MENU

スメア検査とは?子宮頸がん検診の目的・方法・結果を解説

スメア検査は、子宮頸がん検診の基本となる大切な検査です。
子宮頸部の細胞を採取し、がん細胞やその前段階の異常がないか顕微鏡で詳しく調べます。
この検査によって、子宮頸がんを初期の段階で発見し、適切な治療に繋げることが可能になります。
子宮頸がんは早期に発見できれば、比較的治りやすいがんですが、進行すると治療が難しくなるため、定期的な検診が非常に重要です。

スメア検査は、子宮の入り口にあたる子宮頸部から細胞を採取して行う検査です。
この採取した細胞をガラスの上に塗り広げ(スメア)、色素で染色した後に顕微鏡で観察することで、細胞の形や状態に異常がないかを確認します。

スメア検査の定義と目的

スメア検査の正式名称は「子宮頸部細胞診」といいます。
この検査の最も重要な目的は、子宮頸がんや、子宮頸がんになる前段階の異常(異形成)を早期に発見することです。
異形成の段階で見つかれば、がんになる前に治療を行うことができ、子宮を温存できる可能性が高まります。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で発生することが多く、このウイルスに感染しても、すぐにがんになるわけではありません。
多くの場合は自然に排除されますが、一部のケースでは持続感染となり、数年から十数年かけて異形成を経て子宮頸がんへと進行します。
スメア検査は、この進行の途中段階である異形成や、ごく早期のがんを発見するためのスクリーニング検査として広く行われています。

スメア検査の別名について

スメア検査は、地域や医療機関、あるいは文脈によっていくつかの異なる名称で呼ばれることがあります。
最も一般的なのが先述の「子宮頸部細胞診」です。
また、この検査法の開発者であるジョージ・パパニコロウ博士の名前から、「PAPテスト」や「パパニコロウ検査」と呼ばれることもあります。
英語圏ではPAPテストが一般的です。
これらの名称はすべて、子宮頸部から採取した細胞を顕微鏡で調べる同じ検査を指しています。

目次

スメア検査で何がわかる?(子宮頸がん)

スメア検査の主な目的は子宮頸がんの早期発見ですが、具体的にどのような状態を見つけ出すことができるのでしょうか。

スメア検査で発見できる病気

スメア検査で主に発見されるのは、以下の状態です。

  • 子宮頸部の異形成(しきゅうけいぶのいけいせい): 子宮頸部の細胞が正常とは異なる形に変形した状態です。異形成は、軽度、中等度、高度に分類され、高度異形成はがんになる可能性が高い前段階と位置づけられます。
  • 上皮内がん(じょうひないがん): がん細胞が上皮内にとどまっているごく早期のがんです。リンパ節転移の可能性がほとんどなく、適切な治療で完治が期待できます。
  • 浸潤がん(しんじゅんがん): がん細胞が上皮の下にある組織(間質)に入り込んでいる状態です。進行度に応じて治療法が異なります。

スメア検査はあくまでスクリーニング検査であり、異形成やがんの可能性がある細胞を見つけ出すものです。
スメア検査で異常が見つかった場合でも、すぐに「がん」と診断されるわけではありません。
精密検査を経て最終的な診断が確定します。

検査結果の判定区分(NILM, ASC-USなど)

スメア検査の結果は、国際的に定められた判定区分に基づいて報告されます。
代表的な判定区分は以下の通りです。

判定区分 日本語名 意味 次の対応
NILM 異常なし 細胞に異常が見られない正常な状態。 定期的な検診(推奨される頻度)
ASC-US 意義不明な異型扁平上皮細胞 正常か異常か判断が難しいわずかな変化。HPV感染による一時的な変化の可能性。 HPV検査や再検査など、経過観察。
ASC-H 高度病変を示唆する異型扁平上皮細胞 高度異形成や上皮内がんの可能性を否定できない変化。 コルポスコピー検査などの精密検査が必要。
LSIL 軽度扁平上皮内病変 軽度異形成が疑われる変化。HPV感染の影響であることが多い。 経過観察(自然に治ることも多い)または精密検査。
HSIL 高度扁平上皮内病変 中等度~高度異形成、または上皮内がんが強く疑われる変化。 コルポスコピー検査と組織診による精密検査が必要。
SCC 扁平上皮がん 浸潤がんが強く疑われる状態。 緊急の精密検査(組織診)と治療方針の検討が必要。
AGC 異型腺細胞 腺細胞に異常が見られる状態。子宮頸部腺がんや子宮体がんの可能性。 精密検査(コルポスコピー検査、組織診、子宮体癌検査など)が必要。

(上記は代表的な区分であり、より詳細な分類が存在する場合もあります。)

NILM以外の判定が出た場合は、「異常あり」「要精密検査」などと報告されることが多いです。
特にASC-H、HSIL、SCC、AGCなどの場合は、速やかに精密検査を受ける必要があります。

スメア検査を受けるべき対象者・頻度

スメア検査は、子宮頸がんのリスクがあるすべての女性にとって重要な検査です。

子宮頸がん検診としての対象者

日本において、自治体が行う子宮頸がん検診(対策型検診)の対象者は、20歳以上の女性とされています。
性交渉の経験がある女性は、HPV感染のリスクがあるため、年齢にかかわらず検診の対象となります。
性交渉の経験がない場合は、HPV感染のリスクは極めて低いため、必ずしも定期的な検診は必要ないと考えられていますが、心配な場合は医師に相談しましょう。

推奨される検査頻度

国の推奨する子宮頸がん検診の頻度は、2年に1回です。
これは、子宮頸がんの前段階である異形成が進行するのに通常数年以上かかるとされているためです。
定期的に2年に1回検査を受けることで、異常が見つかったとしても、がんになる前の段階やごく早期の段階で発見できる可能性が高まります。
ただし、過去の検査で異常を指摘されたことがある方や、医師から短い間隔での検診を勧められている方は、その指示に従って適切な間隔で検査を受けてください。
職場での検診や人間ドックなどで毎年受けている方もいますが、それは問題ありません。

スメア検査の流れ・方法

スメア検査は比較的短時間で終わる検査です。どのような手順で行われるのでしょうか。

検査の具体的な手順(細胞採取)

スメア検査は通常、産婦人科やレディースクリニック、自治体の集団検診会場などで受けることができます。

  1. 診察台に上がる: 内診台と呼ばれる検査用の椅子に座り、リラックスした姿勢をとります。
  2. クスコ(開膣器)の挿入: 医師や看護師が、膣にクスコという器具をゆっくりと挿入します。これにより膣壁が広がり、子宮頸部が見えやすくなります。クスコの挿入時に冷たさや軽い圧迫感を感じることがあります。
  3. 細胞の採取: 子宮頸部の表面を、専用のブラシやヘラ、または綿棒のようなものでやさしくこすって細胞を採取します。この際、表面の細胞を剥がすため、チクチクとした感じや違和感を覚えることがありますが、強い痛みは少ない場合がほとんどです。出血を伴うことも稀にありますが、通常はすぐに止まります。
  4. 細胞の固定・染色: 採取した細胞はガラスの上に塗り広げられ、細胞が変性しないように固定液につけられます。その後、検査技師によって特殊な色素で染色されます。
  5. 顕微鏡観察: 染色された細胞を顕微鏡で観察し、細胞の形、大きさ、核の状態などに異常がないかを詳しく調べます。

この細胞採取のプロセス自体は、通常数分程度で終了します。
着替えや問診なども含めると、トータルで15分から30分程度で済むことが多いです。

検査にかかる時間

前述の通り、細胞採取の実際の時間は非常に短く、通常1~2分程度です。
内診台に座ってから降りるまでの時間を含めても、5分とかからない場合がほとんどです。
クリニックでの待ち時間や、その前後の問診、着替えなどの時間を考慮しても、短時間で受けられる検査と言えます。

スメア検査は痛い?

スメア検査に対して「痛そう」「怖い」というイメージを持っている方も少なくありません。
実際のところ、痛みはどの程度なのでしょうか。

検査時の痛みや不快感について

スメア検査で痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの場合、強い痛みを感じることは少ないとされています。

  • クスコ挿入時の圧迫感: 膣にクスコを挿入する際に、器具の冷たさや広げられることによる圧迫感や違和感を覚えることがあります。特に体が緊張していると、膣の筋肉がこわばってしまい、痛みを感じやすくなることがあります。
  • 細胞採取時の刺激: 子宮頸部をブラシやヘラでこすって細胞を採取する際に、チクチクとした感じや、何かをこすられているような不快感、軽い刺激を感じることがあります。子宮頸部自体には痛覚があまりないため、通常は強い痛みにはつながりにくいとされています。

生理前など、子宮頸部が敏感になっている時期には、普段より痛みや出血を感じやすいこともあります。

痛みを軽減するためのポイント

スメア検査の際の痛みや不快感をできるだけ和らげるために、以下のポイントを試してみてください。

  • リラックスを心がける: 検査中に体を緊張させると、筋肉がこわばり痛みを感じやすくなります。深呼吸をしたり、肩の力を抜いたりして、できるだけリラックスするように努めましょう。
  • 医師や看護師に相談する: 痛みが苦手なことや不安な気持ちを事前に伝えましょう。ゆっくりと丁寧に検査を行ってもらえたり、声かけをしてもらえたりと、配慮してもらえる場合があります。
  • 生理直前・直後を避ける: 生理直前や直後は子宮頸部が充血していたり敏感になっていたりすることがあります。これらの時期を避けて、比較的安定している時期に予約すると良いでしょう。ただし、不正出血がある場合は、時期にかかわらず検査が必要なこともありますので医師に相談してください。
  • 経験豊富な医療機関を選ぶ: 婦人科の診療に慣れている医療機関や、女性医師・スタッフがいる医療機関を選ぶことも、安心感につながり、リラックスして検査を受けやすくなるでしょう。

どうしても不安が強い場合は、事前にクリニックに相談してみることも有効です。

スメア検査で「異常あり」の場合

スメア検査の結果が「異常なし(NILM)」以外だった場合、「異常あり」または「要精密検査」という通知が来ます。
この場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。

要精密検査となるケース

スメア検査で「要精密検査」となるのは、前述の判定区分でASC-US、ASC-H、LSIL、HSIL、SCC、AGCなどが検出された場合です。
これは、採取した細胞の中に、異形成やがんの可能性を示唆する細胞が見つかったことを意味します。

「異常あり」≠「がん」です。
多くの場合は、前がん病変である異形成や、治療によって完治できる早期のがんです。
また、ASC-USやLSILといった軽度の変化の場合は、HPV感染による一過性の変化であることも多く、自然に正常に戻ることも少なくありません。
しかし、放置しておくと将来がんへ進行する可能性があるため、精密検査で正確な診断をつけることが非常に重要になります。

精密検査の種類(コルポスコピー検査・組織診)

スメア検査で「異常あり」と判定された場合、精密検査として主に以下の検査が行われます。

  • コルポスコピー検査(こるぽすこぴーけんさ): コルポスコープという拡大鏡を使って、子宮頸部の表面を詳しく観察する検査です。酢酸やヨード液を子宮頸部に塗布することで、異常な細胞がある部分が色や模様の違いとなって現れるため、目で見て確認することができます。
  • 組織診(そしきしん): コルポスコピー検査で異常が疑われる箇所を特定し、そこからごく小さな組織片を採取する検査です。採取した組織は病理医が顕微鏡で詳しく調べ、細胞の形態異常の程度や、がん細胞の有無などを確定診断します。組織診は、異形成や子宮頸がんの確定診断に不可欠な検査です。

精密検査の結果、異形成の程度に応じて、経過観察となったり、レーザーや手術による治療が必要となったりします。
医師の説明をよく聞き、自身の状態に合わせた適切な対応をとりましょう。

スメア検査と関連する婦人科系検査

子宮頸がん検診ではスメア検査が中心ですが、関連する検査としてHPV検査や子宮体癌検査があります。
それぞれの検査の目的やスメア検査との違いを理解しておくことは大切です。

HPV検査との違い

HPV検査は、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しているかどうかを調べる検査です。

検査の種類 目的 何がわかるか 異常があった場合の意味
スメア検査 細胞の形態異常を発見する(スクリーニング) がんや異形成の可能性のある細胞の有無 異形成やがん細胞が存在する可能性。
精密検査で詳細な診断が必要。
HPV検査 子宮頸がんの原因ウイルス(HPV)の感染の有無を調べる 子宮頸がんの原因となる高リスク型HPVに感染しているか HPVに感染している状態。
すぐにがんになるわけではないが、将来的に異形成やがんへ進行するリスクがある。
スメア検査の結果と組み合わせて、経過観察の頻度や精密検査の必要性を判断することが多い。

スメア検査は「現在、がんや異形成がないか」を調べるのに対し、HPV検査は「将来、がんになるリスクがあるか」を調べる検査と言えます。
HPVに感染していても、スメア検査で異常がなければ、すぐに治療が必要なわけではありませんが、定期的なスメア検査で経過を観察することが重要になります。
最近では、スメア検査とHPV検査を併用することで、より高精度な検診を行うことも推奨され始めています。

子宮体癌検査との違い

子宮体癌検査は、子宮の奥にある「子宮体部」にできるがん(子宮体がん)を調べる検査です。
スメア検査が子宮の入り口(子宮頸部)を対象とするのに対し、子宮体癌検査は子宮の奥を対象とします。

検査の種類 対象部位 検査方法 主な発見対象
スメア検査 子宮頸部 子宮頸部の表面をこすって細胞を採取 子宮頸がん、子宮頸部異形成
子宮体癌検査 子宮体部(内膜) 細いチューブなどを子宮腔内に挿入し、子宮内膜の細胞や組織を採取 子宮体がん、子宮体部異形成、前がん病変(子宮内膜増殖症)

子宮体がん検診は、閉経後の女性や、不正出血、月経異常、ホルモン補充療法を受けているなど、子宮体がんのリスクが高いと考えられる方に対して推奨されることが多いです。
スメア検査と子宮体癌検査は全く別の検査であり、それぞれで発見できるがんの種類も異なります。
不正出血などの症状がある場合は、子宮体癌検査も検討する必要がありますので、医師に相談しましょう。

スメア検査に関するよくある質問 (FAQ)

スメア検査について、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。

スメア検査とはどんな検査ですか?

スメア検査(子宮頸部細胞診)は、子宮頸部の表面から細胞を採取し、顕微鏡で調べてがん細胞やその前段階の異常(異形成)がないかを確認する検査です。
子宮頸がんの早期発見を目的とした、子宮頸がん検診の中心となる検査です。

スメア検査は痛いですか?

痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの場合、強い痛みはありません。
クスコ挿入時の圧迫感や、細胞採取時のチクチクとした刺激を感じることはありますが、通常は我慢できる程度の不快感であることがほとんどです。
リラックスを心がけたり、医師に相談したりすることで、痛みを軽減できる場合があります。

スメア検査は生理中でも受けられますか?

生理中は、経血が混じることで細胞の観察が難しくなるため、原則として生理期間を避けて検査を受けることが推奨されます。
理想的には、生理が終わって数日経ってから、次の生理が始まるまでの期間が良いとされています。
ただし、急を要する場合や、どうしてもその時期しか受けられない場合は、対応可能な医療機関もあるため、事前に相談してみましょう。

検査結果が出るまでどれくらいかかりますか?

検査結果が出るまでの期間は、医療機関や検査を依頼する検査機関によって異なりますが、通常は1週間から2週間程度かかることが多いです。
自治体のがん検診などで受けた場合は、結果が自宅に郵送されるまでに3週間から1ヶ月程度かかる場合もあります。

スメア検査で異常が見つかったらどうなりますか?

スメア検査で異常が見つかった場合、「要精密検査」となります。
精密検査として、コルポスコープを使った観察や、組織の一部を採取して詳しく調べる組織診が行われます。
精密検査の結果に基づいて、異形成の程度やがんの有無が確定診断され、必要に応じて経過観察や治療(レーザー治療や手術など)が行われます。
異常が見つかっても、必ずしもがんではありませんし、早期であれば完治する可能性も高いので、過度に心配せず、医師の指示に従って速やかに精密検査を受けてください。

まとめ:定期的なスメア検査で子宮頸がん予防を

スメア検査は、子宮頸がんやその前段階の異形成を早期に発見するための、非常に有効でかつ簡便な検査です。
子宮頸がんは、早期に発見し適切な治療を行えば治癒率が高いがんです。
定期的にスメア検査を受けることは、ご自身の健康を守るために不可欠なステップと言えます。

検査に対して不安や抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、検査時間は短く、痛みも少ない場合がほとんどです。
また、もし「異常あり」と判定されても、それは「要精密検査」を意味するのであり、すぐに「がん」が確定するわけではありません。
精密検査を経て適切な診断と治療に繋げることが、子宮頸がんの克服には非常に重要です。

日本において、20歳以上の女性は2年に1回のスメア検査が推奨されています。
ご自身の健康と未来のために、ぜひ定期的なスメア検査をご検討ください。
不安なことや疑問点があれば、遠慮なく医療機関に相談してみましょう。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状や状況に関する診断や治療方針を示すものではありません。
特定の健康上の問題については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次