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小陰唇がかゆいのはなぜ?考えられる原因と対処法を解説

小陰唇(しょういんしん)のかゆみに悩んでいませんか?
デリケートな部分の不調は、人に相談しづらく、一人で抱え込んでしまいがちです。
かゆみだけでなく、ヒリヒリとした痛みや腫れ、できものなどを伴うこともあり、不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。

小陰唇のかゆみの原因は様々ですが、多くは適切なケアや治療で改善が見込めます。
このかゆみが何らかの病気のサインである可能性もゼロではありません。
自己判断で対処する前に、まずは考えられる原因を知り、ご自身の症状に合わせて適切な対処法を選択することが大切です。

この記事では、小陰唇のかゆみの原因から、症状別の可能性、自分でできる対処法や市販薬の使用について、そしてどのような場合に医療機関を受診すべきか、何科に行けば良いのかについて詳しく解説します。
この記事を読むことで、小陰唇のかゆみに関する不安を解消し、ご自身に合った適切なケアや受診の判断ができるようになることを目指します。

小陰唇のかゆみは、様々な原因によって引き起こされます。
一過性の軽いかゆみであれば、日常のケアで改善することもありますが、症状が続いたり、強くなったりする場合は、何らかのトラブルが起きているサインかもしれません。
主な原因としては、以下のようなものが考えられます。

  • かぶれ(接触皮膚炎)
  • 感染症(カンジダ、細菌、性感染症など)
  • その他の原因(閉経後の変化、アレルギー、ストレスなど)

それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。

かぶれ(接触皮膚炎)

小陰唇を含む外陰部は、皮膚が非常にデリケートで、外部からの刺激に敏感に反応しやすい部位です。
日常生活の中で触れる様々なものが刺激となり、「かぶれ(接触皮膚炎)」を引き起こし、かゆみの原因となることがあります。

下着、ナプキン、石鹸などの刺激

下着の素材(化学繊維)、新しい洗剤や柔軟剤の成分、生理用ナプキンやおりものシートの摩擦や素材、トイレットペーパーの質、そしてデリケートゾーン用のものを含めた石鹸やボディソープの成分などが刺激となることがあります。
特に、これらの製品に含まれる香料や化学物質が肌に合わない場合、かゆみや炎症を引き起こす可能性があります。

  • 下着: 締め付けのきついものや、通気性の悪い化学繊維製の下着は、蒸れやすく摩擦も起きやすいため、かぶれの原因になりやすいです。
  • ナプキン・おりものシート: 吸収体を覆う素材や粘着部分が肌に触れることで刺激になったり、長時間使用することで蒸れたりすることが原因となります。
  • 石鹸・ボディソープ: 必要以上に洗浄力の強いものや、肌に合わない成分を含むものは、デリケートゾーンの常在菌バランスを崩したり、乾燥を招いたりして、かゆみを引き起こすことがあります。洗いすぎもかぶれの原因となるため注意が必要です。

摩擦、蒸れ、乾燥

かぶれは、外部からの物理的な刺激によっても起こります。

  • 摩擦: 締め付けの強い下着や衣類、スポーツ時の摩擦などが小陰唇に直接的な刺激を与え、かゆみを引き起こすことがあります。
  • 蒸れ: 湿度が高く通気性の悪い環境は、雑菌が繁殖しやすくなり、肌への刺激が増してかゆみの原因となります。生理中や汗をかきやすい時期、長時間同じナプキンを使用している場合などに起こりやすいです。
  • 乾燥: 皮膚が乾燥するとバリア機能が低下し、外部からのわずかな刺激にも敏感に反応するようになります。空気が乾燥する季節や、洗いすぎによる乾燥などがかゆみを引き起こすことがあります。

これらの物理的な刺激や環境要因は、単独でかぶれを起こすだけでなく、他の原因(特に感染症)を悪化させる要因にもなり得ます。

感染症

小陰唇のかゆみの原因として非常に多いのが、細菌や真菌(カビ)、ウイルスなどによる感染症です。
外陰部は温かく湿気が多いため、病原微生物が繁殖しやすい環境と言えます。

腟カンジダ症(白いおりもの、腫れ)

腟カンジダ症は、カンジダという真菌(カビ)の一種によって引き起こされる感染症です。
カンジダ菌は健康な女性の腟や皮膚にも存在する常在菌ですが、体の抵抗力が落ちたり、腟内の環境が変化したりすると異常に増殖し、様々な症状を引き起こします。

カンジダ症の典型的な症状は、強いかゆみです。
小陰唇だけでなく、大陰唇や腟の入り口付近にも強いかゆみが出ます。
また、カッテージチーズや酒粕のようなポロポロとした白いおりものが増えるのも特徴です。
外陰部が赤く腫れたり、ヒリヒリとした痛みを感じたりすることもあります。

カンジダ症は性行為によって感染することもありますが、体調不良、疲労、妊娠、抗生物質の長期服用、免疫抑制剤の使用など、性行為とは関係なく発症することも多いです。
一度かかると再発しやすい傾向があります。

細菌性腟症

細菌性腟症は、腟内の常在菌のバランスが崩れ、特定の種類の細菌が過剰に増殖することで起こる状態です。
症状は個人差がありますが、特徴的なのは魚のような生臭いにおいのする、灰白色のさらさらとしたおりものが増えることです。
かゆみも起こり得ますが、カンジダ症ほど強くない場合が多いです。
また、痛みや腫れなどの症状がほとんどないこともあります。

細菌性腟症は、洗いすぎ、性行為、喫煙などがリスク要因として挙げられます。

性感染症(性器ヘルペス、クラミジア、淋病、トリコモナス、毛じらみ、疥癬など)

性行為によって感染する病気(性感染症、STD)も、小陰唇のかゆみの原因となることがあります。

  • 性器ヘルペス: ヘルペスウイルスによって引き起こされ、小陰唇やその周辺に痛みを伴う小さな水ぶくれが多数集まってでき、やがて破れてただれ、強いかゆみや痛みを伴います。
    発熱や足の付け根のリンパ節の腫れを伴うこともあります。
    一度感染すると再発しやすい病気です。
  • クラミジア感染症: 性器クラミジア感染症は、女性の場合、多くが無症状ですが、おりものの変化や不正出血、下腹部痛などの症状が出ることがあります。
    外陰部のかゆみを伴うこともあります。
  • 淋菌感染症: 淋菌感染症も女性は無症状のことが多いですが、黄色っぽい膿のようなおりもの、排尿時の痛み、下腹部痛などが見られます。
    外陰部のかゆみを伴うこともあります。
  • トリコモナス症: トリコモナスという原虫によって引き起こされる感染症です。
    泡状で黄緑色のおりものが増え、悪臭を伴うことがあります。
    外陰部や腟に強いかゆみ、痛み、炎症などが起こります。
  • 毛じらみ: 陰毛に寄生する毛じらみによって引き起こされるかゆみです。
    主に陰毛が生えている部分にかゆみが強く現れ、小陰唇周辺にも広がる可能性があります。
    下着に小さな血の点や、毛に付着した卵が見られることもあります。
  • 疥癬(かいせん): ヒゼンダニというダニが皮膚の角質層に寄生して起こる病気です。
    性行為によって性器周辺に感染することがあり、激しいかゆみ(特に夜間)、赤い発疹、結節(しこり)などができます。

性感染症は、放置すると不妊の原因になったり、パートナーに感染させたりするリスクがあるため、疑わしい場合は必ず医療機関を受診する必要があります。

その他の原因

かぶれや感染症以外にも、小陰唇のかゆみを引き起こす原因はいくつか存在します。

閉経後の萎縮性腟炎

閉経後、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下すると、腟や外陰部の粘膜が薄く乾燥しやすくなります。
これを「萎縮性腟炎」と呼びます。
腟や外陰部のうるおいがなくなり、乾燥によるかゆみや、ヒリヒリとした痛み、性交時の痛みなどを伴います。
粘膜が弱くなるため、軽い刺激でもかぶれやすくなることがあります。

アレルギー

特定の物質に対するアレルギー反応として、小陰唇にかゆみや湿疹が出ることがあります。
前述のかぶれの原因となるような下着やナプキン、石鹸などに含まれる成分の他に、ラテックス(コンドームなど)、特定の薬剤、食品などが原因となる可能性もゼロではありません。

精神的ストレス

体の不調は、精神的な状態とも深く関連しています。
強いストレスや疲労は、体の抵抗力を低下させ、感染症にかかりやすくするだけでなく、直接的に皮膚のかゆみを引き起こすこともあります(心因性掻痒症)。
かゆみがあること自体がストレスとなり、さらにかゆみを悪化させるという悪循環に陥ることもあります。

まれなケース(前がん病変、外陰がんなど)

非常にまれではありますが、小陰唇を含む外陰部のかゆみが、外陰上皮内腫瘍(VIN)のような前がん病変や、外陰がんの症状として現れることがあります。
これらの病気の場合、かゆみの他に、しこり、ただれ、出血などが長期間続いたり、徐々に悪化したりすることが特徴です。
強いかゆみが長く続く場合や、見た目に明らかな異常がある場合は、念のため医療機関で診察を受けることが重要です。
過度に心配する必要はありませんが、可能性として頭の片隅に入れておくことは大切です。

目次

小陰唇のかゆみに伴う症状別の原因(腫れ、痛み、できものなど)

かゆみだけでなく、他の症状を伴う場合、原因を絞り込む手がかりとなります。
ご自身の症状と照らし合わせて、どのような可能性が考えられるか確認してみましょう。

小陰唇が腫れてかゆい(片方だけの場合も含む)

小陰唇が赤く腫れて、かゆみや痛みを伴う場合、いくつかの原因が考えられます。

  • カンジダ症: 強いかゆみとともに、外陰部全体が赤く腫れることがよくあります。
  • かぶれ(接触皮膚炎): 刺激物や摩擦によって炎症が起こり、腫れとかゆみが生じます。
  • 性器ヘルペス: 水ぶくれができる前に、その部分が赤く腫れてかゆみや痛みを伴うことがあります。
  • 毛嚢炎(もうのうえん): 毛穴に細菌が感染して炎症を起こし、毛穴を中心に赤く腫れてかゆみや軽い痛みを伴います。
  • バルトリン腺炎/膿瘍: 小陰唇の付け根付近にあるバルトリン腺の出口が詰まり、細菌感染して炎症を起こすと、片方の小陰唇の奥が大きく腫れて強い痛みを伴います。
    かゆみを感じることもあります。
    これは片側だけに起こることが多いです。

片方の小陰唇だけが腫れている場合は、バルトリン腺炎/膿瘍や、毛嚢炎、局所的な刺激によるかぶれなどの可能性が考えられます。

小陰唇にかきむしるほどの強いかゆみがある

掻きむしってしまうほど耐え難い強いかゆみは、特定の原因を示唆することがあります。

  • 腟カンジダ症: カンジダ症は、しばしば我慢できないほどの強いかゆみを伴います。
    夜間に悪化する傾向があります。
  • かぶれ(重度): 刺激が強い場合や、アレルギー反応が強い場合、かぶれでも非常に強いかゆみが出ることがあります。
  • 性感染症(トリコモナス、毛じらみ、疥癬など): これらの性感染症は、激しいかゆみを特徴とすることが多いです。
    特に毛じらみや疥癬は、掻きむしりたくなるほどのかゆみを伴うことが多いです。

かゆみと一緒にできものやただれがある

かゆみだけでなく、見た目に異常(できもの、ただれ、水ぶくれなど)を伴う場合は、感染症や炎症の可能性が高いです。

症状 考えられる原因の例 特徴的な症状
水ぶくれ、ただれ 性器ヘルペス 痛みを伴う小さな水ぶくれが集まってでき、破れてただれる。再発を繰り返すことがある。
赤い発疹、結節 疥癬、湿疹 激しいかゆみ(特に夜間)。赤いブツブツやしこり。
イボ状のできもの 尖圭コンジローマ 性器や肛門周辺にできるイボ。痛みやかゆみがないことも多いが、かゆみを伴う場合もある。
ニキビのようなできもの 毛嚢炎、粉瘤(アテローマ) 毛穴の感染や、皮膚の下にできる良性の腫瘍。炎症を起こすと赤く腫れて痛みを伴う。
白っぽい塊、ただれ カンジダ症(重度)、前がん病変、外陰がん(まれ) カンジダは白いおりものと強いかゆみ。前がん病変・がんは長期間治らないただれやしこり。
腫れ、発赤、膿 毛嚢炎、バルトリン腺炎/膿瘍 毛穴の感染や腺の炎症。腫れや痛みが強い。

性行為の後に小陰唇がかゆい

性行為の後にかゆみを感じる場合、いくつかの原因が考えられます。

  • 摩擦: 性行為による物理的な摩擦で、デリケートな小陰唇の皮膚が刺激され、かゆみやヒリヒリ感が生じることがあります。
    特に腟のうるおいが不足している場合に起こりやすいです。
  • コンドームや潤滑剤へのアレルギー: コンドームの素材(特にラテックス)や、使用した潤滑剤に含まれる成分に対してアレルギー反応を起こし、かゆみやかぶれが生じることがあります。
  • 性感染症: 性行為によって感染する病気(トリコモナス、ヘルペス、毛じらみなど)の場合、感染直後や症状が現れ始めたタイミングで性行為を行うと、かゆみを感じたり症状が悪化したりすることがあります。
  • 腟内の環境変化: 性行為によって腟内のpHバランスや常在菌のバランスが一時的に変化し、かゆみに繋がることもあります。

性行為の度に症状が出る場合や、パートナーにも症状がある場合は、性感染症の可能性も考慮し、早めに医療機関を受診することが推奨されます。

小陰唇のかゆみへの対処法とセルフケア

軽いかゆみや、原因がおおよそ特定できる場合(例えば、新しい洗剤を使った後などのかぶれが疑われる場合)は、まずはセルフケアで様子を見ることもできます。
ただし、症状が強い場合や、原因が不明な場合は、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。

清潔を保つ正しい洗い方

デリケートゾーンを清潔に保つことは重要ですが、「洗いすぎ」はかえってかゆみを悪化させる原因となります。

  • 優しく洗う: 強くこすらず、手で優しく洗うようにしましょう。
    タオルやボディブラシなどでゴシゴシ洗うのは厳禁です。
  • 石鹸は控えめに: 毎日石鹸で洗う必要はありません。
    お湯で優しく洗い流すだけでも十分な場合が多いです。
    石鹸を使う場合でも、デリケートゾーン用の弱酸性ソープを少量泡立てて使用し、ゴシゴシ洗わずに撫でるように洗い、しっかりと洗い流しましょう。
    一般的なボディソープは洗浄力が強すぎる場合があります。
  • 体の構造を理解する: 小陰唇はひだ状になっており、恥垢(ちこう)という汚れが溜まりやすい部分です。
    汚れが溜まると雑菌が繁殖してかゆみの原因となるため、ひだの間も優しく洗いましょう。
    ただし、腟の中を洗う必要はありません。
    腟には自浄作用があり、洗いすぎると常在菌のバランスが崩れて感染症にかかりやすくなります。

蒸れを防ぐ工夫

蒸れは、かぶれや感染症の原因・悪化要因となります。
日常生活で蒸れを防ぐ工夫を取り入れましょう。

  • 通気性の良い下着を選ぶ: 綿など、吸湿性・通気性の良い天然素材の下着を選びましょう。
    締め付けの少ないデザインがおすすめです。
  • ナプキンやおりものシートをこまめに交換する: 長時間同じものを使用せず、吸収量に関わらずこまめに交換して、肌に触れる時間を短くしましょう。
    可能であれば、自宅にいる時などは使用しない選択も検討できます。
  • 服装を工夫する: 締め付けのきついズボンやストッキング、タイトなスカートなどを長時間着用するのは避け、通気性の良いゆったりとした服装を心がけましょう。
  • 濡れた水着や下着はすぐに着替える: 汗をかいたり、プールや温泉に入ったりした後は、濡れた下着や水着を長時間着用せず、すぐに乾いたものに着替えましょう。

刺激を避ける(下着、洗剤など)

かぶれが疑われる場合は、原因となっている刺激物を特定し、避けることが重要です。

  • 下着・洗剤の見直し: 新しい下着や洗剤、柔軟剤を使った後に症状が出た場合は、元に戻したり、肌に優しい製品に変えたりしてみましょう。
    下着は一度洗濯してから着用するのも効果的です。
  • トイレットペーパーの選択: 硬いトイレットペーパーや、香料・染料が含まれたトイレットペーパーが刺激になることがあります。
    肌触りの柔らかい、無香料・無着色の製品を選んでみましょう。
  • 過度な洗浄を避ける: 前述の通り、洗いすぎはバリア機能を低下させ、かえって刺激に弱くなります。
    優しい洗浄を心がけましょう。

乾燥対策

乾燥によってかゆみが生じている場合は、保湿ケアが有効です。

  • デリケートゾーン用保湿剤: デリケートゾーン専用の保湿クリームやオイルなどが市販されています。
    入浴後など、清潔な肌に優しく塗布して保湿しましょう。
    顔や体用の保湿剤は成分が強すぎる場合があるので、専用のものを選ぶか、ワセリンなど刺激の少ないものを使用するのが安心です。
  • 洗いすぎない: 乾燥の原因となる洗いすぎを避け、肌の天然のうるおいを保つようにしましょう。

小陰唇のかゆみに市販薬は使える?選び方は?

軽いかゆみの場合、薬局やドラッグストアで購入できる市販薬で対処できることもあります。
ただし、自己判断が難しい場合や、市販薬を使っても改善しない場合は、必ず医療機関を受診してください。

市販薬で対応できるケース・できないケース

市販薬の使用は、症状や原因によって向き不向きがあります。

  • 市販薬で対応できる可能性があるケース:
    • 原因が明らかで軽いかぶれ(例:生理用品による一時的なかゆみ)。
    • 過去に医師から腟カンジダ症と診断されたことがあり、症状が明らかに再発している場合(ただし、初めての症状や atypical な症状の場合は医療機関へ)。
    • 乾燥による軽いかゆみ。
  • 市販薬で対応できない(医療機関を受診すべき)ケース:
    • かゆみが非常に強い、我慢できない。
    • かゆみが数日〜1週間以上続いている。
    • セルフケアや市販薬を使用しても改善しない、または悪化した。
    • かゆみ以外の症状がある(強い痛み、腫れ、ただれ、できもの、水ぶくれ、異常なおおりもの、悪臭、排尿痛、発熱など)。
    • 原因が全く分からない。
    • 市販薬を数日使用しても改善しない、または悪化した。
    • 性感染症の可能性が疑われる。
    • 妊娠中、授乳中、基礎疾患がある方。
    • 症状が繰り返す、慢性化している。

安易な自己判断や市販薬の誤った使用は、かえって症状を悪化させたり、診断を遅らせたりする可能性があります。

薬の種類(かゆみ止め、抗真菌薬など)

市販されているデリケートゾーン用のかゆみ止めやかぶれ治療薬には、主に以下のような種類があります。

薬の種類 主な成分の例 効果 どのようなかゆみに適しているか 注意点
ステロイド配合 ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン酢酸エステルなど 炎症を抑え、かゆみを鎮める 炎症を伴うかぶれ、湿疹 長期間の使用は避ける。カンジダやヘルペスには使用できない(悪化させる)。
非ステロイド配合 ジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン)、リドカイン(局所麻酔)など かゆみ神経の働きを抑える、感覚を麻痺させる 軽いかゆみ、かぶれ 炎症が強い場合には効果が限定的。
抗真菌薬 ミコナゾール硝酸塩、クロトリマゾールなど 真菌(カンジダ)の増殖を抑える 腟カンジダ症の症状(強いかゆみ、白いおりもの) カンジダ以外の原因によるかゆみには効果がない。初めての症状には使わない。
殺菌成分配合 イソプロピルメチルフェノールなど 細菌の増殖を抑える 蒸れや雑菌によるかゆみ、ニオイ 感染症の治療にはならない。
その他 ビタミンE、パンテノールなど 血行促進、皮膚の修復、保湿 乾燥によるかゆみ、肌荒れ 直接的なかゆみ止め効果は低い。

※市販薬は、これらの成分が組み合わせて配合されている場合が多いです。

腟カンジダ症の市販薬は、外陰部のかゆみを抑えるクリーム剤と、腟内に入れる坐剤(自己判断での再発時のみ)があります。
使用できるのは、過去に医師から腟カンジダ症と診断され、症状が明らかに同じである場合に限られます。

使用上の注意

市販薬を使用する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 添付文書(説明書)をよく読む: 使用方法、使用量、使用期間、副作用、注意すべき人(妊娠中など)、併用禁忌などが記載されています。
    必ず確認してから使用しましょう。
  • 清潔な手で使用する: 患部に塗布する際は、手を洗い、清潔な状態で行いましょう。
  • 指定された部位以外には使用しない: 特に腟カンジダ症の市販薬(外陰部用クリーム)を腟内に入れたり、他の薬をデリケートゾーンに使用したりしないようにしましょう。
  • 長期間使用しない: 市販薬はあくまで一時的な対処法です。
    通常、数日〜1週間程度使用しても改善が見られない場合は、医療機関を受診してください。
    漫然と使用を続けると、原因が見逃されたり、副作用が出たりする可能性があります。
  • 症状が悪化したらすぐに中止する: 市販薬を使ってかゆみが強くなったり、他の症状が出てきたりした場合は、すぐに使用を中止し、医療機関を受診してください。
  • 自己判断で原因を決めつけない: かゆみの原因は様々です。
    見た目だけでカンジダやヘルペスなどを自己判断せず、迷う場合は医療機関に相談しましょう。

病院を受診すべき目安と何科に行くべきか

小陰唇のかゆみが続く場合や、セルフケアや市販薬で改善しない場合は、必ず医療機関を受診しましょう。
原因を正確に診断してもらい、適切な治療を受けることが大切です。

どんな症状があれば受診すべき?

以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。

  • かゆみが非常に強い、我慢できない、日常生活に支障が出ている。
  • かゆみが数日〜1週間以上続いている。
  • セルフケアや市販薬を使用しても改善しない、または悪化した。
  • かゆみ以外に以下の症状を伴う:
    • 強い痛みやヒリヒリ感
    • 小陰唇やその周辺の腫れ(片方だけの場合も含む)
    • ただれや潰瘍(ただれたり、えぐれたりしている)
    • 水ぶくれやできもの(イボ状、ニキビ状、しこりなど)
    • 普段と違うおりもの(量が増えた、色や性状が変わった、泡状、悪臭があるなど)
    • 不正出血(生理以外の出血)
    • 排尿時の痛みや違和感
    • 発熱や体のだるさ
    • 足の付け根のリンパ節の腫れや痛み
  • 性行為後に症状が出やすい、またはパートナーにも症状がある。
  • 妊娠中、授乳中である。
  • 基礎疾患がある(糖尿病など)。
  • かゆみが繰り返す、慢性化している。

特に、性感染症が疑われる場合や、見た目に明らかな異常がある場合は、放置せずすぐに受診することが重要です。

小陰唇のかゆみは何科を受診する?

小陰唇のかゆみで受診する場合、基本的には婦人科を受診するのが最も適切です。

  • 婦人科: 外陰部だけでなく、腟や子宮など女性器全般の健康を診察・治療する専門家です。
    かゆみの原因が、腟カンジダ症や細菌性腟症、性感染症など、腟や内性器に関わるものである可能性が高いため、婦人科であれば総合的に診察を受けることができます。
    デリケートゾーンの悩みは婦人科医に相談することに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、婦人科医はこれらの悩みに慣れていますので、安心して相談できます。
  • 皮膚科: 外陰部の皮膚トラブル(かぶれ、湿疹、アレルギーなど)であれば、皮膚科でも診察可能です。
    ただし、感染症(特に腟内に関わるものや性感染症)が疑われる場合は、婦人科での診察が必要となることがあります。
    どちらを受診すべきか迷う場合は、まずは婦人科に相談するのが確実でしょう。

婦人科での検査・治療の流れ

婦人科を受診した場合の一般的な流れは以下の通りです。

  1. 問診:
    いつ頃からかゆみがあるか、かゆみの程度、他の症状(痛み、腫れ、おりものの変化、できものなど)の有無、生理周期、妊娠の可能性、性行為の状況(パートナーの症状含む)、過去の病歴(特に性感染症やカンジダ症)、服用中の薬、アレルギーの有無、日常生活で心当たりがあること(新しい下着や洗剤、ストレスなど)などを医師に詳しく伝えます。
    恥ずかしがらず、正直に伝えることが正確な診断につながります。
  2. 視診:
    外陰部の皮膚や粘膜の状態を医師が目で見て確認します。
    発赤、腫れ、ただれ、できもの、水ぶくれ、おりものの状態などを観察します。
  3. 内診・検査(必要に応じて):
    視診だけでは原因が特定できない場合や、感染症が疑われる場合は、内診を行い、必要に応じて以下のような検査を行います。
    • おりもの検査: 腟からおりものを採取し、顕微鏡で観察したり、培養検査に出したりして、カンジダ菌やトリコモナス、細菌などの有無を確認します。
    • 性感染症検査: 性器ヘルペスやクラミジア、淋病などが疑われる場合は、血液検査や分泌物の検査を行います。
    • 組織検査: まれなケースですが、長期にわたるただれやしこりなどがあり、悪性腫瘍の可能性が否定できない場合は、組織の一部を採取して詳しく調べる検査(生検)を行うことがあります。
  4. 診断:
    問診、視診、検査結果をもとに、医師が診断を下します。
  5. 治療:
    診断された原因に応じた治療が行われます。
    • 感染症: 抗真菌薬(カンジダ症)、抗菌薬(細菌性腟症、細菌感染)、抗ウイルス薬(ヘルペス)、抗原虫薬(トリコモナス)などが処方されます。
      塗り薬、飲み薬、腟錠など、症状や原因によって様々な剤形があります。
    • かぶれ・湿疹: ステロイド外用薬やかゆみ止めなどが処方されます。
    • 萎縮性腟炎: 女性ホルモンを補うホルモン補充療法(内服薬、貼り薬、ジェルなど)や、局所的なエストロゲン腟錠などが用いられます。
    • その他: 原因に応じた専門的な治療が行われます。
  6. 生活指導:
    再発予防のために、正しい洗い方、蒸れを防ぐ工夫、刺激を避ける方法など、日常生活での注意点について指導を受けることがあります。

診察を受けることで、原因が明らかになり、適切な治療を受けることができます。
不安な気持ちを抱えたまま一人で悩むよりも、専門家に相談する方が早く解決に繋がります。

よくある質問 (FAQ)

小陰唇のかゆみに関して、よくある質問にお答えします。

股のびらびらが痒い原因は?

「股のびらびら」は、一般的に小陰唇や大陰唇といった外陰部を指す俗語として使われることがあります。
この部分がかゆくなる原因は、本文で詳しく解説した通り、かぶれ(下着やナプキンの刺激、摩擦、蒸れ、乾燥など)や、感染症(腟カンジダ症、細菌性腟症、性感染症など)、そして閉経後の萎縮性腟炎やアレルギーなどが考えられます。
かゆみ以外の症状がある場合は、特定の病気が原因である可能性が高まります。

カンジダは小陰部がかゆくなる?

はい、腟カンジダ症は、小陰部(外陰部)に非常に強いかゆみを引き起こす、最も典型的な原因の一つです。
かゆみとともに、カッテージチーズのような白いポロポロとしたおりものが増えたり、外陰部が赤く腫れたりする症状が見られます。
過去にカンジダにかかったことがある方で、これらの症状が再び現れた場合は、カンジダの再発の可能性が高いです。

小陰部が片方だけ腫れてかゆい原因は?

小陰部の片側だけが腫れてかゆみや痛みを伴う場合、局所的な問題が原因である可能性が考えられます。
例えば、バルトリン腺炎/膿瘍(小陰唇の付け根の腺の炎症)、毛嚢炎(毛穴の感染)、あるいは片側だけへの強い摩擦や刺激によるかぶれなどが原因となることがあります。
また、性器ヘルペスの初感染や再発時に、水ぶくれができる前に片側が腫れてかゆみや痛みを伴うこともあります。
片側だけの症状でも、痛みが強い場合や腫れが大きい場合は、医療機関を受診しましょう。

陰部がかゆい 女どうしたらいい?

女性で陰部、特に小陰唇がかゆい場合は、まずはご自身の症状をよく観察し、セルフケアで改善するかどうか試みることができます。

  1. セルフケア:
    • 優しい洗い方で清潔を保つ(洗いすぎない)
    • 通気性の良い下着やゆったりした服装を選ぶ
    • ナプキンやおりものシートをこまめに交換する
    • 肌に合わない可能性のある下着、洗剤、ナプキンなどの使用を避ける
    • 乾燥が原因であれば、デリケートゾーン用保湿剤を試す
  2. 市販薬:
    • 症状が軽く、かぶれや過去に診断されたカンジダの再発が疑われる場合に限り、添付文書をよく読んで適切に使用する。
    • 初めての症状や、原因が不明な場合は使用しない。
  3. 医療機関の受診:
    • セルフケアや市販薬で改善しない、または悪化した場合。
    • かゆみが非常に強い、我慢できない場合。
    • かゆみ以外に、痛み、腫れ、ただれ、できもの、異常なおおりもの、悪臭、排尿痛、発熱などの症状がある場合。
    • 性感染症の可能性が疑われる場合。
    • 妊娠中、授乳中である場合。

迷ったり不安を感じたりする場合は、自己判断せず婦人科を受診するのが最も安心で確実な方法です。
専門家による正確な診断と適切な治療を受けることが、早期解決への鍵となります。

まとめ:小陰唇のかゆみは専門家に相談を

小陰唇のかゆみは、多くの女性が経験するデリケートな悩みです。
原因は、日常的な刺激によるかぶれから、カンジダ症や細菌性腟症といった感染症、さらには性感染症や閉経後の変化など、多岐にわたります。
症状が軽い場合は、正しいセルフケア(清潔を保つ、蒸れや刺激を避ける、乾燥対策など)や、原因が分かっている場合の市販薬の使用で改善することもあります。

しかし、かゆみが強かったり、長く続いたりする場合、あるいはかゆみ以外の症状(痛み、腫れ、ただれ、できもの、異常なおおりものなど)を伴う場合は、何らかの病気が原因である可能性が高く、医療機関での診察が必要です。
特に性感染症は放置すると重篤な合併症を引き起こすこともあるため、疑わしい場合は早めに受診することが重要です。

小陰唇のかゆみで悩んでいる女性にとって、最も頼りになるのは婦人科の専門医です。
恥ずかしがらずに症状を伝え、適切な診断と治療を受けましょう。
原因を特定し、正しい対処法を行うことで、つらいかゆみから解放され、快適な毎日を取り戻すことができます。
一人で悩まず、まずは専門家に相談することから始めてみてください。

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。
ご自身の症状に不安がある場合や、本記事の内容だけでは判断できない場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。
本記事の情報に基づいて行われた行動によって生じた損失や損害について、当社は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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