クラミジア感染症は、国内で最も多い性感染症(STI)の一つです。
特に男性の場合、自覚症状がないケースが多く、気づかないうちにパートナーに感染させてしまったり、病気が進行して合併症を引き起こしたりするリスクがあります。「もしかして?」と思った時、あるいは不安を感じた時に、正しい知識を持つことは非常に重要です。
この記事では、男性のクラミジア感染症に焦点を当て、その主な症状、無症状が多い理由、潜伏期間、検査、治療、そして放置した場合のリスクについて詳しく解説します。
ご自身の体調やパートナーとの関係で不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
クラミジア感染症の基礎知識
クラミジア感染症とは
クラミジア感染症は、「クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)」という細菌によって引き起こされる性感染症(STI)です。
この菌は非常に小さく、細胞の中で増殖するという特徴を持っています。
そのため、感染してもすぐには症状が出にくかったり、症状が非常に軽かったりすることが珍しくありません。
クラミジアは、放置すると男性では尿道炎、副睾丸炎、不妊症などの原因となることがあります。
女性では子宮頸管炎、卵管炎、骨盤腹膜炎などを引き起こし、やはり不妊症や子宮外妊娠のリスクを高める可能性があります。
母子感染により、新生児が肺炎や結膜炎を発症することもあります。
主な感染経路
クラミジア・トラコマティス菌の主な感染経路は、性行為です。
具体的には、以下のような性的接触によって感染が広がります。
- 膣性交: 最も一般的な感染経路です。感染者との性器接触により、尿道などに感染します。
- アナルセックス(肛門性交): 直腸に感染することがあります。
- オーラルセックス(口腔性交): 咽頭(のど)に感染することがあります。
- その他: 稀ではありますが、タオルや衣類、便座などを介して感染する可能性もゼロではありませんが、感染力は低いです。性行為以外の日常生活で感染するケースは極めて少ないと考えられています。また、感染した母親から出産時に赤ちゃんへ感染する母子感染のリスクもあります。
感染部位は、性行為の種類によって異なります。
男性の場合、主に尿道、咽頭、直腸などに感染が見られます。
男性クラミジアの具体的な症状
男性のクラミジア感染症で最も多いのは尿道への感染(尿道炎)ですが、感染部位によって様々な症状が現れる可能性があります。
ただし、多くの場合は症状が軽微であるか、全く症状が現れない(無症状)ことが多いのが特徴です。
尿道炎の症状
男性のクラミジア感染症で最も一般的かつ初期に現れやすいのが、尿道炎の症状です。
しかし、他の原因による尿道炎(淋病など)に比べて症状が軽い傾向があります。
排尿時の痛みや違和感
クラミジアによる尿道炎では、排尿時に軽い痛みや違和感を伴うことがあります。
これは尿道が炎症を起こしているために起こる症状です。
痛みの程度は個人差が大きく、少ししみるような感じ、ヒリヒリ感、あるいは排尿の最後に鈍い痛みを感じる程度で、我慢できないほどの激痛であることは少ないです。
排尿を始めた時や終わった時に症状を感じやすいという人もいます。
尿道からの分泌物(うみ)
尿道からの分泌物も、クラミジアによる尿道炎の典型的な症状の一つです。
しかし、この分泌物も淋病のように黄色く粘り気のある「うみ」とは異なり、透明または白っぽい、サラサラとした少量の分泌物であることが多いです。
量が非常に少ないため、日中は気づかずに、朝起きた時に下着に少し付着しているのを見て初めて気づくというケースも珍しくありません。
膿というよりは、粘液に近いような見た目のこともあります。
尿道のかゆみ
尿道に軽いかゆみやムズムズ感を感じることもあります。
特に排尿時以外にも、ふとした時に尿道口のあたりが痒く感じるという人もいます。
このかゆみも強いものではなく、我慢できる程度であることが多いです。
睾丸・陰嚢の痛みや腫れ(副睾丸炎)
クラミジアによる尿道炎を放置して菌が増殖し、尿道からさらに奥へ、精子を一時的に貯めておく「副睾丸(精巣上体)」という部分に炎症が広がると、「副睾丸炎(精巣上体炎)」を引き起こすことがあります。
副睾丸炎になると、片側の睾丸(精巣)が痛む、腫れる、触ると硬くなっているといった症状が現れます。
痛みは比較的強く、発熱を伴うこともあります。
副睾丸炎まで進行すると、自覚症状が出やすくなりますが、これはクラミジア感染症が進行した状態です。
咽頭(のど)の症状
オーラルセックスによって咽頭にクラミジアが感染した場合、「クラミジア咽頭炎」を引き起こします。
しかし、咽頭へのクラミジア感染はほとんどが無症状であると言われています。
症状が出たとしても、風邪の初期症状のような軽い咽頭痛やのどの違和感、かすれ声程度で、気づかないことがほとんどです。
直腸の症状
アナルセックスによって直腸にクラミジアが感染した場合、「クラミジア直腸炎」を引き起こします。
こちらも無症状のことが多いですが、症状が出た場合は、軽い肛門周囲の痛み、かゆみ、粘液性の分泌物、排便時の違和感(しぶり腹、テネスムス)などが現れることがあります。
このように、男性のクラミジア感染症の症状は非常に多様で、特に尿道炎以外の部位では無症状のケースが圧倒的に多いです。
症状が出たとしても、他の病気と勘違いしやすい軽い症状であることが、発見を遅らせる原因となっています。
クラミジア男性の無症状について
男性のクラミジア感染症は、しばしば「無症状」であることが大きな特徴です。
この無症状の性質が、感染拡大や病気の進行につながる要因となっています。
無症状が多い理由
男性のクラミジア感染症で無症状が多い理由は、いくつか考えられます。
- 菌の性質と量: クラミジア・トラコマティス菌は細胞内で増殖する性質があり、また、淋病などの他の性感染症の原因菌に比べて増殖スピードが比較的遅いため、初期段階では炎症反応が弱く、自覚症状が現れにくいと考えられています。
- 感染部位: 特に尿道への感染の場合、男性の尿道は女性に比べて長く、菌の増殖が自覚症状として現れるまでに時間がかかったり、少量で済んでしまったりすることがあります。また、咽頭や直腸への感染は、粘膜の構造や免疫応答の違いから、さらに症状が出にくいとされています。
- 炎症の程度: 例え炎症が起きていても、その程度が軽微であれば、痛みやかゆみ、分泌物といった症状として本人が認識しにくいレベルであることがあります。
これらの要因が複合的に作用することで、男性のクラミジア感染者は無症状である場合が多く、感染に気づかないまま過ごしてしまうことが少なくありません。
無症状でも感染力はあるのか
無症状であっても、クラミジアに感染している男性は、性行為によって他者にクラミジアを感染させる可能性があります。 症状がないからといって、体内に菌が存在しないわけではありません。
むしろ、無症状であるために感染に気づかず、知らないうちに複数のパートナーに感染を広げてしまうというケースが多く見られます。
クラミジアの感染拡大を防ぐ上で、無症状感染者の存在は大きな問題となります。
何年も気づかないケースのリスク
クラミジア感染に何年も気づかずに放置してしまうことは、様々なリスクを伴います。
- 病気の進行と合併症: 無症状のまま経過すると、クラミジア菌が尿道からさらに奥に進み、副睾丸炎(精巣上体炎)を引き起こすリスクが高まります。副睾丸炎は強い痛みを伴うだけでなく、炎症が精子の通り道である精巣上体管を閉塞させてしまう可能性があり、これが男性不妊の原因となることがあります。
- パートナーへの感染: 感染に気づかない間、性行為を行うたびにパートナーにクラミジアを感染させてしまうリスクがあります。パートナーが女性の場合、感染によって骨盤内炎症性疾患などを引き起こし、不妊症や子宮外妊娠のリスクを高める可能性があります。
- 全身への影響: 非常に稀ですが、クラミジア感染が全身に広がり、関節炎(ライター症候群、反応性関節炎とも呼ばれる)などを引き起こす可能性も指摘されています。
クラミジアは早期に発見して適切に治療すれば完治する病気です。
しかし、無症状のために発見が遅れると、これらの深刻な合併症やリスクを招くことになります。
性行為の経験がある方は、症状がなくても定期的に検査を受けることが推奨されます。
感染から症状が出るまでの期間(潜伏期間)
クラミジアに感染してから、尿道炎などの自覚症状が現れるまでの期間を「潜伏期間」といいます。
男性のクラミジア感染症における潜伏期間は、一般的に1週間から3週間程度とされています。
ただし、この潜伏期間には個人差があります。
感染した菌の量や、その人の免疫力、体調などによって、潜伏期間が短くなることも長くなることもあります。
中には、性行為から数日後に症状が出始める人もいれば、1ヶ月以上経ってからようやく症状に気づくという人もいます。
そして、前述したように、男性の場合は潜伏期間を過ぎても全く症状が出ないまま経過する「無症状感染」のケースが非常に多いです。
そのため、「性行為から時間が経っているから大丈夫だろう」と自己判断することは危険です。
少しでも感染の可能性がある性行為があった場合は、症状の有無にかかわらず、適切な時期に検査を受けることが重要です。
クラミジアの検査と診断
クラミジア感染症は、医療機関での検査によって確定診断されます。
適切な検査方法とタイミングを知っておくことが、早期発見につながります。
男性クラミジアの主な検査方法
男性のクラミジア感染症の検査では、主に感染が疑われる部位の検体を採取し、クラミジア・トラコマティス菌の遺伝子(DNA)を検出する方法が用いられます。
これは「PCR法」や「SDA法」といった高感度な核酸増幅法が一般的です。
検査部位 | 主な検体 | 検査方法(一般的) |
---|---|---|
尿道 | 尿 | 尿検査(初尿、あるいは2時間以上排尿していない尿) |
咽頭(のど) | 咽頭ぬぐい液 | 綿棒で喉の奥を擦る |
直腸(肛門) | 直腸ぬぐい液 | 綿棒で肛門の奥を擦る |
副睾丸(精巣) | なし | 尿道や尿からの感染の広がりとして診断される |
最も一般的なのは尿検査です。
特に、朝起きて最初の尿(初尿)は、尿道に溜まった分泌物や菌が多く含まれている可能性が高いため、検査に適しています。
検査前は、可能であれば数時間(目安として2時間以上)排尿を我慢すると、より正確な結果が得やすくなります。
オーラルセックスやアナルセックスの経験がある場合は、尿検査に加えて咽頭や直腸の検査も行うことが重要です。
これらの検査は、専用の綿棒を使って感染部位を軽く擦って検体を採取します。
痛みはほとんどありません。
医師は、問診(症状、感染機会、性行為の種類など)とこれらの検査結果を総合して、クラミジア感染症と診断します。
検査を受けるべきタイミング
クラミジアの検査は、感染の可能性があった性行為から1週間から1ヶ月後を目安に受けるのが一般的です。
- 感染機会から1週間未満: 菌が増殖しきっていない可能性があり、検査の感度が低いことがあります。偽陰性(実際は感染しているのに「陰性」と出る)となるリスクがあります。
- 感染機会から1週間以降: 菌が十分に増殖していることが多く、正確な結果が得やすくなります。
- 感染機会から1ヶ月以上: いつでも検査可能ですが、早期発見・早期治療のためには、目安の期間内に受けることが望ましいです。
症状がある場合は、感染機会から1週間経っていなくても、できるだけ早く医療機関を受診して検査を受けるべきです。 症状が出ているということは、ある程度の菌が増殖していると考えられるため、検査で陽性となる可能性が高いです。
また、症状が全くない無症状の場合でも、感染の可能性のある性行為(新しいパートナーとの性行為、コンドームを使用しなかった性行為など)があった場合は、上記を参考に適切なタイミングで検査を受けることを強く推奨します。 パートナーがクラミジアと診断された場合も、必ず検査を受けてください。
定期的な性感染症検査の一環として、年に1回程度クラミジア検査を受けることも、早期発見・早期治療に繋がり、ご自身の健康とパートナーの健康を守る上で有効です。
クラミジアの治療法
クラミジア感染症と診断された場合、治療には抗生物質が使用されます。
医師の指示通りに薬を服用することが、完治のために非常に重要です。
治療に使われる薬(抗生物質)
クラミジア・トラコマティス菌は細菌なので、抗生物質が有効です。
クラミジア治療に一般的に用いられる抗生物質にはいくつかの種類がありますが、主に以下のものが使われます。
薬剤名 | 服用方法 | 特徴 |
---|---|---|
アジスロマイシン (例: ジスロマック) | 1回のみ服用 | 1回の服用で治療が完了するため、利便性が高く、飲み忘れを防げる。効果が長く持続するタイプ。 |
ドキシサイクリン (例: ビブラマイシン) | 1日1回または2回、7日間服用 | 7日間毎日服用する必要がある。比較的安価な場合が多い。効果は広く、他の細菌感染症にも用いられることがある。 |
ミノサイクリン (例: ミノマイシン) | 1日2回、7日間服用 | ドキシサイクリンと同様に7日間服用が必要。 |
どの薬を使用するかは、感染部位や患者さんの状況、アレルギーの有無などを考慮して医師が判断します。
最も多いのはアジスロマイシン(1回服用)かドキシサイクリン(7日間服用)のいずれかです。
指示された量を指示された期間、必ず最後まで飲み切ることが非常に重要です。 症状が改善したからといって自己判断で服用を中止すると、菌が完全に死滅せずに再発したり、薬剤耐性菌が出現したりする可能性があります。
治療期間(どのくらいで治る?)
抗生物質による適切な治療を開始すれば、多くの場合は数日~1週間程度で尿道炎などの症状は改善してきます。 排尿時の痛みや違和感、分泌物の量などが減ってくるのを実感できるでしょう。
ただし、症状が改善したからといって、体内のクラミジア菌が完全にいなくなったわけではありません。
特に7日間服用するタイプの薬の場合は、指示された期間(通常7日間)しっかりと飲み続けることが必須です。
1回服用のアジスロマイシンの場合も、服用後数日間かけて薬が体内で作用し続けます。
治療が成功し、菌が完全にいなくなったかどうかを確認するために、治療終了後2週間~1ヶ月程度経ってから「治癒確認検査」を受けることが推奨されています。
この検査で陰性となれば、完治したと判断できます。
症状が消えても、治癒確認検査で陰性となるまでは感染力がある可能性があると考え、性行為は控えるか、必ずコンドームを使用しましょう。
自然治癒は期待できるか?
男性のクラミジア感染症が自然に治癒することは、極めて稀であると考えられています。 免疫力によって症状が一時的に軽くなったり、消えたりすることはありますが、体内のクラミジア菌が完全にいなくなることはほとんどありません。
自然治癒を期待して医療機関を受診せずに放置することは、前述したような副睾丸炎や不妊症といった深刻な合併症のリスクを高めるだけでなく、知らず知らずのうちにパートナーに感染を広げてしまうという問題を引き起こします。
クラミジアは、抗生物質による適切な治療で比較的容易に完治する病気です。
不安な症状があったり、感染の可能性のある性行為があったりした場合は、自己判断せずに必ず医療機関を受診し、検査・治療を受けましょう。
クラミジアを放置するとどうなる?(合併症リスク)
男性のクラミジア感染症は、無症状のことが多いからといって軽視してはいけません。
適切な治療を受けずに放置すると、様々な合併症を引き起こす可能性があります。
副睾丸炎による痛みや腫れ
最も一般的な合併症の一つが副睾丸炎(精巣上体炎)です。
クラミジアが尿道から精管を通って副睾丸(精巣上体)に侵入し、炎症を引き起こす病気です。
- 症状: 片側の睾丸が突然痛くなる、腫れる、触ると硬く熱を持つ、歩くと痛みが響くといった症状が現れます。発熱を伴うこともあります。尿道炎の症状が先行している場合もあれば、尿道炎の症状が軽微または無症状のまま副睾丸炎を発症することもあります。
- 治療: 抗生物質による治療が必要ですが、副睾丸炎まで進行すると尿道炎よりも治療期間が長くなることがあります。痛みや腫れが引くまでには時間がかかる場合もあります。
副睾丸炎は強い痛みを伴うため、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
精巣上体炎と不妊の可能性
副睾丸炎は、その名の通り副睾丸(精巣上体)の炎症です。
副睾丸は精子が成熟し、一時的に貯蔵される場所であり、精巣から伸びる精巣上体管を通じて精管へと繋がっています。
副睾丸炎が重症化したり、繰り返したりすると、精巣上体管が炎症によって閉塞(詰まってしまう)してしまうことがあります。
精巣で作られた精子は、この精巣上体管を通って体外へ排出されるため、ここが詰まってしまうと精子が通過できなくなり、男性不妊の原因となる可能性があります。
クラミジアによる不妊は、自覚症状がないまま進行し、いざ子供を授かりたいと思った時に初めて発覚するというケースもあります。
早期に治療すればこのようなリスクを避けられますが、放置期間が長くなるほど不妊のリスクは高まります。
その他の合併症
クラミジア感染症は、比較的稀ではありますが、尿道や副睾丸以外の部位にも影響を及ぼす可能性があります。
- ライター症候群(反応性関節炎): クラミジア感染後、数週間から数ヶ月後に全身の関節炎、結膜炎(目の炎症)、尿道炎の三つの症状が現れる自己免疫疾患です。遺伝的な要因が関与していると考えられています。関節の痛みや腫れ、目の充血やかゆみ、排尿時の痛みなどが現れます。
- 前立腺炎: クラミジア菌が尿道から前立腺に広がり、炎症を引き起こす可能性も指摘されています。頻尿、排尿困難、骨盤周囲の痛みなどが現れることがあります。
これらの合併症は全ての感染者に起こるわけではありませんが、放置することによってリスクが高まることは事実です。
クラミジアは治療可能な病気であるため、放置せずに適切な医療を受けることが、これらの合併症を防ぐ上で最も重要です。
クラミジアの予防とパートナーへの対応
クラミジア感染症は性行為によって広がる病気です。
自分自身を守り、大切なパートナーに感染させないために、予防と適切な対応策を知っておきましょう。
感染を予防する方法
クラミジア感染症の予防には、主に以下の方法が有効です。
- コンドームの正しい使用: 性行為の最初から最後まで、毎回正しくコンドームを使用することが最も有効な予防策です。ただし、コンドームは性器と性器の接触による感染を防ぐものであり、オーラルセックスやアナルセックスにおける感染リスクを完全にゼロにするものではありません。
- 不特定多数との性行為を避ける: 性行為のパートナーが多いほど、性感染症に感染するリスクは高まります。
- 新しいパートナーとの性行為前・後に検査を受ける: 新しいパートナーと関係を持つ前に、お互いが性感染症に感染していないか検査する「クリーンチェック」を行うこと、あるいは性行為後に一定期間が経過してから検査を受けることで、感染リスクを管理できます。
- 定期的な性感染症検査: 性行為の経験がある方は、症状がなくても定期的に性感染症の検査を受けることを検討しましょう。特に複数のパートナーがいる場合や、パートナーが変わった場合は推奨されます。早期発見・早期治療は、自分自身の健康だけでなく、パートナーへの感染を防ぐ上でも非常に重要です。
これらの予防策を組み合わせることで、クラミジアをはじめとする性感染症にかかるリスクを大きく減らすことができます。
パートナーがクラミジアと診断されたら
もし性行為のパートナーがクラミジアと診断された場合、あなた自身もクラミジアに感染している可能性が非常に高いと考えられます。
たとえ現在症状が全く出ていなくても、無症状感染である可能性が高いため、必ずご自身も医療機関を受診して検査を受けてください。 そして、陽性であればパートナーと一緒に治療を受けましょう。
パートナーが治療したとしても、あなたが感染したままだと、性行為によって再びパートナーに感染させてしまう「ピンポン感染」を引き起こしてしまいます。
これでは、どちらかが治ってもまた感染してしまうという悪循環に陥ります。
パートナーと一緒に検査・治療を受けることが、お互いの健康を守り、クラミジアを根治させるために不可欠です。
パートナーとよく話し合い、協力して対応しましょう。
クラミジアが疑われる場合の対処法
「もしかしてクラミジアかも?」と感じたり、感染の可能性のある性行為があったりして不安になった場合は、ためらわずに医療機関を受診することが大切です。
何科を受診すべきか
男性がクラミジア感染症の検査や治療を受ける場合、以下の科を受診するのが一般的です。
- 泌尿器科: 男性器の専門医です。尿道炎や副睾丸炎など、男性のクラミジア感染症に最も詳しいです。
- 性感染症内科/性病科: 性感染症全般を専門とする科です。クラミジア以外の性感染症の検査も同時に受けたい場合などに適しています。
- 内科: 一部の内科クリニックでも性感染症の検査・治療を行っている場合があります。かかりつけ医に相談してみるのも良いでしょう。
いずれの科を受診する場合でも、クラミジアの検査を受けたい旨を伝えれば対応してもらえます。
受診する医療機関を選ぶ際は、ウェブサイトなどで性感染症の診療を行っているか確認すると良いでしょう。
病院での診察・検査・治療の流れ
医療機関を受診した場合の一般的な流れは以下のようになります。
- 受付: 保険証を持参して受付を行います。性感染症の受診が恥ずかしいと感じる方もいるかもしれませんが、医療スタッフは慣れていますので心配いりません。
- 問診票の記入: 症状の有無、いつ頃から症状が出たか、感染の可能性のある性行為の時期や種類、過去の性感染症の既往歴、現在服用中の薬やアレルギーなどについて記入します。正直に記入することが、適切な診断・治療につながります。
- 医師の診察: 問診票の内容に基づいて、医師が症状や経緯について詳しく聞き取ります。視診(尿道口の状態など)や触診(睾丸の痛みや腫れなど)を行うこともあります。
- 検査: 医師の指示に従い、尿検査や咽頭・直腸のぬぐい液検査などを行います。検査結果が出るまでには数日かかる場合があります。
- 診断: 検査結果が出て、クラミジア感染が確認されれば診断が確定します。
- 治療薬の処方: クラミジア感染症と診断されたら、抗生物質が処方されます。薬の種類や服用方法について、医師や薬剤師から説明を受けます。
- 治癒確認検査: 治療終了後、指定された期間が経過してから再び来院し、治癒確認検査を受けます。この検査で陰性であることを確認して、初めて完治となります。
問診では、性行為に関する詳細な質問をされることがありますが、正確な診断と治療のために正直に答えることが非常に重要です。 恥ずかしいからといって事実を隠すと、正しい検査が行われなかったり、適切な薬が処方されなかったりする可能性があります。
自分でできる検査キットやオンライン診療
「病院に行く時間がない」「対面で診察を受けるのが恥ずかしい」といった方のために、自宅でできるクラミジア検査キットやオンライン診療サービスも選択肢の一つとしてあります。
- 自宅でできる検査キット: インターネットなどで購入できる検査キットで、自宅で尿や咽頭のぬぐい液などを採取し、郵送して検査してもらうサービスです。手軽に利用できるメリットがありますが、自分で正しく検体を採取する必要があり、医療機関での検査に比べて精度に差がある場合もあります。また、検査キットで陽性が出た場合は、必ず医療機関を受診して確定診断と治療を受ける必要があります。あくまで「一次的な確認」や「早期発見のきっかけ」として捉えるのが良いでしょう。
- オンライン診療: スマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受け、必要に応じて薬を郵送してもらうサービスです。移動時間や待ち時間がなく、自宅などプライベートな空間で診察を受けられるメリットがあります。オンライン診療でも、症状の聞き取りや過去の病歴の確認などが行われ、医師が感染の可能性を判断します。検査が必要な場合は、自宅で検査キットを使って検体を採取・郵送するか、提携する医療機関での検査を案内されることがあります。オンライン診療で処方される薬は、基本的に医療機関で処方される薬と同じです。
受診方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
医療機関(対面) | 医師による直接の診察、視診・触診が可能。その場で検査・診断・処方が完結する場合がある。精密な検査が可能。 | 受診に時間がかかる場合がある(移動・待ち時間)。対面での受診に抵抗を感じる人もいる。 |
自宅検査キット | 24時間いつでも手軽に検査できる。プライバシーが守られる。 | 検体採取を自分で行う必要がある。医療機関での検査より精度が低い場合がある。陽性の場合、別途医療機関受診が必要。 |
オンライン診療 | 自宅など好きな場所で診察を受けられる。移動・待ち時間がない。プライバシーが守られる。 | 対面での視診・触診ができない。検査が必要な場合はキットの郵送など、やや手間がかかることがある。 |
どの方法を選択する場合でも、クラミジアは放置せずに適切な検査と治療を受けることが最も重要です。
ご自身の状況や希望に合わせて、最適な方法を選びましょう。
まとめ|早期発見・早期治療が重要
男性のクラミジア感染症は、尿道炎の症状(排尿時の違和感や痛み、少量の分泌物、かゆみ)が現れることがありますが、多くの場合は自覚症状がない「無症状」で経過するのが特徴です。
無症状であっても感染力はあり、パートナーに感染させるリスクがあります。
クラミジア感染を放置すると、副睾丸炎による強い痛みや腫れを引き起こしたり、将来的な男性不妊の原因になったりする可能性があります。
また、稀ではありますが全身に影響が及ぶ合併症を引き起こすリスクもゼロではありません。
クラミジアは、感染機会から1~3週間の潜伏期間を経て症状が現れるか、無症状で経過します。
感染の可能性のある性行為から1週間~1ヶ月後に、泌尿器科や性感染症科などの医療機関で尿検査などを受けることで診断できます。
治療には抗生物質が用いられ、適切に服用すれば比較的短期間で完治します。
ただし、症状が消えても体内に菌が残っている可能性があるため、治療終了後に行う「治癒確認検査」で陰性となることを確認することが重要です。
自分自身とパートナーの健康を守るためには、コンドームの正しい使用による予防に加え、感染の可能性があった場合は症状の有無にかかわらず検査を受けることが何よりも大切です。
病院での対面診療だけでなく、自宅検査キットやオンライン診療といった選択肢もありますので、ご自身の状況に合わせて利用を検討しましょう。
クラミジアは早期発見・早期治療で完治可能な病気です。
不安を感じたら、一人で悩まずに医療機関や専門機関に相談してください。
免責事項:
この記事は、クラミジア感染症に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や医療機関を推奨するものではありません。
医学的な診断や治療は、必ず専門の医療機関で医師の判断のもとで行ってください。
記事の情報に基づいて読者が行った一切の行為、およびその結果について、当サイトはその責任を負いません。