう。

男性に多い性感染症の症状

男性の場合、比較的症状が出やすい性感染症もありますが、女性と同様に無症状の場合もあります。以下のようなサインに気づいたら注意が必要です。

  • 尿道のかゆみや不快感: 尿道にムズムズするかゆみや違和感が生じることがあります。クラミジアや淋病などの初期症状として現れることがあります。
  • 排尿時の痛み(排尿痛): 排尿の開始時や終わりに、尿道に鋭い痛みや焼けるような痛みを感じることがあります。淋病やクラミジアによる尿道炎の典型的な症状です。
  • 尿道からの分泌物: 黄色や黄緑色の膿のような分泌物、あるいは透明や白色の少量の分泌物が出てくることがあります。淋病の場合は膿状、クラミジアの場合は透明~白色のことが多いです。
  • 亀頭や陰茎の赤み、腫れ: 炎症によって亀頭や陰茎が赤く腫れたり、熱を持ったりすることがあります。
  • 亀頭や陰茎のしこり、ただれ、イボ: 性器ヘルペスによる水ぶくれやただれ、尖圭コンジローマによるイボ、梅毒によるしこり(硬結)やただれ(潰瘍)などが現れることがあります。梅毒の初期症状である硬性下疳(こうせいげかん)は痛みがなく硬いしこりなので、気づきにくいことがあります。
  • 陰嚢の腫れや痛み: クラミジアや淋病が副睾丸に感染すると、陰嚢が腫れて痛みを生じることがあります(副睾丸炎)。
  • 股の付け根(鼠径部)のリンパ節の腫れ: 性器周辺に感染が起きると、リンパ節が腫れて触ると痛みを感じることがあります。

これらの症状は、放置すると重症化したり他の人にうつしてしまうリスクを高めます。心当たりがある場合は、泌尿器科や皮膚科を受診しましょう。

早期発見が重要な理由

性感染症の多くは、早期に発見し適切な治療を行えば完治が可能です。しかし、無症状であったり症状が軽かったりするために放置してしまうと、様々な問題が生じます。早期発見が重要な理由は以下の通りです。

  • 重症化や合併症の予防: 放置することで炎症が体内の他の部位に広がり、重症化したり深刻な合併症を引き起こす可能性があります。例えば、クラミジアや淋病は女性の不妊症の原因となったり、男性では副睾丸炎や前立腺炎を引き起こすことがあります。梅毒は進行すると心臓や脳に重篤な障害をもたらすことがあります。
  • パートナーへの感染予防: 自分自身が感染に気づかないまま性的な接触を持つことで、パートナーに感染を広げてしまうリスクがあります。早期に治療を受ければ、感染拡大を防ぐことができます。
  • 精神的な負担の軽減: 性感染症であることが分かった場合、不安や悩みを抱えることがあります。早期に専門家に相談し、治療や今後のことについて話を聞くことで、精神的な負担を軽減できます。
  • 治療の負担軽減: 早期の感染であれば、比較的簡単な治療で済むことが多いです。しかし、進行してしまうと治療期間が長くなったり、より複雑な治療が必要になったりすることがあります。

性感染症かもしれないという不安がある場合、症状がなくても、あるいは症状が軽微であっても、早めに検査を受けることが自分自身の健康とパートナーを守るために非常に重要です。

代表的な性感染症の種類とその症状

性感染症には様々な種類があり、それぞれ原因となる病原体や症状が異なります。ここでは、比較的感染者が多い代表的な性感染症について、その特徴と主な症状を詳しく解説します。

梅毒の症状

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌によって引き起こされる全身性の感染症です。治療せずに放置すると、体の様々な臓器に重篤な影響を及ぼす可能性があります。梅毒は進行段階によって症状が異なります。

梅毒の早期症状

  • 第1期梅毒(感染後約3週間):
    • 硬性下疳(こうせいげかん): 感染した部位(性器、口、肛門など)に、痛みのない硬いしこり(硬結)やただれ(潰瘍)ができます。通常1つだけですが、複数できることもあります。触ると軟骨のような硬さがあります。痛みがほとんどないため、気づかずに放置してしまうことがあります。
    • 鼠径(そけい)リンパ節の腫れ: 硬性下疳ができた側の股の付け根のリンパ節が腫れることがありますが、通常は痛みがありません。
    • この時期の病変は、治療しなくても数週間で自然に消えることがありますが、梅毒が治ったわけではなく、病原体が体内に残って次の段階へ進行します。
  • 第2期梅毒(感染後数ヶ月):
    • 病原体が全身に広がり、様々な症状が現れます。
    • バラ疹(ばらしん): 体幹部を中心に、ピンク色や赤色の薄い斑点(発疹)ができます。かゆみや痛みはほとんどありません。
    • 丘疹性梅毒(きゅうしんせいばいどく): 盛り上がった赤い発疹が手のひらや足の裏などを含む全身にできます。かさぶたができたり、膿を持つこともあります。
    • 扁平コンジローマ(へんぺいコンジローマ): 外陰部や肛門の周囲に、平らで湿ったイボのような病変ができます。性器の尖圭コンジローマと似ていますが、原因菌が異なります。
    • 梅毒性脱毛(ばいどくせいだつもう): 髪の毛がまばらに抜け落ちる(まだら脱毛)ことがあります。
    • 梅毒性アンギーナ: のどが赤く腫れたり、扁桃腺に白い膜ができたりすることがあります。
    • 発熱、倦怠感、リンパ節の腫れ: 風邪やインフルエンザのような全身症状が現れることがあります。
    • 第2期の症状も、治療しなくても数週間~数ヶ月で自然に消えたり現れたりを繰り返すことがあります。
  • 潜伏梅毒(感染後数年〜数十年):
    症状が一時的または完全に消えた状態ですが、体内に病原体が残っており、他の人に感染させる可能性があります。無症状の期間が続きますが、血液検査で陽性となります。
  • 第3期・第4期梅毒(感染後数年〜数十年):
    治療せずに長期間放置した場合に進行する段階です。心臓、血管、脳、神経、骨、皮膚など、体の様々な臓器に深刻な障害を引き起こします。ゴムのような腫瘍(ゴム腫)ができたり、大動脈瘤や神経梅毒(麻痺、痴呆など)を発症したりします。
    この段階まで進行すると、治療が難しくなったり、後遺症が残ったりすることがあります。

梅毒は、早期に発見して適切な抗菌薬(ペニシリンなど)による治療を行えば完治が可能です。少しでも症状が気になる場合は、早期に検査を受けることが重要です。

淋病の症状

淋病は、淋菌という細菌によって引き起こされる感染症です。主に性器の粘膜に感染しますが、のど(咽頭)や直腸、目にも感染することがあります。

男性・女性別の淋病症状

  • 男性の場合:
    • 尿道炎: 感染後2〜7日程度で、尿道に強いかゆみや不快感が現れ、排尿時に強い痛みを感じるようになります。尿道から黄色や黄緑色の膿(うみ)が多量に出てくるのが典型的な症状です。
    • 副睾丸炎: 尿道炎を放置すると、淋菌が副睾丸に広がり、陰嚢の腫れや強い痛み、発熱を引き起こすことがあります。
    • 直腸炎: アナルセックスによって直腸に感染すると、肛門のかゆみ、痛み、出血、分泌物などの症状が現れることがあります。
    • 咽頭淋病: オーラルセックスによってのどに感染した場合、ほとんどが無症状ですが、まれにのどの痛みや腫れといった風邪のような症状が現れることがあります。
    • 男性は比較的症状が出やすいですが、クラミジアと同様に無症状の場合もあります。
  • 女性の場合:
    • 子宮頸管炎: 淋病に感染しても、女性の約半数は無症状と言われています。症状がある場合でも、おりものの増加(黄色や黄緑色)、不正出血、下腹部痛、性交時の痛みなど、他の病気と区別がつきにくい症状であることが多いです。
    • 尿道炎: まれに排尿痛などの尿道症状が現れることがあります。
    • 上行感染による合併症: 子宮頸管炎を放置すると、淋菌が子宮、卵管、骨盤内へと広がり、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎などを引き起こすことがあります。これらは下腹部痛や発熱を伴い、将来的な不妊症や子宮外妊娠の原因となる可能性があります。
    • 咽頭淋病: 男性と同様に、オーラルセックスによってのどに感染した場合、ほとんどが無症状です。
    • 直腸炎: 直腸に感染した場合、症状がないか、肛門のかゆみや不快感、少量の出血などが現れることがあります。

淋病は、自然に治ることはありません。抗菌薬による治療が必要ですが、近年、特定の抗菌薬が効かない「薬剤耐性淋菌」が増加しており、治療が困難になるケースも報告されています。正確な診断と適切な抗菌薬の選択が重要です。

クラミジア感染症の症状

クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマティスという細菌によって引き起こされる、日本で最も多い性感染症です。特に若い世代の間で広がっています。クラミジアも、感染しても自覚症状がない「無症状」であることが非常に多いのが特徴です。

  • 男性の場合:
    • 尿道炎: 感染後1〜3週間程度で、尿道にかゆみや軽い不快感、排尿時に軽い痛みを感じることがあります。透明または白色の少量の分泌物が出てくることもありますが、淋病のような多量の膿は出ないことが多いです。これらの症状が軽微であるため、気づかなかったり放置してしまったりすることがあります。
    • 副睾丸炎: 尿道炎を放置すると、副睾丸に感染が広がり、陰嚢の腫れや痛みを引き起こすことがあります。
    • 直腸炎: アナルセックスによって直腸に感染すると、症状がないか、肛門のかゆみや不快感、少量の分泌物などが現れることがあります。
    • 咽頭クラミジア: オーラルセックスによってのどに感染した場合、ほとんどが無症状です。まれにのどの痛みや違和感がある程度です。
  • 女性の場合:
    • 子宮頸管炎: 女性のクラミジア感染の約8割は無症状と言われています。症状がある場合でも、おりものの増加、不正出血、下腹部痛、性交時の痛みなど、他の病気と区別がつきにくい症状であることが多いです。
    • 尿道炎: まれに排尿痛などの尿道症状が現れることがあります。
    • 上行感染による合併症: 子宮頸管炎を放置すると、クラミジアが子宮、卵管、骨盤内へと広がり、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎などを引き起こすことがあります。これらは下腹部痛や発熱を伴い、将来的な不妊症(卵管が詰まるため)や子宮外妊娠の大きな原因となります。また、肝臓の周りに炎症が広がるFitz-Hugh-Curtis症候群(フィッツ・ヒュー・カーティスしょうこうぐん)を引き起こすこともあります。
    • 咽頭クラミジア: 男性と同様に、のどの感染はほとんどが無症状です。
    • 不妊症との関連: 自覚症状がないまま感染が長期化し、卵管が慢性的な炎症によってダメージを受けると、不妊症の原因となります。クラミジアは、女性の不妊原因として最も頻度が高い性感染症の一つです。

クラミジア感染症も、自然に治ることはありません。抗菌薬(抗生物質)の内服による治療が必要で、通常は比較的短期間の治療で完治します。しかし、パートナーも同時に検査・治療を受けないと、ピンポン感染(お互いにうつし合うこと)を繰り返してしまいます。

性器ヘルペスの症状

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)によって引き起こされる感染症です。一度感染すると、ウイルスは神経節に潜伏し、体の抵抗力が落ちた時などに再活性化して症状が再発することがあります。

  • 初感染の場合:
    • 感染後2〜10日程度で、性器やその周囲(肛門周囲、太ももの付け根など)に、数ミリ大の赤いプツプツや水ぶくれ(小水疱)がいくつか現れます。
    • これらの水ぶくれは破れて、浅い潰瘍(ただれ)となり、強い痛みや痒みを伴います。
    • 股の付け根(鼠径部)のリンパ節が腫れて痛むことがあります。
    • 発熱、頭痛、全身の倦怠感など、インフルエンザのような全身症状を伴うこともあります。
    • 排尿時にしみるような痛みを感じることもあります。
    • 初感染時の症状は比較的重いことが多いです。病変が治るまでには2〜4週間程度かかります。
  • 再発の場合:
    • 体の抵抗力が落ちた時(風邪をひいた、疲れている、生理前など)に、潜伏していたウイルスが再活性化して症状が現れます。
    • 通常、初感染時よりも症状は軽く、病変の数も少ないことが多いです。痛みも比較的軽い傾向があります。
    • 症状が出る前に、感染部位の周辺にピリピリ、チクチク、ムズムズといった前駆症状(予兆)を感じることがあります。
    • 病変が治るまでには1〜2週間程度かかります。
    • 再発の頻度や程度には個人差があります。

性器ヘルペスは、ウイルスを完全に排除することはできませんが、抗ウイルス薬によって症状を抑え、治癒を早めることができます。再発を繰り返す場合は、再発抑制療法として毎日薬を服用する方法もあります。性器に病変があるときは、パートナーへの感染リスクが非常に高いため、性的な接触を避ける必要があります。

尖圭コンジローマの症状

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の一部タイプによって引き起こされる感染症です。主に性器や肛門の周囲にイボができます。

  • 症状:
    • 感染後数週間から数ヶ月(平均3ヶ月)で、性器や肛門の周囲に、小さく柔らかいピンク色や肌色のイボが現れます。
    • イボは次第に大きくなり、カリフラワーやニワトリのトサカのような形になることがあります。
    • イボの数は1つだけの場合もあれば、複数できる場合もあります。
    • 通常、痛みやかゆみはほとんどありませんが、イボが大きい場合や多発している場合は、不快感や摩擦による出血が生じることがあります。
    • 男性では亀頭、陰茎、陰嚢、肛門周囲などに、女性では大小陰唇、腟、子宮頸部、肛門周囲などに発生しやすいです。

尖圭コンジローマの原因となるHPVの中には、子宮頸がんの原因となるタイプも含まれています。そのため、女性の場合は子宮頸がん検診も定期的に受けることが推奨されます。

治療法としては、外科的な切除、液体窒素による凍結療法、レーザー治療、塗り薬などがあります。再発しやすい性質があり、治療後も経過観察が必要です。

HIV感染症の症状

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、体の免疫システムを攻撃するウイルスです。HIVに感染しても、すぐに「エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)」を発症するわけではありません。感染初期、無症状期、そしてエイズ発症と段階を経て進行します。

  • 感染初期(急性期):
    感染後2〜4週間程度で、一部の人にインフルエンザのような症状が現れることがあります。発熱、のどの痛み、全身の発疹、リンパ節の腫れ、頭痛、倦怠感などが主な症状です。これらの症状は数日から数週間で自然に消えるため、HIV感染とは気づかずに見過ごされることが多いです。
  • 無症状期(潜伏期):
    感染初期の症状が消えた後、数年から長い場合は10年以上、自覚症状がほとんどない期間が続きます。この期間もウイルスは体内で増殖し、免疫システムを少しずつ破壊していきます。この無症状期でも、性的な接触によって他人に感染させる可能性があります。血液検査でのみ感染を確認できます。
  • エイズ発症期:
    免疫力が著しく低下すると、健康な人であればかからないような様々な感染症(日和見感染症)や特定の悪性腫瘍にかかりやすくなります。これらの日和見感染症などを発症した状態をエイズと呼びます。
    主な日和見感染症には、ニューモシスチス肺炎、カンジダ症、サイトメガロウイルス感染症、クリプトコックス症、結核などがあります。
    エイズ発症後も適切な治療を行えば、免疫力を回復させ、これらの病気をコントロールすることが可能です。

HIV感染は、早期に発見し、抗HIV薬による治療を開始することで、エイズの発症を抑え、健康な人とほぼ変わらない日常生活を送ることが可能になりました。検査は採血で行われ、保健所や医療機関で受けることができます。

その他の主な性感染症

上記以外にも、様々な性感染症があります。

  • カンジダ症: カンジダという真菌(カビ)によって引き起こされます。性感染症として扱われますが、性的な接触がなくても発症することがあります(常在菌のため)。症状は強いかゆみ、おりものの変化(白くポロポロしている)、外陰部の赤みや腫れなどです。抗真菌薬の塗り薬や内服薬で治療します。
  • トリコモナス症: トリコモナスという原虫によって引き起こされます。女性では強いかゆみを伴う悪臭のある泡状のおりものが典型的な症状ですが、無症状の場合も多いです。男性はほとんどが無症状です。抗原虫薬の内服薬で治療します。
  • B型肝炎・C型肝炎: 主に血液や体液を介して感染しますが、性的な接触によっても感染することがあります。急性肝炎や慢性肝炎を引き起こし、肝硬変や肝がんへと進行する可能性があります。B型肝炎にはワクチンがありますが、C型肝炎にはワクチンはありません。適切な治療法があります。
  • ケジラミ症: ケジラミという寄生虫が陰毛などに寄生し、激しいかゆみを引き起こします。性的な接触によって感染することがほとんどです。殺虫成分の含まれた薬剤で治療します。
  • 疥癬(かいせん): ヒゼンダニというダニが皮膚に寄生して強いかゆみを引き起こします。性的な接触によって性器やその周囲に病変ができることがあります。駆虫薬の塗り薬や内服薬で治療します。

これらの性感染症も、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。

性感染症の種類と主な症状をまとめると以下のようになります。(あくまで一般的な症状であり、個人差や無症状の場合も多いことに注意してください。)

性感染症の種類 原因病原体 主な感染部位 主な症状(男性) 主な症状(女性)
梅毒 梅毒トレポネーマ(細菌) 全身 硬性下疳(性器のしこり・ただれ)、バラ疹、丘疹、扁平コンジローマ、脱毛、リンパ節腫脹 硬性下疳(性器のしこり・ただれ)、バラ疹、丘疹、扁平コンジローマ、脱毛、リンパ節腫脹
淋病 淋菌(細菌) 性器、咽頭、直腸 強い排尿痛、黄色~黄緑色の尿道分泌物、副睾丸炎、咽頭炎、直腸炎 おりもの増加(黄色)、不正出血、下腹部痛、子宮頸管炎、卵管炎、咽頭炎、直腸炎
クラミジア感染症 クラミジア・トラコマティス(細菌) 性器、咽頭、直腸 軽い排尿痛、透明~白色の尿道分泌物、副睾丸炎、咽頭炎、直腸炎 おりもの増加、不正出血、下腹部痛、子宮頸管炎、卵管炎、不妊、子宮外妊娠、咽頭炎、直腸炎
性器ヘルペス 単純ヘルペスウイルス(HSV) 性器、肛門周囲 性器の赤いプツプツ、水ぶくれ、潰瘍(痛み)、リンパ節腫脹、発熱、倦怠感 性器の赤いプツプツ、水ぶくれ、潰瘍(痛み)、リンパ節腫脹、発熱、倦怠感
尖圭コンジローマ ヒトパピローマウイルス(HPV) 性器、肛門周囲 性器や肛門周囲のイボ(カリフラワー状など) 性器や肛門周囲のイボ(カリフラワー状など)、子宮頸部にも
HIV感染症 HIV(ウイルス) 全身 発熱、のどの痛み、発疹、リンパ節腫脹(急性期)、無症状期、エイズ発症 発熱、のどの痛み、発疹、リンパ節腫脹(急性期)、無症状期、エイズ発症
カンジダ症 カンジダ(真菌) 性器、口腔 亀頭・陰茎の赤み、かゆみ、白いカス状の付着物 強いかゆみ、白いポロポロしたおりもの、外陰部の赤み・腫れ
トリコモナス症 トリコモナス(原虫) 性器 ほとんど無症状 強いかゆみ、悪臭のある泡状のおりもの、外陰部の赤み・腫れ

性感染症は自然治癒する?放置の危険性

「症状が軽いから大丈夫だろう」「時間が経てば治るんじゃないか」と考えて、性感染症を放置してしまうのは非常に危険です。結論から言うと、ほとんどの性感染症は、治療せずに自然に治ることはありません。

一時的に症状が軽くなったり、消えたりすることがあっても、病原体が体内に残っている限り、感染は続いています。これを「無症状期」と呼びますが、この期間も感染力があり、性的な接触によってパートナーに病気をうつしてしまう可能性があります。

性感染症を放置することの危険性は、症状が進行し、様々な合併症や後遺症を引き起こすことです。

  • 不妊症: 特にクラミジアや淋病は、女性の場合、卵管に炎症を起こして詰まらせることで不妊症の原因となります。男性でも、副睾丸炎などによって精子の通り道が障害され、不妊につながることがあります。
  • 子宮外妊娠: 卵管の炎症によって卵子が子宮まで到達できず、卵管内で受精卵が着床してしまう子宮外妊娠のリスクが高まります。これは命に関わる緊急性の高い状態です。
  • 慢性的な痛み: 骨盤内炎症性疾患(PID)など、慢性的な下腹部痛や腰痛の原因となることがあります。
  • 全身への影響: 梅毒のように全身に広がり、心臓や脳、神経などに重篤な障害を引き起こす病気もあります。HIV感染症を放置すれば、免疫力が低下して様々な日和見感染症にかかりやすくなり、命に関わる状態(エイズ)へと進行します。
  • パートナーへの感染拡大: 自分が無症状であっても、感染している限りパートナーに病気をうつしてしまうリスクがあります。パートナーがさらに他の人にうつしてしまう可能性も考えると、感染が拡大してしまう連鎖を招くことになります。
  • 新生児への影響: 妊娠中に性感染症にかかっていると、出産時に赤ちゃんに感染させてしまう(垂直感染)リスクがあります。赤ちゃんに肺炎、結膜炎、先天梅毒、エイズなどを引き起こし、重い後遺症や命に関わる状態になることもあります。

このように、性感染症を放置することは、自分自身の健康だけでなく、パートナーや将来生まれてくる子どもの健康にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。少しでも不安な症状がある場合や、感染の可能性がある行為があった場合は、勇気を出して早めに医療機関を受診し、検査・治療を受けることが非常に重要です。

性感染症の検査方法

性感染症の検査は、どのような病気が疑われるかによって異なります。一般的には、医師による問診と視診・触診の後、体のサンプルを採取して検査を行います。症状がなくても検査を受けることも可能です。

検査方法 採取するサンプル 主に診断できる性感染症 説明
血液検査 血液 梅毒、HIV、B型肝炎、C型肝炎、性器ヘルペス(既往感染) 採血して、病原体に対する抗体や抗原の有無を調べます。結果が出るまでに数日かかることが多いです。
尿検査 尿(初尿) クラミジア、淋病 排尿開始時の尿(初尿)を採取します。尿道の病原体を検出するのに適しています。比較的簡単に検査できます。
分泌物検査 尿道分泌物(男性)、子宮頸管分泌物(女性)、膿など 淋病、クラミジア、トリコモナス、カンジダ スワブ(綿棒)などで分泌物を採取し、顕微鏡で観察したり、培養したり、病原体の遺伝子を調べたりします。
粘膜ぬぐい液検査 咽頭(のど)、直腸 クラミジア、淋病 オーラルセックスやアナルセックスによる感染が疑われる場合、のどや直腸の粘膜をスワブでぬぐって病原体を調べます。
病変部のぬぐい液検査 性器ヘルペスの水ぶくれや潰瘍 性器ヘルペス ヘルペスの病変部をスワブでぬぐってウイルスを検出します。
病変部の視診・触診 外陰部、肛門周囲など 尖圭コンジローマ、梅毒の硬性下疳など 医師が目視で確認したり、手で触って病変の状態を調べたりします。
組織検査 尖圭コンジローマなどのイボの一部 尖圭コンジローマ、梅毒(まれに) 必要に応じて、イボなどの組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べることがあります。

検査を受けるタイミング:

性的な接触から病原体が検出可能になるまでには一定の期間が必要です。これを「ウィンドウ期」と呼びます。ウィンドウ期に検査を受けても、感染していても陰性(偽陰性)になる可能性があります。

  • クラミジア・淋病: 感染の機会から24時間以上経過すれば尿や分泌物での遺伝子検査で検出可能ですが、より正確を期すなら数日~1週間程度経ってからが推奨されます。
  • 梅毒: 感染の機会から約4週間以上(硬性下疳出現後)で血液検査が陽性になることが多いです。
  • HIV: 感染の機会から約4週間以上で血液検査が陽性になることが多いです。最近の検査法(第4世代HIV検査など)では、より早い時期(2週間程度)から検出可能な場合もあります。
  • 性器ヘルペス: 初感染の場合は病変が出現した時に、血液検査(既往感染の確認)は感染から2~3ヶ月経過してから抗体が検出可能になります。

不安な場合は、医療機関で医師に相談し、適切な検査とタイミングについてアドバイスを受けることが大切です。症状がある場合は、ウィンドウ期を気にせず、できるだけ早く受診しましょう。

また、保健所では匿名・無料で特定の性感染症(HIV、梅毒、クラミジア、淋病など)の検査を受けることができる場合があります。お住まいの地域の保健所に問い合わせてみましょう。

性感染症の治療方法

性感染症の治療方法は、原因となる病原体によって大きく異なります。正確な診断に基づき、適切な薬剤や治療法を選択することが非常に重要です。自己判断での市販薬の使用や、治療の中断は、病気を悪化させたり、薬剤耐性を招いたりする危険性があります。

性感染症の種類 主な治療法 特徴・注意点
梅毒 抗生物質(主にペニシリン)の内服または点滴、注射 早期の梅毒ほど短期間で治癒が可能です。進行した梅毒では治療期間が長くなります。ペニシリンアレルギーがある場合は別の抗生物質を使用します。治療開始後に発熱などの一時的な症状(ヤリッシュ・ヘルクスハイマー反応)が出ることがありますが、治療を続けることで改善します。
淋病 抗生物質(セフトリアキソンなどの注射、または内服薬) 薬剤耐性淋菌が増加しているため、感受性のある適切な抗生物質を選ぶことが重要です。多くの場合、1回の注射や短期間の内服で治療します。クラミジアと合併していることも多いため、両方に効く薬剤が処方されることもあります。治療後には治癒確認の検査が必要です。
クラミジア感染症 抗生物質(アジスロマイシン、ドキシサイクリンなど)の内服 通常は短期間(1日~数日)の内服で治療します。症状がなくても治療が必要です。パートナーも同時に検査・治療を受けないと、再感染のリスクがあります。治療後には治癒確認の検査が必要です。
性器ヘルペス 抗ウイルス薬(アシクロビル、バルトレックス、ファムビルなど)の内服または塗り薬 ウイルスを完全に排除する薬はありませんが、症状を軽くしたり、治癒を早めたりする効果があります。初感染時や症状が重い場合は内服薬が中心となります。再発抑制療法として、毎日低用量の内服薬を服用する方法もあります。症状が出ている間は性的な接触を避けることが重要です。
尖圭コンジローマ 外科的切除、液体窒素による凍結療法、レーザー治療、電気焼灼、イミキモドクリーム(塗り薬)、ポドフィリン液(塗り薬)など イボの大きさ、数、場所によって治療法を選択します。複数の治療法を組み合わせることもあります。再発しやすいため、治療後も定期的な経過観察が必要です。再発した場合は再度治療を行います。
HIV感染症 抗HIV薬の多剤併用療法 複数の種類の抗HIV薬を組み合わせて服用します。ウイルスが増殖するのを抑え、免疫力を維持・回復させることで、エイズの発症を予防し、健康な人とほぼ変わらない生活を送ることが可能です。生涯にわたって治療を続ける必要があります。早期に治療を開始するほど効果が高いことが分かっています。
カンジダ症 抗真菌薬の塗り薬、腟錠、内服薬 症状が出ている部位や重症度によって使い分けます。再発しやすい傾向があります。
トリコモナス症 抗原虫薬(メトロニダゾールなど)の内服 通常は短期間の内服で治癒します。パートナーも症状の有無にかかわらず同時に治療を受けることが推奨されます。
B型肝炎・C型肝炎 抗ウイルス薬など(病状による) 急性期か慢性期か、肝臓の状態などによって治療法が異なります。専門医による治療が必要です。
ケジラミ症、疥癬 殺虫成分を含む薬剤(塗り薬、内服薬など) ケジラミの場合は、陰毛などに塗布する薬剤を使用します。疥癬の場合は、全身に塗布する薬剤や内服薬を使用します。衣類や寝具の処理も重要です。パートナーや同居家族も同時に治療が必要な場合があります。

治療における重要な注意点:

  • 医師の指示を厳守する: 処方された薬は、症状が消えたとしても、医師から指示された期間、量、回数を必ず守って服用・使用しましょう。自己判断で中断すると、病原体が完全に排除されず、再発したり薬剤耐性が生じたりする原因となります。
  • パートナーの治療も行う: 性感染症はパートナーとの間でうつし合う(ピンポン感染)可能性があります。自分だけが治療しても、パートナーが感染していれば、再び感染してしまいます。パートナーにも検査と治療を受けてもらうことが非常に重要です。
  • 治癒確認検査を受ける: 治療が終わった後、本当に病原体が体からいなくなったかを確認するための検査(治癒確認検査)を受けることが推奨されます。特にクラミジアや淋病では重要です。
  • 他の性感染症の合併: 一つの性感染症にかかっている人は、他の性感染症にも感染しているリスクが高いと言われています。症状がなくても、他の性感染症の検査も一緒に受けることを検討しましょう。

性感染症の治療は、早期に行えば比較的簡単に治るものが多いですが、放置すると深刻な結果を招く可能性があります。不安があれば、まずは専門機関に相談し、適切な検査と治療を受けましょう。

性感染症の予防策

性感染症は、性的な接触を介して感染するため、そのリスクを減らすための予防策を知り、実践することが最も重要です。完全にリスクをゼロにすることは難しいかもしれませんが、予防策を講じることで、感染の可能性を大幅に下げることができます。

  • コンドームの適切な使用: 性的な接触(性交、オーラルセックス、アナルセックス)をする際に、最初から最後までコンドームを正しく使用することは、性感染症の予防に最も有効な方法の一つです。ただし、コンドームで覆われない部分(陰嚢や性器周辺の皮膚など)からの感染を防ぐことはできません(例:性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、梅毒など)。また、破れたり外れたりしないよう、使用期限や正しい装着方法を確認しましょう。
  • 定期的な検査: パートナーが変わった時や、少しでも不安な行為があった時、あるいは特定の症状がなくても定期的に性感染症の検査を受けることが推奨されます。特にクラミジアや淋病のように無症状の感染が多い性感染症は、検査でしか発見できません。早期発見・早期治療は、自分自身の健康を守り、パートナーへの感染を防ぐことにつながります。
  • パートナーとの話し合い: パートナーと性感染症についてオープンに話し合い、お互いの感染状況や検査歴などを共有することは、信頼関係を築き、共に予防に取り組む上で重要です。安心して性的な関係を築くためにも、勇気を出して話し合ってみましょう。
  • 特定の性感染症に対するワクチン接種:
    • B型肝炎ワクチン: B型肝炎の予防に有効です。日本では定期接種となっています。
    • HPVワクチン: ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染、特に子宮頸がんや尖圭コンジローマの原因となる一部のタイプの感染を予防します。女性だけでなく男性も接種することで、尖圭コンジローマの予防や、将来的なHPV関連がんのリスクを減らす効果が期待されます。
  • 不特定多数のパートナーとの性的な接触を避ける: パートナーの数が多ければ多いほど、性感染症に遭遇するリスクは高まります。リスクを減らすためには、パートナーの数を限定することも一つの方法です。
  • 性的な接触以外の感染経路への注意: 性感染症の中には、性的な接触以外の経路でも感染するものがあります(例:B型肝炎やC型肝炎は血液や体液を介して感染、梅毒は感染している人の血液を介して感染)。しかし、性感染症として知られるほとんどの病気は、性的な接触が主要な感染経路です。
  • アルコールの摂取量を控える: アルコールを過剰に摂取すると判断力が鈍り、予防策がおろそかになる可能性があります。

性感染症の予防は、一つだけの方法に頼るのではなく、これらの方法を組み合わせて行うことが効果的です。特にコンドームの使用と定期的な検査は、リスク軽減のために非常に重要です。また、これらの予防策は、あくまで「感染のリスクを下げる」ためのものであり、完全に防ぐことはできないということを理解しておくことも大切です。不安を感じたら、迷わず検査を受けましょう。

なお、性感染症の予防策と、妊娠を防ぐための避妊法は目的が異なります。コンドームは性感染症予防と避妊の両方に有効ですが、低用量ピルやIUD(子宮内避妊具)などは、優れた避妊法ではありますが、性感染症を予防する効果はありません。性感染症予防と避妊の両方が必要な場合は、それぞれの対策を講じる必要があります。

もしかしたら?性感染症の相談・検査先

性感染症かもしれないという不安を抱えている場合、どこに相談し、どこで検査を受けられるのでしょうか。主に以下の機関で相談・検査が可能です。

医療機関(クリニック、病院)

性感染症の診断と治療を行う専門的な機関です。症状がある場合は、医療機関を受診するのが最も適切です。

  • どのような科を受診すればいい?
    • 男性: 泌尿器科、皮膚科。性感染症専門外来があるクリニックもあります。
    • 女性: 婦人科、性感染症専門外来があるクリニックもあります。
    • 男女共通: 性感染症専門外来、内科(HIVなど)、皮膚科、耳鼻咽喉科(咽頭感染の場合)など。
  • 医療機関で相談・検査・治療を受けるメリット:
    • 医師による専門的な診断を受けられます。
    • 必要な検査をその場で受けることができます。
    • 診断に基づいた適切な治療をすぐに開始できます。
    • 治癒確認の検査や、再発時の対応など、継続的なケアを受けられます。
    • 他の病気の可能性も考慮して診断してもらえるため、最も正確な診断につながります。
    • パートナーの治療についてもアドバイスを受けることができます。
  • 注意点:
    • 原則として健康保険証が必要になります(匿名での検査・治療を希望する場合は自費診療になることがあります)。
    • 検査や治療には費用がかかります。
    • 医療機関によっては予約が必要な場合があります。

近年では、プライバシーに配慮した性感染症専門のクリニックや、オンライン診療で性感染症の相談や検査キットの郵送を行っているサービスもあります。対面での受診が難しい場合や、匿名での検査を希望する場合に選択肢となります。ただし、オンライン診療や検査キットでできることには限りがあり、症状がある場合や正確な診断・治療が必要な場合は、やはり医療機関を直接受診することが推奨されます。

保健所

お住まいの地域の保健所では、一部の性感染症について、匿名・無料で検査を受けることができる場合があります。

  • 保健所で受けられる主な検査:
    • HIV検査(ほとんどの保健所で実施)
    • 梅毒検査(ほとんどの保健所で実施)
    • クラミジア検査、淋病検査(実施していない保健所もあります。事前に確認が必要です。)
  • 保健所で相談・検査を受けるメリット:
    • 匿名で検査を受けられる: 名前を名乗る必要がなく、プライバシーが守られます。
    • 無料で検査を受けられる: 検査費用がかかりません。
    • 性感染症に関する相談もできます。
  • 注意点:
    • 原則として検査のみであり、治療は行えません。陽性だった場合は、医療機関を紹介されます。
    • 検査を受けられる日時が決まっていることが多いです(平日昼間のみなど)。
    • 検査結果が出るまでに時間がかかる場合があります(数日~1週間程度)。
    • 検査の種類が限られている場合があります(症状がある場合など、全ての性感染症の検査ができるわけではありません)。
    • 混雑する場合があり、待ち時間が生じることがあります。

症状がなく、不安の軽減や定期的なチェック目的で匿名・無料の検査を希望する場合は、保健所は有効な選択肢となります。しかし、何らかの症状がある場合は、診断と治療をすぐに開始できる医療機関を受診することをお勧めします。

どちらの機関を選ぶにしても、一人で悩まずに、まずは相談する勇気を持つことが大切です。専門家のアドバイスを受けることで、不安を解消し、適切な対処法を見つけることができます。

まとめ:早期発見・早期治療が重要

性感染症は、誰にでも感染する可能性のある身近な病気です。多くの場合、症状が分かりにくかったり、無症状であったりするため、気づかないうちに感染が広がり、自分自身やパートナーの健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

この記事で解説したように、性感染症には様々な種類があり、それぞれ原因や症状、治療法が異なります。しかし、共通して言えるのは、早期に発見し、適切な治療を受けることが非常に重要だということです。早期治療によって、ほとんどの性感染症は完治が可能であり、不妊症などの重い合併症や後遺症を防ぐことができます。

性感染症を予防するためには、コンドームの適切な使用や、不安な行為があった際、あるいはパートナーが変わった時などに定期的に検査を受けることが有効です。また、性感染症についてパートナーとオープンに話し合い、お互いの健康を守るための取り組みを共に行うことも大切です。

もし、少しでも性感染症の可能性があるかもしれないと感じたら、一人で悩まずに、勇気を出して専門機関に相談してください。医療機関(泌尿器科、婦人科、皮膚科、性感染症専門外来など)では、症状に応じた正確な診断と適切な治療を受けることができます。また、お住まいの地域の保健所では、匿名・無料で検査を受けることも可能です。

性感染症は、決して恥ずかしい病気ではありません。放置せず、適切な知識を持って対処することが、自分自身と大切な人の健康を守る最善の方法です。


免責事項: 本記事は性感染症に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個々の健康状態や症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。本記事の情報に基づくいかなる決定や行動についても、当方は一切の責任を負いません。

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